3.規制に関する評価

規制名 新しい教育課程の実施に伴う義務教育諸学校の教科用図書の採択に係る特例措置
【主管課:初等中等教育局教科書課】
【関係課:】
評価結果の概要 1.規制の目的、内容及び必要性等
【現在の制度】
 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第14条の規定により、義務教育諸学校(小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部)において使用する教科用図書については、政令で定める期間、毎年度、種目ごとに同一の教科用図書を採択することとなっており、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令第14条第1項の規定により、「政令で定める期間」を4年としている。これは、教育計画の継続性を確保する等の観点から、同一の教科用図書を一定期間継続して採択することとしたものであり、また、編集、検定、採択、発行という教科用図書作成のサイクルを考慮して「4年」と定められているものである。
 現行学習指導要領に基づいて編集された教科用図書については、小学校用は平成20年度に、中学校用は平成21年度に採択替えを行うこととなっているため、同一の教科用図書を採択する期間(以下「採択期間」という。)は、小学校用は平成20年度から平成23年度まで、中学校用は平成21年度から平成24年度までの4年間となる。しかしながら、平成20年3月に小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領が改訂され、小学校学習指導要領については平成23年度から、中学校学習指導要領については平成24年度から実施されることに伴い、新教育課程に対応した教科書を新たに採択する必要が生じることとなる。

【改正の内容】
 教育課程の基準の変更に伴い、採択期間内において採択した教科用図書(以下「既採択教科用図書」という。)の発行が行われないこととなった場合その他の文部科学省令で定める場合には、4年間の採択期間内であっても既採択教科用図書以外の教科用図書を採択することができることとする。

【規制の必要性】
 同一の教科用図書を採択する期間内に採択した教科用図書の発行が行われないこととなった場合等には、当該採択期間にかかわらず、採択替えを行うことができるよう採択の特例を定める必要がある。
 仮に、本件政令改正により、採択期間内であっても採択替えができる旨を明確に規定しなかった場合は、法令上採択期間は4年とされているため、新教育課程の実施後に学校現場において新学習指導要領に基づいた教科書を使用することができなくなる。

2.法令の名称・関連条項とその内容
 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)

3.想定される代替案
 想定できる代替手段が存在しない。

4.規制の費用
 (遵守費用)
 採択権者(公立学校では所管の教育委員会、国・私立学校では学校長)及び都道府県教育委員会における採択関連業務の実施期間の変更に伴う費用(但し、これは平成20年3月に小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領が改訂されたことに伴うものであり、本政令改正固有の費用ではない)。
(行政費用)
 特段発生しないものと考える。
(その他の社会的費用)
 特段発生しないものと考える。

5.規制の便益
 小学校用教科書については平成22年度、中学校用教科書については平成23年度に採択替えが行われることにより、新教育課程の実施開始とともに新学習指導要領に基づいて編集された教科用図書が支障なく無償給与される。
 新教育課程の実施開始とともに新学習指導要領に基づいて編集された教科用図書が支障なく給与されることにより、新学習指導要領の円滑な実施が可能となる。

6.政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
 当該規制に関する政令改正は妥当。
評価結果の政策への反映状況  政策評価の結果を踏まえ、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令の一部改正を行った。
規制名 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律施行令案
【主管課:初等中等教育局教科書課】
【関係課:】
評価結果の概要 1.規制の目的、内容及び必要性等
【背景】
○ 平成20年6月18日に「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成20年法律第81号。以下「教科用特定図書等普及法」という。)」が公布され、同法附則第1条により公布の日から3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。

○ 同法は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等(※1)の発行の促進を図るとともに、その使用の支援について必要な措置を講ずること等により、教科用特定図書等の普及の促進等を図り、もって障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資することを目的とするものであるが、同法第13条及び第15条において、教科用特定図書等の無償給付及び給与の実施に関する都道府県教育委員会の必要な事務並びその他必要な事項については政令で定めるものとされていることから、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律施行令(以下「教科用特定図書等普及法施行令」という。)を制定する必要がある。
 なお、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」については、議員立法であることから、規制評価は実施していない。

※1  「教科用特定図書等」とは、視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため文字、図形等を拡大して検定教科用図書等を複製した図書、点字により検定教科用図書等を複製した図書その他障害のある児童及び生徒の学習のように供するため作成した教材であって検定教科用図書等に代えて使用し得るものをいう。

【教科用特定図書等普及法施行令の概要】
<実施機関>
○ 教科用特定図書等の無償給付に関する事務は、実施機関(※2)が行うものとし、実施機関は、教科用特定図書等を発行する者(以下「教科用特定図書等発行者」という。)から教科用特定図書等を受領したときは、小中学校の設置者に対して直ちにこれを給付する。(第1条)

○ 実施機関は、教科用特定図書等を受領したときは、受領報告書を都道府県教育委員会に提出するとともに、受領証明書を教科用特定図書等発行者に交付しなければならない。(第2条)

<教科用特定図書等発行者>
○ 教科用特定図書等発行者は、実施機関に対し、教科用特定図書等を納入しなければならない。(第1条)

○ 教科用特定図書等発行者は、実施機関から受領証明書の交付を受けたときは、文部科学省令で定めるところにより納入冊数集計表(都道府県ごとに教科用特定図書等の納入冊数を集計した書類)を作成し、受領証明書を添えて当該都道府県教育委員会に提出しなければならない。(第3条)

<小中学校の設置者>
○ 小中学校の設置者は給与名簿の作成し、給与児童生徒数を都道府県教育委員会へ報告しなければならない。(第5条)

※2 公立の小中学校(小学校及び中学校(中等教育学校の前期課程を含む。)をいい、学校教育法第81条第2項及び第3項に規定する特別支援学級を除くものをいう。以下同じ。)については当該小中学校を所管する教育委員会、私立の小中学校については当該私立学校を所管する学校法人の理事長、国立大学に附属して設置される小中学校については当該国立大学の学長をいう。

【規制の必要性】
○ 教科用特定図書等の無償措置の円滑かつ確実な実施を確保するためには、無償措置に関係する諸機関等が相互に協力して事務を遂行する仕組みが必要となる。

○ 本施行令は、実施機関が国に代わって無償給付及び給与の事務を行うこととしているが、国は各小中学校ごとの教科用特定図書等の必要部数などを個々に十分了知することは困難であり、教育委員会、学校法人の理事長、国立大学の学長に教科用特定図書等の受領の事務や無償給付の手続を委任することが実際的かつ最も適切であること等から、本施行令において必要な規定を設けることとした。
 なお、検定教科用図書については、「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令(昭和39年政令第14号)」において、教科用特定図書等普及法施行令と同様の手続により無償給与を行っているところである。

2.法令の名称・関連条項とその内容
 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律施行令案

3.想定される代替案
 教科用特定図書等の無償給付及び給与に関する実施機関が行う事務について、国が直接行うこととすることが考えられるが、当該事務を直接国が行うこととした場合、
1)国は小中学校ごとの教科用特定図書等ごとの必要部数や必要とする時期などを個々に了知することができないこと、
2)教科用特定図書等発行者から国が直接各地において現品を受領するのは極めて困難であること、
から、教科用特定図書等の無償措置が不可能となることが想定されるため、妥当でない。

4.規制の費用
(遵守費用)
 実施機関、教科用特定図書等発行者、小中学校の設置者が行うこととされる教科用特定図書等の無償給付及び給与に関する事務の新設に伴う費用。(行政費用)
 従来予算措置により実施していた教科用特定図書等の無償措置を法的措置にすることに伴う費用。(その他の社会的費用)特段発生しないものと考える。

5.規制の便益
 実施機関、小学校及び中学校の設置者、教科用特定図書等発行者の教科用特定図書等の無償給付及び給与に関する事務を規定することにより、教科用特定図書等の無償措置の円滑かつ確実な実施の責務を果たすことができる。
 従来予算措置により実施していた教科用特定図書等の無償給付及び給与が法令により担保されることにより、障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進が図られる。

6.政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
 上記の規制の便益分析及び規制の費用分析を考慮した結果、規制により発生する費用より規制により得られると見込まれる便益が大きいと考えることができる。
 従って、当該規制を新たに設けることについては妥当であると判断する。
評価結果の政策への反映状況  政策評価の結果を踏まえ、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律施行令を制定した。
規制名 原子力事業者が講ずべき損害賠償措置に係る規制の改定
【主管課:研究開発局原子力計画課】
【関係課:】
評価結果の概要 1.規制の目的、内容及び必要性等
(総論)
○ 損害賠償措置の義務付けは、被害者の保護という観点から、万が一原子力損害が発生した場合に、原子力事業者による迅速かつ確実な賠償の履行のために基礎的資金をあらかじめ確保しておくという意義を有しており、国民の理解を得ながら原子力利用を進めるための基盤として不可欠のものとなっている。他方、損害賠償措置は原子力事業者にとっても、偶発的に莫大な賠償債務を負う潜在的な危険性が経常的な費用に置き換えられることにより、原子力関係事業の合理的な経営にも資する。
1)賠償措置額の引上げ
 今回の見直しに当たっては、前回の改正(平成11年5月)後に発生したJCO臨界事故における損害賠償や、原子力損害賠償制度に関する国際水準、民間保険市場における原子力損害賠償責任保険の引受能力等を勘案した。
 我が国初の原子力損害の賠償事例であるJCO臨界事故では、小規模な加工施設での事故ながら、賠償総額は約150億円、賠償対象は約7,000件にのぼり、原子力損害賠償責任保険契約の保険金(当時の賠償措置額は10億円。その後120億円に改正済。)をはるかに超え、会社の資産を含めても賠償資力が不足したため、原子力事業者は親会社の支援を受けて賠償を履行することとなった。国際水準としては、欧州原子力先進国間で締結されている原子力損害賠償に関する国際条約であるパリ条約において、平成16年に改正議定書が採択され、賠償措置額が7億ユーロに引き上げられている。我が国の民間保険市場における引受能力は、1,200億円の保険を引き受けることができるまでに拡大した旨、報告されている。
 こうした点を勘案し、今回、賠償措置額を1,200億円に引き上げることとする。
2)賠償措置額の合理化による新たな特例額の創設
 事業行為が終了した後に事業所内で行われる付随行為に係る現行の損害賠償措置は、主たる事業行為と一体的な取扱いとなっており、事業行為の種類によっては、付随行為のみの相対的リスクに比して賠償措置額が過大となっている。
 現段階では、既に廃止措置が行われている原子炉が複数あり、将来的にも運転の終了が本格化することが見込まれているほか、一定量以上の核燃料物質の使用に該当する事業行為が終了しているサイトが複数あるため、これらの付随行為に係る賠償措置額を合理化する必要がある。
3)原子力損害賠償補償契約に係る補償料率の引下げ
 原子力損害賠償補償契約における補償料率は、これまで改定されたことがないが、原子力発電所の運転実績が積み重ねられ、制度創設時に算出の基礎とした知見及びデータに変化が生じていることから、1.の賠償措置額の引上げに伴ってその乖離をさらに拡大することのないよう、より適切な水準への引下げを行う必要がある。

2.法令の名称・関連条項とその内容
1)賠償措置額の引上げ:
 原賠法第7条第1項、原賠法施行令第2条
2)賠償措置額の合理化による新たな特例額の創設:
 原賠法施行令第2条
3)原子力損害賠償補償契約に係る補償料率の引下げ:
 補償契約法施行令第3条第1項

3.想定される代替案
(総論)
○ 万が一の原子力事故が放射線、放射能等による被害が生命、身体傷害のみならず、地域の社会経済全般に広範な被害をもたらし得ることからすれば、安全確保の徹底を図ったとしても、原子力の特性に対応して被害救済の確保を図るための充実した特別の賠償制度の必要性がなくなることは考えられない。
○ 原子力損害賠償制度の柱である損害賠償措置については、代替する仕組みとして、例えば米国の制度のように、原子力事業者による事業者共済というような形で、賠償額を事業者間の相互扶助により補完することも考えられる。しかし、現時点では、原子力事業者においてその様な制度構築を目指す動きは具体化していないことや、我が国と米国の制度の相違、原子力事業の実態の相違等との関係が明らかでないことを踏まえれば、現時点では現実的な代替手段とみなすことはできず、中長期的な検討課題にとどまる。なお、仮にこうした措置が実現する場合でも、現行制度下においても、損害賠償措置として認められる余地はある。
(各論)
1)賠償措置額の引上げの代替手段としては、(1)現行の賠償措置額を変更しないこと、(2)今回の改定(2倍)以上に引き上げることが考えられるが、(1)については、国際水準との比較において原子力先進国に劣る額となり、損害賠償措置の充実の要請に反し適切ではなく、(2)については、現在の民間保険会社の引受能力の限度を超えるため、原子力損害賠償責任保険契約が成立しないため採用し得ない。
2)新たな特例額の創設の代替手段としては、(1)現行の賠償措置額の枠組みを変更せず、新たな特例額を創設しないこと、(2)今回創設する特例額とは異なる特例額を創設することが考えられる。(1)については、過大な賠償措置額に伴う保険料・補償料の支出を原子力事業者に強いるため、適切ではない。また(2)については、付随行為のみの相対的リスクと同等のリスクの事業行為に係る特例額と異なる額を設けることとなり、事業者間の不公平を生じ適切でない。
3)補償料率の引下げの代替手段としては、現行の補償料率を変更せず、現行料率をこのまま維持することが考えられる。補償損失の発生見込みや事務取扱費等の低下が見込まれるにもかかわらず、これらを反映しなければ、これらを勘案して補償料率を定めるとする補償契約法の趣旨に反することとなり、適切ではない。

4.規制の費用
(遵守費用)
1)-a 賠償措置額の引上げによる原子力事業者の保険料・補償料の支出の増加
○ 保険料:原子力損害賠償責任保険契約は民間における契約であり、海外の再保険市場を含む保険市場において保険料が定まるため、現時点において改定後の保険料を算出することは困難である。なお一般に、保険金額の増額に伴い保険料率は逓減するため、賠償措置額が2倍になっても保険料は2倍になることはないと見込まれる。
○ 補償料:原子力損害賠償補償契約の補償料は以下のとおり増加するが、補償料率の引下げにより、賠償措置額の引上げ比率よりも少ない増加率にとどまる。
・600億円×5/10000=3000万円 → 1200億円×3/10000=3600万円
・120億円×5/10000=600万円 → 240億円×3/10000=720万円
・20億円×5/10000=100万円 → 40億円×3/10000=120万円
1)-b 賠償措置額の引上げによる民間保険会社の負担
 原子力損害賠償責任保険契約の対象となる原子力損害が発生した場合、民間保険会社が支出しうる保険金は最大で1200億円まで増大する。これを確保するため、海外における再保険確保のための事務コストが必要となるが、同時に、原子力事業者の付保額の増額に伴う相当程度の増収もあり、これらを相殺すれば、保険会社に特別な経済的負担が生じるとは考え難い。
(行政費用)
1)賠償措置額の引上げによる予算上の対応等
 原子力損害賠償補償契約の対象となる原子力損害が発生した場合、政府が支出しうる補償金は最大で1200億円まで増大する。これを確保するため、一般会計予算総則に定められる原子力損害賠償補償契約の締結限度額に、新規契約の契約金額や契約更新に伴う契約金額の増加分を積算計上する必要が生じる。また、賠償措置額の増額に伴う契約変更等の事務手続が一時的に発生することが見込まれる。
2)特例額の創設による報告徴収・立入検査
 賠償措置額の合理化に伴って創設する新たな特例額については、炉心からの燃料取出し等に係る所要の事実を確認する必要があるため、原子力事業者からの申請に応じ、追加的に報告徴収・立入検査のための行政費用が発生することが見込まれる。
(その他の社会的費用)
○ 今回の改定においては、損害賠償措置額を現行の2倍に引き上げることになるため、上記遵守費用1 -aのとおり、電力会社をはじめとする原子力事業者の費用負担が増加することが見込まれ、それらが最終的に電気料金に転嫁される可能性がある。ただし、今回の改定による費用負担の増額分は、原子力事業者の経常費用全体に比して非常に小さいため、影響はごく軽微であると見込まれる。また、過去における同様の改定において、電力料金の改定がなされたことはない。

5.規制の便益
1)賠償措置額の引上げによる原子力関連事業の円滑な推進
 あらかじめ適切な金額の損害賠償措置を講じさせることにより、万が一原子力損害が発生した場合に巨額の損害賠償債務を負担することとなりうるという原子力事業者の資金リスクを保険市場に転嫁することにより、原子力関連事業の円滑な推進に資する。
2)・3)特例額の創設・補償料率の引下げによる原子力事業者の保険料・補償料の支出の低減
○ 保険料:原子力損害賠償責任保険契約は民間における契約であるため、現時点において改定後の保険料の算出は困難であるが、付保額の低減に応じた保険料の低減が想定される。
○ 補償料:原子力損害賠償補償契約の補償料は以下のとおり低減する。
【原子炉の運転(熱出力1万kW超)の場合】
(現行)
廃止措置完了まで :600億円×5/10000=3000万円
(改定後)
炉心からの燃料取り出し後:240億円×3/10000=720万円
燃料のサイト外搬出後 :40億円×3/10000=120万円
【原子炉の運転(熱出力100kW超)の場合】
(現行)
廃止措置完了まで :120億円×5/10000=600万円
(改定後)
燃料のサイト外搬出後 :40億円×3/10000=120万円
1)賠償措置額の引上げによる被害者の保護の充実
 万が一原子力損害が発生した場合における原子力事業者の基礎的な賠償原資を確保することにより、原子力損害を被った被害者のより迅速な救済が可能となる。

6.政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
 上記の便益分析及び費用分析を踏まえ、今回の原子力損害賠償関連法令の改正による原子力事業者が講じるべき損害賠償措置に係る規制の改定は適切である。
評価結果の政策への反映状況  「原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案」が第171回国会にて成立。平成22年1月1日に施行となった。
規制名 放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に関する規制
【主管課:科学技術・学術政策局原子力安全課】
【関係課:】
評価結果の概要 1.規制の目的、内容及び必要性等
<クリアランス制度の導入>
(目的・内容)
○ 放射性同位元素を使用する施設等から発生する放射性廃棄物の中には、その放射能濃度が十分に低く、放射性廃棄物として取り扱う必要のないものが存在する。これらについて、国又は登録機関の確認を受けたうえで放射性廃棄物としての規制を免除(クリアランス)する制度を導入する。
○ 制度の詳細は以下の通りである。
1 事業者がクリアランス対象物の測定・評価方法を設定し、国が認可
2 事業者が、認可された方法に基づいてクリアランス対象物の測定・評価を行う
3 国又は登録機関が、測定・評価結果を確認
4 確認後、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)等に基づく適正処分や再利用が可能となる
○ クリアランス制度は、従来から放射性廃棄物としての規制を受けている廃棄物のうち、放射線による障害の防止のための措置の必要がないものについて、放射性廃棄物としての規制を免除する制度であるため、規制の緩和となる。クリアランス制度に係る事業者が行う手続としては、国による測定・評価方法の認可及び国又は登録機関による測定・評価結果の確認を新設する。
(必要性)
○ 放射性同位元素を使用する施設等から発生する放射性廃棄物は、200リットルドラム缶換算で約25万本存在する(平成21年3月末)が、そのうち約5割は放射能濃度が十分に低く、年間0.01ミリシーベルト(自然放射線量の約240分の1)以下という十分に低い被ばくしか与えないため、放射性廃棄物として規制する必要のないものである。これらについて放射性廃棄物としての規制を免除することにより、処分コストが低減され、医療、産業、研究等におけるより合理的な放射線利用が可能となる。
○ また、平成20年、研究施設等廃棄物の埋設処分を本来業務として行うべく独立行政法人日本原子力研究開発機構法が改正されたところ、埋設する放射性廃棄物の物量の見込みは埋設施設の規模や総事業費用の見積りに影響を及ぼすため、放射線障害防止法における放射能濃度が十分に低い物の規制上の取扱いについて明らかにする必要がある。
○ なお、新たに測定・評価方法の認可及び国又は登録機関による測定・評価結果の確認手続きを新設することとなるが、これらはクリアランス制度を確実に実施し、一般公衆に対する放射線障害を防止するために不可欠な規制である。クリアランス制度の導入により、放射性廃棄物の安全かつ合理的な規制を行うことができる。

<放射化物への規制の導入>
(目的・内容)
○ 荷電粒子を加速することにより放射線を発生させる装置を「放射線発生装置」という。放射線発生装置によって発生させた放射線の影響により、放射線発生装置の構造物、遮へい壁等に、放射性物質が意図せずに発生し、これらを汚染させることがある。このような物のことを放射化物という。
○ この放射化物を放射線障害防止法の規制を受けるべき放射性廃棄物として新たに規定する。具体的には、放射性廃棄物の取扱いと同様に運搬の基準、廃棄の基準、測定、記帳等の義務が適用されるほか、放射化物を取り扱う施設についても、使用施設の基準及び廃棄施設の基準が適用されることとなり、規制の新設となる。
(必要性)
○ これまでは、使用される放射線発生装置のほとんどは出力が小さく、安全上問題となる可能性のある放射化物を発生させるような高い出力の放射性発生装置は限定的だった。このため、放射化物については法律による規制をかけておらず、出力の高い放射線発生装置を有する事業者に対して行政指導によって安全管理を求めることで対処してきた。しかし、近年、出力の高い放射線発生装置の使用が増加し、現状規制対象である放射性廃棄物と同等の放射能濃度を有する放射化物が発生してきていることから、作業者及び一般公衆の安全を確保するためには、放射化物について新たに法律による放射性廃棄物としての規制を課す必要がある。

<廃止措置の強化>
(目的・内容)
○ 放射性同位元素の使用者等は、放射性同位元素の使用等を廃止した場合や許可を取り消された場合等には、放射性廃棄物を適切に廃棄し、汚染を除去するといった措置(以下「廃止措置」という。)を行わなければならない。この廃止措置について、以下の規制強化を行う。
 1 現在、廃止措置は廃止の日から30日以内に行うこととなっているが、この期限を撤廃するとともに、放射性同位元素の使用を廃止した者等(以下「使用廃止者等」という。)が廃止措置を講じようとするときは、あらかじめ、当該措置に関する計画を文部科学大臣に届け出ることとする。
 2 使用廃止者等の義務として、作業者に対する健康診断、教育訓練等の義務を追加する。
 3 文部科学大臣等は、この法律の施行に必要な限度で、使用廃止者等に対し、報告させ、及び立入検査を行うことができることとする。
(必要性)
○ 現在、廃止措置は廃止の日から30日以内に行うこととなっているが、近年、放射性同位元素や放射線発生装置を取り扱う事業所が大型化しているため、これらの事業所が廃止措置を講ずる場合、30日以内にすべての措置を完了することは難しくなってきている。また、クリアランス制度の導入後は、廃止措置中にクリアランスを実施することが想定され、30日以内にクリアランスのための手続を終えるのは難しいと想定される。
○ また、平成8年に放射性同位元素の使用を廃止した事業者が、すべての放射性同位元素によって汚染された物を廃棄しなかったにもかかわらず、すべて処分したという虚偽の報告を行い、12年間にわたって放射性廃棄物を事業所内に放置していたことが平成20年に判明した。その後、当該事業者は措置命令を行っても命令に従わず、適切な廃止措置を講じなかったため、文部科学省が刑事告発し、事業者の代表者が処罰をされ、行政代執行を行うにまで至った。このような事件を防ぐための対策が必要となってきている。
○ このため、30日の期限を撤廃するとともに、使用廃止者等が計画的かつ確実に廃止措置を講じ、また、国がその計画を把握し適切に監督することができるよう、使用廃止者等が講じる廃止措置の内容と終了の見込みについての計画を作成させる必要がある。また、廃止措置が長期化する可能性があることから、放射線障害の防止及び廃止措置の適切な履行のため、作業者に対する健康診断及び教育訓練、放射線障害を受けた者に係る措置の報告等の義務について、廃止後も引き続き課す必要がある。さらに、廃止措置中や廃止措置を終えた後であっても、必要に応じて、報告徴収や立入検査が行えるような仕組みを導入し、使用廃止者等による適切な廃止措置の履行を担保する必要がある。

<譲渡譲受制限の合理化>
(目的・内容)
○ 放射線障害防止法では、放射性同位元素の譲渡し・譲受けについて制限されており、輸出については、届出販売業者又は届出賃貸業者のみが認められているが、許可届出使用者による輸出についても認めることとし、規制を緩和する。
(必要性)
○ 現在、放射性同位元素の輸出については、届出販売業者又は届出賃貸業者による輸出は認められているが、許可届出使用者による輸出は制限されている。これは、使用者は放射性同位元素を国内の販売業者から購入し、使用後は販売業者に引き渡すといった譲渡し及び譲受けしか想定していなかったためである。しかし、近年、放射性同位元素を国内の販売業者からではなく、直接、海外メーカーから購入する使用者が存在するようになってきた。放射性同位元素のうちカプセル等に密封されたもの(以下、「線源」という。)については、適切な廃棄処分が難しいため、使用後は購入先へ返却するのが通例となっており、使用者が海外から輸入した線源について、使用後に返却のため輸出するニーズが高まっている。
○ 現状では、使用者はわざわざ国内の販売業者に使用済み線源を譲り渡した上で、海外メーカーへの輸出を委託している。使用者は、販売業者又は賃貸業者と同等若しくはそれ以上の放射性同位元素の取扱い等に係る知識及び経験を有する者を放射線取扱主任者として選任しており、販売業者及び賃貸業者が放射性同位元素を輸出できるのに使用者が輸出できない合理的な理由はない。
○ 以上のように、許可届出使用者にとって、使用済み線源の輸出のニーズが高まり、輸出の委託という形で、実質的に輸出が行われている現状を踏まえ、許可届出使用者の輸出制限を撤廃する必要がある。なお、無用な規制を撤廃し、合理的な規制とすることになっても、放射線障害防止上のリスクが上昇するわけではないことから、この規制の緩和は上記の達成目標の達成に問題を生じさせることはない。

2.法令の名称・関連条項とその内容
<クリアランス制度の導入>
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
第33条の2、第48条の2

<放射化物への規制の導入>
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
第1条、第12条の10

<廃止措置の強化>
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律第28条

<譲渡譲受制限の合理化>
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律第29条

3.想定される代替案
<クリアランス制度の導入>
○ 代替手段としては、クリアランス制度を導入するのではなく、廃棄の基準の一部として、放射能濃度等が一定の基準に合致する放射性廃棄物については、規制機関による認可・確認等を要しなくても事業者は放射性廃棄物として扱わないことができる旨を規定するという方法があるが、この方法では放射能濃度が十分に低いことの判断を事業者のみに委ねることとなり、社会的な理解が得られないものと考えられるため、困難である。

<放射化物への規制の導入>
○ 代替手段としては、法律による規制を導入することなく、現在行っているような行政指導による対応を続けることが考えられる。しかし、今後、出力の高い放射線発生装置の使用が増加し、これらの放射線発生装置の使用に伴い発生する放射化物が増加するとともに、将来において高出力の放射線発生装置が解体されることになればさらに大量の放射化物が発生することが予想される。放射化物に対して法的規制をかけない状態が続くと、これら放射物について、適正な再利用または廃棄処分がなされない事態が発生するおそれがある。そのような状況でも、法律による規制をかけず、行政指導のみで対処し続けることは、高出力の放射線発生装置から生じた放射化物による放射線被ばくのリスクを法的に規制できないことになり、社会的な理解が得られないと考えられることから、放射化物についても法律で規制することが適切である。

<廃止措置の強化>
○ 代替手段としては、使用廃止者等による確実な廃止措置の実施を担保するため、廃止措置が終了したときは国による確認を受けなければならない制度とすることが考えられる。しかし、放射線障害防止法の規制を受けている各事業所において取り扱う放射性同位元素の危険性や規模、廃止措置の困難度は様々である。それらすべての事業所について国の検査員を派遣して確認を行うことは、その必要性に対して過大な行政コストを生むこととなり、不適切である。このため、廃止措置計画の届出を受けて国がその内容を把握し、必要に応じて報告徴収や立入検査を行い得る制度とすることが適当である。

<譲渡譲受制限の合理化>
○ 代替手段としては、許可届出使用者による輸出を認めるのではなく、許可届出使用者に販売業の届出をさせたうえで、届出販売業者として輸出するよう指導するという方法がある。しかし、実際には国内での販売を行わないにも関わらず販売業の届出をすることは無意味である上、事業者にとっても行政にとっても不用なコストが発生するため、このような方法は不適切である。

4.規制の費用
<クリアランス制度の導入>
(遵守費用)
○ 200リットルドラム缶20本分の放射性廃棄物についてクリアランスを行う場合の費用は、90万円程度(短半減期核種の場合の試算)と見込まれる。
(行政費用)
○ 測定・評価方法の認可及び測定・評価結果の確認を行うための人件費が発生するが、これらの費用は基本的に事業者より徴収する申請手数料により賄うため、新たな行政費用は発生しない。
(その他の社会的費用)
○ クリアランスされた物については、廃棄物処理法に基づき適正処分されるか、資源として有効活用されることとなり、社会的な負担は生じない。

<放射化物への規制の導入>
(遵守費用)
○ 使用施設の基準及び廃棄施設の基準が適用されることにより施設や設備の改修が必要となる場合には、放射線発生装置の使用の許可の変更申請(手数料:96,600円)を行う必要があるほか、施設や設備の改修費用が必要となる。(対象となる可能性のある事業者:約810事業所)
○ その他、放射化物の運搬の基準、廃棄の基準、測定、記帳等の義務を遵守するための人件費については、基本的にはこれらの行為は現在も行政指導に基づき行われているため、法令によって規制することとしても新たな費用は発生しないと考えられる。
(行政費用)
○ 放射線発生装置の使用の許可の変更申請があった場合は、その審査を行うための人件費が発生するが、この費用は基本的に事業者より徴収する申請手数料により賄うため、新たな行政費用は発生しない。

<廃止措置の強化>
(遵守費用)
○ 廃止措置計画の作成のための人件費のほか、健康診断及び教育訓練等の義務の遵守のための費用が名目上発生するが、実質的には従来と変化がないものと考えられる。
(行政費用)
○ 廃止措置計画の受理・確認業務(年間約140事業所程度)及び廃止措置期間が長期に渡る大規模事業所等への立入検査業務のための人件費が発生する。

<譲渡譲受制限の合理化>
(遵守費用)
○ 許可届出使用者が、販売業者に委託することなく、自ら放射性同位元素を輸出できるようになるため、輸出のためのコストはむしろ低減され、新たな費用は発生しない。
(行政費用)
○ 許可届出使用者が、販売業者に委託するのではなく直接輸出を行うこととなっても、輸出の総数は変化しないため、新たな行政費用は発生しない。

5.規制の便益
<クリアランス制度の導入>
(直接便益)
○ 放射能濃度が十分に低い放射性廃棄物について放射性廃棄物としての規制を免除することにより、処分コストが低減される。
(受益者:放射性廃棄物が発生する可能性のある事業所約1,670事業所)
(処分コストの見積り)
 200リットルドラム缶20本分の放射性廃棄物についてクリアランスを行う場合の費用は、90万円程度(短半減期核種の場合の試算)と見込まれる。同量の放射性廃棄物をクリアランスせずに放射性廃棄物として処分した場合、数百万円〜1,000万円程度の費用がかかるため、クリアランス制度の活用により数分の1〜10分の1へのコストの低減が見込まれる。
(社会便益)
○ 医療、産業、研究等におけるより円滑かつ合理的な放射線利用が可能となることにより、放射線によるガンの診断、治療や、放射線を利用した研究開発の促進などが期待される。また、クリアランスされた物については再利用することも可能となり、資源の有効活用にもつながる。

<放射化物への規制の導入>
(直接便益)
○ 放射化物への規制が導入されることにより、放射化物の安全かつ適切な管理方法が法律上明確になり、放射線業務に従事する者についての放射線障害を防止するための措置がより徹底されることとなる。
(社会便益)
○ 放射化物が事業所外において運搬や廃棄される場合についても法律で規制されることから、放射化物による一般公衆に対する放射線障害の防止を図ることが可能となり、放射線利用に対する社会の安全・安心につながる。

<廃止措置の強化>
(直接便益)
○ 廃止措置を講ずる期間として30日の期限が撤廃されることにより、事業所の規模等に応じた無理のない廃止措置計画をたてることができる。また、これにより廃止措置を計画的かつ確実に行うことができる。
(社会便益)
○ 放射性廃棄物の処分等の廃止措置がより確実に履行されるための措置が講じられるため、放射線利用に対する社会の安全・安心につながる。
○ また、放射性廃棄物を事業所内に放置していた事業者がいた事件においては、事業者が措置命令に従わなかったため、文部科学省が最低限の措置について行政代執行を行うこととなった。現在、事業者は破産手続を進めているため、行政代執行の費用のすべては回収できない可能性がある。その場合、事業者の廃棄物の処理に税金が使われることとなる。廃止措置の規制を強化することにより、事業者が行う廃止措置の内容を国が事前に把握し、適切な監督を行うことができるようになるため、この事件のような不適切な廃止措置に対応するための行政費用・社会的費用が発生する可能性が低減される。

<譲渡譲受制限の合理化>
(直接便益)
○ 許可届出使用者が、販売業者に委託することなく、自ら放射性同位元素を輸出できるようになるため、輸出のためのコストが低減される。(受益者:許可届出使用者 約3,000事業所)
(社会便益)
○ 許可届出使用者が、放射性同位元素を販売業者に譲り渡した上で、販売業者が輸出するという経路をとる必要がなくなるため、放射性同位元素の不用な運搬を行う必要がなくなり、運搬に係る事故・トラブルによる一般公衆へのリスクが低減される。

6.政策評価の結果(費用と便益の関係の分析等)
○ 上記の便益分析及び費用分析を踏まえると、今回の放射線障害防止法の改正によるクリアランス制度の導入に関する規制の新設、放射化物への規制の導入に関する規制の新設、廃止措置に係る規制の強化、譲渡譲受規制に関する規制の合理化は適切である。
評価結果の政策への反映状況 ○ 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等の一部を改正する法律案」を第174回国会に提出した。法案成立後、関連する政省令について改正を行う。

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大臣官房政策評価室

-- 登録:平成22年06月 --