26.スクールカウンセラー等活用事業費補助(拡充)

平成21年度要求額:3,665百万円
(平成20年度予算額:3,365百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 いじめや不登校、暴力行為などの児童生徒の問題行動等は依然として教育上の大きな課題であり、児童生徒の悩みに対して、適切かつ迅速に対応し、児童生徒が安心して学習に取り組むことができるよう学校内外の教育相談体制の充実を図る必要がある。
 本事業は、学校におけるカウンセリング体制の充実を図るため、臨床心理に関して高度に専門的な知識・経験を有するスクールカウンセラー等の配置や、悩みを抱える子どもたちがいつでもどこでも相談できる24時間電話相談体制の整備に必要な経費を都道府県・指定都市教育委員会に補助(1/3補助)し、教育相談体制の充実を図るものである。
 なお、平成13年度より、以下により、全公立中学校へのスクールカウンセラーの配置を計画的に進めてきたところである。

年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度
中学校配置校数 2,634 3,460 4,778 5,969 7,047 7,692 集計中
公立中学校数 10,429 10,392 10,358 10,317 10,238 10,190 10,150 調査中
配置率 25.3パーセント% 33.3パーセント% 46.1パーセント% 57.9パーセント% 68.8パーセント% 75.5パーセント%

 小学校については、平成20年7月に閣議決定された教育振興基本計画において、今後5年間に総合的かつ計画的に取り組むべき施策のうち、特に重点的に取り組むべき事項として、「教育相談等を必要とするすべての小・中学生が、スクールカウンセラー等による相談等を受けられるよう促す。」とされていることから、平成20年度に新たに配置した約1,000校の成果の検証を行い、中学校と同様に全公立小学校(約2万校)への配置を計画的に進めていく。
 なお、平成21年度においては、「平成18年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」において、いじめ認知学校数及び不登校児童生徒の在籍校数が、ともに約10,000校あることから、その1/5にあたり、かつ、全公立小学校の10パーセントである2,000校に配置し、近隣校への支援や効果の波及を行い、効果的な教育相談体制の充実を図る。

2.指標と目標

【指標】

  • 1 「いじめに起因する事件」において、被害少年が相談しなかった割合
  • 2 いじめの認知件数に占める、いじめの解消しているものの割合
  • 3 いじめの認知件数に占める、いじめられた児童生徒が誰にも相談していない件数の割合
  • 4 学校におけるいじめの問題に対する日常の取組のうち、地域の関係機関と連携協力した対応を図った学校数の割合
  • 5 不登校児童生徒数に占める、指導の結果登校する又はできるようになった児童生徒の割合
  • 6 不登校児童生徒数に占める、学校内外の相談機関等で相談、指導、治療を受けた児童生徒の割合

【参考指標】

文部科学省調査「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等

【目標】(現状から目標)

115.0パーセントから15パーセント未満、280.9パーセントから90パーセント以上、310.2パーセントから10パーセント未満、414.5パーセントから30パーセント以上、530.4パーセントから40パーセント以上、665.6パーセントから70パーセント以上

【効果の把握手法】

 本事業の効果は、毎年、文部科学省で実施している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」等の結果に基づいて検証する。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 いじめ、不登校、暴力行為等の児童生徒の問題行動等については、依然として相当数に上るなど、憂慮すべき状況であり、教育上の大きな問題であり、そのため施策目標2−3「児童生徒の問題行動等への適切な対応」では、「学校・家庭・地域社会が一体となって、学校における暴力行為・いじめ等の問題行動及び不登校を解決する」とされている。現状、スクールカウンセラーの配置についても、人材の不足や偏在、財政状況等の理由によって活用状況が異なっていること、スクールカウンセラーの活用の仕方は校内組織の在り方、教職員の意識の差などにより、教職員とスクールカウンセラーの連携が不十分である場合が多く、「教育相談等に関する調査研究協力者会議」でも指摘されている。しかし、スクールカウンセラーについては、教育振興基本計画において「教育相談を必要とするすべての小・中学生が、スクールカウンセラー等による相談等を受けられるように促す」とされており、他にも多くの答申等においてその必要性が提言されている。
 「24時間いじめ相談ダイヤル」についても同様である。
 こうした状況を踏まえ、問題行動等への適切な対応をするために、地方公共団体の取組を支援する本事業が必要である。

2.有効性の観点

 本事業は児童生徒の問題行動等に適切に対処し、その解決を図る目的で、学校内外の教育相談体制の充実を図るため、スクールカウンセラー等の配置、24時間電話相談体制の整備を行うものである。本事業では文部科学省で実施する「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」等に基づく各種指標を用いてそれぞれの指標に対する目標を達成することを目指している。
 なお、スクールカウンセラー等配置については、平成18年度において全公立中学校(約1万校)に対し、7,692校の配置となっている。このことは、スクールカウンセラーは児童生徒の問題行動等への対処のみならず、自然災害や事件・事故の被害にあった児童生徒に対する緊急時の心のケアを担っており、その対応などから特別な事情のある小学校・高等学校にも配置されて有効に活用されているためである。教育振興基本計画にもあるとおり、今後においても引き続き全公立中学校への配置を進めるとともに、災害や事件・事故の被害児童生徒に対する緊急支援などを進めることで、すべての指標に対する目標が達成できると見込まれる。

3.効率性の観点

アウトプット

 本事業では、公立小学校2,200校(全公立小学校の約10パーセント)、公立中学校約10,000校(全公立中学校)にスクールカウンセラーを配置するとともに、全都道府県・指定都市において24時間いじめ相談の体制を整備する。本事業によって、地域の差をなくし、全国すべての子どもたち及び保護者のために教育相談体制が整備・充実される。

事業スキームの効率性

 本事業の予算規模に対して、アウトプットとして、公立小学校2,200校、公立中学校約10,000校にスクールカウンセラーを配置し、全都道府県・指定都市に24時間のいじめ相談の体制を整備することを通して、教育相談等を必要とする子どもたちが教育相談を受けられるようになる。さらに、地方公共団体が地域や学校の実情に応じた教育相談体制を整備するためにも、国が教育水準の維持・向上のため一定額を補助するこの事業スキームが効率的かつ効果的と判断される。
 このことは、不登校の児童生徒が登校できるようになった割合が増加傾向にあること、その理由として「指導の結果登校するようになった児童生徒に特に効果があがった措置」としてスクールカウンセラー等が専門的に指導に当たったことを挙げた学校が多いことや、「いじめの発見のきっかけ」として、スクールカウンセラー等が発見している学校が多数あることなど問題行動等の解消に関するデータからも示されている。

代替手段との比較

 教育相談は、子どもたちや保護者に一番身近な場所において、一元的に行われるべきものであり、また、教育相談は、学校内の教職員が連携して、さらには地域及び関係機関と連携して行うことが望ましい。こうしたことを踏まえて、国は全国の教育水準・条件を向上させるため、地方公共団体に財政支援する方法が適切である。

-- 登録:平成21年以前 --