資料1-5 第211回ユネスコ執行委員会の結果について(報告)

令和3年4月
国際統括官付

(1)開催概要

・日時:令和3年4月7日(水曜日)~4月21日(水曜日)(予定)(於:ユネスコ本部)
※全議題について、現地で日本ユネスコ代表部が対応。

<ユネスコ執行委員会について>
・ユネスコ加盟193カ国が参加するユネスコ総会(2年に1度開催)に次ぐユネスコの意思決定機関であり、春と秋の原則2回、パリのユネスコ本部で開催。
・ユネスコ加盟193カ国の中から、地域枠に応じて投票で選ばれた58カ国により構成(任期4年)。我が国は、1952年以来継続して執行委員国を務める。
・ユネスコ日本政府代表部尾池大使が、第209回執行委員会より行財政委員会の議長を務めている。

(2)結果概要(主要議題)

1.SDG4-グローバルレベル・地域レベルの調整及び支援の進捗状況【議題6】

○議題概要:
・SDG4-教育2030の調整及び支援に関するユネスコの主導的役割について報告するもの。
・グローバル教育会合(GEM)臨時会合では、1.安全な学校再開、2.最前線の労働者である教師支援、3.技能開発への投資、4.教育におけるデジタルディバイドの減少、の4つの優先行動分野が設定され、SDG4のグローバル・協力メカニズムの刷新の主導がユネスコに課された。
・ユネスコ国際統計局UISが、Technical Cooperation Group (TCG)の事務局として、地域ごとのベンチマークの設定をリードしており、地域ごとにベンチマークの設定のための会合を開催。
・第3回の国際教育の日イベントは、「コロナ世代のための教育の回復及び活性化」をテーマに、国連本部及びGlobal Partnership for Education (GPE)と共催で開催。教育ファンドの保護及び集約の重要性について取り上げた。

○全体の議論:
・多くの国がコロナ状況下及びコロナ後のSDG4推進におけるユネスコのリーダーシップの重要性を強調し、グローバル教育会合の開催などユネスコの活動を歓迎。
・日本からは、UNシステムにおけるSDG4の主導機関であるユネスコの役割の重要性を指摘するとともに、SDG-Education 2030 ステアリング・コミッティの共同議長として、また、JFITの支援によるアジア太平洋地域大臣級会合の開催支援などを通じて、SDG4の推進に積極的に貢献していく旨発言。
・議論を踏まえ決議案が採択された。

2.世界の記憶【議題10】

○議題概要:
・執行委員会として一般指針案及び国際諮問委員会(IAC)規程改正案を承認するとともに、2022-23年審査サイクルの開始に向けた呼びかけを本年中に行うよう事務局長に求める決議案について承認するもの。
・今回の制度改善は主に下記3点。
1. 誰でも申請が可能であった制度から、加盟国政府を通じて申請する制度に変更。
2.当事国からの異議申し立て制度を新設し、問題があれば当事国間で対話を行い解決
するまで登録を進めない。
3. 登録決定者を事務局長から加盟国政府による委員会に変更。

○全体の議論:
・日本側からは、今回の制度改善は、議論に積極的に取り組んできた日本としても大変喜ばしい結果である旨発言。
・韓国側からは、今回の制度改善に賛同する旨の発言があった一方で、今回盛り込まれた異議申し立て制度が事実上の申請への拒否権とならないよう、慎重な制度運用の必要性がある旨の発言があった。
・なお、韓国側から現在凍結している慰安婦案件資料について触れる発言があったものの、制度改善案に対する意見が述べられることはなかった。日本側からは、慰安婦案件資料については、引き続き事務局長によってプロフェッショナルにハンドリングしていくことを期待する旨発言し、韓国側もそれに同調。

○結果:
・特段の追記等はなく、原案の通り決議案は採択された。
・今回の制度改善を踏まえて、ユネスコにおいて、新制度の下での新規申請募集を2021年12月末までに行うこととされている。その募集に対応できるよう、国内の体制整備を進める予定。

3.国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(1974年)の改正に係る事務局提案【議題38】

○議題概要:
・1974年11月の第18回ユネスコ総会で採択された「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」(以下、「1974年勧告」という。)の改定に関するユネスコ事務局の予備的調査を踏まえ、勧告の改正について検討するもの。

○全体の議論:
・発言した全ての国が、1974年勧告はユネスコの教育分野の活動の最も重要なものの一つであり、その理念は現在でも有効なものであるが、現代の様々な課題にも対応するよう改正することを支持。
・日本からは、ESDの深化等を踏まえた勧告改定を支持するとともに、様々な意見を聞きつつバランスの良い改正を行うべき旨発言。
・なお、複数国から、勧告の改正にあたっては、事務局が説明したようなオンラインコンサルテーションではなく特別委員会を開催して検討が行われるべき旨が主張された。

○結果:
・教育の役割の例示の一つとして「人権と基本的自由」が追記、勧告の改正にあたって「対面での政府間コンサルテーションを複数回開催」することが決議に追記された。また、新たな項目として、物質的でなく人文主義的な観点も含めた全体的なアプローチができる学習者の育成を目指すこと、これまでに国連で採択された国際理解教育に関する規範文書に言及する決議文を追加したうえで、決議案が採択された。

4.次期中期戦略案(41C/4)及び予算案(41C/5)【議題18】

○議題概要:
・2022年~2029年のユネスコの次期中期戦略の案について、審議するもの。
・現行の案は、アフリカ・グループやジェンダー平等というグローバル・プライオリティ及びSIDSやユースといった4つのプライオリティ・グループを重点として作成されている。また人的・財政的資源の面でも、より効果的に、成果を上げるべく、分野横断的課題が設けられている。
・日本から提出した意見についても概ね反映された案となっている。

○結果:
・41C/4について「particularly in terms of gender」を削除し、代案として「growing inequalities including: gender inequality」とするロシア案を受け入れ、
・合意に至らず議論の継続が決定したため、メールによる投票が行われる予定。仮に合意に至らない場合は、7月1日及び2日に必要に応じて執行委員会臨時会合が開催予定。

(3)その他

ユネスコ事務局長選に係るアズレー現ユネスコ事務局長へのインタビュー
ユネスコ事務局長の選挙に向け、現ユネスコ事務局長で次期選挙に立候補しているアズレー事務局長に対し、各国からのインタビューが行われた。

※上記の内容も含めた文科省関係議題全体については別添1を参照。


 

第211回ユネスコ執行委員会における文科省関係議題

別紙1

【事業委員会】

議題 5.I.A 教育の未来
内容:「教育の未来」のグローバルレポートに関する議論の進捗及び今後の予定が報告された(執行委員会の場で議論は無し)。

議題 5.I.B ESDに関するUNESCO活動への地球憲章の貢献
内容:第40回ユネスコ総会で採択された「ESDに関するUNESCO活動への地球憲章の貢献」の決議の実施状況について報告された。

議題 5.I.F G20の枠組みにおける文化大臣会合
内容:第210回執行委員会において提案されたG20の枠組みにおける文化大臣会合について、フォローアップが行われた。

議題 6 SDG4-グローバルレベル・地域レベルの調整及び支援の進捗状況(※本紙参照
内容:SDG4の実現に向けた国際的、地域的メカニズムについて取組の状況報告がなされた。

議題8 ユネスコ世界ジオパーク
内容:ユネスコ世界ジオパークカウンシルにおいて、新規申請・拡張申請保留案件の審議結果が提出され、執行委員会による承認が行われた。

議題9 ユネスコにおけるユースの取り込み・ユースフォーラム
内容:ユネスコ総会において、ユネスコの扱う各諸課題について若者の声を聴くという観点から、ユースフォーラムの開催及び方法に係る事務局案について議論された。ユースの巻き込みの重要性についてはコンセンサスが得られるも、参加者の選考プロセスについて意見が分かれ、次回執行委員会(第212回)までに調整の上、修正提案が提出される予定。

議題10 世界の記憶(※本紙参照
内容:執行委員会として一般指針案及び国際諮問委員会(IAC)規程改正案を承認するとともに、2022-23年審査サイクルの開始に向けた呼びかけを本年中に行うよう事務局長に求める決議案が承認された。

議題38 国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(1974年)の改正に係る事務局提案(※本紙参照
内容:1974年11月の第18回ユネスコ総会で採択された「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」の改定に関するユネスコ事務局の予備的調査を踏まえ、勧告の改定について検討がなされた。

議題39 文化・芸術教育に関する枠組み
内容:学校教育カリキュラム及びそれを超えた文化・芸術教育に関する既存の枠組みを更新し、すべての地域における協議プロセスを開始する枠組みについて、2022年に「文化・芸術教育に関するガイドラインと政策提言」をまとめ、第215回執行委員会において分析及び協議プロセスの実施、2023年に政府間会合を開催するよう事務局長に求める決議案が承認された。

【事業・行財政合同委員会】

議題 5.II.C ユネスコの戦略的改革
内容: ユネスコの戦略的改革に関して行われたコンサルテーション(とりわけハイレベル・リフレクショングループやユースによる活動、各国のユネスコ国内委員会による国際会議)の結果について報告が行われた。

議題7 ユネスコ 教育セクター
内容:ユネスコ教育セクターに関する2019年のIOS評価に基づく取組の実施状況について報告がなされた。

議題12 教育に係る技術イノベーション戦略(2021-2025)
内容: 2019年のIOS評価を踏まえユネスコが新たに作成した「ユネスコの教育に係る科学技術イノベーション戦略(2021-2025)」について議論が行われ、方向性については歓迎の意が示され、次回執行委員会に更新した戦略を提示することとなった。

議題16 IBEの未来
内容:ユネスコカテゴリー1センターである国際教育局(IBE)の再編成(任務及び規約)
について、第210回執行委員会に提出された報告書の審議がなされた。

議題18 次期中期戦略案(41C/4)及び予算案(41C/5)(※本紙参照
内容:2022年~2029年のユネスコの次期中期戦略の案について、審議するもの。

【条約勧告委員会】

議題21.II 国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告(1974年)
内容: 1974年勧告に基づくモニタリング報告書の各国の提出状況、及びその内容に基づくESD及びGCEDの実施状況の分析が報告された。


 

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