81.データ統合・解析システム(拡充)

平成21年度要求額:1,191百万円
(平成20年度予算額:622百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 21年度においては、20年度に引き続きデータ統合・解析システムの構築を実施するが、国内外の温暖化影響評価・適応策立案に資するためのデータ共有・情報提供に係わる応用機能開発の強化を図ることとし、それに必要となるデータ蓄積空間の整備を加速するとともに、データの相互流通性の実現を促進する。
 具体的には、中間評価で指摘された「気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の各分野で行われている個別取組の更なる総合化」を踏まえて国内外で抱える水や農業などの地球規模課題解決に資するための分野横断的な応用機能開発を開始する。なお、分野横断的な応用機能開発の開始に伴い、取り扱う観測データの記述用語や保存形式などが多様化することから、データの相互流通性を実現するための機能の高度化を図る。また、今年度末までにデータ蓄積空間として700テラバイト分の磁気ディスク機器が整備される予定であるのに対し、蓄積されるデータ容量が600テラバイトと見積もられており、今後も取り扱う地球観測・気候変動予測データが増大することから、当初計画に沿ってペタバイト(1,000テラバイト)級のコアシステムの磁気ディスク装置を整備する。さらに、中間評価で指摘された「様々な分野の利用者が共有的なデータにアクセスできる基盤情報システムとして拡張する」に対しては、コアシステムの磁気ディスク装置内に解析処理空間を確保することが必要であることから、費用的に安価でデータを保存できる磁気テープ装置を導入することにより対応する。

2.指標と目標

【指標・参考指標】

データ統合・解析・情報提供のために蓄積された観測等のデータ量、本事業で執筆された論文数

【目標】

 多種多様で大容量の地球観測データ及び気候変動予測データをペタバイト級のコアシステムに投入・管理し、多彩なニーズに対応した情報を創出するため、データを統合的に活用して解析処理を効率的に行い、科学的・社会的に有用な情報を提供するためのシステムを構築する。

【効果の把握手法】

 本事業の効果は、システム構築の過程で蓄積された観測等のデータ量、執筆された論文数にて把握することができる。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 施策目標10—3の目標を達成するため、各研究機関の地球観測データを体系的に活用することが求められている。このため、各研究機関の地球観測データを統合・解析する情報技術を開発することによって、地球環境変動への効果的な対応策の実現に貢献する必要がある。また、我が国の有する最先端の科学技術に関する知見を活用し、世界に対する情報提供が求められている。
 特にデータ統合・解析システムは、資源エネルギー供給の逼迫化や気候変動による自然災害の頻発等、我が国を取り巻く状況が大きく変化する中で、我が国が持続的に発展し、世界をリードしていくために長期的な国家としての見通しを持って取り組むべき重要技術として内閣府総合科学技術会議が選定した国家基幹技術の一つである「海洋地球観測探査システム」の中核をなすものであり、我が国が必要とする重要技術として開発する必要がある。
 また、中間評価として指摘を受けた、「気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の各分野で行われている個別取組のさらなる総合化」及び「様々な分野の利用者が共有的なデータにアクセスできる基盤情報システムとして拡張する」に対応するため、分野横断的取組の開始し、それに伴って多様化する観測データの記述用語や保存形式、及び増大する地球観測・気候変動予測データに対して、ペタバイト級のコアシステムの磁気ディスク装置や磁気テープ装置等の整備を実施する必要があるので、本事業費を拡充する。

2.有効性の観点

 平成18年度に本事業を開始するに当たり、衛星観測データ、地上や海洋での観測データ、社会経済データ、気候変動予測結果などを統合的に処理するため、少なくともペタバイト級のデータを処理するシステムを構築することを目標としている。
 平成19年度末までに、データを蓄積するための空間として約600テラバイトの磁気ディスク装置を導入した。今後、磁気ディスク装置の増設することにより実施期間中にペタバイト級のデータを処理するシステムとして整備できるものと見込まれる。
 平成20年度においては、観測・気候変動予測データ(約600テラバイト)の蓄積を引き続いて実施するとともに、品質管理、統合、解析によって科学的・社会的に有用な情報へと変換して、それを国際的に共有するシステムの開発を着実に推進している。また、気候変動・地球温暖化、水循環、生態系の分野毎に創造的な価値を有する情報創出に向けた取組として9つの応用機能開発を継続して実施している。このことからも達成年度である平成22年度までに、目標の達成が見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

 我が国では既に多くの大学・研究機関などにおいて、広く地球観測が行われており、これらの観測で得られたデータを統合・解析し、広範囲の利用ニーズに応じた科学的、社会的に有用な情報として提供・活用を図ることができる。具体的には、例えば、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス収支、降雨や雲、河川流量などの観測データ及び地理情報などの社会経済データを統合することにより温室効果ガスモニタリングに必要な情報を提供するだけでなく、効果的な農作物の種まきや肥料散布の実施並びに効率的な収穫を実現するための情報、地球温暖化への影響評価・適応策立案に資する情報の創出及びアジア・アフリカ地域の水循環の理解や水資源管理に資する情報を提供することもできる。

事業スキームの効率性

 本事業の予算規模(1,191百万円)に対して、アウトプットとして、国立大学法人東京大学に本事業を委託することを通し、1ペタバイト級の大容量データ蓄積・解析処理空間を有したシステムの整備、2研究分野によって異なる用語の関連付けや多様な保存形式のデータの活用を可能とするための相互流通性を確保するための技術開発、3大容量のデータの蓄積や品質管理、4科学的・社会的に有用な情報を創出するための応用機能開発が実施されることを見込むと、本事業のインプットとアウトプットの関係は効率的と判断する。

代替手段との比較

 地球に関する観測データ等の収集、統合化、解析、提供に関わるシステムの構築は、それが地球環境問題の解決などに積極的かつ主導的に取り組むための基盤となる等の理由から、大学や独法等の個別の研究機関が主体となるのではなく、国が主体となって実施すべき事業である。本システムの開発、構築は、我が国においても他に例がなく、他の代替手段を考えることができない。欧米においては、ようやくこのシステムの重要性が認識され始めた段階で、これからこの種のシステムの研究開発を重点項目としつつある状況であり、我が国におけるこのシステム構築への先見性は高く、世界を大きくリードしている。

-- 登録:平成21年以前 --