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宇宙開発委員会

2001/06/11 議事録
宇宙開発委員会 計画・評価部会(第4回)議事録


宇宙開発委員会 計画・評価部会(第4回)議事録

1.日時 平成13年6月11日(月)
  10:00〜12:30

2.場所 文部科学省別館第2会議室(旧科学技術庁5階)

3.議題 (1) 宇宙科学全般について
  (2) M−5ロケットについて
  (3) 月周回衛星(SELENE)について
  (4) 金星探査計画について
  (5) 広報・普及活動の現状と今後の計画について
  (6) その他

4.資料 計画4-0-1 宇宙開発委員会計画・評価部会(第2回)議事録
  計画4-0-2 宇宙開発委員会計画・評価部会(第3回)議事録(案)
  計画4-1 宇宙科学全般について
  計画4-2 M−5ロケットについて
  計画4-3 月周回衛星(SELENE)
  計画4-4 金星大気探査計画
  計画4-5 NASDAの広報活動
  計画4-6 金星探査機計画の審議について(案)

5. 出席者
     部会長 長柄喜一郎
     宇宙開発委員 井口雅一(委員長)、栗木恭一
     特別委員 上杉邦憲、佐藤勝彦、澤岡昭、高柳雄一、冨田信之、中西友子、松野太郎
     オブザーバ 斉藤勝利、古濱洋治、吉川一雄

6.議事内容

  長柄部会長 

   おはようございます。それでは、定刻になりましたので第4回の計画・評価部会を開催したいと思います。あとまだいらっしゃっていない方も、間もなくお見えになることと思います。
    本日は、皆様、大変お忙しいところ、特別委員の先生方、この会合に御参集いただきましてありがとうございます。本日は、宇宙科学と宇宙開発事業団の広報・普及活動の現状等について説明し、審議をいただくことになっております。そういう関係で宇宙開発事業団から衛星担当の古濱理事、一番向こうでございますけれども、総務広報担当の吉川理事に御同席いただいております。
    本日の議題に入ります前にお手元の資料を御確認したいと思いますが、資料は全体で8種類あるはずでございます。何か不足のものがございましたら、事務局の方に申し出ていただきたいと思います。それから、前々回の議事録でございますけれども、計画の4−0−1が確定版でございます。これをお配りしております。それから、計画の4−0−2という資料でございますけれども、これは前回第3回の議事録(案)でございまして、これにつきまして修正、意見等がございましたら、今週中くらいに事務局まで連絡をお願いしたいと思います。皆様方からの修正意見を反映させて、次回の会合に確定版をお配りしたいと考えております。
    それでは議題に入りたいと思いますが、本日は宇宙科学を中心に審議を行いたいと思います。それぞれにつきまして宇宙開発事業団及び宇宙科学研究所の方から説明いただきまして、その後、質疑応答ないし皆様方からいろいろ御意見を伺いたいと考えておりますので、積極的に発言をいただきますようお願いいたします。
    それでは、最初に宇宙科学全般、特に現状につきまして宇宙科学研究所の企画調整主幹の松本教授の方から説明をお願いしたいと思います。松本先生、お願いします。

  宇宙科学研究所 

   宇宙科学研究所の松本でございます。それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきたいと思います。資料は全部で4つございます。「日本の宇宙科学−成果と展望」と題する資料と「宇宙科学研究所科学衛星の現状」「プロジェクトの概要」、あと「MUSES−CとLUNAR−Aの進捗状況」とございます。時間の都合がありましてすべての説明をするわけにまいりませんので、特に最初の宇宙科学−成果と展望といいますのは宇宙科学研究所がこれまでやってきた科学成果を取りまとめたものでございますので、後で目をお通しいただきたいと思います。
    まず最初に見ていただきたいのは、これが現在飛んでいる科学衛星、それから現在開発中の科学衛星をリストしたものでございます。縦軸が時間になっておりまして、横に各種衛星の名前が書いてございます。一番右側に「あけぼの」という衛星がありまして、88年に飛びまして現在もまだ生きております。それから、「ようこう」は太陽観測衛星です。GEOTAILは地球実験の観測衛星、「はるか」は電波での干渉計の衛星です。「のぞみ」は火星に向けた火星探査機です。この衛星が今現在も活動している状況になっています。残念ながら、X線天文衛星の「あすか」といいますのが今年の3月に大気圏に突入して寿命を全うしたわけですが、いまだにこれだけの衛星が活躍しております。
    さらに、それ以後幾つかの衛星が開発中でありまして、DASH、MUSES−C、LUNAR−A、ASTRO−F、SELENE、ASTRO−E2、SOLAR−B、これだけの衛星が現在開発中でございます。このうちDASHとSELENEはピギーバック及びH−2Aのミッションなんですが、それ以外はM−5によるミッションでございます。御覧になっていただくとわかりますが、2002年から2005年にかけてかなりたくさんの衛星が打上げられる予定になっております。きょうはその全体について多少御説明したいわけですが、時間の都合もありますので、当面、M−5の中心ミッションでありますMUSES−C及びLUNAR−Aを中心に説明させていただき、それから後、残った時間でそれ以外の衛星についても御報告させていただきたいと思います。
    最初に、MUSES−Cは宇宙研の科学衛星ではもちろんありますが、特に将来、科学探査を実行する上で必要な技術を開発するということが一つの目的となっています。宇宙科学研究所で言いますと工学実験衛星でございます。工学実験衛星としての技術の目的といたしましては電気推進系、惑星探査を目的とするための推進系です。それから、自律誘導航法、サンプルの採取、地球大気再突入及び回収、これぐらいの実験を目指している衛星でございます。もちろん科学目的もありまして、小惑星の表面の物質をサンプルし回収することによって、小惑星の起源あるいは太陽系の起源まで迫ろうという目的を持った衛星でございます。
    これは順調に開発していたわけですが、最近の状況の変化といたしましてはM−5の4号機、昨年2月のASTRO−Eの打上げが失敗したために打上げのスケジュールが変わりました。現在のところ、ほかの衛星ミッションと調整した結果、平成14年度冬期に打上げるということで計画が進んでおります。当然のことながら、小惑星サンプルリターンといいますのは相手があって初めてできることでありまして、打上げの時期が変わりますと対象も当然変化するわけです。打上げが延びたことによって小惑星の対象があり得るかということを皆さんで随分検討されました。その結果、対象の小惑星は当初、1989MLでございます。それを1998のSF36、最初の数字は見つかった年なんです。ですから、これは1998年に見つかった小惑星なんですが、見つかったばかりの新しい衛星がちょうど打上げの時期にターゲットとしてあったということになります。
    当然、相手が変わりますと中身もいろいろと変わってくるわけですから、それに対して対応を迫られました。まずは探査機として小惑星のサンプルリターンに可能かどうかということから始まるわけですが、相手の大きさとかありますし、それから自転が速過ぎても今度はサンプルがとれません。そういう意味でいろいろと調べた結果なんですが、自転周期が今のところ12時間あって、これは十分接近してサンプルをとることに問題ないだろうということがわかりました。
    さらにもう一つは、小惑星のタイプが何かということでございます。世界のこの種の学会では惑星検疫という問題がありまして、地球に持ち込むことが危険であると思われるものについては禁止されることがあるわけです。もしそういう小惑星のタイプですと、そこからのサンプルリターンは大変難しくなるわけですが、観測した結果ではSタイプ、これは表面がシリケートが中心になっている小惑星ですが、そのような特に問題のないタイプであることがわかりました。そういう意味で、1998SF36に変更したことによって特に大きな問題は発生しておりません。
    ただし、もう一つの問題は、相手が変わったことによって回収する場所が変わりました。1989MLの場合は北半球でアメリカを対象と思っていたわけですが、1998SF36の軌道解析をした結果、これは南半球で回収になるということがわかりました。南半球でもいろんな可能性があるわけですが、現在ではオーストラリアのウーメラ付近を回収地点としてこれから交渉しようと考えております。
    もう一つ、大きな変更点は対NASAとの国際協力の関係でございます。回収地点が南半球になったと先ほど申し上げましたが、当初は北半球の北米で回収する予定でありまして、これにNASAと協力して回収しましょうということでございました。それが、NASAとのコントリビューションがなくなりました。もう一つは、新聞等にも一部載っておりましたが、MUSES−CにNASAが開発したローバーを載せようということも協力のうちでありました。しかし、これについてはNASAが経費的あるいは重量的に十分見合うものができないということで搭載をあきらめたわけです。そういう意味で、日米関係の協力を見直すということが迫られました。今年の3月、そこにいらしている上杉先生がNASAに行かれましていろいろと話をなされた結果、そこに書いてありますようにいろいろな面で全般的に協力を見直し、お互いの合意が得られています。
    例えばMUSES−Cに対してはNASAのDSN、ディープ・スペース・ネットワークというアンテナ網なんですが、その支援がどうしても不可欠ですので、それは是非お願いする。それから、NASAは対象小惑星の地上観測を行う。先ほど言いましたタイプが何だとか、あるいは自転周期が何だとか、そういう協力は既にしていただいているわけです。それから、先ほど惑星検疫という話をしましたが、プラネタリープロテクションにかかわる安全性評価についてはNASAが先進国でありますので、そちらの協力をお願いします。それとともにNASAは当初、ローバー観測に選抜されていたISAS側のサイエンティストに代替の科学観測機会を提供する。これに対して日本側は回収されるサンプルの一部をNASAに提供するとともに、初期分析担当の科学者及び分析のための国際AOのアドバイザーをNASAから迎える。また、オービターの科学機器、ISAS製ロボットランダへNASA側科学者の参加を受け入れるということで、今、日米協力が合意に達しております。
    実際の進行状況でございますが、お手元に写真があるものを幾つか御紹介させていただきます。これは回収サンプルでありまして、大気再突入する際のカプセルでございます。これも大気再突入に耐えるようないろいろな構造が問題になったわけですが、NASAのAMES研究所というところにあります風洞を使いまして、高速の高温のガス流を当てることによって性能を実証するという試験を行いました。その結果、確実に大気再突入に耐えることができるカプセルが今は既にでき上がっております。惑星探査でどうしても不可欠な推進系ですが、これは電気推進の装置でございます。一昨年に既にこれは世界的な記録であります18,000時間の耐久試験を完了しております。現在、フライトモデルと同等なスラスタによって再び長期耐久試験を実施中であります。そういう意味で、電気推進系についても十分探査に耐えるものができ上がっていると考えています。これは実際に小惑星に近づいてサンプルをとるための装置で、サンプラーと呼ばれるものです。実際には小惑星の表面に近づいてピストルの弾のようなものを発射いたしまして、破砕した結果飛び散ったものをカプセルに集めて地球に帰還するといったような装置でありまして、これも実機が既にでき上がっております。というわけで、基本的にはMUSES−Cに関することについてはほぼ開発要素が終わっておりまして、現在、一次かみ合わせと呼ばれている作業が進行中でございます。今年の12月から総合試験に入りまして、実際の打上げは平成14年11月末から平成15年1月の間に打上げようと考えております。小惑星に到着するのが平成17年6月、地球へ戻ってくるのが平成19年6月と予定されております。
    以上でMUSES−Cに関しての御報告を終わらせていただきまして、続いてLUNAR−Aに移らせていただきます。LUNAR−Aは宇宙研としては月探査のための科学ミッションでありまして、特にペネトレーターを月表面に打ち込みまして、月震及び熱の流束をはかることによって内部構造を調べようという科学ミッションでございます。LUNAR−Aについてはこれまでもいろいろと問題点が指摘されまして、幾つかここでも御報告がされていると思います。今回は、ここしばらくの間に起きた異常について少し御説明させていただきたいと思います。平成10年度末に全機認定試験と言われます、我々で言いますとFMのQTレベルの試験なんですが、それを行いまして、それでうまくいけば打上げようという状況になったわけですが、その際、ポッティング材にクラックが発生するということが見つかりました。その結果、ケーブルが損傷するという事故が起きました。これの改善のために、打上げを平成14年度に変更するということをお願いしたわけでございます。さらに昨年、M−54号機の打上げが失敗した結果として、これも全体の衛星との絡みなわけですが、打上げを平成15年度に変更するということをお願いいたしました。これが平成12年度の宇宙開発委員会に相当します。
    我々としての一番の問題は、特にクラックの発生をいかに抑えるか、確実な探査機をどのように作るかということなわけですが、それについては以下のような対応をとりました。まずは宇宙研の中で専門家によるポッティング委員会を作りまして、対策を検討しました。これは実際にポッティングにクラックが発生した状況でありまして、この辺のところにクラックが幾つか見えると思いますが、これは貫入試験をやり、かつ低温で貫入試験をしますと、こういうようなクラックがあちこちに発生するということがわかったわけでございます。そのためにどのような対策をしたかということですが、基本的にはポッティング材が低温で靱性が低下するということが問題であるとわかりました。つまり、低温でもろくなるということです。そのためにどういうことを考えたかといいますと、1つは低温での靱性が低下しないようなポッティング材を採用しましょう。これは新しいものでございます。さらにもう一つは、ガラスバルーンと呼ばれている小さなガラスの玉を埋め込むことによって軽量化を図ったわけですが、その材料についてもいろいろと工夫をいたしました。重要なところには軽量化を犠牲にしてでもガラスマイクロバルーンを使わない、あるいはバルーンの表面処理を考えるとか、バルーンの種類もかたいものをいろいろと使い分けるとかいろんなことを考えました。さらに、クラックの発生方向を予測して、縦クラックが発生しても問題とならないような機器配置にする、そういうようないろんな対策を講じました。その結果、これが対策を施した結果のポッティング材でありまして、打上げ貫入試験あるいは低温試験をやった結果、何の問題も起きていないということが確認されております。
    もう一つは、貫入試験というものでコンポーネントのレベルからしっかりと安全性といいますか、それを確認しようということでございます。アメリカのサンディア国立研究所というところに貫入試験のための設備がございまして、そこで個々のコンポーネントからシステムに至るまでの各種試験を行っております。これは実験場の風景でありまして、基本的には大砲を下に向けて撃つようなものだと考えています。これまで実験にたしか4回出かけております。実はつい先週もサンディア国立研究所にLUNAR−Aのチームが実験に行っておりました。先週行った実験はほとんどFMに近いもので、貫入試験をやった後で外部との通信がちゃんと確認できるかどうかという試験を行いました。その結果、速報ではありますが、大変うまくいったということを聞いておりますので、これでLUNAR−Aの開発が一歩先に進んだのではないかと思っております。これは貫入試験後に掘り出したペネトレーターです。こんなような状態で筒の中に埋まっているものでございます。
    それから、LUNAR−Aについてはもう一つ大きな問題がございました。それはどういうことかといいますと、打上げが延びた結果としての軌道の問題がございます。平成15年の8月、9月に打上げるという計画が進んでいたわけですが、実はその当時は平成16年2月、3月に月到着ということで計画を進めておりました。ところが、ちょうどそのころといいますのは火星探査機が幾つか火星に到着するという事情がありまして、特にNASAのDSN、ディープ・スペース・ネットワークが忙殺されて、LUNAR−Aの方向にアンテナを向けることが難しいという事情が出てまいりました。そういうこともありまして、月到着を少し遅らせることができないかといろいろ検討されました。その結果、月到着を若干遅らせて2004年の6月ないし7月に月到着ということで、これは軌道解析も済み、十分いけるだろうということでミッション計画が確定しております。
    現状ですが、先ほど申し上げましたようについ先週、サブシステム、コンポーネントレベルの貫入試験を行っております。平成14年の5月に最終的なFMの認定試験を行いまして、これが無事済めば打上げに行けるということで、次のステップに行けると考えております。
    以上がMUSES−CとLUNAR−Aについての状況でございますが、それ以外の衛星については少しずつ簡単に御紹介したいと思います。これがDASHでございますが、これはH−2Aに載せるピギーバック衛星でありまして、先ほどのMUSES−Cとは独立ではありますが、将来、科学ミッションにおいて回収が大きな役割を果たすだろうということで、大気再突入実験をちゃんとやって回収技術を確かめようというミッションでございます。これは2002年の1月、H−2Aの2機によって打上げたいということで今は準備中といいますか、待機中でございます。
    M−5のシリーズといたしましては、先ほどのMUSES−C、LUNAR−Aに引き続いて打上げられますのがASTRO−Fでございます。これは宇宙研としては初めての赤外線天文衛星でございまして、口径70センチの液体ヘリウムで冷却した望遠鏡を積み、全天のサーベイを行うことによって数百万個の赤外線天体を探そうと。その上で銀河とか星の起源あるいは進化を探ろうというミッションでございます。
    それから、同じ年のSELENEでございますが、これは後ほど別途議題になっておりますので簡単に申し上げます。宇宙開発事業団との共同ミッションでございまして、H−2Aで打上げる月周回衛星でございます。宇宙研はこれに対してサイエンスについての責任を持つということで、各種科学機器を今は開発、用意しているところでございます。
    ASTRO−E2です。N−5−4号機で昨年2月に打上げに失敗したX線天文衛星ASTRO−Eがあったわけですが、研究者の強い要望と、これまで宇宙研を支えてた大きなグループであることもあり、これは学問上の意義も非常に高いということで、宇宙研と理学委員会が是非やるべきであると昨年度は予算を申請して、今年度から予算がつき実行が始まっているものでございます。2004年度の冬期に打上げようということで、今、計画が進んでおります。
    最後になりましたが、SOLAR−B衛星です。現在、宇宙研の太陽探査衛星といたしましては「ようこう」という衛星が飛んでおります。これは軟X線で太陽面の撮像をすることによって、非常にアクティブな太陽の状況を初めて明らかにしたものです。太陽観測グループはその次のミッションとしてX線の観測をしますが、光の望遠鏡を載せて太陽面の微細構造を探ろう。角分解能で言いますと0.2秒程度の角度で太陽表面の磁力線を探ろうという計画を進めております。これは来年度からFMに入りまして、2005年の夏期、M−5−7号機によって打上げられる予定でございます。
    簡単ですが、以上で御報告にさせていただきます。

  長柄部会長 

   ありがとうございました。
    ただいま説明いただきました宇宙研のプロジェクトの現状につきまして、質問ないし御意見がございましたらどうぞ。

  佐藤特別委員 

   まず、MUSES−Cのことにつきましてお尋ねしたいんですけれども、たしか今年の1月か2月にアメリカの小惑星ミッションが小惑星に着いたりしておりますね。MUSES−Cとのすみ分けといいましょうか、どういうふうに相互に研究の特徴があるかを教えていただきたいことが一つ。

  宇宙科学研究所 

   あれは近づいて写真を撮りましたね。ただ、サンプルは持ってきていないわけです。MUSES−Cはサンプルを実際に持って帰る衛星探査機として初めてのもので、全く新しいものだと考えています。

  佐藤特別委員 

   非常にきれいな写真とかデータは得られたようで、あれはスペクトルスコピーとかそういうものもやっているわけですか。

  宇宙科学研究所 

   報告はなかったと思いますね。

  佐藤特別委員 

   それから、NASAのローバーが搭載されなくなったということをおっしゃっていましたけれども、それにかわるような何かをお考えになっておられるんですか。それとも、いくらかスケールはミッションとして少なくなるところで進まれようということになるんでしょうか。

  宇宙科学研究所 

   これは上杉先生がマネージャーですので……。

  上杉特別委員 

   もともとNASAの小さなローバーとは別に、日本側としてこれは一つの実験機器としてミネルバと言っておりましたが、大変小さなランダー、一応、ホッパーといいましょうか、多少動き回れる能力を持っているものですけれども、それをオプションとして予定しておりました。ターゲットが変わったことと、それからNASAのローバーがおりたということで重量的な余裕が少し出てきましたので、その分にミネルバを載せようということで、現在、準備をしております。これには小さなカメラを積んでおりまして、表面におりて観測をするということを考えております。

  澤岡特別委員 

   LUNAR−Aのペネトレーターですが、サンディアで試験を行っているということで、サンディアはDOEの管轄だと思うんですけれども、どういう枠組みといいましょうか、形で利用できているんでしょうか。

  上杉特別委員 

   おっしゃるとおりでございますが、これは宇宙研がやっていることではございません。これを開発しておりますメーカーが向こうと共同してやっているという枠組みでやっております。我々は関知しないというと言い方がおかしいですが……。

  澤岡特別委員 

   形の上では。

  上杉特別委員 

   はい、契約といいますか……。

  澤岡特別委員 

   日本政府がかむと大変難しい関係かと思ったもので質問させていただきました。

  冨田特別委員 

   大変興味ある計画で是非成功させていただきたいと思うんですけれども、これ、どこまでいけば成功かというような管理はやっておられるんでしょうか。例えばMUSES−CとかLUNAR−A、MUSES−Cですとサンプルがリターンされれば100%成功、LUNAR−Aですとペネトレーターがちゃんと分析して、そのデータがとれれば成功なんですけれども、例えばそれがうまくいかなかったとき、どこまでいけば何%成功というような評価を前もってしておられるんでしょうか。

  宇宙科学研究所 

   難しい質問なんですが、例えばMUSES−Cに関して言いますと、先ほど私が申し上げましたようにこれは工学実験衛星でございますので、そういう意味ではサイエンスに対してももちろん期待がありますが、まずは工学技術を実証するということが第一でございます。その技術についても先ほどいろいろ述べましたが、それが一つ一つできることがある意味の目的でありまして、それに科学がくっついてくればそんないいことはないというような程度でございましょうか。それから、LUNAR−Aに関してはもちろんサイエンスミッションでありますので、あくまでも科学的成果を出す必要があると考えます。2本のペネトレーターを打ち込むわけですが、もちろん2本がうまく動くことは当然期待しているわけですけれども、私どもの解析の結果では、たとえ1本でもかなりのことが言えるだろうとは考えています。

  冨田特別委員 

   もちろん完全にうまくいくことを目指してやるわけですけれども、うまくいかなかったときのことも考えて、ここに幾つか研究項目がありますが、例えばペネトレーターが1本でうまくいかなくても、ここまでいけばある程度データが……。

  宇宙科学研究所 

   それは科学的にシミュレーションしていまして、どこまでできるかということは研究チームの中で議論されております。

  冨田特別委員 

   そういうことを前もって準備されていた方がいいんじゃないか。

  宇宙科学研究所 

   多少はやっているつもりでございます。

  長柄部会長 

   今の件は後の議題の金星探査計画の説明を伺った後で、金星探査計画に着手することは妥当かどうかという議論に入ろうかと思うんですが、今、実は栗木先生の方でNASDAのプロジェクトを対象に考えているんですけれども、こういう大型プロジェクトに着手するときなり、着手といっても開発に着手という意味ですが、それから終わった後の成果を評価する際の基準を栗木先生を中心に特別部会で作っておりまして、そこの中でミッション・サクセス・クライテリアといいますか、今、冨田先生のおっしゃったようにどこまでいけば何点というか、どこまでいけばミッションのどこまで達成するか、どこまでいけば100%か、どこまで行けばエクストラか、余分かというミッション・サクセス・クライテリアないし成功基準をちゃんと作っておいて、そうしないと後で事後の評価をする場合、130点ぐらいいけたのか、どこまでいけばどうだ、最低限どこまで是非いきたいとか、そういうふうなミッション・サクセス・クライテリアをちゃんと作っておかないと後の評価がうまくいかないということになっておりますので、宇宙研のプロジェクトはNASDAのように大きいものじゃございませんけれども、事後評価のためにも絶対にこれは成功させなきゃいかん、ここまでいけばエクストラであるとか、そういうふうな基準があった方がよろしいんじゃないか。一般的に、例えばペネトレーターが2本のうち1本がうまくいかなかったら、あれは失敗だったと世間の人が評価するかもしれない。いや、1本だけでもこれだけのデータをとれるんだとか、そういうことをあらかじめ言っておく必要があるんじゃないかという気はいたします。何か御意見はございますか。

  宇宙科学研究所 

   今まで宇宙研の衛星ではそこまで厳しい事前の評価をしたことは多分ないと思うんですが、おっしゃるとおり必要かもしれません。私の個人的経験で言いますと、SFUをそれこそ栗木先生と一緒にやったときにそういうことをやりまして、ミニマムサクセスとサクセスとエクストラサクセスとクライテリアを作りまして、たしかやった経験がございます。少しずつそれも考えさせていただきたいと思います。

  栗木委員 

   今、評価の方で基準をいろいろ作っておりますけれども、これは評価のプロセスも計画段階で必ず社会に説明をしていくプロセスが大事であると、そういうことを踏まえてやっております。なおかつ事前に評価を行い、事後に評価を行う。事後に評価を行って極めてうまくいったというときに、それはえてして事前にそういう基準を設けておかないと、単なる内輪受けではないかというようなことを言われたりする。あるいは、うまくいかなかったときには今度は逆に言いわけではないかというぐあいにとられる。どちらに出てもこれは公平を欠くというような点から、事前にそういうある程度の目安を作っておく。これを定量的にやるのは極めて難しいと思いますけれども、どの目的がどういう順位を持っている、少なくともどこまで達成したというようなことはあらかじめ内部の中での一種の価値観の共有といいますか、これが一つ大事でありますし、それもできることなら社会的にそういうものを共有していくべきではないか。そういう観点で宇宙開発委員会で今は進めておりますので、是非その思想を受けていただきたいと思います。

  宇宙科学研究所 

   一言だけよろしいでしょうか。ミッションの成功としては確かにおっしゃるとおりなんですが、科学ミッションというのは必ずしも結果を予測できない部分がございます。特に科学的成果については思いもかけない成果が出ることもあれば、逆に予想したほど現実には起きていなかったとわかったりすることもありますので、その辺については多少違うんだということも御理解願いたいと思います。

  高柳特別委員 

   工学ミッションですから、そこまで聞かない方がいいのかもしれませんが、NASAですと小天体が何で注目を集めていて、こういうミッションがあって、これはこういうことを調べると。この間のEROSのミッションでも広報の仕方としては、撮影された写真の発表だけとはいえ、例えばヴァレンタインデーの日に周回軌道へ入れてから1年目の発表とか、一般の人にサイエンティストが何を望んでいて、全体として最終目的はこうだが、このミッションではここまでひょっとしたらわかるんだという全体像の中での目的がきれいに示されているんです。だから、今、小天体がある分野の中ではサイエンティストにとってホットな話題で、その中でMUSES−Cは工学ミッションにしろ、成功したらどんなことを最終的には望んでいるのかとわかるような、そこまで広げたプレゼンテーションが欲しいという気がしたんです。

  宇宙科学研究所 

   ありがとうございます。今おっしゃった中で大事なことは、宇宙研としての広報の問題があると思うんです。確かに広報で欠けている部分もあるんですが、一方で人手がなかなかないことも確かにありまして、その辺は苦慮しているところでございます。できるだけそういう点もこれから改善はしたいと考えております。

  冨田特別委員 

   先ほど栗木先生のお話にちょっと要望があるんですけれども、インセンティブをつけるというようなことは考えられないでしょうか。例えばペネトレーター1本うまくいくのが普通100%成功で、2本うまくいったら120%、その分はインセンティブ。それから、先ほど松本先生が言われた思いもかけない発見があった場合、これはインセンティブだ。それは、例えば予算上の措置で特別な予算をつけるとか、そういう報償が与えられるというようなことは考えられないでしょうか。

  栗木委員 

   まさに事後評価の意味といいますのは、将来、それにどういう発展が期待できるか、それを土台にして次に何をやるのか、そのときに前回の成績が物を言う、そういうことで、今、おっしゃっておられるような意味合いがあるかと思います。評価も現在作っておりますのは金科玉条ではないと私どもは思っておりまして、いろんなタイプのミッションが将来出てくる。これに実地に当てはめながら悪いところは直していこう、評価の基準自身をダイナミックに考えていこうと思っております。その理由は評価の結果が、ミッションがこの時点で完結したといって評価ができるだろうか。もっと長い時間で見ないとミッションの意義はわからないんじゃないかというようなことが、実は評価の委員会の中で言われております。まさに、今、松本先生がおっしゃったようにサイエンスというのは何が出てくるかわからない。しかも、それは時間がたってみないとそれの価値が、すそ野が広い分だけわかりにくい。そういうわけで、どこで事後評価をするかというのももう一つ難しい点かと。これはやりながら評価の、特に事後の評価の仕方を見極めていきたい。
    そのときに出ましたイグザンプルの一つをお話ししますと、島から島へ橋を架けた。立派に橋は架かりました。これがミッションのサクセスではないかというんですが、実はこの橋を渡るに当たって料金を取ろうという計画があった。なおかつ、これを事業として運営しようとなったときに、それがうまく経営されるかどうか。これはまさに極めてスパンの長い評価になるわけですね。こういったものをどの時点で評価していくか。まさにサイエンスというのは極めて命が長いわけですので、今の橋の例はすぐに当てはまらないかもしれませんが、こういった2つの結果をどうとらえていくかが評価のときに一番問題になった点です。その辺はなるべく柔軟にやりたいと思いますが、しかしながら、事前に何かを決めておかないというのはあまりにも方針のなさ過ぎではないか。両方を踏まえながら今やっております。

  長柄部会長 

   それでは、予定の時間が過ぎましたので本件は終わりたいと思います。松本先生、どうもありがとうございました。
    次はM−5ロケットの現在の状況でございますが、宇宙研の小野田先生から御説明願います。

  宇宙科学研究所 

   お手元の資料の4−2に従って御説明させていただきたいと思います。M−5ロケットの現状でございます。まず、Mロケットは1971年から自前技術で科学衛星あるいは惑星探査機を22機打上げてまいった全段固体のロケットでございます。先日のプロジェクトXという番組では、例えば1974〜5年ごろ自前のロケット技術は存在しなかったことになっておりますが、実はそのころMロケットは年1機のペースで衛星を打上げておりました。M−5型ロケットはMロケットシリーズの最新バージョンでございまして、基本的には全段固体の3段式ロケットでございますが、ミッションによってキックステージ、すなわち4段を搭載できる設計になっております。初飛翔は1997年でございまして、「はるか」を打上げ、翌年、98年には日本最初の火星探査機「のぞみ」を成功裏に打上げているものでございます。
    M−5型ロケットにつきまして、現在、私たちは低コスト・高機能化に向けて第2段ロケットモーターの改良を行っております。そのキーポイントの一つは、モーターケースを炭素繊維強化複合材料製にするということでございます。これはSRB−Aとは違って自前技術でございます。それから、後で話題になりますが、スロートインサートというものについて3次元カーボン・カーボン複合材料を使用しております。これは、後でお話しします4号機の不具合以前からこの計画で進めてきていたものでございます。現在は試作品が完成しておりまして、来月、地上燃焼試験で設計あるいは性能の確認を行って、5号機からこの2段モーターを適用する予定でございます。
    もう一つ、新しいモーターの開発を行っております。これは5号機のミッションに特有のモーターでございます。5号機はMUSES−Cという先ほどありましたミッションでございますが、それ用のキックステージのモーターでございます。これは先月、地上燃焼試験を行いまして良好な結果を得ております。
    次に、4号機の打上げ失敗についてお話ししたいと思います。昨年2月に打上げました4号機でございますが、次のページに絵がございます。燃焼ガスを噴出するノズルのスロートの部分を拡大したものがこれでございますが、ここは熱的に大変厳しいものですから、耐熱性の高いグラファイト製のスロートインサートという部材がございます。発射後間もなくスロートインサートが破壊を始めて脱落した。その結果、このあたりの耐熱性が劣化して一部溶損して燃焼ガスが噴出した。その結果、この付近に搭載していた搭載機器が焼損いたしまして、姿勢制御系が機能を停止して約20秒間姿勢が乱れた。そのために衛星を軌道に乗せることができませんでした。このスロートインサートが破損した原因につきまして検討した結果、表面または内在した亀裂などの欠陥が原因であった可能性が高いという結論に達しております。
    それを受けて対策でございますが、このロケットの大きさのグラファイト材につきまして、内在欠陥を非破壊検査で見つけるのが現状で難しいということ。それから、はるかに破壊靱性が大きい3次元カーボン・カーボン複合材が比較的大きなロケットにも適用できる技術レベルに達しているということを踏まえまして、対策といたしましては、全段のスロートインサートを3次元カーボン・カーボン複合材製に設計変更するということで進めております。下にございますのが今年度の地上燃焼試験計画でございます。最初の2つは、先ほど申し上げました新しいモーターの検証でございます。これは5つに見えますが、4つのモーターの地上燃焼試験予定でございます。この地上燃焼試験で対策後のモーターの検証を行いまして、5号機の打上げに臨む計画でございます。
    そのほかに体制の面でございますが、信頼性向上策といたしまして信頼性主任の設置、信頼性会議の強化、あるいは2次製品調達仕様の見直しというようなことを行っております。
    最後に今後の打上げ予定でございますが、来年の11月から12月にかけてMUSES−Cを打上げるのが次の打上げの計画でございます。最後の行はここで提案させていただいておりまして、まだオーソライズされておりませんが、リストに加えさせていただいているものでございます。
    以上でございます。

  長柄部会長 

   ありがとうございました。
    質問ないし御意見がございましたらどうぞ。

  澤岡特別委員 

   新しく使用される3DのCCコンポですが、全く等方的なものですか、異方的な性質を持ったものなんですか。

  宇宙科学研究所 

   若干異方的な性質を持っております。

  澤岡特別委員 

   これは、従来のものに比べてびっくりするほど値段が高いということはありませんでしょうか。

  宇宙科学研究所 

   この素材そのものを比べますと高いですけれども、ロケット全体から見れば大したことはないと申し上げたらいいんでしょうか、わずかな増額にとどまります。

  澤岡特別委員 

   100%国内のメーカーというか、国産技術で作られるものですか。

  宇宙科学研究所 

   1段目のスロートインサートは寸法が大きゅうございまして、この方針を決めた時点でこれを国内で製造する設備がございませんでした。したがいまして、輸入も視野に入れ、国産もバックアップとしてトライするということで進めてございます。

  松野特別委員 

   最後のところで、LUNAR−Aはペネトレーターが遅れて打上げがずっと遅れているわけですが、2号機は以前のものなのか、それとも今回、番号は2号機になっているけれども、5号機以降と同じものになるんですか。

  宇宙科学研究所 

   設計は古いものでございます。先ほど申し上げました新しい2段モーターは使いません。古い2段モーターを使います。それから、大部分のものは先ほど申し上げました対策の確認の検証のための地上燃焼試験に用いまして、これ用のものを新しく製造するという計画がほとんどでございます。

  中西特別委員 

   いろいろな新しい技術開発をされたときの秘密保持性についてお伺いしたいんですけれども、この前、プロジェクトXを見ておりましても、アメリカは試験結果もどこが大切かということもほとんど出さないわけですね。それと、一歩応用をきかせますと軍事方面の応用も可能かと思いますけれども、どういう素材でどんな試験をしたとかいうのは……。データの秘密保持性ですね。どんなふうにほかの第三国に出さないとか、一歩間違えますとこういう技術は軍事技術にも応用可能かと思いますけれども、それはどんなふうにされているんでしょう。

  宇宙科学研究所 

   日本から外国への技術というか……。

  中西特別委員 

   そうです。

  宇宙科学研究所 

   一応、心がけているつもりです。例えばカーボン・カーボン複合材料の特性は、ミサイル技術に関連してある意味で取り扱いに注意すべき情報と思っております。したがいまして、こういうものについて無制限に外国に出ていくとか、そういうことはないように注意しております。それから、余談ですが、先ほどちょっと申しました外国から輸入する場合、これも取り扱いについて大変厳しい取り決めをいたした上で輸入するということにしております。

  冨田特別委員 

   2ページの絵に電動アクチュエーターを使っておられますね。これはこれまでも電動でしたか。

  宇宙科学研究所 

   これは実はH−2AのSRBAの電動アクチュエーターをこれ用に少し改造して、それを使う。

  冨田特別委員 

   全く同じものじゃないんだけれども、メーカーなんかは一緒なわけですね。

  宇宙科学研究所 

   メーカーなどは一緒です。全く同じではなくて少し仕様を変えております。

  冨田特別委員 

   飛ぶのはH−2Aが打上げられた後ですから、一応、使われた結果がどうかというH−2Aの結果が反映できるわけですね。

  宇宙科学研究所 

   はい。打上げもそうですが、地上燃焼試験時にもこれを使っております、SRB−Aの試験ですね。それから、私たちの地上燃焼試験でもこれを使って駆動試験はいたします。

  冨田特別委員 

   これまではずっと油圧でしたね、ほとんど。今度、電動に切りかえつつありますので、電動アクチュエーターの信頼性に注目しているんですね。これはH−2Aの後になりますから、その結果が入るという意味では安心かもしれません。

  宇宙科学研究所 

   実は3段目のTVC装置には既に私たちも電動アクチュエーターを使っております。ただし、大きさは小さいものでございます。

  冨田特別委員 

   これはパワーが相当大きいですね。

  宇宙科学研究所 

   これは大きいです。

  冨田特別委員 

   ですから、どうなるかに注目しているんです。

  宇宙科学研究所 

   NASDAさんの結果もいろいろ教えていただきながら、慎重に進めていきたいと思います。よろしくお願いします。

  長柄部会長 

   それでは、本件はこれでおしまいにしたいと思います。小野田先生、どうもありがとうございました。
    それでは、次に月周回衛星(SELENE)について、宇宙研の佐々木先生とSELENEプロジェクトマネージャーの宇宙開発事業団の長島さんから説明願います。

  宇宙開発事業団 

   宇宙開発事業団のSELENEのプロジェクトマネージャーをしております長島といいます。月周回衛星(SELENE)のお話をしたいと思いますけれども、宇宙研との共同プロジェクトですので宇宙研の佐々木先生と御一緒にやります。
    本資料は合計4つに分かれておりまして、1つはプロジェクトの概要、2つ目は科学ミッション計画、3つ目は月ミッション運用解析センター、4つ目はリスク管理計画になっておりますけれども、昨今、宇宙開発は非常に厳しい状況になっておりますので、本日はサイエンスの意義について佐々木先生にメーンにお話をしていただきまして、私がプロジェクトの概要を話します。2以降は質問の中で必要に応じて御説明いたします。
    プロジェクトの概要ですけれども、SELENEの目的は月の起源と進化を探る月の科学という側面と月の利用可能性調査のためという2つの側面を持って行います。いわゆるリモートセンシング衛星でございます。
    では、佐々木先生にサイエンスの意義について御説明をお願いします。

  宇宙科学研究所 

   それでは、お手元の資料の3ページにSELENEのサイエンスの意義ということで書いてあるんですが、若干補足資料を用いましてSELENEの目指すサイエンスについて御説明したいと思います。実はこれは配付資料の中にないんですが、SELENEはどういうミッションか。先ほど松本先生のお話がありましたが、簡単に1枚の絵で示しますとこのようなたくさんの科学センサーを搭載しました探査機、これはかなり大型な探査機なんですが、月軌道高度100キロメートルに投入しまして、ここに示しておりますが、X、γ、αは元素の測定になります。これはステレオカメラを使った撮像、これが分光です、これは鉱物を調べる。それと、私たちがまだ見ていません月の内部構造ということで、地下5キロまでをレーダーでサウンディングする、観測する。あるいは、レーザー高度計で非常に微細な高度図をとる。あるいは、月の内部の情報をあらわしております重力場の観測を行って内部情報をとる、磁場の情報をとるといったことをこの衛星でやります。
    これを月面の全体、全球にわたって丁寧にはかることによってさまざまな科学的成果を得ようということなんですが、どういった成果が期待できるのか。これはお手元の資料の17ページ以降に延々と書いてあるんですが、これを1枚でまとめたものです。今、お話ししましたように月面の元素あるいは鉱物、表層、重力場あるいは磁場といったものを観測することによりまして、1つは月がどういう原料物質でできているかがわかります。地球が全体としてどういう原料物質でできているかはわかっているわけですから、それと比較することによって月の起源がわかる。地球の一部がとれたものなのか、あるいは第三の天体がぶつかってできたものか、そういったことの情報が得られる。
    もう一つは月の成因と非常に密接な関係がありますが、LUNAR−Aももちろんそれを目指しておりまして、月の内部構造についてLUNAR−Aの場合はコアのサイズなんですが、今回のミッションの場合ですとコアの密度といった情報が得られる。あるいは、月は御存じのように非常に不思議な天体といいますか、2分性と呼んでおりますが、表側の地殻が薄くて裏側が厚いということがあります。それは月の進化に密接に関係があるということで、こういったものを非常に詳細にはかれば進化の情報が得られる。
    もう一つの大きなトピックスは、今、月は冷たい天体ですが、実は初期は非常に熱かった。マグマのオーシャンがあったという説があります。それが本当だったかどうか、あるいは今のように冷たくなったのはどういった経過を経たのかを調べる。あとは月の磁場の起源あるいはテクトニクスということを調べまして、これらの研究を通じて月の起源と進化という問題について一本のきっちりとしたシナリオをとるのがこのミッションの目的で、私たちの是非実行したいと考えている点です。
    SELENEの国際的な位置づけですが、よく御存じのようにアポロでさまざまなデータが得られました。大きな成果が得られていますが、これを一言で言いますと月は地球とほとんど同じ時代、約四十数億年前に生まれた。これが一番大きな成果です。しかしながら、実際に月がどのようにして生まれたのか、あるいは月がその後どういう進化をたどって今に到達したのかは依然としてなぞでして、それらを解明するために90年以降、クレメンタイン、ルナプロスペクター、こういったアメリカのミッションが実施されました。ヨーロッパではSMART−1というミッションがあります。それで、先ほど話がありましたLUNAR−Aという日本のミッションがあります。これらのミッションの集大成としてSELENEは位置づけられるというものです。SELENE以外のミッションは比較的小さくて、ある一面に特化したミッション。例えばLUNAR−Aですと、今、お話ししましたようにコアのサイズ、例えばルナプロスペクターですと元素というふうに、あるパラメーターに特化したミッションです。SELENEはそれらの成果を踏まえますが、月の科学、月の成因をはっきりさせるためにはどういった計測が必要かという観点から、必要な計測器はほとんどすべて含むというような総合的なミッションとなっています。そういった意味で90年以来、再び月へ、あるいは月科学のルネッサンスと呼ばれていますが、その集大成としてSELENEが位置づけられるというふうに私たちは考えております。
    他の月探査計画の比較を5ページに書いておりますが、今の内容を個々の計測項目について示しております。時間がありませんので後で質問があればお話しするということで、最後にもう一回3ページの科学的意義というところをまとめておきます。今、お話ししましたようにアポロ以来の最大級の科学探査システム、約2トン級の衛星なんですが、これによりまして月科学データを取得する。それで、先ほどちょっとお話ししましたが、月科学分野で必要とされるほとんどすべての項目を現在の最先端の技術を駆使して計測を行う。これによりまして月の科学者に今後10年から20年、アポロがまさにそうでしたが、20年程度の長きにわたって基盤的なデータを提供する。これを行いますと、月の起源と進化という研究にエポックメーキング的な成果を上げる。何がエポックメーキングかといいますと、先ほどから何度も言っていますようにアポロの場合は月がいつ生まれたかということを明らかにしました。今回の場合は月がどのように生まれ、どのように進化したかという一つのシナリオをとります。こういったシナリオを得ることによって、月の進化のシナリオを他の惑星にも応用できるという非常に重要なプロセスのところに入り込むことができる。
    最後に早期実施の必要性を簡単にお話ししておきますと、先ほどの国際的な位置づけの中で示しましたように、クレメンタイン、ルナプロスペクター、LUNAR−Aといったミッションがありますので、月探査研究という研究者のポテンシャリティが非常に高まっているというところです。こういったある意味では研究者の消化能力が非常に高まっているところに良質なデータを得るということになりまして、月科学がこういった時宜を得た実施によりまして飛躍的に進化する、進歩するということが一つあります。それともう一つは最後ですが、NASAをはじめとしまして諸外国の研究者の強い期待があります。実は96年にSELENEがスタートしましたが、その当時、MORO計画がヨーロッパでありました。これはSELENEと比較的よく似た総合的な月観測を行うミッションでしたが、これは残念ながらキャンセルされておりまして、今、2000年代の初めにこういった総合的なミッションを行うのはSELENEのみで、諸外国からSELENEの科学的成果に非常に期待が高まっているということがあります。実際にNASAでこの共同研究のためのAOを出すということで、この月末から協議を開始する。あるいは、ヨーロッパの研究者は既にプロジェクトチームに参加して研究をスタートしているのが現在の現状です。
    ちょっと長くなりましたが、科学的意義については以上のような説明をしました。

  宇宙開発事業団 

   9ページに戻っていただきます。先ほど御質問がございましたミッション達成ですけれども、一言で言いますとSELENEの場合は約2カ月間、初期運用を達成すればミニマムミッション、1年間運用できればフルミッション。それから、燃料が少し余って一例として例えば高度を下げたような、いわゆるオプショナルなことをやった場合にはエクストラミッションと定義づけをしております。
    12ページですけれども、主要な技術課題の一例をちょっと御紹介いたします。月面高度100キロのところもありますし、それで三軸衛星ですから、いわゆる月からの赤外が相当大きいものですから、熱制御的には従来の衛星より厳しいものになっています。また、ミッションの中にプラズマ、あるいは月の磁場をはかる測定器を積んでおりますので、そういうことから見て、従来の例えばNASDAの衛星の1けたか2けたぐらい厳しいEMCの要求が来ております。それから、ミッション機器の中には高圧の電源を積んでいるものが多いものですから、それに対する対策もする必要がございます。
    14ページの開発スケジュールですけれども、平成16年度の打上げを目指しておりまして、現在、詳細設計のレベルに入っております。いわゆる設計としては後半のレベルに来ております。
    最後に15ページで、共同プロジェクトチームの中の実施体制のみをお話ししますけれども、リーダーとしてはNASDAの古濱、それからサブリーダーとしては宇宙研の水谷先生がされております。私はリーダー補佐ということになっています。その下に衛星バス系、ミッション系、あるいは月ミッション運用解析センター、これは宇宙研の相模原に作る予定ですけれども、これはSELENEが打上がった後の追跡あるいはミッシン運用、ミッション解析、そういうことを一元的に行うところです。それから、ミッションの下には約300名の惑星科学者が入っておりまして、14のグループ、ミッション機器が14ございますので、そのPIあるいはCoIとして約300名が参加しております。
    以上です。

  長柄部会長 

   ありがとうございました。
    質問、御意見がございましたらどうぞ。

  栗木委員 

   2機関が共同でやるということは、すべてがきれいごとではなかなかいかないというところがあるかと思いますが、目的のところに一方で月の科学及び月の利用可能性調査、これが2機関のミッションをあらわしているのか。

  宇宙開発事業団 

   そうです。

  栗木委員 

   そうなったときに、ミッションというのは必ずどちらかに重点を置かなきゃいけないということになるんですが、このプライオリティはどちらに与えられていますか。

  宇宙開発事業団 

   そういうことを議論したことはありませんけれども、私個人の考え方としては月の科学の方にプライオリティは高いと思います。

  栗木委員 

   そうすると、宇宙開発事業団(NASDA)としては科学を実施するための、ちょうど宇宙科学研究所で言いますと宇宙工学のような役割も果たしていると理解してよろしいんですか。

  宇宙開発事業団 

   と思います。ただ、そこら辺は正直言って議論をしたことがございませんけれども、私個人はそう思っております。

  長柄部会長 

   このプロジェクトはもともとランダーがあったですね。それを切り離してとりあえず、これはオービターというんですか、周回衛星だけをまず最初にやって、将来、ランダーかローバーか知りませんが、そちらの方は後回しということになった。その切り離しの方は現在どういう状況になって、それはどういうふうにお考えになっていますか。

  宇宙開発事業団 

   我々の仲間うちの言葉ではSELENE−Bという名前で呼んでおりますけれども、現在、宇宙研の中谷先生を筆頭に宇宙研の方が約10名ぐらい。我々も入って、それから航空宇宙技術研究所(NAL)も入って、いわゆる3機関で研究チームを作っております。そこで、次のランダーとしてどういうものがどうあったらいいべきか、現在、打ち合わせを月4回ぐらい。メーンのSELENE−Bの検討会の下に分科会を3つ作っておりまして、そういうところで議論をして、現在、いわゆる共同研究の格好で研究を進めております。ただ、打上げ時期とかそういうことは昨今は非常に厳しい状況がございますので、そこら辺は研究として3年間、しっかり地についた研究をしていこうということで頑張っております。

  松野特別委員 

   15ページの図で14の機器に関して約300名の研究者がおられるということですが、この300名の内訳はオーバーラップも多少あるかもしれませんけれども、かなりの数で、いわゆる月とか惑星の研究者でそんなにいるのかと思うんです。これはどう計算されて、どういうふうになっているんでしょうか。

  宇宙科学研究所 

   私たちはSELENEプロジェクトチームを組んでおりまして、それに参加される方を募って、SELENEの機器開発、データ処理、そういったものに是非参加したいと言われる人がこれに入られています。300名と言われる中は、14チームありますので1つのチームが大体六、七名。ですから、おおむね100名程度が実際にハードウエアの開発に携わっている方です。あとの100名程度の方は、将来、データが出たときに解析をしたいと言われる方です。あと残りの100名ぐらいの方は一般的に興味を持たれているので、もしチャンスがあれば今後参画したい。あるいは、今、データ処理解析センターに着手しましたが、そういったところに少しずつ入っていきたい、そういった方々だと思います。ハードウエア開発という意味では、大体3分の1の方が実際にインボルブされて参加されているという内訳だと思います。

  松野特別委員 

   その所属は大学や何かで、大学院生も含む数ですか。

  宇宙科学研究所 

   大学院生も含みますが、基本的にはPI、すなわち主任研究者の方はほとんどが大学の研究者で、そのチームの中に大学院生を含むという形になっています。現実問題として大学院の方は100人のうちの10分の1、1割程度の方々です。ほとんどは職員の方がポジティブです。

  高柳特別委員 

   実施体制を見ていて、ふっとこれがうまくいっているときのことを考えまして、例えば我々ですとマーズオデッセーというホームページをぱっとあけて、きょうのホットな話題、はらはらする、どきどきする、こんな成果が出たというのとぱっと見る、探し方をするんですが、この実施体制の中にアウトリーチというか、最新の話題で一般の人も興味を持つものをぱらっと社会にこぼすセクションというか場所が入る余地はあるんですか。これだけ見ると目的はターゲットが非常にきちっと絞られていて、それをやるための一つの体制になっていますが、片方でどんどんおもしろい成果が出てきたら、それは国民の人は興味を持ちたいわけです。そのときにどういう格好でアプローチできるのか、そういう部分も考えていらっしゃるのかどうか、もしあれば教えてください。

  宇宙開発事業団 

   まず、現状はどういうことをやっているか。実はSELENEが宇宙開発委員会で承認されるときの附帯事項として、私の記憶では月探査計画を一般に国民に広く知らせるようにということが一つありました。それで、我々は素人なものですから、我々の近くに筑波大学がございまして、筑波大学のデザインの学生と先生がこれに協力してくれまして3年続けていますけれども、普通の会場で集まると人が少ないものですからインターネットがいいだろうということで、インターネットシンポジウムをしています。そこでマンパワーが必要なものですから学生が参加してくれて、この月探査につきまして授業の一環で3年間にわたってSELENEも含めて全部宣伝をして、我々がそれに参加しているという格好で今までやっています。忘れましたけれども、何かの賞ももらったと思います。例えば、SELENEのコンピュータグラフィックもデザインの学生が全部作ってくれまして、普通だったら数千万のオーダーのものが本当にびっくりするぐらいお金が要らなく、特に若い学生はこういうものが非常に好きなものですからやってくれるということで、今はやっています。
    それから、将来としては月ミッション運用解析センターの中でデータを配信することもやろうと思っていますけれども、それを含めまして今のような、要するに月探査をもっと一般の方に理解してもらうこと、私たちはマンパワーもないしお金もないものですから、なるべく大学とかそういうところとうまく提携してやっていこうかということを考えております。
    以上です。

  佐藤特別委員 

   既に佐々木先生、長島先生のお話がありましたけれども、データファイルシステムのことをお伺いしたいんです。これは非常に多様な全波長にわたるレーダー、すごいレーダーを御取得されることになっていますので、これはすごいデータ量になるかと思います。そのときに、まず第一に観測データのアーカイブなんかを作られるときに、最初は観測機器をお作りになった方々にデータ使用のプライオリティがあるのではないかと思いますけれども、それをどのように公開していくのか。先生がおっしゃいましたように、これは10年スケールでの地球に関する非常に貴重なデータになるのだとは思いますけれども、データのすごい量を技術的にもどのように対処され出しているのか。転送、それからアーカイブ、そのあたりについても教えていただけたらと思います。

  宇宙科学研究所 

   26ページにデータの公開、一応、SELENEチームとしては公開の原則、利用の原則を決めておりまして、1つは、すべてのデータを基本的にはミッションが終了した1年後にミッションに参加した以外の世界の研究者に公表する。それは現在参加しております観測機器開発担当者も納得の上で、そういった規則、ルールをアプライする。それを実際に実施する場として先ほど話がちょっと出ましたが、相模原にデータセンター、解析センターが作られます。そこの解析センターはそういったサービスを行うために、国内だけではありませんで海外の研究者のサービスを行うためのアーカイブシステム、あるいはデータサービスシステムを打上げ前までにセーブするということで考えております。このシステムは打上げ後、約5年にわたってデータ解析のサービスを行うということで、現在、準備を進めております。

  長柄部会長 

   ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。
    それでは、宇宙科学の最後になりますけれども、宇宙研の方で来年度から新たに開発研究に着手したいという提案がございます金星探査計画について、宇宙研の小山先生から説明願います。

  宇宙科学研究所 

   宇宙科学研究所の小山でございます。これからお話しする金星探査計画ですが、このミッションが今までどういう経緯を経て宇宙科学研究所で承認されたかということを書いてございます。今年の4月ですが、評価委員会で科学的意義が非常に高いので全会一致で探査計画を所の計画として認めるということであります。では、我々が提案した金星探査計画とはいかなるものか、その目的、そして観測のやり方、衛星の形状、国際的な現状ということについてお話ししてまいりたいと思います。資料の計画4−4としてOHPのハンドアウトがお手元にございますが、ちょっと外れるところはあるかもしれませんけれども、OHPの順序に大体従いましてお話ししたいと思います。
    まず、我々がなぜ金星探査計画をやるかということはそこに書いてございますので省かせていただきまして、直接に地球と金星の大気というOHPがございますが、それについて金星全体がどういうものか。金星はここに書いてございますように高温・高圧の大気、90気圧、735K、大体460度ぐらいの表面は非常に高温でございます。灼熱の大気です。組成としましては、ここに書いてございますように97.5%が炭酸ガスである。残りの2.5%が窒素でございます。我々は金星の探査計画をやろうとしているときに、過去に金星でどういうことがわからないかをサーベイいたしました。全然わかっていない、ほとんどがわかっていないということでございます。我々が取り上げるのは、ここに金星の気象としてございますが、大気循環ということで、それを正面から扱ってみたい。その中でも、ここにスーパーローテーションと書いてございます。これは日本語で超回転と訳されておりますけれども、スーパーローテーションがどういうメカニズムであるかということをこの探査計画の解明するためのまず第一目的に取り上げました。
    では、スーパーローテーションはいかなるものかということが次のOHPでございまして、金星は自転が243日でございます。それもほかの惑星と違いまして逆方向に東から西へ回転している、こういうような星でございます。ところが、今まで金星の高度7キロメートルか何かの雲の写真を撮ってみますと、それが4日で1回転している。70メートル毎秒ぐらいのスピードになります。一方、金星の地面は大体243日ですから1メートル毎秒ぐらいのスピードであります。じゃ、こういうことがどうして起こるのかは、これが1974年だったと思いますけれども、米国のマリナーで確認されてから全く手つかずであります。これまでここに書いてございますようにタイタンの大気も高速回転しているらしいと、直接観測ではございませんけれども、そういうようなことがございます。としますと、タイタンは約17日だったと思いますが、自転しております。そういうことで、一つの考え方としては低速自転惑星に普遍的な現象であるのかということがあります。
    もう一つは、全く見方を変えまして地球は1日、金星は243日で1回転、タイタンは16日で1回転ですけれども、先ほどのスーパーローテーションは1日あるいは数日の単位で気体が回転しているわけです。ですから、大気のスーパーローテーション運動というのは、自転にかかわりなく普遍的に言えるものであるのか。そういうような答えも投げかけることができるわけです。こういうことで、我々はスーパーローテーションの理解をやりたいということです。
    これまで地球、火星ではどういうことがなされてきたかをここに書いてございますが、御存じの地球にはひまわり衛星の雲の写真もございまして、ラフには地球、火星の大気の運動は理解されたというふうに認識しております。ところが、金星は大気がどのように運動しているか全く観測がない、少ししかない。それで、これがまずないものですから、大気がどのようなメカニズムで運動しているのかも全く手がつけられていないということでございます。それに迫るためにはどうしたらいいかというと、金星大気の運動を地球のひまわり衛星みたいに外から見て撮ったらいいんじゃないか。そのときに平面的ではなくて、立体的に大気運動を可視化しようではないかということでございます。
    一例をお示ししますと大気運動の追跡、ここに金星がございまして、金星は東から西へ回っておりますから探査機もこういうふうに回そうと思っているんですが、これは米国気象衛星が3つの高度で撮った風のベクトルであります。こういうことを金星の大気でやりたいということであります。そういう運動をいかに可視化するかはこういうことをやればいいわけでございまして、現在のところ2時間置きぐらいに金星の雲の写真を立体的に撮っていく。こういうことで雲の運動、消長あるいは温度の変化、そういうところを追っていきたいというわけでございます。
    では、なぜこんな簡単なことが今まで金星探査でできなかったかというのは、多くの方がすぐ疑問に思うことであります。それはここに書いてございますように、金星は70キロメートルの高度ぐらいで厚い雲に覆われております。それから下はいくらカメラで撮っても探査できないということでありましたが、1990年の前後ですが、近赤外の波長で見てやりますと、金星の雲から下が見えるというようなことが発見されました。これは、1990年2月10日に木星探査機ガリレオが金星をフライバイしたときに撮った有名な2.3ミクロンの雲の写真であります。これは何を言っているかというと、雲の下の様子を写し出したということであります。もう一つございます。これは先ほどの説明の補正、補いですが、これもガリレオが撮った赤外の放射です。こういうところを強い光が探査機に向かってくるわけです。こういうところにウィンドウがあるということが見つかったのはガリレオの大きな成果でございます。
    それで、我々がやろうとしているのは、実はそういう幾つかの波長を使ってやりますと、こういう典型的な絵が得られるであろう。これは近赤外、紫外、中間赤外、これは2.3ミクロンの雲の下、これは雲の上、これは全体のグローバルな赤道あるいは極域の温度の情報を得る10ミクロンの画像がこういうふうに得られるであろうというわけであります。こういうことで、金星のスーパーローテーションのメカニズムに迫るためには、まず、金星全体の気象を把握する必要がある。今までできなかった気象を研究したいということであります。それに付随してあとはオプションですが、金星気象の解明に使う予定のカメラは1ミクロンですけれども、ひょっとして火山があったら確実に我々はわかると思っております。こういう火山があるかもしれない。もう一つは雷が存在するか。これは長い間の金星の大変な論争の的であります。これについても我々はカメラを使って決着をつけたい。雷が存在する、あるいは火山があるとすると、これは大変センセーショナルなニュースになると思っております。
    もう一つ、今、申し上げたメインの目的から離れて我々はこういうこともやりたい。水はどこへ消えたのかというタイトルがついておりますが、これはどういうことかというと、金星が地球と同じようなときに生まれて、同じような経過をたどったとすると、地球と金星の水は大体同じぐらいの量であるはずである。ところが、水は金星が100分の1、地球より少ないです。その水がどこへ消えていったのか、我々は興味のあるところです。それなどに迫るためには金星の外に出まして、そこで荷電粒子の観測をやります。酸素イオンが逃げていくさま、あるいは水素イオンが逃げているさまをつかまえたい。これは、実は1978年の米国の探査機パイオニア・ビーナスがやれなかった科学観測目的の大きな一つです。是非日本の手でこの問題にも取り組みたいと思っております。
    次は探査機の外観ですが、我々は金星気象の全体の把握、そして超回転のメカニズムに迫りたいと思っているわけです。金星探査機はそれに最適化して設計を今は進めております。探査機の形状はこんなものでございまして、ここにカメラがついて、ここは金星の大気を常時向く。ソーラーセルパドルを2枚積んでおりまして、現在のところはこれを動くようにしてございます。ここにハイゲインアンテナがついておりますが、普通はカメラを金星に向けますとハイゲインアンテナが地球を外れるときがございます。それはここにミドルゲインのアンテナが2個ついておりまして、これが地球と常時コンタクトする。ビットレートは少のうございますが、全体の探査機の健康はこれで知れるであろうということであります。
    あと、これが全体の探査計画のオーバービューでございますが、金星の探査機は2007年に打上げて、現在のところ太陽を1周した後、2008年に地球をスウィングバイして、2009年9月8日に金星の軌道を周回するということでありまして、トータルの重量は現在のところ約650キログラムで、そのうち燃料が約330キログラムでございます。搭載機器の重量は現在のところ34キログラムぐらいですが、もう少しサイエンスペイロードに割り当てるようにこれから重量の精査をしていかないといけません。金星の軌道はここに書いてございますように近金点300キロメートル、遠金点10Rvですが、これも遠金点をもう少し延ばしてもいいんじゃないかというような意見がございます。そうすることによって科学観測へ少しは、大体10Rv変えると約10キログラムもうかりますから、1キログラムで結構な数の研究者が研究することになりますので、そういうことも是非検討しながら、スペースクラフトの安全性を考えてこれから検討してまいりたいと思います。
    ここには、なぜ我々が2009年に金星探査をやりたいかということを書いてございます。バックアップが2008年にございますが、2015年までがランチャーにエネルギーが少なくて金星へ行ける最高のチャンスでございますから、ここは是非逃したくない。もう一つは最初に書いてございますが、今、全世界的に金星探査をやろうという機運が盛り上がっております。今、立上がらないと、我々はこの分野でリーダーシップをとることができないのではないか。きのう、聞いたことですが、理論の分野で金星の大気力学の世界的に有名な論文の半分は日本の研究者だそうで、我々は理論の分野でなく観測の分野で世界のトップに立ちたい。そういうことができると確信しております。
    最後に諸外国はどうなっているかということをちょっとだけ御説明申し上げますと、一番最後の目的はここに書いてあります気候の変遷・惑星の分化ということでございますけれども、それに行く道筋でいろいろなことをやらないといけません。我々は今、VCOと書いて仮に名前をつけてございまして、ビーナス・クライメート・オビターと呼んでおりますが、これはフランスのラボアジェ計画、もう一つはアメリカのNASA、もう一つはESAのイスタール、ヘブライ語の金星という意味だそうですが、こういう計画。あるいは、今、盛んにやっているのはESAのビーナス・エクスプレスでメールが飛び交っておりますけれども、そういうことはここに書いてございますように、それぞれの役割を持って最終的に金星の描像を浮かび上がらせようではないか。これが計画でございまして、日本は特に得意な大気力学のところでこれに貢献しようではないかということでございます。こういうような諸外国のミッションが今は議論されておりますけれども、今年の10月に宇宙科学研究所で金星のインターナショナルワークショップを開くことになっております。
    これが結論です。日本の金星ミッションに得られるものとして書きましたが、金星気象を理解する。全体の気象がどういうものか、雲の流れはどこで消えているか、温度は赤道と極でどういうふうに変わっていくか、そういうことを調べたい。そういうことで全体の気象をつかみ、そしてスーパーローテーションのなぞに迫りたい。最終的には惑星の気象に普遍的な原理をつかんでいきたいということでございます。
    この金星計画は所としては認められましたけれども、これから政府に予算をお願いしなければなりません。それはそちらでやっていただくと同時に、我々は金星計画を軸にして明けの明星、宵の明星と親しまれている金星を、できるだけ国民と一緒に夢を追いたいということで、これから自治体の天文台あるいは報道機関と協力して、これを軸にした広報活動と啓蒙活動を行っていきたい。そういうふうに考えておりますので、皆様の御協力と御理解を切にお願い申し上げたいと思います。
    私の申し上げたいことは大体これぐらいです。

  長柄部会長 

   ありがとうございました。
    質問ないし御意見がございましたらどうぞ。

  松野特別委員 

   最後に各NASA、ESAの計画をお話しいただきましたけれども、時期がどうなっているかということと、それともう一つ、ESAの方は3つあるわけですか、イスタールとラボアジェとビーナス・エクスプレスと。そんなに3つもなぜ考えているのか。

  宇宙科学研究所 

   現在、実はESAといいましてもイタリアのグループで、イタリアのグループがこれをやりたいと。あと、今はビーナス・エクスプレスでまとまろうとしております。ビーナス・エクスプレスというのは火星へ行く探査機、今、そのものが走っていますが、それを全く改良しなくて金星へ持っていこうという計画でございます。だから、イスタール計画もひょっとしたらこの中でやれるかもしれない。これは結構大きな計画でございます。ラボアジェ計画というのはかなり大きくて、既にESAは水星探査計画を次のコーナーストーンプロジェクトとして取り上げているわけです。僕らはその次じゃないかと思います。これは結構大きなプロジェクトで、バルーンで着陸して、そこの同位体元素をはかるとかそういうことでございますから、これはちょっと時間がかかるのではないかと思います。

  松野特別委員 

   具体的にいつの時期ぐらいで、それからもう一つはペイロードというか、どのぐらいのものを金星まで持っていくのか。

  宇宙科学研究所 

   ビーナス・エクスプレスはサイエンスペイロードが約80キログラムと伺っております。時期はこれを2005年にやりたいという提案をしているようですけれども、多分ちょっと遅れる。遅れるという意味は、我々はVCOが行くのと同じような時期にこれを一緒にやってもらえないかというようなことを提案しております。

  佐藤特別委員 

   科学ミッションとしてお伺いしたいんですけれども、大変おもしろい話でスーパーローテーションですか、こういうものを御確認されるということで非常に興味深いプロジェクトだと思います。例えば、スーパーローテーションとかに関しては理論も既に出されているようですけれども、今回のミッションで空間的に三次元的な速度のベクトルの場を作るということをおっしゃいましたが、そういうものはいろいろな理論の検証といいましょうか、モデルはこれが正しいとか、そういうことに対する十分な分解能になっているのか。三次元的なといっても縦、横、高さ、いろいろ分解能が違うと思います。

  宇宙科学研究所 

   この計画を立上げ、ここまでまとめる過程で、日本の有名な金星気象をやっている先生方、東京大学の先生方あるいは気象センターの先生方ともやりまして、一番の分解能が20キロメートルぐらいやったら小さな雲の動きとかそういうこともいろいろ……。

  佐藤特別委員 

   速度は何で見るんですか。

  宇宙科学研究所 

   単なるカメラで時間変化を追う。だから、カメラの分解能をそれぐらいの分解能に設計しております。

  佐藤特別委員 

   全体としては縦、横、高さはどのくらいの分解能になっているわけですか。

  宇宙科学研究所 

   横は20キロぐらい延びます。縦は約10キロぐらい。メーンが、雲を追うのは2つの高度でございますから雲の上と雲の下。そこは大体5キロぐらいですね。10キロというのはちょっとあれですから、そこの雲の運動が追えるであろうと。

  佐藤特別委員 

   三次元的に5キロごとわかるという意味ですか。

  宇宙科学研究所 

   そうじゃございません。

  佐藤特別委員 

   単に上と下だけなんですか。

  宇宙科学研究所 

   単に上と下と見る。

  佐藤特別委員 

   2つだけのデータですか、縦というのは。

  宇宙科学研究所 

   そうです。それプラス温度の情報です。高度分布の情報を高安定度の発信器を使いまして、電波カーブですが、それで2点をとる、そういうことがあります。

  佐藤特別委員 

   縦方向に関しては、こういったレゾレーションは2点だけということですか。

  宇宙科学研究所 

   はい。

  佐藤特別委員 

   それで理論の解明に役に立つんですかね。

  宇宙科学研究所 

   はい、ということらしいです。

  松野特別委員 

   今の関連でお伺いしたいのは、3ページの左上の多波長撮像による立体的観測という絵なんですけれども、先ほどの佐藤委員の質問と同じことで疑問を持っていたんです。雲の動きを追跡するという話だったんですが、雲のないところからも矢印が書いてあって、それは最初はドップラーなのかと思っていたんですが、ドップラーではないんですね。

  宇宙科学研究所 

   ドップラーではございません。

  松野特別委員 

   これは、今、おっしゃった温度のあれですか。

  宇宙科学研究所 

   はい。これは説明を申し上げるのに時間がかかると思ったのでちょっと省いたんですが、こういうことでございます。ここに1.3とか2.3ミクロンとか幾つかの波長が書いてございますけれども、これが極めてまた誤解を生むような、1.7ミクロンというのはこれぐらいの高度から放射が出ているということでございます。特に2.3ミクロンの窓を使いますと、ここから出た光がこの辺の雲で吸収、特に雲の下で吸収される。それを見ているわけですから、それによってこの辺の雲の画像が撮れるだろうと。

  松野特別委員 

   それは単に下の温度ばかりじゃなくて、むしろ雲で層をつくる。

  宇宙科学研究所 

   むしろ、これは雲の運動を探る。

  松野特別委員 

   金星向けのプラネットBなんかの前ごろ、大分前の話ですが、バルーンというか、金星は高圧ですからバルーンといってもむしろ地球の海の中の潜航艇に近いようなものでしょうけれども、そういう探索をする計画も同時に考えられていたことがあったかと思うんですが、それはその後、いろんな状況の変化とか技術的な問題でこっちに落ちついたということなんでしょうか。

  宇宙科学研究所 

   いえ、そうじゃございませんで、我々の次の計画は大体40キロメートルから上の層の大気の力学をやろうとしているんですけれども、これから下に行くとしますと金星バルーン計画、ああいう大気の温度をやるためには金星に気球を浮かべないといけない。ところが、ここに浮かべるには、まず、かなり大きな探査機を必要とすることがございます。もう一つは、特に金星がこういうように高温なものですから、それに耐えるエレキをつくらないといけない。そういう大きなネックはとても宇宙研だけではできなくて、次にやるときはメーカーを巻き込んでそういう技術を開発していかなくてはいけない。ということで、金星バルーン計画というのはかなり前からあるんですけれども、我々の考えとしてはあと十数年、ひょっとしたら20年はかかるんじゃないかと思います。といいますのは、この辺で動くエレクトロニクス、送信機もそうです、バッテリーもそうです、そういうことがまだ十分でございませんから、ある程度時間がかかるだろうというふうに我々は考えております。

  長柄部会長 

   御意見、質問がまだいろいろあろうかと思いますが、本件は新規の計画でございますし、開発研究に着手することが適当であるかどうか、妥当であるかどうかということを慎重に審議しなきゃいかんと思っています。それで一つの提案でございますけれども、資料の計画の4−6に金星探査機計画の審議についてという1枚の紙がございますが、本件につきまして科学的な意義なり、技術的な問題なり、社会的な問題とか効果とかいろいろあろうかと思います。それで、ここに書いてございますように佐藤先生を主査とする小委員会を設けまして、この部会のメンバーで高柳先生、大島先生、薬師寺先生、八坂先生、プラス専門委員として5名ほどの専門家による小委員会を設けまして、この計画に着手することの妥当性について審議をあらかじめ願いまして、その結果を7月末のこの部会に報告していただく。そして、この部会で結果をもう一度聞いた上でこの計画全体についての判断を下す、こういうふうな手続にしたいと思うのでございますが、佐藤先生に主査をお願いして、時間も限られているのでございますけれども、この計画の詳細について御検討をお願いしたいと思うわけでございます。
    もう一つ、この紙には書いてございませんが、最初に話題に出ました栗木先生の方、こういう科学ミッションを対象には直接していませんけれども、宇宙開発事業団のかなり大きなプロジェクトの事前の評価ないし事後の評価の指針がほぼでき上がっておりまして、今、パブリックコメントということで外に出ている段階でございます。できればこれを準用といいますか、そこに書いてある趣旨を準用していただいて、事前といいましてもこれは本当の開発段階ではございませんけれども、そういう基準も参照しながら一つの評価をお願いしたいと思うわけでございます。いかがでございましょうか。
    栗木先生、何かございますか。

  栗木委員 

   いえ、特にございません。

  長柄部会長 

   佐藤先生、こういうことでお願いしたいと思うのでございます。

  佐藤特別委員 

   これ、どのくらいの審議の回数が必要だとか、そういうことにつきましては後で御説明いただきましょうか。

  長柄部会長 

   7月末にこの会合が予定されております。7月二十何日だったかと思いますが、それまでに審議の結果をまとめていただきたいと思います。よろしくお願いします。このような方向で審議を進めていただきたいと思います。
    本日の議題の最後でございますけれども、宇宙開発事業団の広報活動について、宇宙開発事業団の広報室長の米倉さんの方から説明願いたいと思います。

  宇宙開発事業団 

   宇宙開発事業団の広報室長の米倉でございます。お時間がないようですので、簡単に要点だけを御説明させていただきます。きょうはNASDAの広報活動の概要と、今後の課題として我々が感じていることについて御説明させていただきます。
    ハンドアウトの中にもございますが、NASDA自身の広報の全体の計画につきましては、PC2(ピーシースクエア)計画を平成9年から定めてございます。概略で申し上げますが、PC2というのはパブリックコーポレーションによるパブリックコミュニケーションの意味でございます。広報活動の必要性につきましては国民に対する説明責任、それから事業推進の理解を得るための広報。ハンドアウトに誤字がございまして、広報活動の必要性の3番目のところは国際化の時代への対応を円滑に進めるための広報ということでミスがありました。失礼いたしました。こういった活動を進めていくということでございまして、それは職員一人一人の意識の高揚、組織の活性化という観点でも広報活動は非常に重要なものだと考えております。広報活動につきましては、情報公開という観点も含めた広い意味での活動と認識しております。このPC2計画全体の中で活動の対象を明確に分けて、例えばマスメディアの方々、一般の方々、青少年、それから自分たち職員一人一人、それぞれに応じた形での広報計画を進めようということでございます。広報の内容としましてはNASDAのプロジェクトだけではなくて、日本の宇宙開発、世界の宇宙開発、そういった宇宙開発全般をカバーしていこうという考えのもとで進めております。
    こういったPC2計画のもとで、キャッチフレーズは「NASDAの職員一人一人が広報マン」ということでございまして、広報委員会を組織して年度ごとに広報特別計画を定めまして、広報活動を進めさせていただいております。今の広報計画の中での重要な視点と我々が考えておりますのは、まず、宇宙開発の可能性のみならずリスクへの挑戦、困難さといったものを説明していくこと、全国的な視野に立って進めていくこと、それからより高い広報効果を求めるということで、例えばIT技術とかそういったものを活用しながら、より効果の高い広報活動を進めていくということでございます。
    我々が今、当面の課題として認識しておりますのは、まず第一にこの夏に打上げが予定されているH−2Aロケットの初号機打上げに向けた広報計画でございます。それから、国際宇宙ステーションにつきましては、宇宙ステーション広報情報センターを中心に進めております。また、昨年の12月から本社の28階に、まだささやかでございますが、NASDAiという情報発信の拠点を整備いたしました。こういったところにいろんなメディアの方々に立ち寄っていただいて、いろんな情報を提供するといった観点で広報活動を進めさせていただいております。また、先ほど言いました職員の意識改革ということで、職員に対する広報を進める場としても活用しております。資料の11ページ、12ページに若干の説明がございますので、後で御覧いただきたいと思います。
    それから、結局、打上げなかったH−2Aロケットの7号機、これは技術開発に活用するとともに将来的には文化財として保存するという御要請もありますので、そういった観点での広報への利用、それから回収しました8号機のエンジンは、きょうはお見えでありませんが、山根先生が7月から開催されるメタルカラー館の中で展示していただけるようでございますので、そういったところへの活用等を考えていきたいと思っております。
    それから、戦略的教育活動の実施ということでございますが、これは御存じのとおり総合学習の時間ができてまいります。今後はこういった学習の中にNASDAなりが持っているいろんな広報素材をどのように提供して、教育現場の中で活用していただけるかということに努力していきたいと思っております。それから、関係機関との連携広報ということでございます。これは国立天文台、ISAS、NAL、JSTといったところと広報連携をしてやっていく必要があると思っておりまして、例えばスタートとしてホームページをある程度共有化しまして、どこに入っても宇宙に関しては情報がとれるというような体制をつくっていけないかということで、事務的には検討をし始めております。
    以下、それぞれやっていることを若干書いてございます。事細かには御説明申し上げませんが、まず、報道対応ということでございます。メディアの力は非常に大きくて、先ほどもございましたプロジェクトXにつきましては、我々もいろんな面で協力させていただきましたけれども、視聴率が10%から、11%、単純に1%100万人とされておりますので、いろんな点でメディアの力は大きい。こういったところとうまく連携をしながら広報活動を進めていきたいと思っております。それから、通常の活動でございますが、NASDAは例えばホームページ等の作成も、当たり前のことになっておりますけれども、この分野ではアクセス件数がかなり多い方でございますので、こういったところの充実を図っております。それから、展示館の運営、展示会の実施でございますが、NASDAの場合は種子島、筑波をはじめとしまして7拠点ございますけれども、年間約20万人が訪れるという状況でございます。現時点でこの数は横ばいですけれども、こういった地道な活動がまず広報のベースだと思っています。
    それから、普及・教育活動でございます。これは宇宙研の的川先生をはじめといたしまして、いろんな関係者の方に御協力をいただいておりますコズミックカレッジという活動をはじめといたしまして、小・中学生や高校生が現場で宇宙あるいは科学技術に触れるという活動を進めております。キャパシティ上、年間で三、四百人くらいしかまだ受け入れられておりませんが、こういった地道な活動が特に青少年への普及教育のために必要だと存じております。あと、先ほど言いました総合的学習の時間に対応するという意味では、学校の先生方に対して宇宙に関する情報や、あるいは経験といいますか、触れる機会を提供するということで、先生向けのいろんなコースも作っておりますほかに、ティーチャーズガイドという先生方への資料をホームページを活用して提供するようなことを行っております。あと、宇宙飛行士や一般職員の講演活動を行っておりますが、延べ人数では約10万人くらいの方々に、NASDAのみならず宇宙の現場の方々での情報提供をしているところでございます。
    それから、先ほど言いましたH−2Aロケットの広報活動につきましては今年の最重要課題だと我々は思っております。全社的に報道官、スポークスマンを置きまして、チーム体制を作って広報活動を進めようとしております。通常、先ほど言いました報道対応といろんな活動とともに、H−2Aのロケットの解説シートの発行ですとか、あるいはシンポジウムの開催、ホームページ上での毎日の最新情報の更新、打上げの様子をホームページ上で見られるような形を今、検討してございます。
    資料の11ページ、12ページにつきましては、先ほど言いましたNASDAiのサービスのことでございます。省かせていただきますけれども、1点、教育現場へのいろんな提供ということで、先日、総務省、文部科学省が進めております学校インターネット事業で、学校インターネット網を使いまして宇宙開発事業団と通信・放送機構の共催で「インターネットライブ宇宙ステーションと話そう」というイベントを行いました。6月6日に行いまして新聞紙上でも取り扱っていただきましたけれども、NASDAにいる毛利を中心に宇宙ステーションの勉強、宇宙ステーションにいる飛行士との交信を行いまして、それをインターネットで数百校に流すという授業を行いました。学校インターネット事業は、今、1,700校くらいの参加でございますが、今後、さらに整備が進むということでございますので、将来的にいろんな広報活動をやっていくポテンシャルとしては非常にあるのではないかと思っております。今回はパイロットイベントでしたのでいろいろな課題はありましたけれども、こういったものも一つの方策かと思っております。
    以上、雑駁ではございますが、広報活動について御説明申し上げました。中長期的には人材面の育成とかそういったことも非常に必要だと思っておりまして、今年はH−2Aの打上げを中心にプロジェクトとして広報活動を進めておりますが、他のプロジェクトにつきましてもいろんな広報担当、広報官、スポークスマンを考えていかなければならないと思っています。
    以上でございます。

  長柄部会長 

   ありがとうございました。
    御意見、質問はございましたらどなたでも結構ですから。

  冨田特別委員 

   3つの質問があるんですけれども、広報に使っているお金は1年間にどのくらいかというのが第1問ですね。
    それから、全予算に対する比率でいきまして、NASAとかESAと比較してどうかというのが2つ目です。
    3つ目は、広報活動の評価をどのようにしておられるか。その評価の結果を予算に反映するということは当然あると思うんですけれども、それはどういうふうにやられているかを御説明いただきたいと思います。

  宇宙開発事業団 

   まず、予算につきましては大ざっぱですが、約10億ちょっとぐらいかと思います。NASDA全体の予算の1%以下が今の現状でございます。この中身は、先ほどいろいろ言った活動の中でも展示館の施設の維持運営が大きいのが現実でございまして、半分以上はそれらの活動や、あるいはパンフレットとかそういうものの作成とか、そういった形で占められております。
    NASA、ESAとの比較でございますが、全体予算の規模的にも10倍以上に達するNASAとは単純に比較はできないと思いますけれども、例えば、ジョンソン・スペース・センターの中では純粋に展示活動とかいうものはほとんど外のコントラクターにお願いしていまして、そういったところで実施して、NASAのジョンソン・スペース・センターの予算は日本円に換算して10億弱と聞いていますが、それはいろんな報道対応とかそういったところに活用されている。そういう意味で今のNASDAの現状と比較するのはちょっと困難ですが、展示施設とかそういったもの以外にNASAの広報の重点が置かれていると感じております。
    それから、評価の点でございますけれども、我々も非常に難しく感じて、実際、広報の効果というのはなかなか測定できないのが現状でございます。我々、内部でいつもその問題には直面しているんですが、ただ、例えばパンフレットの作成とかそういった問題はいろんなアンケート調査なんかをやって、ホームページからのダウンロードですべて任せようとか、そういった形の個々の評価は下しまして、予算とかいうものには反映していっているような状況でございます。

  冨田特別委員 

   今の話で評価について絶対評価は難しいかもしれませんが、NASAとかESAと比較評価するということはやられてもいんじゃないかと思うんです。
    それからもう一つは、御説明の中にちょっとあったんですけれども、民間にできるものはできるだけ民間に委嘱する。例えば展示館の運営とかですね。というようなことで、事業団さんの人手がなるべくかからないようにするということも必要じゃないかと思うんですね。その点、御配慮いただきたいと思います。

  宇宙開発事業団 

   我々もその点については非常に重要だと思っています。

  澤岡特別委員 

   少ない数でよくこれだけのことをやっていると常々感心しておりますが、この春に私どもの大学の60周年記念にかけて宇宙のイベントをいろいろやった折に、名古屋地区で非常に役に立ったというか、サポートしてくれたのがサイエンスキャンプ、高校時代にサイエンスキャンプをやった経験者が大学生になって、その大学生の同窓会組織が非常に強力に、ほかの大学の学生がいろいろサポートしてくれたということで、日本もこれだけ大学生が一生懸命になってくれるんだと非常に感心しました。
    そのときにつくづく感じましたのは、これから日本にとって非常に大切な若者を逃がさないでしっかりつかんでいただきたい。サイエンスキャンプに参加した高校生、一回つかんだら離さないぞというしつこさというか、そういうシステマチックなチャンネルをしっかり使って一人一人つかんでいく。そういう点でもったいないことをしているという感じがいたしました。非常にいいのが年とともにどんどん離れていく。非常にもったいない。ただ、そういうことまでNASDAの陣容でどれだけできるかを考えると大変だという気がしますけれども、どんどん努力されて、そして歩どまりが悪いというか逃がしていって、ざるから水が漏れているような気がして、その辺、もうちょっと上手に効率よく、きっとお考えになっているんだと思いますが、いろんなことをやってみましてそういう印象を持ちました。
    以上です。

  上杉特別委員 

   先ほども言われましたように宇宙研も広報では苦労しておりまして、さらにお金もなくあれで、それに比べてNASDAさんは大変よくやっていらっしゃると思って感心しているんですけれども、先ほどちょっとおっしゃったプロジェクトXに協力されたということだったので、このH−2Aのところにも書いてありました事実を伝えるということだけはしっかりお願いしたい。あれは明らかに間違いの報道でありまして、ちょっとしつこいですけれども、我々としてあれは大変気になっております。事実を伝えるということで、是非よろしくお願いしたいと思います。

  長柄部会長 

   私が伺ったところでは、高柳さんがいらっしゃいますけれども、あれは報道じゃなくてドラマであるということで、あれを作っているところはNHKの報道ではないんですね。ですから、ドラマ性がなきゃおもしろくないということでああいうものを作られているらしいんで、私が伺ったところではそういうもののようです。

  松野特別委員 

   上杉さんと同じことを伺いたかったんですが、あの方がドラマチックでいいなら、そうすると今のことでそれをまさにフォローして間違いを正す。あのものがドラマならそれでいいんですし、NHKがやっていることだからいいんだと思うんですけれども、宇宙開発事業団として今のホームページか何かで誤解を生まないようにすることはやるべきなんじゃないでしょうか。

  長柄部会長 

   吉川さん、何かありますか。

  吉川理事 

   説明不足で、どうも済みません。実はプロジェクトXの方に協力したのは、いろいろな資料とかそういうものの提供をしたということでございまして、これはNHKさんの方から番組の作成とかそういうものについては主体的にやられると。ただし、事業団で持っているものについてはいろいろ使いたいので貸してもらいたいということがありましたので、そういう意味で全面的に協力いたしました。それから、御意見がいろいろあるというのはよく承知しているのでございますけれども、その辺の判断の基準がなかなか難しゅうございまして、先ほど長柄先生の方からございましたように、実はこれはある程度ドラマチックに作りたいという要望も報道関係の方としては当然ございますでしょう。したがいまして、私どもとしては中身については事業団が管理するというよりは、できるだけ作者にお任せしたというのが実態でございます。

  冨田特別委員 

   今、説明がありましたので私の言うのは余分かもしれませんが、私、技術導入の現場をずっとやっていましたので、技術導入の評価についても実はあの放送は言っていないことがある。だから、技術導入の成果なんかも客観的に冷静に評価して報道するようなことが必要じゃないかと思うんですね。それをつけ加えさせていただきます。

  中西特別委員 

   広報活動は大変難しいことだと思っているんですけれども、例えば私、関係しているものですから、原子力とか、あと照射した食品をどんなふうにみんなに、遺伝子組みかえ食品もどうするかとか、すべてに共通するんですが、アメリカの広報活動の仕方は戦略がありまして、日本でこういう研究を探したんですけれども、なくて、だれにどんな手法で広報活動をすればどれぐらい信用してもらえるかということをものすごくよく大学レベルで研究しているんですね。最近、話題になってくると思うんですけれども、例えば照射した食品をどんなふうにみんなに知らせるかというときには、実際に現場に説明をして、それから物を入れるとか、宇宙飛行士も食べているんだということで、見本をどれくらい食べさせればどれくらいの人がそれを信用するが。信用するといったらおかしいんですけれども、理解するかとか、大学、研究所に広報活動の戦略の練り方についての調査といいますか研究をさせているんですね。ですから、ここに戦略的広報と書いてあったのは非常に興味深いんですけれども、有識者といいますか頭で考えるよりも練りながら、研究課題としてどういうふうに広報をやっていくかという研究をどこかに委託するとか、あとはアメリカの例もいろいろありますので、戦略を頭に入れられるといいのではないかと思っております。

  吉川理事 

   先ほどお話がちょっとございましたが、基本的に従来も事業団は技術者あるいはそれを支えるメンバーを育ててきたということですけれども、こういう広報の企画、あるいは今おっしゃられた戦略を練る人材の重要性ということを認識してございまして、昨年は職員の中からNASAの広報室の方に派遣いたしまして1年間勉強させてきまして、その中で広報戦略をつくっているわけでございます。日本の国内でもそういった展開を図っていこうということで考えてございます。確かに遅れていたことは間違いないんで、これからはそういった総合的に、先生がおっしゃられたような国内のいろんな機関とも連携しながら進めていきたいと思ってございます。

 井口委員長 

   開発にはリスクがあるということを世の中に説明していくのは大変結構なんですけれども、昨年まで私は別な世界におりましたので、私の頭の中はまだ半分は外から見ている部分がありまして、そういう観点から言いますと、確かに先ほども話題になりました金星探査は非常に挑戦的なんですね。ああいうものにリスクがあるというのは、世の中の人はちゃんと理解していると思います。今まで私は外におりましたけれども、技術・評価部会の部会長としていろんなトラブルの原因調査を6年ほど仰せつかってきたんですが、つまらないところのミスによるトラブルが少なくない。つまり、もうちょっと信頼性管理のマネージメントをちゃんとしていれば避けられたんじゃないだろうか。そういうものまでリスクとして認めてくれというのは外に対して失礼といいましょうか、外の人だってわかるし、そんなものは認められないと言われるだろうと思うんです。今、私は中におりますので、リスクといってもそこまでは外に対して許してくださいと言えるリスクではない。つまり、いろんな管理の問題ですね。そこを分けて考えてほしいと思います。リスクは認められると一言で言うと、そういう避けられる可能性のあるリスクまでいいんだとついつい、今、私は中におりますので自戒を込めて、そういう避けられ得るリスクは許してくれと言えるものじゃないんだということを認識したいと考えます。

 長柄部会長 

   ありがとうございました。
    広報の方はこれで終わりますが、若干時間がございますので、広報に限らず本日の会議全体について何か御意見がございましたら、どなたかございませんか。ないようでございますので、本日の会合はこれでおしまいにしたいと思います。
    次回は7月5日、木曜日を予定しておりまして、場所等についてはまた追って御連絡することと思います。宇宙輸送システムを中心に御審議願うことになっております。
    それでは、本日は御多忙中のところをどうもありがとうございました。

――了――





(研究開発局宇宙政策課)

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