日本ユネスコ国内委員会 教育小委員会(第131回)議事録

1.日時

平成25年8月19日(月曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 5F1会議室(5階)

3.出席者

(委員)
安西祐一郎(委員長)、見上一幸(委員長代理)、榎田好一、大津和子、黒田一雄、田村哲夫 〔敬称略〕

(外部有識者)
川田力 国立大学法人岡山大学大学院教育学研究科教授
手島利夫 江東区立八名川小学校長(事務局)
加藤日本ユネスコ国内委員会事務総長(文部科学省国際統括官)、岩本日本ユネスコ国内委員会上級事務次長(国際統括官付国際交渉分析官)、その他関係官

4.議事

【安西委員長】
 お忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。もうちょっと時間あるみたいですけれども、お集まりですので、始めさせていただきます。よろしくお願いします。事務局は定足数の確認をお願いします。

【本村国際統括官補佐】
 本日は出席の委員が6名で、定足数は委員の過半数、6名以上でございますので、定足数を満たしてございます。

【安西委員長】
 それでは、教育小委員会を始めさせていただきます。
 まず、配付資料の説明を事務局にお願いします。

(事務局より配付資料について説明)

【安西委員長】
 よろしいでしょうか。
 それでは、議題に入らせていただいて、議題1、前回議事録についてということであります。お手元に前回の会議の議事録を配らせていただいています。前回の会議の後で委員の皆様には内容を確認いただいております。修正意見も対応させていただいておりますけれども、特にここで更に御意見がなければ確定とさせていただければと思いますが、一応、御覧いただけますか。
 よろしいでしょうか。
 それでは、確定とさせていただきたいと思います。もし何か見付かれば、この会議の終わる頃までにおっしゃっていただければ直せると思いますので、おっしゃってください。一応、ここで確定とさせていただきます。
 それでは、議題2は二つありまして、まずその1、社会教育・企業活動におけるESDの推進についてということでございます。前々回の会議でユネスコスクールについて、また前回の会議で学校教育におけるESDの推進について議論をしていただいておりまして、今回、今申し上げた社会教育・企業活動におけるESDの推進についてという議論をさせていただきたいと思います。
 まず、事務局側から説明をお願いします。

【本村国際統括官補佐】
 まず議論の前半部分でございますけれども、社会教育・企業活動に関する資料について説明させていただきます。お手元の資料の教委131-2から4に基づきまして説明します。
 まず2を御覧ください。前回、前々回の教育小委員会の議論のポイントでございます。委員の先生方から出していただきました御意見を、現状と課題、左側の欄、そして、それに対する解決の方向性や考えられる施策等を右側の欄に分けて記載させていただいております。これにつきましては、本日後ほど御議論いただきます、我が国のユネスコ活動の活性化に関する教育小委員会における審議、資料7にございます運営小委員会への報告のところで詳しく説明させていただきますので、ここでは割愛させていただきますが、1ページと2ページそれぞれ、ユネスコスクールについてと、2ページ目、ESDに関することや、ユネスコスクール以外の学校でのESDの推進についてポイントをまとめさせていただいております。
 続きまして、教委131-3を御覧ください。本日の議論がESDの社会教育における推進についてということでございますので、主に公民館の事業についてここで例として挙げさせていただきたいと思います。公民館につきましては、我が国の社会教育法でその設置が規定されているものでございます。主な社会教育施設と致しまして、公民館以外にも、博物館とか図書館がございますけれども、今現在公民館の数は、平成23年度時点で1万4,681施設ございます。博物館、図書館もそれぞれ、博物館が5,700、図書館が3,200ございますけれども、全体の傾向として、公民館は、館数、学級・講座数とも減少が見られております。他方、博物館、図書館は館数、入場者数、貸出冊数ともに増加傾向にあるそうでございます。
 次のページをおめくりいただきたいと思います。今、文部科学省の社会教育課が担当しておりますけれども、社会教育課の方で進めている施策について、3ページ目の下の欄でございますけれども、公民館等を中心とした社会教育活性化支援プログラムとして、今年度新規事業として2.07億円の予算に基づいて実施されている事業でございます。
 主な柱といたしまして、若者の自立・社会参画の支援プログラムとして、例えば地域若者サポートステーションと連携したニート等への居場所の提供、就労支援とか、2の地域の防災拠点形成支援プログラム、これは災害発生時の避難方法に対する啓発活動とか、体験型避難訓練等の実施を行っております。3として、家庭支援プログラム。これはいじめや不登校、児童虐待や貧困の連鎖防止などの対策のための支援事業を行っております。また、4として、地域の農産物、伝統工芸品などの地域資源についての産業振興の事業とか、それ以外にも、環境エネルギー教育等の事業を行っておりまして、ESDの分野に重なる事業を行っているところでございます。
 この新規の事業に基づいて、今年度、約150か所の事業を採択しております。例えば愛知県、来年の世界会議の開催地ですけれども、愛知県の教育委員会が出してきた事業によりますと、愛知県教育委員会と大府市教育委員会、豊田市、弥富市等が協力をして、ESDの普及啓発を目指した事業を申請し、採択されております。
 ちなみに、日本国内の公民館の分布でございますけれども、御参考までに申し上げますと、一番多いところで長野県の1,236施設、続いて山形県の524、埼玉県の507と、地方に多い傾向にございます。他方で、東京が85、神奈川が167と、都市部で公民館数は少ないという結果でございます。
 なお、来年2014年10月に岡山市でESDに関するユネスコ活動の関連イベントと致しまして、公民館・CLC会議が開催されますけれども、省内社会教育課とも、また岡山市とも協力をしながら準備を進めていきたいと考えております。
 続きまして、資料の教委131-4でございます。企業におけるESDといたしまして、これは昨年12月の運営小委員会で配付した資料でございます。大きな柱として三つございます。一つがCSR、企業の社会的責任という形でのESD活動。CSRの一環として、近年、ESD、環境教育とか、エネルギー関係の取組をやってきている企業が増えているということでございます。
 それ以外にも、2.のGlobal Compact、これは2000年に国連事務総長の提案により、企業が人権・労働・環境・腐敗防止の各分野においてコミットしていく戦略方針に関するイニシアチブでございますが、2ページ目に別紙1として解説をお付けしております。また、3.としてISO26000ということで、これは国際標準化機構が策定した国際規格でございますけれども、このガイドラインに基づいて、企業が組織統治、人権、労働慣行、環境等の分野での取組を行っているところでございます。
 具体例として、3ページ目、4ページ目に各企業、別紙2で損保ジャパンの例を付けております。例えばCSR活動の一環といたしまして、例えば気候変動に関する取組として、タイの農家向けの気候インデックス保険の開発とか、エコ安全ドライブコンテストを実施し、燃費、事故率の二つの部門で参加企業を表彰するといったような取組を行っております。
 また、その裏面の別紙3の電源開発株式会社でございますけれども、エネルギーと環境の共生という企業理念に即してCSR活動を行っており、例えばエコロジー、エネルギーの体験ツアーとして、小学生の高学年親子、大学生等を対象としたツアーを実施したりしております。
 これ以外にも、地球市民会議の事務局から伺っているところでは、例えば伊藤園とか、NEC、アサヒビール、王子ホールディングスなど、ESDに関連するような分野での取組を行っているということを聞いております。
 以上、御参考まで、事務局からの説明でございました。

【安西委員長】
 それでは、今の事務局からの説明も含めまして、社会教育・企業活動におけるESDの推進ということで御意見を頂ければと思います。大体15分ぐらい取れると思いますけれども、何でも結構でございます。

【見上委員】
 すみません、一つ。

【安西委員長】
 どうぞ。

【見上委員】
 不勉強で分からないのですけれども、公民館といった場合に、市民センターのようなもの、あるいはこれはまた分類が違うのかもしれませんけれども、児童館が宮城の場合あるようなのですが、公民館とは別のものなのでしょうか。

【岩本国際交渉分析官】
 社会教育法上、公民館はやはり別物としております。そこに、今、先生がおっしゃったようなセンターあるいは児童館、あるいは農水省関連の農村共同生活センターとか、そういった類似施設はいろいろございますけれども、今、社会教育課がつかまえようとしているのは、あくまで社会教育法に基づいて市町村等が設置した公民館ということでございます。

【見上委員】
 ありがとうございました。

【岩本国際交渉分析官】
 ただ難しいのは、学校外教育といった場合には、別に公民館だけじゃなくて、それこそカルチャーセンターから、そういったセンターまでいろいろなものがあると思いますので、そういった意味で、決してそういった御議論を排除するものではございません。

【安西委員長】
 どうぞ、田村委員。

【田村委員】
 これはできるかどうかよく分からないのですけれども、公民館活動というのは、アジアの諸国は、日本がやっているこういった活動を非常に注目しているのです。これは別の企画なのですけれども、アジアのいろいろな地域が公民館活動を日本に勉強に来るというか、見学に来るという実践があるわけです。要するに、非常に反応がいいのです。非常に関心を持っているわけです。これは日本の交番と同じような感じで、その点では世界の先進国という意味で位置付けられて見ているようです。
 ですから、公民館活動を活用する場合、今、実際やっているこの内容というのは、やっている、これ、中を見ると、全部国内向けの話ですよね。日本の国内の問題ということでやっていますけれども、これを少し広げて諸外国との連携を活動の中身に入れると、その結果、随分参考になることもあるだろうし、それから、それは諸外国には確かにプラスになるわけです。その連携をユネスコスクールができないものかということなのです。
 これはユネスコスクールのネットワークがありますから、何らかの指示をしてくだされば、例えば私どもが関係しているACCUという組織では、公民館活動のアジア地区を中心にした勉強会みたいなことのお手伝いさせていただいています。消防活動なんかもそこに入るのです。それから、洪水だとか、そういういろいろなものがテーマになって、事実、そういう勉強会をやって、いろいろな国の人が来ているわけです。それをユネスコスクールを通じてやるというのはどうなのだろうかということなのです。
 その場合は、ESDというテーマを明確に出して、公民館活動の中にユネスコスクール経由で諸外国との連携を取りながら勉強会をやる。日本でやってもいいし、ほかの国でやってもいいのですけれども、そういうようなことをやるとユネスコスクールの活動が少し広くなるかなと考えるのですけれども、どんなものでしょうか。

【本村国際統括官補佐】
 例えば先ほど御紹介した公民館活動を核としたESDの普及啓発ということで、愛知県教育委員会が取り組んで、今回事業提案をして採択されたものでございますけれども、正にユネスコスクールも活用しつつ、愛知県下の教育委員会、特にユネスコスクールの活動に熱心に取り組んでいる豊田市とか大府市、弥富市を巻き込んで、公民館活動の一環として、ユネスコスクールも巻き込みつつ、ESDの普及促進をやっていくというものでございます。まだ具体的にはこれからなのだと思いますけれども、まだ今年度から始まった事業ですので、社会教育課はこういった形でこの事業を活用して徐々にユネスコスクールも巻き込んでいくということはあり得るのではないかと思います。

【安西委員長】
 よろしいですか。

【岩本国際交渉分析官】
 すみません、補足なのですが、冒頭、補佐から申し上げましたように、公民館、それから、コミュニティラーニングセンターに関する、世界会議まで行きませんけれども、アジア会議みたいなものを来年、岡山市が中心になってやろうとしているというのも、やはり岡山市において非常に公民館活動がESDとかなり密着して行われています。ACCUさんがこれまでも地道にやられてきたコミュニティラーニングセンターについての交流といったものともうまくタイアップしてやっておられるということです。
 私、そこはむしろここは川田先生にお伺いしたいのですが、岡山市で、ユネスコスクールと公民館というのはかなり密接に補い合っているというか、そういう感じで捉えていいのでしょうか。

【川田教授】
 岡山市は、もともと公民館活動にESD的な活動を積極的に導入するということで、公民館の職員向けのESD研修会などを開催したり、先ほどのお話にもあったように、海外の公民館と姉妹提携を結んで、国際理解に関わるような活動を展開したり、あるいは地域の環境保全を公民館が主体となってプログラムを作って運営するというようなことを実践してきております。
 その様々な蓄積があるものですから、それを学校教育に利用するということで、教育資源の一つとして、公民館の職員が学校の教員と連携しながらESDのプログラムを開発したり、学校の子供たちを地域のフィールドに出して諸活動を行う際に、そのコーディネートの役割を公民館の職員が協力して行うということを実践しているわけです。
 ですから、学校教育主体というより公民館に既に様々な資源が集約されていて、それを学校が活用して展開するというスタイルが、全ての公民館ではないのですけれども、できつつあるという状況で、そうした状況をなるべく広め、質を良くしていこうという取組をしているところです。

【岩本国際交渉分析官】
 ありがとうございます。

【安西委員長】
 ほかにはいかがでしょうか。
 事務局にお聞きしたいのですけれども、公民館の例を出されたのは、社会教育のこれからのESD推進のかなり大きな部分という気持ちがあって出されたのか、それとも、一例ということなのでしょうか。どのぐらいの大きさのつもりでこの例を出されたのか。

【岩本国際交渉分析官】
 運営小委員会でそもそも今回の検討事項を考えるに当たって、ESDの推進という中で学校教育、学校教育以外と捉えた場合、学校教育以外といった場合に、企業と社会教育というものがあります。社会教育は必ずしも公民館に限定するものではございません。たまたまグラフしか示しておりませんけれども、図書館なんていうのは現実には数は非常に増えているわけです。それから、博物館も、博物館の施策ということでは出ておりませんけれども、日本博物館協会などは、やはりESDなどをちょっと意識して、展示とか博物館における講座、そういったものも、例えば琵琶湖博物館とか、大阪の市立の博物館とか、そういったところはかなり熱心にやってらっしゃるので、学社連携といいますか、そういった意味でも巻き込めるし、あるいは教育委員会を通じて、社会教育の人たち、もっとESDに目を向けてくださいなということがアピールできないかというのが事務局の考えです。

【安西委員長】
 どうぞ。

【黒田委員】
 企業について一言申し上げたいのですが、といいますか、質問させていただければと思うのですが、現在、ESDに企業を巻き込むような何か方策はございますか。今、何かそういうことをされているということがありますか。これから例えば外務省の、文科省の方からも御参加がありますけれども、国際教育協力連絡協議会でも、CSRが今、盛んになっておりますので、最近はずっと企業の方をお呼びするというようなことも行われておりますし、先日でしたか、JICAの方でも企業対象のセミナーをやっておられたりとか、これは前からあるものですけれども、連続してずっとやられているようです。
 ESDについても、もちろん例えば一番マイナーといいますか、手軽な形では、セミナーとかがあれば、そういうときに招待状をお送りするということもあると思いますし、もう少し進んでいけば、今、損保ジャパンさんとかの事例がありましたけれども、こういった活動を顕彰するといいますか、多分、お金は必要でないのです。ただ、レコグナイズされることによって企業の活動が非常に活発化されるということは企業の方々からも伺います。
 まずはマイナーなところからでいいと思うのですけれども、そういったことがこれからできると、企業の活動をESDに持ってこられるかもしれません。特にGlobal Compactは、多分国連の活動の中でも成功したものの一つだと思うのです。CSRという言葉もこれ以来かなりメジャーになってまいりましたし、是非、特にESDに引き込んでいくためにも、何か工夫をしていけるといいなと思います。

【岩本国際交渉分析官】
 まず一つ、ユネスコ国内委員会として企業をどう捉えるかということについては、このESDの文脈を離れましても、運営小委員会の方でも、ユネスコ活動に企業の持っている活力をどう生かすかと。お金だけではなくて。そういう意味で、企業の方にお越しいただいてヒアリングなどしたことがあって、何とか企業のCSR活動を通じて、企業の活動あるいは企業内の教育活動にユネスコ的な観点を持ち込めないかというような御議論もしてきたところであります。
 また、ESDに関しましては、全くお恥ずかしい話なのですけれども、我々委託事業で地球市民会議などやりますと、地球市民推進フォーラムの方々が企業の方々を呼んできて、そこが一つの情報交換の場になって、我々も情報を聞いている。つい最近も、日本環境教育フォーラムというところで企業懇談会なんかをやったそうでありますが、今まだ情報を集めているところなのです。文部科学省というのは、企業というところになかなか手をあんまり出したことがないというか、あんまり上手でなかったのが今まででして、そこら辺も、今おっしゃった、例えば顕彰するというのも一つかもしれません。何かそういったアプローチとしてこういったことがあるのだということであれば、また何かいろいろなことができるのかなと思いました。

【安西委員長】
 どうぞ。

【大津委員】
 先ほどの川田先生の御報告いただきました岡山での公民館というお話を伺ってとてもびっくりしたのですが、そういう公民館もあるのだと。おそらく全国、随分違うのだろうなと思うんです。
 それで、全国のユネスコスクールの、とりわけ小学校の実践を眺めてみますと、結構、自分たちの地域を見直そうとか、地域に愛着を持とうとか、ものすごく地域志向の強い実践がかなりあります。それはそれで、従来の小学校中学年からの地域学習もありますから、そこはある意味ですごくやりやすいのでしょうが、では、従来の地域学習とESDとどう違うの、というと、なかなかそこも難しいのですが、従来の地域学習にはない観点もやはりESDにはあるだろうと思うのです。
 その辺をもし公民館辺りで何かここにプログラムの中にESDの視点が仮にあれば、ESDと称しても称しなくても、学校で地域学習をするときに、公民館にアクセスをすれば、そこの公民館はきちんとESDの視点を持って、程度もいろいろあると思いますが、そこでスタッフがいるだとか、プログラムがあるだとか、先生方の研修をある程度サポートできるだとか、何だかそういう役割を公民館が果たすことができればとてもいいのではないかなと思いました。岡山の先進的な事例については、是非、北海道でも少し検討したいなと考えております。以上でございます。

【安西委員長】 
 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 公民館関係へのアクセスというのは、文部科学省からできるのですね。

【岩本国際交渉分析官】
 はい。教育委員会を通じて公民館にお願いするということになりましょうが。

【安西委員長】
 教育委員会と公民館の関係というのは、総論としてはいいんですか。

【岩本国際交渉分析官】
 公民館のおよそ9割以上は市町村立でございます。それは市町村教育委員会の所管となっております。通常、市町村教育委員会の社会教育課が所管しております。
 岡山さんの場合がこれ、非常にうらやましいと思うのは、公民館の中に専任職員として公民館主事と言われる方が、大体の公民館に岡山市の場合はいらっしゃるのです。ところが、これは社会教育課の人に聞いた方がいいのですけれども、通常の市町村でございますと、公民館とは言うものの、必置規制はなくなりましたから、公民館主事とか、そういうものは減りつつあるというのが現状でございます。

【岩本国際交渉分析官】
 ですから、今おっしゃったような考え方、地域学習をいかに持続可能な社会の担い手というふうに結び付けていくか。それには、学校の先生も重要ですし、また公民館の方で実際それをやっていかれる方々がほんとはいて、両者がタイアップしていく。だから、それがいない場合には、別途、コーディネーターというものを考えるのか、何かそこら辺は一つポイントかと思います。

【安西委員長】
 こっちからばかりであれですけれども、事務局で用意された公民館の資料の中に、公民館について、昭和21年の文部次官通牒が入っていて、これはまだ生きているということですか。これは、何とかならないのですか。新しく、文科次官通達とかにならないですか。 今や時代が違うから、もうそれはできないのだろうか。

【岩本国際交渉分析官】
 ある意味、歴史的な文書をここで御紹介したわけでございますけれども、要は、昭和21年7月というのは、戦争に負けてまだ1年もたっていない時期なのです

【安西委員長】
 「新日本建設の為に」というのが公民館の設置の運営趣旨ということになっているので、やはりそこから脱皮しないと。まだ新日本建設なのかもしれませんけど。

【岩本国際交渉分析官】
 ただ、逆に言うと、ここからは事務局の発言をちょっと外れますけれども、「道徳的知識並に政治的の水準を引上げ」、「民主主義の実際的訓練を与えると共に科学思想を普及し平和産業を振興する基を築く」というのは、今から読みますと、非常に進歩的な政党のスローガンかと思うぐらいの、ここはちょっと……。

【岩本国際交渉分析官】
 ある意味、ここから先は私の空想なのですけれども、ユネスコ民間活動が萌芽を見せ出したのがやはりこの頃からなのです。戦争に負けた。では、自分として、どういう国民を作っていかなくてはいけないのか、どういう子供を育てていかなければいけないのかというのは、まさにユネスコ民間活動のあった時代の雰囲気というのが出るのではないかと思って、こんなものをあえてお出ししたような次第でございます。

【安西委員長】
 やはり全体として、ユネスコの位置付けとか、やはり日本国内でもユネスコに対する感覚というのも、時代がほんとに変わりましたので、いわゆるグローバル化時代におけるユネスコというふうに変わっていかなければいけないのではないかというふうに思いますけれども、この文部次官通牒、公民館の設置運営についてということを文部科学次官通達で何か言うことというのは、省庁間の関係とかいろいろなことはあると思うのですけれども、今やこれはできないと思ってよろしいのでしょうか。そういう権限はないのでしょうか。
 ちょっとずれるような話で申し訳ないのですけれども、ずれてはいないつもりなのですけれども、ユネスコ活動をやっていくに当たって、例えば公民館とタイアップしていくことが我々としてどのぐらいの権限でできるのかということは大変大事だと思うのです。昭和21年通牒は、今でもこれが効いているのかどうか、また、これを文部科学省の判断で、もちろん他省庁と相談しながら変えていくということはできるのかどうかということはちょっとお聞きしておきたいなと思います。分からなければ、今はいいです。

【岩本国際交渉分析官】
 すみません、ちょっと確たることを申し上げられないので申し訳ないです。まずここで文部次官通牒をお出ししたというのは、公民館が市町村立であるということと、当時の時代背景としてこういうことがあったということであります。
 ただ、おっしゃるとおり、この通牒以降にも、文部事務次官通達あるいは以前の社会教育局長通達のような形で公民館の管理運営についてというような通知は流しております。それには、こういった高まいなことよりももうちょっと、公民館の中立性であるとか、そういったことも言っております。それは必ずしもユネスコスクールの活動と公民館の活動が全く相反するものというのではなくて、むしろ学校と公民館とが連携してやっていくというのが生涯学習の推進の観点からも必要であるというのが今のベクトルでございます。その意味では、公民館と学校との連携強化ということを、これからのグローバル化とか、グローバル化社会における地域におけるESDの役割といったことを考える上ではむしろ必要なことかと思います。

【安西委員長】
 すみません。ほかには。どうぞ。

【見上委員】
 今、図書館主事というお話が出たのですけれども、社会教育主事って、研修会、講習会がございますよね。その中に、教科のような形のタイトルとしてESDと入るととてもいい理解につながるのではないかと思うのですけれども、現状はいかがなのでしょうか。

【米本課長補佐(社会教育課)】
 よろしいですか。すみません、社会教育課の課長補佐の米本と申します。
 社会教育主事については、今、カリキュラムの見直し等も含めて、現在検討を進めている最中でございます。今後、こういった考え方もその中に含めて考えていくということは進めていってよろしいのではないかと考えてはいるところなのですけれども、何分、今回、社会教育課としてESDの国際会議等に参加させていただくのがまだ初めてというところもございまして、今後検討させていただければなと思っているところです。

【見上委員】
 ありがとうございます。

【安西委員長】
 それでは、本件の議論はここまでにさせていただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、議題2のもう一つの方ですけれども、ESDの理論的裏付けについてであります。前回にESDのコンピテンシー、プロセスに関する理論的な議論が余りないのではないかという指摘もありまして、ESDの教育効果の評価指標を明確にすることとか、客観的なデータで示すといったこと、そういうことも含めて理論的裏付けの研究を進めていくことが大事なのではないかということであります。
 この点につきましても自由討議とさせていただければと思いますが、まず事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。

【本村国際統括官補佐】 
 それでは、お手元の教委131-5と6について説明させていただきます。
 まず5の方ですけれども、ESDに関連する文部科学省及び日本学術振興会が交付する科研費、科学研究費助成事業により行われた研究ということです。これは科研費の事業のデータベースがございますけれども、そのデータベースで「ESD」というキーワード検索を行った結果、課題名あるいは研究概要の中にESDという形で記載のあった研究が133件ヒットいたしました。これは2005年以降で検索しておりまして、一番新しいものから順番に並べております。
 課題名を御覧いただくと、ほんとに様々な分野がございます。教科教育学が一番多いのでございますけれども、それ以外にも、科学教育の分野とか、農学、水産学、生活科学とか、環境影響評価、環境政策、芸術学、地理学等様々な分野の研究が科研費で採択されております。
 ちなみに、研究種目にございます基盤研究(B)とか(C)、奨励研究等ございますけれども、御参考までに申し上げますと、基盤研究は、一番大きいもので(S)から(A)(B)(C)ございまして、ESDの事業として採択されておりますのは(B)と(C)でございます。(B)が500万以上2,000万円以下の研究でございまして、期間が3年から5年間、また(C)が500万円以下となっております。また、若手研究も(S)から(A)(B)とございまして、ESDに関しては採択されているものは(B)のみでございますけれども、これも500万以下、期間が2年から4年間ということでございます。またそれ以外にも、挑戦的萌芽研究とか奨励研究、あるいは研究活動スタート支援等いろいろございます。奨励研究については、小学校、中学校、高等学校等の教員も申請できるということで、中には採択されているものもございます。
 続きまして、資料の6でございます。大学における主なESDに関する教育研究の状況につきまして、1として、ESDに関する教育・研究センター。大学に設置されているものをピックアップしてまとめてございます。主なものを申し上げますと、1.の北海道教育大学のESD推進センターが平成20年に設置されておりまして、ESDについての調査・研究とか、研究紀要の発行、ESDや環境教育についての文書等の収集、シンポジウム等の事業を実施しております。
 また、2.の北海道大学でも、AUA Modelということで、ESDに積極的に取り組むアジア・太平洋地域の大学を評価いたしまして、更にそれを深化、拡大させるための共同体作りを目指しております。
 また、次のページでございますけれども、6.の岡山大学につきましては、ESDのユネスコチェアに平成19年に認定を受けておりまして、高等教育機関としての立場から、地域のESD活動に対する専門的助言とか、環境分野での国際連携等を行っております。
 また、9ポツの立教大学におきましては、ESD研究所が置かれていまして、ESDに関する調査及び研究、ESD教育プログラム等の開発・実践に取り組んでいるそうでございます。
 続いて次のページ、ESD関連事業の実施ということで、例えば金沢大学、神戸大学においては、ESDコースといたしまして、ESD関連科目等を強化するなど、大学における環境教育・ESDの体系化・可視化に取り組んでいるというところでございます。
 また、御参考までにですが、お手元にお配りしているこの冊子、「ESDの国際的な潮流」、これは前回の教育小委員会で、国立教育政策研究所の五島総括研究官から御説明がありました。この126ページを御覧いただきますと、五島先生からその際に説明のありました、例えば持続可能な社会作りの構成概念とか、ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度が1から7で、構成概念が1から6まで並んでおりますけれども、こういった形でESDの推進における理論的な裏付けという取組は一部なされているところでございます。
 以上でございます。

【安西委員長】
 この件も自由討議にさせていただきますけれども、どなたでも結構ですので、御意見いただければと思います。これも10分ぐらい時間があるかと思います。どうぞ。

【黒田委員】
 この点については、もちろん学術的理論的な議論がどのようにされているかということは非常に重要なことだと思うのですが、一方で、政策的な議論の中にそれがどのぐらい反映されているかということも重要なのかなと考えます。政策的な議論というと、例えば21世紀型学力について、若しくは、今、ソフトスキルとかノンコグニティブとかいろいろな言い方をしますけれども、文科省の中央教育審議会はじめ、様々なところで新しい学力観についての御議論があるというふうに理解しております。
 よく見てみますと、ACT21Sですか、メルボルン大学がやっていますイニシアチブの中から出てきている21世紀型学力なんかがよくリファーされるのですけれども、その構成の中にはかなりESD的なものがもうぴったり入ってしまっているというような状況だと私は理解しています。そういう意味では、大きな政策、学力についての政策的な議論の中にどのようにESDを当てはめていくかというような観点から見ていくことが、一方で影響力といいますか、これから日本の教育を変えていく、より良くしていくためにも必要な方向性なのではないかなと感じます。
 それともう一つ、国際的な観点から、例えばOECDのPISAをはじめまして、特にPISAが今、PISA型学力と21世紀型は全く同じものかどうかは分かりませんが、例えば今、問題解決能力というのが2003年と2008年でしたか、その中にも入っていましたけれども、今度新しく、Collaborative Problem Solving Skillsというのが入るそうですけれども。

【安西委員長】
 2015年からでは。

【黒田委員】
 2015年ですね。そういう議論というのは、正に21世紀型の議論が世界的にも大きくなっていて、そこに入ってきている。それを何とかアセスメントをしていこうということが多分、国際的な方向性なのだと思います。したがって、そこにESDの観点をきちっと入れていくということ、若しくは、今、多分議論されているものだったら足りない部分もあるんだと思うんですが、そういったものもアセスメントの議論、国際的な議論に日本から発信していくということと、それから、国内での学力論にきちんと反映させていくということのその二つが必要かなと思います。
 もう一つだけ申し上げさせていただくと、ユネスコで現在進んでいるポスト・ドロールのレポート、ドロール報告書の現代版を作ろうと。この前も少し申し上げたのですけれども、来年が多分目標年になっていると思うのですけれども、その中にどのぐらいESD的なものが入るのか。To live togetherはかなり大きく入るようなことを聞いておりますが、当然、サステイナビリティも大きなコンポーネントだと思いますので、そういうところで日本の発信力を高めていくことも国際的には必要なのではないかなと思います。

【安西委員長】
  ありがとうございます。ほかには。
 なければ、私の方で申し上げられるのは、今、黒田委員が言われたことのフォローなのですけれども、日本だけではなく、世界中で問題発見解決型の教育へ、という方向というのはむしろ日本が後れている状況で、日本の教育を変えていかなればいけないという、そういうことはかなり急速に出てきているわけですけれども、ESDというのはその前に出た概念でありながら、今言うと、そんなことはもうやっているという、そういう状況が既に出ているのではないかと思うんです。
 これは見上先生のところとか、いろいろなところが非常に努力をされておられて、手島先生のところもそうなのですけれども、にもかかわらず、やはりESDのつかみ方が非常にブロードなので、言っても、「それは私どもがやっているところと同じですね」というふうに言われる状況があるのではないかなと思うのです。
 やはりそれに対して、ESDについての考え方がもうちょっと合理的な思考に基づいていた方がいいのではないかと思うところがあります。今の事務局の御説明でも、大学でこういうことをやっていますという、あれが初等中等教育の教育者養成の部分と、それから、大学における人材育成、むしろ研究者の人材育成の部分とが両方入っているのです。それはやっぱり分けて議論しないと議論ができないと思うのです。
 それから、例えば環境問題とかそういうことについては、科学技術の関連の教育が非常に大事だと思うのですけれども、そこのところがやはり抜けているように思われるのです。何となく環境のことを扱って、何でもESDだと言っているように思われるのですけれども、それをやっていると、もう既にいろいろなところでやっているのと同じじゃないかと逆に言われるような気がするのです。そういう意味で、黒田委員の言われたのはごもっともだと思います。
 後ろ向きに申し上げているのではなくて、例えば科研費によるESDに関連した研究にしてもかなり幅が広いですね。例えばもしシンポジウムとかをやるのであれば、セッションをきちっと作って、それで、小学校の教員養成とか中学校の教員養成とかのセッションを作って、それでどういうことがESDなのかということを、そこをきちんと詰めていくようにしないと、何となくのムーブメントで行ってしまうような気がします。
 前向きに申し上げているつもりなのですけれども、理論的裏付けの議論と言われるので、そういうところをもう少し詰めておいた方がいいのではないかなと思います。

【榎田委員】
 いいですか。

【安西委員長】
 はい。

【榎田委員】
 ここの126ページから、前回、帰って私も早速調べさせていただいて、今、黒田さんがおっしゃったように、ESDという概念なしにそれぞれの学校でやっていることで、ESDをしていなかったら欠落する部分はあるかなというふうな意地悪的な見方をしても、それはないのです。では、ESDとは一体何なのだというと、やっぱりESDの視点、観点でカリキュラムを見直すと効果的ですよとか、効率的ですよとか、すっと話が通りますよというような、例えば岡山大学さんが指導してらっしゃるのでしょうか、ESDカレンダーとか、ああいうような物の見方でカリキュラムを見るとそういうふうになりますよ、という説明の仕方が一本あればいいんではないかなと。そうすると、これをやっています、と言ったときに、さっき委員長さんおっしゃった、そこら辺に対するこちらからのインパクトがある。
先ほどのお話にちょっとバックして恐縮なのですが、公民館などは、活用者はどちらかというと高齢者が多いと思うのですけれども、ESDは何なのですか、というときの説明が強くなっていくのではないかなと思いますので、そこら辺の理論的な研究というのもあっていいのではないかなと。理論的というのか、つながるような考え方を整理した方がいいのかなと思います。

【安西委員長】
 今、榎田委員の言われたようなことを前面に、具体的にこういうことをやるといいのだよということを打ち出すシンポジウムというのか、事務局のキャパシティとか予算を考えるとなかなか言いにくいのですけれども、何かそういったシンポジウムのようなものはあり得るかなと思います。この科研費のリストを見ていると、そういうふうにも思われると。このリストの課題名にESDが入っているのですけれども、基盤(A)とか基盤(B)以上だったら、そういうことをやってもいいのではないかという感じがします。むしろこうした研究者の方々に応援してもらいたいというのか、一緒にやってもらいたいというふうにも思います。

【大津委員】
 今の御発言に関連してですが、それはかなり難しいのではないかと私は思います。そもそも科研費の研究というのは、やっぱりそれぞれの研究者の専門の立場から、いかにして研究費をゲットするか、そのために例えばESDの観点を入れるという、非常に現実的なものがやはり読み取れます。こんなにたくさんESDがあったのですかと私はびっくりしているのですが、でも、恐らくこれ一つ一つ見ていったら、何かしらESDと関わりがあるというものが多いのではないかと思います。
 さっき黒田委員が提起された問題というのは、やっぱり教育政策の面できちんと理論化するという、その理論化というのは、一般的な大学の研究者のレベルのテーマとして求めるのはかなり難しいと思うのです。ですから、これ(国立教育政策研究所発行「ESDの国際的な潮流」)が一つのいい例ですが、やっぱり国立教育政策研究所(国研)でもってきちんと理論化していただくと。
 実は国研でも21世紀型の教育課程の冊子、研究報告書が別に出ています。私、それを見たときに、それとこのESDのこれと、どう重なったりつながるのですか、そこを研究してくださいよね、と思ったのです。だから、その辺の言わば国内でのESD、あるいはそれと類似したような、重なるような部分の教育の理論の枠組み、もっとはっきり言ってしまえば、目標だとか、あるいは概念だとか、育てるべき能力だとか、資質だとか、そういうものを整理したものと、それからもう一つは、やはり国際的に既に21世紀型ということで提起されているPISAも含めてその辺の全体を一度整理して、どこにESDが位置付くのかという、その辺りが明確になれば、私は非常に有り難いかなと思います。

【安西委員長】
 今の大津委員の言われたことについては、まず国研でESDについてのモデルとして既にかなりいいものが出ていて、委員が替わっておられるので、また御説明いただければとも思いますけれども、既にここで御報告はあったものであります。ただ、これは国研の非常に努力がおありになったわけですけれども、かなり抽象レベルが高いので、それはもうやっているよと思われかねないところはあるのではないかと思われます。
 それから、科研費のことにつきましては、こうした研究をしている方々に呼び掛けてシンポジウムをやって、どれくらい、どうESDについて研究しているのですかということを聞いてみては、という意味なのです。やはりそうやって応援団を作ることも必要ではないかと。
 そのときにシンポジウムのイメージをしますと、環境教育とか、それも大学レベルと初等中等レベルとは全然違いますので、そういう一種のセッションを考えることはできる。そういう構造を今まで考えたことは余りなく、全体としてESDのムーブメントをやりましょうねということで来ているように思われるのですけれども、そういうことはもうなかなか通用しないのではないかということを少し申し上げたいということなのです。

【川田教授】
 お話の趣旨はすごくよく分かりますし、私が考えていることとも極めて近いのですけれども、やはり2014年が近付いてきて、この10年間にESDとしてどのような活動をしてきたのかを振り返る際に、殊に最近ですけれども、ESDとはどういうものなのかというようなことを余り触れずに、インクルーシブな形でESDを展開してきている状況があります。ESDが浸透してくるプロセス、あるいは浸透させるプロセスの中でそのような状況も必要だったと思うのですけれども、やはりそもそもESDとは何なのかというようなことを再び問い直すとか、確認し直す必要性が出てきている状況ではないかと思います。
 それがなぜ必要なのかということですけれども、この10年間の活動を評価する際に、評価の背景として理論が必要なのだと思います。ただ、評価といっても様々な段階があると思うのです。例えばESDを展開していくと、政策自体を評価するというようなこともあるでしょうし、具体的な、例えば学校でESDのプログラムの実践自体を評価することもあるでしょう。あるいは、最近のユネスコスクールなどでの議論ではよく出てくるのですけれども、子供がESDによってどれだけ成長したのかを評価するという、学習効果に関する評価もあります。これらの評価には、それぞれに応じた理論があると思うのです。
 ですから、ESDの評価あるいはESDの理論といっても、一つのものではなくて、実は、政策に関する理論、教育実践に関する理論、あるいは学習効果に関する理論など複数のものがあって、それらの総体としてESDに関連する理論があるのだと思います。
 非常に残念なことに、この10年間ESDを進めてきた中で、教育学の専門家がそれらに余り関わってこなかった、あるいはそれを巻き込むようなイニシアチブが進められてこなかったのが若干残念だったと個人的には思っています。これから2014年に向けてこの10年間を振り返るためには、そうした取組はやはり急いで多少はやっておかないとならないのではないかと思うわけです。

【安西委員長】
  どうぞ。

【黒田委員】
 申し訳ありません。今の川田先生の御発言に追加といいますか、フォローさせていただきたいのですけれども、正に今、先生がおっしゃられた評価のうちの二つの点、政策評価と、学習成果の評価について、繰り返しになりますけれども、特にPISAであったり、若しくは日本国内で行われています学力調査の中に、どのぐらいESDの観点を収れんさせて入れることができるかといいますか、若しくは今あるものをESDなのだという形で入れていくということもあるかと思います。
 これは学力というだけではなくて、例えばこの前の、道徳を評価できるのかどうかということもありましたけれども、それは例えば態度の変容だったり、若しくは先生がクオリテーティブに付けるチェックリストでもいいのかもしれませんが、とにかくいろいろな形の評価の中に、ESDの観点はここですよということがある程度収れんしていくということが、学習成果の評価の部分で、国内的にも、それから、ほんとは国際的にも発信できるような形で、例えばPISAなんかに入れることができれば、ほんとにそれは大きな成果なのではないかなと思います。
 もう一つの政策評価についても、世界銀行が今、SABER(Systems Approach for Better Education Results)という政策評価のツールを作っているのですね。これ、十何項目についてそれぞれでキューブリックを作って政策評価をしていくような形なのです。例えば今、JICAは世界銀行に対して、学校運営についての政策評価の部分の開発を共同してやっていて、例えば平等の部分であるとユニセフがパートナーだったりするのです。ESDについては、残念ながら、今のところ世界銀行はそういうスコープがないのですけれども、ほんとにこういった横でできている政策評価のツールをそのまま援用して形を作っていくのも一つの手段ではないかなと思います。
 例えばユネスコバンコクは、自前でカルチャー・アンド・エクイティという部分についての政策評価のツールを、世界銀行のSABERの形を使って作っています。それで、幾つかのパイロットスタディをして、将来的には世界銀行の枠組みと一緒に運営していこうというようなこともあって、ESDについても何か政策評価についてのそういったキューブリックといいますか、評価の体系ができれば、それが国際的にも運用できるものであれば、14年以降の形を作っていくためのかなり大きな一つの形になるのではないかなと考えます。

【安西委員長】
 どうぞ。

【田村委員】
 よろしいですか。実は今お伺いしていた議論というのは、サステイナビリティ・サイエンスの議論のときにものすごく出てきたのです。それが繰り返されているという感じなのです。これは今の日本の学習指導要領でそろそろ次の10年の検討が始まるようですけれども、問題はやっぱり学問としての体系の中で、教科でカリキュラムを作っているという、それで、それを教えるという、こういう仕組みに限界が来ているということなのです。それはどうしてかというと、縦の串はあるけれども、横串がないということへの批判です。つまり、学問同士の連携が取れていない。それぞれが、しかし、独立していないと発達しないというので、サステイナビリティ・サイエンスという概念をまとめるときに、ものすごい反対があったわけです。学術会議でも、結局は文章をまとめてくださったのですけれども、全体が賛成したわけじゃなくて、反対意見の方がむしろ強かったという、こういうことの中であの文章がまとめられたという経緯があるのです。
 だから、それはどういうふうに解決するかというと、私の考えでは、今でもそれは変わっていないんだけど、結局、最後は個々人の問題。教育はするけれども、どうするかは個々人の問題。最後は、要するに、縦串で学問が、縦割りで発達していくと。それは伝える必要があるから伝えて、受けた方がどうやるかというのを考える。その部分がESDだろうなというふうに僕なりには考えているのです。それを統括的に評価するなんていうのは、昔の教育学のやり方では、もうそれはできる範ちゅうじゃないのだろうということで、自分なりに解決しているのです。
 だから、それを、つまり、そういう姿勢を持つことを、現場の先生が縦串のことを教えながら、態度みたいなことを伝えていく。これ、全部、縦串じゃないぞ、全部つながっているのだよということをいろいろな機会に伝えていく。それは受ける側は多種多様だから、人によって受け止め方は全然違いますから。極端な話、生徒を見ていると、原爆を研究して何が悪い、と今でもこういうことを言う生徒がいます。全然問題視していない。そういうのは教えなくていいかというとそうはいかないから、とにかく体系的なものを教えて、あとは、態度でやるけれどもあとはやりようがないみたいなところが、現場にいますと、どうしてもあります。
 だから、ESDもその辺で割り切らないと、理屈で全ての学問を統合して、全部ESDの概念に合わない学問は学問じゃないのだと言ってしまったら、また学問の発達ということで考えるとプラスばかりではないような気がしますから、だから、その辺の整理はきちっとしておかないと、政策的には進んでいかないのではないかという気がするのです。
 そういうことを研究されて、議論されていくことはとても大事なのだけれども、最終的には、私は自分で自分なりの結論を出したのは、個人の、個々の問題だと。全体に統一的にこう考えろということは伝えられないということなのです。いろいろな考えがあるということを伝えられるとしても、これがいいのだよということを決めてしまうわけにいかないのではないかなと思っているのです。そう言っては身も蓋もないのだけれど。

【安西委員長】
  どうぞ。

【手島校長】
 よろしいですか。ESDとは何なのか、10年のこの評価に議論をというお話があって、それは政策的にも、それから、学校単位でどう捉えるのかということと、それから、一つ一つの学習がどうなっていくのかという、そういう桁が違うんだというお話がありました。
 では、日本のESDはこの10年でどういう方向に進んできたのかといったときには、一つは、政策的には、教育振興基本計画の中に、持続可能な社会作りというキーワードを1丁目1番地に入れて、それを基本にして教育基本法を作ったり、それから、学習指導要領に落とし込んできたりという、そして、各教科の中に入れ込んだり、総合的な学習の時間を作ったりというような形で流れてきているのだと思います。つまり、日本の教育政策の中にESDの理論はきちっと入っているのだと私は考えているのです。
 ただ、それが各学校の各先生方の授業にどう反映してくるのかというところまで行ったときに、幾つかの点で足りないところが、うまくいかないところがあったのかもしれないと思っています。それは何なのかというと、学習指導要領をどう受け止めて、どう変わったのかというところの、その根本の変わりの部分ですね。ESDの理念がどういうふうに入ってきて、学びをどう変えようとしているのかということについての理解が十分に進まなかったのだと私は思っているのです。
 それは教育委員会レベルでもまだ不十分なところはあるのではないかと思いますし、各学校の校長だとか、一人一人の教員のレベルに行ったら、それはほとんど浸透してきていない問題なのだろうなと思っています。そうすると、それをどういう形で浸透させていくのかといったときには、やはり教育委員会とか、先ほど、社会教育主事の話になっていましたけれども、学校教育を中心に物を考えていけるのだとしたら、そこには教育委員会の指導主事がどう研修して、そのことをどう捉えて現場に指導して助言をしていくのかということはとても大きなことだと思っています。ですから、社会教育の方も大事なのですけれども、教育委員会の方もかなり重視していく必要があると思いました。

【安西委員長】
  はい。

【手島校長】
  付け足していいですか、もう一つ。

【安西委員長】
  はい。

【手島校長】
 さっき公民館のことが出ていました。公民館は市町村教育委員会立であるので、話が通りやすいということも伺いました。でも、学校が公民館とタイアップしながら授業を作るというのは、岡山では結構すてきな実践があってすばらしいなと私も思っているのですが、それ以外のところでは、ちょっとそういう形になりにくいかもしれないと思っています。むしろ地域の資料館とか、あるいは区役所の温暖化対策課とか、あるいはNPOやJICA等のそういういろいろな団体との連携という方が進めやすいかもしれない。授業を作るにはそういうことが重要かもしれないと思っています。
 それから、先ほどの企業などについて、CSRが大変盛んになってきているのでという話がありました。企業は洞爺湖サミットを機会にして、環境という言葉をキーワードとしてかなり進めてきました。でも、今の企業は、持続可能な社会とかいう言葉を大変多く使うようになってきて、そこにはESDにつながるものがたくさん企業として意識されるようになってきたのは事実なのです。ただ、学校教育と企業をどう結び付けていくのかというところにおいては、教員が企業と直接交渉しながら授業を作っていくというのはなかなか難しいところがあるので、十分には広まっていないなと、そんなことも感じています。
 先ほどの公民館は、公民館をメーンのツールとしてやっていくだけじゃなくて、むしろそれに付随するいろいろな機関があるので、それをまとめてESDとして取組を共有していくような形がいいのかなと思っています。ちょっと長くなって失礼しました。

【安西委員長】
 いえいえ、ありがとうございました。大変いい御意見をいろいろ頂きました。恐らく持続的な発展が可能な社会を作っていくための教育ということだけでは、やはりそれはもうみんなそうだということになって、ESDという言葉を使う必要はないのでは、と言われかねないというのがやっぱり気にしているところなのです。それは田村委員の言われたように、やはりそれぞれ個人によってその思いが違うので、やっぱりそういういろいろな人たちがいろいろなふうにやっているムーブメント、活動を、それをとにかく結集させていくことが、広く、余り狭く捉えずに結集させていった方が賢いのではないかと思います。
 今日頂いた御意見をやはり事務局で整理していただいて、特に来年に向けて、評価の問題もやっぱり大事だと思うのです。そういうことも含めて、何かここでできることを蓄積していくようにしたいと思いますので、よろしく御協力のほどお願いを申し上げます。ありがとうございました。
 当初の予定より30分遅れになっておりますので、よろしくお願いいたします。
 議題3に移らせていただいて、運営小委員会への報告(論点整理)についてということでございます。「我が国のユネスコ活動の活性化」については、既に運営小委員会でも議論がされておりまして、この委員会でも議論をしてきたところでございます。8月28日に運営小委員会が開かれることになっておりまして、そこでこの教育小委員会の審議状況を報告させていただくという、そういうことになっています。
 骨子案について、資料7、事務局から説明をお願いします。またその説明の後で、特に川田先生からユネスコスクールの質の確保、それから、前回会議の資料について御意見、御提案を頂いておりますので、説明を頂くようにしたいと思います。まず、事務局からよろしくお願いします。
【本村国際統括官補佐】
 それでは、お手元の教委131-7を御覧ください。こちらの骨子案は、冒頭申し上げましたとおり、前回、前々回の教育小委員会での議論をまとめたものでございます。正に今、議題2のところで御議論いただいたポイントについてもこちらの方に反映させていかないといけないと考えて思いますが、前回までの議論のポイントを1枚にまとめておりますので、簡単に御説明させていただきます。
 まずユネスコスクールについてですが、現在615校を数えておりまして、ユネスコスクールのない県の解消を目指しつつ、今後は質の確保に重点を置く必要があるという御意見をまとめております。
 また、ESDに関することやユネスコスクール以外の学校でのESDの推進について、幾つかポイントを申し上げますと、例えば2.の、ESDが学校教育の内容にどのように寄与するかを明確にする等教育委員会にユネスコスクールやESDの活動の理解を得ることが必須。こうした観点から学校間や教育委員会間の交流を通じた優良事例の共有を進める。
 また、6.でございますけれども、教育委員会、大学が中心となり、ユネスコスクールとともに、コンソーシアムを形成し、ユネスコスクール以外の学校へのESDの実践普及及び国内外のユネスコスクール内の交流を促進する仕組みを作るとともに、ESDコーディネーターを通じたESDに関する連携強化を促進する方策及びESDコーディネーター相互の交流を活発にする方策を検討する必要がある。これは前回御説明させていただきましたけれども、今回、教委130-10でこの6.のところは図にしてある部分でございます。
 また、今御議論いただきましたESDの理論的裏付けにつきましては、ESDの教育効果について、評価指標を明確にし、客観的なデータで示すことが必要。現状では、ESDがどのようにキー・コンピテンシーや21世紀型スキルの向上に貢献しているかを理論的裏付けに資するような調査研究を進める必要があるのではないか。
 最後に、ユネスコ世界会議に向けてですが、ユネスコ世界会議においては、我が国の進めてきたESDについて効果的に発信するべきである、などの意見を取りまとめてございます。以上でございます。

【安西委員長】
 これについては何か特に御意見ありますれば。後でも結構ですが……、はい。

【榎田委員】
 このペーパーは公表されるのですか。

【本村国際統括官補佐】
 はい。

【榎田委員】
 というのは、ごくさ末なことなのです。ESDに関することやユネスコスクールの3番、初中教育という概念はどうなのかなと思いまして。

【本村国際統括官補佐】
 これは初等中等教育でございます。失礼しました。

【安西委員長】
 私も細かいことでごめんなさい。「21世紀型スキル」という用語は、主に特にオーストラリア国立とか、特定の大学がある意味戦略的に始めた、黒田委員は御存じかと思いますけれども、それを21st century skillsのプログラムと言っているので、「21世紀型スキル」と言うと、それと間違えるという風に見えるので工夫が必要ではないでしょうか。

【岩本国際交渉分析官】
 私ども、ユネスコのバンコク事務所などのいろいろなプロジェクトプロポーザルには、平気に21st century skillなんて書いてきているので、ある意味、普通名詞化してしまっているのかなと勘違いしたのです。

【黒田委員】
 ユネスコバンコクも幾つか並べるようにしているみたいですね。ソフトスキルとか、ノンコグニティブという言葉と21世紀型スキルを並べて、やはり言葉を一つにすることがまだできていないという状況なのではないかと。

【岩本国際交渉分析官】
 さすがにそれ一つだけではちょっとしんどいので、ここもちょっとぼかしてしまって、「キー・コンピテンシーや」というふうにしてしまったのですけどね。

【安西委員長】
 キー・コンピテンシーと並べられると、21世紀型スキルというのは、オーストラリアなどを原点とするプログラムだと考えると特定のものなので、キー・コンピテンシーというのは一般用語なので、その二つを並べられると、カテゴリーが違う感じがするのです。一般スキルだと思えばいいんですけれども、それがもう両方混ざって、21世紀型スキルというのは一般用語と特定用語が混ざって使われているように思われるので。細かいことで申し訳ないのですけれども。

【岩本国際交渉分析官】
 「キー・コンピテンシーなどの向上に貢献しているか」とかいうふうに修正したらいいのですか。

【安西委員長】
 ちょっと気になるということです。

【岩本国際交渉分析官】
  はい。

【黒田委員】
 一つよろしいでしょうか。

【安西委員長】
  はい。

【黒田委員】
 最後の「ESDに関するユネスコ世界大会」に向けてというところなのですが、何とかこの2014年の会議の成果を2015年のソウルでの世界教育フォーラム、まだ名前はきちんと、ソウルであることも決まっていないみたいですが、韓国で開催される予定のEFAの最終年の会議につなげていくということに結び付けていくことができればなと。先日の確かユネスコ執行委員会の方でも、文科省といいますか、大使の方からそういう御発言をされたというふうに伺っていますけれども、やっぱりポストEFAにESDが入っていくことが、最も確からしい形で世界の潮流にESDが残っていく手段ではないかと思います。
 現在、追い風といいますか、正にポストMDGsの議論では、完全にサステイナビリティが非常に中心的な概念になっておりますので、そういう意味でも、今までのEFAはほんとに薄っぺらといいますか、外枠だけの話をしていた中に、コンテンツの話をしていく。つまり、環境に結び付く、環境だけじゃなくて、サステイナビリティに結び付くようなところでこれまで収れんしてきたESDという概念をその後に入れていくということが必要になってくるかなと思いますので、何とかこの2014年から2015年への橋渡しということを一つの目標に掲げていただけると。
 韓国の方もかなり、この前、事務総長がいらっしゃったときもそういう御発言がありましたし、先々週はKEDIとユネスコバンコクの共催したセミナーに招かれて行っていたのですけれども、そのときにも、本当に今、アイデア募集中みたいなところがあるものですから、是非日本からの働きかけをしてみてはどうかと思います。

【安西委員長】
 それでは、事務局側で整理、もう一度よろしくお願いします。
 それでは、川田先生お願いします。

【川田教授】
 配付資料の一番最後に付けていただいた、私がお届けした資料について説明させていただきます。前回の教育小委員会の議事次第あるいは配付資料がインターネット上で公開された後のことですけれども、岡山大学がASPUnivNetの事務局校を担当しておりますので、ユネスコスクールの実践支援の実績があり、多くの学校の課題を把握しているユネスコスクール支援大学間ネットワークの加盟校に議事内容を共有させていただいて、寄せられた提案を御紹介するというものです。
 まず一つとしては、ユネスコスクールの到達目標や到達段階の提示をしてはどうかという意見がありました。ユネスコスクールでは、現状で自分たちの実践がどの段階にあるのか、何を目標にすればいいのか分からず、今後の活動に戸惑いを感じているというような状況で、ドイツのESDのプログラム「トランスファー21」に見られるような、ESDの到達目標を明示して、積極的に取組を行っている学校を顕彰するような方法をとったらどうかという提案がありました。やはりユネスコスクールの活動に関して、何らかの方向性あるいは到達レベルを示していくような段階に来ているのではないかというような認識をお持ちの加盟大学があるということです。
 それから、先ほどの社会教育主事のお話のところでも出てきましたけれども、やはりユネスコスクールやESDの理念の普及に当たっては、教員研修の充実が重要なので、現状で行われている研修の実態を調査し、さらにこうした研修が各地域で積極的に行われるように、教育委員会、教育研修センター等に働きかけることが有効ではないかという提案がありました。

 ユネスコスクール全国大会の改善に関する提案がその次にあるのですけれども、ユネスコスクール全国大会というのは、研修としての意味合いがかなりあると思いますので、この提案では、最低年1回は、ユネスコスクール全国大会あるいは地域で行われるようなユネスコスクールの研修会に参加するのを義務化してはどうかというような提案がありました。地域での研修会としては、宮城教育大学が開催しているユネスコスクール東北大会等がそれにあたると思います。
 それから、実現が割合容易で、改善するとかなりの効果があるのではないかというのが、ユネスコスクール全国大会の改善です。ユネスコスクール全国大会は現時点では1日のプログラムですので、そのプログラムをどのようなプログラムにするのかというだけで大分状況が変わるということです。これは先般も私が少しお話しさせていただいたかと思いますけれども、他教科の教育研究会等は年間何回か全国的に開催されているわけです。そうした内容等を参考にして、ユネスコスクール全国大会をそれに類した大会にするというのは、ノウハウもたくさん蓄積されているのでさほど難しくはないのではないか、具体的には、学校や教員が主体的に企画、運営、研修に関われるような大会にしてはどうかというもので、オープンに報告者を募るような実践発表会やポスターセッションを実施する辺りから始められるのではないかという提案です。
 それから、こうした情報を集めていることにも御協力させていただいているユネスコスクール支援大学間ネットワークの強化、充実が、ユネスコスクールの質の向上にも役立つのではないかというようなことで、地域単位で支援大学間ネットワークを拡充していくのが望ましいという提案がありました。北陸では金沢大学がユネスコスクール支援大学間ネットワークに加盟していますけれども、金沢大学以外の10余りの大学が金沢大学に協力するネットワークを形成して、ESDのサポートに当たっているというような状況があるという報告がありました。
 それから、教育センターや公立の図書館等を更に活用してはどうかという提案がありました。ESDに関する情報資料はかなりの部分がインターネットのホームページ等にアップされているのですけれども、そうでないような情報を地域の図書館や教育センターで収集して活用できるようにすると、学校によるカリキュラム改善に貢献するのではないかという内容です。ちなみに、岡山市の市立図書館では、ESDの特設コーナーを設けておりまして、ESDに関連する書籍を集めた書架あるいは展示等を行っているというような例がございます。

 それから、具体的にユネスコスクールの支援に当たるものとして、地域のユネスコ協会との連携を促進して、ESDの支援をしていったらどうかという提案がありました。ただ、地域のユネスコ協会との連携に関しては、地域によっては様々な歴史や課題等もあるようにもお伺いしておりますので、地域の実情、あるいはユネスコスクール側からすれば、その学校側の実情に合わせてというようなことになろうかと思います。
 次に、前回提案されました、ESDの推進案として、コンソーシアムを構築して、コーディネーターを置いて運営していくということに関してですが、多くの加盟大学からは、基本的には良いアイデアだという意見を頂いております。
 ただし、都道府県単位でコンソーシアムを構築して運営していくのは必ずしも実効性は高くないのではないかというのが、ユネスコスクールを今まで支援してきた大学間での認識です。様々な地域スケールでのネットワーク構築がより良いのではないかというようなことと、コンソーシアム及びESDコーディネーターの役割はやはり明確化しておく必要があるのではないかという意見がございました。。
 具体的な支援の内容については、様々な支援のレベルがあり、そのレベルに応じた地域的な範囲があるので、それらを勘案したコンソーシアム作りが重要ではないかというようなこと。それから、コーディネーターをどこの誰が担当するのかということに関しても、一律に例えば教育委員会だとかユネスコ協会だとかにするのではなくて、地域の実情に合わせて決定してはどうかというような意見がございました。以上でございます。

【安西委員長】
 ありがとうございました。大変良くまとめていただいていると思いますけれども、今の川田先生の御意見に対する御意見でも結構ですので、お願いしたいと思います。さっきの骨子の方を改めてでも結構です。

【田村委員】
 一つよろしいでしょうか。

【安西委員長】
  はい。

【田村委員】
 ユネスコスクールの質向上ということで非常にいい御提案を頂いたのですが、一つだけ、これはやっておいた方がいいのではないかということがあります。ユネスコスクールでESDというようなことを考えた場合は、海外との交流は前提条件じゃないかと思うのです。例えば社会教育課で、先ほどESDの問題を取り上げて戸惑いがあったみたいな話があったのですけれども、要するに、国際化するときには必ず戸惑いが起きるのです。
 その地域の実情だけでいくと必ず合わないようなことが出てくるわけですが、世界的にはこんなことが考えられているのだということを知ることで、今、それでいいのだけども、将来を考えると、やっぱりこれ考えておいた方がいいのではないかというようなテーマが出てくると思うんです。ですから、ESDを取り上げるということは、グローバリズムというか、国際化というか、そのものだと思うのです。横串ですから。だから、それはどこかに入れられないものなのですかね。できるだけ海外と交流するというようなことをやるといいよ、みたいなことを。

【川田教授】
 ユネスコスクールのガイドラインにもそうした内容は多少書かれておりますけれども、先ほどの提案の中にもありましたように、このような活動をすることがユネスコスクールには求められているのだというユネスコスクールの到達目標を示す中で、そうしたところをもう少し明確化して項目立てると良いのではないかと思います。
 例えばチェックリストを作って、毎年あるいは数年に1回確認するとか、あるいは3年とか5年に一回ぐらいは少し大きな報告書を提出していただいて、それについて、場合によっては様々な機関が、活動の良い点を評価し、このようにしたらより良い実践になるのではないのかというようなアドバイスをするような仕組みができれば望ましいかと思います。。毎年大きな報告書を作るというのは非常に困難ですけれども、3年ないし5年ぐらいの単位でそうした報告書を作って、活動を内外に広めるとともに、そこでとりあえずの一区切りを作って、次のステップにステップアップする支援をするというようなことも考えられるかと思います。

【安西委員長】
 ユネスコスクールをほんとに一生懸命やっておられる学校については、バックアップって、顕彰等も含めて何かやった方がいいのではないかと思います。ずっと議論させていただいているのですけれども、実践というのか、何か一つやろうとすると、なかなか全国的なことで難しいところがあるのですけれども、やはりその辺りは事務局にもお考えいただいた方がいいのではないかなとは思います。ただやっても、こっちからレスポンスは全然ないというのか、それはちょっとどうかとは思います。
 ほかにはいかがでしょうか。見上委員はいかがでしょうか。

【見上委員】
 今の御議論、おっしゃるとおりだと思います。それで、あんまり足元から足元からというふうにしていると、ジャンプできないですね。だから、例えばある学校で勉強しているサステイナビリティに関係しているようなことで、もし先生の方で、ここの国とこういうふうなことをしたら子供たちにこういう変容が見られるだろうという場合は思い切って何かさせてあげる。
 ただ、その場合に、学校の先生にとっては、失敗は許されないわけで、校長先生に対する体面とか、教育委員会に対する体面とか、そういう壁がある。それを大学のネットワークとか、いろいろな形でみんながサポートしてあげる。それで成功事例ができると、あそこがうまくやったから、うちも今度はこんなふうにしようというようなことで何か一気に進むのではないかという、そんな気はしております。

【田村委員】
 そういう問題があるのですね。なるほどね。

【安西委員長】
 今言われたようなことが少しでもできていけば、随分いい方向に行くのではないかなと思います。

【手島校長】
 川田先生の御提案の中で、3のところにユネスコスクールの全国大会をどういうふうにしていったらいいのかというお話がありました。各教員の交流や研修の時間が少ないということで、むしろオープンにしていろいろな提案をさせたらどうだろうというふうな御提案を頂いています。
 これを具体的にするとしたら、例えばESD大賞というのを去年何校かが頂いて、私のところも頂くことができたんですが、そういう学校がコーナーを設けて、ある時間それぞれに発信するような場を作っていただくと、そういう意味でそういう実践が評価されているのだなとか、こういう取組は自分のところでもできるなとかいうような、お互いに中身で学び合うことができると思うのです。
 つまり、せっかく何賞とかっていろいろ賞を頂いているのだけども、私どもが参加していても、あの学校はどういう意味でその賞になっているのかが分からないという残念な思いをしながら帰ってきているので、そんなことをちょっと工夫していただくと随分変わってくるのではないかなと私は思っていました。ありがたいことです。

【安西委員長】
 ありがとうございました。
 ほかにはよろしいでしょうか。今のこの話の議題というのは、運営小委員会が8月末にありますので、そこへ何を載せるかという、そういうことで、是非これはということがあればおっしゃっておいていただければ有り難いのでありますが。
 よろしいでしょうか。
 それでは、次に参りまして、議題4、第37回ユネスコ総会への対応についてということでございます。5月に文部科学大臣から諮問がありました、37回ユネスコ総会についての答申案について、事務局から説明をお願いしたいと思います。これは田村会長もおられますので、田村会長にも補足していただければと思います。まず事務局から。

【本村国際統括官補佐】
 それでは、お手元の131-8の資料を御覧ください。こちらは、田村会長から下村文部科学大臣に宛てた答申案でございます。
 まず1のところでございますけれども、第37回ユネスコ総会における基本的方針ということでございますが、これ、全体に関係する部分でございます。ユネスコは現在、アメリカの資金拠出停止によりまして、財政状況が非常に苦しゅうございます。そういう中で、ユネスコが比較優位を有する分野を絞り込み、明確化し、その分野での活動に特化することで、具体的な成果を上げ、その存在意義の向上を図るべきであるという趣旨のまとめ方をしてございます。
 続きまして2のところでございます。こちらは、2014年から2021年までの中期戦略の案、また、2014年から17年の事業・予算案に関する方針、今度の総会での日本政府の方針でございます。1.が総論で、2.が教育分野、3.以降に、科学、文化等の各分野の答申案を書いてございますけれども、総論と教育分野だけ御紹介させていただきます。
 総論の部分でございますけれども、この中期戦略案、ユネスコではC/4と呼んでおります。また、事業・予算案、C/5と呼んでおりますけれども、この両案における包括的目標については、従来の5項目から、平和(持続的な平和への貢献)と持続可能な開発の二つに絞り込まれていることは評価できると。また、5)ですけれども、持続可能な社会の構築に向けた取組としては、我が国が提唱しユネスコが国連システムにおける主導機関として推進している持続可能な開発のための教育(ESD)と、前回第36回ユネスコ総会の機会に我が国から提案したサステイナビリティ・サイエンスについて特に重点的に推進すべきであるという形でまとめてございます。
 また、2ポツ、教育分野でございますが、1)の万人のための教育(EFA)につきまして、現行のミレニアム開発目標(MDGs)の目標ともなっている初等教育の完全普及のみならず、教育の質向上、衡平性の確保及びポスト初等教育の向上は、続いて3ページですけれども、重視されるべき課題である。このEFAの目標の一つである教育の質の向上について、ESDも大きく貢献するものであることから、より一層EFAとESDの連携を強化していくことが重要である。
 2)持続可能な開発のための教育です。ESDが各国の教育政策、計画及びカリキュラムに一層盛り込まれるとともに、国際的政策アジェンダに強く反映させることを期待する。また、来年11月には我が国でESDに関するユネスコ世界会議が開催されるところでありますが、本会議の議論及び成果も十分に踏まえ、2014年以降の国際社会におけるESDの取組に反映させるとともに、ユネスコ事務局内での予算・人員の両面において体制の強化を図るべきであるという形で教育分野はまとめてございます。
 以上でございます。

【安西委員長】
  はい、どうも。田村会長はいかがでしょうか。

【田村委員】
 御報告いただいたとおりで。

【安西委員長】
  それでは、この件、御質問、御意見ありますでしょうか。
 今度の総会で田村会長から答申が出されるというものですが。

【本村国際統括官補佐】
 今度の国内委員会の総会、9月10日の国内委員会の総会で。

【安西委員長】 
 よろしいでしょうか。一応こういうことになっております。
 それでは、次のことと一緒でも結構ですので、よろしいですね。
 それでは、議題5、その他ですけれども、日本ユネスコ国内委員会の活動に関する報告について等事務局からの報告ということになっております。国内委員会の活動報告の説明をまず事務局から。これも田村委員に補足があればしていただければと思います。

【本村国際統括官補佐】
 続きまして、131-9の資料を御覧ください。日本ユネスコ国内委員会の活動報告、こちら、教育分野の報告をまとめたものでございます。平成25年、本年の2月から総会までの8月までの活動を中心に記載してございます。特にESDの推進、来年のユネスコ世界会議に向けてということで、ESD関係を中心に掲載してございます。
 1ページ目の真ん中より下の部分でございますけれども、先日、ユネスコのパリの本部におきまして、DESDの最終年会合のタスクフォース及び国際ステアリンググループのISGの会合が開催されております。
 また、続きまして2ページ以降でございます。ESDのユネスコ世界会議に関しまして、会場、ロゴマーク、ウェブサイト等は御報告したとおりでございます。新しく、3ページ目の(2)の下の2でございますけれども、世界会議のウェブサイトがユネスコのウェブサイトの中に完成いたしました。8月8日付で公開されておりますけれども、日本語、英語、フランス語、スペイン語で概説しております。今後、このページをユネスコとしても順次アップデートして、国際的に発信をしていきたいという考えでございます。
 また、3ページ目の下でございますけれども、来年11月6日から8日、岡山市におきまして、「ESDに関する世界会議のステークホルダーの主たる会合」の中の一つとして、「ユネスコスクール世界大会」が開催されます。その中の高校生フォーラム及び教員フォーラムに参加する学校あるいは参加チームの公募を行いまして、最終的に21チームの応募がございました。その中から審査を行いまして、次のページ、4ページの上の方に表でまとめておりますけれども、7チームを審査の結果、選考しております。これはウェブサイトでも公表しているところでございます。
 その他、6ページを御覧ください。1点、加盟校につきまして、前回の教育小委員会の開催時点では583校だったんですけれども、その後、ユネスコから、審査の結果、32校が追加で承認されたという連絡がございまして、合計で現在615校まで増加しております。
 それ以降は御参考に付けておりますので、説明は省略させていただきます。
 続きまして、今後の日本ユネスコ国内委員会の関係行事につきまして、参考2の資料を御覧ください。今週以降ですけれども、ユネスコ関係の会議と致しまして、8月22日から29日、韓国におきまして、韓国政府が実施する、日本教職員の招へいプログラムがございます。また、引き続き、韓国におきまして、9月7日から9日において、ASPnet、ユネスコスクールの60周年記念国際フォーラムがございます。続いて、9月19日、パリにおいてサステイナビリティ・サイエンスに関する国際会議。9月24日から10月11日、パリにおきまして、第192回ユネスコ執行委員会、続いて、11月5日から20日において、パリで第37回のユネスコ総会が行われる予定でございます。
 また、国内委員会関係でございますが、本日の教育小委員会を皮切りに、28日水曜日、選考小委員会と運営小委員会がございます。それを受けて、9月10日に第133回の日本ユネスコ国内委員会の総会がございます。
 主な予定としては以上でございます。

【安西委員長】
 どうも。田村委員はいかがでしょうか。何か。

【田村委員】
 いや、今御報告があったとおりなのですけれども、これがまたなかなか難しいテーマなので、うまくどうやったらいいのかというようなことはあると思うのですけれども、実は安西委員長先生の所轄になるのですけれども、いよいよ次の学習指導要領というか、教育課程改定が始まるのですね。これをどう取り上げるかというところです。

【安西委員長】
 そうですね。

【田村委員】
 これは学問の体系に従って教科が出来上がっていますよね。それと、先ほど黒田先生がおっしゃられた今のESD、あいつをどう整合するかというのはまだはっきりしていないのですよね。ですから、どうするのかなと思っているのです。これ、そんなに時間はないのですよね。

【安西委員長】
 ないと思いますね。

【田村委員】
 もうそろそろ始まる時期ですよね。

【安西委員長】
 そうだと思います。

【田村委員】
 だから、それがちょっと気になるだけです、今の段階では。順調に行っていますからね、会議そのものは。

【安西委員長】
 日本の国際戦略としても本当にこれを本格的にやっていくためには、今、田村委員の言われたところを突っ込む必要があると思うのです。これは学習指導要領のこれだけの問題でなくて、やはりさっきから出ている、日本の教育をこれからの時代に向けてどういう教育にしていくかということは、やはり学習指導要領に反映されることが一番効いてくるものですから、そこはもう今からやらないと遅くなると私も思います。

【田村委員】
 日本の学問は一応ノーベル賞をもらっているから、だから、下手にいじっていいところをなくしてしまったらどうしようもないし、かといって、今のままでいいと思えないのです。だから、どうしたらいいのか。それだけ心配事としてあります。

【安西委員長】
 そうですね。ノーベル賞も、特に今世紀に入ってからのノーベル賞受賞者の数というのは、日本は世界で第2位なのです。それはすばらしいことだと思うのですけれども、そのノーベル賞を取られた方が本当に研究をやった年齢というのは、恐らく日本が経済成長をむしろ始めた頃の方が多いわけなのです。今の中堅の研究者、そういう人たちが本当にそういうところまで達するのかというと、これはそんなに楽観視することはできないと思いますので、今までノーベル賞がいろいろ出ているから、その辺りは大丈夫だというのは、もう少しきつく見た方がいいとは思っております。それも含めて、いろいろな意味で日本の教育というのは、教育の専門家はこの中にたくさんいらっしゃるので私が申し上げることではありませんけれども、これからの時代の教育をどうするかというところは、学習指導要領との関係でそんなに時間はないと思っております。
 ちょっと話は深くなりましたけれども、この件はよろしいでしょうか。一応、御報告を兼ねてということで。

【黒田委員】
 すみません、今の日本の話に何か発言できればいいのですけれども、非常に重要な問題だと思いますが、私はこれ以上申し上げることはないのです。
 国際的な発信というところで、すみません、戻って恐縮なのですが、ユネスコ総会についての答申について、前にも見せていただいているのに今さら申し上げると恐縮なのだけれど、1点だけ小さな部分ですが、万人のための教育の一番下のところに、「衡平性の確保」という言葉があります。最近の国際機関の議論で、エクイティ・アンド・インクルージョンという言葉を後ろから付けていることが非常に多いのです。つまり、エクイティの概念についても様々なエクイティの概念があって、例えばもちろんパリティといいますか、数量的に見るエクイティと、それから、それだけではなくて、学習成果のエクイティとか、リソースインプットのエクイティであるとかいうことがあるわけですが、学習の場という意味でも、一緒に勉強しているかどうかというような形でインクルーシブ教育という言葉があるものですから、インクルージョンということが言われております。
 インクルーシブ教育については、文部科学省の方でも昨年、答申といいますか、出されていますし、外務省の方でといいますか、菅イニシアチブをMDGサミットの中で教育協力のイニシアチブを出したときにもインクルーシブ教育という言葉に触れていますので、ここの中に、例えば「衡平性・インクルーシブ教育の推進」というような形、特にエクイティ・アンド・インクルージョンという概念を入れられるような形で入れてはいかがかなと感じました。マイナーなことなのですが、エクイティだけではなくて、インクルージョン、インクルーシブ教育、どちらかの言葉が入ると良いのではないかなと感じます。
 それから、もう既に遅いといいますか、今、学習指導要領に何とか入れなくてはいけないという話があったわけですけれども、それ、でも、既に入っているとは思うのですが、私も先ほどちょっと申し上げたドロール報告書は、90年代の中盤に出て、かなり各国の教育政策には大きなインパクトがあったものです。それの改訂版が今度2014年を目指して、今、ユネスコの方で活動が行われているということです。
 EFA、ESDについて、実はこのドロールについては最近、この前の世界比較教育学会でも大きなセッションがありましたし、世界の教育学者が割と注目をしている部分ではあるのですけれども、これについては、もしかしてもう既にかなり御議論があったのかもしれませんが、日本としてあまり関わってきていたとは思っておりません。そこにどうやってESDを入れていくかとかいうようなことも、当然これまで考えてこなければいけなかったのかもしれませんし、もう既にそういう活動が行われているのかもしれません。
 そこについて、質問というよりも、これから何ができるかといいますか、つまりは、確実にサステイナビリティという観点は入っていると思いますので、ポスト・ドロール、ドロール報告書という言葉ではないと思いますが、新しいものが2014年に出た後でそれをどういうふうに活用していくかというところでもESD的な観点が使えるのではないかなと思うんですが、今の御議論とか教えていただければ大変ありがたいと思います。

【岩本国際交渉分析官】
 確かにおっしゃるとおり、ユネスコにおきましては、教育に関するハイレベルパネルということで、1998年に出ましたドロールレポートと、その前のレポート・・・。

【黒田委員】
 フォールですかね。フォールレポート。

【岩本国際交渉分析官】
 フォールレポート、その二つを読み直すということで、13人の世界の有識者を集めて、会議を1回開きました。日本からは佐藤禎一国内委員会副会長が御参加いただいております。今のところ、まだ1回しか開かれておりませんで、その議論の取りまとめなどを伺っていますと、個別のEFAとかESDというよりは、もうちょっと幅広いといいますか、教員の役割というのがこういった知識基盤社会の中でどう変わっていくのかとか、あとは、学習というものに対してどういうふうにエンカレッジしていくのか、かなり抽象的な話が進んでいるようであります。
 そういった中で、議論の前提条件となるものとして、例えばサステイナビリティとか、あるいはもちろんグローバライゼーションみたいな話、そういったことも出てきていると伺っております。本来であれば、秋の執行委員会のときに何らか披露があるはずだったですけれども、まだそこら辺が少し遅れているようでございます。御指摘の御意見は何らかの方向で反映されるように、事務局としても佐藤委員の方にはお伝えしたいと思います。

【安西委員長】
 ありがとうございました。大変貴重な御意見だと思います。さっきのインクルーシブ教育についても全くおっしゃるとおりだと思うのですが、答申関係だとちょっと時間的にどうか分かりませんので、事務局の方で……。

【岩本国際交渉分析官】
 申し訳ございません、文科省の人間がこんな質問をしてはおかしいのですが、その場合のインクルーシブというのは、日本語でいうと、包括性みたいなものですか。

【黒田委員】
 はい。日本語にするのは諦めたのかなと思うのですが、文科省の方でも、結局、インクルーシブ教育という形で去年夏ぐらいに答申が出ているようですし。前は包括教育とかいろいろな言い方で言っておりましたが。

【岩本国際交渉分析官】
 分かりました。そこら辺、これ、関係省庁もございますので、また相談させていただきます。

【黒田委員】
 申し訳ないです。

【安西委員長】
 片仮名で書いているような気がします。

【岩本国際交渉分析官】
 そうですね。

【安西委員長】
 ありがとうございました。
 それでは、一応、以上でございます。今までの全体の中で特に何かほかに御意見ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 私の方で1件。さっきの運営小委員会への報告骨子案で、細かいことなのですけれども、各項目文章の一番語尾というか文末を見ていると、「必要」とか「大切」とか書いてあるのですけれども、もう少し、「べき」とか、何ていうのでしょうか、「必要があるのではないか」という表現もあったりします。教育小委員会として運営小委員会への報告ですので、その辺もう少し、内容というよりは、例えば「必要」というのは、ではどうするの、と。必要だと言っているだけで、必要だから運営小委員会に何とかしてと言っているのか、その辺がよく分からないものですから、その辺りは整理するようにさせていただいて、こちらにお任せいただければと思うのです。よろしいでしょうか。
(「結構です」の声あり)

【安西委員長】
 全体としてはもちろん変えないようにいたしますので。これを読むと、こういうことが大事だ、大事だとは書いてあるのですけれども、つまり、教育小委員会というのはそういうことを指摘しているところなのだなというのもちょっと何だなと思うので、一生懸命審議したという、そういうニュアンスがもう少し出るといいかなと思いましたものですから。

【岩本国際交渉分析官】
 すみません。

【安西委員長】
 よろしいでしょうか。

【岩本国際交渉分析官】
 はい。

【安西委員長】
 すみません、勝手なことを申し上げまして。
 ほかにはよろしいでしょうか。
 はい、どうぞ。

【本村国際統括官補佐】
 1点だけ御報告ですけれども、お手元にお配りしております日本PTA新聞、今日は伊藤委員、欠席でございますけれども、前回御紹介させていただきました、このPTA新聞の5ページでございますけれども、ESDの取組について、今回、八名川小学校の手島先生にも御執筆いただいて、八名川小学校の取組等を大きく掲載していただいています。今後、5回シリーズでESDについて取り上げていただく予定でございます。

【安西委員長】
 そうですね。これは大変ありがたいことだと思います。

【榎田委員】
 それと、全体講演も川井委員がなさるのですね。

【本村国際統括官補佐】
 そうですね、この一番後ろのページに載っております。国内委員会の川井委員が講演されるということです。

【安西委員長】
 そうですね。
 ありがとうございました。
 それでは、ここまでにさせていただければと思います。ちょうど時間になりました。大変貴重な御意見を頂きまして、感謝を改めて申し上げたいと思います。ここまでにさせていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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