実践例11
そろそろ運動会の時期だ。学校行事を上手く活用できないかな?
(1) 対応する際のポイント
運動会や学芸会、音楽会などの学校行事の場面においても、通級指導で実施している指導・支援を活用することができます。
①本人や保護者と、学校行事で困る場面や支援内容について、相談し、共有しましょう。
- 通級指導の指導内容や手立てを活かしましょう。
- 本人や保護者の思いを聞きながら、支援する場面や支援内容を検討しましょう。
②学校全体で対応しましょう。
- 通級担当と在籍学級担任等が、連携して取り組みましょう。
- 校内委員会等を通じて、支援の必要性や支援内容を共有しましょう。
- 学校行事のいつものやり方にとらわれず、プログラムの構成を、当該の子供がより参加のしやすいものに工夫することなども、考えられます。
(2) 具体的な実践例
【概要】
- 小学校3年生のH さん(実践例5、6と同じ)。
- 通級指導では、表情が描かれたカードを活用したり、感情を数値化したりして、感情を伝える練習をしており、また、気持ちを表す言葉を増やすように学習しています。
- 運動会の練習が始まると、H さんは、練習中に上手くいかないと、その場にいられなくなることがありました。また、特に学年全体で行うダンス(表現運動)は、立ち位置の変化や振りが覚えられずに不安を抱えていました。
- 在籍学級担任からH さんの状況を聞き、また、H さんやH さんの保護者の思いも聞き取って、運動会に向けた対応を確認しました。
- 通級指導において、運動会の練習や本番を想定して、見通しがもてるようにしたり、自分の気持ちを伝えたり、コントロールしたりする学習をしました。
- H さんの保護者や在籍学級担任と連携し、H さんの休憩のタイミングや声掛けについて確認したり、ダンスの際の配置などについて工夫したりし、それらの内容は校内委員会等を通じて、学校全体で共有しました。
(在:在籍学級担任、保:保護者、本:本人)
○情報収集、支援内容の検討
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学校では、翌月の運動会に向けた練習が始まりました。通級担当は、在籍学級担任やH さんの保護者から、運動会で困る内容や必要な支援について、聞き取りました。
在「 H さんは、練習中に上手くいかないと、その場にいられなくなることがあります。特に、学年全体で行うダンスの練習では、立ち位置や振付けがなかなか覚えられずに苦労しています。」
保「 当日、みんなと違う動きをしたりして、目立ってしまわないか心配です。本人も嫌だろうし、私も周りの保護者の目が気になります。」
本「私も、みんなと一緒に踊りたい。」
- 運動会において、支援が必要という共通理解が図れたので、支援内容の検討のためのケース会議を開きました。
- 会議を経て、練習中に辛くなった時には、在籍学級担任に伝えてから、見学をしてもよいこととし、また、ダンスは隊形移動が少ない位置とし、近くに手本となる友達を配置することを決めました。これらのH さんへの対応については、校内委員会等を通じて、学校全体に共有しました。

○運動会に向けた取組
- 通級指導では、感情を伝える練習として、運動会の練習時や本番で起こりそうな場面を取り上げて、辛いこと、不安なこと、必要なことを教師などに伝える練習をしました。
- 通級指導では、運動会の練習の予定表を作成し、練習期間の見通しがもてるようにするとともに、練習時には、在籍学級担任が適宜声掛けをし、困っていることはないか、疲れていないか、などを確認するようにしました。
- 通級指導において、気持ちをコントロールする活動の内容として、H さん本人の希望を踏まえ、運動会のダンスを取り入れ、上手くいかずにイライラするような時に、気持ちを相手に伝える練習をしました。その際、H さんは、「右」「左」と言うよりも、片方の手首にリボンを付け、リボンが付いている方、付いていない方と伝えた方が分かりやすいことが分かったので、在籍学級担任を通じて、学年の他の教師に話をしてもらい、ダンスの練習時や運動会当日も、学年全員が右手首にリボンを巻くことになりました。
- 当日は、運動会のスケジュールを基に、事前に、H さんの保護者や在籍学級担任と、休憩タイムを決めておき、静かな場所で休めるようにしました。
- 休憩タイムを設け、休めることが分かったことで、H さんの不安が軽減し、当日の成功につながりました。
○その後の通級指導の様子
- ダンスを上手く踊れたことが、H さんの自信にもつながったようで、通級指導に対する意欲も高まりました。
