初中教育ニュ-ス(初等中等教育局メ-ルマガジン)第384号(令和2年4月30日臨時号)

[目次]

【中央教育審議会初等中等教育分科会・新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会からのメッセージ】
□全国の学校教育関係者のみなさんへ

【お知らせ】
□新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する最新の対応について

□【中央教育審議会初等中等教育分科会・新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会からのメッセージ】全国の学校教育関係者のみなさんへ

(新型コロナウイルス感染症の感染が全国的にまん延する中、中央教育審議会初等中等教育分科会及び新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会として、子供たちの学習機会の保障や心のケアなどに尽力されている全国の学校教育関係者の皆様に対し、心よりの敬意と感謝をお伝えするとともに、(1)学校現場において創意工夫をしていただき、多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応をしていただきたいこと、(2)文部科学省による教育現場へ徹底した支援が必要であること、(3)ICT環境の整備を確実に進めるとともに、教師の対面指導により、多様な子供たちを誰一人取り残さない個別最適化された学びの実現のため、子供たちの学び合う場を確保することが重要であり、今後議論をしていくことについて、メッセージが取りまとめられましたので、ここに紹介いたします。)

令和2年4月30日
中央教育審議会 初等中等教育分科会
新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会


 新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになった方々に心から哀悼の意を表します。そして、り患され、現在も治療生活を余儀なくされている皆様、感染拡大の影響を受け、生活や事業において多大な困難に直面されている皆様に心からお見舞い申し上げます。
 国民の命を守るため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止が我が国の最重要課題となり、4月16日には緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大され、一層の行動自粛や自制が求められています。この前例のない状況の中で、子供たちの学習機会の保障や心のケアなどに取り組んでおられる全国の学校現場の教職員の皆様、保護者の皆様、学校を支える地域の皆様、そして教育委員会や学校法人など学校の設置者の皆様に対し、心よりの敬意と感謝をお伝えします。
 子供たちが予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力を育むために学校教育は不可欠であり、子供たちの学びを止めるわけにはいきません。このことを踏まえ、臨時休業等により学校に登校できない子供たちへの支援と学校再開後の在り方について、私たち中央教育審議会初等中等教育分科会、及び新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会委員は、文部科学省をはじめとする関係行政機関を含む全国の学校教育関係者に対し、下記の3点を申し述べます。

1.多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応
2.文部科学省による教育現場への徹底した支援
3.子供たちの学び合う場の確保

1.多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応
 新型コロナウイルス感染症のまん延により、学校現場の教職員の皆様には通常と異なる対応が求められ、負担が増しているものと思います。教職員の皆様におかれては、御自身の安全と健康に十分御留意くださるようお願いします。臨時休業等になったことにより、子供たち、保護者、地域の方々にとって、社会のセーフティーネットとしての役割をも果たしている学校という存在の持つ役割や意義の大きさ、教職員の日頃の取組の重要性が改めて浮き彫りになったと認識しています。
 特に、子供たちの学びの保障や、心のケアを含む心身の健康保持については、格差の拡大を防ぐという観点を含め、学校への期待は大きいものがあります。このため学校においては、感染防止に配慮しつつ、電子メール、ホームページ等のICTや電話、郵便等のあらゆる手段を活用して、できる限り子供たちや保護者とつながることを意識していただくようお願いします。また、特別な配慮を必要とする子供を含めた全ての子供たちの状況について把握等をする際には、平常時のルールや考え、対応に固執することなく、学校現場における創意工夫をこらして、学校や家庭のICT機器の活用や家庭と地域の連携を含む様々な対応を行っていただくようお願いします。
 更に、感染者等に対する偏見や差別の防止、学校再開後を見据えた授業の質や量の確保のための指導計画の見直しや、学校再開後も含む継続的な心のケアもお願いします。
 言うまでもなく、子供たちの学びの保障や心のケアは、現場の教職員の誠実で懸命な努力に支えられています。学校の設置者におかれましては、厳しい状況の中、日々、学校現場で奮闘している教職員の安全・健康を守っていただくとともに、学校現場における取組を後押ししていただくようお願いします。

2.文部科学省による教育現場への徹底した支援
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う全国的な臨時休業の状況は、前例がない事態であり、子供たちや保護者をはじめ、教職員も様々な不安を抱いていると思います。また、子供たちの学びの保障等に関し、最前線で対応している教職員への負担も大きいと考えます。文部科学省におかれては、「子供の学び応援サイト」の開設など学習支援の取組を行っていますが、このような状況が長期化する可能性も想定しつつ、子供たちが学びを継続でき、それぞれ着実に進級・卒業と次のステップに進むことができるよう、入試の在り方も含め、学校現場の声を聴き、そのニーズをしっかりと受け止め、子供たちや保護者、教職員に寄り添った徹底的な支援を行うことが必要です。そのため、学校の設置者や関係団体と密に連携を図り、各地域の状況を把握し、適時適切な情報提供や相談体制の構築にとどまらず、学校現場における創意工夫が進むよう、制度の柔軟な運用・改訂や必要十分な財政措置を含め思い切った対応を行うことを文部科学省に求めます。
 特に、前例がない事態からの学校再開に向けては、子供たちや保護者の不安に向き合い、安全・安心を確保する観点から、学校健診に必要な資材(マスク・手袋等)の用意を含め、学校における感染防止を徹底するための環境の整備を進めるとともに、正に「社会総がかり」で子供たちの学びの回復支援を図る必要があります。そのために、地域の実情に応じつつ、学校現場や各地域の創意工夫による取組を可能とするため人的・物的両面から大胆な財政支援策を講じることで、国として子供たちの学びを確実に保障する毅然とした姿勢を示していただくことを期待します。

3.子供たちの学び合う場の確保
 今般のように臨時休業等により子供たちが学校に登校できないという特殊な状況下では、子供たちの学びを少しでも保障するため、自宅学習を含めICTを活用することは有効な手段です。このため、「GIGAスクール構想」を加速し、子供たちがICTを活用して学べる環境を整備するとともに、いかなる場合にあっても子供たちの学習や心のサポートができるよう、学校のICT環境の抜本的な充実と教職員のICT活用能力の向上、更に踏み込んで家庭のICT環境の充実を支援することが不可欠です。そのために、文部科学省は関係省庁とも緊密に連携して、大胆な支援策を早急に講じることが必要です。
 一方、ICT環境が整備された場合にも、教師の対面による指導は不可欠であり、学校という場や教職員が必要でなくなるということは、決してありません。教師は子供たちを支える伴走者です。学校は学びの場であるとともに、人と安全・安心につながることができる居場所です。また、学校教育とは単に授業により知識を学ぶだけではなく、学校という場や地域社会で様々な集団活動を行い、多様な他者と関わるとともに文化や社会と対話することを通じて人を育てる営みであり、人との関わり合いや対話などじかに触れ合うことでしか得られない様々な気付きが人を育てる面があることに留意することが必要です。
 さらに、AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ、教師による対面指導や子供同士による学び合い、地域社会での多様な学習体験の重要性がより一層高まっていくものであり、そのため、教師には、先端技術を活用しながら、子供たちに対話的、協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められると考えます。
 こうしたことを踏まえ、新型コロナウイルス感染症の収束後の学校教育においても、不登校や特別な支援を必要とする子供を含め、多様な子供たちを誰一人取り残さない個別最適化された学びの実現のため、各自治体においてICTの整備を確実に進めていただくとともに、チーム学校の観点から教職員のみならず様々な専門職の学校のサポーターが学校を支えるなどの指導体制の充実を図り、子供たちの学び合う場を確保することが重要であることを、全国の教育関係者と共有し、私たちも議論していきたいと考えます。

□【お知らせ】新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について



 文部科学省では、下記URLにおいて新型コロナウイルス感染症関連のお知らせを随時更新しておりますのでご確認ください。
本日発出の「新型コロナウイルス感染症対策としての学校の臨時休業に係る学校運営上の工夫について」(通知)も本日中に掲載予定です。
https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/index.html#news
 

  

 

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