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第162回国会(常会)における文部科学大臣の所信

文部科学省

(はじめに)
 第162回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。
 まず、一昨日、大阪府寝屋川市の小学校で発生した教職員三名が殺傷された今回の事件につきましては、決して起こってはならない事件であり、亡くなられた方と御遺族に対し深く哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。
 文部科学省としては、地域と連携した学校の安全対策に全力で取り組んできたところでありますが、今回の事件の原因を究明し、その結果も踏まえつつ、ハード面及びソフト面の両面から組織的、継続的な対策に取り組み、各学校における安全管理の徹底を図ってまいります。
 昨年9月に文部科学大臣に就任以来、私は、我が国が真に豊かで教養のある国家として更に発展し、子どもたちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り拓くためには、国家百年の計に立った「教育・文化立国」と「科学技術創造立国」の実現を目指すことが極めて重要であると考え、全力を傾注して取り組んでいるところです。
 今後とも、かかる基本的な認識に立って、教育改革や科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興のための施策を積極的に展開してまいります。


(「人間力向上」のための教育改革)
 世界はまさに国際的な「知」の大競争時代にあり、優れた人材が国づくりの基盤として不可欠であることから、各国とも国を挙げて教育改革に取り組んでおります。天然資源に恵まれない我が国においては人材こそが資源であることを再認識し、「子どもは社会の宝、国の宝である」という考えに基づき、新しい時代を切り拓く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、国家戦略として、人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要があります。
 このような思いから、昨年11月、私は「甦れ、日本!」と題する教育改革案を発表し、教育基本法の改正、学力の向上策、教員の資質の向上、現場主義の観点に立った学校・教育委員会の改革、地方の自由度を高めるとともに財源を確実に保障するための義務教育費国庫負担制度の改革の五つの改革案をお示ししました。その基本は、21世紀の厳しい社会を生き抜くために、「頑張る子どもを応援する教育」を推進し、「挑戦する精神」を持った子どもたちを育んでいくことにあります。
 これらの改革を進めるに当たっては、国民や学校現場の声を聞くことが第一と考え、私をはじめ、副大臣、大臣政務官、職員が全国各地の学校を訪問し、教員や保護者、子どもたちと直接対話する「スクールミーティング」を、300校を目標に実施しているところであります。 伸び盛りの子どもたちにとって今日という日は一日しかなく、一日一日が勝負であります。今日受けた教育の影響は一生に及びます。私たちは、常に考えられる最善の教育を子どもたちに与えていかなければなりません。そういう意味で、教育改革は喫緊の課題であり、私は、責任感とスピード感を持って、自ら先頭に立ち、教育改革に取り組む覚悟であります。
 教育基本法の改正については、新しい時代にふさわしい教育の基本理念を明確にするため、中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、可能な限り速やかな改正を目指してしっかりと取り組んでまいります。


(義務教育の改革)
 義務教育は、国家・社会の形成者たる国民の育成と、子どもたち一人一人が、この世に生を受けた有り難さを実感し、一生を幸せにかつ有意義に生きることができる土台をつくるという二つの目的を持っていると考えます。その根幹は、憲法の保障する教育の機会均等、教育水準の確保及び無償制にあり、これらの要請を国と地方が共同して確実に実施するため、義務教育費国庫負担制度があります。
 これについては、昨年11月の三位一体の改革に関する政府・与党合意において、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針の下、平成17年秋までに中央教育審議会において、費用負担についての地方案を活かす方策や、教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討することとされたところであります。また、その結論が出るまでの暫定措置として、平成17年度予算においては、本来の負担額から4,250億円を減額することとしており、この暫定措置を講じること等を内容とする義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しております。
 今後、教育内容の在り方、教員の質の向上、信頼される学校づくりと家庭・地域との連携、教育行政の在り方や国と地方の関係・役割分担など全般にわたり、中央教育審議会において御検討いただき、その中で、本年秋までに義務教育の費用負担の在り方についても結論を出していただきたいと考えております。
 私としては、義務教育に対する国の責任を確実に果たしつつ、地域や学校の創意工夫を生かした教育が実現できるよう、義務教育の改革を力強く進めてまいります。


(確かな学力、豊かな心と健やかな体の育成、信頼される学校づくり)
 初等中等教育においては、子どもたち一人一人に「確かな学力」を身に付けさせ、「豊かな心」と「健やかな体」を育むことが大切であります。
 各学校では、学習指導要領に基づき、特色ある取組が積極的に行われていますが、一方で、国際的な調査結果から見て、読解力をはじめ、我が国の子どもたちの学力が低下傾向にあることは深刻に受け止める必要があります。特に憂慮するのは、我が国の子どもたちの勉強時間が短く、勉強への動機付けが希薄であるなど、学ぶ意欲が乏しく、学習習慣が身に付いていないことであります。子どもたちに基礎・基本をしっかりと身に付けさせ、それを活用しながら自ら学び自ら考え、よりよく問題を解決する力などの「生きる力」を育むという現行の学習指導要領の理念や目標が十分達成されていないのではないかと考えます。
 今後、学校教育において「確かな学力」を育み、日本の子どもたちの学力を再び世界トップレベルにするため、学習指導要領全体の見直しや、全国的な学力調査の実施などによる学習到達度の検証の在り方について、中央教育審議会において御検討いただき、その検討を踏まえ、速やかに改善策を講じてまいります。また、学ぶ意欲の向上のため、子どもたちの知的好奇心を刺激し、向上心をかきたてるような教科書や授業方法の改善、少人数・習熟度別指導などきめ細かな指導の充実に努めるとともに、「学力向上アクションプラン」を引き続き実施するなど、総合的な学力向上策に取り組んでまいります。
 さらに、現場を視察するほど、学校教育の成果は教員の資質能力と熱意に負うところが極めて大きいことを再認識しております。教員が日々研鑽を積み、指導力の向上を図り、児童生徒や保護者の尊敬と信頼を得られるような存在となることが大切であり、その指導のもと、子どもたちが規律をもって学習に取り組める環境を整えることが必要であります。教員評価の徹底や十年経験者研修制度の推進など、教えるプロフェッショナルとしての教員の育成を図るとともに、専門職大学院の設置や免許更新制など教員養成・免許制度の改革について検討を進めます。
 また、「豊かな心」の育成については、学校、家庭、地域社会が一体となって、規範意識や倫理観、命を大切にする心や他人を思いやる心などの人間性や社会性を育むため、道徳教育の充実、奉仕・体験活動や読書活動の推進を図ります。家庭教育の支援にしっかり取り組むとともに、地域の子どもたちの居場所づくりや、スポーツ、文化活動を積極的に推進します。
 さらに、子どもたちの「健やかな体」と気力を育むため、体育の授業の一層の充実、運動部活動の振興などに取り組むとともに、子どもたちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう、栄養教諭制度の円滑な実施など食育・健康教育の推進に努めます。
 このほか、不登校や問題行動への適切な対応、職場体験などを通じたキャリア教育の更なる推進、LD、ADHD等の発達障害を含む障害のある児童生徒に対する特別支援教育を推進します。また、生涯にわたる人間形成の基礎を培う幼児教育の振興に取り組み、就学前の幼児の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の導入に向け、必要な準備を進めます。
 地域に開かれた「信頼される学校づくり」を進めるため、学校評価の推進、コミュニティ・スクールの設置促進など保護者や地域住民の参画による学校づくりを進めます。また、教職員の服務の確保を図り、教育行政が、法令に則って、中立公正に行われるよう、国として必要な指導を行うとともに、教育委員会については、地域の課題に主体的に取り組めるよう、制度の見直しについて検討してまいります。市町村や学校現場の権限を強化し、それぞれが創意工夫し、競い合って教育の質を高めていくことができるよう、現場主義の徹底を図ります。
 また、非常災害時に地域住民の応急避難場所としての役割も果たす学校施設の耐震化の推進等、防災対策の充実に努めてまいります。


(大学改革)
 21世紀は「知識基盤社会」の時代であり、大学を含めた高等教育は、個人の人格の形成の上でも社会・経済・文化の発展や国際競争力の確保等の国家戦略の上でも極めて重要な役割を担っております。本年1月の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」においては、同年齢の若年人口の過半数が高等教育を受けるという状況の中で、各高等教育機関が、多様な学習者の様々な需要に対応するため、各学校ごとの個性・特色を明確にし、国民や社会から期待される役割等を踏まえた教育・研究を展開すべきこと、特に大学においては、自らの選択により機能別に分化していくこと、大学の設置認可と事後評価の適切な役割分担と協調の確保により質の保証を図るべきことや、高等教育の発展を目指した社会の役割等について提言をいただいております。
 文部科学省としては、この答申を踏まえ、各大学が、その個性・特色を一層明確にしていくことができるよう、国公私立大学を通じ、競争的な環境の下で大学改革への取組を支援してまいります。このため、世界的な教育・研究拠点の形成、高度専門職業人の養成、地域貢献等の特色ある優れた取組に対する支援や、創造的な大学院教育の展開、国際化への対応、より資質の高い教員や地域医療を担う医療人の養成等、高等教育が果たしていくべき多様な役割に応じた支援に努めてまいります。
 また、今国会において、教育・研究の活性化及び国際的な通用性の向上の観点から、短期大学を卒業した者に学位を授与するとともに、大学の教員組織の整備を行うための法律案を提出することとしております。
 昨年4月に法人化した国立大学については、各大学が自主性・自律性を十分に発揮し、教育・研究の一層の活性化を図り、国立大学としての社会的役割を踏まえて、個性豊かな大学づくりを進めることができるよう、国として必要な支援に努めます。その施設整備についても国立大学等施設緊急整備五ヵ年計画に基づき着実に実施してまいります。
 加えて、設置認可制度の的確な運用を図りつつ、国公私立大学を通じた第三者評価制度の円滑な実施を進め、包括的な大学の教育・研究の質の保証システムの充実に向けて積極的に取り組んでまいります。
 さらに、私立学校の一層の振興に努めるとともに、教育を受ける意欲と能力のある者の学習機会を確保するため、奨学金の充実など学生への支援にも精力的に取り組んでまいります。


(科学技術・学術の振興)
 科学技術・学術は、国民の生活や経済活動を持続的に発展させ、環境問題など地球規模の問題の解決に大きく貢献するなど、我が国の、そして人類の希望ある未来を切り拓く鍵となるものです。
 まず、科学技術関係人材の養成については、学校段階から研究者・技術者の研究環境の整備まで総合的に取り組んでまいります。
 また、ニュートリノ研究、加速器科学、南極観測等をはじめとした国際水準の独創的・先端的基礎研究を総合的に発展させるなど、新たな「知」を切り拓く基礎研究を着実に推進します。科学技術基本計画における重点分野であるライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発を強力に推進するとともに、融合領域の研究開発を積極的に推進します。安全・安心で持続的に発展する社会を実現する科学技術を振興してまいります。
 さらに、国の存立の基盤となる原子力、宇宙、地震・防災、海洋等の研究開発を戦略的に推進してまいります。特に、宇宙開発については、信頼性向上のために万全の対策を講じ、我が国の基幹ロケットであるH‐2Aロケットにより運輸多目的衛星新一号の打ち上げを確実に実施し、国民の期待に応えてまいります。また、本年10月に予定している我が国の原子力研究開発の中核的機関である独立行政法人日本原子力研究開発機構の発足に向けて全力で諸準備を進めるとともに、改造工事の地元了解が得られた高速増殖原型炉「もんじゅ」をはじめとする高速増殖炉サイクル技術などの研究開発を積極的に進めてまいります。国際熱核融合実験炉(ITER(イーター))計画については、日本への誘致に向けて引き続き最大限の努力をするなど、人類の未来のために主導的な役割を果たしてまいります。
 加えて、科学研究費補助金等の競争的資金の抜本的拡充、大学等における知的財産の戦略的な取得・活用の促進と大学発ベンチャーの創出支援など産学官連携の更なる推進を図るとともに、地域科学技術の振興、先端計測分析技術・機器の開発や世界的な先端大型研究施設等の活用促進など研究基盤の整備・強化を推進してまいります。また、国際交流の推進、科学者等による社会への情報発信の支援等に総合的に取り組むとともに、我が国が第一級の国家として競争力を持ち、役割を果たしていくために重要な「基幹技術」の在り方について、検討を進めてまいります。
 政府における研究開発の中核を担う文部科学省としては、これらの施策を通じて第二期科学技術基本計画の総仕上げのための取組を強化するとともに、平成18年度から始まる第三期科学技術基本計画の策定に関し、人材・技術など知的資産の世界的な獲得競争の激化などの情勢を踏まえつつ、総合的な検討を進めてまいる所存です。


(生涯学習、スポーツ、文化の振興)
 人々が生涯にわたり自己実現を図ることができるよう、生涯学習の環境整備や大学・専修学校における社会人のキャリア・アップのための教育を推進してまいります。また、フリーターやニートが社会問題化していることから、若者が勤労観、職業観を身に付け、明確な目的意識をもって職に就くとともに、仕事を通じて社会に貢献することができるよう、「若者自立・挑戦プラン」を一層強化します。
 昨年のアテネオリンピック競技大会における日本選手団の活躍は、日本中に大きな感動を与えてくれました。スポーツの振興は明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で不可欠であり、スポーツ振興基本計画に基づき、ナショナルトレーニングセンターの中核拠点の整備など世界で活躍するトップレベルの競技者の育成等に取り組むとともに、国民の誰もが身近にスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現を目指して地域のスポーツ環境の整備に努めます。
 また、子どもの目標やあこがれの地となるような全国的なスポーツ大会の拠点づくりを推進するとともに、子どもの体力向上を図るなど、スポーツの振興を進めてまいります。
 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものです。経済を含め日本社会全体を元気にするためには、諸外国でも重視されつつある「文化力」の向上を図ることが極めて重要です。我が国の「顔」となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、「文化芸術創造プラン」や「『日本文化の魅力』発見・発信プラン」を推進するとともに、国民が文化ボランティアなどにより自ら積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境を整備します。また、文化的景観の保護など文化財の保存・活用、地域文化の振興、文化財分野における国際協力や国際文化交流に積極的に取り組みます。さらに、新しい時代に対応した著作権等の施策を推進するとともに、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう努めてまいります。


(国際化等への対応)
 我が国が、国際社会においてより魅力ある国、信頼される国となることは極めて重要な課題であり、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術などの日本の経験を生かした協力・交流に力を入れます。また、留学生受入れ体制の充実や日本人の海外留学の支援にも取り組んでまいります。さらに、「英語が使える日本人」の育成、教育の情報化、環境教育や人権教育の推進、男女共同参画社会の形成等に努めます。


(諸課題への取組)
 規制改革や構造改革特区については、今後とも引き続き、地方公共団体や民間の創意と工夫を活かし、教育・研究の活性化という観点から、できるだけ柔軟に取り組んでいきたいと考えております。また、個性ある豊かな地域づくりを支援するため、地域再生の観点から、地域の実情に合わせた制度の見直しや施策の連携を進めてまいります。このほか、知的財産戦略の推進、公益法人改革、独立行政法人の組織・業務の見直し等の重要な課題に積極的に対応してまいります。


(むすび)
 私といたしましては、国民の強い期待を真摯に受け止め、文部科学行政全般にわたり誠心誠意取り組んでまいる決意です。委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。



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