令和の日本型学校体育構築支援事業

令和の日本型学校体育構築支援事業 事例集第1章 GIGAスクール環境下における体育授業の充実

研究テーマ

授業情報|和歌山大学教育学部附属小学校(和歌山県)第5・6学年

GIGAスクール環境下における
体育授業(体つくり運動)の充実

実践研究のねらいaim

  • 心拍数を通じた他者理解によるコミュニケーションの増加
  • 心拍数やペース理解を通じた自己理解の向上
  • 持久走への児童の愛好度向上

具体的な活用方法use

個々の能力に適したよりきめ細やかな指導方法の開発・実践

指導・支援の工夫devise

■ 単元

5・6年生:体つくり運動

時間 1 2 3 4 5 6
内容 試しのランニング:
5分間走り続けられる速さで
心拍数を知って、
きつさ度合いとつなげる
目標心拍数を知ろう 目標心拍数の
ペースを知ろう
一定のマイペースで
5分間走りきろう
はじめ
(10分)
機材の配布、説明 ウォームアップ
鬼ごっこやランニングなどで心拍数を150程度まで上げる)
 

目標心拍数を設定 マイペースと目標心拍数を設定
なか
(30分)
試しのランニング 実験ごとの目標心拍数を決めて、2~4周を3~4回走る 5分間走り続けられるペースで走る
(ペアがペースと心拍数)を記録

(ペアが心拍数を記録)
ペアがペースも記録
おわり
(5分)
学習カードの記入、振り返り

■ 活動概要及び工夫点

・ペア学習を中心とした授業

 単元を通じて、ランナーとマネージャーのペア学習によって学習が進められた。授業中は全員が1台の心拍数計を装着しており、マネージャーがランナーの心拍数をモニタリングし、ペアの児童の状況を理解できるようにした。

・心拍数を意識した学習の展開

 本単元を効果的に進めるために「心拍数」を拠りどころとした。
 目標心拍数として、最大心拍数の60~80%を提示し、120~180拍/分の間で自身に最適な心拍数を選べるように促した。これを主観的運動強度と合わせることで、自身のきつさと心拍数をつなげられるようにした。
 単元2~3時間目は、一人一人にとって最適な心拍数を見つけることを目標とし、主観的運動強度を合わせながら自身の主観的なきつさと心拍数をつなげた。4時間目は、自身の目標心拍数におけるペースの理解を図り、5、6時間目には、5分間走の中で自身の設定した目標心拍数に合ったペースで走り続けることを目標とした。

・ペースや心拍数のグラフ化による視覚的学習

 ペースや心拍数をグラフとして記入し、自身の走り方の特徴を視覚化する活動を行った。単元を通じてペア活動を行い、ペアが走っているときにはその心拍数やきつさを記録し、お互いの身体状況を知り、適切なアドバイスをできるように促した。
 また、児童がタブレットから得られた1分ごとの心拍数やペースのデータを使ってグラフを作成し、目標心拍数との差を視覚化した。また、その差にレベル1~3という評価基準を設けて、子供自身がその日の走りを評価できるようにした。これは、教師による技能評価にも活用されていた。

成果と課題results & tasks

■ 成果

  • 持久走単元において、タブレット端末を使用することにより仲間との協力によって持久走を楽しむ資質を育むことにつながった。
  • タブレット端末の情報を元に、自身の目標を設定し持久走に取り組み、自身の体力を振り返ることができるようになった。またその結果、自身に適した一定のペースを学習することができた。
  • 学習カード記述の共起ネットワーク分析より、単元序盤では「心拍数が上がることがわかった」「難しく感じた」等の「自身の主観的な感想」が目立っているが、中盤では「応援」「もう少し」等の「仲間との関わりや、心拍数、ペースを元にした振り返り」、終盤では「一定」「速い」等の「ペースの考慮やコントロール」等につながっていった。
  • 教員の感想として、持久走を競争ではなく個人のペースをつかむことを中心として取り組むことは新しい方法であり、子供のモチベーションを高めることにつながった、目に見えない情報により自身を知り、取り組み方の改善や思考を伸ばす機会になったという意見もあった。

■ 課題

  • 「持久走は好き、まあ好き」について顕著な増加は見られなかった。本実践における多くの子供たちの目標は、ペースやタイムの向上を目指す方向に向いており、「楽しい」や「好き」という感情に直結しづらかったのではないかと思われる。「記録の挑戦」ではなく「快適なペースを探す」という単元を目標にする場合の子供の目標の持たせ方等が課題である。
  • 子供たちの授業に対する没頭度や楽しさに好影響を与えるようなタブレット端末の効果的な活用、またその具体的な使用方法などを一層考えていく必要がある。

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