78.橋渡し研究支援推進プログラム(拡充)

平成21年度要求額:6,100百万円
平成20年度予算額:1,750百万円

●事業の概要等

1.事業概要

 平成19年度より、公募によって採択された6拠点を対象に、以下の取組を進めている。

1 橋渡し研究を支援する機関の充実強化

自らの機関だけでなく、他の機関のシーズ開発支援も行えることを目指し、開発戦略策定等の支援を行えるよう機能を整備する等。

2 人材の確保・登用・育成

橋渡し研究が継続的に実施できるよう、生物統計家等の必要な人材を確保・登用し、育成できる体制を整備する等。

3 橋渡し研究に必要な研究費の確保

患者の安全性の担保と最終的な成果のために必要なGMP基準(医薬品等の製造管理基準)での試験物製造等の研究費を確保する等。

 平成21年度からは、現状の各拠点において必ずしも十分に措置されていない人材・体制面の強化・拡充及びGMP(Good Manufacturing Practice)、GLP(Good Laboratory Practice)基準に準拠したレベルでの設備の整備・維持等に向けた強化を行う。
 また、新たにがんや難治性疾病、生活習慣病等、国民のQOL向上において重要な疾患について、全国の大学等における基礎研究により次々と生み出される有望なシーズ(平成20年度に橋渡し拠点やがん特定領域に対して実施したアンケート調査結果だけでも、200件程度存在)を対象に公募を行い、橋渡し研究拠点を活用しつつ、臨床への橋渡し研究を実施するための研究費の支援を行う。(20〜30課題程度を想定)

2.指標と目標

  • 有望な基礎研究の成果の実用化に向けて、着実に橋渡し研究を行うことのできる拠点の体制を確立する。
  • 平成19年度に採択された6拠点は、国民のニーズの高い疾患群に関する研究に対応した特色ある支援を行える機関としてシーズの研究支援を行う。具体的には、各拠点において、現在橋渡し研究の支援を行っているシーズについて、平成23年までに2課題を治験の段階まで移行させる。
  • 第三者の有識者による評価委員会等を通じて中間評価を実施し、各課題の進捗状況等を踏まえ、課題の厳正な絞込み・重点化等を図る。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 「施策目標10−1 ライフサイエンス分野の研究開発の重点的推進」においては、「研究成果の実用化のための橋渡し」を特に重視し、国民への成果還元を抜本的に強化することが目標として掲げられており、施策目標10−1の実現には本事業の推進が必要である。
 本事業および関連施策「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」は、わが国における橋渡し研究を支援する初めての試みであり、定期的にプロジェクトの進捗等について評価、検討を行いながら進めているところであるが、現段階において、橋渡し研究を推進する上で主に次のような課題が明らかになった。

  • 1橋渡し研究拠点における研究を円滑に進めるためには、全体を管理・統括する医師、研究開発全般に精通したプロジェクトマネージャ、生物統計家、データマネージャー、薬事専門家等が必要であり、現在各拠点において、人材の確保・登用・育成に努めているものの、必ずしも十分には措置できていない。
  • 2多くの研究拠点において、細胞調製施設(CPC)等をGMP基準・GLP基準レベルで維持する経費が不足しており、それら基準に完全には対応できていない。
  • 3がんだけでなく様々な領域からも、シーズとなる優れた基礎研究の成果が毎年生み出されている。しかし、例えば非臨床試験及び臨床研究に使用するための試験物を製造する場合など、毒性や効果について厳密に評価するため、また被験者を有害事象から守るためには、GMP基準に準拠して試験物を製造することが必須であるが、十分な製剤費等の研究資金が手当できていない。

 これらの課題に対し、今後、橋渡し研究を推進するためには次の取組が必要である。

  • 1橋渡し拠点において円滑に研究開発を推進していくために必要な人材の確保について充実する必要がある。
  • 2再生医療やがん免疫療法をはじめ、様々な研究でCPC等は必須であり、GMP基準・GLP基準に準拠したレベルで整備・維持することが必要である。
  • 3橋渡し研究を強化するためには、「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」で得られたノウハウを生かしつつ、さらに充実強化した形で公的研究費助成の枠組みを継続し、がんをはじめ難治性疾患、生活習慣病などの領域も含めて、大学等における基礎研究の有望なシーズを、橋渡し拠点を活用するなどして、研究支援していく仕組みを構築していくことが必要である。

2.有効性の観点

 先駆的事業である「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」は本年度が事業終了年度であるが、6課題中5課題が臨床研究(うち一課題については治験)のフェーズに入っており、順調に目標を達成しつつある。この事業を通じて得られた橋渡し研究の知見・ノウハウを活用し、整備しつつある各拠点の機能を利活用することで本事業の目標が着実に達成されると考えられる。

3.効率性の観点

アウトプット

  • GMP,GLP基準に準拠したレベルでの拠点設備の整備
  • 橋渡し研究の支援を行う人材の確保、登用、育成できる体制の整備
  • 採択し研究資金を配分した研究課題について、ヒトに対する安全性・有効性などの概念の証明(POC:Proof of Concept)の取得

事業スキームの効率性

  • 人材育成、設備整備、研究費の確保等を充実させることにより、橋渡し拠点の体制整備が達成される
  • 先駆的事業「革新的ながん治療法等の開発に向けた研究の推進」を参考に、POC取得をアウトプットとすることが妥当
  • 中間評価を実施し、課題の厳正な絞込み・重点化等を図ることにより、橋渡し研究を効率的に推進する。
  • 知剤戦略や開発戦略の策定支援等を行うことにより、橋渡し研究支援がない状態と比べ、創薬プロセスの改善につながり、研究開発における効率的な投資や時間短縮が期待される。

代替手段との比較

 大学等において、医療に関する有望な基礎研究の成果が数多く生み出されているにも関わらず、それらをヒトに適用した場合の安全性、有効性を示せるレベルに至っておらず、実用化に向けた開発リスクが非常に高いことから、それらの橋渡し研究に対して、民間企業等からの投資を得るのは困難。このため大学等の有望な基礎研究の成果が続けて開発されずに埋没している状況であり、代替手段は存在しない。

-- 登録:平成21年以前 --