東日本大震災の教訓を踏まえ、被災地を中心とした防災教育支援事業の一環として独自に開発した可視化教材を用いることにより、児童の理解に加えて認知度を高め、減災意識を向上させて減災判断・行動を促進するためのプログラムであり、各教育委員会と協力し、震災被災地での小学校5年生対象を中心とした出前授業を実施している。これまで国内外の15,000人以上の児童が受講し、質問紙調査では児童が家族と減災行動に関して話し合っている実態も把握できた。
一人ひとりが災害に備える意識、災害時に適切な行動をする意識を育成することが、災害による被害の縮小につながる。これまでも防災教育は重視されてきたが、防災リーダーを育成し、リーダーに従って行動するという考え方が主流であった。しかし、広範囲に影響が及ぶ甚大な災害が発生した場合には、リーダーが不在の場合が多く、個人の判断による安全行動が求められる。自分で考え、自分で決断し、率先垂範のできる人材の育成が必要である。本プロジェクトは、児童にもわかりやすく行動を示唆し、児童自身に考えさせ、児童間で議論をして、解決策を見つけさせる「アクティブ・ラーニング」の手法を取り入れており、現在まで、5年間持続して実践を進めたことによって減災意識を持った人材が育成されてきている。
活動の原資は各企業や個人からの寄附金で賄っており、社会の安全に貢献する意欲を有する産業と研究機関との連携によって維持されている。
東北大学は研究機関として多くの研究者を輩出し、研究によって社会の役割を果たしてきたが、一般市民に研究成果をわかりやすく伝え、市民レベルでの学術的な研究成果の活用にも重点を置いており、本プロジェクトは災害科学研究を実践的防災に活かす大きな柱ともなっている。
今年度はプロジェクト開始から6年目を迎えるが、県内外の認知度も上がり、発生が懸念される南海トラフ巨大地震の被災想定地域に対する実施も展開されている。
学習ツールとして活用する災害情報は、東北大学災害科学国際研究所の調査・研究が支え、活用に要する資金は現在東北大学基金に頼っているが、児童の減災意識の継続には複数回の授業やフォローアップが必要である。また、新たな児童への実施には、安定した資金の調達が望まれる。
文部科学省国際統括官付