付録4
平成20年3月11日
宇宙航空研究開発機構
本資料は、光衛星間通信実験衛星(OICETS(オイセッツ))の評価票でいただいたご意見の中で、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))から説明が必要と事務局が判断されたものについてJAXA(ジャクサ)から追加の説明をまとめたものである。
1 | 技術試験衛星である限り、次なるプロジェクトおよび衛星にどのように生かされるか。 |
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2 | 1μrad(マイクロラジアン)は5キロメートル先の5ミリメートルの目標に相当する精度であり、測地・測距に適用した場合に現状の精度を大幅に上回る可能性がある。地殻変動などによる地表面の変化などへの応用が可能ではないか。 |
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3 | プロジェクトの成果について以下のような意見がある。JAXA(ジャクサ)あるいはメーカ内にどの様な形でまとめられており、継承されているのかを説明して頂きたい。
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技術試験衛星である限り、次なるプロジェクトおよび衛星にどのように生かされるか。
現在はALOS及びJEM運用のために、Ka帯が使用されているが、光通信は今後のデータ量の増大に伴い必須となる。
OICETS(オイセッツ)の開発・軌道上実験で得られた成果(高精度光学性能維持技術、レーザ光の高精度捕捉・追尾・指向技術、開発・検証に必要な測定・試験技術)を踏まえ、次の課題は以下の通りである。
観測に影響を与えない衛星間通信機器の低擾乱化、及び小型衛星への搭載の実現を目指す。
OICETS(オイセッツ)の送信レーザ光は、光衛星間通信機器内の光学ベンチの熱歪み等により指向バイアス誤差が発生するため、地上の熱真空試験結果から推定した「補正値」を用いて補正し軌道上実験を行なう計画であった。
しかし、軌道上実験の際、この補正値を超える指向バイアス誤差の残差が見つかった。
(その後、指向バイアス補正実験を実施することにより、最適な補正値として「X軸方向:2.5μradian,
Y軸方向:1.8μradian」を推定し、通信品質の改善等を実施)
指向バイアス補正実験により、補正はできたもののバイアス誤差の原因(打上げ時の振動・衝撃、軌道上での熱歪み等によるものと考えられる)の特定までには至らなかった。
今後に向けては、温度変化に対してクリティカルなポイントに対しては、分解能が高い温度センサを多数装着する等の軌道上で発生する現象の原因推定に寄与できるような設計上の配慮が必要である。
光衛星間通信機器に使用している光アンテナ(カセグレン方式の反射光学系)は、熱歪みを極力抑えるために、光アンテナを構成する部材(主鏡・副鏡・副鏡・副鏡支持部)を全て低熱膨張ガラスで構成した。
ガラスのみによる構造体は初めての経験であり、そのため、打上時の荷重等に耐えうる設計及び製造品の微細亀裂等の検証を必要とし、開発期間が延びた一因にもなった。
1μrad(マイクロラジアン)は5キロメートル先の5ミリメートルの目標に相当する精度であり、測地・測距に適用した場合に現状の精度を大幅に上回る可能性がある。地殻変動などによる地表面の変化などへの応用が可能ではないか。
OICETS(オイセッツ)で実現した高精度指向技術(1μrad(マイクロラジアン))は以下のような観測系将来ミッションへの応用が期待できるが、この技術の具体的な応用については、今後研究者及びユーザを交えた議論により、具体化の可能性について検討していく必要がある。
現在JAXA(ジャクサ)において、大型ミラーの焦点面調整への使用の可能性については検討中である。
プロジェクトの成果について以下のような意見がある。JAXA(ジャクサ)あるいはメーカ内にどの様な形でまとめられており、継承されているのかを説明して頂きたい。
JAXA(ジャクサ)衛星プロジェクトにおける成果の継承は以下の様に行われている。
OICETS(オイセッツ)保管にあたって、構成品目毎に保管条件を以下のように整理した。
これにより、OICETS(オイセッツ)の保管寿命を制限する要素は、以下となった。
上記の評価、管理については報告書にまとめられている。
光学機器に関し、最も配慮したことは、鏡面の腐食とコンタミネーション(汚染)防止(注2)であった。
通常の管理で腐食が懸念される測距のためのレーザ反射体については、衛星から取り外し、保管容器内で保管した。
また、OICETS(オイセッツ)では、粒子状/分子状コンタミネーションの両方による汚染防止を図る防止カバーの採用、光学素子の性能劣化につながり汚染後の除去が困難な、不揮発性残渣(NVR)のモニタリング等の活動を行なった。(事後評価資料 p.20)
OICETS(オイセッツ)では宇宙環境下で、レンズ、ミラー等の光学機器の熱歪による性能劣化を抑えることは重要であり、低熱歪み光学ベンチ、高精度な熱制御及びキネマティックマウント(熱歪みを伝導させない特別な構造)により、光学性能が劣化しないような対策を講じた。