14.全国的な学力調査の実施事業(拡充)

平成21年度要求額:6,251百万円
(平成20年度予算額:6,184百万円)

●事業の概要等

1.事業概要

 義務教育における機会均等や全国的な教育水準の維持向上の観点から、すべての児童生徒の学力や学習状況を把握するための全国学力・学習状況調査を継続的に実施するとともに、調査結果の徹底的な検証・分析を行い、国の教育施策の改善に活用する。また、課題が見られる学校の改善への支援方策の研究など、調査結果を検証・活用するための実践研究を一層進め、調査結果の効果的な活用を促すとともに、優れた改善策の普及を図るための取組を進める。
 平成21年度については、1全国学力・学習状況調査、2学校改善推進事業については、昨年度に引き続き着実に実施するとともに、3国の教育施策等の一層の改善を図るため、大学等の研究機関を対象に、国の重要な政策課題に関し、高い専門性が求められる分析・検証や関連する調査研究である「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」、4全国的な状況から見られる課題の解決を図ろうとする地域を対象に、全国学力・学習状況調査を活用して域内の学校における教育施策等の改善策を定めたアクションプランを推進する実践研究である「学力調査活用アクションプラン推進事業」を新たに実施することとしている。
 なお、上記事業の推進にあたっては、全国学力・学習状況調査の問題作成や主に教科や指導法に関する分析を中心に既に国立教育政策研究所と連携して実施しているが、上記34の新規事業の実施に関しても、国立教育政策研究所の研究機能を活用しつつ事業を行うこととしている。

2.指標と目標

 本事業は、全国学力・学習状況調査を円滑かつ確実に実施し、調査結果について分析・検討を行うほか、教育委員会、学校等における調査結果の活用を促すなど、国・地方における検証改善サイクルの確立に向けた取組を進めることを目的としている。
 全国学力・学習状況調査の実施については、国、教育委員会、学校等において調査結果を活用して教育施策や教育指導等の改善が進められているかどうかについて、本調査の質問紙調査等により測定・把握する。また、円滑かつ確実に実施されたかどうかについては、1所定の日に調査を実施し、調査結果の提供が遅滞なく行われたか、2問題冊子の発送や答案の回収、調査結果の提供がトラブルなく行えたかなどにより、判断することとなる。
 学校改善推進事業の効果については、全国学力・学習状況調査の質問紙調査等を通じて、全国学力・学習状況調査を活用した学校改善への取組の状況について把握を行うとともに、実践研究の研究対象となった学校において設定した課題について改善が図られ、成果の普及が行われたか把握を行う。
 学力調査活用アクションプラン推進事業の効果については、全国学力・学習状況調査の教科に関する調査や質問紙調査等の結果などにより、設定したテーマについて改善が図られたか把握を行う。

●事業の事前評価結果

1.必要性の観点

 我が国の児童生徒の学力については、平成19年度全国学力・学習状況調査において知識・技能を活用する力等に課題が見られた。また、国際的な学力調査(PISA調査、TIMMS調査)の結果においても、読解力や記述式問題に課題があるとともに、数学的リテラシーの得点の低下が見られるなどの状況にあり、児童生徒の学力向上を図ることが強く求められている。このため、教育振興基本計画においても、世界トップの学力水準を目指すこと等が目標として示されている。
 また、国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や教育水準が確保されているかどうかをきめ細かく把握・分析し、国における教育の成果と課題などの結果を検証し、施策等の改善につなげるとともに、教育委員会や学校等における教育に関する検証改善サイクルを確立することを通じて、義務教育の質を保証する仕組みを構築していくことが求められている。
 このため、教育に関するPDCAサイクルを国・教育委員会・学校の各段階においてしっかり行い、さらに、児童生徒一人ひとりの学習改善や学習意欲の向上に資するために、特に悉皆規模で毎年継続した学力・学習状況に関するする調査を行うことが必要である。
 なお、得られた調査結果についても、その最大限の活用を図ることが重要であり、優れた改善の取組の普及等により調査結果の積極的な活用を推進していく必要がある。

2.有効性の観点

 平成19年度の全国学力・学習状況調査については、小学校第6学年、中学校第3学年の237万4千人(小学校調査:117万7千人、中学校調査:119万7千人)を調査対象に調査を実施し、平成19年10月にその調査結果について公表した。また、「学力調査の結果に基づく検証改善サイクルの確立に向けた実践研究」を実施し、すべての都道府県・指定都市において「学校改善支援プラン」を策定した。
 平成20年度については、2回目となる全国学力・学習状況調査を、小学校第6学年、中学校第3学年の232万3千人(小学校調査:118万7千人、中学校調査113万6千人)を調査対象に円滑に実施し、公表に向けた採点・集計等の作業を進めているところである。また、「学校改善支援プラン」等を踏まえた、調査結果を活用し、学力や学習状況調査等に課題の見られる学校の改善に向けた具体的な取組に関する実践研究である「全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る実践研究」を順調に進めているところである平成21年度拡充事業と合わせた取組の一層の推進により、目標については十分に達成可能であると考えられる。

3.効率性の観点

アウトプット

  • 国の責務として果たすべき義務教育の機会均等や教育水準が確保されているかについて、きめ細かく把握・分析する。
  • 各教育委員会、学校等に、全国的な状況との関係において自らの教育の結果を把握し、教育指導の改善を図る機会を提供する。
  • 学校改善推進事業等により、地域や学校の実情に応じた優れた改善策が蓄積され、地域における検証改善サイクルの取組が進められる。

事業スキームの効率性

 全国学力・学習状況調査については、記述式問題を含めた出題としており、教育現場への負担軽減の観点から、民間の力を活用し、効率的に採点・集計を行っている。さらに、調査結果については、個々の児童生徒の学習改善に資するため、調査結果を記した個人票を作成・提供することとしている。
 また、調査結果については、徹底的な活用を図ることが効率性の観点から重要であり、全国的な課題の改善に関する委託研究や学校改善推進事業等において徹底的な活用を図り、その成果については、成果報告会や全体を取りまとめた報告書の作成、各地域における普及・啓発活動等により、広く周知を図ることとしていている。

代替手段との比較

 本調査の1国が、全国的な義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国学力・学習状況調査を実施して、各地域における児童生徒の学力・学習状況をきめ細かく把握・分析することにより、教育及び教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図ること、2各教育委員会、学校等が、全国的な状況との関係において自らの教育及び教育施策の成果と課題を把握し、その改善を図るとともに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること、3各学校が、各児童生徒の学力や学習状況を把握し、児童生徒への教育指導や学習状況の改善等に役立てること、という目的を達成するためには、対象学年のすべての児童生徒を対象とした調査を毎年実施する必要があり、現行の方式以外では達成できない。

-- 登録:平成21年以前 --