実践例10

通級指導を、在籍学級での各教科等の指導に、どんなふうに活かしていけるかな?

(1) 対応する際のポイント

教科等の指導の場面において、通級指導で実施している指導・支援を活用することができます。

  • 通級指導で行った方法が、そのまま、学級の中で実施できる場合もありますが、学級の中でできる方法に変えることが、必要な場合があります。
  • 在籍学級担任や教科担任と相談しましょう。
  • 在籍学級で行う方法について、本人や保護者の考えや気持ちを確認しておきましょう。

(2) 具体的な実践例

【概要】

<実践例1>

  • 小学校5 年生のL さんは、弱視のため、小さい文字などを読むことが困難であり、以前から、文字のポイントを大きくした拡大教科書を使用していました。
  • 高学年になり、文章の量が増えたため、拡大教科書の分冊数が多くなりました。また、拡大倍率が足りず、グラフなどの資料の読み取りに苦労している状況が見られました。
  • 通級指導では、タブレット端末に教科書のデジタルデータを入れて、文字サイズや背景色などを自分の見え方に合わせて、使用する練習をしました。
  • タブレット端末の使用に慣れた後、L さんやL さんの保護者の希望を踏まえ、在籍学級の授業で使うことにしました。

<実践例2>

  • 中学校2 年生のM さんは、在籍学級で黒板をノートに写すことに困難を感じています。
  • 通級指導を実施する中で、困難の原因が、目で見たことを覚えておくことの弱さと推察されました。
  • 通級指導で、タブレット端末で黒板の板書を撮影し、それを手元に置いて、ノートに写すことが効果的であることが分かりました。
  • M さんやM さんの保護者の希望を踏まえ、どの授業においてもタブレット端末を使うことにしました。

<実践例1>

  • L さんは、自分の見え方を知り、拡大教科書を使って在籍学級の授業に参加していました。
  • 高学年になり、L さんから、「拡大教科書と、ノートと筆記用具を置こうとすると、机の上がいっぱいになってしまう。図も細かくて見えにくいし、読むのにも時間がかかる。」という話がありました。
  • L さんや保護者と相談し、通級指導でタブレット端末を導入することにしました。
  • L さんは、タブレット端末における、背景色や文字色の変更などの画面設定方法と、文字を拡大する操作にだいぶ慣れてきました。L さんは、「これ(タブレット端末)だけで、いろんなことができるから、とても楽。」と言っており、L さん自身も、タブレット端末の便利さを実感しているようでした。
  • L さんや保護者から、通級担当に、在籍学級でもタブレット端末を使用したいという希望がありました。そこで、在籍学級担任及び特別支援教育コーディネーターに相談し、校内委員会を開き、L さんのタブレット端末の使用について話し合う機会を設けました。
  • 校内委員会では、教科書のデジタルデータを入れたタブレット端末の使用について、共通理解が図られました。在籍学級における授業等の配布プリントについても、タブレット端末に落とし込み、L さんの手元で拡大等ができるようにすることを確認しました。また、全職員や他の児童へもL さんのタブレット端末の使用について周知してもらいました。L さんはこれまでも拡大教科書を使用していたので、教師や他の児童からは自然に受け入れてもらえました。
  • 従来の拡大教科書や拡大版の配布プリントが、タブレット端末にコンパクトに収まったので、L さんは、移動教室の際など授業の準備が楽になりました。また、これまで以上に、グループ学習などへ積極的に参加する様子がうかがえました。
教科書のデジタルデータを入れたタブレット端末を見ながら授業を受ける男の子の画像

<実践例2>

  • M さんは、在籍学級で、黒板を写すことが授業時間や休み時間を使っても終わらず、友達からノートを借りて、自宅で写していました。
  • 通級指導を継続する中で、困難の原因が目で見たことを覚えておくことの弱さと推察されました。
  • M さんや保護者と相談し、通級指導で取り組んだ結果、文字を写す時には、できるだけ近いところに見本を置いたり、書く分量を調節したりすることが、有効であることが分かりました。その中でも、タブレット端末で、黒板の板書を撮影し、それを手元に置いてノートに写すことが実施しやすく、また効果的であることが分かりました。
  • M さんが、通級担当に、「手元に見本があると写しやすい。授業でも使ってみたい。」と言っていたこともあり、在籍学級担任及び特別支援教育コーディネーターに相談し、校内委員会を開き、M さんが、板書を撮影するためにタブレット端末を使用することについて話し合う機会を設け、使用について、共通理解が図られました。
  • 使用を始めると、タブレット端末の使用について、各教科担当から提案がありました。具体的には、美術のモチーフや理科の観察対象物など、板書以外にも撮影することが可能となりました。
  • その後、外国語の授業で、音声アプリをダウンロードしたタブレット端末の活用や、歴史の授業で、プリント教材を配布するなど、板書自体を少なくする授業の在り方の工夫についても、徐々に進めていくことが教師間で確認されました。
黒板の板書を撮影したタブレット端末を手元に置いてノートに書き写す男の子の画像
ページの先頭へ戻る