令和の日本型学校体育構築支援事業

令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第2章 障害の有無にかかわらず共に学ぶ体育授業の充実

研究テーマ

実施団体|京都市教育委員会障害種の情報|発達障害、知的障害、脳性麻痺

「今ある力」で運動を楽しみ、高まった力を
発揮して楽しさを深める体育授業の構築

実践研究のねらいaim

 全ての児童が「今ある力」を発揮し、自分のめあてをもって、他の児童と協働しながら学習を進めることで運動の特性を味わえる体育科の授業づくりについて、「指導・支援」「環境づくり」「合意形成」の視点から探る。

授業づくりの考え方thinking

以下の視点から授業づくりを考える

  1. 焦点化児童が何に困っているかを見取る
  2. 困っている原因に対して、さまざまな支援を行う(ルールづくり、用具の工夫)
  3. 障害の有無に関わらず、全員が運動の特性に触れて楽しむために、さまざまな工夫を行う

指導・支援の工夫devise

■ 単元

4年生:ゲーム(ネット型ゲーム:プレルボール)

時数 1 2 3 4 5 6



・準備 ・準備 ・体慣らし(個人・チーム) ・パス ・ミニゲーム
ねらい①
ルールやボール操作に慣れながら、
様々なボールや人数、コートでゲームを楽しむ
ねらい②
だれでも楽しめるプレルボールにするためにルールや作戦を工夫してゲームを楽しむ
≪リーグ戦2試合≫
ゲーム①(4分×2)⇒ チームの時間(5分)⇒
ゲーム②(4分×2)
・片付け  ・振り返り

■ 活動概要及び工夫点

ルールづくりの工夫
  • 導入では、シンプルに打ち合うやさしい遊びから始めた。チームで勝負がしたいという声が出てきた際に「誰でも楽しめるプレルボール」を作ろうという教師の問いかけから子供たちがルールを考えた。教師は合意形成を図る指導・支援をした。
用具の工夫
  • ソフトバレーボールとビニールボールの2種類を使用し、空気圧の調整等で大きさや跳ね具合を変えるようにした。
  • バーの高さは、一般的なコーンとミニコーンの2つを使って実際にプレーし、子供たちと共に高さを決定していった。
  • 焦点化児童には、ボールをはじく面が広くとれるように、児童が大好きなラベンダーカラーで飾りつけをした段ボールに軍手を貼り付けて、手にはめるハンドラケットを作成した。
「発達障害」の児童への支援
  • 場のイラストを提示したり、活動の仕方のモデルを例示したりすることで、活動の見通しが持てるようにした。
  • めあてを視覚的に示し、選択できるようにした。
「知的障害」の児童への支援
  • 「誰でも楽しめる」を合言葉にルールを常に改善・改良していけるようにすることで、安心してゲームを楽しめるようにした。
  • 活動の様子や努力をチームや全体に知らせることで、メンバーから励ましやアドバイスを促したり、相手チームからも声援を送ったりすることができるようにした。
  • ボールをなかなか触れないときにはメンバーがサポート役に回ることで、ボール操作の補助を行うようにした。

■ 単元

6年生:ボール運動(ゴール型:フラッグフットボール)

時数 1 2 3 4 5 6



・準備  ・ウォーミングアップ
ねらい①
ルールに慣れ、チームの様子を知りながら、
相手チームに挑戦して楽しむ

・すり抜けゲーム ・しっぽ取りゲーム
・パスゲーム ・メインゲーム(リーグ戦)
・作戦会議
ねらい②
トライにつながるような素早いタイミングの良い動きや作戦を工夫しながら、
相手チームに挑戦して楽しむ

・メインゲーム(対抗戦) ・作戦会議
・片付け  ・振り返り

■ 活動概要及び工夫点

ルール・場づくりの工夫
  • 3対2でゲームを行い、攻撃側が有利に攻められるアウトナンバーゲームにした。また、焦点化児童が身体接触を避けながらゲームができるようにするためにアディショナルゾーンをつくり、楽しさが味わえるようにルール・場を工夫した。
「脳性麻痺」の児童の支援
  • 単元のはじめに子供たちと実践し相談しながらルールを決めることで、安心して楽しめるゲームになるようにした。
  • アディショナルゾーンの約束事を全員で共有し、焦点化児童の安全を確保した上で安心して楽しめるゲームになるようにした。

成果と課題results & tasks

■ 成果

  • 「誰でも楽しめるように」という視点のもと、合意形成を図りながらルールを決めることで、みんなで焦点化児童やほかの苦手な児童などにも配慮しながら考える様子が見られた。
  • プレルボールで、専用のハンドラケットを作成したことで、焦点化児童はボールを打ちたいという意欲を引き出すことにつながった。焦点化児童の好きなことや、何にやる気のスイッチが入るのかを探っていくことの重要性を改めて実感した。
  • フラッグフットボールで、焦点化児童のために作ったアディショナルゲームというルールは、焦点化児童だけでなく、走ることやボール操作に苦手意識がある児童にとっても得点する機会が広がり、有効な手立てとなった。

■ 課題

  • ルールの工夫に重点を置いたことで、勝つための作戦選択や工夫の手立てが薄れてしまった。「共生」と「勝ちたいという思い」のどちらも大切にした指導が必要。
  • 教師の思いと、焦点化児童の思いのずれにより、個別の支援として考えたルールが焦点化児童にとって望ましくないものとなったことがあった。本人の思いを聞き取り、しっかりとしたアセスメントが必要。
  • コート内での運動強度やヘッドギアの着用の有無など、より本児の特徴を知るために事前に保護者や医療機関などとの十分な相談・連携が必要。

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