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4.PLANET−Cプロジェクトの事前評価結果

(1) プロジェクトの目的(プロジェクトの意義の確認)
  PLANET−Cプロジェクトは、惑星を取り巻く大気の運動のしくみを本格的に調べる世界初のミッションとして、金星の雲の下に隠された気象現象を、新開発の赤外線観測装置を用いて金星周回軌道上から精密観測することにより、従来の気象学では説明できない金星の大気力学(惑星規模の高速風等)のメカニズムを解明し、惑星における気象現象の包括的な理解を得ることを目的としている。このように金星の気象現象を把握することは、多様な環境に適用できる普遍的な気象学の構築につながると期待できる。
 また、海外においては、欧州宇宙機関(ESA(イサ))が金星探査計画Venus Expressにより金星の大気組成の観測を行う計画を進めているが、金星の大気循環に焦点を当てた観測はPLANET−Cプロジェクトが世界で初めてであり、我が国独自の着眼として評価できる。PLANET−Cプロジェクトは、世界の金星探査計画においても、Venus Expressと相補的な観測を行う探査計画として適切に位置付けられており、計画の有効性が認められる。
 以上により、PLANET−Cプロジェクトの目的は、太陽系の起源に関する普遍的な知識・知見を獲得するものとみなすことができ、「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」及び「宇宙開発に関する長期的な計画」に規定された宇宙開発利用の意義、目標及び方針等を踏まえ、的確に具体化されている。

  判定:妥当

(2) プロジェクトの目標
  PLANET−Cプロジェクトは、金星周回軌道上から2地球年にわたり継続的に気象観測を行うことを目標として、明確に設定している。これは、前項のプロジェクトの目的に照らして十分に意欲的であり、目的に応じた要求条件を満たしていると判断できる。
 成功基準については、観測の具体的な目標がミニマムサクセス、フルサクセス、エクストラサクセスとして段階的に記述され、目標とする観測期間が、金星の大気構造の変化の時間スケールとの関連で設定されており、プロジェクトの達成度を客観的に判断できるものとなっている。なお、成功基準はより高いレベルを確実に達成することが求められることから、プロジェクトチームとしてはエクストラサクセスまでのすべての目標を達成するべく高い意識で取り組むことが望まれる。
 以上により、プロジェクトの目標は、設定された目的に照らし的確であると判断する。

  判定:妥当

(3) 開発方針
  PLANET−Cプロジェクトの開発方針については、我が国初の内惑星ミッションとしての確実な開発、過去の開発経験を継承した信頼性の向上、世界最高レベルの観測装置の開発、研究者とメーカーが緊密に協力する旧宇宙科学研究所の伝統的な開発方式の維持等が示されており、開発に当たっての基本的な事項をまとめたものとなっている。
 探査機の設計及び試験については、PLANET−Cプロジェクトが我が国初の内惑星ミッションであることにかんがみ、その観点から特に入念な検討を行うことが肝要である。また、第20号科学衛星「はやぶさ」及び第18号科学衛星「のぞみ」で開発した技術を継承することは適切であるが、これらの探査機において発生した不具合の原因究明及び対策が徹底して行われていることが前提となることに留意する必要がある。
 以上により、開発方針は、「衛星の信頼性を向上するための今後の対策について」で示された考え方を考慮しているが、本プロジェクトが我が国初の内惑星探査計画であり、多くの潜在的リスクが考えられること及び過去の探査機の不具合を踏まえた十分な対策が求められることから、概ね妥当であると判断する。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
  「はやぶさ」及び「のぞみ」において発生した不具合の原因究明及び対策を徹底して行い、信頼性及び寿命等の向上に取り組むことを期待する。

  判定:概ね妥当

(4) システム選定及び設計要求
  PLANET−Cプロジェクトにおいては、平成13年度の事前評価結果を踏まえ、システム選定及び基本設計を実施しており、要求されるシステム要件をすべて満足する見込みが得られている。
 システム選定及び基本設計に当たっては、技術の成熟度の分析を踏まえ、「はやぶさ」及び「のぞみ」で開発した技術を継承することを基本としている。ただし、PLANET−Cプロジェクトのミッションが、熱環境の厳しい金星周回軌道からの観測を行うものであることを考えると、熱設計は特に留意すべき課題であると考えられる。また、軌道制御用アポジエンジンについては、金星周回軌道への投入時のみならず、軌道投入誤差の修正等においても使用する計画であるため、このような複数回使用の条件下における信頼性の確保に対し、十分な確認が必要である。
 新規開発項目は、観測系、通信系、電源系に絞られており、いずれも金星周回軌道における環境に適合するために、既存技術をベースとした開発を行うものである。これらの新規開発部分には、ミッション達成のために重要な役割を果たすものが含まれていることから、入念な試験を行うことが求められる。現時点の開発状況は、一部評価試験を実施中であるものの、概ね詳細設計に移行できる状態となっている。
 また、打上げが平成22年度に遅れ、金星への到着に必要なエネルギーが増大したことに伴い、地球離脱のためのエネルギーをロケットでまかなう新たな軌道計画を採用し、探査機の搭載燃料を大幅に削減しているが、このことは、探査機としては好ましい方向への変更であり、妥当である。
 打上げロケットがミューファイブロケットからH−2Aロケットに変更されたことについては、衛星側の基本設計は変更不要であること及びロケットとのインターフェースには問題がないことが確認されているが、射場での試験等、衛星側として引き続き十分な注意を払う必要がある。
 以上により、システム選定及び設計要求については、目標の達成が期待できるものとなっており、概ね妥当である。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
  熱設計及び軌道制御用アポジエンジンは、既存技術を継承することとしているが、異なる環境条件及び使用条件における信頼性の確保には、特に留意すべきである。

  判定:概ね妥当

(5) 開発計画(スケジュール、資金計画、実施体制及び設備の整備計画等)
 開発スケジュールについては、ロケットの信頼性対策や予算計画等の理由により、プロジェクトの開始が2年遅れたため、打上げ年度を当初計画の平成18年度から平成22年度に変更している。しかしながら、金星への到着が平成22年度末の到着と1年遅れにとどまっている点は評価できる。平成24年まで観測予定のVenus Expressとの共同観測を実現することは、金星を力学・化学の両面から精密に観測するために重要と考えられるため、PLANET−Cプロジェクトの打上げ時期が更に延期されることのないように、入念なスケジュール管理を行うことが必要である。ただし、Venus Expressとの共同観測を優先したスケジュールを立てることにより、本来必要な取組みがおろそかになることのないようにするべきである。
 資金計画については、開発費の総計が250億円(打上げ費用を含む)であり、打上げロケットの変更による増額を除くと、当初の資金計画に沿ったものとなっている。諸外国の惑星探査機との資金計画の比較からも、資金計画は概ね妥当といえる。
 実施体制については、プロジェクトマネージャを中心とした責任体制とJAXA(ジャクサ)内の技術支援体制、国内の大学及び研究機関の研究者の参加、Venus Expressを計画する欧州宇宙機関(ESA(イサ))との協力等が示されており、明確な体制が構築されている。
 以上により、開発計画については、特段の問題は認められず、スケジュール、資金計画、実施体制等は概ね妥当であると判断する。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
  Venus Expressとの共同観測については、ミッションの達成に必要な取組みがおろそかになることのないように明確な判断基準を設定した上で、実現に向けて推進するべきである。

  判定:概ね妥当

(6) リスク管理
  PLANET−Cプロジェクトにおいては、「のぞみ」及び「はやぶさ」において発生した不具合を踏まえ、搭載機器の技術の成熟度に合わせて質量及び電力のマージンを設定するとともに、想定される単一故障点については可能な限り冗長構成としている。
 また、Venus Expressとの共同観測を実現するため、リスク管理の一つとしてスケジュール管理を行うこととしている。
 リアクションホイールについては、「はやぶさ」に用いたミューファイブロケットの振動条件に対応した改修ホイールではなく、実績のある標準ホイールを実績のある仕様範囲内で使用することを基本に、製造メーカにおける標準品ホイールを使用することとしているが、今後の振動環境の低減の検討結果等を踏まえて最終的に判断することとしている。また、「はやぶさ」では、重量の制約と観測ミッションではないことから2台のホイールでも姿勢制御要求をみたせるよう、3台構成としたが、PLANET−Cプロジェクトにおいては、1台故障しても3軸制御が行える、標準仕様の4台構成を採用している。さらに、万一全てのリアクションホイールが故障してもミッション喪失に直結しないように、姿勢制御用スラスタによるバックアップが可能な設計としている。JAXA(ジャクサ)においては、「はやぶさ」のリアクションホイールの故障を契機に、JAXA(ジャクサ)全体としてリアクションホイールの信頼性確保の対処方針を検討しているところであるが、PLANET−Cプロジェクトにおいては、上に述べた諸点から、今回の製造メーカにおける標準品を使用しようとしている判断には、特に問題があるとは認められない。
 なお、振動環境の低減の方策等、信頼性確保の方策について引き続き慎重な検討が求められる。
 また、内惑星探査においては、熱環境や放射線環境が厳しくなることから、この点についても入念なリスク管理を実施するべきである。
 以上により、リスク管理については、リアクションホイールの信頼性確保の方策について引き続き慎重な検討が求められること、及び内惑星探査に伴う新たな設計条件に対する具体的なリスク管理が必要なことから、概ね妥当とする。
 なお、今後に向けた助言は、以下のとおりである。
  リアクションホイールについては、PLANET−Cプロジェクトとして、実績のある標準ホイールを実績のある仕様範囲内で使用することを基本として対処しようとしているが、信頼性確保の方策について引き続き慎重な検討が求められる。
内惑星探査に伴う新たな設計条件に対する具体的なリスク管理が必要である。

  判定:概ね妥当

(7) 総合評価
  PLANET−Cプロジェクトは、我が国初の内惑星探査計画として、金星の雲の下に隠された気象現象を観測し、世界に先駆けて金星の大気力学を解明することを目指した極めて意欲的な計画である。本プロジェクトの成果を様々な環境に適用できる惑星気象学の構築につなげることは、太陽系に関する根源的な知識・知見を獲得するとともに、地球上の環境変動のメカニズムの解明の糸口を与えるものであり、知の創造に大きく貢献するものである。
 推進部会は、今回のPLANET−Cプロジェクトの「開発」への移行のための評価において、プロジェクトの目的、目標、開発方針、システム選定及び設計要求、開発計画及びリスク管理について審議を行い、現段階までの計画は、具体的かつ的確であると判断した。
 以上を踏まえ、推進部会としては、PLANET−Cプロジェクトが平成19年度から「開発」に移行することは妥当であると評価する。
 なお、今回の評価においては、「はやぶさ」及び「のぞみ」からの改善点を踏まえた信頼性及び寿命等の向上、熱設計及び軌道制御用アポジエンジンの信頼性の確保、Venus Expressとの共同観測の実現に向けたスケジュールに関する判断基準の明確化、リアクションホイールに関する信頼性確保の方策、内惑星探査に伴う新たな設計条件に対する具体的なリスク管理等について、意見が提出された。JAXA(ジャクサ)においては、これらの助言について今後適切な対応をとり、しかるべき時期に宇宙開発委員会に報告することとする。

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