日本ユネスコ国内委員会文化活動小委員会(第137回) 議事要録

1.日時

平成31年2月25日(月曜日)15時15分~16時30分

2.場所

文部科学省12階 国際課応接室

3.出席者

(委員)
 島谷弘幸(委員長)、相賀昌宏、大枝宏之、西藤清秀、佐野智恵子、芳賀満、羽田正、蓮生郁代、平野英治、細谷龍平【敬称略】
(関係省庁等)
外務省、文化庁、アジア太平洋無形文化遺産研究センター(IRCI)
(文部科学省(日本ユネスコ国内委員会事務局))
 大山国際統括官、池原文部科学戦略官、小林国際戦略企画官、秦国際統括官補佐、その他関係官

4.議事要録

【小林国際戦略企画官】  それでは、まだ定刻にはなっておりませんけれども、委員の先生方おそろいでございますので、文化活動小委員会を開始させていただければと思います。本日は、御多忙中のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。私、日本ユネスコ国内委員会事務局の小林と申します。本委員会前委員長の岡田保良委員が昨年11月末付で任期満了により御退任されておりますので、新しい委員長が選出されるまでの間、私、事務局が議事進行を務めさせていただきます。
 議題に先立ちまして、事務局から幾つか御報告を申し上げます。まず、昨年12月1日付でお二人の委員に新たに文化活動小委員会に加わっていただいております。
 まず、西藤清秀委員でございます。
【西藤委員】  西藤です。よろしくお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】  それから、佐野智恵子委員でございます。
【佐野委員】  佐野智恵子でございます。よろしくお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】  それから、芳賀満委員でございます。
【芳賀委員】  東北大学の芳賀と申します。ギリシア、ローマ、インドの考古学が専門です。「世界の記憶」のアジア・太平洋地域委員会執行部の副議長をしております。
【小林国際戦略企画官】  続きまして、定足数につきまして、本日は出席の委員が10名で、委員の過半数、7名以上ですので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 また、本委員会は日本ユネスコ国内委員会の会議の公開手続第1項に基づき、人事案件である議題1を除き公開することといたします。傍聴者・発表者につきましては、議題1終了後に入室していただきます。また、公開部分における御発言は、議事録としてそのままホームページ等で公開されますので、御承知おきいただくようお願いいたします。
 以上でございます。
【秦国際統括官補佐】  続きまして、配付資料を御説明申し上げます。
 机の上に議事次第と委員名簿、資料等をお配りしていますけれども、議事次第の下に配付資料一覧がございます。資料は3種類、資料1から資料3まで。それから、参考資料も3種類、参考1から参考3まで。不足の資料がございましたら、事務局へいつでもお声がけいただけたらと思います。


〈議題1 日本ユネスコ国内委員会文化活動小委員会委員長等の選出について〉
 委員の互選により、島谷委員長代理を文化活動小委員会委員長に選出した。
 また、委員長の指名により、羽田委員を委員長代理に選出した。
 同じく、委員長の指名により、芳賀委員の「世界の記憶」選考委員会への所属を決定した。


〈議題2 ユネスコ文化関係の活動について〉
【島谷委員長】  続きまして、議題2に入ります。
 議題2では、昨年3月の前回小委員会以降の主な文化関係の動きにつきまして、事務局から御報告いただきたいと思います。それでは、お願いいたします。
【秦国際統括官補佐】  資料1にて簡単に御報告させていただきたいと思います。
 まず、我が国の世界遺産関連の動向につきましてですけれども、昨年6月に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が我が国の22件目の世界遺産として登録されました。
 次に、2019年に世界遺産委員会が行われる予定ですが、そちらにおいて我が国から推薦の「百舌鳥・古市古墳群」が審議予定となっております。
 また、この2月には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の推薦書をユネスコへ提出したところです。こちらにつきましては、2020年に開催される世界遺産委員会において審議予定となってございます。
 また、1月の文化審議会世界文化遺産部会において方向性を決めたものですけれども、来年度の推薦候補の選定につきましては、今年度の文化審議会の答申内容をそのまま引き継ぐことを基本とし、「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の進捗状況等を確認し、最終的に推薦候補に決定することになりました。
 次に、無形文化遺産関係の動向でございますが、昨年11月に「来訪神:仮面・仮装の神々」が拡張登録という形で無形文化遺産として登録されました。
 また、2020年に開催されます無形文化遺産保護条約政府間委員会において審議事項となっておりますけれども、「伝統建築工匠の技」がユネスコに再提案という形で審議される予定でございます。
 最後に、無形文化遺産保護条約の締約国会議について、我が国は委員国として再選されたことを御報告させていただきます。
 簡単ですが以上でございます。
【島谷委員長】  ありがとうございました。何か御質問、御意見はありますか。
 どうぞ。
【平野委員】  皆様方、これは周知のことだと思うんですが、私は素人で全く確認のためにお伺いしたいんですけれども、今御報告があったユネスコの世界遺産関連の動き等々と、この文化活動小委員会の関係を確認させていただけないでしょうか。我々は何をすればよろしいんでしょう。
【島谷委員長】  では、事務局から。
【小林国際戦略企画官】  世界遺産と無形文化遺産につきましては、候補案件の選定というのを文化庁の文化審議会で基本的に実施して、それを関係省庁連絡会議で承認するという手続をとっております。ですので、案件の選定はそちらですけれども、この委員会は、ユネスコの文化関係の活動全般について審議するという観点から、報告事項として、今ユネスコ関係でこういう動きがあるということを御報告するものでございます。
【平野委員】  我々は御報告を受ければよろしい……。それを踏まえて今後の議論に生かすということですか。
【小林国際戦略企画官】  はい。あるいは、何かもしこの関係で御意見がございましたら頂戴できればと思います。
【平野委員】  御意見するような立場でしょうか。
【島谷委員長】  意見も言っていただいて、どこまで親委員会で討議をするかというのはまた別ですけど、文化活動小委員会並びにほかの委員会等に連絡、調整をして、よりよいユネスコ活動になるように努めるのが、この小委員会の役目だと理解をしております。
【平野委員】  ありがとうございます。そうすると、最後に1点だけ、文化審議会なるものと文化活動小委員会はガバナンス上どういう関係に立つんですか。
【小林国際戦略企画官】  これは、文部科学省の中に文化庁という組織があって、その下に文化審議会があって、一方、この日本ユネスコ国内委員会というのは、文化庁とは別の文部科学省の中の組織としてあるということで、基本的には全く別物とお考えいただいて結構かと思います。
【平野委員】  別物。
【小林国際戦略企画官】  はい。
【平野委員】  そうすると、今御報告を受けた文化審議会を中心とする活動、これは別物なわけですよね。
【小林国際戦略企画官】  はい。扱っている内容が同じユネスコの活動ということではかかわりはありますけれども、組織上は別ということでございます。
【平野委員】  わかりました。ありがとうございます。我々は何をすべきかというのを頭に入れておきたかったものですから。ありがとうございました。
【島谷委員長】  ほかに何か御意見とか、今のように御質問がありましたら。
 お願いします。
【細谷委員】  今、平野委員が指摘された点は重要だと思います。文化審議会は、基本的に我が国の文化政策全般に関わる審議を行う機関だと理解しています。当小委員会が属しているユネスコ国内委員会は、国際機関たるユネスコに特有の組織で、ユネスコ本体とは独立した我が国の国内機関ではありますが、あくまでもユネスコとの関係における我が国の関連の政策について諮問を受ける機関です。
【池原文部科学戦略官】  今、細谷先生がおっしゃったように、文化庁の文化審議会というのは、日本国内において文化的な観点から審議を行って、それを日本として推薦していくという一つの体制ができているわけですけれども、このユネスコ国内委員会は、ユネスコに対して、ユネスコの活動を日本として応援していくという立場で、どのようなことが可能かということについて有識者の皆様の御意見を頂戴して、それを総会とか、ユネスコのいろいろな活動、委員会の中、あるいは代表部を通じてユネスコに働きかけをしていくことになりますので、その意味では世界遺産ですとか、無形文化遺産につきましても、先生方の意見をお聞きしながら、今日も文化庁、外務省にも来ていただいておりますけれども、その意見を踏まえて、これから対応していただくということが考えられると思います。
【島谷委員長】  今御説明いただきましたけれども、それでよろしいでしょうか。また不明な点であるとか、疑問であるとかありましたら、最後でも構いませんので、また御意見を頂戴するということで。
 守山さんから、無形で何か補足することはありますか。
【守山補佐】  大丈夫です。


〈議題3 ユネスコアジア太平洋無形文化遺産研究センターの活動について〉
【島谷委員長】  では、続きまして、議題3に移らせていただこうと思います。
 本議題では、後から入っていただきましたユネスコアジア太平洋無形文化遺産研究センターの所長、岩本所長が入ってくださいましたから、御説明をいただきたいと思います。省略しましてIRCIというものでございまして、ユネスコの協力機関として、ユネスコと日本政府の協定により、平成23年に設立されました。ユネスコの組織の一部ではありませんが、カテゴリー2センターと呼ばれまして、ユネスコという名称とロゴの使用が許可され、ユネスコ活動の貢献が期待されております。
 アジアでは、中国、韓国が独立した組織として非常に活発に運動しております。その日本の組織でございまして、我が国唯一の文化関係のカテゴリー2センターでありますIRCIの活動を今日は報告いただき、その後、各委員の皆様から、アジア太平洋における我が国のユネスコ活動の拠点として、IRCIの今後の発展方策、問題点等について自由に御討論いただきたいと考えております。
 では、岩本所長、よろしくお願いいたします。
【岩本所長】  どうもありがとうございます。IRCIの所長の岩本でございます。本日はこのような機会にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 ただいま島谷委員長から御懇篤な御紹介がありましたように、私どものセンターはカテゴリー2センターとユネスコから呼ばれております。カテゴリー2と言うからにはカテゴリー1は何なのかということですが、通常ユネスコ内部でカテゴリー1と言いますと、International Institute for Educational Planningという教育政策研究所のようなものがパリにございますけれども、ある程度の自律性をもつがユネスコの定員と予算の中にあるものをカテゴリー1研究所と呼んでいるわけです。
 あるいはジュネーブにInternational Bureau of Educationという国際教育評議会という組織がございますけれども、これもカテゴリー1の機関としてあくまでユネスコの予算と定員の中で活動しているわけでございます。
 それに対してカテゴリー2センターというのは、法令上の用語ではございませんけれども、そういったカテゴリー1と異なり、設置主体はあくまで加盟国であります。ただ、先ほどお話がありましたように、ユネスコのロゴが自由に使えるという意味において、ユネスコと加盟国との協定に基づいているということでございます。
 このカテゴリー2センターは、世界に100以上ございます。あくまで、先ほど申しましたように、加盟国の機関でありますけれども、ユネスコとの約束に基づいてユネスコの方針に沿って仕事をする機関でございます。
 今日は大きく3つに分けてお話しいたします。
 第一に組織概要です。まず設立の背景といたしまして、2003年に「無形文化遺産の保護に関する条約」というものが採択されました。アジア太平洋地域における無形文化遺産保護のための調査研究というのをどんどん進めていかなくてはいけないのではないかという考えから、文化庁、文部科学省、外務省、日本政府代表部等が中心になりまして、こういう機運が盛り上がってまいりました。 無形文化遺産関連のカテゴリー2センターというのは、実は日本、中国、韓国、ほかにアルジェリア、ブルガリア、イラン、ペルーとあるわけでございます。全部で7機関でございます。これは世界中を網羅しているというわけではないけれども、ユネスコの無形文化遺産担当部局としては、こういった7つのカテゴリー2センターをうまく活用してユネスコの施策を推進していこうとしております。
 と同時に、私どもは、国立文化財機構の一施設でございます。したがいまして、東京国立博物館でありますとか、島谷先生のいらっしゃる九州国立博物館等と、口はばったいのですが、同じ位置づけの施設でございます。
 これも背景のようなことになりますけれども、2003年にユネスコ総会において採択されたのがこの条約でございます。もちろん1990年代末には、この条約のプロトタイプとなるような傑作宣言(人類の口承及び無形遺産に関する傑作の宣言)というものがありまして、日本の能とか歌舞伎は、既にその段階でユネスコの中に位置付けられていたのですが、改めて条約という形で2003年に設けられたのが、「2003年条約」と我々が現在「無形文化遺産の保護に関する条約」と言っているものでございます。
 2009年、第35回のユネスコ総会で、私どものセンターの設置がユネスコ総会において承認されました。割合手続が厳しくて、、feasibility studyというものを提案国がレポートとして提出して、執行委会等で審議を受け、それからまた更に正式なユネスコとのアグリーメントの案とか事業内容とかいったものを執行委員会・総会で審議してユネスコ総会で承認を受けるというものでございます。
 それから、2011年、おかげさまでIRCIというものが堺市に設置されたわけでございます。なぜ堺市かというと、堺市は、もともと国立民族学博物館の研究者等との協力によりまして、世界民族芸能祭を二十年近く前に開催した経験もございます。また、堺市としても、市民に少しでもユネスコになじんでもらおうという気持ちがあったのだと今にしては思うわけでございますけれども、そういった形で誘致されました。今現在、堺市博物館の中に私どものセンターは入っておりますけれども、施設を無償で貸与されています。
 次に、無形文化遺産とはどういうものかということですが、1972年に採択された世界遺産条約が有形のものを対象とするのに対して、あくまで我々は、英語で言うとインタンジブル、フランス語で言うとイマテリエルという、そちらの無形文化遺産ということで、口承による伝統とか芸能とか、社会的慣習、儀式、伝統工芸技術、そういったもの、非常に粗っぽい言い方をすれば、世界遺産が不動産を相手にしているのに対して、我々は動産であるとか、あるいは目に見えないものを扱っているということになります。
 先ほど来お話が出ています2003年の「無形文化遺産の保護に関する条約」がこういったことでございますが、あくまで無形文化遺産を保護していく。そして、関係するコミュニティーや集団、個人の権利を保護、条約自体が保護しているというのはミスリーディングですが、少なくとも無形文化遺産の主役はコミュニティーであるとか集団、そういった個人のものであるということで、世界遺産がoutstanding universal valueという、ある意味普遍的な価値を前提としているのに対して、無形文化遺産というのは、変わっていくものであるけれども、あくまでその主体はコミュニティーであり、集団であり、個人であると言っているわけであります。
 それから、2つのリストでございますが、代表リストには、先ほどの議題で御報告のあったようなものが掲載されているわけであります。
 我々は、先ほど申しましたように、国立文化財機構の一組織でありますと同時に、ユネスコの方針に沿って仕事をしているところでございます。したがいまして、ユネスコカテゴリー2センターとして、日本におけるIRCI、それから、中国では、略称CRIHAPと言っておりますけれども、無形文化遺産に関する人材育成、それから韓国のICHCAPというのは、無形文化遺産に関する情報ネットワークについて仕事をしている。実は、同じ時期に3つの国が提案したものですから、こうしてデマケーションをはっきりさせようということでこういうふうになったわけでございます。
 運営理事会というものが私どもにはございまして、これはユネスコとの協定上要請されているものでございます。
 運営理事会の理事になるのは、協定上、国立文化財機構の理事長、政府の代表、日本では文化庁長官、そういう取扱いをしております。それから、ユネスコ国内委員会の代表、他の加盟国があり、さらに、日本の大学研究機関、地方公共団体の代表者、今現在では、九州大学、国立民族学博物館の研究者、それから、堺市長ということになっております。そのほかに、ユネスコ事務局長の代理ということで、ユネスコ北京事務所の文化担当官に常に出席を要請しているところであります。
 昨年の12月6日に日本政府とユネスコとの協定が更新されました。最初の協定が5年で協定の期限が来たのですが、その後いろいろ交渉がございまして、2018年12月6日に外務省の御努力によりまして、協定が更新されました。その第10条1項には、「センターがその運営及び適切な機能に必要な全ての資源を受領するために求められる適当な措置をとることを約束する」という規定がございます。もちろんこれは、政府機関からのみならず、非政府機関からでもいいわけですけれども、そういったことをちゃんと約束しますということを言っております。
 また、日中韓の文化大臣会合が定期的に開かれておりますけれども、2017年の京都宣言でも、アジア太平洋地域におけるこういったカテゴリー2センターの活動を支援することで一致したという御意見をいただいております。
 細かくなりますけれども、大体事業規模で4,500万ぐらいと見ていただければ結構です。で、実際研究に従事している者が、常勤が1人、それから、私どもアソシエートフェローと言っている任期付きの職員が5人ほどでございまして、6人ぐらいでやっているのが現状でございます。
 当然のことながら、国立文化財機構の中で運営費交付金をいただいております。また、文化庁からは、委託事業ということで支援をいただいております。また、こちらのユネスコ国内委員会との関係でいいますと、国際統括官付からは、ユネスコパートナーシップ事業、後にユネスコ活動費補助金という形でいただいております。2017年度は0となっておりますが、これは私どもの申請のできが悪かったために落とされたものでございます。
 それから、一番下に基金とありますけれども、これは技術的な話ですけれども、国立文化財機構の中に篤志家から寄せられた寄付金をもとに基金がございまして、そこから支援を得ているものでございます。それを色別に表したのが下のグラフでございます。文化庁からの委託費にかなり依存しているところはあるわけでございますが、こちらの国際統括官付からも、ユネスコ活動の支援ということで、申請の提案の内容がよければ、審査の上、お金をいただける仕組みになっております。
 なお、ここには記しませんでしたけれども、日本が人件費を含めまして、大体1億2,300万円ほどの規模でございます。中国は購買力平価の関係もございますが、大体同じ規模であります。韓国は約2億6,850万円ということで、日本のおよそ倍ということになっております。残念ながら、職員数も中国、韓国が私どもの倍おります。
 第二に、ミッションといたしまして、先ほど申しましたユネスコとの協定上で、あくまで調査研究というのは、実は無形文化遺産の場合、もちろん文化人類学の研究であるとか、民族学の研究というのがあるのですけれども、では、無形文化遺産条約を批准していようがしていまいが、そういった文化財保護法でいう無形文化財的なものについての研究はどれほど進んでいるかというと、さほど進んでいないというのが西暦2000年代初頭の問題意識でございました。そういったものを促進していくということでございます。
 また、条約第11条から第14条までに規定する措置について援助していくというのは、国内的な保護措置をどうしていったらいいとか、インベントリー(目録)をつくるのにどうしていったらいいだろうかとか、教育して国民の意識を向上させるにはどうしていったらいいだろうかということについて、あくまで調査研究の観点から援助するということです。
 次に各関係機関との連携という意味で、IRCI、先ほど申しましたように、例えば、博物館との連携ということで言えば、国立民族学博物館と連携いたしまして、一昨年もシンポジウムを行いました。国内外の研究機関でいいますと、例えば、私どもの身内でいいますと、東京文化財研究所と協力してシンポジウム、後ほど申しますように、無形文化遺産と防災に関するシンポジウム、あるいはその前提となる調査研究というようなことをとやっております。また、タイでございますとかフィリピン、そういった研究所との連携も進めているところであります。
 第三番目に、現在の事業でございますが、後ほど概要を詳しく御覧いただければと思いますが、2つに大別されます。無形文化遺産保護のための研究の促進、そして、無形文化遺産保護と災害リスクマネジメントに関する調査研究という2本立てでやっております。
 無形文化遺産の保護のための研究の促進という観点からこういった戦略プロジェクトでやっているわけですけれども、各論に入りますと、研究のマッピング、そもそもどういった研究がどこで行われているのか、こういったテーマについてどういう研究がされているのかが中々分かっていなかったということがございまして、2013年度から、こつこつ各国の研究者と委託契約を結びまして文献調査をお願いしまして、今まで30カ国ほどにつきまして情報を収集して、それをデータベース等に投入してきたところであります。
 2番目でございますが、これはSustainable Development Goalsに関連したお話でございます。これは、文化そのものというよりも、無形文化遺産というものが教育にどれだけ貢献しているか。Sustainable Development Goalsのターゲット4.7では、教育の質の向上ということで、文化の貢献に言及しているわけですが、それがどういう形でできるかということを現在フィリピンとベトナム、この2カ国において、教材づくりのためのガイドラインをつくろうということで研究しております。これはまさしく国際統括官付からの御援助によって行われているわけです。これなどは、無形文化遺産の内在的な研究というよりも、無形文化遺産とそれを取り巻く教育、それについてどうやっていくかという意味であって、決して無形文化遺産の後継者を養成するという意味の教育ではなくて、どんな子に対しても無形文化遺産を教えることが教育の質の向上を高めるのかということをここで検討しているところでございます。
 それから、自然災害に関する調査研究。これもアジア太平洋8カ国ほどで調査研究を実施いたしまして、災害と有形の文化遺産というとみんなピンとくるわけですけれども、それでは、無形の文化遺産が災害によってどうなってしまうのか。あるいは、災害から復興するときに、地域のお祭りであるとかそういったものが人々を結びつける、あるいは人々を元気づける、そういったことについて調査研究をいたしました。先ほどの災害復興における無形文化遺産の役割というのは、実はある意味、日本が非常に目立った例で、ワークショップを昨年の末に仙台で行いました。参加者が10数カ国から来ましたが、彼らがみんなで女川町に行って、そこで獅子舞を世代を越えて継承しているのを見て、皆感銘を受けたわけでございます。そういったことについて議論をした結果を、近々ワークショップの報告として刊行しようと思っているわけであります。
 私が気をつけているのは、こういったことをやるときに、なるべく、先ほど申しました中国や韓国のカテゴリー2センター、それから、今回は災害があったためにペルーにありますCRESPIALという無形文化遺産のカテゴリー2センターも非常に関心を示しまして参加してくれたりしております。こういったこともやっておるということでございます。
 最後に、これも実はユネスコの中期計画等で非常に着目されているわけですが、ポスト・コンフリクト、紛争の後の国家における無形文化遺産、例えば、国によっては、紛争によってある部族の高齢者が全ていなくなってしまった、あるいは女性たちが全て働きの場を奪われたといったところにおいて、無形文化遺産はどうなってしまうのか、あるいは無形文化遺産というものをどうやって収集保存していくかといったことにつきまして、今現在、アフガニスタン、東ティモール、スリランカで調査研究をやっているところでございます。ただ、そうは言いましても、こういった地域、なかなか危険な地域でございますので、実際にやるときには、むしろ日本に呼んで、それぞれの国の専門家と日本においていろいろな情報交換をして、事業を進めていることもございますし、また現実に調査に当たる現地の人たちについても、くれぐれも安全に気をつけるようにということは促しているところであります。
 非常に雑駁でございますが以上でございまして、私ども、カテゴリー2センターという意味では、かなり文化に近い活動をしているわけですが、日本国内では実はもう一つ、2006年に国土交通省の所管の土木研究所に水災害・リスクマネジメント国際センターというのがございます。日本におけるカテゴリー2センターというのは、私どもと国土交通省のセンターとで2つでございます。中国、韓国がそれぞれおよそ10前後あるというように、国によってそれぞれ違うわけですが、御案内のとおり、ユネスコの厳しい財政状況からいたしますと、ユネスコとしては、今までよりも一層カテゴリー2センターというものを自分たちに引きつけて、自分たちの事業を一緒にやっているという方向に持っていきたい。私どもにとってみても、それがプラスである場合には積極的に協力していくという方向で仕事をしているところでございます。
 御清聴どうもありがとうございました。
【島谷委員長】  どうもありがとうございました。
 IRCIの状況、様々な取組について今御説明いただきましたが、カテゴリー2センターが日本にあってこういう活動をしていること自体を初めてお聞きになった委員の先生方も多いのではないかと思います。組織の問題であるとか、いろいろ問題点があろうかと思いますので、ここではカテゴリー2センターを認識してもらう意味も含めまして質疑に入りたいと思います。御遠慮なく何か御意見、御質問ありましたら。
 どうぞ。
【細谷委員】  岩本所長、どうもありがとうございました。今日お久しぶりにお会いできて大変嬉しく思っております。それから、先ほど文科省から全体に関する御報告をいただき、ありがとうございました。所長のセンターで無形文化遺産に関わるアジア太平洋での事業を、中国、韓国のセンターとも連携して活発にやっていらっしゃることを、喜ばしく思います。
2003年に無形遺産条約が出来た時を振り返って、お尋ねしたいと思いますのは、最近のアフリカの無形遺産の登録はどんな状況になっているかということです。といいますのは、先ほど無形のカテゴリー2センターは世界に地域割りで7つあるとのお話でしたが、サブサハラアフリカにはまだないですね。もともと本条約は当時の松浦事務局長と日本政府でリードしてつくった条約でしたが、それはアジア、中南米、東ヨーローパなどもさることながら、特に世界遺産条約ではなかなかカバーできないアフリカの文化遺産の登録を進めるという政治的なねらいがありました。その趣旨が最近どこまで実現しているか、またサブサハラアフリカにおけるカテゴリー2センター設置の見通しは当面ないのかどうか、教えていただけますでしょうか。
【島谷委員長】  アフリカに対しては、岩本所長というよりも、守山さんおわかりになりますか。
【守山補佐】  後ほど。すみません。
【島谷委員長】  では、アフリカに関しては後ほどということで。
 で、2つ目に関しては。
【岩本所長】  アフリカにつきましては、先ほど申しましたように、アルジェリアにカテゴリー2センターがあるわけでございます。ただ、アルジェリアというのはユネスコの文脈で言いますとアラブ世界でございますから、アフリカを代表しているとは言えない。
 で、アフリカにおいて、このカテゴリー2センターをつくろうとする機運があるかというと、私は聞いておりません。ただ、詳しい無形文化遺産の登録状況などは後日御報告があるかもしれませんが、私どもが政府間委員会にオブザーバーで行きますと、結構アフリカからの加盟国も、もちろん委員国でありますから、熱心に議論し、情報を収集しているということは言えるところでございます。
【島谷委員長】  はい、ありがとうございました。
【守山補佐】  文化庁から最近の無形文化遺産保護条約のアフリカの動向についてですけれども、今、細谷先生からも御指摘がありましたとおり、もともとアフリカをはじめ途上国がこの条約を非常に熱心に支持をしてきた背景もございまして、今現在、この条約の加盟国178カ国ありますけれども、ユネスコの国際機関として世界を6地域に分けて、ユネスコでも地域グループ制というのがとられておりまして、ユネスコの分類で言うところの第5グループ、アフリカのグループの加盟国が178カ国中の42カ国となっておりまして、これは最大勢力です。ほかの、例えば日本が所属しておりますアジア大洋洋等と比べましてもアフリカグループが多いということで、先ほど御報告にもありましたとおり、この条約を履行する上での主要な決定事項といいますのは、178カ国全部が集まってもなかなか決まりませんので、この中で選挙を行いまして24カ国の委員国を決めて、その委員会が年に一度開催されまして、昨年の日本の来訪神もこの委員会の場で決定されたものということになりますけれども、この24カ国の委員国も地域グループごとに、加盟国が多い地域には多い委員国席が割り当てられているということで、現在アフリカの第5グループには6議席が割り当てられているということで、この6地域の代表、少ないところですと3議席しかないということになるんですが、アフリカは非常にこの条約の場でも活躍をしているということが言えるかと思います。
 それで、アフリカからの登録ですけれども、地域グループごとの登録の統計が文化庁にないので、もし外務省にあったら後で補足をお願いします。
【神尾補佐】  後で出させていただきます。
【守山補佐】  ないんですけれども、そうですね、そういう加盟国の多さもありまして、アフリカ諸国、非常に登録にも熱心です。また、アフリカからも多数登録が今までにもされておりまして、非常に無形条約の中では存在感のある地域ということで、条約のもともとのアフリカが非常に熱心に活躍していたということからしても、今もなお、そのような活躍は続いていると言えるかと思います。
【細谷委員】  どうもありがとうございました。お尋ねした理由は、御承知のとおり、国際機関としてのユネスコにとっての横断的な二大優先分野はジェンダーとアフリカです。特に無形文化遺産条約はアフリカとの関係が強いと思います。カテゴリー2センターが現実にサブサハラにできるのはまだ将来のことでしょうけれども、ほかのセンター、あるいはユネスコ本部からの協力も含めて、アフリカからの登録を促進することは、日本の対ユネスコ外交の観点からも大きな間接的利益につながっていくことだと思いますので、そちらも目配りしていただけたらと思います。
【西藤委員】  私自身、この2年ほど外務省が拠出したUNDP、国連開発計画の経費を使ってシリアの文化財関係者の研修をやっているんですけれども、様々な有形の技術上達のための研修もやっているんですが、シリア側から無形の人材育成、それと無形の保存修復、そのような人材育成もしてほしいという声があって、昨年、東京文化財研究所といろいろ話をさせていただいたんですが、私自身、太平洋無形文化遺産研究センターというのがありながら、そこに直接委託ができればいいのですけれども、結局中国が研修センターを持っていて、直接センターに研修とかのお願いができないという、すごく矛盾した状況があるというのがびっくりしたことですが、そういうところを改善とか何かできないのでしょうか。
 というのも、韓国、日本というすみ分け、確かにきれいですが、結局実際人を運んできて研修をお願いするときに、何も動かない、結局どこかの組織がまた違うところに委託して、そこがセンターを講師として呼んでという形にしかならないので、何か無駄が多いような気がしてならないんですが、ユネスコのセンターのすみ分けというのがそういう状況になっているんですが、お互いそういう中での改善とか、そういうものがうまくいかないのかとは思っているんですが。
【島谷委員長】  今、西藤委員から御指摘がありましたように、きれいにすみ分けできているようで実は問題がたくさんあるということかと思うんですけれども、これは岩本所長がどうこうできる問題ではないことです。
 はい、岩本所長どうぞ。
【岩本所長】  間違っていたら文化庁に訂正していただきたいんですけれども、先ほどデマケーションができたと申しましたけれども、中国がやっている人材育成というのは、どちらかというとユネスコの方針に沿った形で、例えば、2003年条約の解釈をどうするのかとか、登録をどうやってやるのかという、かなり技術的なところで世界共通みたいなところを中国がやっているところはございます。ただ、それに対して日本の研究機関は日本の研究機関で、あくまでエクスパティーズ(専門的技術)があるわけですから、中国のカテゴリー2センターがあるからといって、個別の案件についてまで全てを中国にお願いしなくてはいけないということではなくて、そこは日本の方がこういったエクスパティーズがあって、有形と無形を組み合わせた協力ができるという御判断があれば、それは日本でやって、それがカテゴリー2センターの関係に支障をきたすということにはならないと思います。
【島谷委員長】  という説明が今ありましたけれども、文化庁はそれでよろしいんでしょうか。
【守山補佐】  おっしゃるとおりかと思っておりますが、補足としまして、これは私の単なる個人的な印象かもしれませんけれども、設置するときが一番設置の根拠といいますか、日中韓はこれだけ近い地域で3カ所も同じ無形文化遺産保護を目的としたセンターを建てることの意味をユネスコの中でしっかりと明確にする必要があったということもあって、デマケーションについてはかなり明確にしようという意識が強く働いていたかと思います。ただ、実際運用してきてみれば、はっきりと日本が調査研究、韓国が情報ネットワーク、中国が人材育成というそれだけを分離独立しておのおのできるわけでもなく、いろいろな要素がかみ合ってこそ有効な活動ができるというところは実際やってきてみると、おのおののセンターもそれがわかってきているところなのかと思います。なので、最初に設置の根拠といいますか、異議をはっきりさせるためにデマケーションというものを明確にしつつも、実際の活動ではもう少しより有効な活動のために厳格にデマケーションだけをするよりも、有効な活動のためにはその中で柔軟にやっていこうという意識はだんだん強くなってきているのではないかという印象を私自身は持っておりますので、日中韓のセンターそれぞれの会議にお互い出たり、一緒にシンポジウムをやったりということをやっていただいていますので、引き続きその辺がデマケーションありきというよりは、活動にいかに有効に働くかというところを手段にしながら、3カ国で活動を続けていかれたらなと思っているところでございます。
【島谷委員長】  ありがとうございました。
 芳賀委員。
【芳賀委員】  限られた資源の中で大変すばらしい活動をなさっていると思います。そのIRCIの味方からの援護射撃として2つ。
 一つは、任期なしの常勤研究員を最低2名は置く体制の構築が必要かと思います。今、常勤1名は研究員ですか。
【岩本所長】  先ほど申しました常勤1名というのは、研究職の者が1名という意味です。
【芳賀委員】  あと、アソシエイトフェローの5人は任期が付いているわけですか。
【岩本所長】  任期3年でございます。
【芳賀委員】  それでは、設置目的の研究がかなうのには、まだまだ大変かと思います。勿論、所長が一番よくわかっていらっしゃることと思いますが。
 で、それも含めて2点目。国内の大学とか研究所、博物館との連携を組織的に行うことが必要かと思います。より具体的に申せば、クロスアポイントメントを含めて、柔軟な人事体制が必要かと思います。
 以上です。
【島谷委員長】  ありがとうございました。非常に力強い応援になったと思うんですけど、実際的には文化庁さんの補助事業で、お金は出すけど人は出ていないという状況で、その中で人件費を賄ってアソシエイトフェローの形で何とかやっているのが現状かと思いますので、金は出ても人がつかないと事業はなかなか進んでいきませんので、正規の予算として正規の人員枠が必要になってくるのは当然のことかと思いますが、今、芳賀委員から改めて指摘があったと。
 なおかつ、ほかの組織と連携しながらやっていく必要があるという、既に無形というのがほかの組織にもありますので、そういったところとの協力がどういうふうになされていくかが課題かと感じました。
【大枝委員】  IRCIは、アジア太平洋各国の消滅の危機に瀕する無形文化遺産の保護をやっていることはよくわかったんですけれども、質問としましては、日本にも21の無形文化遺産がありますけど、日本の無形文化遺産で保護が必要なものとか、あるいはそれを踏まえて今IRCIが活動しているというのはあるんでしょうか。
【岩本所長】  大変申しわけありません。日本の無形文化遺産につきましては、むしろ文化庁、あるいは東京文化財研究所でずっとフォローしているのが仕組みでございます。
【大枝委員】  すみ分けができているわけですか。
【岩本所長】  ええ。ただ、そうは申しましても、私ども一昨年、成城大学でグローバルとローカルというテーマで無形文化遺産についてシンポジウムを行った際には、茨城県の無形文化遺産の支援団体といいますか、そういったコミュニティーの代表の方をお招きしまして、どういったところに問題があるのかということを、これは当然文化庁も御出席でしたけれども、議論をしたことはございますが、ただ、事務的な仕切りはどうなっているのかと言われますと、私どもの範囲外ということになります。
【大枝委員】  では、文化庁にお伺いしますけど、日本の無形文化遺産で、保護が今緊急的に必要だというものは存在するんでしょうか。
【守山補佐】  お答えさせていただきます。たくさん存在していると思いますが、日本は1950年にできました文化財保護法で、有形だけでなく無形文化財も国内保護の対象にしておりまして、この文化財保護法に基づいて、国内で保護が必要な文化財を保護してきている仕組みがございます。それは文化庁で国内の無形文化財の専門の部署がございまして、工芸技術、芸能、民族文化財といったそれぞれの分野に応じて保護を図ってきているということになります。ただ、無形文化財ですので、全ての無形文化財が消えそうになっているからと言って、それを無理に延命することもなかなか難しいというのが無形文化遺産の特徴なのかと思います。文化財保護法上の制度としましては、記録の措置を講ずる必要がある無形文化財を選択するという制度がありまして、このまま存続し続けることが難しいといったものは記録を作成するという措置を図っているものもございます。
【島谷委員長】  ありがとうございました。
【羽田委員長代理】  さっきの芳賀先生の御意見の後押しですけど、そう簡単に人をクロスアポイントメントするとか、あるいは新しくポストをつくるというのは難しいと思うんですけれども、これは調査研究ですから、大学との連携をもっと進める必要があるだろうと思います。今、現状はこれだけの予算でこれだけやっていらっしゃるのはすばらしいと思うんですけれども、例えば、科研費なんかである一つのテーマについて大学の研究者と一緒に調査研究をするということは全くできないことではないと思いますし、その点では、大学というのは人材がたくさんいるところなので、もっと交流を進められるといいんじゃないかと。そのために御紹介するようなことは、私どもでできることはしたいと思います。
 もう1点は、何度か出てきたことですが、出版をされると伝わっていて、こっちのパンフレットを見ますと、後ろに刊行物というのがあって、かなりの部分がこれは英語かフランス語、英語ですかね、英語で出ているんですが、これはユネスコで出しているんですか。それともセンターの……。
【岩本所長】  センターの出版物でございます。
【羽田委員長代理】  センターの出版物ですね。残念ながら、こういう紙で出しても、今配布する先が限られていてなかなか難しいので、特にこういう英語のものだったらオンラインにされる方が多分読む人は読むでしょうし、あと一歩工夫をして日本語ですばらしいものをつくって、例えば小学館から出していただくようなことがあってもいいんじゃないかと思いますし、何か工夫をして、インパクトを持つような出版活動、あるいは情報宣伝活動をやっていただくと、もう少しこのセンターの意味が高まるかと思いました。
【島谷委員長】  確かにユネスコ活動を日本の場合は国民が十分知っているかどうかもわかりませんので、そういった広報、アピールを何でやるかというのは考えていかなきゃいけないことだと思います。紙媒体は限りがあるというのもありますので、どこでそれをアップしていくか、そのアップするためのお金とか、そういうこともあわせて、人がいないとできないところがありますので。
 科研費というのは確かに非常に有効で、東大の中の研究所でも、科研がものすごくよくとってやっている史料編纂所とかありますけれども、あれはあれでなかなか大変で、科研と本務の区分けが非常に難しくなると思いますので、科研のための科研ではなくて、本務のための科研ということになると、学振何してるのみたいな感じにはなりかねないので、その辺の分けるところは考えていかなきゃいけないけれども、科研との共生も必要になってくるんじゃないかと思います。
【岩本所長】  よろしいですか。
【島谷委員長】  はい。
【岩本所長】  恥ずかしながら、科研費を取得した研究者というのが、実は今年度初めて出まして、それが実はこの3月にもう任期が来てやめるのですけれども、こういう極めてシニカルな現状にあるということで、そういう意味では、先ほどの芳賀先生の力強い御発言には感謝いたします。私ども、非常につらいのは、研究をエンカレッジするというメタな面と、研究自身を推進しなければそのメタもできないだろうという面がありまして、職員には両方やってほしいわけです。だから、そういう欲張りなお願いはあるのです。ただ、そうは言ってもなかなか難しいだろうということで、先ほどおっしゃったようなクロスアポイントメントのような形ができないかということについては、2年前に、東京文化財研究所の無形文化遺産関係の室長を私どもに併任発令いたしました。そうすると、私が自然災害と無形文化遺産の関係でバヌアツへ出張してくれと言うと、スムーズに行けるとか、そういう工夫をし出したところでございます。
 それから、出版関係でございますが、9割方は私どもIRCIのホームページのパブリケーションというところに載せておりますので、その意味ではデジタルで検索ができるところであります。
 また一方、これも運営理事会などでは委員の先生からよく言われるのですが、もうそろそろ学会に出ても恥ずかしくないような出版物を出したらどうかということは言われます。今考えているのは、一昨年に民博と共催でやりましたシンポジウム、「無形文化遺産をめぐる交渉」というのがございますけれども、それを千里文化財団の力で、民博の出版物として出すということに何とかシンポジウムのプロシーディングスを持っていけそうなことで、これはこの年内には出そうと思っております。引き続きそういった努力はしていこうと思っております。ありがとうございます。
【蓮生委員】  先ほどの羽田先生の御発言につけ加えるという形になってしまいますが、今、大阪大学におりますが、大学自体のsocial solution initiativeということを、今旗を挙げておりまして、社会問題の解決のために、従来の学問領域の中にがんじがらめになった研究だけではなくて、社会問題の解決をするためのプログラムをつくっていこうという動きがございますので、是非そういった動きともうまく連動してやっていかれたらどうかと思います。
 もう一つ、ユネスコチェアとの連携も是非お考えになっていただけたらと思います。阪大も、この度ユネスコチェアを頂戴したところでございまして、これから中身をつくっていく段階で、今運営委員会が動き始めたところですので、是非大学側もそういった実際の社会問題の解決のために象牙の塔にとらわれずやっていこうという動きが強くなっているところですので、是非それにうまく乗っかっていただけたらと思います。
【島谷委員長】  ありがとうございます。非常に熱心にこれだけ活発に出していただいて、ありがとうございました。それだけIRCIに関しての問題意識を皆さんに持っていただけたというので非常に効果的だったと思います。まだ御意見いただいていない先生方もいますが、限られた時間で次の議題もありますので、ここでこの議題については一旦打ち切らせていただきまして、次に移りたいと思います。
【岩本所長】  どうもありがとうございました。


〈議題4 ユネスコ創造都市ネットワークについて〉
【島谷委員長】  それでは、議題4、時間がもう押してきておりますが、ユネスコ創造都市ネットワークにつきまして、事務局から説明をお願いいたします。
【小林国際戦略企画官】  それでは、まず、お手元の資料3を御覧いただければと思います。ユネスコ創造都市ネットワークについてでございますが、この事業はユネスコの事業として2004年に創設されました。創造性を核とした都市間の国際的な連携によって、地域の創造産業の発展を図り、都市の持続可能な開発を目指すもので、世界の現在の加盟都市は72カ国から180都市で、7分野、そこにございます文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアート、食文化の7分野の中のいずれかに分類されております。国内の加盟都市は、その下の表の8都市でございます。
 創造都市ネットワークの現在実際に行われている活動としては、この資料3の裏面に記載してございますが、例えば、山形市におきましては、加盟した後に映画の町として様々な事業を展開しております。また、そのほかに、2にございますとおり、ユネスコ創造都市ネットワーク年次会合という世界の加盟都市が一堂に会する年1回の会合がございます。あるいはポータルサイトもございまして、こういったことでこの事業の中で情報共有や相互交流を図っているところでございます。
 表面に戻りまして、このユネスコ創造都市ネットワークに加盟するためには申請が必要でございまして、まず、ユネスコの公募があった後に、申請したい自治体がユネスコに申請し、ユネスコの認定審査を経る必要がございます。最近では2年に1回公募が行われまして、次回は今年中に公募、ユネスコ本部による認定審査、それから、結果公表が行われる予定となっております。
 この事業は、国がユネスコに申請するのではなく、申請都市が直接ユネスコに申請するものでございますが、前回2017年の例を見ますと、この申請都市がユネスコに申請書を提出する際に、日本ユネスコ国内委員会の承認状(Endorsement letter)が必要となっておりました。次回の公募の申請要件はまだユネスコから示されていないんですけれども、外交ルートで確認したところ、前回の公募とは異なり、今回は1カ国からユネスコへ申請できる案件数の上限が設定される可能性が否定できないという情報が入っております。
 2019年の申請・審査スケジュールの案をお示しさせていただいております。幾つか想定がございまして、まず、日本からユネスコに申請できる案件数の上限が今までどおり設定されなかった場合の流れでございます。この場合は、前回2017年のときと同じプロセスになりますが、この場合、事務局にて各申請書を確認の上、問題がなければ文化活動小委員会委員長の了承を得て承認状を作成することにしております。
 次に、日本からユネスコへ申請できる案件数の上限が設定された場合の流れを御提案させていただいております。
 ユネスコから申請要件や公募内容が示された後に、直ちに申請案件選考のためのワーキンググループを文化活動小委員会に設置するとさせていただいております。文化活動小委員会委員長を座長とし、ワーキンググループ委員(数名の小委員会委員)を座長が指名するとしております。
 公募期間が終了し上限件数を上回る応募があった場合は、上記ワーキンググループを開催し選考する。その後、文化活動小委員会を開催し、選考結果報告及び審議の上、ユネスコへの申請案件を決定し、日本ユネスコ国内委員会の承認状を作成するとしております。
 逆に、ケース2ですけれども、上限件数以内の応募におさまった場合は、事務局から上記ワーキンググループに報告の上、ワーキンググループは開催しないと。先ほどの案1と同様に、事務局にて各申請書類を確認の上、問題なければ文化活動小委員会委員長の了承を得て承認状を作成することとしております。ということで御提案させていただいております。
 説明は以上となりますが、この2019年の申請・審査スケジュールについて御了承いただければと考えております。また、今後の創造都市ネットワークの活性化の方策についても、御意見がございましたらいただければ幸いです。
 以上でございます。
【島谷委員長】  ありがとうございました。
 今説明をいただきましたが、質問、進行につきまして、御意見等ございましたらお願いいたします。どうぞ。
【平野委員】  全くプリミティブな質問で恐縮ですが、ユネスコ事業として2004年に創設されて十数年たつわけです。この間、この創設の趣旨に照らして、このネットワークがどういう価値を生んだかとか、そういう振り返りみたいなレポートはあるんでしょうか。
【小林国際戦略企画官】  今すぐ手元にはないんですけれども、先ほど申し上げた世界の創造都市が集まって会合を行う年次会合がございます。そこで今まで加盟した都市がどういうことを実施してきて、どのような成果が上がってきたかというのが議論されておりますので、例えば、そういったところの会議文書ではそういった内容が書かれております。
 また、これ、一度認定されたら終わりではなくて、定期的にフォローアップがございますので、そのフォローアップで各都市がどういう事業を行い、どういう成果を上げてきたかという説明責任を負うという、そういう機会が定期的にございますので、そういったところの報告書もあると承知しております。
【平野委員】  いや、私、全くこういうことを知らないんですけれども、ここでいずれ申請については、状況に応じてというか、ワーキンググループで審査するということですよね。審査の基準とか、それはもうはっきりしているんですか、この創設の趣旨に照らして。条件とか基準とかそういう……。
【小林国際戦略企画官】  ユネスコにおいて、最終的には、これは事務局長が加盟するかどうかを決めるんですけれども、その前に専門家による審査のプロセスがありまして、その際の審査の基準というのが公表されておりますので、日本の国内で選考する場合には、基本的にそれをもとに審査していただこうと考えております。
【平野委員】  審査の基準はどこがおつくりになるんですか。
【小林国際戦略企画官】  現状、ユネスコで公表されております。
【平野委員】  それは公表されている?
【小林国際戦略企画官】  はい、公表されております。
【平野委員】  ありがとうございます。
【島谷委員長】  どうぞ。
【佐野委員】  感想ですけど、私は名古屋市に住んでおりまして、今回ユネスコの創造都市ということで、名古屋市が指定されていることを知らなかったと。で、大変残念だなと思ったんですね。せっかくユネスコに認定されて、知ってからはすごいことだと思ったんですけれども、そういうのが市民に広がっていない、私がその一人ですけど、もう少し浸透するような活動というか、広報活動をされたらいいんじゃないかと思いました。
【島谷委員長】  佐野委員のおっしゃるとおりで、ユネスコ活動でも記事にされるようなものに関しては皆さん関心があるんですけど、それ以外のものに関しては先般の総会を見ても教育一辺倒で、教育が悪いと言っているわけではなくて、教育はものすごく大切ですけれども、ほかの活動についてはほとんどの方が知らないというのが現状なのです。それはどこに問題があるかというと、もう少しPR活動が必要でしょうということだと思います。で、選ばれた地域に対してももっと広報をやってもらいたいということは、このユネスコ活動に限らず、かなり多数あると思いますので、おっしゃる意見、そのとおりだと思います。
【平野委員】  今のお話、そのとおりだと私も思うんです。で、私も実は篠山がおやじの里で墓もあるんですけど、全くこんなことは知りません。それで、ほかにいろいろな活動があるんですよね。NPO的なものもあれば、私がずっと関与している音楽の集まりもあるし、いろいろなことで文化活動を地方に広げる、ネットワーク化するというのが山のようにあるわけですよね。その中で、この付加価値はどこにあるのかと。そういうのを明確にやらないと、いずれにしたって、国の資源が直接、間接にここにインボルブされているわけですから、民間の人が趣味でやっている話ではないので、そこは、やる以上はもうちょっとしっかり考えないといけないのではないかと私は思います。
【島谷委員長】  今御指摘ありましたように、選ぶだけではなくて、その成果がどういうふうになっているかというのを検討していくというのは、創造都市、無形に限らず、いろいろな問題、世界遺産の問題に関してもそれは言えることだろうと思いますので、全体としてそれを受けとめていかなきゃいけないかと思います。
 はい、どうぞ。
【蓮生委員】  ありがとうございます。お時間がないところ申しわけございません。
 ユネスコ創造都市ネットワークに関して、モニタリングと報告、業務の強化ということが、これは従来から言われてきた問題だと思いますが、昨年、2018年5月から6月に、第3回目のメンバーシップ・モニタリング・アンド・レポーティングエクササイズが行われて、その報告書を拝読させていただきましたが、そこで大きく言って4点、結論として指摘されていたと思います。
 第1点が、個々の都市の個別の取組が今それぞれ別個に行われていて、本来ならば、これはユネスコ創造都市ネットワークです。ネットワークですから、それぞれの個々のローカルな取組が連携をすることによって、何かの相乗効果が生まれることをもともと目指しているものであるにもかかわらず、個別の取組が優先されてしまっているということが第1点、指摘されていました。
 次に、第2点として、これはSDGsの観点からも重要だと思ったんですが、経済的発展の追求というものが、社会的、又は環境的な考慮とか配慮よりも優先されてしまっている。結局、これSDGsのサステナブル・シティーズという目的のためにも、ユネスコとして重要な取組であるにもかかわらず、実際の活動は経済開発、産業的な利益が優先してしまっていることがある。大きくこの2点が挙げられていました。
 また、3番目としては、二都市間、又は三都市間などのマネジャブルな小規模のパートナーシップで終わってしまっている現状。
 4番目として、途上国のメンバー都市の取組の方法というのは、一定のパターンがあって、それにパターン化されてしまっているという問題点などが指摘されていました。
 特に1番目と2番目の問題ですけれども、1番目のネットワークをすることによって新たな付加価値を生み出して、高クリエーションとか、高オーガナイゼーションというものを目指さなければいけないのに、現在、それぞれの個別の都市が個別に一つの取組をして終わってしまっているというのは、ネットワークということをユネスコが創造してリードしていかなきゃいけないという中では問題だと思っていますので、是非日本としてもグローバルなユネスコの会議で、そういった点をもっと引っ張っていくというか、要求していく方向に引っ張っていただきたいと思っております。お願いします。
【島谷委員長】  非常に示唆に富んだ報告だったと思いますけれども、地域が活性化を図るとか、各国の文化を尊重しましょうというユネスコの考え方に応じて、それがそうなっているかどうかというのを振り返ってみますと、必ずしも、選んだけれどもそうなっていない部分があるんじゃないかという御指摘のようにも聞こえました。違うかもわかりませんが。
【蓮生委員】  そうですね。ありがとうございます。
【島谷委員長】  で、この小委員会でどれだけのことができるかわかりませんけれども、そういった意見も出たということを踏まえて、ユネスコ活動にどう反映させていくかをまた考えていかなきゃいけないかと思っております。
 限られた時間で、私の進行が悪くて、もうかなり時間を超過しております。お忙しい委員の先生もいらっしゃると思いますので、これについてはこのあたりとさせていただきます。ユネスコ創造都市ネットワークの申請・審査の枠組み、事務局から提案をしていただきましたが、誰をどうするかということはないんですけど、こういう流れで各委員の先生方、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【島谷委員長】  では、多くの方にうなずいていただいておりますので、それで進行したいと思います。ありがとうございます。
 それでは、事務局におきましては、本日の小委員会における議論を踏まえ、今後ユネスコ事務局から公募が出された段階で改めて精査していただければと思います。最終的な人選であるとか調整は、私に皆さん御一任いただくということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【島谷委員長】  ありがとうございました。
 その他、事務局から何かございますか。
【大山国際統括官】  では、一言だけ。大変貴重な御意見、まことにありがとうございました。まさに今日御指摘いただいたように、本来のユネスコの制度趣旨に沿った形での成果の検証とか活用とか、あるいは広報といったことについて、引き続き検討していきたいと思っておりますので、どうぞ引き続き御指導よろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございます。
【島谷委員長】  はい。
【細谷委員】  「世界の記憶」のことは今回議題にはなっていませんが、次回以降出てくる問題かと思います。周知のとおりこれは南京事件が登録されて以来、過去5年間、慰安婦の問題もあり、日本外交にとっての大きな懸案になってきました。IAC(国際諮問委員会)とユネスコにおいては制度自体の包括的見直しをやってきています。今年の秋にはようやく本件に関わる事務局長の最終的報告が出るという大詰めの段階に来ています。これは大いに政治的、外交的問題でもありますから、それは政府が中心に対応されることで、本小委員会あるいは国内委員会として何をどう言えるかということは自ずから限界があるとは思います。しかし当小委員会においても、相応の関心は持って、個別の案件の承認だけではなくて、制度全体についての議論はあっていいのではないかと感じております。
 次回以降適当なタイミングで、「世界の記憶」プログラムの包括的見直しを受けた今後の在り方、あるいは日本関連案件全般について、この委員会として何らかの形の議論ができたら良いのではないかと思います。
【島谷委員長】  ありがとうございます。皆さんにそういう問題意識を持っていただくというのは非常にありがたいことです。選考委員会だけがやっているわけではなくて、この小委員会のもとに選考委員会もあるわけですので、皆さんの意見を頂戴しながら進行していきたいと思います。
 それから、今まで私が出席した委員会で、こんなに活発に議論がなされたのは初めてでございました。会議の時間につきましては、事務局、忙しい各委員の先生方ばかりなので日程調整は大変かと思いますが、適切な時間を御検討ください。
【芳賀委員】  日本のユネスコ活動について、いつも一般的に思うのですが、日本はユネスコという先生から課題を与えられて、それをよく真面目にこなす良い学生であるようなイメージがあります。
それも良いのですが、是非、日本からの発信、枠組みの提案、課題の設定などをして、日本というのは普遍的な価値観の守護者であることを世界に示すべきかと思います。
具体例として、昨年12月に、日本の文科省が中心になって、パリで災害リスクの軽減とマネジメントに関する国際フォーラムが開かれましたが、あれは大変にすばらしいものでした。ですから、例えば、具体的提言としては、このテーマでの国際フォーラムを文科省は今後も是非継続開催なさってください。
 以上です。
【島谷委員長】  ありがとうございました。これだけ活発に委員会が開かれるというのは、非常に嬉しく思います。お忙しい各委員の先生方に活発な御意見いただきまして、本当にありがとうございました。また次回、よろしくお願いいたします。


── 了 ──

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