資料4 構成員から提出されたヒアリング資料 目次 【第1回】 1.宇野 和博 弱視者問題研究会教育担当役員 筑波大学附属視覚特別支援学校教諭 2.野村 勝之 日本点字図書館総務部長 3.竹下 亘  全国視覚障害者情報提供施設協会理事長 4.三宅 隆  日本視覚障害者団体連合情報部長 5.小池 信彦 調布市立図書館館長 6.小林 司 長野県教育委員会事務局 文化財・生涯学習課長 【第2回】 1.見形 信子 DPI日本会議 2.阿部 一彦 日本身体障害者団体連合会会長 3.藤堂 栄子 認定NPO法人エッジ会長 4.河村 宏  日本DAISYコンソーシアム運営委員長 5.高橋 正名 日本図書館協会常務理事 6.長尾 正志 堺市 健康福祉局障害福祉部 障害施策推進課長 【第3回】 1.樋口 清一 日本書籍出版協会事務局長 2.吉澤 新一 日本電子書籍出版社協会専務理事 3.鈴木 直人 電子出版制作・流通協議会事務局長 4.上田 渉  日本オーディオブック協議会常任理事 基本計画骨子案に対する意見 弱視者問題研究会教育担当役員、筑波大学附属視覚特別支援学校教諭 宇野和博 T はじめに 0. 法律成立までの背景や経緯 ・障害者権利条約の関連文書、18 年4 月の国会でのマラケシュ条約締結案の承認、法制定の動きを加速した委員会の付帯決議、10 月のマラケシュ条約批准を加えてはどうか。 0. 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る意義と課題 ・視覚障害者等が現在アクセスできる図書数や1年間に発行される平均的な書籍数、国立国会図書館の蔵書数、読書障害者数、点字図書館数、障害者サービスに取り組んでいる図書館数なども 現状分析として示せれば意義と課題がわかりやすくなる。数値等が把握できていないのであれば、必要な調査を行うことを計画に入れてもいいのでは。 U 基本的な方針 1.アクセシブルな電子書籍等の普及及び継続的な提供 ・この項目と次章の施策の方向性との違いは何か。例示なのか、付け加えていくのか。 ・これまで法制定運動を進めてきた障害当事者4団体では、「買う自由」と「借りる権利」の確立を求めてきた。 つまり、誰でも書店(ネットを含む)を利用でき、いつでも図書館に行けることが必要で、図書館は本の貸し出しだけでなく、 生涯学習の場にもなっている。「提供」の中には、法11条2項に基づく出版社から図書館へのデータ提供という側面と 第12条に基づく出版社から障害当事者へのデータ販売という側面がある。また、サピエや国立国会図書館のネットワークから図書館や個人への提供という側面もある。 「継続的」という言葉もあるが、これから協議会で検討される事項が一過性ではなく、持続可能な仕組みにすることが重要である。 2.アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上 ・これまで製作されてきた図書データは点字と録音が中心。まずは、新たに著作権法37条3項の対象者となった 読書障害者のニーズを踏まえ、その提供数などの実態を把握することが必要である。 そして、弱視者・上肢障害者・ディスレクシア等が求めるテキストファイル等の充実を計り、いかに「One Source, Multi Use」化を進められるかが大きな鍵となる。 V 施策の方向性 1.視覚障害者等に・・・ (1)アクセシブルな・・・ ・「公立図書館等においてアクセシブルな書籍・電子書籍等を充実」とあるが、障害者が必要とする 点字図書、拡大図書、録音図書、マルチメディアデイジー図書、LL ブック、布の絵本など多様な読書媒体をそれぞれの図書館が数多く所蔵するのは理想的だが、現実的には難しい。 一方、ニーズに合った媒体が存在するにも関わらず、障害者がそれと巡り合えないため、読書をあきらめ、文字・活字文化の恵沢を享受できないのは不幸。 少なくとも公立図書館等にこれらの読書媒体を見本のように紹介するコーナーを設置し、多様な読書媒体と出会える入口としてもらいたい。 ・国立国会図書館における特定電子書籍等の収集について、既に国会図書館で始まっているが、ボランティア団体を含め、 著作権法施行令で複製等が認められたすべての機関からのアクセシブルな図書データを収集する体制を整え、オールジャパンで障害者のアクセシブルな図書データを増やしていけるような体制整備が必要である。 ・点字図書館において、肢体不自由、識字障害等の障害の状況に応じたアクセシブルな書籍等の充実とあるが、 弱視者でさえ、点字図書館とは点字だけを取り扱っている図書館という誤解がある。 既に視覚障害者からもテキストファイルを求める声が上がっており、肢体不自由、識字障害の人のニーズも踏まえ、 幅広いファイル形式に対応していく必要がある。 また、周知方法とも関連するが、「点字図書館」や「視聴覚障害者情報提供施設」という名称も名は体を表すようにしなくてよいか。 肢体不自由者が多く利用している自立生活センターとのネットワーク化も一案である。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・図書館のバリアフリー化としてハード面で考えられるのは、身障者用・オストメイト対応トイレ、スロープ、 障害者用駐車場、障害者に配慮したエレベーター、車いす、最寄りの公共交通機関からと館内の点字ブロック、 対面朗読室、録音室、拡大読書器、館内やトイレの見やすい案内表示・触地図、誘導チャイム、緊急時用点滅ランプ・電光掲示板、磁気誘導ループなど。 また、ソフト面としては障害者用資料の貸出・製作、サピエ・国会図書館ネットワークの利用、 資料の郵送や宅配による貸出、対面朗読、障害者用読書支援機器の使用方法の説明、 病院・障害者施設・作業所・特別支援学校と連携したサービスなど。(*日本郵政の問題になるが、視覚障害者以外の障害者への郵送は 有料)全ては実現できないかも知れないが、「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に例示し ておけば、図書館新設や改修時に参考にしてもらえる。 ・大学等の附属図書館における書籍等の所在情報の共有よりは、既に動いている国立国会図書館のデータベースを介した共有を徹底する方が利便性は高い。 2.インターネットを利用した・・・ (1)「サピエ」の運営への支援 ・予算措置を最大限有効に活用し、視覚障害者等が利用可能な図書を1 冊でも増やすという視点から ボランティア団体の年会費の無償化と障害児が多く在籍する特別支援学校の年会費の無 償化を優先的に実現すべき。次の段階として特別支援学級のある学校、障害児が在籍する学校、公立図書館の年会費軽減が望まれる。 (2)関係者の連携強化 ・サピエや国会図書館は、主に点字図書データや録音図書データを多く所蔵している。しかしサピエは テキストファイル等を取り扱っていないため、各図書館はすべての蓄積されたデータを障害者 に紹介するには両方のデータベースにつながる必要がある。これら2つのネットワークを各図書館と確実につなぐことにより 、縁の下の力持ちとして、各公立図書館等の障害者サービスを展開する資源になる。それには、周知に必要な情報提供に留まらず、 ネットワーク化のための予算措置が必要である。 ・大学等の図書館と障害学生支援を担当する部局との情報共有・連携強化について、著作権法37条3項に基づく 施行令の「大学又は高等専門学校に設置された図書館及びこれに類する施設」 の「類する施設」に障害学生支援室が含まれることを明確にし、それを各大学に周知することから始めるべき。 2009年の著作権法改正時に障害学生支援室を意図して「類する施設」を付加したということだが、 その解釈をめぐって各大学が躊躇している実態がある。 障害者政策委員会の議事録には明記されているが、改めて文化庁著作権課の見解を確認したい。 3.特定書籍・・・ (2)出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進・・・ ・点字図書館、公立図書館等で効率的に点訳・音訳、拡大等の作業を進めるために出版社からの電子データの提供が期待される。 どういう書籍のデータ提供が可能なのか、データ形式をどうするか、これに伴う費用をどこが負担するのかなどを協議する必要がある。 4.アクセシブルな電子書籍等・・・ (3)出版者から書籍購入者に対する・・・ ・これまで一部の出版社は本の巻末にテキスト引き換え券を添付したり、ネット上でオーディオブックや 電子書籍のストリーミングを実現してきている。しかし、一人暮らしの視覚障害者にとって、 テキスト引き換え券を行使するにはいくつかのハードルがある。また、音声を聞くことができない盲ろう者は 点字やテキストファイルを求めている。テキストは障害学生や研究者など、専門書を必要とする障害者からも強い要望の声が上がっている。 更により多くの読書障害者のニーズに応えていくためにプ レインテキストからの「One Source, Multi Use」が期待される。一方、出版社の電子書籍フォーマットはEPUB に一元化されつつある。 そこで出版社の負担も少なく、且つ視覚障害者等も容易にインターネット上からアクセシブルな 電子データを購入できるような橋渡し的なシステム構築が望まれる。 実現には、システム構築のための補助やデータ提供に伴う出版社の負担軽減、優良企業の顕彰などのインセンティブを作る施策も求められる。 6. 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 ・重度の視覚障害者(主に障害者手帳1,2級)は日常生活用具としてデイジープレイヤーを1 割負担で入手できるが、 3級以上の視覚障害者・ディスレクシア・上肢障害者・眼球使用困難者にはその補助がない。 一方、デイジー図書を利用するアプリが発売されたので、デイジープレイヤーがなくてもデイジー図書が利用できるようになった。 スマホ等での読書方法も視野に入れ、日常生活用具のあり方を検討すべきである。 (3)特別支援教育 ・新学習指導要領の趣旨の説明に留まらず、特にディスレクシアや上肢障害児を念頭にマラケシュ条約の受益者や 2018年著作権法改正の趣旨、サピエ・国立国会図書館のネットワークなどこれまで見過ごされてきた障害のある 児童生徒の読書環境の改善に資するような情報提供に努めていただきたい。 (2)講習会・巡回指導の実施の推進 ・視覚障害者等が円滑に全国的なネットワークを利用するには、サピエや国会図書館のIDとパスワードの登録、 データのダウンロード、デイジープレイヤーなどの端末機器の操作方法の習得など、いくつかのハードルがある。 しかし、公立図書館等の司書でもまだまだこれらの過程の支援が十分にできていないのが現状。 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」に、視覚障害者等に対する講習会や巡回指導の実施について明記するなどの促進策や予算措置が必要である。 7. アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進 ・AIスピーカに話しかけるだけで録音図書が再生されるようになれば、視覚障害者だけでなく、 上肢障害者や寝たきりの人にとっても便利な読書ツールになる。既に全視情協で進められている研究への支援をはじめ、 スマホのテレビ電話での遠隔読書支援など、先端技術が導入されるようなインセンティブの創設が望まれる。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等 (1)司書等の資質向上 ・学校では、特別支援教育コーディネーターが指名されている。これに倣い、各図書館で読書支援コーディネーター(仮称)を指名し、 そのコーディネーターが核となり、障害者サービスの研修を重ね、図書館での障害者サービスの中心的な役割を担ってもらいたい。 将来的には外国人へのサービスなどユニバーサルなリファレンスも期待したい。 ・本来は、図書館に関わるすべての関係者に障害者のニーズや支援方法を知っておいてもらいたい。 図書館司書や司書教諭、学校司書の養成課程に障害者への合理的配慮に関する内容を追加するなど、将来的な支質向上策を講じてほしい。 W おわりに 今後の長期的課題について ・現在、アクセシブルな図書データを蓄積する全国的なデータベースは、サピエと国立国会図書館に二元化されている。 図書館や障害当事者にとってより簡便な検索やダウンロードを実現したり、合理的・効率的に予算を執行したり、 マラケシュ条約に基づきデータを輸出する上で、図書データを国立国会図書館に一元化することも検討していく必要がある。 ・サピエの運営費について、厚生労働省が初めて予算を措置したことは大変有難い。 ただ、本当に必要な3000 万円を確保するためには、引き続き個人の寄付や図書館の年会費に頼らざるを得ない。 一方、全国約3200 館の公立図書館の750 館が加入すれば、3000 万円が確保できることにもなる。 今後のサピエの年会費や運営費のあり方について議論が必要である。 ・真に障害者の読書のバリアフリーを実現するには、基本計画策定後に具体的な施策を実行していかなければならない。 そのためには法第11 条第2 項や第12 条をはじめ、多くの論点がある。基本計画策定後、ワーキンググループの設置など、 具体的な制度設計が進められるような協議の場の設定をおねがいしたい。 ・施策の方向性で、数値目標も含めた施策の拡充、年度を区切った制度の見直し、財政措置等、より具体的な記述に踏み込めないか。 毎年度に評価、検証作業を行うのか、協議会の役割はどうするのかなど、明らかにしておく必要がある。 2019 年11 月1 日 社会福祉法人日本点字図書館 読書バリアフリー法の基本的考えに対する意見書 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) @アクセシブルな書籍等の充実、公立図書館との連携を図るためには、製作や研究開発等にあたる人員の確保が必須であり、 配置基準の見直し並びに予算の増額を要望します。 A視覚障害者以外の対象となる方々のサピエの利用促進について、各当事者団体及び公立図書館、教育機関等の積極的な広報を要望します。 B点字図書館においては、各施設が登録基準の見直しを早急に行い、幅広い読書困難な方が登録できるようにすることを要望します。 C骨子から、点字出版施設の役割が抜け落ちている。点字出版施設は、点字図書館よりも長い歴史を持ち、 伝統的にアクセシブルな書籍等製作の担い手である。点字図書館に所属するボランティアを活用することで多くの資料が製作されるのは確かだが、 選挙公報や教科書など、専門性が必要であり、責任を持って製作されるべき資料の製作には点字出版施設からの視点も必要と思います。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) @サピエは、現在においても国会図書館との連携によりコンテンツの提供を行っている。 新たなコンテンツやネットワークの増加を考えると一極集中したデータベースサーバではなく分離型で 横断検索をできるようにサピエの改修を行うことが望ましく、運営者及び国会図書館とは、より緊密な連携体制を要望します。 Aサピエのシステム改修やサーバ管理には、機器の耐用年数及び保守システムの契約年数の限度があるため、一定期間での機器の入換え予算についての支援を要望します。 Bサービス提供者間の連携にあたっては、それぞれが使用するデータベースにおいて収集する情報の方針を明確にすることを要望します。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) @サピエ加盟施設、団体については、全視情協が製作している点字・音声図書の製作基準に沿って製作されていますが、 他の団体、グループなどにおいては、基準が無いと思われるため、製作物の質の担保と、基準の徹底を要望します。 A製作されたコンテンツについて、管理・検証を行える機関の設置を要望します。 B出版社からの電磁的記録等の提供促進のために、団体間での包括的な契約を結ぶことと、出版社が製作したDTP 用データから、 材料としてのテキストデータや画像が容易に抽出できるソフトの開発を要望します。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) @視覚障害者等のニーズや現状を十分に把握している点字図書館関係者が、協議の場に必ず参加することを要望します。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 6. 端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 (第14条・第15条関係) @端末機器については、障害等級の拡大と、給付額の増額と耐用年数の短縮を要望します。 A日常生活用具給付事業の視覚障害者以外への対象者の拡大を要望します。 BiPad 等タブレット端末に対する給付を「視覚障害者用ポータブルレコーダー」や「拡大読書器」等とは別のカテゴリで認めていただくことを要望します。 C機器等の利用状況やスキル習得支援についての情報が十分に蓄積されている点字図書館を制度の実現等に際して十分に活用していただくことを要望します。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等 (第16条関係) @アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等については、必要であると考えますが、 誰もが先端技術の物を使用できるわけではありません。また端末機器の開発業者においても、一般商品と違い販路に限りがあるために、 長期的に安定供給されないことがあります。先端的技術が導入されても、操作性の簡便なもので、安定的な供給されるよう業者への支援についても要望します。 A機器等の利用状況やスキル習得支援についての情報が十分に蓄積されている点字図書館を制度の実現等に際して十分に活用していただくことを要望します。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) @蔵書製作において、ボランティアの力は必須ですが、高齢化による人数の減少は顕著で、新たなボランティアの育成が急務です。 昨今の社会情勢の中で従来のような無償は集まらず、ボランティアの交通費や謝金の支払いが可能となる予算の確保を要望します A点字図書館では図書以外にテレビやラジオ、雑誌などに掲載された情報等の問い合わせも多岐にわたっている中で、司書の配置基準の見直しを要望します。 B図書や情報のマルチメディア化に対応するために、点訳、触図作成、朗読、テキストデータ化、デジタルデータ編集等を媒体横断的に担える人材育成の支援を要望します。 2019年10月31日 全国視覚障害者情報提供施設協会 “読書バリアフリー法”基本計画骨子案に対する意見 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) @点字図書館における点字・録音図書等の製作機器の購入予算を要望します。当協会加盟の点字図書館は87館(内、厚労省補助の点字図書館は72館)ですが、 どの館においても点字・録音図書等の製作機器の購入・更新に難渋しており、特に各館で活動するボランティアに製作機器の自費購入をお願いして成り立っているのが現状です。 Aサピエの利用等の促進に向けた「連携」については、点字図書館は主に視覚障害者、公立図書館は主に読字障害者や身体障害者の利用拡大に努めることを提案します。 B点字図書館の利用対象者は、身体障害者福祉法では障害者手帳の所持が前提とされていますが、これをマラケシュ条約と改正著作権法に従って拡大するように要望します。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) @当協会に助成されているサピエの運営費の増額を要望します。 厚生労働省においては、2010年のサピエ誕生以来、日本点字図書館に対するシステムサーバの維持・改修費の補助に加えて、 今年度から当協会にサピエの利用者支援の経費として870万円を助成されました。 しかし、サピエの運営費は年間概算3千万円かかっており、この度の助成を受けてもなお、 視覚障害等の個人利用者から約1千万円の利用協力金(利用登録者約1万7千人中、3,500人から一口3千円が目標)をお願いしなけれ ば維持できないのが現状です。少なくとも、視覚障害者等の利用者が、原則として無償でサピエを利用できるように、サピエの運営費の助成金の増額を要望します。 A「関係者の連携強化」を恒常的に行うため、関係者による協議会の開設を要望します。 当協会では、視覚障害者等の読書を支援するため、公立図書館や学校図書館、国立国会図書館、関係団体に対して、 独自に連携・協力を働きかけ、サピエの情報提供や利用支援、研修会の開催などに取り組んでいます。今後、こうした連携・協力が恒常的に行えるように、文部科学省等の主宰による協議会の開設を要望します。 3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) @「出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進」のため、出版者と、点字図書館をはじめとする製作者等の協議の場を設けていただくことを要望します。 A「アクセシブルな電子書籍等」の規格については、アクセシブルなEPUB 方式、あるいはデイジー3.0以降の採用を要望します。 5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) *当協会では、マラケシュ条約によるAE(図書交換窓口)を加盟団体の費用負担で受託しました。今後、輸出入の実績に応じて、その経費を国が負担されることを要望します。 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 (第14条・15条関係) @「電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付について、適正な運用を図る」ため、給付対象となる障害等級の拡大と、耐用年数(再給付までの期間)の短縮を要望します。 特にデイジー録音図書プレイヤーは、従来のカセットテープレコーダーに比べて非常に高額(4.8万円、8.5万円等)なため、 給付対象(概ね1・2級)以外の方の自費購入には困難があります。また、耐用年数(概ね6年)前に壊れて使えなくなったり、機器が更新されても購入できないことも多く、録音図書普及の大きな障壁となっています。 A全国の点字図書館等が以前から行っている視覚障害者に対するICT機器の紹介、利用支援、貸出、講習等のサービスに対して、国の補助金が適切に交付されることを要望し ます。今年度、厚生労働省では「障害者ICTサポート総合推進事業」を新設されましたが、当協会の調査(2019年8月末、回答66館)では、「今年度から実施された」館は1館に止まり、 「来年度以降の実施に向けて協議中」が5館、「まだ実施の予定はないと思われる」は44館に上っています。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等 (第16条関係) *「電子書籍等及びこれを利用するための端末機器等」の開発においては、安直に「先端的技術」の導入を掲げるのではなく、 長期間、安定的に生産・供給されるとともに、高齢の視覚障害者等が簡単に使える“ユーザビリティ”の高い機器の開発を促すことを要望します。 今日の技術変革のスピードは目まぐるしく、特にOS内蔵の機器などは、発売後、程なくして生産中止になり、修理不能で、買い替えを強いられるケースも生じています。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) *国内における「特定書籍」と「特定電子書籍等」のほとんどの製作を担っている点訳 ・音訳ボランティアの地位向上と養成・活動支援の施策を要望します。 全国の点字図書館が所蔵する貸出用の図書は点字50万タイトル、録音82万タイトルに達し(2016年調査)、 サピエ図書館が所蔵する図書データは点字21万タイトル、録音9万タイトル、電子書籍7千タイトルに及びます(2018年度集計)。これらのほ とんどは、全国の点字図書館等に属する約1万8千人のボランティアが製作したものです。 今年度、国の点字図書館事務費における「身体障害者保護費負担金」が増額され、ボランティアの養成や謝金、交通費等に使える予算が年額最大240万円増額されましたが、 当協会の調査(2019年8月末、回答50館)では、「今年度から実施された」館は16館に止まり、「来年度以降の実施に向けて協議中」が11館、 「まだ実施の予定はないと思われる」は23館に上りました。しかも、全体の半数近くが指定管理制度で運営されているため、予算が増えても、実際の委託費は増えない館が多数に上ると予想されます。 全国の点訳・音訳ボランティア等の高齢化と引退が進み、新規のボランティアが減りつつある中、今後も点字・録音図書等の製作が続けられるように、 障害者総合支援法の地域生活支援事業において都道府県・市町村の「任意事業」に留められている「点訳・朗読奉仕員等養成研修」事業を「必須事業」として点訳・音訳ボランティア活動の位置づけを引き上げるとともに、 点訳・音訳作業等の有償化に向けた施策の実施を強く要望します。 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案に対する意見 社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 情報部長 三宅 隆 1 「V 施策の方向性」について 1.「視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等」の「(1)アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実」について 公立図書館等でのアクセシブルな書籍・電子書籍等を充実するために、身体障害者福祉法第34条で位置づけられている 視覚障害者情報提供施設(点字出版施設等)が制作しているアクセシブルな書籍・電子書籍についても、公立図書館等が収集することが必要ではないか。 このことにより、視覚障害者等の読書環境が推進されます。 2.「6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援」の「(1)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援」について 「国は地方公共団体等と連携し、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付について、適正な運用を図る。」となっているが、 アクセシブルな電子書籍を利用したいにも関わらず、利用するための端末を入手できない視覚障害者に対しても、読書の機会が与えられることは必要ではないか。 3.「8.製作人材・図書館サービス人材の育成等」の「(2)指導者や点訳奉仕員・音訳奉仕員等の人材養成」について 視覚障害者の読書環境を整備するための点訳奉仕員・音訳奉仕員等の養成・資質の向上及び確保についての取り組みを推進することとなっているが、 視覚障害者の読書環境にはテキストデータ制作ボランティアの養成・確保も重要となっているため、「等」に含めるのではなく、明確にしておくことが必要ではないか。 2 基本計画の進捗状況の評価について 本協議会で評価を行い、未達成の内容については、読書困難者の利便性を前提に検討することが必要ではないか。 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)基本計画骨子案」に対する意見 調布市立図書館 小池信彦 令和元年10月31日提出 1 基本計画骨子案全体に関する意見 国としての取組み体制を早急にとっていただいたことは,施策推進に良い効果があると考えます。国の基本計画策定とともに,実効性のある制度整備及び予算措置によってより効果的に施策が推進されると考えます。 2 施策の方向性に関する意見 (1)視覚障害者による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) 視覚障害者等が利用しうるそれぞれの図書館において,利用を希望する資料,電子書籍など収集提供する体制を取ることは重要です。そのために,図書館が製作した資料の情報共有をはかり,迅速に提供できる仕組みづくりが必要です。 現在運用されている,サピエや,国立国会図書館が行う「視覚障害者等用データの収集及び送信サービス」が各図書館に定着するため,永続的な組織運営の支援,財政の支援を求めたいと考えます。 (2)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条) (再掲) 現在運用されている,サピエや,国立国会図書館が行う「視覚障害者等用データの収集及び送信サービス」が各図書館に定着するため,永続的な組織運営の支援,財政の支援を求めたいと考えます。 (3)特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係) 効率的,迅速に製作するために,出版者からの電磁的記録の提供は重要です。法の趣旨を踏まえ,出版者が提供しやすいように法制度,財政的支援が必要と考えます。 例えば,著作権法の権利制限規定に権利者の権利を守ることを前提に,特定書籍・特定電子書籍等の製作を目的とする場合は一定の権利制限を設けるなどを検討してはどうかと考えます。 また,電磁的記録の作成システムの開発などに要する財政的支援を検討してはどうかと考えます。 (4)アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12条関係) 書籍購入者に販売するルートをインターネットの特性を踏まえて構築し,通常の本を購入するのと同程度の費用負担に落ち着くような経費負担を検討してはどうかと考えます。 また,購入システム自体がアクセシブルであるよう手順やインターフェースの標準化を検討してはどうかと考えます。 (5)外国からのアクセイブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13条関係) 条約の趣旨を踏まえ,国内においての受領,伝達のシステムについては国立国会図書館が検討していただきたい。 (6)端末機器類及びこれに関する情報の入手支援,情報通信技術の取得支援(第14条,第15条 関係) 端末機械類の開発,普及のために,開発や製造にあたる企業を財政支援する仕組みづくりを検討してはどうかと考えます。 併せて,利用者にむけて利用方法や操作指導を図書館等で行う人的支援の研修,配置の経費を特別地方交付税などにより措置してはどうかと考えます。 (7)アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発の推進等 (第16条関係) (再掲) 端末機械類の開発,普及のために,開発や製造にあたる企業を財政支援する仕組みづくりを検討してはどうかと考えます。併せて,利用者にむけて利用方法や操作指導 を図書館等で行う人的支援の研修,配置の経費を特別地方交付税などにより措置してはどうかと考えます。 (8)製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) サービスにあたる人材として,司書資格取得の科目等に加える,あるいは,有資格者に対する研修は重要と考えます。 3 加えたい視点 基本計画骨子案は,すでに読書習慣のある人を想定した枠組みとなっています。読書は突然できるようなるものではなく,成長のなかで身につくものです。少なくとも乳幼児からの取組みについて盛り込むことが必要と考えます。 たとえば,マルチメディアデイジー図書の製作・提供,布の絵本等の製作・提供,障害のある子どもたちへの読み聞かせ等の実施等です。 加えて,障害のある子どもの周辺にいる大人を巻き込む活動が必要です。 以上 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案に対する意見 長野県教育委員会事務局 文化財・生涯学習課長 小林 司 「V 施策の方向性」について ○「国においては」や「地方公共団体においては」など、誰が(どの組織が)何をすればよいのかが明確になると、地方公共団体が施策を策定するときに参考になる。 ○「○○等」の等とは何かわかりやすく説明していただきたい。 ○「読書バリアフリー法」の中にない「アクセシブル」の意味をわかりやすく説明していただきたい。 1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備 ○視覚障害者等は図書館に来訪することも困難な方も多いため、図書館の施設や機器の整備などハード面やサービスの充実のみでは利用実態からして十分ではなく、 電子書籍の普及など情報化社会の進展に合わせ、インターネットを活用した情報へのアクセスを保障する体制の整備が必要。 ○全体的に、アクセシブルな電子書籍等の普及に重点を置いた記載となっているが、引き続き、点字図書や拡大図書などアクセシブルな書籍と読み上げ機などが提供されることにも配慮した記載とすることが必要。 ○現在の地方交付税交付の算定根拠に含まれる公立図書館等の職員給与費や図書購入費とは別に視覚障害者等へのサービスを担当する職員給与費やアクセシブルな電子書籍の購入費を追加計上することが必要。 2.インターネットを利用したサービスの提供体制の強化 ○視覚障害者等が利用しやすい(必要な情報にたどり着きやすい・検索しやすい)図書情報ネットワークが必要。 ○多くの公立図書館が導入している書籍検索システムであるWebOPAC を視覚障害者等でも確実に利用できるように、システム設計、デザイン、プログラミングのガイドラインが必要。 4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等 ○図書館購入用・個人購入用とも、紙版よりも電子書籍版が割高にならないようにしてほしい。 ○アクセシブルな電子書籍のサピエ図書館への納本を義務付けてほしい。 ○公立図書館等においては、販売または頒布された電子書籍等について、著作権者の許可なく視覚障害者等へ提供できるようにしてほしい。 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 ○「特別支援学校学習指導要領において規定されている」とあるが、通常校にも弱視等の子どもも在籍しているので、そこにも配慮した説明が必要。 ○視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付や、アクセシブルな電子書籍等の利用方法の研修については、公立図書館・学校図書館職員と、障害福祉担当関係機関職員の連携が必要。 7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端技術等の研究開発の推進等 ○開発に際しては、研究開発協力として特別支援学校で試用し、子ども達の意見も取り入れてほしい。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等 ○計画的な製作人材・図書館サービス人材の育成ができるシステム及び人材と事業者を結び付けるシステムの検討が必要。 ○具体的な成果を目標とする計画を作成してほしい。 基本計画骨子案に対する意見 /DPI 日本会議 見形信子 T はじめに 0. 法律成立までの背景や経緯 マラケシュ条約、障害者差別解消法などを加えては? U 基本的な方針 1. アクセシブルな電子書籍等の普及及び継続的な提供 ・私達には「知る権利」がある。誰でも書店【本屋付きカフェなど含む】を利用でき、いつでも図書館に行けることが大切。 これから協議会で検討される事項が、持続可能な仕組みにすることが重要。●読む本だけではなく「聴く[しゃべる]本」、「見る本」「触る本」とたくさんソースが増えたことを国民に啓発キャンペーンが必要では? 例 携帯ショップのスマホ講座でPR【アプリの宣伝、ユーザー拡大】や教科書のデイジー図書化や図書館でスマホやタブレットPC のデモンストレーションも検討しては? 2.アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上 ・これまで製作されてきた図書は点字と録音が中心。上肢障害者も対応するテキストデータ化を急ぎたい。 V 施策の方向性 1.視覚障害者等に・・・ (1) ・様々な読書媒体を知らずして、障害者が読書をあきらめるのは残念。 様々な読書媒体を体験できる展覧会(福祉機器展など活用)実施を。 ・点字図書館のネーミングを検討が必要(読書障害者にも利用できることを伝えたいので)。 ・多くの多様な地域生活を行う障害者が関わっている 自立生活センターとの連携強化をする。それによってユーザー拡大を図る。 (2)円滑な利用のための支援の充実 ・図書館のバリアフリー化として、身障者用・オストメイト、昇降式ベッド、リフト対応トイレ、 スロープ、障害者用駐車場、車いすの大きさに対応したエレベーター、館内やトイレの見やすい案内表示・資料の郵送や宅配による貸出、 障害者用読書支援機器の使用方法の説明、病院・障害者施設・就労支援B 型作業所・放課後デイ、幼稚園、保育所、特別支援学校などと連携を強化。 2.インターネットを利用した・・・ (1)「サピエ」の運営への支援 ・国による運営補助金を。 3.特定書籍・・・ (2)出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進・・・ ・点字図書館、公立図書館等で点訳・音訳、拡大等の作業をうまく進めるために出版社へどういう書籍のデータ提供が可能なのか、データ形式をどうするか、これに伴う費用を検討。 4.アクセシブルな電子書籍等・・・ (3)出版者から書籍購入者に対する・・ 出版社の負担も少なく、簡易にインターネット上から電子データを購入できるよう、それを実現するデータ提供の出版社の負担軽減は可能か? 6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 (1)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援 ・必要な障害者には日常生活用具としてデイジープレイヤー含む情報機器の補助・あるいは無料貸し出しを検討できないか。 (3)特別支援教育 ・障害のある子供たちの読書環境の改善するような情報提供する。読めない壁を取り払うため、タブレットで見る教科書など検討してほしい。 8.製作人材・図書館サービス人材の育成等 (1)司書等の資質向上 ・各図書館で障害者サービスの研修を重ね、高齢者や外国人へのサービスにも広げていけるとよい。 ・図書館司書や司書教諭、学校司書の養成課程に読書障害者への対応に関するカリキュラムを追加できないか(講師は読書障害者が当たる)。 W おわりに 今後の長期的課題について ・図書館、出版業界が障害当事者にとってよりわかりやすく検索やダウンロード可能にできるための資金、サボート体制をつくることを検討。 ・点訳や音声化、テキストデータ化をボランティアに頼れない。 ・読書バリアフリーを実現するには、さまざまな障害者の意見を聞き、インクルーシブ視点を基に継続する協議の場の設定を求める。 ・どれだけ実現したか数値の【見える化】を実施すること。定期的に評価するのが重要。 令和元年11 月28 日 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)施行に伴う 基本計画作成にあたっての意見 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会 阿部 一彦 読書には知識や情報の取得だけではなく、楽しみを伴い感性を育むなどという大きな意義がある。 読書バリアフリー法によって、障害があるために読書を行うことに困難があった人にとっての環境が整備されることは極めて重要なことである。 この法律が障害者等の読書環境をより一層効果的に整備することを期待し、幾つかの意見を述べたい。 1 この法律による「視覚障害者等」の定義として、「視覚障害,発達障害,肢体不自由その他の障害により,書籍(雑誌,新聞その他の刊行物を含む。以下同じ。)について, 視覚による表現の認識が困難な者」と定義され、視覚障害者だけではなく、読字障害者(ディスレクシア)、上肢麻痺などでページをめくったり、 書籍を取り扱うことに困難な身体障害、眼球焦点や眼球運動などの障害者を含んでいることは評価できる。 その上で、誰もが等しくという観点から考えれば、大きな規模の図書館において視覚障害者へのサービスについて明記している一方で、 本法律で支援の対象となる他の障害についての明記がされていない箇所があることは適切とは言い難い。 本法律の受益者の幅の広さについて、障害者そして図書館など関係機関に十分に周知徹底していただきたい。 2 点字図書館については、その名称から視覚障害者へのサービスに限定しているように受けとめられかねないと考えられる。 本法律に基づいて他の障害へのサービスを提供することについて十分に周知する必要がある。 また、点字図書館、図書館ともに、障害の多様性について対応できる職員の配置と施設そのもののバリアフリー化を進めていただきたい。 3 加齢等に伴って細かい文字を読むことに困難を抱えるようになってきて、読書習慣から離れてきている高齢者が数多い傾向にある。 高齢者にとって、読書が脳の活性化に重要であることは多くの指摘があることからも、このような高齢者が読書バリアフリー法における受益者の範囲に入るのか検討していただきたい。 また、受益者となるのであれば、そのことの周知を図っていただきたい。 4 現在、障害者権利条約並びに障害者施策の向上により、障害者がさまざまな国及び地方自治体の委員会などに参画して意見を述べる機会を得ていることは意義深い。 このとき、会議資料や議事録などに点字資料などが準備されるようになってきているが、すべての会議で準備されているとは言い難い。 また、視覚障害者等の参加が想定されるさまざまな会議やイベントが数多く開催されるようになってきたが、障害に応じた資料の提供が十分に行われない場合もある。 本法律に基づいて、障害特性に応じた資料の作成と提供が円滑に行われるように取組強化を図っていただきたい。 5 読字障害児者(ディスレクシア)などを含めた発達障害児者の読書、教育にマルチメディアDAISY が効果的であると聞くことから、 その意義の大きさの周知を図るとともに、さらに特別支援教育における普及を図っていただきたい。 6 電子書籍等の販売が促進されることは、読書バリアフリー法における受益者以外の多くの人々にとっても大きなメリットになることから、 技術の進歩に合わせてその普及に努めていただきたい。 7 マラケシュ条約の枠組みに基づき、海外の触地図、グラフィクス等の触図、点図などを入手・活用し、わが国におけるこの領域の進展を図っていただきたい。 8 拡大読書器を含め読書支援機器の普及は重要と考える。福祉機器として給付しやすくしていただくことはもちろんだが、 多くの人に読書の喜びを体験し続けていただくための支援機器もまた重要なツールと考える。そういった観点からみれば、必ずしも給付の対象にならない人にとっても安価に入手できるように検討いただきたい。 9 図書館サービス等に関する人材としてピアサポートができる職員・ボランティアの育成は重要である。 障害によって困難に対応して解決してきた体験をもとに、この領域で力を発揮し貢献できる障害者の活躍の場を作ることも大切な点であると考える。 さらに、障害の多様性に対応した適切なサポートができるよう、職員・ボランティアへの障害理解の研修の取組強化も進めていただきたい。 令和元年11月 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に係る関係者協議会意見書 認定NPO 法人エッジ 藤堂栄子 「障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に寄与することの実施」のために下記を検討することを要望します 法律の文言:視覚的に情報を得ることが困難→マラケシュ条約では対象を限定しておらず、使われた文言は「プリントディサビリティー」のはず。 手が使えないためというような他の障害により読書が困難な人を排除している。外国人もしかり。 障害者の定義:これまでの医療モデルの障害の定義から社会モデルへの転換を図ること。 国地方自治体の役割:国会図書館をはじめ、各地の図書館、学校図書館などに整備すること、実施状況を検証すること 基本的施策:広く世にあるものを提供、また技術も日進月歩のなか一つの方法に偏らず収集して計画性を持って提供できる体制の整備を実施すること 点字図書館:名称を変更すること。多くの対象者は点字を使用できないことを鑑み、名称を変更することを切に願う サピエ図書館:多くの良書が優れた技術を一つに限らず素早く手に入れられるよう、対象者が使用しやすいよう改良を求める。 以上 障害の有無にかかわらず全ての人の読書アクセシビリティを高めるための基本施策について 日本DAISY コンソーシアム運営委員長 河村 宏 1. コメントの背景 私は1977 年に東京大学総合図書館の職員として二人の1 級視覚障害のある学生の支援を始めて以後、 国際図書館連盟(IFLA)の視覚障害者サービス専門委員会の役員として途上国を含む点字・録音図書の国際交換の促進につとめ、 専門書の録音図書を外国から取り寄せて視覚障害のある学生に提供しました。1986 年に日本電子技術工業会のご協力を得て、デジタル録音図書の将来に関 する国際セミナーを日本で開催した後、1995 年には今日のDAISY 規格につながるデジタル録音図書の国際標準化をIFLA の専門委員会の議長として提言し、 1996 年には国際的な活動に積極的な図書館で国際非営利法人のDAISY コンソーシアム(DC)を設立し、1998 年には、国際標準規格としての今日使われているDAISY を開発しました。 その後、今日まで継続してDC の会長あるいは理事として、DAISY の改良と普及のための研究開発に従事すると共に、その技術をグローバルに普及するために、 マラケシュ条約交渉をはじめ、障害者等の情報アクセスの向上に関わる国連世界情報社会サミットと第3 回国連防災世界会議における障害者側のフォーカルポイントを務めてきました。 国内においては、1998 年から2000 年にかけて、当時の厚生省の大規模な補正予算による全国の点字図書館への世界に先駆けたDAISY 録音図書の導入プロジェクトの企画・実施の責任者を務め ました。2000 年からは、ディスレクシアや上肢機能障害のある方々、あるいは固有の文字を持たない世界の先住民族もDAISY を活用できるようにするためのマルチメディアタイプのDAISY の開発 に取り組み、さらに、それを普及するために、2010 年に改定実施された日本の著作権法の改正プロセスに深く関与しました。 このような経験をもとに、表題について以下のコメントをさせていただきます。 2. 「視覚障害者等」の定義と「学校教育法」との整合性 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」は、その対象を、障害により「視覚による表現の認識が困難な者」としていますが、 マラケシュ条約の批准と並行して審議されたデジタル教科書の利用に関する学校教育法の改正においては、 「障害等」に起因する障壁により教科書を自ら読んで理解することが困難な児童生徒という対象者を定義し、現在約5 万人が特定されている「日本語に通じない」児童生徒をこの対象者に含めています。 教科書を読めなければ当然読書もできないわけですから、「障害の有無にかかわらず全ての人の読書アクセシビリティを高めるための基本施策」を確立するために、 「障害等」に対象を広げて学校教育法と整合性のある基本施策を確立すべきと考えます。 3. 関係団体へのヒアリングの実施 前項と関係しますが、マラケシュ条約交渉の過程で、全日本ろうあ連盟および日本ALS 協会からも要望の表明がありましたので、 この両団体と共に、聴覚障害者情報提供施設協会、全国盲ろう者協会にもヒアリングを実施することを要望します。 4. 幅広い障害特性に配慮した「利用しやすい書籍」に留意 第4 次障害者基本計画でも強調しておりますが、出版物のアクセシビリティは障害特性に配慮することが重要です。 知的障害がある方々には文字と共に図解したり、専門用語を日常使う言葉で説明することが有効で、手話を第一言語にする方や、 母語と異なる言語で読書をする方々にもこれらの出版物はわかりやすいということが知られています。法第二条2の表現は、 このような幅広い障害特性に配慮するものとはわかりにくい表現になっていますので、基本施策においてはこの点に十分配慮して、国内外の知見を活用することが必要と考えます。 5. 「利用しやすい電子書籍等」のユニバーサルデザイン化 第4 次障害者基本計画は、「新たな技術を用いた機器やサービスは、新たな社会的障壁となる可能性がある一方で、 アクセシビリティとの親和性が高いという特徴」があるので、積極的な利活用が重要と指摘しています。 読書バリアフリー法の基本施策も、障害者基本計画と整合性を持った取り組みとして、バリアフリーからユニバーサルデザインに向けて ICT を積極的に利活用する必要があります。そのような観点から、マラケシュ条約の枠組みにしばられずに、電子書籍に含まれる動画に関しても積極的な利活用も基本施策の視野に収める必要があると考えます。 6. 書籍等発行者の責務 書籍等の発行者が障害の有無にかかわらず全ての人が読めるように出版することが基本施策の究極的な目標だと思います。 マラケシュ条約も長期的な目標はそのようになっています。基本施策においてはこの点を明確にすべきであると考えます。 また、それを実現するための条件整備に、国と関係する産業界、研究開発機関がどのような活動を行うべきかを明示することが求められています。 7. 国および公的機関の重要な役割 国と地方自治体および大学等の研究開発団体は、主要な出版者でもあります。公的資金を用いて活動する団体の出版物は率先して誰もがアクセス可能なものにすべきことは、 第4 次障害者基本計画でもうたわれていますが、基本施策では、それに対応して、公的団体の読書における役割をより明確にすべきです。 例えば、ハザードマップを誰もがアクセスできて理解できるように発行することは国とすべての自治体にとって喫緊の課題です。 8.アクセシブルな デジタル教科書の戦略的重要性 読書は、学んで初めて可能になります。学校教育法が改正されて、「障害等」の学習上の障壁に阻まれている児童ル生徒は、 デジタル教科書を紙の教科書に代えて使えるようになりましたが、肝心のデジタル教科書のアクセシビリティが不十分で、 1 万人以上の児童生徒がボランティア製作によるデイジー教科書を頼りに学習をしています。その数は急増している上に、 5 万人の潜在的な利用希望者が特定されていることは先に述べたとおりです。毎年400 億円以上の国費を投じて調達している無償給与の教科書の採択要件に、 デジタル教科書も含めてアクセシビリティを確保することを教科書発行者に担保させることが「読書」普及戦略上きわめて重要であると考えます。 9. 国際交換は「持ちつ持たれつ」 海外からのアクセシブな出版物の取り寄せは重要ですが、国際交換の前提である提供にも留意する必要があります。 交換は、「持ちつ持たれつ」ですので、国際的に期待の高いサピエ図書館の蔵書の海外への提供業務を充実させることも基本政策としてきちんと位置付けるべきだと考えます。 基本計画骨子案に対する意見 公益社団法人日本図書館協会 公益社団法人日本図書館協会は、「読書バリアフリー法」により、情報入手に困難のあるあらゆる人たちの読書環境・情報利用環境が改善されることを期待しています。 その実現に重要な役割を果たす基本計画の検討が、教育や福祉に限定されることなく、すべての関係者により行われることを高く評価します。 視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進するためには、本基本計画が、すべての関係者の意見が十分反映された実効性のある内容となる必要性があると考え、以下の意見を述べます。 1 総括的な意見 (1)「読書バリアフリー法」及び「著作権法」において、視覚障害者等とは、視覚障害その他の障害により視覚による表現の認識が困難な者をいいます。 例えば、視力や視野の範囲などに関わらず、印刷された文字を読むことや目による読書が困難な人であり、特定の障害やその程度を示すものではありません。 しかし、現行の福祉制度やサービスの中には、障害を特定して行うものが多く、それらを根本的に修正することが求められています。そのような制度の改善を明示してください。 (2)基本的な方針として、視覚障害者等への情報提供では、著作権法第37条第3項により製作する資料と、出版社によるアクセシブルな電子書籍の提供がいわば車の両輪のように必要です。 しかし、後者の取り組みが不十分で、国として促進するためのさらに積極的な取組が求められます。 (3)施策の方向性として、点字図書館が資料を製作し、公立図書館ではネットワークなども活用しながら情報を提供する施設として記述されている部分がありますが、 公立図書館でも資料を製作している館があります。また、公立図書館では取り扱っている障害者サービス用資料の種類が多く、 合わせて窓口貸出・郵送貸出・宅配サービス・施設入所者へのサービスなど取組手法も多彩です。 ただし、公立図書館には一定水準以上のサービスを行っているところが少なく、学校図書館も含め、 これらのサービスの普及促進が課題となっています。したがって、今後は点字図書館と公立図書館等の連携によるサービスの強化に強く期待しています。 2 個別項目への意見 (1)1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等 この項目で図書館のサービスについてお示しいただき感謝すると共に、サービスの充実に本協会としても努力していく所存です。 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」についても、これに合わせて改正が必要です。 図書館では、さまざまなサービスに取り組んでいます。対面朗読も特徴のあるサービスですが「対面朗読室等の施設の整備」とあるだけで、対面朗読サービスの実施そのものが示されていません。 国立国会図書館での対面朗読サービスの実施も含め、公立図書館や学校図書館における障害者サービスの充実を図る取組について具体的方策が必要です。 (2)6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援 「国は地方公共団体等と連携し、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を利用するための端末機器等の用具の給付について、適正な運用を図る。」とありますが、 現行の日常生活用具給付制度では、例えばデイジー再生機はほとんどの自治体で1、2 級の重度の視覚障害者にしか給付されません。 いわゆる寝たきり状態の人や手の不自由な人、文字は読めなくても軽度の視覚障害者は対象外です。さらに、高齢で見えにくくなった人がその対象となっていません。 この障害にはこの機器を給付するという障害の種類や機器を限定することなく、本当に必要な人に必要な給付が受けられるようなルール作りをしてください。 また、「情報入手技術の習得支援」では公立図書館等や点字図書館による研修や個別支援はもちろんですが、利用拡大には自宅に出向いての個別支援が重要です。 しかし、それを行うところはどこなのか(例えばIT サポートセンター等)、実施体制や予算の確保が示されていません。 (3)7.アクセシブルな電子書籍・端末機器等に係る先進的技術等の研究開発の推進等 ここ数年この調査研究のために国は尽力してこられたものと思います。しかし、技術的にもあるレベルまで達成できているにも関わらず、 日本ではアクセシブルな電子書籍はほとんど販売されていません。その理由を検証する必要があります。 また、本来、アクセシブルな電子書籍が出版され、購入したい人は購入し、借りたい人は図書館から借りる。そういう当たり前の状態を目指すべきです。しかし、電子書籍の図書館への販売はほとんどありません。 研究開発にあたっては、技術的な問題だけではなく、その提供方法の課題についても早急な検討が必要です。 特に、図書館への提供方法の確立が重要で、国として促進するための積極的な取組をお願いします。 (4)学校・学校図書館に対する支援について 特別支援学校については、「6 端末機器等およびこれに関する情報の入手支援」の「(3)特別支援教育」に書かれていますが、 地域の学校への支援も必要です。発達障害を含むさまざまな障害による読書困難な児童生徒は地域の学校またはその特別支援学級にも多く在籍しています。地域の学校 にも必要に応じたパソコンやタブレット等の支援が必要です。合わせて、学校図書館の司書教諭・学校司書の技術向上のための取り組みも求められています。 (5)8.製作人材・図書館サービス人材の育成等 この項で公立図書館等職員への研修の重要性を取り上げていただいたことを評価します。 「(2)指導者や点訳奉仕員・音訳奉仕員等の人材養成」の中で、ピアサポートができる職員・ボランティアの育成や環境の整備について、障害のある図書館職員を障害者サービスの中心的存在とし て育成することには大いに賛成するものですが、それをボランティアでもよしとすることは望ましくありません。 3 不足している点 (1)司書・司書教諭・学校司書の養成科目について 「8 製作人材・図書館サービス人材の育成等」に「(1)司書等の資質向上」がありますが、 司書・司書教諭・学校司書の養成科目において障害者サービスに関する内容を扱う科目と時間の拡充を明示してください。 (2)郵送等の資料提供方法の充実について 図書館では資料の有効な提供方法として郵送サービスを行っています。第4種郵便制度では、点字は無料で送ることができます。 また、視覚障害者に対して録音資料を無料で郵送することができます。しかし、いわゆる寝たきり状態の人や足の不自由な人、施設に入って外出できない人、特 別支援学校等に対して、必要な資料を無料で郵送することはできません。それらの人たちに無料で郵送できる仕組みについて配慮してください。 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案に対する意見 堺市障害施策推進課長 長尾 正志 今般の基本計画骨子案について、主に地方公共団体に関係する項目である「V 施策の方向性」の1、2、6、8について、以下のとおり、意見を述べさせていただく。 〇全体について この基本計画は、図書館関係者だけに限らず、広くいろんな業界の方々に見ていただく必要があると考えている。 本計画骨子案では、「国立国会図書館」「公立図書館」「大学の図書館」「学校図書館」「点字図書館」「サピエ図書館」などさまざまな図書館があり、それらが有機的な連携 を図ることで、視覚障害者等の読書環境の整備を推進していくことを目指しているが、そもそも前提として、それらの図書館の現状の役割やそれぞれの違い、 特性を知っていなければ、本計画骨子案の意図が正確に伝わらないと考える。 例えば、丁寧な注釈、用語解説を入れるなど、できるだけいろんな方々に分かりやすいようにする必要があると考える。 〇各項目について 1.(2)円滑な利用のための支援 ・「傾斜路」とあるが、ここだけ唐突にバリアフリーに関することが出てくることに違和感がある。施設自体のバリアフリーと、 読書支援に必要な環境整備等は分けて記載したほうが良いのではないか。 ・「障害者サービス」が何を指すのかが不明瞭であり、福祉側から見ると、障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス」と紛らわしく感じる。 ・「大学及び高等専門学校の附属図書館において…所在情報を共有し」とあるが、例えばシステムを全国統一で構築するのかなど、情報共有をどの範囲で行うのかが不明瞭である。 2.(2)関係者の連携強化 ・「障害学生支援を担当する部局」というのは大学内の部局のことを指すのか。大学内の部署間での情報共有という当たり前のことを関係者の連携強化に位置付けることに違和感がある。 6.(1)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援 ・「適正な運用を図る」とあるが、何をどのように適正な運用を図るのかが不明確である。日常生活用具給付制度の支給対象者を見直すという意味なのか。 「適正」という言葉が、給付の制限を連想させてしまうように感じる。 8.(1)司書等の資質向上 ・「視覚障害者等に対する図書館サービスについて取り上げ」とあるが、「取り上げる」という表現が、 研修内で障害に関することを軽く触れられる程度のイメージを連想させる。もう少し踏み込んだ表現のほうがよいのではないか。 〇最後に 計画骨子案に対する直接的な意見ではないが、以下のことについて、意見を述べさせていただく。 法第8条において、地方公共団体は、国の基本計画を勘案して、計画を定めることとなっているが、 今般の計画骨子案に則った施策展開を図っていくには、地方公共団体には相当な財政的負担が生じることが予想される。 例えば、今後、点字図書館や公立図書館において、「アクセシブルな書籍・電子書籍等の量的拡充・質の向上」 「インターネットを利用したサービスの提供体制の強化」などを進めていくうえでは、制作機器の充実や人員体制の強化が必須となる。 また、「端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援」などに関しては、障害当事者が容易に端末機器を入手できるよう、 日常生活用具給付制度の支給対象範囲の見直しの検討も必要となる。 これらを踏まえると、今後、地方公共団体が本計画に則り施策を推進していくためには、法第6条にも「財政上の措置等」に関することが規定されているが、国の十分な財政的支援が必要不可欠であると考える。 2019 年10 月31 日 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律 基本計画骨子案に対する意見 一般社団法人 日本書籍出版協会 理事・事務局長 樋口清一 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)が施行され、法律の趣旨の実現を図るため、基本計画が策定されることは大変喜ばしいことであります。 出版界としても、すべての国民が等しく出版物を利用することができるような環境整備を図るためにできる限りの協力を行っていく所存であります。 一方で、出版物の売上げは1996 年の約2 兆6,560 億円(書籍1 兆930 億円、雑誌1 兆5,630 億円)をピークとして減少の一途をたどっており、2018 年の売上げは、書籍6,990億円、雑誌5,930 億円となっております(出版科学研究所調べ)。 このような厳しい環境下におきまして、各出版社も経営効率化や経費の節約を進めており、 障害者の方々からの電子データ提供のご要望に対し十分に応えられていない状況にあることは否めません。 この状態を改善するためには概ね以下のような懸念を解消することが必要になってくると考えます。 1. データの目的外使用等に関する懸念 電子データを提供する上では、それが視覚障害者等のためにアクセシブルな媒体に変換されて活用されるという本来の目的以外に流用されないことが担保されるということが重 要な前提になります。近年、海賊版の蔓延が社会的にも大きな問題となっており、多くの出版社では、自社が発行する出版物が違法に複製され流通する危険性についての懸念が大 きくなっています。特に、電子的な著作権保護(DRM)が付与されていないデータを第三者に提供することに関しては、著作権者の権利を守る立場でもある出版社にとっては慎重 になってしまうのは当然のことです。仮に何等かのデータ提供を行うことがあるとしても、その場合にはこの点についての解決を図ることが、多くの出版社の理解を得るための大前提になるのではないかと思います。 また、電子データの提供においては、そのアウトプット環境によっては紙媒体上での表現・体裁の同一性がどこまで担保されるのかという問題があります。 特に、版面構成に工夫を凝らしている本等に関しては出版社としては気になるところです。 2. データ提供に係るコスト削減に向けた対応 障害者の方々はテキストデータの提供を優先して要望されていますが、印刷用の最終版に対応したテキストデータは、出版物製作の過程で生じるものではなく、 最終版の印刷用データから改めて抽出することが必要です。これは、制作工程として校正を重ねる段階では、データ訂正は印刷用フォーマットの上のみでなされ、 テキストデータの段階まで遡ることがないからです。したがって、仮にテキストデータを提供するとしたら、 そのためには当該データを抽出するための追加の行程とそれに要する費用が必要になります。 また、1.でも述べましたように場合によっては、表現・体裁について同一性が保たれているかのチェックも必要になります。 このような手間や費用をすべて出版社の負担で行うことは、継続的な提供の仕組みを考える上では問題があります。仮にテキストデータでの提供ということを強く望まれるので あれば、上記のような手数や費用の負担を軽減あるいは分担する仕組みが必要になると考えます。 3. 著作権者の許諾を得るための対策 出版社はほとんどの場合、著作権者から出版に係る著作権の許諾を受けて出版物の製作・販売をおこなっています。 一部には、著作権譲渡を受けている場合や編集著作権や職務著作によって出版社自らが著作権を有している場合、 さらには著作権の保護期間が経過した作品を出版する場合等、出版社の一存で二次利用に供するか否かの判断を行うことができる場合もありますが、これらは少数にとどまっています。 調査の趣旨は異なりますが、昨年行った調査によれば、主要な出版団体に加盟している出版社の発行する書籍のなかで出版社が著作権を有するものの割合は約11%となっています(授業目的公衆送信権補償金制度に関するカバー率調査=出版教育著作権協議会調べ) 従いましてこれ以外の出版物については、出版社が著作権者から許諾を得ているのは基本的には紙あるいは電子媒体で当該著作物を出版することのみであり、 出版物以外の形で著作物のデータを第三者に譲渡する行為については、著作権者の許諾を改めて得る必要があります。 そのためには著作権者との間で締結される出版契約の中にあらかじめアクセシブルな書籍制作あるいはアクセシブルな電子データの提供に係る条項を盛り込んでおくことが 考えられますが、その大前提として、このような対応は出版社の一存で実現するものではなく、あくまでも著作権者の中にこのような対応を行うことについての十分な理解と協力 が進むことが必要であります。 なお、電子書籍の自動音声読み上げについての口述権の許諾につきまして、当協会で作成している、電子書籍の発行のための出版契約書ヒナ型において、許諾の範囲に含めるこ ととしておりますので、これについては実際の出版契約においても、著作権者の許諾は得られている場合が少なくないものと推察します。 以 上 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案について 一般社団法人 日本電子書籍出版社協会 専務理事・事務局長 吉澤 新一 【一般社団法人 日本電子書籍出版社協会(=電書協)について】 電書協は、2000 年8 月設立の任意団体「電子文庫出版社会」を、2010 年2 月1 日に一般社団法人として発展させた、出版社の団体である。現在は、一般書の電子出版を手がける出版社25 社が加盟している。 電書協の理念は、次の3 つが柱である。ひとつは、「著作者の利益・権利を確保すること」、そしてもうひとつは「読者の利便性に資すること」。 そして3 番目に「紙とデジタルとの連動・共存」。電書協の主たる事業は、電子出版事業に関する、 @制作、流通、サービス等の調査研究、A情報の収集及び提供、B法環境の整備及び提言、C内外関係機関等との交流及び協力、である。この@からC以外にも、当法人の目的を達成するために必要な事業に係わっている。 【読書バリアフリー法と基本計画について】 視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進して、障害の有無にかかわらず全ての国民が読書を通じて、 文字・活字文化の恵沢を享受できる社会の実現に寄与するという、「読書バリアフリー法」の目的は、十分理解できるし、 社会的な必要性や時代の要請でもあることは認識している。電子書籍は紙の本ではできなかったことを実現できる可能性があり、 この「読書バリアフリー法」が施行されたことによる基本計画の策定には前向きに係わっていきたいと考えている。 【基本計画骨子案の施策の方向性に対する意見】 「3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11 条関係) (2)出版者から製作者に対する電磁的記録等の提供促進のための環境整備への支援」について <意見> 「読書バリアフリー法」を推進するためには、特定書籍・特定電子書籍を作ることも一つの解決方法かもしれない。ただ、特定電子書籍には、著作権者の理解や許諾、特定電子書籍の管理・保存などハードルがある。 電子書籍は従前から、著作権者との電子出版契約をもとに、それぞれの出版社が責任を持って製作して、本文データ、書誌情報、表紙画像等を含めて自ら管理して、市場へ流通させている。ファイル形式もIDPF ([International Digital Publishing Forum]。現在はW3C[World Wide Web Consortium]と合流している) が策定した世界標準であるEPUB 3 に統一され、電子書籍市場は形成されている。電書協加盟社では、EPUB 3のリフロー型ファイルを多く製作しているが、 このリフロー型EPUB 3 ファイルは主要OS(iOS、Android、Windows 等)の独自機能により、音声読み上げが既に可能となっている。 電子書店のサイト作りや閲覧ビューアのユーザビリティ向上等、各所の環境整備を取り組んでいくことが解決方法であり、案外と近道かもしれない。 「4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進等(第12 条関係) (2)著作権者と出版社との契約に関する情報提供」 <意見> 「読書バリアフリー法」を推進するには、出版業界のための、新しい電子出版契約書の雛形が必要になるだろう。 電書協の法務委員会、流通委員会、製作・技術委員会でも議論をする予定である。 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本計画骨子案について 一般社団法人 電子出版制作・流通協議会 鈴木 直人 【電子出版制作・流通協議会(以下、電流協)の概要】 電子出版のデータ制作を行う出版に関わる印刷会社を中心とした制作会社や電子書籍の取次・書店など電子出版の流通に関わる事業者などからなる団体で、現在44 事業者と9 名の特別会員(有 識者)の合計53 社が加盟して、日本の電子出版産業の成長と健全な発展のための環境整備を目的に活動しています。 【読書バリアフリー法と基本計画について】 電子出版産業の発展を目的に掲げている電流協としては、読書バリアフリー法が成立し、それに基づく基本計画が策定され、 電子書籍を含む電子出版が視覚障害者等を含む多くの方々の読書の機会を広げることに貢献することは、大変喜ばしいことと考えています。 この基本計画により視覚障害者等の方々の読書環境の整備が行われることはもちろん、その施策が日本の電子出版産業の健全な発展にも好影響をもたらすことを期待しています。 【基本計画骨子案において電流協が関係すると考える範囲とそれぞれに対する意見】 1) 「4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進(第12 条関係)」「(1)技術の進歩を適切に反映した規格等の普及の促進」について <意見> (1)に記載されている「視覚障害者等が円滑に電子書籍等を利用できるようにするための新たな技術動向を踏まえたアクセシビリティの確保」においては、 電子書籍コンテンツを読む際のアクセシビリティと電子書籍コンテンツを入手する上でのアクセシビリティの二つの確保が必要と考えます。 コンテンツに関しては、多くの電子書店で文字の拡大、背景色と文字色の変更、書体の変更などへの対応が行われています。 一方、音声読み上げ(TTS)に関しては、電子書店ごとに対応が分かれており、音声読み上げが可能でない電子書店も多くあります。 電子書店が音声読み上げを実装していないのには、各社それぞれの事情がありますが、多くは下記3 点の理由が挙げられると考えます。 @ AI 等の進歩によりその頻度は以前に比べ少なくなっているものの、表示されている「漢字かな交じり」の文章をそのまま読み上げた場合、 複数の読みを持つ漢字の読み間違えや、旧字など常用漢字やJIS の漢字コード以外の文字で電子書籍では文字ではなく画像として保存されている「外字」の読み飛ばしが発生することがあり、 読者が聞きにくいことはもちろん、著作物と読み上げの同一性が担保できない可能性があります A 上記を避けるため、全文にふりがなを振ることやSSML(音声合成マークアップ言語)に基づく発音記号をコンテンツに入れることで、読み間違えが起こらないようにするこ とはできますが、制作の際に負荷が掛かることもあり、対応しているコンテンツはまだ多くありません B 上記@Aのいずれに関しても、現状読み上げ対応していない書店のビューアアプリを読み上げ対応させるのには、システム改修の必要があります また、電子書籍を検索して選んだりダウンロードしたりするようなコンテンツへのアクセスに関しても、現状まだ改善が必要な状況が散見されます。この部分の改善のためにもシステ ム改修などが必要であり、対応するための負荷が存在しています。コンテンツを読む際のアクセシビリティ確保においても、コンテンツにアクセスする際のア クセシビリティの改善においても、事業者の努力はもちろん、関係者のご協力とご支援が必要と考えます。 2) 「4.アクセシブルな電子書籍等の販売等の促進(第12 条関係)」「(4)その他」について <意見> (4)に記載されている民間電子書籍サービスが提供するTTS 対応の電子書籍の図書館への導入支援が実施されれば、いまだ初期段階にある電子書籍の図書館導入が促進されるものと 大いに期待します。但し、記載されている「基準の整備」においては、その透明性と公平性が担保されることが非常に重要だと考えます。 3) 「5.外国からのアクセシブルな電子書籍等の入手のための環境整備(第13 条関係)」について <意見> 本項目は視覚障害者等の方々のみを対象としたものであり、一般の電子書籍は該当しないと考えますが、電子書店や電子書籍サービスの中には海外の電子書籍を扱っているところも多 いため、この取り組みが民間の取り組みに悪影響を及ぼすことがないことを切に望みます。 4) 「7.アクセシブルな電子書籍等・端末機器等に係る先端的技術等の研究開発(第16 条関係)」について <意見> 研究された先端技術等を実装する場合には、電子書店やビューア制作会社など表示側の対応だけでなく、コンテンツを制作する制作会社側が対応する必要があります。 各事業者の研究開発における先進的な取り組みへの支援と同時に、周辺の事業者への支援も重要と考えます。 以上 オーディオブックに関するご説明及び基本計画骨子案に関する意見 日本オーディオブック協議会常任理事 上田渉 1. オーディオブックについて 「オーディオブック」とは商品名では無く、狭義では「書籍を音声化したもの」、広義では「音楽以外の音声コンテンツ全般」という定義となる。広義の場合、典型的な書籍の 朗読だけでなく、複数声優が演じるドラマ形式(オーディオドラマ)、ポッドキャストと言われるトーク番組、ラジオ放送の録音版、落語、講演等も含まれる。商用のオーディオ ブック配信サービスでは、広義のコンテンツ群が販売されていることが主である。 オーディオブックは、視覚障碍者・読字障碍者用として普及している録音図書とは異なり、視覚障碍者も健常者も双方が利用できる形式となる。特に、健常者が楽しめることを 前提に作られているため、演出などよりエンターテイメント性が高い作りとなっている。(※オーディオブック直感的にご理解頂くために何点かサンプル音源を再生します。) 再生デバイスは日本の市場においてはスマートフォンやタブレットが主流となっているが、視覚障碍者の使用に配慮して音声ナビゲーションに対応しているサービスもある。 視覚障碍者ではないが、老眼や眼病(白内障・緑内障など)によって視力が低下し、本が読みづらくなった人の利用も増えつつある。 2. オーディオブック市場について 日本のオーディオブック市場は広義で捉えた場合に60 億円前後の規模で、日本語のオーディオブックタイトル数は3 万前後となる。 ビジネス書に関しては一定量のコンテンツがあるが、人文・文芸などのジャンルに関しては数が少ない。書籍や電子書籍と比較してコンテンツ数が少なく、視聴者のニーズを満たすものにはまだまだなっていない。出版業 界としてコンテンツを増やしていきたい意向は持っているが、制作コストが電子書籍の10倍以上かかることも多く、投資に関しては慎重になっている。 そのことが、コンテンツが増えにくい原因の一つとなっている。 3. 基本計画骨子案に関する意見 現在の録音図書、点字図書の利用者は、若年時に視覚障害となった方が中心となっている。高齢になってから視力が低下、または視覚障害となった方は健常者としての生活が長 いため、よりエンターテイメント性が高いオーディオブックの方が利用しやすいと考えられる。 「1.視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等」において、公立図書館等における「(1)アクセシブルな書籍・電子書籍等の充実」について、 特に上記のような方のためにオーディオブックライブラリ充実の支援をご検討頂きたい。オーディオブックは31書籍と同じく1 冊いくらという金額で販売されているため、 図書館がオーディオブックを導入するためには、ある程度の予算が必要となる。現在の図書館にはオーディオブック導入予算はないため、 それに関する支援の充実が求められる。図書館に導入されることが固まれば、出版社としてオーディオブック制作に投資をし、コンテンツを増やしていくことも可能となる。 「3.特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援」において、オーディオブック制作の資金面での支援が行われれば、コンテンツの量をより増やしていけるようになると考えられる。(参考例:出版デジタル機構) 「6.端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援」に関して、高齢者及び視覚障碍者がスマートフォンで使ってオーディオブックを視聴するノウハウを身につけられる場が行政から提供されると望ましい。 以上。