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慶應義塾大学

兵庫県豊岡市におけるSDGsの考えを用いた地域課題の解決

但東地域高橋地区の課題:聞き取り調査

 地区の課題を把握するために、事前調査として2018年2月から3月にかけて、但東中学校1・2年生(中学1年生30名、中学2年生23名)に対するアンケート調査及び中学生以下の子供を持つ保護者24名と高校生に対する聞き取り調査を行った。
 但東中学校における調査では、中学1年生が「住み続けたい」「一度は但東を出たいがその後は戻りたい」との答えが5割を超えるのに対し、中学2年生は3割にとどまっており、学年が上がると地域における居住に対する志向が弱まる傾向がみられた。
 聞き取り調査では、「この地区が好きであるか」という問いに対し、中学生と保護者の双方ともに、約6割は「地区が好きである」と回答した。しかし、「今後住み続けたいか」という問いに対しては、保護者は「今後も住み続ける意向がある」と回答する傾向があったが、中学生は「将来的に戻ってくる」という回答も含めて約4割にとどまった。
 この違いについて、保護者は「地域に生まれ育ち、すでに家、墓、土地、畑など所有しているものがあるから」と回答する声が多く、次いで「慣れていて、居心地がよいから」という回答が続いた。これに対して、中学生は53人のうち23名が18歳を過ぎたら地区を出たいと考えており、そのうち14名は大阪など関西地方に移動することを望んでいた。地域には就職先や就学先がないことが一番の理由として挙げられている。
 また、「高橋地区で子育てをする上で大変だったことは何か」、「高橋地区に今後住み続けたいと思うか」、「どのような点が変われた高橋地区に住み続けたいと思うか」という設問への回答から、高橋地区を若い世代が将来にわたって住み続ける持続可能な地区とするためには、「交通の利便性」「施設などの町の整備」「子育て」「教育」等の課題があることが明らかになった。

住民の参加型ワークショップ

 持続可能な地区を目指すにあたり、地区の住民が将来どのような地区を望んでいるかという目標を設定する必要がある。本研究では、下記のような3段階のステップを用いて、2030年の長期目標からバックキャストしてアクションを設定してワークショップを実施した。

  • (1)2030年に理想とするまちの姿を想像して目標を設定する
  • (2)将来の望む目標から現状へとバックキャストしながら、現状の課題の抽出する
  • (3)課題を解決するためのアクションを特定する

 ワークショップには地元住民30名、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)蟹江憲史研究室に所属する学生も10名参加することにより、議論のファシリテートや、SDGsの視点から考察すべき点についてのインプットを行った。「高橋地区の生徒全員が慶應義塾大学に行く」といった目標案が学生より示されたほか、「ITを利用した農業と教育の町」、「人口1600人の町」、「健康長寿の町」、「自給自足の町」、「インフラが整備された町」といった目標案が出された。
 2018年7月には具体的なアクションを目指した2回目のワークショップを開催した。この回では30~50代の世代や、日ごろ意見を聞くことが少ない母親の参加を得て行われ、ワークショップの結果、「2030年までに、人口1,000人のまちになる」という目標を据えた。
 目標を達成するための方法として、(1)高橋地区の子どもが進学や就職で地区を離れた後に、将来的にUターンできるようにすること、(2)定住交流だけではなく、交流人口を増やすこと、という二つの意見があがった。特に(1)に対しては、Uターンの増加を確実にするためには、若いうちから高橋地区のよいところを認識して、自分の生き方や地域とのかかわり方を考える必要があることから、地区の中学生・高校生に焦点をあてたアクションが必須であるとの合意ができた。

但東中学校との協働

 高橋地区を校区にもつ但東中学校と協働し、中学生がSDGsの視点を通して豊岡市や但東地域についてより深く知り、豊岡市の未来のために自分が将来にわたりどのような貢献をすることができるのかを考えられるような取組を行うこととなった。
 2018年12月に第1回目のアクションとして、但東中学校で活動1(SDGsを知る)及び活動2(豊岡の魅力を知る)を行った。活動1については、中学校の全校生徒を対象として、校内でSDGsに関係ある場所はどこかを考えながら、関連する場所にSDGステッカーを貼る作業を行った。この作業を行うことにより、いかに自分のこととしてSDGsをとらえていくことができるかというきっかけを生徒に与えることができた。
 活動2については、中学2年生を対象として、修学旅行中に豊岡市アンテナショップで販売する豊岡の特産品をSDGsで分析する作業を行った。また、中学1年生については再来年度の修学旅行に向けて地域の魅力や持続可能な開発について学びを深めていくこととなった。
 2019年3月に第3回目のアクションとして、但東中学校の生徒と慶應義塾大学の大学生が高橋地区の3つの事業所に対するインタビューを行った。SDGsを用いた質問を作成することにより、その事業所の強みを見出し、中学生が豊岡の魅力を知ることに繋がるように試みた。
 こうした活動を通じて、SDGsにおけるグローバルな課題を踏まえながらも地域の魅力や持続可能性について各生徒が自身でより深く考察する機会とするべく取組を進めているところである。

期待される成果及び今後の課題

 2019年8月、12月(及び2020年3月)に豊岡市、2020年5月には東京において、但東中学校の生徒と慶應義塾大学の学生が協働する予定である。こうした活動を通じて、中学生が豊岡の魅力を認識し、彼らのUターン志向醸成に貢献することを期待したい。今後の課題としては、高橋地区の将来像を達成するためのアクションの進捗状況を定量的に測るための指標を作成することが挙げられる。

住民の人々とのワークショップ

住民の人々とのワークショップ

中学生へのヒアリング調査

中学生へのヒアリング調査

但東中学校でのワークショップ

但東中学校でのワークショップ

事業所に対するインタビュー

事業所に対するインタビュー


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文部科学省国際統括官付