令和の日本型学校体育構築支援事業

令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第2章 障害の有無にかかわらず共に学ぶ体育授業の充実

研究テーマ

実施団体|神奈川県教育委員会障害種の情報|肢体不自由

共に学び共に育つ体育授業の
実現に向けた調査研究

実践研究のねらいaim

 昨年度、車いすを使用する生徒(以下、生徒Aという)と他の生徒が一緒に取り組む体育授業を実践した。本研究では、より多くの生徒が生徒Aと共に運動したり、車いすを使用した運動を行ったりすることにより、障害の有無に関わらず共に学ぶことの意義や価値を実感し、「共生」態度を育むことができる体育授業の実現を目指す。

授業づくりの考え方thinking

 障害の有無にかかわらず誰もが一緒に運動に取り組むことができるよう、以下のような学習活動を、学習のねらいや内容に合わせて配置して実践することとした。

  1. ほとんど変更を加えなくても誰もが参加できる活動
  2. みんなが同じ活動をするために行い方を工夫する活動
  3. 個別の課題に応じて練習方法やルールを選択して行う活動

指導・支援の工夫devise

■ 単元

3年生:球技:ネット型(テニス)

誰もが一緒にできるテニスの授業

 テニスは、ネットを挟んでラケットを使ってボールを打ち合い、ボールを相手コート内に落とし、ツーバウンドするまでに返球できなければ得点となる競技。そのため、ラケットやボール操作が難しく、移動範囲が広いコートでは、特に運動が苦手な生徒や車いすを使用する生徒などにとっては、テニスの特性を味わうことが難しくなってしまう。そこで、用具やルール、コートの広さなどを調整することで、誰もが攻防する楽しさを味わえる単元を計画した。

ほとんど変更を加える
ことがなく誰もが参加
 車いすの特性を理解するために全員が車いすに乗ったり、複数の用具を試したりして、車いすやラケットの操作、ボールの弾み方を理解する活動を取り入れた。
誰もが同じ活動をする
ために行為を選択
 「20回連続ラリー達成」のために、用具を選択できるようにした。
 5時間目以降は、「試しのゲーム」「簡易ゲーム」等、活動の行為を変更し、全員が同じ活動ができるように、コートの大きさや参加の人数など、微調整を行った。
個々やチームの能力に応じて
活動場所や方法を変更
 3・4時間目は、「ボールを打つ」課題に応じて、個々の能力に応じて、活動方法を選択できるようにした。
 7時間目以降は、チームの課題練習や作戦に応じた練習を選び、試しのゲームや簡易ゲームに向けた練習をチームで選択できるようにした。

■ 活動概要及び工夫点

①ほとんど変更を加えなくても誰もが参加できる活動

 全員が順番に競技用車いすに乗り、車いすに乗っていない相手と一緒に運動することで、車いすに乗って運動するときの状況や、車いすに乗っているときはどのように関わってほしいのかを体験的に理解する活動を取り入れた。

②みんなが同じ活動をするために行い方を工夫する活動

 全員がより多くラリーを続けることができるようにするために、使いやすい用具を試したり、易しくなるようにルールを変更したり、コートの大きさを調整して、障害の有無にかかわらず同じコートで一緒に練習やゲームを行った。

③個別の課題に応じて練習方法やルールを選択して行う活動

 障害の有無にかかわらず、いろいろなチームとゲームをして、多くの生徒が関わり合うことができるように、個別の課題を解決する練習方法をチームで選択し、ゲームの度に対戦チームとルールを相談して決めるようにした。

成果と課題results & tasks

■ 成果

  • 生徒の振り返りから、本単元を通して車いすを使用する他者と共に運動をする時の配慮や工夫について気付く活動につながっていた。また生徒Aの振り返りから、みんなで楽しむことができる方法を考えながら活動していたことがわかった。
  • 教師のアンケートから、生徒だけでなく、障害の有無にかかわらず、共に学ぶことができる授業づくりに対する教師の理解がより深まった様子も見られた。

■ 課題

  • 物の見え方や身体操作など、障害の特性や症状によって生じる困難さは、一人一人異なることから、教師は生徒の個別の状況に応じた指導や支援の工夫を検討する必要がある。
  • 共に学ぶ体育授業を実現するためには、教師だけでなく、生徒の理解も重要であるので、「共生」の態度を育む体育授業の在り方や実践等について研究が必要である。

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