事務連絡 令和2年12月22日   各 都道府県・指定都市・中核市担当課 殿 文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室   文部科学省 総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課自立支援振興室             視覚障害者等の読書環境の整備の推進における留意事項について 令和元年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年法律第49号。以下「読書バリアフリー法」という。)」第7条に基づき、文部科学省及び厚生労働省において「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」(以下「基本計画」という。)を令和2年7月に策定し、「「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」について(通知)」(令和2年7月14日付け2文科教第328号、障発0714第1号文部科学省総合教育政策局長、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)(以下「計画通知」という。)により施策の留意事項と併せて、お知らせしたところです。 読書バリアフリー法第8条では、地方公共団体は、基本計画を勘案して、当該地方公共団体における視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する計画策定に努めることとされています。このため、計画策定の検討にあたって、留意していただきたい事項について以下のように整理しました。 各都道府県におかれては、障害福祉、公立図書館、学校図書館、特別支援教育等の関連部署や管内の市町村に対し、各指定都市・中核市におかれては、障害福祉、公立図書館、学校図書館、特別支援教育等の関連部署に対し、それぞれ周知をお願いします。 なお、地方公共団体の計画策定状況を把握し、国の取組の参考とさせていただくため、今後各都道府県・指定都市及び中核市に対して、本事務連絡を踏まえた計画策定状況等に関する調査を実施いたしますので、御協力のほどお願いします。 記 1.計画策定等に向けたプロセス、地方公共団体内における連携体制の構築 視覚障害者、読字に困難がある発達障害者、寝たきりや上肢に障害がある等の理由により、書籍を持つことやページをめくることが難しい、あるいは眼球使用が困難である身体障害者(以下「視覚障害者等」という。)の読書環境の整備の推進にあたっては、公立図書館、点字図書館、学校図書館、福祉用具や情報通信技術等、多くの事項が関係します。そのため、地方公共団体の計画策定にあたっては、多様な関係者の意見を反映させる観点から、以下のようなプロセスが考えられます。 ・地方公共団体内における情報共有、実施施策や課題の整理 ・外部関係者も含めた会議の開催、計画内容の検討 ・計画案についてパブリックコメント等、住民からの意見聴取 ・地方公共団体における計画決定 また、地方公共団体においては、多数の関係部局の連携が必要となります。そのため、関連施策の共有、円滑な連携を図ることができるよう、社会教育部局や福祉部局を中心に担当者による連絡会を設置するなど協議体制を整備することが効果的です。 【連絡会の構成員(例)】 ・障害福祉を所管している部局 ・公立図書館を所管している部局 ・学校図書館を所管している部局 ・特別支援教育を所管している部局 更に、組織的な検討を進めるため、必要に応じて連絡会には幹部職員も加わるなど、効果的な実施をお願いします。 なお、計画通知でも記載されているとおり、計画策定にあたって開催される外部関係者も含めた会議の構成員には、視覚障害者等の読書環境の整備を支援する団体の関係者や視覚障害等当事者も参画するように努めていただくことをお願いします。 2.地方公共団体が策定する計画の内容 計画通知第2−1では、各地方公共団体において推進を求められる施策を示しておりますが、地方公共団体が策定する計画の内容については、基本計画を勘案した場合、以下の様なことが考えられますので、一例として示します。なお、実際の策定にあたっては、地方公共団体の実情や障害当事者等の状況を踏まえた内容とすることが必要です。また、視覚障害者に対する支援のノウハウが豊富な点字図書館、障害者サービスの実施をはじめ多くの方にとって身近であり通いやすい公立図書館、児童生徒の教育を支援する学校図書館など、視覚障害者等の読書環境の整備の推進にあたっては関係機関等の協力が不可欠であることから、連携がより円滑になることを目指して、計画の策定をお願いします。 なお、別添の基本計画V施策の方向性のうち、特に勘案していただきたい部分に下線を引いております。 (1)視覚障害者等による図書館の利用に係る体制の整備等(第9条関係) @ 視覚障害者等が利用しやすい(以下「アクセシブル」という。)書籍等の充実 ア 公立図書館や学校図書館におけるアクセシブルな書籍等を充実させる取組の促進 イ 点字図書館等におけるアクセシブルな書籍等の充実、製作の支援 A 円滑な利用のための支援の充実 ア 公立図書館や学校図書館における館内の整備、障害者サービスの充実を図る取組の促進 イ 学校図書館における司書教諭・学校司書の配置、司書教諭等の教員間の連携、視覚障害等のある児童生徒に対する図書館利用の促進 ウ 点字図書館におけるアクセシブルな書籍等や端末機器による読書機会の提供、アクセシブルな書籍等の利用支援 (2)インターネットを利用したサービスの提供体制の強化(第10条関係) ア 国立国会図書館やサピエ図書館のサービスの周知や利用促進 (3)特定書籍・特定電子書籍等の製作の支援(第11条関係)(電磁的記録等の提供促進は除く。) ア 各図書館間における特定書籍(著作権法第37条第1項又は第3項本文の規定により製作されるアクセシブルな書籍)等の製作ノウハウや製作された書籍等の情報共有等による製作の効率化 (4)端末機器等及びこれに関する情報の入手支援、情報通信技術の習得支援(第14条・第15条関係) ア 様々な読書媒体の紹介、サピエ等の利用方法に関する相談及び習得支援、端末機器等の情報入手や貸出支援の促進 イ アクセシブルな電子書籍等を利用するための端末機器等の給付 ウ ICTサポートセンターの普及 (5)製作人材・図書館サービス人材の育成等(第17条関係) @ 司書、司書教諭・学校司書、職員等の資質向上 ア 障害者サービスや読書支援機器の研修等の実施、障害当事者でピアサポートができる司書等及び職員等の育成や環境の整備 A 点訳者・音訳者、アクセシブルな電子データ製作者等の人材の養成 ア ノウハウ等の習得に係る研修の実施、計画的な人材の募集や養成 3.他の計画における記載の拡充について 地方公共団体の計画については単独で策定すること以外に、障害者基本計画等既存の計画に読書バリアフリーの項目を拡充すること等も考えられることから、地域の状況等を踏まえ、計画の策定をお願いします。 なお、他の計画に項目を拡充する場合においても、抽象的な文言のみを記載するのではなく、単独で策定する場合と同じように、関係部局間の連携・協議や、外部団体等からの意見聴取の実施の上で具体的な内容を記載する等、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に資するものになることが推奨されます。 4.基本計画の特徴 国が策定した基本計画は、視覚障害者等が読書を通じて文字・活字文化に触れることのできる環境整備を行うための第一期の計画として、当面の取組の方向性を示したものであり、今後、更に実態把握を行い、より具体的な目標や達成時期等についての検討や定期的な評価を行っていくこととしております。 そのため、地方公共団体におかれましても、このような基本計画の特徴を参考にしつつ、当面の取組の方向性を示した計画を策定の上、策定後も実態把握の実施や定期的な評価、より具体的な目標や達成時期等についての検討をお願いします。 5.管内市町村に対する働きかけについて 読書バリアフリー法による地方公共団体の計画策定に関して、地方公共団体には都道府県のみならず、市町村も含まれているところです。そのため、都道府県の計画については、管内市町村が計画を策定するにあたり参考となることから、積極的な策定をお願いするとともに、研修や会議等を通じて、管内市町村に対して計画策定の働きかけをお願いします。 6.策定した計画の情報提供 文部科学省及び厚生労働省では、地方公共団体の計画策定を推進するため、両省のホームページや主催する会議・研修会等において、地方公共団体の策定状況や実際に策定した事例等について周知していく予定です。 つきましては、各地方公共団体が計画を策定した場合、両省の下記連絡先に対して情報提供をお願いします。 7.関連施策の周知 視覚障害者等が各種支援施策を通じて、読書に親しむことができるようにするためには、支援施策の認知も十分されることが不可欠であり、関係部局や関係団体と協力して、地方公共団体のHP・SNS・広報誌等による周知活動に努めていただくようお願いします。また、周知にあたってはテキストや点訳データの準備など、障害特性を考慮した対応についてもお願いします。 (問い合わせ先) 基本計画、全般に関すること 文部科学省 総合教育政策局 男女共同参画共生社会学習・安全課 障害者学習支援推進室 TEL:03-5253-4111(内線3613) FAX:03-6734-3719 公立図書館・学校図書館に関すること 文部科学省 総合教育政策局 地域学習推進課 図書館・学校図書館振興室 TEL:03-5253-4111(内線3030) FAX:03-6734-3718 点字図書館・サピエ図書館等その他福祉施策に関すること 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 企画課 自立支援振興室 TEL:03-5253-1111(内線3076) FAX:03-3503-1237