令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第3章 学校における水難事故防止対策の強化

研究テーマ

実施団体|香川県教育委員会

ライフジャケット推進事業

-子供たちの水難事故を防ぐ!ライフジャケットを中心とした香川県の取り組み-

1.事業のねらいaim

 香川県教育委員会では、子供たちの水難事故防止に向けて、県内関係機関・団体と連携してライフジャケットに関する様々な取り組みを推進している。
 ライフジャケットの貸出やライフジャケットを活用した水泳授業の実施、親子体験教室や教員への研修等、子供たちがライフジャケットの必要性や使用方法等を体験的に学ぶことができる機会をつくり、生涯にわたって水辺で安全に楽しく活動できるようになることを目指す。

2.事業内容contents

1ライフジャケットレンタルステーション -ライフジャケットの無償貸出-

要望のあった香川県内の学校(園)及び児童生徒等の指導を行う団体等に対して、ライフジャケットの貸出を無償で行う

  • 貸出対象:県内の幼、小、中学校等及び児童生徒に関わる団体
  • 貸出物品:ライフジャケット子供用Mサイズ120着、Lサイズ170着、ライフジャケット大人用70着
  • 貸出実績

2学校における水難事故防止対策強化事業 -専門家派遣によるライフジャケットを活用した水泳事業の実施-

※以下はR6実績

1. 実践研究

 香川県内の小学校等を研究推進校とし、水泳運動(安全確保につながる運動)等の指導に関わる専門家等を派遣し、体育授業のサポートを行い、指導と評価の充実を図る。

  • 研究推進校:県内小学校11校、特別支援学校2校(R6年度)
  • 研究内容:着衣のまま水に落ちた場合の対処の仕方 やライフジャケットの活用の仕方など、水泳授業における自己保全のための学習の指導内容や指導方法等の工夫について
  • 派遣講師:香川大学、高松海上保安部、香川県B&G財団連絡協議会 等

2. 指導力向上研修の実施

 香川県内の小学校教員等を対象に、教員の水泳運動(安全確保につながる運動)及び水難事故防止に向けた取り組みに関わる研修のサポートを行い、教員の指導力向上につなげる。

  • 研究推進校:R6は全校種対象の研修で実施
  • 研究内容:着衣のまま水に落ちた場合の対処の仕方やライフジャケットの活用の仕方など、水泳授業における自己保全のための学習の指導内容や指導方法等の工夫について
  • 派遣講師:香川大学、高松海上保安部、香川県B&G財団連絡協議会 等

3ライフジャケット体験教室 -ライフジャケットの体験機会の充実-

水辺の事故を防ぐために、ライフジャケットの意義と重要性を実感する機会をつくる。

  • 日時:令和6年6月8日(土)10:30~12:00
  • 対象:県内小学生とその保護者22名
  • 会場:香川県立総合水泳プール
  • 講師:香川県B&G財団連絡協議会

4子供が運動にときめく授業づくり講習会 -ライフジャケットの体験機会の充実-

香川県内の小学校(体育)教員に対して、ライフジャケットを活用した水泳授業づくりに関する研修を行う

  • 日時:令和6年8月6日(火)13:20~16:00
  • 対象:体育・保健体育科教員23名
  • 会場:香川県立総合水泳プール
  • 講師:香川大学教育学部 教授・石川雄一氏

5研究推進委員会 -関係機関・団体との連携・協力体制-

  • 委員構成
No. 所属・団体 No. 所属・団体
1 香川大学教育学部教授 委員長 8 香川ライフセービングクラブ
2 香川県防災センター長 9 子供たちにライジャケを!※2
香川県消防長会長 10 香川県立総合水泳プール
4 高松海上保安部部長 11 香川県教育委員会 東部教育事務所
5 香川県警察本部生活安全部地域課長 12 香川県教育委員会 西部教育事務所
6 香川県B&G財団連絡協議会 13 香川県教育委員会 保健体育課
7 香川県CDR※1他機関検証会議    
  • 1.CDR(Child Death Review:予防のためのこどもの死亡検証) 医療機関や行政をはじめとする複数の機関・専門家が連携して、亡くなったこどもの事例を検証し、予防策を提言する取り組み。
  • 2.子供たちにライジャケを! 2007年に「ライジャケサンタ」として森重裕二氏が、水難事故防止のため、全国の子供にライフジャケットの着用を呼びかけている。
  • 委員会実施:年2回(5月、12月)実施

3.これまでの成果と今後の取り組みresults & initiatives

1これまでの成果

ライフジャケットを着用した経験のある児童・生徒の増加

 ライフジャケットレンタルステーションの貸出状況はこの4年間で大きく増加した。貸出先では、体育の水泳授業の活用だけでなく、地域やクラブ等の野外活動、イベント、安全教室等での活用も増えており、水辺の活動にライフジャケットは必須である意識が高まっている。
 また、「学校における水難事故防止対策強化事業」実施における事前調査で、「これまでにライフジャケットを使ったことがあるか」という質問に対して、「ある」と回答した児童の割合も増加している。

水泳が苦手な児童・生徒等に対して、ライフジャケットを活用した指導は効果がある

 これまでの本事業の取り組みでは、ライフジャケットを着用することにより、水泳が苦手な児童・生徒等が主体的に学習及び活動に取り組むように変化した姿を何度も見ることができた。「学校における水難事故防止対策強化事業」を実施した学校から、以下のような声も多く寄せられている。

  • ずっと顔つけができなかった生徒も、ライフジャケットを着用して「絶対に沈まない」という安心感を得たことで、スムーズに顔つけをすることができた。本人も驚くほどの経験で、達成感を存分に味わっている様子だった。(特別支援学校)
  • 水に恐怖心がある生徒も、ライフジャケットの浮力に安心し、プールの底から足を離して水の流れに身を任せて進むことができた。学習後に生徒から「着けていたら流されても大丈夫」「水の中でも安心できる」という言葉が出てきた。(特別支援学校)
  • ライフジャケットの授業後、意欲的に取り組む様子が見られ、泳ぐことが苦手な児童を対象とした特別練習に多くの児童が参加した。(小学校)
子供たちへの安全指導や水辺の安全な活動を実施する地域やクラブ等の増加

 ライフジャケットレンタルステーションの貸出状況から、地域やクラブ等の野外活動、イベント、安全教室等での活用も増えており、水辺の活動にライフジャケットは必須である意識が高まっている。

2主な課題と今後の取り組み

取り組みの波及と市町への展開

 現在、6月~8月のライフジャケット貸出希望及びライフジャケットを活用した授業の実施希望が増加、集中しており、すべてのニーズ応えることができない状況である。県教育委員会が保有するライフジャケットの数、派遣できる指導者に限りがあることが理由としてある。
 今後は、県教育委員会の取り組みを市町へ展開すること、更には関係団体との連携強化、指導ができる教員・指導者の育成等が必要だと考える。

ライフジャケットの管理

 現在、ライフジャケットの安全基準、管理基準等に統一されたものがなく、市販のライフジャケットに示されている耐用年数をもとに入れ替え等を検討している。今後、ライフジャケットの普及に伴い、安全なライフジャケットの条件や基準等の整備が必要であり、関係機関と調整を行いながら整理する。

ライフジャケット普及啓発の強化

 現在、ライフジャケットの安全基準、管理基準等に統一されたものがなく、市販のライフジャケットに示されている耐用年数をもとに入れ替え等を検討している。今後、ライフジャケットの普及に伴い、安全なライフジャケットの条件や基準等の整備が必要であり、関係機関と調整を行いながら整理する。

ライフジャケット推進事業の経緯how it started

2021.05 県内企業からライフジャケット50着寄贈 2
0
2
1
2021.06 ライフジャケットレンタルステーション開設 →開設翌日に8月中旬までの予約がすべて埋まる
 
利用した学校・団体等からの声
  • ライフジャケットを使った授業をしたいが、指導が合っているか不安
  • ライフジャケットの使い方を正しく知りたい
  • 安全教室を実施したいので、毎年借りたい等
 
2021.11~
2022.03
R4からの事業実施に向け、関係機関・団体に協力要請
  ・高松海上保安部・香川大学教育学部・香川県B&G連絡協議会・香川ライフセービングクラブ・香川県立総合水泳プール・子供たちにライジャケを!

2022.04 ライフジャケット推進事業開始 ※令和の日本型学校体育構築支援事業実施(令和4年度) 2
0
2
2
2022.05 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第1回会議
2022.06 ライフジャケット親子体験教室実施(参加者12名)
2022.07 学校における水難事故防止対策強化事業実施(11校実施)
  県内企業からライフジャケット50着寄贈
県内企業からライフジャケット300着寄贈
→希望する市町教育委員会へ配付(6市5町へ配付)
2022.12 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第2回会議

2023.01~
2023.03
R5からの事業実施に向け、関係機関・団体に協力要請 2
0
2
3
  ・香川県消防長会・香川県CDR他機関検証会議・教育事務所
2023.04 ライフジャケット推進事業2年目開始 ※令和の日本型学校体育構築支援事業実施(令和5年度)
2023.05 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第1回会議
2023.06 ライフジャケット体験教室実施(参加者29名)
  学校における水難事故防止対策強化事業実施(7校実施)
  県内企業からライフジャケット50着寄贈→1市に配付
県内企業からライフジャケット40着寄贈→2市に配付
  R6からの事業実施に向け、関係機関・団体に協力要請
  ・香川県警察本部生活安全部地域課(R2第2回会議から参加)
2023.12 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第2回会議

2024.01 学校における水難事故防止対策強化事業報告会開催(65名参加) 2
0
2
4
2024.04 ライフジャケット推進事業3年目開始 ※令和の日本型学校体育構築支援事業実施(令和6年度)
2024.05 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第1回会議
2024.06 ライフジャケット体験教室実施(参加者22名)
  学校における水難事故防止対策強化事業実施(13校実施)
  県内企業からライフジャケット50着寄贈
2024.08 子供が運動にときめく授業づくり研修会実施(体育・保健体育科教員23名参加)
2024.12 ライフジャケット推進事業研究推進委員会 第2回会議

2025.01 香川県学校体育経営研修会開催(98名参加) ※心肺蘇生、AED、ライフジャケット等の演習

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