平成21年度要求額:606百万円
(平成20年度予算額:−百万円)
産学官の研究機関及び博物館等によるコンソーシアムを公募し、五感に訴えるよりリアルなコンテンツを三次元空間中に時系列で構築し、ユーザに提示し、さらに、ユーザの状況をリアルタイムにセンシングしてユーザの反応にその場で応答するようなシステムを構築するための研究開発を実施する。このシステムの構築を通し、個別技術を統合して疑似体験を提供するような、高度な複合情報処理技術を創出する。
より具体的には、主に以下の内容を実施する。
要素技術のデモシステムにおける機能レベルまたは性能レベル
3次元計測、3次元映像、立体音響、触覚ディスプレイ等の視覚・聴覚・触覚等のセンシング・提示技術を確立し、各要素技術を統合してインタラクティブに文化を擬似体験可能なデモシステムを1件構築し、公開する。
デジタルミュージアムの構築に必要となる要素技術が研究計画に即した形で実現されていること及びこれらを統合した高度なデモシステムが構築されていることを評価・検証する。
本事業は、既に失われ、又は現在失われつつある文化をより現実に近い形で保存するとともに人々に体感してもらうことを可能とするシステムの実現のための研究開発であり、ここで得られる研究成果は、技術的観点はもとより、文化的観点、教育的観点等からも波及効果が大きい。
また、EUでは「フレームワーク計画」(Framework Programme)の第6次及び第7次における研究領域であるDigiCult(Digital Heritage and Cultural Content)において、文化的・科学的資源の保存(デジタル化)とVR(バーチャルリアリティ)・画像認識・位置検出等の先進技術を活用した映像展示が推進されているほか、米国においても、スミソニアン博物館において3次元計測と3次元CG表示を行う等、関連技術を展示に応用する取組が行われているところであり、より先進的な文化発信システムの構築に向けた研究開発を他国に先駆けて我が国において実施することにより、関連技術の競争力を維持・向上することが期待される。
大型ディスプレイ開発技術やロボット開発技術等のものづくり技術、コンピュータビジョンに代表されるセンシング技術、インタラクティブ3D技術を含むユーザ・インタフェース技術等、本研究事業に関連した要素技術は、日本が強い分野である。
特に、VR(バーチャルリアリティ)技術に関しては、研究者を束ねる学会を持っているのは日本だけであり、SIGGRAPH等国際学会における実空間表示系では、わが国の存在感が際だっている。触覚インタフェース分野でも、東京大学のほか、東京工業大学、大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所等が国際会議で活発な発表を行っている。また、立体映像表示、表示映像とのインタラクション、触角ディスプレイ等については東京大学等が世界各国に特許を出願している。
このように、他国と比較しても高度な技術が我が国にあることから、これらを統合したシステムを構築しようとする本事業の目的達成可能性は高い。
本事業では、達成年度までに、複数の要素技術から成る実験用デモシステムを構築することを目指す。
初年度は、産学官の研究機関及び博物館等によるコンソーシアムを形成し、コンテンツのコンセプト検討およびデモシステム全体の構成の検討を行い、各要素技術の開発を進める。3年目終了時には、中間アウトプットとして、機能を限定したデモシステムの完成を目指す。中間アウトプットの評価結果も踏まえてさらに要素技術開発を進め、達成年度には高機能化されたデモシステムの構築が実現する予定である。
本事業は、単独の機関では実施が難しい要素技術のシステム化のための研究開発を、個々の要素技術の高度化を図りつつ戦略的に行うものであり、現在個々に行われている要素技術開発を研究者に任せて順次統合する方法や、現在公開されている要素技術のレベルに合わせてシステム化する方法よりも、高度なシステム構築を効率的に行うことができる。
本事業で取り組む個々の技術開発の一部は、現在大学/民間等様々な機関でも実施されている。これに対し、本事業は、個々の機関で取り組むことが困難な、個別の研究理論を組み合わせた複合情報処理技術の研究開発や、統合システム構築に関する研究開発を目指している。異なる機関が一体となって取り組まなければ推進が難しいという点において、単なる投資増では解決が困難であり、現状代替手段は存在しないと言える。
-- 登録:平成21年以前 --