慶應義塾大学

学生1人1人が持続可能性を意識する「キャンパスSDGs」プロジェクト

取組の目的

 SDGsは国際目標であり、学生にとって「遠いもの」と感じられてしまう一方、SDGsの達成のためには一人一人の身近な行動が必要である。本取組では、学生にとって一番近い「キャンパス」(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)という小さな社会で、一人一人がSDGsを始めとする社会の問題を知り、課題解決のためのアクションを起こすよう促すことにより、キャンパスレベルからSDGsを達成することを目的とした。

SDGsステッカーの制作

 2016年度には、アクションを起こすためには、SDGsや社会の課題を「まず知ってもらうこと」、「身近だと感じてもらうこと」が大切だと考え、SDGsの目標が記載されたステッカーをキャンパス内の教室や食堂など、目標に関連する場所に貼ることによりSDGsの認知度を上げるプロジェクトを実施した(図1、2、3参照)。例えば、トイレに目標6のステッカーを貼ることで、生活とSDGsが関連することを可視化するように心がけた。
 ステッカーは、100種類、2500枚を作成した。それぞれに、SDGs目標やターゲットの説明をした上で、ターゲットを理解しやすいような一言メモを記載した(図4参照)。また、インスタグラムやFacebookなどのSNSの活用や、食堂でのSDGsの動画の放送によりプロジェクトの普及に努めた。
 ステッカー作成にあたり、株式会社伊藤園、国連アカデミック・インパクト、国連広報センターほか、様々なステークホルダーから実施段階で協力を得た。
 2016年11月に3週間のプロジェクトを実施した結果、学生のSDGsの認知度がプロジェクト以前と比して2割から8割に上昇するなど、認知度向上の成果をあげた(事後調査においてSDGsを認知していた学生の6割強が、校内に掲示されたステッカーによって知ったと回答している)。また、プロジェクト実施期間に授業に活用されるといった成果もあった。
 2017年以降は、さらに縦横両方へ展開している。縦方向の展開としては、多種多様な分野の教授が集まっている湘南藤沢キャンパスの利点を活かし、研究会(ゼミ)やラボの研究活動をSDGsで整理、分析した。各々の研究会を通してキャンパス内で実践されているSDGs(に係るシナジーとトレードオフ)を整理し、伝えることにより、キャンパス内の全員を巻き込みながらキャンパスでのSDGsの統合的な達成を目指していく。横方面の展開としては、朝日新聞への関連記事の掲載や国連グローバル・コンパクト・アカデミック・ネットワーク、科学技術振興機構などによるシンポジウムへの登壇、高校への出前授業や他大学による取組への応用を行っている。

期待される成果

 期待される成果は2つある。1つ目は、一人一人のアクションによるボトムアップ型アプローチを醸成することである。普及啓発活動や、横展開がこれに該当する。多くの人のアクションを誘発し、一人一人のグローカルでサスティナブルなライフスタイル・アクションの実践が目標である。2つ目は、大学教育が専門的な分野・内容に終始してしまうことがある中で、SDGsの視点をとりいれることで、「社会の中での役割」、「世界の中での役割」、「他の分野との連関」を意識するきっかけとなる可能性がある。また学生自身も、自身の研究活動と(国際)社会との関係性の可視化ができるというメリットも存在する。

今後の課題

 上記2016年ステッカーのプロジェクトでは、SDGsの認知度が向上したことは明らかになったが、「その後の学生の行動に結びついたか」、あるいは「継続性があったのか」といった点は確認できなかった。SDGsの認知度だけではなく、その達成に向けたアクションの実践や具体的な成果に結びつける手法、またその進捗を計測し、評価するような指標の確立が課題である。

キャンパス内でステッカーを貼った場所

キャンパス内でステッカーを貼った場所

ステッカーが貼られた教室

ステッカーが貼られた教室

ゴミ箱に目標12のステッカー

ゴミ箱に目標12のステッカー

ステッカー例

ステッカー例

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文部科学省国際統括官付