77.再生医療の実現化プロジェクト(第II期)(拡充)

平成21年度要求額:3,650百万円
(平成20年度予算額:2,000百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 ヒト幹細胞を用いた研究を通じて、細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性のある再生医療の実現化を目指し、「研究用幹細胞バンク整備領域」「幹細胞操作技術開発領域」「幹細胞治療開発領域」の3領域を設け事業を推進するとともに、ヒトiPS細胞を用いた研究を強力に実施するための拠点整備事業を実施する。

(1)ヒトiPS細胞等研究拠点の整備(拡充)

 日本発の成果であるヒトiPS細胞研究を加速するため、再生医療研究を総合的に推進できるヒトiPS細胞等研究拠点を整備する。平成21年度は、細胞の標準化、細胞誘導の技術講習会、培養トレーニングプログラムの実施、疾患特異的iPS細胞の樹立・提供を行う「iPS細胞技術プラットフォーム」の構築、及び知的財産の管理体制強化のために、平成20年度に整備したiPS細胞等研究拠点(京都大学、慶應義塾大学、東京大学、理化学研究所)に対する支援をさらに強化・拡充する。

(2)研究用幹細胞バンクの整備(既存)

 第1期で整備された臍帯血等の提供を引き続き実施するとともに、研究者のニーズに応じた新たな幹細胞を提供するバンクを整備する。

(3)幹細胞操作技術の開発(既存)

 世界をリードし、イノベーションを創出するiPS細胞等の新規細胞創出や培養・増幅技術開発等を推進する。

(4)幹細胞による治療技術の開発(既存)

 iPS細胞等の幹細胞を用いた前臨床研究レベルでの難病、生活習慣病等に対する細胞移植・組織移植技術開発を推進する。

2.指標と目標

指標

疾患特異的iPS細胞の樹立数

目標

 文部科学省が実施する他の関連施策と連携し、再生医療の実現化に向けた拠点整備等を実施し、パーキンソン病、脊髄損傷、心筋梗塞等の現在の医療では治療の難しい難病・生活習慣病に対する革新的医療技術を開発することにより、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図る。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
 昨年11月、日本の研究チームが、世界で初めて、生命の萌芽である胚を滅失することなく、成人の皮膚細胞から様々な細胞に分化する能力を持つヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作り出すことに成功したという論文が発表された。
 iPS細胞については、平成18年8月に日本の同じ研究チームがマウスの細胞からの樹立に成功して以降、ヒトの細胞での樹立に向けて国際的な競争が行われていた。我が国の研究チームの成功は、世界に誇れる日本発の成果であり、再生医療の実現に向けた大きな第1歩であるため、今回の成果を受け、国際競争が進む中で、我が国の研究を加速させ、また再生医療技術の開発などを日本全体で戦略的に進めていくことが求められている。
 係る状況の中で、文部科学省においては、科学技術・学術審議会ライフサイエンス委員会幹細胞・再生医学戦略作業部会等における議論を踏まえ、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進するヒトiPS細胞等研究拠点を整備するとともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進し、再生医療を実現化していく必要がある。
 本事業では、こうした再生医療の実現化を目指し、世界に誇る画期的な成果であるiPS細胞をさらに発展させるとともに、ヒト幹細胞を用いた前臨床研究を強力に推進し、研究成果の社会還元を図ることとしており、逸早い国民生活の向上を目指して、日本全体としての研究体制を構築して、戦略的に研究を推進する必要がある。
 なお、本研究分野は、世界的にも競争の激しい分野であり、製薬・医療機器開発等による経済の活性化、難病患者等の医療費削減効果も見込まれることから、積極的に推進する必要がある。

2.有効性の観点

 再生医療は、細胞移植や組織移植によって、これまでの医療を根本的に変革する可能性を有するものであり、難病・生活習慣病等に対して、新たな治療法を実現し、患者のQOLと国民福祉の向上をもたらす先端医療である。
 このため、再生医療の実現化を目指す本事業により、先端的医療の実現に資する知見の蓄積、技術の開発、またそれに必要な環境の整備を図ることが可能となり、細胞治療に加え、様々な疾患の原因解明や創薬に応用できる可能性への道を開くことにより、目標の達成が見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

 細胞移植・組織移植によってこれまでの医療を根本的に変革する可能性のある再生医療を実現化すべく、ヒトiPS細胞を中心に、ヒトES細胞、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療研究を総合的に推進できる研究体制を有する拠点を整備するともに、幹細胞の操作技術に関する開発等を推進する。

事業スキームの効率性

 本事業については、幹細胞・再生医学戦略作業部会における議論等を踏まえ、他の関連施策との役割分担を明確にしつつ、拠点による取組と個別課題による取組を連携させることとしている。加えて平成20年4月には、大学及び理化学研究所並びに各省庁の研究機関を含むiPS細胞等研究ネットワークが立ち上げられ、iPS細胞研究に関する効果的かつ有機的な連携体制が構築された。さらに平成21年度には「iPS細胞技術プラットフォーム」の構築に向けて、iPS細胞等研究拠点(京都大学、慶應大学、東京大学、理化学研究所)に対する支援を強化することによって、より集中的かつ効率的な研究の推進体制を確保することが可能となり、事業スキームの効率性は担保される。

代替手段との比較

 再生医療の実現化プロジェクトでは、国直轄のプロジェクトとして幹細胞を用いた再生医療の実現を目的とし、ヒト応用の技術開発のため、幹細胞バンクの整備や幹細胞操作技術の開発、幹細胞治療法の開発を目指しており、臨床応用を見据えた施策である。一方、理研CDBでは、発生・再生のメカニズムに関する基礎研究の推進を目的として、動物等を用い、発生・再生のメカニズムの原理の解明を目指している。またJSTのCREST・さきがけでは、iPS細胞を基軸とした細胞リプログラミング技術の開発のような革新的医療に資する基礎研究・基盤技術の構築を目指す研究を対象としている。
 さらに、再生医療の実現化プロジェクト(理研CDB含む)及びJSTのCREST・さきがけ等で構成される「iPS細胞等研究ネットワーク」において、知的財産権、研究成果の公開、機密保持等の観点に関する共通的なルールを定めることによる、iPS細胞等研究を基礎研究から前臨床研究までを包括した一貫性のある施策である。

-- 登録:平成21年以前 --