平成15年度全国高等専門学校長会議における文部科学大臣挨拶 |
平成15年度全国高等専門学校長会議における文部科学大臣挨拶
全国高等専門学校校長会議の開催に当たり、校長各位の日頃のご尽力に深く敬意を 表しますとともに、一言ごあいさつ申し上げます。 我が国の経済発展の基盤を確かなものとし、より活力ある社会を実現していくため には、ものづくり技術の振興が極めて重要であります。申し上げるまでもなく、我が 国の社会経済情勢は、現在極めて厳しい状況にあるわけですが、逆にそうした状況で あるからこそ、「知」の世紀をリードし、ものづくり技術の振興を担うトップレベル の人材育成に対する社会の期待が今までにないくらい高まっていると言っても過言で はなかろうと思います。 そうした意味において、昨年、ノーベル物理学賞を東京大学名誉教授の小柴昌俊氏 が、また、ノーベル化学賞を株式会社島津製作所の田中耕一氏が、それぞれ受賞され たことは、我が国初の同一年度ダブル受賞ということもあいまって、国民に自信と希 望を与え、我が国全体にとって大きな誇りと励みになりました。 お二人に代表されるような創造性に富んだ優秀な研究者・技術者の育成に当たって は、「知の創造と継承」を担う高等教育の果たす役割は極めて重要なものがあり、そ の中でもとりわけ高等専門学校は、実践性と創造性を兼ね備えた技術者の養成に極め て大きな役割を果たしていると承知しております。 また、少子化に伴う社会構造の変化、社会のグローバル化や情報通信技術の進展に 伴う高等教育機関における国を超えた競争的環境の醸成など、国公私立を通じた教育 を取り巻く全体的な状況は大きく変化しております。 今回の国立大学及び国立高等専門学校の法人化は、まさにこのような状況の中で、 我が国の高等教育の在り方を大きく転換し、更なる発展を図るためのものであります。 国立高等専門学校の法人化に関する具体的な制度設計や関連する諸問題等について は、後ほどそれぞれの担当から詳しく説明させますが、法人化の意義について端的に 申し上げれば、「国立高等専門学校の裁量の拡大」と、それによる「個性化・活性化 ・教育研究の高度化の一層の推進」ということになろうかと思います。 もう少し具体的に申し上げますと、従来の国立高等専門学校は、国の行政機関の一 部として位置付けられていたため、学校の組織・定員や毎年度の予算に対しては、国 による日常的な関与や様々な規制がございました。そうした国の関与・規制について は、今回の法人化により大幅に緩和されることとなり、予算執行面での弾力化や組織 運営面での多様化・個性化が推進されるものと考えております。 また、すべての学校を1つの機構として法人化することによって、従来各学校がそ れぞれ行っていた業務の効率化が図られるとともに、インターンシップの組織的推進、 教員研修の充実、新たな教材の開発など、実践的技術者養成のための各学校の枠を超 えた共通的な課題に対しても、機構として共通的に取り組み、各学校にその成果を還 元することが可能となります。 各学校においては、機構が行うこれらの取組の基礎の上に立って、特色ある教育活 動や学生サービスの向上に重点的に取り組むことが可能となり、これにより、その自 主性を一層発揮し、個性化・活性化が推進されるものと考えております。 また、国立高等専門学校の法人化については、国立大学と異なり、独立行政法人通 則法に基づく法人化としておりますが、その運用において、教育研究機関である国立 高等専門学校の特性に配慮することは当然であり、このため、 ![]() 定するに当たっては、国立高等専門学校の実態や意向が十分踏まえられたものとなる よう、機構と十分に連携しながら作成する、 ![]() が機構に対する評価を行うに当たっては、高等専門学校の教育研究の特性に配慮する など、透明性を確保しつつ、適切な運用を図ってまいりたいと考えております。 ぜひとも、校長各位におかれては、今回の法人化を大きなチャンスであるととらえ、 各学校の教育研究活動の一層の充実に向けた自律的な取組を推進していただきたいと 考えております。 法律が成立し、来年4月の法人化に向けて、各学校におかれては、ご準備をさらに 進めていただくことになりますが、文部科学省といたしましては、各学校の自主性・ 自律性を十分に尊重しつつ、制度の大きな移行期という状況に対する責任をも自覚し た上で、引き続き必要な情報の提供や相談への対応に適切に努めてまいりたいと考え ております。もちろん、その際には、国立高等専門学校協会とも引き続きしっかりと 連携・協力しつつ対応してまいりたいと考えております。 また,国立高等専門学校の法人化を契機に国としての支援の拡充についても,一層 の努力を傾注してまいる所存です。 以上これまで国立高等専門学校の法人化について申してまいりましたが,新しい機 構が行う学校枠を超えた共通的な課題に対する取組については,公私立を含めた高等 専門学校教育全体の充実に寄与するものと考えております。また,今後とも,国立の みならず,公私立高等専門学校に対する支援にも配慮し,国公私立を通じた高等専門 学校教育の充実が図られることが大切であると考えております。 さらに、法人化を受けて、文部科学省の事務体制の見直しと職員の意識改革も必要 であります。これまでの予算編成等に見られるような文部科学省の各局課による国立 学校に対する具体かつ詳細な関与を排すること、国公私立を問わず高等教育のグロー バル化や生涯学習社会に対応し、国際競争力の強化に向けて政策立案機能を重視した 組織編成とすること、さらには、日本学生支援機構の創設をも踏まえ、学生サービス 機能の強化に対応した事務体制とすることなど、必要な見直しを進めてまいりたいと 考えております。 なお、現在、中央教育審議会の大学分科会において、高等教育のグランドデザイン について幅広くご審議をいただいているところでありますが、高等教育機関全体にお ける専門職業教育の在り方を視野に入れた高等専門学校の位置付けについても、今後、 ご審議いただくこととしており、各学校におかれましても、こうした審議の動向にご 注目いただきたいと考えております。 ここで一点、付言したいことがございます。それは、国立高等専門学校の法人化が それ自体を目的とするばかりでなく、現在進めている初等中等教育、高等教育を通じ た、大きな教育の構造改革というべきものを、真に実現するために不可欠な改革と言 えるからであります。 21世紀の我が国の未来を見据えるとき、人材養成の重要性は増しており、優れた 教育に対する国民の期待は極めて大きいものがあります。本日、資料の一つとしてお 手元にお配りしているパンフレットは、小学校から大学まで各学校段階を通じ、「画 一と受身から自立と創造」を目指し、「新しい世紀を切りひらく心豊かでたくましい 日本人の育成」という高い理想のもとに、目下、様々な教育改革が進んでいることを 整理してお示ししております。 この考え方は、すでに初等中等教育関係者にも伝え、4つの具体的理念のもとに改 革に取り組んでもらっております。初等中等教育での学力低下を食い止め、真の「確 かな学力」を身につけさせるとともに、「豊かな心」を備えた子どもたちを育成する べく、国も地方も全力を注いでおりますが、遠からずそうした成果を体現した子ども たちが高等専門学校の門戸を叩くことになります。どうか高等専門学校側におかれて も、それに十分応える教育体制をご準備いただきたいと存じます。 最後になりますが、今後とも国立、公立、私立を問わず、校長各位が強力なリー ダーシップを発揮して各学校の教職員をまとめ上げて、大学とは異なる特色を有する 高等教育機関として、社会の期待に応え、より活発で充実した特色ある教育研究活動 を展開し、我が国社会の発展を担う創造性豊かな実践的技術者の育成に一層のご尽力 をお願い申し上げます。 |