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宇宙開発委員会

2001/07/05 議事録
宇宙開発委員会 計画・評価部会(第5回)議事録


宇宙開発委員会 計画・評価部会(第5回)議事録

1.日時 平成13年7月5日(金)
  14:00〜16:15

2.場所 経済産業省別館10階T28会議室

3.議題 (1) 輸送系全般について
  (2) H−2Aロケットについて
  (3) J−1ロケットについて
  (4) 将来型輸送系について
  (5) エンジン中核体制(3機関連携)について
  (6) 情報収集衛星について
  (7) その他

4.資料 計画5-0-1 宇宙開発委員会計画・評価部会(第3回)議事録
  計画5-0-2 宇宙開発委員会計画・評価部会(第4回)議事録(案)
  計画5-1 宇宙輸送系全般
  計画5-2 H−2Aロケットについて
  計画5-3 J−1ロケットについて
  計画5-4 将来型宇宙輸送システムの研究開発
  計画5-5 3機関連携事業エンジン中核研究開発プロジェクトについて
  計画5-6 情報収集衛星システム開発及び次期情報収集衛星1研究の進捗状況
  計画5-7 第3回計画・評価部会で出された質問票への回答

5. 出席者
     部会長長 長柄喜一郎
     宇宙開発委員 井口雅一(委員長)、栗木恭一、五代富文
     特別委員 上杉邦憲、佐藤勝彦、澤岡昭、鈴木敏夫、高柳雄一冨田信之、中西友子、宮崎久美子、森谷正規

6.議事内容

 長柄部会長 

   それでは、定刻になりましたので、第5回の計画・評価部会を開催したいと思います。
    大変猛暑の中を皆様お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は、宇宙開発事業団の輸送系を中心に審議を行いたいと思いますので、宇宙開発事業団の輸送系担当の三戸理事においでいただいております。
   議題に入る前に、お手元の資料を確認願いたいと思います。もしも欠けているものがございましたら、事務局の方に申し出ていただきたいと思います。なお、5−0−1という資料は前々回の議事録でございまして、これは確定版でございます。それから、5−0−2という資料は前回の議事録の案でございます。御覧いただきまして、修正意見等ございましたら、来週中ぐらいに事務局まで申し出ていただきたいと思います。そうした意見により修正したものを次回に配付したいと思います。
    本日は、2時間半の時間を予定しておりますが、最初の2時間ほどで宇宙開発事業団のロケット関係の現況を聞いて、その審議をやり、それから残りの30分ほどになりましょうか、4時ごろから情報収集衛星、内閣の方からでございますけれども、これの現況について審議したいと思っております。よろしくお願いします。
    それでは、最初に輸送系全般についてということで、宇宙開発事業団の方から三戸理事でございますが、簡単に説明をお願いいたします。その後で、H−2ロケットとかJ−1ロケット、将来型輸送系等について個別にお聞きしたいと思います。じゃ、お願いします。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   三戸です。よろしくお願いいたします。
    それでは、最初に宇宙輸送系全般についての御説明をいたします。
    まず、NASDAの宇宙輸送系の研究開発目的ですが、ここに書いてありますように、必要なときに必要な物質を宇宙空間に展開するということで、かつ打上げ需要に対して柔軟に対応するということを目的といたしまして、現在研究開発を実施しております。
    今までNASDAが開発してきましたロケットがここに並んでおります。まず最初に開発しましたのはN−1ロケットです。N−1ロケット、N−2ロケットと続いて、これらは技術導入によって開発しております。これはなぜかといいますと、早期に実用衛星を打上げるということが命題でありましたので、初歩からの開発でなくて、技術導入して実用衛星を打上げました。
    それから、だんだん力がついてきましたので、H−1ロケットにおきましては、2段、3段を国産化したということで、段階的にそういった国産技術を使うように発展してまいりました。
    それから、このH−1ロケットまでは、日米の政府間協定というのがありまして、日本の宇宙開発事業団のロケットで外国の衛星を打つということは、必ずしも勝手にできる状況ではなかったということもありました。そして、さらに力がついてきたということで、純国産によって自主技術でH−2ロケットを開発いたしました。それから、現在、H−2Aロケットを開発しているわけですが、これにつきましては、昨日の宇宙開発委員会で1号機を8月25日に打上げることを了承していただいております。これにつきましては、H−2ロケットをさらに信頼性を向上させ、あと外国との競争においてもある程度対抗できるように打上げコストを低減しております。さらに打上げ能力を上げるということで、現在、H−2Aロケットの増強型について検討しているところでございます。
    それで、これらのロケットの打上げ能力ですが、N−1ロケットは静止衛星で130キロ程度の能力を持ったロケットで、N−2で350キロ、H−1で500キロということで暫時打上げ能力を上げていったわけですが、このH−2ロケットになって500キロから2トンになったということで、ここで相当の技術的な飛躍が行われました。昨今、H−2ロケットで2回続けて失敗したわけですけれども、この技術的な飛躍があったということも1つの遠因になっているかもしれません。そういうことで、現在、そのH−2ロケットの不具合を反省いたしまして、H−2Aロケットを打上げようとしているわけでございます。
    今まで全部合わせまして31機のロケットを打ち上げまして、ほとんど成功しているわけですけれども、N−1ロケットで1機、衛星分離のときの不具合により失敗しております。あとは、先ほど言いましたH−2ロケット、5号機と8号機において失敗しております。
    J−1ロケットについては、後ほど詳細説明がありますので、省略します。
    次に、J−1改良型ロケットですが、これは現在、研究中ということで、民間主導によるロケット開発をうたい文句にしております。NASDAが現在研究しておりますのは、2段のエンジンと、この四角く書いてあるところでございます。1段等につきましては、民間がみずから開発するように、そのような開発体制で現在研究しているところでございます。このJ−1改良型ロケットの打上げ能力は、低軌道で3トンを目指して開発しているところでございます。
    将来型宇宙輸送系につきましては、後ほど詳細説明がありますので、省略いたします。
    次に、宇宙輸送システム本部の体制ということで、理事長以下、このような体制で現在行っているところでございます。
    次は、H−2A及びJ−1ロケットの打上げ計画でございます。
    以上、簡単ですけれども、全体の概要説明を終わらせていただきます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして、何か御意見なり質問ございますでしょうか。

 鈴木特別委員 

   全般的な話というより、むしろ私ども産業界の視点から、産業化の加速という視点から、若干、計画の厳守と開発の加速を是非お願いしたいので、ちょっと一、二申し上げさせていただきたいと思います。
    まず、H−2Aにつきましては、もう皆さん御案内だと思いますが、産業界としても標準型、増強型というのは、これから一番世界のマーケットが大きいところであって、力を入れて事業化を進めていこうということで、現在取り組みをしております。現在のところの予定は、H−2A標準型が先ほどの話で8月25日ということで、これはぜひ成功させていただきたいと、私ども産業界も全力投球したい。
    その後の増強型について、現在2003年度、ほぼ初号機打上げということだろうと思いますが、産業界としてはこれが最低ぎりぎり、産業化で頑張れる限界ではないかと思っておりまして、ぜひ最悪でも2003年度打上げを目指して、予算の確保と開発の推進をしていただきたいと思っております。
    既に96年に海外の衛星企業から大量に受注しておりますが、残念ながら打上げ失敗で不幸なことがあって、今、再見直しを迫られているところなんですけれども、これを再度立ち上げるためにも、是非この2001年と2003年の増強型の立上げは、最悪でもひとつ必達に向けて頑張っていただきたいというのが、まず1番目の要望でございます。
    それから、2番目の要望として、この中型ロケットでJ−1改良型、今の御説明でも1段は民間みずからやるということで、実はこの分野につきましても、結構低軌道周回衛星のマーケットがございまして、やはり年間で15から25機の世界マーケットがあります。産業界としても、この分野も目指していきたいと。海外のロケットメーカーが大体こういうロケットファミリーとかシリーズを、ここで言う中型ロケットから増強型の範囲まで全部そろえてきているものですから、やはり世界のマーケットに打って出るためには、この中型ロケットも早く実用化したいということで、私ども民間は、一応対応の体制を今、整えて、事業化に向けて取り組んでおりますので、ぜひNASDAさんの方の開発計画、これも一応私ども民間としては2005年度に初号機を打ち上げるぐらいの計画でいかないと、なかなか事業化が軌道に乗ってこないということで、これは是非その辺のスケジュールを目指して頑張りたいと思っているんです。
    これも、いよいよ開発フェーズを、早く事業化にプロジェクトを立ち上げていただいて、私ども産業界も官民一緒になって、2005年打上げを目指して取り組みたいという意欲を持っておりますので、この辺も加味して、是非強力に予算の確保と計画の推進をお願いしたいと思っております。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   いろいろ難しい問題が正直なところあります。ただ、委員の今の励ましといいますか、真摯に受けとめて努力していきたいと思います。

 長柄部会長 

   今、たぶん予算の編成でだいぶ苦労されているように伺っているんですけれども、鈴木委員の希望はよくわかっていると思うんですが、一方では特に特殊法人の出資金を減らすということもありまして、大変苦労していて、期待に添えるかどうかあやしいかと思います。

 鈴木特別委員 

   是非よろしくお願いします。

 冨田特別委員 

   以前、何回か前のときに、例えば衛星なんかのプロジェクトを民間主体に移行していくという方針だということを伺ったんですけれども、ロケットに関してはどうなんでしょうか。今、事業団さんで開発されていますね。それを民間に移していくというスケジュールみたいなものはあるんでしょうか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   計画としましては、H−2Aロケットについては順次、技術移転を行うということで、平成14年度にMTSAT−IRというのがありますけれども、それはロケットシステムという会社が直接お客さんと契約しまして、技術移転されたH−2Aロケットで打上げる計画になっております。そういうことで、我々もできるだけ早く、暫時、技術移転していきたいという方向で動いております。

 五代委員 

   今、総合科学技術会議並びにそれのベースの科学技術の基本計画が鋭意検討されているんですが、それのポイントは、前は割と基礎科学に限定していたということなんですが、それが科学と技術と、さらに産業化までしないとどうにもならない。今までのは、必ずしも効率的ではないんではないか、成果が上がってないんではないかという話がありました。したがって、産業化というのは1つの重大なポイントだと思います。
    それから、もう一つ、産業化も官がしたのを民が産業化するというのもあるでしょうが、民が先導して官が利用するという、アメリカなどはそういうのがあるわけですが、そういう双方向というんでしょうか、それが非常に重要だと思います。ですから、民間が非常に前向きな意欲を示しているプロジェクト、あるいは投資しましょう、衛星でもロケットでもだと思うんですが、そういうものに対しては、官は積極的に応援する。お金がそのときになかなか集まらないからというだけじゃなくて、それでもいろいろな制度的なこととか、ともかく前向きな対応をすべきだと思います。これは、私はこっち側におりますけれども、そういうことは前から持論で思っておりますし、今までもそういうつもりでおりましたので、一言申し上げました。

 長柄部会長 

   それでは、各論に移りたいと思います。
    最初に、H−2Aロケットについて、現在の開発状況、今後の予定等についてプロジェクトマネージャーの渡辺さんの方から説明願います。

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   H−2Aロケットについてですが、もう皆さん御存じのことばかりかと思います。重複になるかもしれませんが、説明させていただきます。
    まず、H−2Aロケットの目的は大きく2つありまして、さまざまな衛星の打上げへの対応ということで、H−2ロケットでは打上げ能力は静止衛星に換算して2トン級という1種類でしたが、2トン級と3トン級。トランスファー軌道の数値は表にありますので、御覧いただきたいと思いますが、対応できるペイロード幅を広げるということが1点。
    それから、2点目は、H−2ロケットの技術をベースにしまして、大幅な改良、設計の簡素化、機器の簡素化等を行いまして、また信頼性の向上も図りつつ、生産効率の向上、製造性の改善度を図るということで、結果としまして大幅なコスト低減も実現できるということが目的でございます。各サブシステムの極めて代表的なものだけですが、どのような改良をしたのかというところが、ここに書いてございます。全体を通して簡素化ということを申し上げております。部品点数にしますと、H−2は35万点ぐらいでしたが、H−2Aでは、標準型についてですが、28万点ぐらい、約8割の部品数になってございます。代表的な部分が、もう少し詳しくここに書いてありますが、中身としては同じことを述べておりますので、省略させていただいて、次のページをお願いします。
    このページは、H−2Aロケットの開発体制に関してですが、最初の(1)、(2)はH−2のときの方針を踏襲しておりますという意味のことを書いてございます。国産技術で開発を行うという観点で、基本的にはその考え方を継承しておりますが、必ずしも全部自前で実施するということではなくて、自在に入手できる部分に関しては、外国からの購入、外国に製造を委託する、あるいは外国の部品等を購入するということが、このH−2Aロケットでは取り入れられております。
    下にあります表は、宇宙開発事業団が開発の取りまとめをいたしまして、システム設計の責任、それから開発業務の取りまとめ等を行っておりますということですが、開発の段階では、一番右側のRSC社を除いて、左にあります8社が参加してございます。実際に打上げるロケットを製造する場合には、RSCにも参加していただいて、事業団、RSCが全体の取りまとめ、品質管理、検査等のインテグレーションを行います。様々な技術課題について、大学やら国立研究所等の支援をいただいております。また、H−2Aプロジェクトに関しては、独立した評価チームが2つございまして、外部の専門家等の目からもレビュー、アドバイスをしていただいております。
    最後に、ここに書いてございますが、メーカー間のインタフェース調整の充実ということが課題として挙がっておりましたが、それに関しましては、LE−7A合同開発チームを宇宙開発事業団、それからMHI、IHIというエンジン開発メーカー3社で組織しております。また、後ほど少しチャートがありますが、今、2号機に向けて改良型のインデューサの開発を進めておりますが、それは航空宇宙技術研究所、それから物質・材料研究機構、大学の参加を得まして、この7A合同開発チームをさらに強化した体制で実施しております。
    次のページは、H−2Aロケット、標準型の機器の構成を述べたものですが、御覧いただければと思います。H−2以来、開発してきましたフェアリングの資産は、そのまま改良して、引き続き利用することにしておりまして、直径が4メートルのもの、5メートルのもの、またそれを組み合わせることによって、2機同時に打上げられる形態のものと、大きく区分しまして5種類のペイロードサービスシステムを持っております。
    次のページは種子島の射場ですが、H−2ロケット打上げ用の射場設備を増強いたしました。強化した点は、大きな点では3点ございまして、まず大型ロケット組立棟、これは旧来の組立棟の前にもう一つ大きな建物を増設したシステムでありまして、この中で2機同時に整備することができるようになっております。すべての整備はこの中で行いまして、打上げの日に射点に機体を移動して打上げるシステムにしております。このH−2Aロケットのために新たに射点を1つ設けました。ここに、移動中の機体がありますが、この第2射点は新たに設けたものでございまして、この新たに設けたものは標準型だけでなくて、ここに写っているのは増強型ですが、増強型の打上げにも対応できるように、なっておりますが旧来のものはH−2と同じサイズということで、標準型の打上げに限定されます。
    3番目の改良はこの写真にはありませんが、ブロックハウス、発射管制棟という設備があって、ここから遠隔操作でロケットの点検、オペレーションを行いますが、新しいブロックハウスは地下に建設してあります。
    次は、標準型の開発スケジュールですが、増強型も実は一部この中に書かれております。増強型は、一番最初のチャートで御覧いただきましたが、基本的には同じ構成要素、サブシステムを使っておりますので、ここから上にありますサブシステム開発、1段機体、エンジン、アビオニクスなどですが、これは一部を除いて共通です。この中で両方の標準型及び増強型の開発を進めてまいりました。ここから下は、システム試験及び射点ですが、射点の件は先ほど述べまして、この中で増強型の開発も進めております。
    この中間がシステム試験ですが、システム試験は、このチャートでは標準型しか書いてございません。この打上げが終わった後の後続計画として、射場を使ったロケットと射場設備の総合試験というシステム試験は、別途増強型用を実施する必要がございます。
    次は、H−2Aロケット、試験機1号機の準備状況がここにまとめられております。本年4月に試験機1号機用LE−7Aエンジンの領収燃焼試験を行いまして、5月14日に機体に装着しております。6月19日までに機体製造工場において、SRB−Aを除く試験機1号機の機体を電気的に結合しての全段システム試験を完了しております。システム試験を実施した形態がここにありますが、これが1段、これは1段と2段をつなぐ構造で、段間部と呼んでおります。こちらが2段です。それから、上に性能確認用ペイロードが乗りますので、これだけの機能確認を行っております。SRB−Aを除くと書いてありますが、SRB−Aは重要な機能を持っております。これは、シミュレーターで代替して、この状態で確認しております。
    試験機1号機用SRB−Aの最終点検は種子島宇宙センターの大型ロケット組立棟で実施され、6月30日までに完了。こちらでは、シミュレーターですが、SRB−Aそのものは、別途種子島で同等の試験をしております。
    最後の行は、性能確認用ペイロードです。
    次のページは、今後の計画ですが、1号機の打上げに関するものです。7月6日に試験機1号機の射場整備作業移行前審査を実施と書いてございますが、この審査は大変長い時間をかけて実施しておりまして、約2週間ほど前から実施しております。6日というのはあしたですが、きのうまでの段階で射場に移行できるということは確認されましたので、それをもちまして宇宙開発委員会に計画を提案して、25日に試験機1号機を打上げることが了承されました。
    今後の射場での最も重要な点を1つ挙げるとしますと、極低温点検という名称で呼んでいるものですが、実際に推進薬をローディングいたしまして、打上げの6秒前までのシーケンスを走らせて機能確認を実施いたします。この後の業務は、本当に打上げるためのカウントダウンということになります。
    次は、改良型液体水素ターボポンプの開発状況ですが、2号機に適応したいということで開発を進めているものでして、先ほど申しましたが、国立研究所等の協力を得て実施しております。これまでの段階では、複数の改良インデューサ形状候補の中から、ターボポンプ単体での性能確認試験、それから水流し試験、解析等を実施いたしまして、最も適当と思われるものを選定しております。改良前に比べまして、低入口圧力における吸込み性能が大幅に向上したことを確認いたしました。
    このフェーズを経まして、現在はこの改良型のインデューサつきのFTPをエンジンに取りつけまして、FTPとしての性能及び耐久性の確認、それからエンジン及び推進系システムとしての性能を確認するためのエンジンの単体燃焼試験、それから厚肉タンクステージ燃焼試験を進めております。厚肉タンクステージ燃焼試験はロケットの推進系を模擬した試験です。模擬できていないところは、タンクが非常に重いもの、強度の高いものになっているという点と、タンクのサイズがちょっと小さいという点ですが、こういうことでステージを模擬しました試験にて確認する作業を進めております。
    現段階で順調に進んでおりまして、試験機2号機は13年度冬期打上げ予定ですが、これに適応するということで進めております。
    最後のページですが、標準型から増強型へ、増強型へはどのようなことを実施するかという要点が4つほど書いてございます。図をごらんいただくとおわかりいただけるように、標準型の横に液体ロケットブースタを装備する。この形状は、1段と非常によく似ておりますが、数点、ここにある点を除きますと、全く同じものです。エンジンは2台装備しますが、エンジンそのものは全く1段と同じものですが、2台装備するためのエンジン部の構造は1段目とは異なる設計のもので、これ自身の構造試験は既に実施しております。
    このようにすることで、先ほど申し上げましたが、静止2トン級から3トン級に能力を向上させることができるという内容でございます。簡単でしたが、説明は以上です。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   ちょっと追加説明させてください。H−2Aロケットにつきましては、今までいろいろな機会をとらえて皆様に御説明してまいっておりましたので、たぶん大方の方は内容を御存じのことと思います。ただ、本日最後のところの増強型につきましては、新しいコンセプトでございまして、そういう意味ではもう少し説明をしなければいけないのかなと思っております。もしチャンスがあれば、7月27日の評価部会に検討状況について御説明できれば、させていただきたいと思います。

 長柄部会長 

   どうぞ。

 澤岡特別委員 

   コストが85億円というのは、どういうものを積算するとそういう数字になるというか、どの辺の範囲をコストと呼ぶんでしょうか。基礎的な質問で、教えていただきたいと思います。

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   開発済のロケットを製造し、工場内で機能点検を実施して、それを射場に輸送し、また射場で最終的な組み立てを行って機能点検して、推進薬をローディングして打上げるまでの費用が85億円ということです。このほかに含まれていないものは、射場の追跡局などのオペレーションはここに含めておりません。ロケットに係る製造から打上げまでの全費用ということでございます。

 冨田特別委員 

   ちょっとくどいようですけれども、この体制表でロケットシステムというのが一番右端にありますね。これが将来、取りまとめ会社に持っていく、技術移転していくというお話がありましたけれども、私、今のロケットシステムというのは、言ってみれば中2階みたいなもので、メーカーにとってみると監督が2つになってしまっている感じだと思うんです。それから、大体、インテグレーションをやるところは施設と人をちゃんと持っていなきゃいけない。今、ロケットシステムはそれがなくて、人のものを借りてやっている状態ですよね。そういう状態だと、どうしても実質的な判断ができないし、それから投資なんかも自分でできないわけですね。それから、さっきの産業化の話がありましたけれども、産業化に持っていくと、例えば商売上の判断もしなきゃいかんわけです。今の状態では、そういう判断が自分でできないんじゃないかと思うんです。
    そういうロケットシステムを上に持っていくというお考えを持っておられるようですが、その場合はロケットシステムにかなりの人を増強して、それから施設も自分の工場を持たせる、そういうところまで持っていかないと無理のような気がするんですが、そういう構想はおありなんでしょうか。
    それから、大体商売するためには、基本的には身軽になった方がいいですよね。ですから、中間にあるものをできるだけ外して、極めて動きやすい組織にしてやらないと、コストは下がらないと思うんですね。商売上のチャンスも逸することになる。そういう点から見ると、ロケットシステムをそういう中間会社に持っていくという判断について、検討する必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   ロケットシステムにつきましては、いかんせん民間会社でございますので、NASDAがロケットシステムに対して何か注文をつけるということは原則的にはできないわけで。それは、ロケットシステムみずからに自主努力していただきまして、確かにまだできてから十分な実績がないということで、先生のおっしゃる面もありますけれども、彼らが自主努力して、それで名実ともにロケットインテグレータ会社に育っていただくことが我々の願いでございます。

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   ロケットシステムとの間には、技術移転契約というのがございまして、NASDAでまとめた各種技術文書などですが、それはすべて開示するというシステムになっております。
    それから、今、我々のところにもこのロケットシステムからつい最近まで社員が出向してきておりまして、実際の開発、それから製造のインテグレーション、こういう業務のインテグレーションをどのようにやるかというところは、OJTと言っていいんでしょうか、そういうような努力はしておりまして、私たちもそれに最大限の協力をする努力をしております。

 冨田特別委員 

   私、今の実態をあまりよく知らないから、失礼になるかもしれませんけれども、OJTをやっておられる。そのOJTが効き過ぎてといいますか、全部事業団さんに寄っかからないとできないということになっているんじゃないかという危惧を私、持っているんです。
    それから、さっき三戸理事が、ロケットシステムは民間会社だから自主企業努力を期待すると言っているんですけれども、資金もなければ人も少ない、設備も少ない。そういう状況で自主努力といっても、何か限界があるんじゃないかなと思います。改良する兆しが見えていればいいんですけれども、そういうのは見えてないんじゃないかというのが私の考えなんですけれども、いかがでしょうか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   できた当初は、我々が外から見ても確かにひ弱な感じでしたけれども、現在、品質管理につきましてはだいぶ力をつけておりまして、NASDAが本来やらなきゃいけないところにロケットシステムが立ち入って品質管理をやっておりますので、そういう意味では見た目よりはだんだんしっかりしてきたと私は思っております。

 冨田特別委員 

   今の品質管理なんですけれども、それが1つ、私がさっき言った中2階ということで、ロケットシステムの品質管理もあるけれども、事業団さんの品質管理も入っていると。メーカーから見ると、二重に管理を受けているようだという印象じゃないかと思うんです。その辺、どうでしょう。

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   これは、それぞれが独自の品質管理システムを持っているということではありませんで、H−2Aロケットの品質管理という1つのシステムをつくり、それを全面的に開示してRSCがその全体の取りまとめをしているというもので、別の管理体系があるということではありませんので、違うものの要求が出てきて、受け側が混乱するということはないと断言していいと思います。

 冨田特別委員 

   いずれにしましても、今、ロケットシステムの現状というのを事業団さんで把握していただいて、民間会社だから自主努力でとは言わずに。特に、産業化ということを考えた場合に、ロケットシステム中心で本当に産業化できていくのかどうかということをもう一度考えていただきたいと思います。それで、事業団さんにしては、それなりの物をつくる体制にしても、本当に産業化できる体制を考えるべきじゃないかと思います。それをぜひお願いしたいと思います。

 渡辺(宇宙開発事業団) 

   いろいろ長期的な課題があるかと思いますが、現在RSCが実施しているのは、新たな開発ということではなくて、開発されたものの生産、オペレーションということです。ただ、RSC自身も、ペイロードインタフェースなどで事業団が開発したものではなく、独自に開発して、より柔軟なペイロードサービスを提供するということは、自己資金で実施しつつあるということを聞いております。

 冨田特別委員 

   今、ロケットシステムが与えられている課題というか、権限というのはかなり限られています。例えば、次期のロケットをどう進めていくかということに関しては、関与していないわけですね。商売するとなったら、やはりそういうところまでの発言権が要るんじゃないか。
    それから、もう一つは、現状のロケットでいろいろ問題が起こっているときの判断権というんですか、そういうのはやはりロケットシステムは持たなきゃいけないと思うんですが、その辺はどうなんでしょうか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   産業化の件でいきますと、NASDAはロケットシステムとは1機1機の契約をしております。例えば、試験機1号機、2号機と1個1個契約しています。しかし、ロケットシステムは、MHI以下、ベンダーの会社に対して、まとめて10機以上、発注しております。これは、明らかに産業化を目指しているということだと私は思っています。それは、NASDAが指導したわけでもございません。

 冨田特別委員 

   ただ、そういう枠組みがあって、その枠組みを生かしてやるとそうなるという感じじゃないかと思うんですね。ですから、本当に産業として育てていくためには、どういう枠組みがいいのかということを考えるべきじゃないかと私は思うんですが。あれが最良であるという感じがちょっとしないんです。

 長柄部会長 

   この問題は、NASDAだけじゃなくて、日本の産業界の宿命かもしれませんけれども、8社をどこがどうまとめるかということで、たぶん歴史的ないろいろなことがあって、このロケットシステムができて、そこが民間8社の窓口になっているということだろうと思うんですけれども。しかし、このH−2Aの開発がある程度終われば、NASDAは今度は部品を買ってくるんじゃなくて、ロケットシステムから買うわけですね。ロケットを購入するということで、この民間8社、プラスRSCでロケットをつくって納入すると。ですから、NASDAはお客で、適宜品質管理はされるんだと思うんですけれども、発注主としての。もう開発ではないということで、全部そこから請け負いで買うという形になるから、それなりの体制をとってもらわないとNASDAも困るわけですね。

 冨田特別委員 

   私は、別にRSCを反対しているわけじゃなくて、今のままでいったらRSCはそれはできないだろうということですね。もし、私がRSCにおったらたぶんできない。要するに、人もなければ設備もないわけです。それでやれと言われたって、それはできないと思います。だから、できるようにしてやる必要があるんじゃないかというのが私の意見なんです。これには、いろいろな御意見があるでしょうから、あまりいいませんが。

 長柄部会長 

   ほかにどなたか、このH−2Aにつきまして。よろしゅうございますか。
    先ほど三戸さんがおっしゃったんですが、鈴木委員も産業界の方としては増強型を是非2003年に1号機をという要望がございましたが、私が伺っているところでは、増強型について、特に標準型の開発過程で、かなりいろいろ実務の難しい問題が出てきて、それを今一生懸命つぶしていらっしゃるわけですが、たぶん増強型についても、当初考えていたよりも技術的にいろいろ難しい問題もあるだろうと思いますし。それに加えて、お金、開発費が本当に予定どおり来るかどうかという問題もあるように聞いていますし。
    そういうことで、今、宇宙開発事業団の方では、増強型の開発、どういうステップを踏みながら開発していくかということを一生懸命役所と一緒に詰めていらっしゃるということのようでございまして、三戸さんがおっしゃったように、今詰めていらっしゃる状況につきましては、今月の27日の部会でこの増強型の開発をこういう方向に持っていきたいということを述べていただきたいと思います。その際に、また増強型についてはディスカッションしたいと思います。どうもありがとうございました。
    それでは、次のJ−1ロケットについて、簡単に説明をお願いします。プロジェクトマネージャーの虎野さん。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   虎野でございます。それでは、御説明させていただきます。
    先ほど三戸理事の方が、後で説明するので省略された部分でございます。
    まず、J−1ロケットの目的でございますが、小型衛星の打上げ需要に対応するというのがまず1つでございます。もう一つは、宇宙科学研究所さんとNASDAの開発成果を有効にジョイントして利用するという2つの目的が大きくございます。
    そこにかいております絵は、点線の左側が試験機1号機のコンフィギュレーションで、右側に今回の2号機のコンフィギュレーションがかいてございます。簡単に申しますと、1段につきましては、試験機1号機はH−2ロケットのSRBを、今度の2号機につきましてはH−2AロケットのSRB−Aを利用いたします。上段部分につきましては、基本的には宇宙研さんのM−3S2の上段部を利用するということでございます。
    ただ、もう一つ、H−2Aからアビオニクスにつきまして流用しております。ここには一部と書いておりますが、実を言うとほとんどの部分をH−2Aのアビオニクスに置きかえてございます。簡単にいろいろいってしまいますと、3段部分はM3S−2のアビオニクスですが、2段はほとんどH−2Aのアビオニクスに変更してございます。
    次のページ、お願いします。これがJ−1ロケットの開発体制です。文言の方はともかくといたしまして、下の方の絵ですが、文部科学省さんの下、宇宙開発委員会の下に事業団がございますけれども、この事業団と先ほどの文部科学省の宇宙科学研究所さんとの共同研究という形で、このJ−1ロケットを開発してまいりました。H−2Aロケットと似てございますが、事業団内部にJ−1ロケットの評価チームという独立チームがございまして、この評価を受けながら、この開発の段階、段階で審査を受けているというところでございます。
    次のページをお願いします。3ページに書いてありますのは、J−1ロケットの開発の概要を書いてございます。試験機1号機につきましては、平成7年度の冬期、暦で言いますと平成8年2月に試験機1号期が打上がりました。それ以降、同じコンフィギュレーションで2号機を製造しようとしていたのですが、先ほど申しましたように、H−2Aの話がございますのと、もう一つは行政監察がございまして、1号機の値段があまりにも高いということで、コスト低減という命題も入ってまいりました。そこで、先ほど申しましたように、1段を非常に安価なSRB−Aに変更させる。それから、搭載のアビオニクスも変更する等々のコストダウン対策をしてまいりました。その結果、予備設計審査、基本設計審査、詳細設計審査を終了いたしまして、現在、設計の段階では維持設計段階に入っております。ハードウエアについても、製作中でございます。
    次のページ、お願いします。先ほどちょっと先走ってしゃべってしまいましたが、現状ですが、まず機体側ですが、これは光衛星間通信実験衛星(OICETS)を打上げるために3段式として開発中でございまして、先ほど申しましたように、詳細設計フェーズのシステム設計確認会を本年4月に確認しております。ハードウエアの方ですが、今、コンポーネントとサブシステムがほぼ完成状態にあります。工場における全段システム試験は、H−2Aで言いますところのファンクションテストあるいはミッション・チェック・アウトと称するものと同じでありますが、全段システム試験の準備をしている段階でございます。
    一方、設備の方ですが、試験機1号機は中型射点、昔H−1ロケットを打上げた大崎射点ですが、1段がSRB−Aという一体物になって重さが70トン前後あるということで、大崎の射点ではそれを取り扱える設備がないということで、吉信の大型ロケット射点に変更いたしました。これに伴いまして、若干設備の改修・移設がありますので、それを既に完了しております。
    それから、もう一つですが、M−Xロケットの4号機の不具合の水平展開というのがございまして、M−Xロケットの不具合の原因は、御存じのように1段のグラファイト製のノズルスロートにあったということであります。このJ−1ロケットも、1段はグラファイトではございませんが、2段と3段のモーターはグラファイト製のノズルスロートを使っております。したがいまして、それについて、このまま飛翔可能か、あるいは設計変更すべきかという解析・検討をしてまいりましたが、3段モーターにつきましては、解析の結果、このままグラファイトでも可能だということです。ただし、そのグラファイトに内部欠陥がないということを証明しなければいけませんので、その非破壊検査法の確立と非破壊検査というものを今後する必要がございます。2段につきましては、解析の結果、グラファイト材では破壊の可能性があるということですので、1段のSRB−Aと同じように、3次元カーボン・カーボン材への変更及び地上燃焼試験による確認を実施する予定でございます。
    次のページ、お願いいたします。最後ですが、これが今後の作業です。先ほどの話と若干ダブりますが、下の流れ図にありますように、まず機体の方は全段のシステム試験というのが残ってございます。設備の方は、改修は終わりましたが、設備としての組み合わせ試験がまだ残ってございます。この2つが終了した段階で、両方あわせて、射点においてインタフェース確認試験を実施して打上げるという計画になってございます。説明は以上でございます。

 長柄部会長 

   質問、御意見、ございましたら、どうぞ。

 澤岡特別委員 

   一番最初に伺いましたJ−1改の話が出てきたんですが、今、J−1の2号機ですけれども、これが流れていってJ−1改に流れていくんでしょうか、それとも全く別の流れと考えたらよろしいんでしょうか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   全く別です。

 澤岡特別委員 

   全く別の開発の流れということです。これは、3号機、4号機という考えは今のところございませんか。

 三戸(宇宙開発事業団) 

   ありません。

 長柄部会長 

   私の聞きましたところ、J−1ロケットは既にできているロケットの部品を、上はISASのロケット、下はNASDAのブースターを組み合わせてやったと。開発費は非常に安かったはずなんですけれども、結果としてでき上がったものはかなり高いということで、それで、さらにコストダウンできないかということ。先ほどおっしゃった、コストダウンの努力をしたものの、たぶんそんなには下がっていないでしょう。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   努力の結果、打上げ費込みで35億円という結果になっております。

 長柄部会長 

   当初は、たぶん50億円ぐらいしたんでしょうか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   おっしゃるとおり、1号機は50億円でした。

 長柄部会長 

   50億円ぐらいが35億円ぐらいになったけれども、それよりはなかなか下がりそうもないということで、今、研究されているJ−1改というのは、たぶん性能はこれより上だけれども、安いものになって研究されていると、こう聞いているんですが、技術的にはあまり関係ないということでよろしいですか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   おっしゃるとおりです。

 宮崎特別委員 

   NASDAとISASのこれまでの成果の利用による開発によって、技術的なシーズは十分あると思うんですけれども、ニーズがはたしてどのぐらいあるのか、そこのところがよくわかりませんので、お聞きしたいんです。大型と比べて、こういう小型の衛星の需要、ニーズが今後、この10年先の間、どのようにあるんでしょか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   一応、コムスタックとか、あの辺の調査資料がありますけれども、このJ−12号機は低軌道の1トン級というものでありまして、これだと俗に言うリトルLEOというものの衛星、すなわち小さい通信衛星ぐらいしか打上げる需要がなくて、その数としては多くありません。先ほど来、お話が出ていますJ−1改良型ロケットになりますと、低軌道に3トン投入することができますので、そうするとブロードバンドだとかビッグLEOと称しております、若干大型の通信衛星を打上げることができまして、その需要は先ほど冒頭の三戸理事の説明のディスカッションでもありましたように、衛星は年間数十機の需要がございますので、このJ−1ロケット2号機につきましては、若干その需要という意味では少ないかもしれませんけれども、先ほどのJ−1改良型ロケットの方になりますと、相当数の需要があると考えております。

 森谷特別委員 

   単純な話ですけれども、今の需要ということは、これは日本の需要なのか、国際的な需要なのか、今どういう状況なのか全然知らないんですが、国際的な市場で日本がどれぐらい活躍できるのか、もう日本のものだけをやろうとしているのか、その辺。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   先ほどありましたように、これは民間主導型でやっておりますので、民間側が需要と申しておるのは国際市場のことを言っております。日本だけではございません。片や、日本だけですと、非常に少ない数であるということは現段階では言えると思います。

 森谷特別委員 

   国際市場での競争力を持つものをねらっていると考えていらっしゃるわけですか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   そうです。具体的に申しますとコストですね。それを低コスト化することによって、国際市場で十分太刀打ちできるだろうという目標のもとに、我々は研究をやっております。

 長柄部会長 

   このJ−1改というのは、フィージビリティーといいますか、今、研究の段階で、まだ開発に着手したわけではないんです。私の考え方は、低軌道に3トンというのもかなりのパワーがあるわけですね。ですから、国際民生用マーケットに参入するというのも、メーカーの方としては1つのねらいかもしれませんけれども、一方、NASDAなりISASなり、国の方としては、自分のところのペイロードを、科学衛星なりNASDAの試験衛星、中型の試験衛星を打上げる手段として、H−2Aではあまりにも大き過ぎる。大が小を兼ねるというわけにはなかなかいかなくて、融通が効かない点もあるので、私としては世界の民間のマーケットがとれれば、それが一番いいんですが、それはそれとして、国の政府のペイロードといいますか。ですから、ISASなりNASDAのペイロードはどう考えるかということに非常に絡むんじゃないかと思うんですけれども、そのあたり、斎藤さん、何か考えがありますか。

 斎藤(宇宙開発事業団) 

   現在研究しておりますのは、先ほど部会長がおっしゃったのにもう一つつけ加えさせていただきますと、輸送系の関連の将来の技術開発をいろいろするのに、大型ロケットでいろいろな機会をしょっちゅう使ってやるのはなかなか難しい点もあるので、もう少し小さい小型のロケットで技術開発ができないかというテーマもございまして、そういう機会として、特にJ−1改の2段目については研究しているものであります。
    それぞれ民間が目指すものと、それから私ども技術開発をすべきものが目指すものと、それぞれ立場が違うわけで、トータル的に日本としてどういう方向の結論を出したらいいかというのは、まだ今、研究中でございますので、それらの結果を踏まえて、最終的に関係者とか国も含めて、今後決めていくべきものと考えております。

 井口委員長 

   まず、J−1ロケットについての今までのお話で、当初計画していたほど値段が下がらなかったということですね。それから、今から考えると、J−1ロケットの能力ではマーケットはそんなに見込めない。これは、かなり昔に計画されたためだろうと思いますが、なぜそうなったのかという分析とその報告が欲しいんです。つまり、これは技術開発ではないとおっしゃいましたね。そういう部分が少ない。だから、非常にクリティカルな、非常に難しい技術開発をしたけれども、それが突破できなかったということじゃない。計画したときに、なぜ計画どおりにいかなかったのか。その失敗の分析といいましょうか、ちゃんとやってほしいと思うんです。そうじゃないと、また同じ失敗をすることもあり得るだろうと思いますので、これはどう考えるかはまた後ほど相談しますけれども、なぜうまくいかなかったのかという分析を何とか明らかにしたい。

 長柄部会長 

   この50億円というのは、計画どおりでしょう。うまくいかなくて高くなったんではなくて、最初から私のあれでは50億円ぐらいでやろうと、ならできるということでスタートして、50億円ぐらいでできたということじゃなかったかと思うんです。ただ、その間にやはり国際的な相場がどっと下がっちゃったから、50億円じゃとてもだめだからというんで、もっと下げろと言って努力したら35億円になったと。こういうことだと私は思っていたんですが、どうですか。

 斎藤(宇宙開発事業団) 

   基本的に、直近のニーズが1つはございまして、ニーズについても、当時かなりバラ色のニーズを一生懸命積み上げていたという反省ということもございます。同時に、直近の打上げのニーズがあるということもあって、限られた予算で、かつある技術を使ってこういうものをつくるということで、計画としてつくったわけですが、現実には、今お話がございましたように、世界的にはこのクラスのコストの競争が非常に激しくなって、全体として割高の状態になって、それを追いかけようとしてだいぶコストを下げたものの、このままではとても競争力がないというのが全体の大きな流れかと思いますが、反省としてあるとすれば、結局、需要であるとか技術動向予測とかコストの予測だとか、そういうものについて、もう少しきちっとした議論とか詰めがあって、詰めて計画をセットするということが必要かと思っております。

 井口委員長 

   J−1だけじゃなくて、これからやろうとしているものに対しての相当時間がかかるとすれば、予測が難しいわけですね。現状でさえ、大型、中型、私もロケット専門じゃありませんからわかりませんけれども、世界的にはいろいろなニーズを見ると、オーバーキャパシティー。つまり、ロケットの数の方が多くて需要の方が少ない。日本の今のマーケットと同じように、価格破壊が起こりつつあるという状況ですよね。ですから、またこれからJ−1と同じ二の舞をやるんじゃないかという心配を私自身がしているというのはおかしいのかもしれませんけれども、正直なところ、そういう心配を感じますので、それに対してどうしたらいいか、これは宇宙開発委員会が答えを出さなきゃいけないのかもしれませんけれども、いいお知恵があったら教えていただきたいと思います。

 冨田特別委員 

   今の話題でちょっと追加させていただきますと、H−2が高い高いと言われているんですけれども、最初は70〜80百万ドルで計画したんです。ところが、そのときの為替レートが239円だった。完成したときは100円から110円ぐらいのレート。それで、国際価格が非常に高くなってしまって、170百万ドルぐらいになっちゃって、競争力がなくなったんですね。そういう1つの先訓があるんで、今、私、J−1の話を初めて聞いたんですけれども、やはりそういうことが過去あったんで、これは技術以外のことだと言わずに、反省として取り入れていく必要があるんじゃないかと思います。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   J−1は、この2号機で終わりになってしまう。反省は、J−1改良型ロケットの方でどうしても反映しなきゃいけないということで、具体的に申しますと、まだはっきり金額が決まっておりませんが、35から40億円で3トンという程度になっていますが、これだともしかするとH−2とかJ−1と同じ運命をたどるかもしれませんので、そこをもっと実機製造費を抑え込む方向で努力しなきゃいけない、これは認識しております。

 冨田特別委員 

   それから、ニーズですけれども、これは私も失敗、恥を言うわけですけれども、会社におったときに5カ年計画、長期計画を立てるんですが、そのときにこれだけの発注があるという見込みをいつも立てるわけです。その見込みに、幅つまり計画の上限と下限をつけるわけです。ところが、常に実績を見てみると、下限をさらに下回っているんです。それじゃ、その計画は何をベースにつくったかというと、事業団さんの長期計画をベースにつくっているわけです。結局、それを繰り返しているうちに、会社の上層部の信用を失ってしまったわけですね。いつもうそばかり言っていると。今のところは、まだ我々の社会の中だけでいいんですけれども、これを繰り返していると社会的な信用を宇宙が失うことになると思うんで、これはやはり反省として取り入れていくべきじゃないかと思います。

 栗木委員 

   ただいまのコストの話なんですが、コストと需要というのはニワトリと卵みたいなところがありまして、安くなれば需要が増えるんだという意見も私、聞いております。この前、経済産業省が衛星の需要とロケットの供給能力で、これは供給側がかなり上回っているというデータを出しましたけれども、実際にそれを利用している衛星で商売をやっている、例えば携帯電話、移動体通信をやっているような事業者に聞いてみますと、安くなれば自分たちはもっと数使うんだと。今の経済産業省が出したあのデータはそうですかと聞くと、今の値段ならああだと思っていますという返事なんですね。ですから、コストを安くするというのも、多少の安くじゃだめでして、かなりドラスティックにニワトリと卵の関係でどこからか火をつけるぐらいの大幅なコストダウンというのを考えれば、むしろあの供給過剰という線ですら崩すことができると、ビジネスというのはそういうところじゃないと私は生まれてこないと思いますので、多少下げましたという程度では、なかなか供給過剰の現状は破れないんじゃないかという感じがいたします。

 冨田特別委員 

   1つだけ確認させてください。今の体制表の中にロケットシステムが入っていませんけれども、J−1に関するロケットシステムのかかわり方はどういうことなんでしょうか。
    それから、開発体制に関する方針みたいなもの。この中にロケットシステムは入っていますか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   入ってません。

 冨田特別委員 

   入ってませんね。ロケットシステムの位置づけをちょっと教えていただけますか。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   J−1ロケットに関しましては、ロケットシステムは全く関係ございませんで、H−2ロケットがRSCにお願いしている業務は、すべてNASDA側がやっております。ですので、H−2Aシリーズの前の段階の事業団のやり方を、ここだけは踏襲しております。

 冨田特別委員 

   それをいずれ民間に、今、事業団さんがやっておられることは移管していくという方針なんですね、基本的には。

 虎野(宇宙開発事業団) 

   このJ−1ロケットではございませんが、J−1改良型ロケットについては、そういうことは十分あります。

 長柄部会長 

   それでは、次の将来型宇宙輸送システムの研究開発、プロジェクトマネージャーの河内山さんにお願いします。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   河内山でございます。
    1ページ目をお願いいたします。HOPE−Xのプロジェクトでございますが、位置づけのところに書いてありますとおり、NALとNASDAが協力いたしまして、実機規模の機体を飛ばすことによりまして、宇宙往還技術を確立するとともに技術の基盤をつくる。要するに、実際にある程度の大きさのものを飛行させて、それによりまして技術を確立するという方針で研究を進めてまいりました。
    1986年以来、研究をやっておりますが、その間にOREX、HYFLEX、ALFLEXという小型実験機、また来年度以降、高速飛行実証という実験機をやることになっております。
    昨年度でございますが、2000年に実機製作の凍結、諸般の事情によりますが、こういうことがございました。その結果、共通的、それから先進的な要素技術に絞って研究開発を進めていくということで、HOPE−Xの計画自体は見直されております。
    見直しの方針でございますが、これはHOPE−Xのプロジェクトを発展させていきまして、将来型宇宙輸送システムの研究開発へつなぐという形で見直しております。
    その内容でございますが、有望と見られます将来ミッションの実現とか、新しい産業基盤を作り出す等によりまして、宇宙開発の活動を活性化するために、大幅な信頼性の向上と運用コストの低減を可能とするような将来型宇宙輸送システムを目指した戦略的な技術基盤をつくっていこうということで発展を考えております。
    また、この研究開発でございますが、従来のNAL、NASDAに加えまして、宇宙科学研究所につきましても一緒にやるということで、現在検討を進めているところでございます。
    この図でございますが、左の方へHOPE−Xのミッションプロファイル、また、その下に今まで行いました小型実験機、それから来年度行います高速飛行実証に関する速度域と飛行実績が書いてございまして、来年度に行います高速飛行実証をもちまして、一応の飛行領域に関する飛行実験を行ったということになります。
    また、右側でございますが、現在行っておりますHOPE−Xプロジェクトの実施体制表ということで書いてございまして、NAL、NASDAの下にHOPE研究共同チームという合同チームを三鷹に設けておりまして、この下にメーカーチームをそれぞれぶら下げまして、実際の仕事を行っております。NAL、NASDAのHOPE共同研究チームというところのチーム長というのが事情上の責任を持って、全体の取りまとめを行っております。
    また、この仕事の特徴でございますが、メーカーの中に三菱重工、川崎重工、富士重工等が入っておるわけですが、光る技術を持つベンチャー企業を既に取り入れて、実験的なパイロットプランを通じて先進的な技術基盤をつくるということで、作業を進めております。
    また、高速飛行実証につきましては、フランスの国立宇宙研究センター(CNES)が参加しておりまして、これを入れましてNAL、NASDA、CNESの協力体制で試験することが特徴となっております。
    これが高速飛行実証計画の計画概要でございます。その1とその2の2つに分かれてございまして、その1につきましては、着陸性能を中心といたしました確認。その2につきましては、遷音速の飛行特性を中心といたしました確認を行います。その1につきましては、NAL、NASDAの共同体制で、キリバス共和国クリスマス島の滑走路を使って行います。また、その2につきましては、CNESの協力によりまして、キルナの試験場におきまして飛行実験を行うこととしております。
    要素技術の1つでございますが、これは大型複合材の一体成形技術でございます。これは、オートクレーブを使わずに大型一体成形をどうやったらできるかというところを研究課題の中心といたしております項目でございまして、物のつくり方とともに、最適設計の仕方を考えていくという形になっております。
    効果といたしましては、軽量化、信頼性向上、製造コストの大幅低減、これらを目標に現在進めておりまして、かなり大きな規模のものがかなり低コストでつくれるという技術的なめどを得つつあるところでございます。写真につきましては、現状、HOPEクラスの大型の、これはカーゴベイのついているところの上側の部分でございますが、これらがちょうどできているところで、部品につきましては大体できて、これから組み上げる段階になっております。
    熱防護材に関する要素技術の研究でございますが、熱防護材につきましては、極めて低コスト、それから極めて高機能という2つの分類をいたしまして、低コストにつきましては民生品を活用いたしまして、それの性能向上を図って使えるようにする。高機能につきましては、再使用性、さらにいろいろな機能を加えまして機能を高めるということで、2つの用途に目的を分解いたしまして、それぞれ適切な選択を行いまして研究開発を続けております。
    飛行制御系、アビオニクス・誘導飛行制御系でございますが、これは自律分散ネットワークという技術を中心にして検討しております。自律分散ネットワークでございますが、ネットワーク技術の中の1つでございまして、これを使うことによりまして、システムの拡張性、成長性、多様性、ロバストなシステム構成を向上させて、信頼輸送系に関する基幹技術の1つにしたいと考えております。
    また、将来に向けました研究開発でございますが、NAL、NASDA、ISASの下に現在、運営本部というのがございまして、その下で信頼性向上研究プロジェクト、それからエンジン中核研究開発プロジェクトという2つが現在活動しておりますが、それ以外に将来輸送系検討ワーキンググループというのがございまして、この中でNAL、NASDA、ISASを中心といたしまして、さらに大学とか公的研究機関、メーカーを入れまして、最終的にはぜひ三者で行います共同研究プロジェクトの1つとしてやっていきたいと考えております。
    三者で検討している技術内容でございますが、高信頼性化技術と真ん中に書いてございますが、一番重要なのは、いろいろな活動、いろいろなシステムがあるわけですが、それらの信頼度をよく把握した上で全部をつないでいくというのが極めて重要でありまして、これは落ちては困るということで、中心的な課題は何かというと、信頼度によりましてすべてのものをつないでいくということを考えております。この信頼度を中心にいたしまして、アビオニクスの技術、再突入の技術、空気吸い込み型エンジンの技術、ロケット型の推進系の技術、熱防護・熱構造関係の技術、これらを総合的に組み合わせていきたいと考えております。
    また、重点分野につきましても、これらの5項目が将来輸送系の重点分野ではないかということで、NAL、NASDA、ISASの三者を通じまして、現在、具体的な計画の策定に向けて検討を進めているところでございます。説明は以上でございます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。御意見、質問、ございましたら。

 澤岡特別委員 

   昨年度、実機の製作の凍結、2ページに書いてあるようなことを私も新聞で見て、大変ショックを受けたわけですが、今後の見通しはどうなっているか。希望がなければいけないんですけれども、近い将来、製作が凍結解除という見通しはあるんでしょうか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   製作機会の凍結というよりも、さらに我々は高いところを目指そうということで、一番下ですが、将来型宇宙輸送システム研究開発への発展、この発展の方を通じて、単に凍結を解除して今までどおりつくるんじゃなくて、もっといいものをつくることを目指すという形で、NAL、NASDAに加えて、さらに宇宙科学研究所の方も入れまして、もっといいものをつくらさせていただきたいという形で進めたいと思っておりますので、ぜひその線で頑張らさせていただきたいと思っております。

 長柄部会長 

   HOPE−Xというのは、たぶん2000年ごろにはもともとの計画が2000年か2001年、今年ぐらいには最初の実機が飛ぶという計画だったわけですけれども、大変お金が多くかかるし、実際やってみたら技術的に大変難しい点もあるということで、このALFLEXとかOREXとかHYFLEXをやられてきたんですけれども、一気に実機をつくるよりも、もっともっと基礎的な技術を積み上げて、検討を積み上げてやった方がいいと。
    それから、再使用型の輸送機のいろいろな検討会などもあちこちであったんですけれども、やはりNASDA、NALだけじゃなくて、大学とかメーカーとか、それからベンチャーのような会社とかを巻き込んで、もっと基盤的な技術をちゃんとやっていかないとうまくいかないよということで、最後のページにあるように、3機関で今中心になって、基盤的な重要技術の研究計画を立てて、もう一度基礎からやり直そうとなったと思うんです。そういうことですね。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   はい。HOPEよりももっといいものをくつりたいと考えておりますので。

 澤岡特別委員 

   同じような経験をしているのがCNESだと思うんですが、フランスも世紀末にはと言っているうちに、何か凍結したみたいですけれども、今、CNESと組んでやっていますが、フランス側は近い将来、実現するんだという意気込みというのは最近は感じられるんですか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   フランスにつきましても、実用機ではなくて実験機的なものを先にやる。要するに、今、長柄先生からお話がございました基盤技術をしっかりやろうと。これは、従来の路線でやっていますと、やはり飛ばすことが先に行くので、物がなかなか先進的になるのが難しいというのがございまして、やはり最初は将来型宇宙輸送機につきましては、かなり技術ギャップを、飛んだところで物をつくらないと意味がないということで、基盤から積み上げて、なおかつ将来に向かって伸びるような技術をつくっていくいうところが一番重要であると。
    それは、HOPEをやっておりまして強く思ったんですが、やはり飛ばすことが前提になると、なかなか先進的には取り入れられないと。飛ばすことも極めて重要なんですが、やはり飛ばすだけではなくて、伸びる技術をちゃんと入れないと、これからの世界では太刀打ちできないということを、やっている立場として認識いたしましたので、必ずHOPEというコンセプトを超えた、もっといいものを、3機関を中心にいたしまして、産業界、それから関係者の方々の知恵をかりまして、いい案をぜひつくりたいと、ずっと皆さん頑張っております。

 森谷特別委員 

   全くの素人の発言ですが、この宇宙輸送システムというのは一体何を運ぶのか、その必要性だとか可能性というものが全く説明がないんですけれども、それはどういうことなんでしょうか。当然のことなのか、その辺、お伺いしたい。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   将来型宇宙輸送システムでございますが、これにつきましてもいろいろな議論がございまして、その目的によりましてつくるものが違っていくという考えに立っております。まだ3機関の中で、これを目指すという形での最終的な合意は得られておりませんが、その議論も含めて、今、再度やっているところでございます。
    HOPEにつきましては、先ほど御説明がありましたが、もともとかなり前からやっていましたので、コンセプトが古いということで、そのコンセプトではなく、新しい世界に向けて、どういうことを考えているかというのを、あわせて今、検討しているところでございます。個人的な意見等は十分あるんですが、個人的な話をいたしましたら、将来的には全くの個人的ですが、太陽発電衛星とか宇宙観光とか、そういうのはあるんではないか。この研究自身は、10年とか20年とか、長いレンジの話になっておりまして、その辺のミッションも含めて、今、鋭意詰めているところでございます。

 森谷特別委員 

   ということは、今の段階では具体的な宇宙輸送、何を輸送するかということは、将来の可能性として考えると。ともかく運ぶものをつくろうと考えていいんでか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   こういうミッションをつくるという断定ができないので、それに使えるような共通的な基盤技術があるわけですね。そういうのを中心にしてやっていきましょうというのが、今の現状になっています。今後やっていく過程におきまして、それがだんだん煮詰まってきますので、実際に物をつくるまでには、それをはっきりさせなきゃいけないと。

 長柄部会長 

   少なくとも今のH−2とかのコストは、1けた以上安いとか、信頼性ははるかにいいとか、できることならば、将来は人間も乗れるようなものということでしょう。だから、今の使い切りじゃなくて、行っては帰り、行っては帰りと何回も使える。それで信頼性が高くて、あわよくば人間も乗れるぐらい信頼性がよくて、コストも1けたか、それ以上安いものでどんなものがあり得るかと。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   基本的には、先ほど一番終わりのページで述べました、信頼度をどうやって全体の開発の中に生かしていくかというのが一番重要な技術になると考えております。その延長上には、人が乗れるのが当然出てくると。ただし、1年とか2年とか3年とかいうものではなくて、10年、20年かけてやる話ではないかということで、先ほど来ありましたが、基盤技術のところがちゃんとした上で、具体的なものを明らかにしていこうという歩みになっております。

 長柄部会長 

   森谷さん、よろしいでしょうか。

 森谷特別委員 

   はい。

 長柄部会長 

   高柳さん、どうぞ。

 高柳特別委員 

   そういう夢の部分でいくと、スペースプレーンみたいに交通輸送のいろいろなプロジェクトがありますよね。日本がどうなっているのか知りませんけれども、そういうものとの今後の競合とか、あるいはそういう外側の環境のことはどういうふうにお考えになっていますか。夢と言ったのは、今、観光とか何かおっしゃいましたよね。まず、これは技術がきちっとあるから、それを使って何かこういうものをつくるという話が出てきましたけれども、例えばアメリカから物すごい超高速で宇宙を飛んで日本へ来るようなロケットの開発とか、つまり別の夢がいっぱいありますよね、宇宙を使う。そういうプロジェクトも片方であると思うんですよね。例えば、民間の人たちが何とか宇宙滞在を体験してやるためのコンクールに参加するとか、いろいろなプロジェクトがあると思うんですが、そういう中でこの国を中心としたこういうプロジェクトはどういうふうに考えていらっしゃるのか。つまり、これだけじゃなくて、ほかにもあると思うんですけれどもということなんですが。ちょっと私の意味がわかりませんか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   国としてやるのが一番重要なのは、先ほどから言っておりますが、アメリカから日本にビジネスで飛んでくるオリエンタルエキスプレス、ああいうのが核になりますが、基本はそれの基盤技術のところをちゃんと整理しておくというのが非常に重要ではないかと。そこをベースにしていろいろなことを考えていくことで、現在はまだその基盤技術のところをちゃんとしようと。それがどこまでできるかというのを明らかにした上でやらないと、例えばできもしないことが5年後にできるという話になってしまうんで、そういうものを現実化する努力をもうちょっとやろうと。

 高柳特別委員 

   今のお話はとてもわかりやすかったんですが、そういう話がないものですから、すごく一般の人にはわかりにくい。何をやろうとしているのか。たぶん、先ほどの方はそういうつもりでお聞きになったと私は理解したんですが。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   申しわけないです。是非、そういう先の10年とか20年のレンジで話すような機会を設けていただくとありがたいんですが。

 高柳特別委員 

   つまり、一般の人が自分たちがこういうものが実現したときに一体どうなるのかというのをある程度つなげられるような説明の仕方が、あまりないような気がしたんです。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   わかりました。計画的な現実論のところだけを申しましたので、そうなって申しわけありませんでした。

 中西特別委員 

   基盤技術ということで1つお伺いしたいと思うんですけれども、ロケットにしましても、帰ってくるものにしましても、環境への配慮といいますが、どんなふうに考えればいいんでしょうか。例えば、私どもも何か新しいことをするとなると、ダウンストリームといいますか、どれくらい負荷が環境にかかるかというのを考えないと、最近は実験もできなくなってきたんです。例えば、燃焼もありますし、あと落ちてくるものもありますし、宇宙に飛んでごみとなるものもあるんでしょうけれども、基盤技術ということで、そこの性能に合うものだけを選ぶというより、もう少し、もしかすると宇宙環境に配慮した方がいいのかもしれないんですけれども、そこら辺はどんなふうに考えられていますか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   環境に配慮で特徴的なものは、先ほど説明したものの1つに入っているわけですが、空気吸い込みエンジンというのがございまして、それを使うとロケットのエンジンに比べて非常に音が小さいと。そういう意味で、今、提案されているのは、空気吸い込みエンジンの1段で、2段にロケットということで、地上を飛んでいるときには大きな音がするものは使わないようなシステムを作るということで、トータルとして環境に優しいようなシステムをこれから先は考えていかなきゃいかんじゃないかということで、推進系を中心としてやっております。
    それ以外のごみが出ないとか、そういうのはロケットと基本的に同じようなことで、環境に対して優しいというのは、間違いなく今後考えていく1つの基準になるということで、現在それも考慮に入れて計画検討を行っているところでございます。

 冨田特別委員 

   実は、ほかの皆さんとほとんど同じようなことを聞いて恐縮なんですけれども、今の御説明ですと、大体基盤技術が中心ですよね。例えば、ヨーロッパなんか、WLCスタディーから始まって、FESTIP、今は何をやっているかわかりませんが、コンフィギュレーションの物すごいシステマティックな検討をやっていますね。やはり、こういう基盤技術とあわせてシステム的な検討が要るんじゃないか。その中に、今、話の出たいろいろな要素、上から落ちてくるものはないかとか、ほかに使い道はないかとか、そういうミッション的なものをひっくるめて、システム的な検討がほかにもう一つあるべきじゃないかと思うんです。
    実は、これまで日本というと、宇宙というと技術の獲得というのが1つの大きな眼目になってきたんです。その技術の獲得ということを表に出すと、外国から足元を見られてしまうわけです。日本は技術が欲しいんだろう、技術だけやりゃいいんだろうという言い方をされるんですが、やはりこれからは少し宇宙も戦略的にいかなきゃいけないんじゃないか。だから、そういうシステム的な検討も是非、先ほど話す場をつくっていただきたいという話があったけれども、むしろ事業団さんが中心になってそういう動きを始められたらいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

 河内山(宇宙開発事業団) 

   動きを始めるということに関しましては、NAL、NASDA、ISASを通じて、そういう話が非常に重要であるということは認識しておりまして、是非今後やっていきたいと思っております。
    システム検討につきましては、基盤研究と並行して、当然のことですがやっておりまして、3年ごとぐらいに見直していくような努力を続けていこうということで、今、具体的な計画を詰めているところでございます。

 冨田特別委員 

   わかりました。

 栗木委員 

   過去に日本で有人のロケットがなかったかといいますと、戦前、ちょうど終戦間際に山名教授がデザイン、私が学生のときに教授になられたんですけれども、飛ばした秋水というロケットがありまして、これは事故を起こして、パイロットともども墜落しましたけれども、なかったわけではありませんし、戦後にまた糸川教授もそういうイメージを持っておられたと私、聞いております。したがって、そのアプローチというのは、是非3機関でやっておられる運営本部の中のアクティビィティーで、どういうアプローチをとればシステムとして、つまり信頼度を高めていくか。ただ単にコンポーネントの寄せ集めだけじゃなくて、どういうぐあいにして、もう既にそこまでやってみるという前例もあるわけですし、そういうコンセプトもかなり古い昔からあるわけでして、そういうものも是非見ながら、どういうものが一番早道であり、なおかつ一番堅実な道であるかというのを検討していただきたい。確かに20年、30年かかると思いますけれども、焦らずにお願いいたします。よろしく。

 長柄部会長 

   よろしゅうございますか。
    それでは、この推進系の最後ですけれども、エンジンの中核研究開発プロジェクトについて、冠推進会議マネージャー、航空宇宙技術研究所の角田の所長ですけれども、お願いします。

 冠(航空宇宙技術研) 

   エンジン中核プロジェクトの冠と申します。よろしくお願いします。
    今、議論にもございました基盤技術、それからシステム技術、いろいろございますけれども、このエンジン中核研究開発プロジェクトは、御存じのようにH−2ロケットの失敗などを受けまして、信頼性向上というものを今ある問題点、そういうものから発して、身近なものから発して、技術資源を拡大し、そして、しかもそれを宇宙3機関連携でもって進めようとするプロジェクトでございます。
    この連携・協力の推進に関する体制に関しましては、前に信頼性向上共同研究プロジェクト推進会議の御説明のときに御紹介あったと思いますけれども、その中で、今日、お話しさせていただきますのは、このエンジン中核研究開発プロジェクト、この研究チームのことでございます。
    研究の概要でございますが、ここにありますように、輸送システムの根幹をなすエンジン技術、これは液体ロケットエンジンでございますけれども、その技術の蓄積と基盤強化を目的に、今、申し上げましたように、ISAS、NAL、NASDA、この3機関を中心としまして、研究者、技術者の参加を得まして、LE−7Aエンジンの信頼性向上、それからロケットエンジンの信頼性向上技術、そういうものをやっていく。それで、このLE−7Aの信頼性向上とかエンジンの高信頼性化技術というのは、これは目的なんですけれども、三者で連携して事を進めるには共通テーマを抽出して、それに基づいて各研究チームをつくって研究開発を進めていくという観点から、このようなエンジンシステムの解析研究、ターボポンプ要素の研究、計測制御・ヘルスモニタリングの研究、ノズルの研究、エンジン耐久性向上の研究、このようなカテゴリーに分けて、平成13年度は研究を進めております。
    例えば、LE−7Aエンジンの信頼性向上は、特にターボポンプ要素の研究とかノズルの研究に反映されております。そのほかの技術に関しましては、高信頼性化の研究の内容になっております。
    具体的な内容でございますけれども、ちょっとお時間がございませんので簡単に御説明いたします。先ほど5つ申し上げましたうち、全部が同じ重要レベルで進められるものではございませんで、やはりポイントがございます。そのポイントの1つがエンジンシステムであり、ターボポンプ要素であり、それから、もう一つ、後で申し上げますけれども、ノズルの研究でございます。
    それで、このエンジンシステムの解析研究に関しましては、この中に3つございますが、その内容はロケットエンジンの解析、設計、評価技術の向上、それがこの中で目的になっております。それはどういうことかといいますと、先ほど来ちょっと問題になっておりましたロケットエンジンの信頼性の最適化という問題が今ございます。今、LE−7Aに関しまして言えば、コンポーネントごとの信頼性が最後まで定量的に評価することが難しい。それから、開発の最終段階で重大な故障が発生しているという問題がございます。ですから、これを目標といたしましては、初めの設計段階から定量的にその信頼性を評価しておこう、そういう技術を確立しようという目標で進める研究がこれでございます。
    それから、2番目のロケットエンジンの動的シミュレータの研究というのは、これもやはり8号機の事故の原因解析、原因究明のときに問題になったんでございますが、ロケットエンジンの精度が非常に高いシミュレータがあれば、かなり原因究明についてもいろいろ早期にわかったであろうし、また現在、運用されようとしているロケットエンジンについても、その負担がかかる箇所とか特性を含めてわかったであろうし、ということで、この動的シミュレータの構築というのがそこで求められました。それを実現するための研究でございます。
    それから、あと、エンジン要素解析ツールの研究というのは、2番目が全体のシステム的な研究とすれば、これは個々の例えばターボポンプのインデューサのCFD解析とか、それからノズルの中のCFD解析とか、そういう流れをスーパーコンピュータでもって解析するツールをここで開発しようという研究でございます。
    それから、2番目にターボポンプ要素の研究は、これはまさにLE−7Aエンジンで問題になっておりましたテーマについて研究を進めます。今、ターボポンプの水素のインデューサに関しましては、先ほどもお話がございましたように、もう既にインデューサの改良設計が進んでおりますので、今後OTP、酸素の方のインデューサにつきまして研究を進めてまいります。そして、開発プロジェクトの方では、まさに実際のものをつくるわけでございますけれども、このエンジン中核の方では、そのお手伝いといたしまして、いろいろなタイプの複数のタイプのインデューサを研究いたしまして、そのデータを開発グループに提供する形になっております。
    それから、軸受の耐久性も問題になっておりますので、軸受の保持器の設計法とか加工法について研究を行います。
    それから、もう一つ、ターボポンプ試験設備の高度化でございますけれども、これもH−2Aの打上げ前評価で提言されたことでございますけれども、ロケットエンジンで使っている実際の推進剤、液体酸素ポンプならば液体酸素、それから液体水素ポンプであれば液体水素、その実液でもってポンプの特性を幅広く取得しなさいという御指導がございました。それに基づきまして、ターボポンプの試験設備を高度化いたしまして、特に極低温のインデューサの試験設備をこの中でつくるというのが1つのポイントになっております。

 長柄部会長 

   申しわけございません。ちょっと時間がありませんので、あと二、三分でお願いします。

 冠(航空宇宙技術研) 

   あと、そのほかにつきましては、このようなテーマ、ノズルの研究、エンジン耐久性向上の研究がございます。
    それから、ここであと申し上げておかなければならないのは、再使用輸送システムとの関係、それから開発プロジェクトとの関係でございます。再使用に関しましては、本プロジェクトはH−2Aロケット相当のロケットの技術を対象といたします。そして、今、再使用輸送システムに関しましては、運営本部の別のワーキンググループの中で検討されておりますので、そちらと今後調整を図っていきます。
    それから、開発プロジェクトに関しましては、じかに開発の中でつくるわけではありませんが、それと密接に関連して研究成果を反映していく方針でございます。この中には、下から3行目に、直近のターゲットの開発課題に対しては直接寄与しないがということは、ちょっと誤解を招きますが、開発そのものはやらないけれども、非常に近い場所で連絡をとって努力していくということでございます。
    これは、今の関係を図にしたものでございます。開発のグループとエンジン中核と情報交換等を行って協力していくという図式でございます。
    あと、体制でございますけれども、エンジン中核の仕事を進めていく上でポイントがあると思います。それは、やはり先ほど言いましたけれども、開発ではないが、開発と密接に協力しなければいけない。開発に成果を反映する必要があるということと、それから、これを3機関でやるということでございます。そういう意味で、情報交換をいかに効率的にやるかが1つのポイントであると思います。
    それから、もう一つ、異なった組織で進めるということで、いわゆるマネジメントサイクルを決定してやるということがポイントになるかと思います。

 長柄部会長 

   ありがとうございます。どうぞ、御意見、質問、ございましたら。

 井口委員長 

   冠さんがリーダーとして進めておられるということに大いに期待を抱いております。信頼度を上げるときに、数値目標を設定しておられますかということが1つと、それから無人と有人ではけたが違うだろうと。そのあたりはどう今、お考えでしょうか。

 冠(航空宇宙技術研) 

   まず、エンジン中核としての信頼度の数値そのものは設定しておりません。それで、やろうとしていることは、数値的に評価する信頼評価技術を確立しようということでございます。それが1つでございます。
    それから、もう一つ、有人と無人に関しまして、私もあまり勉強しているわけではございませんけれども、信頼度そのものは、ある先生の報告によれば変わらない。しかし、いわゆるバックアップといいますか、リダンダンシーといいますか、その考え方が根本的に違うのではないかという御意見をお伺いしております。どういう形がいいのかは、まだわかりませんけれども、その辺も今、申し上げた信頼度の定量的な評価とあわせて検討していくのが、このエンジン中核です。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。

 長柄部会長 

   ほかにどなたか。冨田さん、ありませんか。

 冨田特別委員 

   ありません。信頼度はなかなか難しい。数値目標も厳しいので、是非よろしくお願いします。

 冠(航空宇宙技術研 

   専門家のお話では、たぶん1年か2年じゃなくて、10年単位の時間はかかると言われておりますけれども、それが完成してから使うというのではなくて、出てきた段階でなるべく実際にアプライしていく手法をとりたいと思っております。

 冨田特別委員 

   使って試して。是非それをお願いします。

 長柄部会長 

   このグループといいますか、ほかの信頼性もそうなんですけれども、このグループができた経緯は、皆さん御存じかもしれませんけれども、H−28号機とか5号機の事故の反省から、いろいろ事故解析等に冠さんなども参加されたわけですが、やってみると非常に基盤的な基礎的なデータが欠けていると。場合によっては、NASAのデータをそのまま信じたとか、日本自身で基本的なデータがあまりとれてなかった。たぶんこうだろうと、在来の技術ではこうだから、これで間違いないと思ったのが実はそうじゃないということで、その反省に立って、LE−7エンジンみたいなものですけれども、一方では7Aの開発をやっているわけですけれども、その基礎データをもう一度やり直してみようということでスタートしたわけですね。そういうことで、本来は前後しているのかもしれませんけれども、このメンバーの方々に一生懸命頑張っていただいて、基礎的なデータ、将来のために積み上げていただきたいと思います。
    よろしゅうございますか。それじゃ、どうもありがとうございました。
    それでは、輸送系の方はこれで終わりにしたいと思います。
    引き続き、情報収集衛星の開発の現状について、内閣衛星情報センターの内藤開発専門官から伺いたいと思います。よろしくお願いします。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   情報収集衛星システムの計画の進捗状況について御説明いたします。私、内閣衛星情報センターの内藤と申します。情報収集衛星計画で現在進めておりますのは、衛星で言いますと第1世代の衛星4機に加えまして、続く第2世代4機が予定されているんですが、そのうち2機につきまして、予備機的に早期に開発しようということで、この研究を始めております。本日は、第1世代4機と予備機的な2機の計画の進捗状況について御説明をいたします。
    冒頭に、内閣衛星情報センターということで自己紹介いたしましたが、昨年まで宇宙開発委員会には内閣官房の内閣情報調査室に設置されておりました情報収集衛星導入準備室として計画を御説明しておりました。この4月に内閣衛星情報センターというものが内閣官房内に設置されまして、本年度からはこのセンターとして計画の御説明をするということになります。
    まず、情報収集衛星の目的でございますが、この衛星の目的は、日本の安全の確保、具体的に言いますと、外交・防衛等の安全保障、及び大規模災害・事件・事故対応の危機管理ということのために必要な情報の収集を目的とするというものでございまして、平成10年末、10年12月22日に情報収集衛星の導入について閣議決定がなされております。
    このシステムの概要につきまして、4ページ以降に簡単に説明してあります。基本的に、このシステムは衛星システムと地上システムからなるわけなんですが、まず衛星システムにつきましては、4ページに示しておりますように、レーダー衛星2機及び光学衛星2機、この4機の衛星から構成されます。衛星の軌道につきましては、軌道高度が400から600キロ程度の太陽同期準回帰軌道という軌道を用いまして、レーダーセンサー、光学センサー、それぞれで地球上の任意の地点を1日1回以上観測できる設定にしております。なお、それぞれのセンサーの分解能ですが、レーダー衛星につきましては分解能が1から3メートル程度、光学衛星につきましては分解能1メートル程度を目標としております。
    レーダー衛星につきましては、例えば夜間であるとか、非常に天候が悪い場合でも地表の観測が可能というメリットがありますし、光学衛星につきましては、デジタル写真と同じような画像が撮れるということで、非常に情報の分析がしやすいと、それぞれメリットがございます。この2つのメリットをうまくかみあわせて、安全保障に役に立つ情報の収集をしようということで、4機を総合的に運用するシステムを計画して開発を進めているところでございます。
    なお、衛星は4機打上げるんですが、打上げ方法としましては、2機ずつデュアルロンチをいたしましてH−2Aロケットで2回で打上げようという計画になっております。
    次に、5ページに地上システムの概要についてまとめております。左下の四角の中に機能的な部門を示しておりますが、大きく分けまして4つの機能部門からなります。
    まず最初は、運用・情報管理部門という部門でございますが、この部門が外部からの要求を受けて撮像計画を作り、また外部に対して情報の提供、さらに、このセンターの中で得られます各種の情報を管理するというセンターの中枢的な機能を持ちます。
    2つ目の部門としては、管制部門でございまして、衛星の追跡管制を行う部門。
    3つ目の部門が受信・画像処理部門で、これは衛星が撮像しました各種データを受信し、人間の目に見えるような形まで処理をする部門でございます。
    4つ目の部門が画像解析・判読部門でございまして、この衛星から得られた画像をもとに、各種の情報の解析、分析を行う部門でございます。
    この4つの機能的な部門が、上の日本地図に示しておりますような物理的な4つの施設にそれぞれ配置されます。東京都内に中央センターといいます中枢となるセンターを置きますが、ここでは先ほど御説明しました4部門がすべて設置されます。ただ、中央センターにないのは、衛星と直接送受信する無線の部分はございません。
    この中央センターのバックアップ的な意味を持ちますのが副センター、これを関東圏に設置することにしております。副センターにつきましては、イラストに示すようにアンテナが2つかいておりますが、メインの受信局という役割を持ちます。中央センターのバックアップ機能ということで、この副センターにも4つの部門の機能がすべて置かれます。
    さらに、衛星が周回衛星ということで、地上との通信時間をなるべく長くとる目的のために、北海道と鹿児島に南北の受信局を置きます。この局につきましては、衛星との送受信の機能ということで、管制部門と受信・画像処理部門が置かれます。
    次のページに、物理的な建物施設の構造等が書き込まれておりますが、中央センターについては東京都内、市ヶ谷を予定しております。副センターにつきましては茨城県、北局につきましては北海道の苫小牧、南局については鹿児島県阿久根市という予定で現在、各施設の建設を進めているところでございます。
    7ページにざっとしたスケジュールを示しております。我々の計画は、先ほどの閣議決定が平成10年末でございましたが、10年度末から研究段階をスタートしております。平成11年度末から開発段階に移行いたしまして、昨年度末、平成12年度末におおむね詳細設計を完了した段階でございます。
    より具体的には、次のページになりますが、今回のこの計画は非常に短期間で開発を進めるということもありまして、我が国で進めておりました各種の宇宙開発の技術を総結集して、すべての技術を生かして、すばやく短期間で開発しようということになっておりましたので、内閣官房を中心に、文部科学省、経済産業省、総務省の御協力をいただきまして、それぞれの得意なところを担当して開発を進めていくということでございます。
    まず、文部科学省にお願いしておりますのは、衛星バスの開発及び光学センサの開発。さらには、衛星システム全体としての取りまとめにつきましてもお願いしております。この部分では、平成12年度に詳細設計を終了いたしまして、現在は衛星システムとしての維持設計、さらには衛星の製造に着手、製造を開始しております。この秋からは、最初に打上げるPFMの組み立てに入る予定でございます。
    それから、2番目の経済産業省には、合成開口レーダーの開発をお願いしております。それから、総務省には、衛星で撮った画像を地上に伝送してくるデータ伝送系の開発をお願いしております。この2つのコンポーネントにつきましても、平成12年度に詳細設計を終了いたしまして、引き続き維持設計に入っております。現在は、それぞれ製造・試験を行っておりまして、本年度末にはコンポーネントとしてシステム試験を完了して、衛星側に引き渡し、組み立てていくスケジュールになります。
    それから、内閣官房みずからやっております地上システムでございますが、地上システムにつきましても、昨年度末、詳細設計を完了いたしまして、現在は装置の製造に移行しております。また、内閣官房では、先ほど御説明しました4つの建屋、建物の建設もあわせて進めておりまして、昨年度中に建物の設計も終わり、昨年度末にすべての施設が着工しております。本年度中には、4施設がすべて完了し、地上システムの設置・調整を行っていくということになります。
    それで、当初閣議決定にもございましたが、打上げの目標といたしましては平成14年度を目途に計画を進めていたところなんですが、昨年度末、詳細設計を完了して今後のスケジュールが確定いたしました。その結果、第1回の打上げは平成14年度冬期、第2回の打上げは平成15年度夏期ということになりました。
    以上が第1世代衛星4機、及びその関連システムの開発状況でございます。
    9ページからは、次期衛星1というものの計画の状況について御説明しております。ちょっと冒頭に御説明しましたが、情報収集衛星というのは我が国の安全保障を目的とした実用衛星ということなんですが、さまざまなリスクがある。このリスクをリスク管理の観点で何か手を打つ必要があるんじゃないかという御指摘もいただいておりまして、それに対応するために我々が考えておりますのが、第1世代4機というのが設計寿命は5年でございますので、5年後には次を打上げる必要があるということですが、5年後に打上げる4機のうち、半分の2機を早目に開発して予備機的な性格も持たせようということを考えております。予備機的になるべく早く間に合わせようということで、本年度から研究に着手したんですが、衛星の仕様としては第1世代の仕様を基本としておりまして、あまり大幅な改善は加えない予定にしております。ただ、数年遅れて開発するということでございますので、第1世代衛星の開発あるいは運用の当初のもろもろの問題点を踏まえた上で、可能な範囲での若干の性能向上は図っていきたいと思っております。
    最後のページに、この次期情報収集衛星1のスケジュールについて示しております。本年度、来年度、研究段階で、平成15年度から開発段階に移行する計画としております。ただ、注のところにも書いてございますが、あくまで第1世代衛星の予備機という性格を持っておりますので、これを打上げる時期につきましては、第1世代の打上げ結果を踏まえて、最終的に決定するという計画にしてございます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。御意見、質問、ございましたら、どうぞ。

 冨田特別委員 

   ちょっと初歩的な質問で恐縮なんですけれども、3つあります。
    1つは、画像を地上に輸送するのは、これはデータリレー衛星か何か使うんでしょうか、直接なんでしょうか。つまり、すべて日本の衛星というか、日本の施設を使って地上に送ってくるようになっているのかということが第1問です。
    第2問は、合成開口レーダーを使っておるようですが、合成開口レーダーは非常に精度がいいんですが、これだけの分解能の画像を得るには相当処理時間がかかるだろうと思うんです。その処理時間を速くするための方策は何か考えておられるのか。
    それから、画像処理ソフトは、日本で開発をされておられるのか。外国ソフトの方がどうしても性能がいいですよね。日本のそういうソフトが今あるのか、あるいは開発を考えておられるのか。
    それから、3つ目は、判読技術、つまり画像を撮ったはいいけれども、それが何を意味しているのかを読み取るのは非常に難しいと思うんですね。これは、日本はたぶん経験がないと思うんです。それをどうやってそういう技術を習得していこうとしておられるのか、その3つを聞かせていただきたい。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   まず、第1点目のデータ伝送ですが、第1世代では日本の3つの受信局に直接伝送することになります。
    2つ目のSARでございますが、確かにスピードがかかるという問題があります。ただ、安全保障目的で使う場合に、少しでも早く見たいというニーズがありまして、とりあえず今とっている方法は、マシンパワーを増強して速くしています。計算機のリソースの配分もいろいろ検討しましたが、SARの地上処理には相当な比重を置いて速くする形をとっております。

 冨田特別委員 

   どのぐらいで今、処理できるんですか。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   そのあたりについては、あまり広く公表しないことにしておりますが、我々として十分、この程度であれば実用に耐えるであろうと思う時間に設定しております。
    ソフトについても、一応純国産でやっております。一部、SARに限らず、光学等でも画像の解析をしたり、高次処理をするソフトが必要になってきますが、世界一般に売られているものについてはそれなりに活用しております。
    それから、最後の判読技術でございますが、おっしゃるとおり、日本では今までほとんどやったことがない分野でございます。唯一、防衛庁の一部でそういう知見を持っている人もいるとは聞いておりますが、なかなか我々にそのまま生かせるものでもないということもございまして、判読の要員を何名か予定しておりますが、事前に運用を開始する前に十分な訓練をやっておく必要があるだろうと考えております。
    先ほど、1ページのところで、我々のセンターが発足して、現在180名という数値を示しておりますが、この180名につきましては、衛星の追跡管制をやる要員であるとか画像の解析判読をやる要員が含まれております。打上げは14年度末ではありますが、もう昨年度からかなりのメンバーを集めておりまして、各種の訓練をやっております。特に判読技術につきましては、日本に蓄積がないということもありまして、諸外国のそういう知見のあるところで、あまり秘密で教えられない部分までは入っていけないんですが、一般にも公開されている部分で外国での訓練を行っているところでございます。ただ、あくまでこれは教えてもらうばかりではなくて、みずからいろいろ経験を積んで蓄積をしてくということが非常に重要だろうと思っておりまして、今後はそういう活動もやっていくことになると思っております。

 冨田特別委員 

   ついでで、そのことに関して、外国の先例とか、そういうことはあるんでしょうか。今の画像を読み取ることに関して、どこかの国に多少教えてもらうとか、そういうことは全くなしでやるんでしょうか。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   基本的には、外交上の秘密に絡むような非常に深いところまで教えてくださいということはやっておりません。そういう意味で、それほどある国と手を結んでやっているということではございません。一般的な範囲でやっております。

 佐藤特別委員 

   私、この宇宙開発委員会と情報収集衛星の関係をちょっと知りたいんですが、我々は評価する立場にあるのか、一般的な御報告をしていただいている立場なのか、そこをちょっと教えていただきたいんですが。

 長柄部会長 

   このプロジェクトのかなりの部分を宇宙開発事業団が担当しているということもございまして、宇宙開発委員会としてはこのプロジェクトが健全に走っているかどうかを確認する必要があると考えておるわけです。

 佐藤特別委員 

   ということは、技術的なことについての評価とか、そういうことだという意味でしょうか。つまり、目的そのものは全く文科省と関係のない話でございますから、我々は技術的有効性だとか、そういうことについての評価ということでしょうか。

 長柄部会長 

   前の宇宙開発委員会は、総理府にありましたときは、とにかく宇宙開発事業団と関係あろうとなかろうと、すべての日本政府の宇宙開発利用にかかわる事業については意見が言える立場にあったわけでございます。宇宙開発委員会の立場が変わりまして、そういう意味では宇宙開発事業団の絡む事業については、宇宙開発事業団が内閣情報室と協力して開発する。開発したものがちゃんと有効に利用されているかどうかということまでは見れるんだと思います。

 佐藤特別委員 

   もう一つなんですが、これは私が質問できることか、よくわからないんですけれども、例えば学術的な研究にこの衛星のデータを大学なりからいただきたいとお願いした場合には、これはもちろんいただけると思ってよろしいんでしょうか。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   冒頭に目的について御説明いたしましたが、基本的に安全保障等に使うということでございまして、基本的には政府内で使う。特に、撮った画像情報等についても、かなり秘密を要するのではないかと想定しております。ただ、これは純然たる安全保障だけではなくて、災害等の危機管理への活用も考えておりまして、今後、撮った画像をどう利用していくのかについては、内閣の中でも検討を進めていくことにしております。

 佐藤特別委員 

   特に災害と関係した火山だとか、いろいろなことに関しては、地球物理、学術的にも大きな意味があると思うし、長期的には災害そのものの対策とか、いろいろなことの役に立つことではあると思われるわけです。是非考慮を。

 長柄部会長 

   こういうことが始まるときから、この宇宙開発委員会の議論で、特に地球物理の方とか生物関係の方とか、衛星から非常に貴重な、学問的にも社会的にも、安全保障以外に非常に有用なデータがとれると。そのデータを是非使わせてほしいということで、今と同じようにせめぎ合いがありまして、内閣の方では安全保障第1で、その他については何とも言えませんと、余裕があればということで来たんですが、前回の会議でも同じような意見が出まして、宇宙利用部会というのもやっているんですが、そちらの方でも是非この情報収集衛星のデータを一般にも、ある程度制限下に置いても開示してほしいという意見も出ておりますし、ひとつ内閣の方でこの情報をどういう場合には出してもいいとか、そういうのをできるだけ早く決めていただきたいと思います。

 栗木委員 

   今おっしゃっておられたディクスロージャーの基準みたいなものですが、もしこれ解像度が1メートル、あるいは将来こういった衛星はさらにもっと短い50センチというのも、宇宙関係の雑誌その他を見るともう既にあらわれておりまして、車のナンバープレートまで読めるようになるんじゃないかという話も出ております。そうしますと、1つのある別の見方をしますと、ディスクロージャーがあったときのプライバシーの保護というのは一体どうなるんだということが問題になるかと思います。家庭の中に踏み込んでくるとは思いませんけれども、もし企業が上から見られますと、自動車のメーカーなんて全く裸になっちゃうわけです。こういったときのデータが撮られたときの公開というのは、あるいはその秘密保持というのは、別の意味で保持されるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   まず、外国の商用衛星等で、近い将来50センチが出てくるという話はあります。ただ、ナンバープレートがあるかないかはわかるかもしれませんが、ナンバープレートの中まで読むことは無理でしょうから、まだ今の段階ではプライバシーの問題までは関係ないだろうと思われます。
    工場の中が見えるという話につきましても、日本の国がどういう規制をするかにかかわらず、外国の商用画像を使えば見えてしまうということもございます。ただ、まだこういう問題について日本では未検討という状況でございまして、御指摘の点も踏まえて、また継続的に考えていかなければいかんと思っております。

 栗木委員 

   質問の意図は、自分のところの国の衛星が自分の国の上を見るというだけでなく、これはそれ以上の機能を持っているわけですし、よそは今、好き勝手に見ている状況ですので、インターナショナルにどういうルールがあるのか。あるいは、なければどうやって将来つくられていくのか、そういうことも必要じゃないかと私、感じておるんですけれども。

 澤岡特別委員 

   今のことと関係しまして、アンテナさえつければだれでも生データは撮れるんでしょうか。それともスクランブルかけて規制するとか何かやるんでしょうか。好ましくない機関がアンテナをつけて撮れば、十分に撮れると思うんですが、そのあたりは何か法律をつくるんでしょうか。

 内藤(内閣衛星情報センター) 

   いえ、特に法律では規定いたしませんが、先般もNASDAの方でセキュリティ対策についても御議論があったようですが、我々のこの衛星でも開発当初から無線で情報を伝送するという部分については、暗号化するということで進めております。その暗号のアルゴリズムなり鍵がわからない限り、だれでも見れるというわけではありません。

 長柄部会長 

   ほかにございませんか。よろしいでしょうか。じゃ、どうもありがとうございました。
    本日、予定しておりました議題は一通り終わりました。どうもありがとうございました。
    その他でございますけれども、計画5−7として質問票への回答がございます。実は、これは中西委員から前々回でございましょうか、質問のありました件について、宇宙開発事業団の方から、中西先生にはもう既にこの内容について御説明申し上げて了解いただいたということでございます。参考のために皆様にも配付させていただきました。
    それから、若干時間がございますけれども、本日の会合全体について、何か御意見ございますでしょうか。特にございませんか。それでは、事務局の方から何かありますか。それでは、本日の部会はこれで終了させていただきます。次回は、7月18日水曜日午前10時からでございます。場所は、実は今の文部科学省の別館の建物が引っ越すということがございまして、まだ確定しておりませんが、先生方には後日連絡いたします。
    それでは、本日はどうもありがとうございました。

――了――





(研究開発局宇宙政策課)

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