令和の日本型学校体育構築支援事業

令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第3章 学校における水難事故防止対策の強化

研究テーマ

授業情報|坂出市立西庄小学校(香川県)第5学年

専門家から学ぶ「安全確保につながる運動」

-ライフジャケットを活用した水泳授業-

実践研究のねらいaim

 水泳運動の楽しさや喜びを味わい、その行い方を理解するとともに、手や足の動かし方や呼吸動作などの基本的な技能を身に付けるようにする。また、背浮きや浮き沈みをしながらタイミングよく呼吸したり、手や足を動かしたりして、続けて長く浮くことができるようにする。

指導の工夫devise

■ 指導計画

授業づくりのポイント
  • 単元を通して、「準備運動→感覚づくりの運動→泳法の習得→振り返り」という一貫した学習活動の流れを組むことで見通しをもって学習できるようにする
  • 技能が均等になるようなグループを編成し、活発にアドバイスをおくり合ったり、励まし合ったりできる環境を整える
  • 自己や友達の動きの変容を確認できるようにするために、ICT機器を活用する
  • 背浮きの感覚を実感したり、安全な活動への意識を高めたりするためにライフジャケットを着用しての活動を単元の中に組み込む
  • 振り返りの時間をとることで、自己や友達の変容や伸びを確認し、次の授業に向けての課題意識をもたせる

■ 指導の流れ

① 事前指導

 毎年、水難事故で多くの方が怪我をしたり、亡くなったりしており、その中には子供の事故も多く含まれていることを周知した。そのうえで、「水難事故に遭わないようにするにはどうすればよいか」ということを子供に問うた。子供からは「水の近くに子供だけで近づかない」や「柵などに囲まれた安全なところで遊ぶ」などの意見が出た。次に、「水難事故に遭ってしまったときに、どうすれば自分や周りの人の命を助けられるだろうか」と子供に問い、その方法を学ぶために、海上保安署の方に指導していただくことを共通で確認した。

② 中心的な活動
時間 主な活動 工夫点
0


15


30


45
  1. 準備運動を行う
  2. めあての確認をする
  3. 水の中で感覚づくりの運動を行う
  4. 水に浮く練習を行う
    1. 道具を使わずに体だけで浮く練習をする
    2. 水に浮くもの(ライフジャケット)をもって浮く練習をする
  5. ライフジャケットを着用して浮く練習を行う
    1. ライフジャケット着用の練習を行う
    2. ライフジャケットを使用して浮く練習を行う
  6. 振り返りを行う
  • 夏休み前の時期には全国的に水の事故の発生件数が多くなることを知らせ、
    自分事として捉えさせる
  • 体の2%以上の部分が水面から出ると体は沈んでいくことを知らせ、
    浮かぶ練習をする際に意識させる
  • 正しい使用法を身に付けさせるために、ライフジャケットはタグまで
    正しく取り付けることを伝える
  • 楽に浮くことができている子供の様子を全体で共有し、
    モデルにするよう助言する
  • 学習を終えての感想を発表させることで、学びの成果を全員で共有する
③ 事後指導

 各学級で日記や感想文を書く活動を行い、本時の学習が、自己の命を守るために大切なことであることを再確認した。また、夏休みに向けての各学級での学級活動の時間に生徒指導面で指導を行った。その際には、本時の学習をふまえてライフジャケット着用の重要性を子供と共有する指導を行った。

④ その他

高松海上保安部と坂出海上保安署の協力を得て実施した。

成果と課題results & tasks

■ 成果

  • 自己保全のための学習を行う前に実施したアンケートでは、海や川に遊びに行く際のライフジャケットの必要性について、「必要である」と答えた子供の割合は、44%(9名中4名)であった。学習後のアンケートで再度同様の質問を行ったところ、「必要である」と答えた子供の割合は100%(9名中9名)であった。海や川には、子供たちが想像していた以上の危険が潜んでいることを実感し、自己の安全を確保することの重要性に気付いたようであった。
  • 授業後は通常の水泳学習の時間においても、自己保全の意識が高まり、友達同士で安全確認をしたり、水中での行動に留意したりするなどの変容が見られた。
  • 実施が夏休み前だったために、夏休みの生活指導の時間においても、子供が自分事として安全な生活について考えることができた。
  • 教員にとっても、今後の水泳学習における自己保全のための指導の方法や心構えを認識できるよい機会となった。
児童の声
私は、授業の前までは海や川に遊びに行くときにライフジャケットを持って行っていませんでした。でも、この授業を受けて、ライフジャケットがどれだけ浮きやすいかを感じることができて、とても大切だとわかりました。これからはライフジャケットをしっかり用意して家の人と海や川で遊びたいです。

■ 課題

  • 学校のプールは水深が浅く、すぐに足が底につく。また、水底もほとんど滑ることはなく、安定している。安全な場所ではあるが、実際の海や川の環境とは相違点が見られる。海や川の環境がいかにプールのものとは違うかということを何らかの方法で実感させることも重要ではないかと考える。
  • 職員間で、自己保全のための学習の指導技術を研修の場等で共有する必要がある。

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