資料2 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案 読書バリアフリー法第7条に規定される「文部科学大臣・厚生労働大臣が定める基本計画」は、今後、第18条に規定される「協議の場」として設置される関係者協議会での議論を踏まえ、策定することを予定しています。 本基本計画骨子案の全体構成含め、下記に記載されている内容は、関係者協議会の構成員に、基本計画の内容を検討し、議論を深めていただくためのたたき台として作成したものです。特に、「V 施策の方向性」については、現時点で、関係省庁等それぞれにおいて取り組むことを検討している施策のイメージを列挙したものであり、今後、関係者協議会でのご意見やご議論を踏まえ、基本計画を策定することとしております。 目次 I はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  2.基本計画について 3.視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 U 基本的な方針 1.アクセシブルな電子書籍等の普及及び継続的な提供 2.アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上 V 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) W おわりに T はじめに 1.法律成立までの背景や経緯  ・2013年6月、世界知的所有権機関(WIPO)による「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の採択及びその背景 ・2018年5月、条約批准に向けた国内法整備としての著作権法改正の成立 ・読書バリアフリー法制定に向けた動きの加速化 ・2019年6月、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(以下、「読書バリアフリー法」という)の成立及び施行 2.基本計画について (1)位置づけ 本基本計画は、読書バリアフリー法第7条の規定に基づき、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために策定されるものである。 (2)対象期間 本基本計画は、令和2(2020)年度からの5年間を対象とする。 (3)構成 本基本計画は、この「T はじめに」、「U 基本的な方針」、「V 施策の方向性」及び「W おわりに」で構成される。 「U 基本的な方針」では、本基本計画全体の基本理念を示すとともに、各分野に共通する横断的視点や、施策の円滑な推進に向けた考え方を示している。 「V 施策の方向性」では、読書バリアフリー法第9条から第17条に規定される9の分野の基本的施策それぞれについて、本基本計画の対象時期に政府が講ずる施策の方向性を示している。 2 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 ・・・ U 基本的な方針  1.アクセシブルな電子書籍等の普及及び継続的な提供 ・・・ 2.アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上 ・・・ V 施策の方向性 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) (基本的考え方)  公立図書館、大学及び高等専門学校の附属図書館、学校図書館(以下「公立図書館等」という。)並びに国立国会図書館について、点字図書館とも連携して、アクセシブルな書籍等の充実、アクセシブルな書籍等の円滑な利用のための支援の充実、その他の視覚障害者等によるこれらの図書館の利用に係る体制整備を図る。 また、点字図書館については、アクセシブルな書籍等の充実、公立図書館等に対する利用に関する情報提供、視覚障害者による十分かつ円滑な利用の推進を図る。   (1)アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実 ・ 公立図書館等において、点字図書館や他の図書館等と連携しつつ、アクセシブルな書籍・電子書籍等を充実させる取組を促進する。 ・ 国立国会図書館において、学術文献の録音資料やテキストデータの製作を促進するとともに、公立図書館等で製作される特定電子書籍等を収集し、アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実を図る。 ・ 点字図書館において、点字図書や音声図書を製作するために必要な機器が充実するよう支援を行い、視覚障害、肢体不自由、識字障害等の障害の状況に応じたアクセシブルな書籍・電子書籍等の充実を図る。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・公立図書館や学校図書館において、各館の特性等に応じ、傾斜路や対面朗読室等の施設の整備、拡大読書機器等の読書支援機器の整備、点字による表示及び職員等の障害者サービスの充実を図る取組を促進する。 ・大学及び高等専門学校の附属図書館において、それぞれが保有するアクセシブル な書籍・電子書籍等の所在情報を共有し、視覚障害者等による円滑な利用を促進する。 ・点字図書館において、公立図書館等における視覚障害者等の視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」の利用等が促進されるよう、公立図書館等と連携して、円滑な利用支援の取組を推進する。 (3)その他  ・国立国会図書館において、点字図書館との技術的実験で得られた知見を活用する等により、図書館におけるアクセシブルな電子書籍作成の取組を支援する。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) (基本的考え方) インターネットにより視覚障害者等に提供する全国的なネットワークの運営に対する支援を行い、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の十分かつ円滑な利用を推進する。  また、点字図書館について、国立国会図書館、上述のネットワークを運営する者、公立図書館等、点字図書館及び特定電子書籍等の製作を行う者の連携強化を図り、インターネットを利用したサービスの提供体制の強化を図る。  (1)「サピエ」の運営への支援  ・視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」の運営やそのシステムサーバーの管理等の支援を行い、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用の取組を推進する。 (2)関係者の連携強化  ・国立国会図書館において、視覚障害者等が全国各地に存するアクセシブルな書籍・電子書籍等を統合的に検索できるようにするとともに、特定電子書籍等を円滑に入手・利用できるようにするため、インターネットを利用したサービスの提供について引き続きサピエ図書館等と連携を強化する。 ・点字図書館において、国立国会図書館、視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」を運営する者、公立図書館等と連携を図り、視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」の提供体制の強化を推進する。 ・公立図書館等に対し、国立国会図書館やサピエ図書館が実施する視覚障害者等向け電子サービスについての周知や連携に必要な情報提供を行う。 ・大学等の図書館と障害学生支援を担当する部局との情報共有を促進し、相互の連携を強化する。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) (基本的考え方) 特定書籍・特定電子書籍等の製作支援のため、製作に係る基準の作成等のこれらの質の向上を図る取組について、支援を行う。 (1)製作基準の作成等の質の向上のための取組みへの支援 ・点字図書、音声図書等の製作手順及び仕様の調査、基準の作成等の支援を行い、点字図書館における視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」を活用した視覚障害者等が利用しやすい点字図書、音声図書等の製作に係る質の向上のための取組を推進する。 ・出版者に対し、特定書籍及び特定電子書籍等の製作に係る基準の作成等のこれらの質の向上を図るための取組に資する情報提供や助言等を行う。 ・特定電子書籍等の質の向上に資する製作支援技術を含めた障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発を行う者への支援を図る。 (2)出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進のための環境整備への支援  ・出版者から特定書籍又は特定電子書籍等の製作を行う者に対する電磁的記録の提供の促進に資する情報提供や助言等を行う。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) (基本的考え方) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等が促進されるよう、技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進、著作権者と出版者との契約に関する情報提供その他の必要な施策の推進を図る。 また、出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に関する関係者間における検討に対する支援その他の必要な施策の推進を図る。  (1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進  ・視覚障害者等が円滑に電子書籍等を利用できるようにするための新たな技術動向を踏まえたアクセシビリティの確保に向けた取組を推進する。 (2)著作権者と出版者との契約に関する情報提供  ・視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等の販売等に関する著作権者と出版者との契約に資する情報提供や助言等を行う。 (3)出版者から書籍購入者に対する電磁的記録等の提供促進のための環境整備に関する検討への支援 ・出版者が書籍に係る電磁的記録の提供を行うことその他出版者からの視覚障害者等に対する書籍に係る電磁的記録の提供を促進するため、その環境の整備に資する情報提供や助言等を実施する。 (4)その他 ・音声読み上げ機能(TTS)等に対応したアクセシブルな電子書籍を提供する民間電子書籍サービスについて、関係団体の協力を得つつ図書館における望ましい基準の整理等を行って、図書館への導入を支援する。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) (基本的考え方) 視覚障害者等が、盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の枠組みに基づき、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等であってインターネットにより送信することができるものを外国から十分かつ円滑に入手することができるよう、その入手に関する相談体制の整備その他のその入手のための環境の整備を図る。 ・アクセシブルな電子書籍等の受入れ・提供のための国内外の連絡・相談窓口として中心的な役割を果たす機関(国立国会図書館及び特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会等)において、外国で製作されたアクセシブルな電子書籍等の円滑な入手を促進する。学術文献については、大学関係機関との連携を強化し、環境整備を進めていく。 ・また、円滑な入手を促進するため、当該機関の連絡先や入手に当たっての手続・留意事項等について引き続き丁寧な周知を行うとともに、その運用状況も踏まえつつ、必要に応じて更なる環境整備を行う。 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) (基本的考え方) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等及びこれに関する情報、これを利用するのに必要な情報通信技術を視覚障害者等の入手及び習得支援のため、必要な支援等を行う。 (1)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援  ・点字図書館において、視覚障害者用図書情報ネットワーク「サピエ」の利用等の支援 を通じて、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等に情報を周知する等、入手支援の取組を推進する。 ・国は地方公共団体等と連携し、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付について、適正な運用を図る。 (2)講習会・巡回指導の実施の推進  ・国は地方公共団体等と連携し、視覚障害者等に対するICT機器の紹介、貸出、利用に係る相談等や、ICT機器の利活用に関する支援を行う者の養成等を行い、情報通信技術取得に向けた取組を推進する。 ・アクセシブルな電子書籍等の利用方法等について、関係団体とも連携しつつ、公立図書館職員等への研修を行うことにより、視覚障害者等に対する講習会の実施を促進する。 (3)特別支援教育  ・特別支援学校学習指導要領において、「情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」と規定しており、各教育委員会の指導主事等を集めた全国会議等の場において新学習指導要領の趣旨を説明するなど、周知を図る。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等(第16条関係) (基本的考え方) 視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等について、視覚障害者等の利便性の一層の向上を図るため、これらに係る先端的な技術等に関する研究開発の推進及びその成果の普及に必要な施策の推進を図る。 ・視覚障害者等が利用しやすい電子書籍及びこれを利用するための端末機器も含め、広く障害者等の利便の増進に資するICT機器・サービスに関する研究開発を行うものへの支援を図る。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) (基本的考え方) 特定書籍・特定電子書籍等の製作及び点字図書館における視覚障害者等が利用しやすい書籍等の利用のための支援に関する人材について、これらの養成・資質の向上及び確保に係る支援を行い、円滑な利用の取組を推進する。 また、公立図書館等及び国立国会図書館において、視覚障害者等が利用しやすい書籍等の円滑な利用のための支援の充実のため、司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ、資質の向上を図る。 (1)司書等の資質向上  ・司書等を対象とした研修及び養成において、視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ、資質の向上を図る。 (2)指導者や点訳奉仕員・音訳奉仕員等の人材養成 ・国は地方公共団体等と連携し、点訳奉仕員・音訳奉仕員等の養成・資質の向上及び確保を図るため、公共図書館と点字図書館の連携により、これらの養成を行うための支援を行い、円滑な利用の取組を推進する。 ・公立図書館等の職員・ボランティアが障害者サービスの内容を理解し、支援方法を習得するための研修や、読書支援機器の使用方法に習熟するための研修等を行う。また、ピアサポートができる職員・ボランティアの育成や環境の整備を行う。 W おわりに 今後の長期的課題について ・・・・