第39回日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会人間と生物圏(MAB)計画分科会 議事要録

1.日時

平成29年12月7日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省12階 国際課応接室

3.出席者

(委員)
 礒田博子(主査)、立川康人、岩熊敏夫、上條隆志、松田裕之、宮内泰介、吉田謙太郎
(オブザーバー)
 大野希一(国内委員)
 (関係省庁)
 外務省、農林水産省、林野庁、水産庁、国土交通省関係官
 (文部科学省(日本ユネスコ国内委員会事務局))
 川端国際統括官、池原文部科学戦略官、小林国際戦略企画官、秦国際統括官補佐、その他関係官

4. 議事要録

【礒田主査】  おはようございます。本日は、御多忙のところ御出席いただきありがとうございます。定刻になりましたので、事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【秦国際統括官補佐】  本日は、出席が8名で、委員の過半数6名以上に達しております。
【礒田主査】  それでは、ただいまから第39回MAB計画分科会を開催します。
 本日の議事のうち、議題3、平成30年ユネスコエコパーク申請についてに関しましては、公開することにより、当事者又は第三者の権利、利益や公共の利益を害するおそれがあると認めますので、日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき、非公開とさせていただきます。非公開の部分を除いて、御発言は議事録としてそのままホームページ等で公開されますので、御承知おきください。
 続きまして、前回の分科会以降、委員及び事務局の異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。
(事務局から委員及び事務局の異動について報告)
【礒田主査】  ありがとうございます。関係省庁の皆様にも御出席いただいております。
 また、本日は、日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会分科会設置要綱の第5条に基づき、12月より日本ユネスコ国内委員会の委員に就任された大野希一委員に、私から御出席をお願いしております。大野委員は、島原半島ジオパーク協議会の事務局次長として御活躍されていると同時に、日本ジオパーク委員会委員でもいらっしゃいます。後ほどの議題に連動して、ユネスコエコパーク活動推進の参考のため、ユネスコ世界ジオパークについてお話しいただきたいと思っております。大野委員、よろしくお願いいたします。
【大野国内委員】  よろしくお願いいたします。
【礒田主査】  次に、事務局から配付資料の確認をお願いします。
(事務局から配付資料の確認)


<1. ユネスコエコパークの活動報告について>
【礒田主査】  それでは、議題1に入ります。議題1では、本年4月からの主なユネスコエコパークに関する活動について御報告いたします。まずは資料1の第29回MAB計画国際調整理事会について、分科会を代表して出席しました私の方から説明いたします。
 まず、資料の1をご覧ください。今年の6月12日から15日の4日間、第29回MAB計画国際調整理事会がユネスコ本部で開催されまして、私が関係者の皆様と一緒に参加いたしました。今回は、日本からの2件の新規登録の申請が認められるかどうかが、日本として重要議題で、関係自治体の皆様も一緒に参加されました。今回の理事会での主要議題としては、既存の登録BR(Biosphere Reserve)に関する出口戦略と、新規認定の2点がございました。
 2ページをご覧ください。各国の活動報告については、6番の議題のところで、ユネスコ事務局からまとめて報告されました。
 次に、主に議題7と8のところですが、出口戦略に係る議論がございました。本戦略では、BRが2015年の12月30日までにユネスコに報告書を提出し、基準を満たしているかどうかの確認を行うものでしたが、報告書を提出していないBR、確認ができていないBRが85地域残っているとして、これらのBRの取り扱いについて議論されました。結果、同戦略は、2020年まで延長して、残りのサイトの基準を確認するということが承認されました。この戦略に関連して、米国から17地域、ブルガリアから3地域は自主脱退するとの報告もありました。
 3ページをご覧ください。9番目の議題において、新規23地域、国境をまたがる4地域、拡張・修正BRとして12地域の認定が承認されました。この中に日本からのみなかみと、祖母・傾・大崩も含まれます。承認された後に、みなかみ、祖母・傾・大崩の代表者の皆様が御挨拶をされました。なお、今回の新規登録については、BR国際諮問委員会から指摘事項などの勧告があった各国の申請地域について、事前に必要条件を満たしたということが確認されて、申請のあった全ての地域が認定されたところです。
 次に4ページをご覧ください。13番の議題におきまして、リマ行動計画における各国の施行状況の報告が2年ごとということを受け、事務局が準備をしている報告書の様式について説明がありました。各国の取組の共有が重要であるとの認識の下、引き続き様式の検討を事務局で行うということでした。
 最後に、ユネスコのハン・チュンリ生態学・地球科学部長の退任について、加盟国から謝辞が示され、彼の功績に拍手で一同感謝しました。
 なお、来年の国際調整理事会の開催について、インドネシアからホスト国となる関心表明がありましたが、まだ場所も日時も決定していないとのことです。
 次に、資料2の第202回ユネスコ執行委員会及び第39回ユネスコ総会の結果について、事務局から説明お願いします。
【小林国際戦略企画官】  資料2に基づき御説明させていただきます。第202回ユネスコ執行委員会が10月4日から18日までパリのユネスコ本部で開催されました。様々な議題の中で、このMABに関係する議題が一つございましたので、御説明させていただきます。
 それは、3にございますとおり「生物圏保存地域及びユネスコ世界遺産構成資産、並びにユネスコ世界ジオパークのブランド認知度の保持と強化のための戦略及び行動計画の提案」についてです。1にございますとおり、ユネスコで実施されております世界遺産、それからユネスコエコパーク、ラムサール条約湿地及びユネスコ世界ジオパークの四つの国際登録地域、International designed arias(IDAs)について、これらのそれぞれ目的があるわけですけれども、これらについて、特にこの四つの登録地域が重なる地域がございますけれども、そこを念頭に、これらのユネスコの主要各事業のブランド認知度を強化するための戦略と行動計画を事務局から提出するようにということで、前々回、200回の執行委員会の決議として、今回の202回の執行委員会に事務局から提出するよう求められておりました。
 3でございますけれども、これに対して、ユネスコ事務局で構成される技術的調整グループを設置して検討がなされたのですけれども、結論としては、この共同の戦略と行動計画を作るということについては、ユネスコの内部のキャパシティー不足、具体的には追加的な予算と人的資源がなければ、共同ブランド戦略を立てることは難しいという結論に至りました。一方で、以下にございますとおり、ユネスコエコパーク、世界遺産、ユネスコ世界ジオパークのそれぞれの登録サイトの入り口に掲示するための統一のユネスコメッセージを作成するということが合意されましたので、今後作成されるのではないかと思います。先ほどの、共同ブランド戦略策定のためには、外部資金がないとできないということで、この点について加盟国と事務局のコミットメントを求めるという内容になっております。
 ちなみに、1枚おめくりいただきまして、点線の中に、日本の国内の世界遺産、ユネスコエコパーク、それからラムサールなどが重複するサイトとして、そこにございます屋久島、志賀高原、白山、大台ヶ原が挙げられます。
 以上がそのユネスコ執行委員会における議題でございます。次に、10月30日から11月14日までユネスコ総会がございました。これも同じくフランスのパリでございまして、そこで一つ、ユネスコの事業の予算に関する決定がなされました。それは、アフリカ生物圏保存地域ネットワーク基金の設立についてです。アフリカにおけるユネスコエコパークの保全状況の現状に鑑み、保全の支援と管理者の能力開発のための財政的な支援を行うため、アフリカ生物圏保存地域ネットワーク基金を設立するということが勧告されまして、勧告されたその決議案がそのまま採択されたということで、この基金が設立されるということになります。
 以上で御説明終わらせていただきます。
【礒田主査】  最後に資料3のユネスコエコパークに関する国内の活動報告を事務局からお願いします。
【秦国際統括官補佐】  資料3でございます。冒頭にございます、国際調整理事会につきましては先ほど礒田主査から御報告のあったとおりでございます。
 国内委員会の関連の活動として、これは文部科学省になりますが、子ども霞が関見学デーというのを毎年夏に開催しております。子供たちに省庁の仕事について幅広く知っていただく機会となっておりますが、このたびユネスコエコパークネットワーク、JBRNの方からブース出展をしていただきまして、ユネスコエコパーク地域の木材などを使用したクラフト体験などを行いました。これにより、ユネスコエコパークを知ってもらう活動につながったと思います。
 ページをめくりまして、JBRNの大会が8月7日に実施されました。こちらは、毎年国内のユネスコエコパークの関係者が一堂に会して、情報共有を行う機会となっております。今回は、文部科学省、小林国際戦略企画官から講演し、主にリマ行動計画や、SDGsへの政策に関連してユネスコエコパークに対する期待についてお話をしました。また、このときに、JBRNではイオン環境財団との活動連携を行うため、パートナーシップ協定の調印を行っております。イオン環境財団は、これまで綾町との植林事業で協力関係にございまして、人間と生物圏という視点に基づくユネスコエコパーク事業の趣旨に賛同しまして、ユネスコエコパーク活動を支援するということになりました。協定は今後5年間と伺っております。
 続きまして、次2件まとめてですが、祖母・傾・大崩とみなかみがこのたびユネスコエコパークに認定されたということで、各地で登録記念式典が行われております。礒田主査と松田委員に御出席いただいております。祖母・傾・大崩では、松田委員からの記念講演も行われたところです。
 3ページ以降に、近年開催された国際会議等の一覧、それから国内で開催された会議、イベント等について、主に各BRの方から情報提供していただきまして、このたび共有させていただいております。詳しい説明は省きますが、世界の方ではユネスコエコパークのネットワーク会合のようなもの、それから東アジアのネットワークであるEABRNの研修ワークショップが今年の夏に中国、韓国で開催されています。EABRNのネットワーク会議自体は、本当は今年秋に行われる予定でしたが、延期をされていまして、来年の春にロシア、シベリア辺りでやるというような予定になっております。以上でございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問等ありましたらお願いします。御質問等ないようでしたら、本議題は以上といたします。ありがとうございました。


<2. リマ行動計画の進捗報告の方法について>
 それでは、議題2に入ります。近年、ユネスコエコパークに関しましては、2015年にMAB戦略、2016年にリマ行動計画が策定され、世界的な動向として、登録後の持続可能な利活用に関する各地域の取組が、より重視されるようになってきております。
 リマ行動計画の進捗把握のための方法について審議する前に、ここで今回、オブザーバーとして御参加いただきました大野委員に、ユネスコ世界ジオパークの概要について、参考にお話しいただきたいと思います。冒頭にお話ししましたように、大野委員は、島原半島ジオパーク協議会の事務局次長でいらっしゃるとともに、日本からユネスコにジオパーク地域の候補地を推薦する役割を担う日本ジオパーク委員会の委員もお務めになられています。
 ユネスコ世界ジオパークは、2015年11月に正式にユネスコの事業となったところですが、地質学的遺産の保全と活用によって、地域の持続可能な開発を目的にしているもので、ジオパークはその実践を行う地域という事業となっています。ユネスコエコパークと同様、自然と人間が調和した活動を理念として掲げている点は変わりなく、ジオパークに認定された地域では、地質と生態系の理解促進と、これらを活用した経済活動に積極的に取り組んでおられます。そのため、ユネスコエコパークの推進にも参考となることも多いかと思います。
 今回は大野先生に、是非ジオパークの仕組みについての御紹介をお願いできればと思います。それではよろしくお願いいたします。
【大野国内委員】  皆様、おはようございます。今、礒田先生から御紹介いただきました、島原半島ジオパークの協議会事務局の次長をしております、大野と申します。専門は火山地質で、地質屋でもありますが、現在、ジオパークの現場で、地域作りのようなこともさせてもらっていますが、同時に審査もする、ですから、審査する側であり、される側であるという立場になります。今回は、時間が余りありませんので、ささっとはしょる形で、御紹介したいと思います。
 先ほど、ちょっと御紹介がありましたが、ジオパーク活動というのは持続可能な開発を通じて地域社会を維持し、そこにある地域遺産を守り、未来に引き継ぐということを、大きな目的としています。例えば、こういう子供たちが実際に地域で生活し、その地域を楽しむような光景があるわけですが、そういった子供たちが大きくなって私たちのような世代になっても、その場所で幸せに暮らしていけるような社会を作ると。そのために私たち大人は今、何ができるかということを念頭に活動しております。
 ジオパーク活動の場合は、様々な方々が関わることが必要です。研究者だけではなくて、政治家であったり教育者であったり、あるいは観光関係の人であったり、そういった人たちが連携してそれぞれ、地域社会を未来に引き継いでいく。例えば学者であれば、地域にどんなものがあるかという価値付けを行う。教育者であれば、その価値が素晴らしいものだということを教育活動を通じて地域の人に普及していく。で、更にその地域にある素晴らしいものを活用して経済活動を活性化させ、地域社会を維持していこうという仕組みです。
 それが4年ごとにちゃんとできているかという審査がありまして、ちゃんとできていない、もっときちんとやりなさいという場合は、2年間の条件付き再認定。更にそれでもだめな場合は、ジオパークの認定が?奪されるという仕組みになっています。
 というのは前段で、この流れでざっと概要の紹介をいたします。なぜジオパークという仕組みが生まれたか。ユネスコは自然保護プログラムを複数持っているわけですけれども、例えば世界遺産の場合は、世界自然遺産の占める割合が低いことに加え、地質学的な価値を持つものが余り保全の対象になっていなかった。それから、この分科会のテーマでもありますが、MABに関しては、本来であれば守るべき対象の地球環境とか地球そのものではなく、生態系、自然環境の方に重きを置かれているもので、それを作り出してきた地球活動というものは余り明確な保護の対象にはなっていない。そのため、ユネスコが地球関係、地球というものに住んでいる以上、地球を守っていかなければならないが、何か良いプログラムはないかというときに、既に世界各国で行われて、一定の実績を挙げていた世界ジオパークネットワークという取組が素晴らしいということで、初めてユネスコがよそのプログラムを正式プログラムとして認定したというのが経緯です。
 ざざっといきますけれども、そのユネスコ世界ジオパークの仕組みですけれど、ユネスコ世界ジオパークの実質的な審査をするのがジオパークカウンシルというメンバーで、現在この中には日本から1人のメンバーが入っています。さらにそのカウンシルが審査をするための書類を作る、あるいは現地の状況を調べてくるのが世界ジオパーク審査チームと呼ばれる方々です。従って、現場で見てきたことをカウンシルで審議をし、再認定については、カウンシルの判断が最終決定となってユネスコから通知され、新規登録については、最後にユネスコ執行委員会に諮られて決定します。
 その中の基準なのですけれども、多くは説明しません。これだけ七つのクライテリアがあると。その中で非常に重要視されるのが、国際的な価値を持つ地球活動の遺産がテリトリーの中になければならないという点。これがなければユネスコ世界ジオパークにはなれないです。それから重要なのは、ユネスコの他のプログラムと重複していないことです。例えばユネスコの中の世界自然遺産とユネスコ世界ジオパークのプログラムが同じエリアの中に共有する、あるいはぴったり一致しているということはあり得ない。これは後でちょっとお話をします。それから、様々な方々がジオパーク活動に含まれていなければならないということが、要件ですね。
 後で紹介しますが、ユネスコ世界ジオパークの申請、あるいは再審査の申請をする上では、自己評価表というのを提出しなければなりません。通称Document A、Document Bと呼ばれているもので、Document Aに関しては新規地域、再認定地域両方提出いたします。全部で66の項目がありまして、重み付きの採点結果で1000点満点の評価になります。Document B、こちらに関しては、再認定審査の地域のみの提出でして、過去4年間の活動によって地域にどのような変化がもたらされたかというのをかいつまんで紹介する。あるいは将来的な予測、予算や人的配置の未来予想図までこの中では提言することが求められます。
 実際の審査の流れですけれども、まずユネスコ世界ジオパークになるためには、過去数年間にわたってユネスコ世界ジオパークとしてふさわしい活動を継続していることが必要です。具体的には、国際会議等でプレゼンテーションをして、私たちの地域はこういうポテンシャルを持った地域だということをユネスコ世界ジオパークのカウンシルメンバーにアピールすることが必要です。その後、各国からユネスコに申請書と先ほどの自己評価表、さらにはそれの裏付け資料を提出いたします。場合によっては数百ページになるものです。再審査ではなくて新規地域の場合は、国際地質科学連合(IUGS)から任命された地球科学を調べる専門家に申請地域の学術的価値がチェックされます。これは、デスクトップエバリュエーションなのですけれども、この地域が学術的価値を持っていないと判断された場合は、もう審査はありません。ここでもう、切られます。で、学術的価値がある地域だということが認定されれば、世界ジオパーク審査チームから2名の現地審査員が申請地域を審査します。最低3日間の審査で、前後に移動日が加わりますので、大体1週間程度、現地で現地の人たちとやりとりをし、現場を見ます。その結果、書かれた報告書を基にジオパークカウンシルメンバーが審査を行い、認められればユネスコ世界ジオパークが誕生するということになります。
 これが新規地域ですけれども、再認定地域の場合は、デスクトップエバリュエーションというものは行われません。同じようにユネスコの活動を通じていることを紹介しつつ、4年か2年ごとにユネスコに進捗レポートと自己評価表のAとB及び裏付け資料の提供があります。で、同じように現地審査員がユネスコ世界ジオパーク地域の審査を行い、ジオパークカウンシルメンバーが審査を行います。その結果なのですけれども、まずジオパークとしてのポテンシャルが優れていると判断されれば4年間ジオパークを名乗っていいというグリーンカードと呼ばれる評価になります。ところが、ちょっと改善が必要だとなる場合は2年間だけのジオパークで、その中で必要なRecommendationsに対応しなさいという勧告がなされます。それでも改善されなければレッドカード、もう認定?奪ということになります。例えば、先ほどの七つのクライテリアに明らかに反するようなことが顕在化していた場合は、もう一発で認定が?奪されるということです。
 最近の審査でよく見られることは、マンパワーが十分か、スタッフがちゃんといるか、地球科学者がいるかということ。それからテリトリーの部分ですけれども、保護を目的とする世界遺産、あるいは国立公園保護地区などとジオパークの範囲が全く一致するということはあり得ない考え方だと。同じものを目的にしているのであればどれか一つにしなさい、あるいは重複するのであれば、それらを重複させたことによる相乗効果を説明しなさいということが審査のときに求められます。それから、Visibility、ジオパークであることをきちんと示すための可視性というものをちゃんと評価しなければならない。ここはジオパークなんだけどジオパークという文字が入ってこないような地域はだめだと。それから国際的な意義を普及させていく上で難し過ぎるとか、相手にとって分からないような難しいケースもよろしくないと。
 では、地球科学の国際的な価値としては、世界遺産で求められるのはこのUOV(Universal Outstanding Value)というやつですね。顕著な普遍的な価値なのですけれども、地球科学的な価値というのはそこまで求めてはいません。例えば世界で一つしかないという無二である必要はありませんけれども、少なくともその国を代表するようなものであってほしいと。ただ、同じ国で類似の地質学的価値を有するものが隣接しているのはまずい。これ日本で実際の案件がありまして、桜島と霧島という二つのジオパークがそろって別々にユネスコ世界ジオパークの申請をしようとしたのですけれど、こういうのは全く認められません。一つのジオパークとして連携して出さないと認めないという形で、一回その申請を退けております。あと、その国際的価値に関しては、学術論文等で、これがきちんと評価されているということを示さなければなりません。
 今度、実際の現場のお話になりますけれども、先ほどの七つのクライテリアを分けますと、こういう仲間分けができます。例えば、書類でおおよそ確認できるものと、現地でしか分からないものというのがあるわけです。ですので、書類でもちろん確認できるものは審査員とやりとりはしますが、現地で確認するものとしては、現場で見せなければならない。どういう戦略を取ったかというと、うちの島原半島ジオパークは、8年たっていますので、どのくらい地域住民がジオパークという仕組みを理解し、それを浸透させようとしているか、活用しようとしているかというところを見せなければならないので、住民と対話する場を多く求めました。さらに、学術的価値をきちんと示さなければいけませんので、学術的価値を有する露頭、地層の見える場所にも連れていきました。例えばこれが現場です。大体私が写っているのですけれど、貴重な学術的価値を持つ地層で、地質の説明をすると。これ、ガイドさんなのですけれども、噴火の規模をキノコの大きさで紹介するとかですね。あとは、実際に、和ろうそくの絵付け体験なのですけれど、郷土文化に触れ合ってもらったり、地元の高校生と交流をすると。これは全くサプライズで、コンビニに行ったら勉強しているところに審査員が入っていった場面の写真です。また、別の高校生への説明やヒアリング、それから農家さんや温泉水から塩を作る業者さんとの交流、それから民話を語る語り部さんとの交流や小学生のガイドさん、レストランやそのホテルのおかみさんとの交流などを通じて、ジオパークがこういう活動をしているということを、実際に審査員にお見せしています。
 今度は審査する側なのですけれども、私が行かせていただいたのはベトナムのほぼ中国との国境地域です。このベトナムの地図の本当に北の方です。ここに書かれたような見どころは持つのですけれども、例えばアンモナイトの化石がぽんと出ているのですけれど、これが普通にそのまま置かれていると。いつ盗掘されてもおかしくないような状況で置かれているのを見せてもらったり、あるいはすばらしい景観が見えるこういうような場所、実はここは鍾乳洞の跡で、地下水が流れた跡なのですけれども、そういった説明が無い。鍾乳洞の中に入ると、こういう毛みたいなのがいっぱい生えてるんですね。しかしこれが何なのかという説明がなかった。それから、こういうカルスト地形、浸食地形が作る壮大な景観があり、その下にはすごく大きな滝が見えている。ですけれどもそのカルスト地形の成因はあるのですけれども、その滝とか地質学的背景の説明がほとんど無いと。そういったところには、こういう様々な生活様式の異なる少数民族がたくさんいて、それぞれ拠点で活動しているのですけれど、その必然性もないと。これがビジターセンターですって言われても、石の写真だけとかですね。非常にきれいな鍾乳洞があるのですけれども、その上を直接歩いてしまうとか、ですね。
 ですので、実際に現場に行って良いことも悪いこともあったのですけれども、個人的に残念だったのは、やはり地球活動の産物と、その少数民族の暮らしの関わりや生活について説明が無かったことです。また、ジオサイトと呼ばれるその見どころまでのアクセスが非常に悪い、地質遺産の保全に対する意識が低いということで、ちょっと厳しめのお話をしてきました。ですので、結局審査でどういうところを着目しているか、一言で言えば4年間認定できるか、ジオパークとしてやっていけるかという視点で見ていきます。そのために予算とかマンパワーとか、運営組織がきっちりしているか、保全をちゃんとしているかというところをどうしても見ることになります。再認定地域の場合は、認定後どのような変化が地域にあったかということを中心に見ていっております。
 ですので、これがまとめということになるのですけれども、基本的にはMABが求めていることとジオパークの目的が非常にリンクしている。MABでやろうとしていることに地球科学的価値を加え、更にその地域の価値を高めていくという相乗効果が取れると思っておりますので、この後の皆様の議論の参考になればと思います。ありがとうございました。
【礒田主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明について、御質問等ありましたらお願いいたします。
【松田委員】  よろしいですか。どうもありがとうございました。
 二つありまして、一つは現地審査ということなのですけれども、これ実はユネスコエコパークの方では、世界国際審査員が書面だけで審査しているのですね。現地審査があると何が助かるか、何かトピックが1個あればお願いしたいということです。
 もう一つは、ゾーニングなのですけれども、実は私、ジオパークのゾーニングって調べてもよく分からないことが結構多くて、ジオサイトというのはよく分かるのですけれども、面的にここをジオパークと認定するというゾーニングに注意されているのかという2点をお願いします。
【大野国内委員】  まず、ゾーニングの話なのですけれども、ジオパークに関してはゾーニング設定というのはしていないです。守るべき場所はそのサイト、で、それが地質学的価値を持つものはジオサイト、それ以外のものはエコサイトあるいはヒストリカル・カリチュアル・サイトという呼び方をしていて、そのサイトの保全、保護というものが目的になっております。ですから、ここが大事だというところをゾーンに分けていくという考え方ではなくて、そこのスポット、スポットを守っていこうという考え方です。ですから例えば、サイトが100、200というのはあり得ない話で、それを全て保護、保全できるか、とんでもないマンパワーとお金が必要だと。でも実態としてそういうジオパークが複数あるので、しかもユネスコが最近そのジオサイト、エコサイト、ナチュラル・カリチュアル・サイトというものをちゃんと分けなさいということを言ってきておりますので、今、この現場が今まで一緒くたにまとめたジオサイトというのを再編しようとしております。島原半島はそれが間に合わなかったので、審査員に非常に厳しいことを言われました。
 それと、現地審査をするメリットなのですけれども、先ほども現地でしか分からないことっていうのがありました。例えば地域の人が本当にこの仕組みを喜んでやろうとしているか、そこは持続性というものに非常に大事になってきます。よくありがちなのが、首長さんがやりたいと言ったので、それを市役所の職員が一生懸命取り繕って申請だけしました。地域の人はそのことを何も知らないで、何か認定されたらしいよ、へーそれ私たちにとって何の関係があるの、という状況ではもたないんですよね。地域に対して、結果的には地域住民の生活を良くしていく、あるいは幸せに暮らしていくためのプログラムであるはずですし、全ての行政職員がその自然環境を保全するということは原理的に無理ですから、そこにいる人々たちの意識を上げて、みんなで守っていくという感覚がどうしても必要になるのですけれど、書類だけではそこは多分見抜けないだろうと。例えば教育活動やってるからいい。だけどそこで展開されている中身が、本当にふさわしいものかどうかというのは、実際に見せていただかないと。そうすれば、いやちょっと、それは違うことを教えたら曲がっちゃうよというアドバイスもできるわけで、そこは現地でしかできないことだと思います。実際、ジオパークの現地審査はそういう視点で、なるべく現場の人とやりとりをするというところを大事にしております。
【礒田主査】  他にございますでしょうか。
【上條委員】  ありがとうございました。運営体制とキーパーソンという話を最後にしていたと思うのですけれども、実際これは予算を伴うもので、それは実際、地方自治体が独自に負担するかどうかというのが質問の一つと、もう一つは関連して、審査する側はその予算的なものというのはどういう観点から審査するのでしょうか。
【大野国内委員】  まず予算に関して、日本のジオパークの場合はほぼ全てが地方自治体からの負担金です。で、複数の自治体で構成されているエリアの場合は、人口とか面積とか、サイトの数等によって負担金を案分して、お金を拠出して、それを協議会が運営しております。ですので、中には頑張って自前でやろうとしている、民間でやろうとしているところもあるのですが、なかなか儲からないとうまくいかないのですね。やはり地質学、地層を見に行きましょうというのは、なかなかツーリズムとして成立しないものですから、民間でやっているところもあるのですけれどなかなか苦労されているようです。
 その予算に関してなのですけれども、ここから少なくてここから上がいいという線引きはなかなか難しいです。ただ、基盤整備として必要な看板類とか冊子類、そういった普及啓発類に関しては、どうしても初期投資が必要ですので、それに関して例えば予算が年間数百万しかないというのは多分あり得ないです。数千万ぐらいの初期投資をし、その後、ハードウェアがちょっと低くなればちょっとランニングコストは下がるかもしれませんが、ある一定期間、メンテナンスができるだけのお金は投資していかないといけない。大事なことは、初期投資、例えばずっと1,500万ずつ出していくというのも大変な負担ですから、そのジオパークなり別の仕組みを使ってちゃんと地域経済を活性化させることを考えなければならない。例えば、独自のお土産物を作って儲けるお店が出てくるとか、あとはツーリズムをきちんと誘致して観光客を呼び込んで、地域にお金を落としてもらう。そういった仕掛けを数年掛けて作っていかないと持続しません。
 ですので、日本では日本ジオパークにしてもユネスコ世界ジオパークにしてもまだまだそのツーリズムでは金儲けというところが非常におろそかです。それはどうしても公金が出てきてしまうので、公金を扱って金儲けをするのかみたいな意見が根強いんです。ですからそれを少しずつ払拭していかなければだめだと。そういうところは審査で見させていただいていますし、お金が必要なのは分かるけれども、それをどう有効に使っているか、地域の人がそれをどううまく利用していくかというところが一つのキーポイントになります。
【上條委員】  ありがとうございます。
【礒田主査】  それでは、ほかに御質問等無いようでしたら、リマ行動計画の進捗の方法について議論したいと思います。
【大野国内委員】  ありがとうございました。
【礒田主査】  ありがとうございました。リマ行動計画では、2年ごとに、各国は本計画の進捗状況について報告することが求められております。つまり、第1回目の報告は、2018年の第30回MAB計画国際調整理事会において報告する必要があります。この報告に向けて、まずは各BRでの現在の取組状況を把握するため、今年度中に各BRに対して、リマ行動計画の実施状況並びに10年ごとに実施される定期報告に向けての取組状況について、調査を実施しようと考えております。既に、委員の皆様には、事務局から事前に調査実施の件と、その調査票の案についてお配りして、御意見をお伺いしております。本日はその御意見を踏まえた資料をお配りしておりますので、それを基に審議したいと思います。
 それでは、資料について、まずは事務局から説明をお願いします。
【秦国際統括官補佐】  資料4をご覧いただきたいと思います。今、御説明がありましたように、この調査票の案につきましては、委員の皆さんに先にメールで照会させていただきまして、修正意見を頂いております。それを反映させたものが今日お配りしている資料でございます。
 資料の調査票の構成ですが、第1部のところは、国際調整理事会で、ほとんどの国内のユネスコエコパークは登録時あるいは拡張登録時にコメントがついているものが多くございます。それのフォローアップの進捗状況と、10年に1度の定期報告へ向けての体制がどうなっているかということを簡単に伺うものとなっていますけれども、この1部に関しては、修正意見はありませんでした。
 続きまして、第2部の方ですが、こちらがMAB戦略・リマ行動計画に関する調査票になっております。こちらは、網羅的に書くということではなく、各ユネスコエコパークで記載できる範囲でということで、そういった調査の整理になっております。修正意見は、幾つかございまして、表現上少し直した方がいい点や、ターミノロジーの問題で用語に少し説明を加えるというようなことがほとんどでございまして、大きな変更点はございません。
 この資料4の調査票を今回お認めいただきましたら、可能な限り速やかに各ユネスコエコパークに照会し、年度内に回収をしまして、その内容を踏まえて、来年の国際調整理事会にどのような報告をするかという取りまとめの作業をやっていきたいと考えております。以上でございます。
【礒田主査】  ありがとうございました。それでは、今の説明を受けて、調査の実施について御質問ありますでしょうか。本調査については、本分科会の決定とした上で、今後九つのユネスコエコパークに調査を実施する予定です。いかがでしょうか。
【松田委員】  よろしいでしょうか。先ほどジオパークの方で4年に1度でかなり厳しい審査があるという話でしたけれども、ユネスコエコパークは10年に1度の定期的評価が課せられていると。しかも、それに満たしていなければ除名とかそういうシステムが明確には無いという問題があります。これをやる時期なのですけれど、今回はリマ行動計画の進捗の報告をするからやるということなのか、それとも今後定期的にこういうことを課していくのかということが質問です。既に、特に2012年に綾が登録されてからもう5年以上経とうとしていて、やはり私、10年という定期報告のスパンはちょっと長過ぎると思いますので、例えば2012年に登録されたときにどういう勧告が出て、それにどう対応するかをそろそろ伺った方がいいのではないかなと実は思っているところなので、質問させていただきます。
【秦国際統括官補佐】  事務局の方では、今、そういった計画を予定はしておりませんけれども、まさにそういう論点をこの分科会で御議論していただくような話ではなかろうかと考えております。
【礒田主査】  また別の機会に、議論の場を設けるということでよろしいですか。
【秦国際統括官補佐】  そうですね、はい。
【礒田主査】  ほか、ございますか。
 それでは、本議題は以上といたします。ありがとうございました。
 なお、今後本調査を実施後、取りまとめる際に何人かの委員の皆様には御助言を頂きたいと考えておりますので、御協力をお願いいたします。
 それでは議題3に入ります。本議題は非公開となりますので、傍聴者の方、御退席ください。


<議題3.平成30年ユネスコエコパーク申請について>
平成30年ユネスコエコパーク申請地域について議論を行った。


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