82.「元素戦略」(拡充)

平成21年度要求額:1,200百万円
(平成20年度予算額:570百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 総合科学技術会議が本年5月19日に取りまとめた「革新的技術戦略」において、「レアメタル代替・回収技術」を重点的に推進すべき方針が打ち出されたことを踏まえ、平成20年度までに実施してきた希少金属代替等の研究開発に加え、平成21年度は、

  • 1)リサイクルしやすい元素による材料設計
    (合金元素フリー、安価で豊富な元素利用による組織・成分設計で希少元素を使わない技術開発)
  • 2)スクラップから希少元素を回収再利用する技術開発
    (効率的高選択性リサイクル技術開発により希少元素を回収・再利用する技術開発)
  • 3)スクラップ・低品位原料使用を前提にした新たな機能開発
    (不純物に鈍感でリサイクルを前提とした材料設計で希少元素を回収・再利用する技術開発)

の研究開発を追加して研究開発を強力に推進する。

2.指標と目標

【指標】

 各研究拠点における特許出願実績や論文引用率の他、企業化された技術の量や質、技術の価値や、社会システムに与えた影響等を複合的に勘案して、例えば、現在白金を使っている触媒において、全く白金を使わない代替触媒を開発するとか、使用量を半減する等の、研究応募者が研究課題の審査時に掲げた研究課題の達成目標に対してどれぐらい実現できているかを評価する。

【目標】

 各課題について、応募時にロードマップの提出を求め、採択時に最終・中間・年度計画と目標を定める。中間目標の達成度を文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会の中間評価で判定し、またプロジェクト進捗会議を開催して年度毎の目標達成状況をPD、POおよびナノテクノロジー・材料開発推進室において評価する。
 例えば、従来材料における希少元素の役割の解明、希少元素に代わる元素あるいは組織構造の探索、新規材料製造プロセスの最適化といった研究開発ステップを各年度ごとに設定し、これに対する達成状況を評価する。

【効果の把握手法】

 文部科学省科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会の下のナノテクノロジー・材料委員会による評価の他、交付対象施設及び施設設置者に対する現地調査を実施する。
 また、評価の結果、進捗が思わしくない場合は、研究実施者の交代や契約からの除外等を行うなど、厳格な審査を実施する予定。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 一部の希少元素や有害元素は近年の先端技術に不可欠の存在である一方で、埋蔵量や地域偏在といった希少元素の需給バランスに大きく影響を受けやすく、環境負荷が大きいなどの問題があり、本事業はこれら地球規模の問題を解決するものとして期待されている。更に、科学技術創造立国である我が国にとって、先端技術に不可欠な希少元素・有害元素の代替材料の開発は、我が国の持続的な経済成長を支える上で極めて重要である。
 「元素戦略」は我が国の発展を支える上で極めて重要な研究課題であるとともに、総合科学技術会議が取りまとめた「革新的技術戦略」として、国を挙げて取り組むべき革新的技術の一つに指定されたため、これを確実に実行するため、「元素戦略」を拡充して対応する必要がある。

2.有効性の観点

 審査時点においてシーズの確かさ、実用化への見通しを厳しく評価して採択していることから、5年経過時点で応用研究のスタートラインに立てる程度の成果を得られる見通しは高いと考える。

3.効率性の観点

アウトプット

 20年度の元素戦略においては、産学連携による申請を必要とせず、挑戦的・萌芽的問題の解決に資する技術開発に重点をおき、新たに課題を公募する。具体的には、燃料電池、貴金属触媒、熱電変換材料などを目標とし、材料を構成する元素の役割とその機能発現のメカニズムを科学的に解明する等により実用化を阻む障害を正確に認識し、解決することを目指す。

事業スキームの効率性

 本事業における研究はスモールサイエンスであり、大きな設備は必要としない場合が多い。このことから比較的少額の研究予算(インプット)であるものの十分な活動量(アウトプット)が得られるものと期待できる。また、研究課題の審査会において、成果の上がらない研究については途中で打ち切ると主査が言及するなど、中間評価を厳格に行い、研究課題を厳選する方針を明確に打ち出している。

代替手段との比較

 代替手段として、補助金事業とすることが考えられるが、「元素戦略」は10〜15年後の商品化を目指す基盤研究であり、企業の収益事業としてすぐに立ち上がる性格のものではなく、補助金事業にはなじまない。
 また、拠点型研究として一カ所のサイトで集中型研究を行うことも考えられるが、「元素戦略」はテーマが多岐にわたりテーマごとの連携を行うメリットは大きくなく、設備の共用効果も大きくない。

-- 登録:平成21年以前 --