令和の日本型学校体育構築支援事業

令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第2章 障害の有無にかかわらず共に学ぶ体育授業の充実

研究テーマ

実施団体|京都市教育委員会障害種の情報|注意欠如多動性障害(ADHD)、視覚障害・知的障害・ダウン症

障害の有無にかかわらず共に学ぶための
研究体制の整備と指導内容・指導方法等の工夫

実践研究のねらいaim

  1. 誰もが今ある力で運動の特性に触れて楽しむことができたり、「できた」と感じたりできる授業の構築
  2. 障害のある児童も他の児童と協働しながら学習を進められる授業の構築

授業づくりの考え方thinking

以下の視点から授業づくりを考える

  1. 焦点化児童が何に困っているかを見取る
  2. 困っている原因に対して、さまざまな支援を行う
  3. 障害の有無にかかわらず、全員が運動の特性に触れて楽しむために、さまざまな工夫を行う

指導・支援の工夫devise

■ 単元

5年生:水泳運動

時数 1 2~11 12



はじめ
  • プールの決まりや心得を知る
  • 水慣れの仕方を知る
安全確保につながる運動
  • 0秒~20秒程度を目安にした背浮き
安全確保につながる運動 ねらい①
  • 25m~100mの間で目標距離を決めて挑戦する
  • 2分間でどれだけ進めるかに挑戦する。(2分間泳)
  • 二人組で交互に挑戦し、計測や泳ぎについて教え合う
泳ぎ方
・クロール・平泳ぎ・補助クロール/平泳ぎ
ねらい①
ねらい②
ねらい①
今できる泳ぎ方でより長い距離を泳ぐことに挑戦して楽しむ
ねらい②
少しがんばればできそうな泳ぎ方に挑戦して楽しむ
  • ステップカードをもとに練習する
  • 練習の方法や場を選び、ペアで教え合い挑戦する。
泳ぎ方
・クロール ・平泳ぎ
まとめ
  • できるようになった泳ぎ方で25mを丁寧に泳ぐ
  • お互いの努力を認め合う
  • 活動を振り返り、自分の記録を整理したり
    簡単な感想を書いたりする

■ 活動概要及び工夫点

「注意欠如多動性障害(ADHD)」の児童の支援
  • 水慣れのときに教師が実際に演示をして活動のイメージが持てるようにした。
  • 練習の場には視覚的に見てわかる技カードを用意した。
  • 練習の場を転々としている場合には、一緒にねらいを確認し、どこで何をするべきかを伝えるようにした。
「視覚障害・知的障害・ダウン症」の児童への支援
  • 安全の確保や安心感を与えられるよう、指導者や友達が口頭で案内するようにした。
  • 特別支援学級でも何度も練習して、自信が持てるようにした。
  • 活動内容等を事前に説明し、活動中は個別にわかりやすい言葉をかけるようにした。

■ 単元

5年生:陸上運動(走り幅跳び)

時数 1 2 3 4 5 6



はじめ
  • 学習のねらいを知る
  • 学習の進め方を知る
  • 立幅跳びの記録をもとに、記録の
    目安を知り、目標記録を決める
  • 体慣らしの箱跳びの仕方を知る
ねらい①
  • 7~9歩程度のリズミ
    カルな助走から踏み切
    ることができる助走距
    離を見付けて跳ぶ
  • 二つのグループで互い
    に係を交代し合い、記録
    に挑戦する
  • メジャーを使って跳ん
    だ距離を正しく測定する
ねらい②
  • 競争を通してグループ
    内で助走や踏切、空中
    動作などより遠くへ跳
    ぶための工夫をして記
    録に挑戦する

  • 一人1回跳んでめやす
    の記録をもとに得点化
    していき、チームの勝
    敗を決める
ねらい②
  • チームごとに場を移動してそれ
    ぞれに合った課題を解決して記
    録を伸ばせるように挑戦する
ねらい①
  • 自分に合った助走距離を
    見付けながら、
    記録に挑戦する
まとめ
  • 単元を振り返る
  • 自分の創意・工夫・努力が記録
    の向上につながったこと
  • 共に学習していて気付いた仲間
    のよさや参考にした工夫
  • 次の学習で頑張ろうと思うこと

■ 活動概要及び工夫点

「注意欠如多動性障害(ADHD)」の児童の支援
  • 言葉を簡潔にすることや、困った時は資料(チームのカード)を見たり、聞いたりすることを確認した。
  • 練習の場に視覚的に見てわかるように道具を用意し、2時間目に試技をしながら説明することでイメージが持てるようにした。
  • 擬音語を活用して伝えて力加減がわかるようにした。
「視覚障害・知的障害・ダウン症」の児童への支援
  • 単元の導入で口頭説明や写真・映像等を視聴し、活動に見通しが持てるようにした。
  • 片足踏切両足着地の練習については、ケンステップ、トランポリン、踏み台への片足昇り両足降りなどに取り組み、どの練習が適切かを試しながら行った。
  • 視覚優位のため、活動ピットがわかるようにコーンを置いてわかるようにした。
  • 踏み切り時に踏切板を越えないように、踏切板には踏切位置の印を幅広くつけた。

成果と課題results & tasks

■ 成果

  • 用具を充実させたり、泳ぐ時間を確保したりしたことで、焦点化児童は多くの時間を仲間と共に取り組むことができ、その結果、水中での動きが滑らかになったり、さまざまな動きを通してバブリングができたりするようになった。
  • 学習の流れを確立し、グループやペア活動を続けたことにより、教え合う姿が普通になった。
  • グループづくりで最初は焦点化児童に関わりやすい人を付けていたが、その人の相手の思いを聞いて合わせる関わり方を広げたことで、他の児童も同じように関わることができるようになり、通常生活でも関わる人が増えた。
  • ルール作りについて、「みんな(困っている人等)にとってどうか?」という視点で考えることができてきた。。

■ 課題

  • 特別支援学級の担任がいないとき、視力の関係もありどこまでができて、どこからができないのかという「安全面の判断」が難しい。
  • さまざまな障害のある児童が在籍する場合、体育の授業の充実のためには更なる体育関連の用具充実や授業改善を続ける必要がある。

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