実践例2

初めて通級指導に通う子供(本人)やその保護者との面談は、何に気を付け、どのように進めたらいいんだろう?

(1) 対応する際のポイント

【保護者に対して】

①不安や辛さに配慮しながら、話をまず聞きましょう。

保護者のなかには、子供や保護者自身が置かれている状況を、家族や親しい関係者にさえ理解されていなかったり、自分の気持ちや相談事について、ゆっくり話を聞いてもらえていなかったりする方がいらっしゃいます。

②通級指導でどんなことができるのかを分かりやすく丁寧に伝えましょう。

保護者の話を聞いた上で、その悩みに沿うような形で、通級がどのような役割を果たせるのかを伝えるとよいです。

【本人に対して】

①信頼関係を作りましょう。

信頼関係を築くには、子供が教師に対し、親しみ、安心感などをもつことが大切です。そのためには、教室の雰囲気、通級担当の物腰、語り口調などの要素が重要になります。

②「 できる・できない」より、まずは通級指導で「楽しく学ぶ」ことが大切であることを伝えましょう。また、本人が困っていることを言いやすい雰囲気づくりも大切です。

自信のなさや通級への不安な気持ちを抱えている場合があるので、子供の「やってみたい」という気持ちを引き出すように、本人の意見を聞きながら関わりましょう。

③どのようなことをやるのか具体的に示し、本人の意見も聞き取りましょう。

どんなことをやるのか、子供がイメージしやすいように伝えましょう。

(2) 具体的な実践例

【概要】

<保護者(D さん)との面談>

  • 面談において、D さんは、これまでの子育ての苦労から、今抱えている不安まで、次々に語りました。通級担当は、D さんの思いを受け止めた上で、D さんの抱える不安を少しでも和らげるように、通級指導の内容や進め方について、ポイントを絞って説明しました。
  • 今後の連絡手段を確認し、相互のコミュニケーションは、今後も持続的に行えることを伝えました。

<本人(E さん)との面談>

  • E さんの好きなところに座るように促すなど、話しやすい雰囲気を作り、相手の話すペースに合わせて聞き、安心感をもてるようにしました。
  • 事前に保護者から聞いていたE さんの好きな電車を題材にした教材を見せながら、通級指導の目的と内容を伝えました。

<保護者(D さん)との面談>

  • 面談が始まると、D さんは堰(せき)を切ったように話し始めました。「同じ年齢の他の子と比べて、できないことが多いなと思うようになりました。…自分の育て方に原因があるのではないかと、悩んで辛かったです。通級指導で、何かあの子にプラスになればと思って…。」
  • 通級指導を受けることを決めるまでのD さんが経験した様々な出来事は、必ずしも肯定的な体験ばかりではなく、辛かったことも含め、D さんの思いを受け止めるように心掛け、じっくり聞き取りました。
  • その上で、通級指導でどんなことをするかについて、D さんの不安の解消につながるように説明をしました。事前に作成した、指導の決め事や伝達事項を簡潔にまとめた書類を示しながら説明しました。
    「通級指導では、E さん(本人)が学習や学校生活の中で、困っていること、難しいと感じていることについて、改善・克服するために、E さんに合った指導を行っていきます。E さんやご家族の願いを聞かせてもらいながら、一緒に取り組んでいきたいと思っています。」
    「通級指導を、E さんが楽しく通える場所にしていきたいです。ただ、あくまでE さんの在籍は1 組なので、授業をはじめ、学校生活のほとんどは1 組で過ごします。E さんが、クラスにおける勉強や友達との関係に自信や意欲をもてるようにしていきましょう。」
  • また、面談の機会だけではなく、連絡ノートを活用して、情報を共有していきたいこと、必要に応じて、在籍学級担任や特別支援教育コーディネーターなどの関係者で連携して、チームとして対応していきたいことを伝えました。連絡ノートという具体的な連絡手段が示されたことで、D さんは安心した様子でした。

参照

通級指導の内容や目指すところについては、特別支援学校における自立活動が参考になります。

テーブルに腰をかけ面談をするお母さんと男の先生の画像

<本人(E さん)との面談>

  • E さんには、好きなところに座ってもらい、教師も「ここに座っていいかな?」と確認してから着席しました。
  • E さんは、自信を失っている様子で、通級指導についても、あまり前向きな様子がうかがえませんでした。まずは、E さんの好きな電車の話題で話してみました。
  • E さんの話すスピードに合わせて、頷いたり、相づちを打ったりしながら聞きます。
  • E さんと少し話したところで、通級指導を話題にしました。E さんは、「周りの子ができることが、僕はできない。ダメなんだ。」と言っていました。そこで、「この教室では、E さんの『こんなことができるようになりたい、やってみたい』をやるんだよ。初めてのことだし、不安も感じていると思うけど、先生は、ここをE さんが楽しく通える場にしたいと思っています。例えば、E さんの好きな電車を使って勉強するんだよ。」と話しました。
  • E さんには途中から笑顔も見られ、示した教材を指して、「僕は電車に詳しいから、これならやってみたいな。」という発言もあり、通級指導に関心をもってくれた様子でした。
電車について話をするEさんと男の先生の画像
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