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宇宙開発委員会

2001/08/22 議事録
第30回宇宙開発委員会議事録



第30回宇宙開発委員会議事録

1. 日 時
平成13年8月22日(水)14:01〜15:25

2. 場 所
文部科学省別館宇宙開発委員会会議室

3. 議 題  
  (1) 高速飛行実証(その2)の進捗状況について
  (2) 計画・評価部会の審議結果について
  (3) その他

4. 資 料  
  委30−1 高速飛行実証(その2)の進捗状況について
  委30−2 計画・評価部会の審議結果について
  委30−3−1 H−2Aロケット試験1号機打上げ整備作業状況について
  委30−3−2 宇宙開発の現状報告
    (平成13年8月1日〜8月21日)
  委30−3−3 宇宙の研究開発機関の在り方について
  委30−3−4 第29回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
 
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
  栗木恭一
  五代富文
  澤田茂生
  航空宇宙技術研究所
宇宙輸送システムプロジェクトセンター長
白水正男
  宇宙開発事業団
HOPE−Xプロジェクトチームプロジェクトマネージャー
河内山治朗
  宇宙開発事業団理事 三戸宰
  宇宙開発事業団 今野彰
  文部科学省研究開発局長 今村努
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之
  文部科学省研究開発局宇宙政策課 田中義恭

6. 議事内容

 井口委員長 

   それでは、時間になりましたので、第30回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
   最初は、お手元の議事次第にありますように「高速飛行実証(その2)の進捗状況について」報告をお願いいたします。航空宇宙技術研究所・宇宙輸送システムプロジェクトのセンター長白水さんと宇宙開発事業団・HOPE−Xプロジェクトマネージャーの河内山さんです。よろしくお願いいたします。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   それでは、お手元にあります資料委30−1、それからパンフレットがございますが、それで御説明いたします。
   「高速飛行実証計画」、これは「その1」「その2」がございますけれども、きょうは「その2」の進捗状況について御説明いたします。高速飛行実証(その2)というのは、1枚めくっていただきまして2ページでございますが、高層気球、いわゆるバルーンで、HOPE−Xと同じ形の、まあ、スケールは小さいですけれども、そういう気体を落下させまして、それの滑空中に遷音速の空力特性データを取得するために行う試験でございます。
   遷音速というのは、下に書いてありますように速度が音速の近辺の速度を言いまして、ここにどうして注目しているかといいますと、次のページ、3ページでございますが、私どもHOPE−Xの開発の一環としていろいろな飛行実験を行ってまいりました。速度の速いところではOREXというもので、軌道から再突入するもの、それからHYFLEX、これはマッハ15からマッハ3ぐらいまで飛行いたしました。それから、ALFLEXと言いまして、ヘリコプターで落下させて着陸する最終段階を検証するという実験をやってきましたけれども、遷音速領域、この領域というのは、空力特性、いわゆる空気の力が急激に変化するということで、こういう機体を設計するときの1つの標定点になります。この遷音速というのは、いろいろな風洞試験技術、それからCFD、最近発達してきました計算機を使ったシミュレーションですけれども、そういうものもなかなか難しい領域でして、その精度を高めるということが、全体の設計を最適化するために重要であるということで、遷音速の空力特性を確認するための試験でございます。
   4ページでございますけれども、ということをまとめますと、「高速飛行実証(その2)の目的」といたしまして遷音速領域の空力特性推定技術の向上、これは試験をやりまして、その結果を風洞実験やCFDにも反映させていこうということでございます。それから、その領域で実際に試験をするために誘導制御を行いますけれども、そういうものを実際に確認する。それから、この領域のいろいろな試験をこれからやるための基本的な技術の蓄積を図るというようなことを目的としております。
   この高速飛行実証のうち「その2」に関しましては、フランスの国立宇宙研究センター、いわゆるCNESと共同で進めております。「その2」全体ではなくて、「その2」のうちの最終的な飛行実験の部分、バルーンで投下する部分ですけれども、この部分をCNESと協力して行うということです。協力の分担としましては、バルーンの提供をCNESが行います。それから、実験場、これは実際にはスウェーデンでございますが、その試験場もCNES側で用意する。日本側は機体を用意して、両方で一緒に実験をやろうということで、ことしの5月にツールーズで、NALとNASDAとCNESの三者間での了解覚書に調印いたしております。
   高速飛行実証(その2)の全体の概要でございますが、6ページにございます。高層気球で、これは速度域にもよりますが、最高で高度30キロまで上げます。これに約3時間ぐらいかかりますが、30キロまで持ち上げたところでバルーンから機体を切り離します。機体は自分の重力、自重で加速を始めまして、このあたりの高度ですと空気が薄いので、音速を超えることができます。音速を超えた状態で滑空しているときにデータをとる。その後、回収地点まで誘導いたしまして、最終的にはパラシュートを使って軟着陸して、機体は車輪がございませんので、エアバッグで地面に着地する。こういう試験を6回行うということで進めております。
   7ページ、機体の概要でございますが、省略いたします。
   8ページ、全体計画でございますけれども、平成11年度からいわゆる設計に入りまして、現在平成13年度は、設計をおおむね終了して、今、機体の製作にかかっているところでございます。その下の方に、放球手順確認試験というのがございますが、これはいわゆる上の方でやっているシステム試験等の一環として行ったものですが、今回これについて詳しく御説明いたします。本番の試験は「その2」としましては、14年度の8月に第1回目のシリーズ、それから15年度の5月に第2回目のシリーズを行う。8月と5月になっておりますのは、現地の気象条件、風でございますが、その関係でこの時期にしかやれないということで、2回に分けて6回の試験を行うということにしております。
   その中での放球手順確認試験でございますが、これは高速飛行実証(その2)の一連の手順のうち、技術的にリスクがあると思われるところをあらかじめ確認しておくということを目的としております。それが4つありまして、1つは、高層気球で機体をつり上げる手順の確認。この手順、OHPでは用意しているんですけれども、かなり複雑な手順でして、というのは、高層気球というのはかなり限界設計をしておりますので、過渡的に変なロードがかかると破れるとか切れるとかいうことが起こります。そのためにまず補助気球で機体をつり下げて、それから、両方を自律させて、相対速度の差でじわっと荷重をその本気球に移していく。そういう微妙な手順、これもCNES側の技術でございますけれども、そういうことをまず確認する必要があります。
   それから、高度30キロで機体を分離しますが、機体の姿勢制御は空力舵面で行います。ということで、ある程度速度が出るまでは機体の姿勢制御はできないため、分離というのを非常にスムーズに行わないといけないということで、機体をそういう静定させた状態で分離できるかどうかということを確認するのが2番目でございます。
   それから3番目に、この機体は着陸機能がございませんので、パラシュートで回収します。その機能の確認。
   それから4番目、着陸した機体、これは6回同じものを使う予定になっておりますので、それを回収するという手順がございます。この4つを確認するというのが今回の放球手順確認試験の目的でございます。放球手順確認試験は、10ページでございますが、NALとCNESのチームが、ここの赤線で書いてありますスウェーデンの北の外れにありますエスレンジというスウェーデン宇宙公社の実験場でございますが、ここは気球だとか小型のロケットを飛ばしたりしている実験場ですけれども、そこで行っております。まだ今、現地部隊は残っておりますが、7月下旬から準備を始めまして、8月14日(現地時間)で放球手順確認のフライトを行いました。そのフライトが11ページにございますが、高速飛行実証と大部分、概要は似ておりますが、まず右下のバルーンで地上から打ち上げといいますか、放球いたします。それから、実際に高度31キロまで上がりまして、そこで機体を分離させます。それから、ドローグシュート、メインシュートを展開させて、最終的に機体を水平にして接地させる。ただし、今回はこの機体、1回限りのものですからエアバッグは使いません。最後、それを発見して、ヘリコプターで回収する。こういう手順で行う予定でございました。12ページがその結果でございますが、4つの目的ごとに結果を簡単に書いておりますが、高層気球でのつり上げ手順の確認、これは非常に順調にいきまして完了いたしました。それから分離機能、これも機体の静定をしたままスムーズに分離できるということを確認いたしました。それから、3番目、回収用パラシュートの機能、これは、パラシュートは実はよくやるように3段階、小さなパイロットシュート、それからドローグシュート、最終的にメインシュートという3段階でございますが、最初のパイロットシュート放出後にパイロットシュートが十分伸び切らないという事態が発生いたしまして、その後のシークエンスが進まなかったということで、これについては確認できておりません。それからその後、パイロットシュートだけの状態で事実上、減速しないまま地上に落下いたしました後、その機体をヘリコプターで発見しまして、それを回収するという手順は無事行っております。
   今後の予定でございますが、先ほどお話ししましたように本番の飛行実験「その2」に関しましては2002年の8月、それから2003年の5月に、今回の放球手順確認試験と同じエスレンジ実験場で行うべく今、準備を進めておりまして、機体の製作を進めているというところでございます。
   それから、今回のパラシュートの不具合に関しましては、現在、原因を究明中でございまして、必要な対策を講じまして、必要なら試験を行って機能を確認したいと思っております。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   御質問、御意見がございましたら。
   パラシュートで開いて落とすというのは、今までいろいろなことで何回も経験しておられるんですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   はい、そうです。ただ、パラシュートというのは基本的に特注品で、最初のパイロットシュートをどう放出するかというのはそれぞれのシステムで違いまして、そういう意味では毎回確認するというのが基本的な動作だと思います。

 長柄委員 

   HYFLEXのときなどは、何十キロぐらい上から最初のパラシュートを開くんですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   HYFLEXはだんだん忘れてきちゃったんですが、最初のは、たしか10キロとかその程度で開いています。今回のよりはかなり低いところです。

 長柄委員 

   今回のものは10キロくらいまでは自然落下というわけにはいかないのですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   本番の高速飛行実証では、滑空して、パラシュート系が作動し始めるのは4キロぐらいですが、今回の試験は、実は非常用のパラシュートも兼ねていますので、一番条件的に厳しいということで、高度30キロ、つまりバルーンから放出した直後に放出しました。一般に動圧が低いほど、空気の流れが少ないほどパラシュートは開きにくいということなので、一番条件の厳しいところで30キロというところで分離直後に放出しました。

 長柄委員 

   実際は4キロですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   ええ、順調にいった場合は、4キロぐらいで放出します。

 長柄委員 

   万が一のことを考えて30キロくらいで開くパラシュートもつけるわけですね。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   いや、同じものを、順調にいった場合は4キロで作動させる。それから、機体にトラブルがあって、どこに行くかわからない場合は、パラシュートで強制的に落下させて回収する。そのときには最大30キロあたりで開く可能性があるということで、今回30キロで行ったということです。

 栗木委員 

   分離された後の気球の方は、よくよその国へ飛んでいったりして、宇宙研の気球なんかも時々問題になったりするんですけれども、CNES側の……。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   ええ、CNES側のシステムで、これは分離した後、このバルーンはガスを抜いて落下します。落下地点は、場合によってはフィンランドまで入ることもあるらしいんですが、ほとんどの場合はスウェーデン内あるいはフィンランド内で、たまたまロシアに行くことがあるらしいんですが、ほとんどはフィンランド内で回収していると聞いています。

 栗木委員 

   宇宙研も海を渡って向こうへ行きそうになったりして、ひやひやすることがよくあったと私も聞いているものですから、その辺はCNES側の作業になるのですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   ええ、その辺はCNES側の担当です。

 井口委員長 

   「その1」の飛行実験、キリバスで行うというのも同じ機体なんですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   共通部分がかなりございます。胴体なんかは全く同一なんですが、「その1」と「その2」の最大の違いは、「その1」はジェットエンジンを内蔵しております。そのため自力で自律するために脚がある。それから、浮力がちょっと足りないので、主翼を若干大きくしている。この点が違いますが、かなりの部分は共通設計でございます。

 栗木委員 

   さっき6回予定されているということだったんですが、実際に遷音速空域を飛ぶ時間というのは1回あたりどのぐらいの時間になるのですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   データ取得そのものは10秒オーダー、その間にマッハ数一定で、アルファ迎角を変えるということをやります。今の予定だとマッハ1.2、1.05、0.9かなにかをそれぞれ2回ずつ行う。だから、マッハ数3種類を2回ずつで合計6回。その2回というのは、ある部分は冗長というか、再現性を見ますし、あるところは2回目はステップ応答を入れて、応答も見ようという形で、3掛ける2で6回ということです。

 井口委員長 

   6回のうち、どこかで壊れたらそれでおしまいということになるのでしょうか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   まあ、その場の判断ですが、機体は基本的に予備がございませんので、そういうことになります。

 澤田委員 

   遷音速の特性そのものというのは、いろいろな国でデータというのは取得されているんですか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   必ず実験には避けられない誤差というのがございまして、その誤差が遷音速ではかなり大きくなる。それはいろいろな技術的な事情で、これは実はベースにしていますスペースシャトルのデータブックを見ても、遷音速では誤差が大きくなっております。その誤差が大きいことによって、いろいろな設計の制約というか、負担になっているので、その誤差をなるべく小さくしたいということで、こういうふうに実フライト条件で特性を確認して、そういう誤差を小さい、あるいは今の誤差の設定が適切であることを確認しようということでございます。遷音速特性そのものは地上で風洞で調べたりはできますけれども、やはり風洞だとかCFDというのは限界がありまして、実飛行で確認したいということです。

 五代委員 

   3ページにエンベロープがありますね。今、この機体はHOPE−Xの4分の1、それ以外のものは、みんな4メートル前後のものなんですが、これを小型といいますと、小型でもって行う宇宙往還機の基礎実験は、これ以外にどういうことが考えられるのでしょうか。いや、もうこのサイズで行うべき実験はあんまりなくて、あるいはもうひとまわり大きいもので、高度な実験をしなければいけないのか、この辺はNALの人とNASDAの人とで意見が違うかどうか知りませんけれども、御意見をうかがいたいです。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   2つポイントがございまして、1つは、これは速度域と高度で見る限りは大体カバーしていますが、例えばHYFLEXというのは、形が極めていびつなもので、飛んではいるけれども、課題がすべて解決したかというと必ずしもそうではなく、それぞれの領域でまだ課題は残っているということと、もう一つは、同一の機体でマッハ25から着陸までをやる必要があるということ、これはこれまでの実験を技術的に単に足し合わせればいいというものではありませんので、そういうオーバーオールの試験というのはやる必要があると考えています。

 五代委員 

   OREXはカプセル型だし、HYFLEXはいわゆるリフティングボディで、ほかは全然違いますね。だから、おっしゃるように総合的な試験がされているわけではないのですね。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   はい。

 五代委員 

   だから、今みたいな1つのボディーでこれをずっとやるということは、HOPE−Xクラスでないとだめなのか、50%機体でどうだとか、そういうたぐいの何か構想はありませんか。

 河内山プロジェクトマネージャー 

   HOPE−Xは、御存じのように荷物を積むという能力を与えようとしたので、あの規模になったわけで、あれから荷物を積むペイロード能力を一切とってしまうと、もう一回り小さい機体というのはあり得ると思いますが、25%規模の、つまり今回の高速飛行実証規模の機体で全部おりてくるというのは、耐熱性とかを考えると、まだ無理だと思います。HOPE−Xより一回り小さいぐらいが限度かなと私は思っています。

 井口委員長 

   よろしゅうございますか。それでは、どうもありがとうございました。議事の2番目が、「計画・評価部会の審議結果について」、長柄委員長代理に報告をお願いいたします。

 長柄委員 

   はい。資料は30−2でございますけれども、本件につきましては、澤田委員以外は各委員、会議に出られておりますので、ごく簡単に報告したいと思います。
   1枚開いていただきまして、最初の前文で、本年の4月11日に審議付託がございまして、これは宇宙開発活動に関する全般の進捗状況に関する審議、それから2番目が、新規な計画についてそれが妥当かどうか審議が欲しいという付託がございまして、その後、4月以降きょうまでに8回この会合は開いております。
   審議のやり方については1ページから2ページに書いてございますけれども、これは後で御覧いただきたいと思います。従前の計画調整部会のやり方と基本的に大きな違いはございません。
   審議の結果でございますけれども、2ページの後半でございますが、宇宙開発活動全般についてのレビューをやっております。2ページの下の方に、個別分野ごとのコメントといいますか、レビューの結果でございますけれども、先端・基盤技術開発、この1がそうで、あとの8の、これは7ページになろうかと思いますけれども、宇宙科学まで、7ページの8までに分けてございますが、先端・基盤技術開発につきましては、3ページの真ん中あたりになりますけれども、これは信頼性等の関係から、最重要課題の1つとして積極的に取り組む必要がある課題であります。
   それから、宇宙3機関共同でおやりになっています信頼性プロジェクトについては、組織の壁を越えて関係者が共同研究を行うことについては、非常に意義が深いことであるというコメントをつけております。
   それから、ロケット輸送システムでございますが、H−2Aの標準型についてはいろいろなことがございまして、開発が遅れて、来週あたりに打上げとなっているわけですが、標準型につきましては、早く技術を確立して、信頼性を確認して、民間側にその技術を移転し、民間側で打上げ事業をやるということが求められているわけですけれども、NASDAとしても、これは3ページの下の方ですけれども、民間側が打上げ事業をやるために、NASDAとしてもいろいろ協力するべきことが多いということが書いてございます。
   4ページに増強型のことが書いてございます。これは3トン級の静止衛星を打ち上げるというロケットですけれども、もともとは15年度に打ち上げる予定でございましたが、標準型の開発の経験等に照らして、さらに従来の路線ではなくて、さらに開発の強化策をとる必要があるということで、15年度には残念ながら、まあ、急げば間に合わないわけではございませんが、やはり確実に打ち上げるということを考えますと、延期せざるを得ない状況になっております。
   一方、商業化という点から見ますと、増強型の早期打上げが非常に要望されているわけですけれども、失敗を再び繰り返さないためには、十分な開発試験を行った上でやる必要があるということで、この開発強化をやるために、打上げを後にずらすことはやむを得ないという判断でございます。
   それから、J−1ロケットが4ページの後半にございますけれども、平成8年に1号機を打ち上げて、本年度末にOICETSという衛星を打ち上げる予定でございましたが、実験の相手型であるARTEMISが、今、静止軌道に達するのに大分時間がかかりそうだ、それから、機能確認にも大分時間がかかりそうだということで、今年の冬、上げたとしても、すぐにARTEMISの実験ができそうもないということで、OICETSについては打上げを当分の間、見合わせる。それから、ロケットの方の開発は凍結するということにならざるを得ないということでございます。3号機以降については現在のところ打上げの予定はございません。こういうようなことで、J−1ロケットの反省に立って、今後新たなロケットを開発する場合には、将来の需要の見通しとか国際的な価格動向などを今まで以上に重視する必要があるということが書いてございます。
   それから、4ページの下から宇宙ステーションでございますが、5ページの真ん中あたりに、これまで科学技術研究についてはかなりの準備がされておりますけれども、教育とか文化的利用あるいは商業利用ということについての準備がまだ十分ではないということで、利用に当たっての条件、利用料金をどうするかということを早く決めなさいということを言っております。
   それから、セントリフュージについては、利用要求との関係でまだ基本設計が固まっていませんでして、最近聞いたところではほぼ固まったということですが、これについては早くアメリカ側と調整を急いで、基本設計を早く固めて、実際の物づくりにかかりなさいということを言っております。
   それから、データ中継技術衛星でございますけれども、これは2機を予定していたわけでございますが、予算が非常に逼迫しているというようなことがございまして、最初の1機のウエスト、Wの方は予定どおり開発するけれども、イーストについては開発を中止するということが提案されました。これは予算が足りないということでやむを得ない措置ではあります。1機になりますと、中継するデータ量が減少するとかいうように運用上困ることもないわけではございませんけれども、この部会としてはやむを得ないものと判断しております。
   地球観測については、いろいろ書いてございますが、日本の地球観測技術というのは、近年伸びておりまして、世界的に大きな役割を果たしております。これにつきましては6ページの真ん中の最後の方ですけれども、非常に有用なデータがいろいろとれているわけですけれども、これを利用機関・利用者といったエンドユーザーの方でうまく使えるように、もっと利用体制を強化する必要があるということを述べております。
   6ページに、通信・放送・測位ですが、これは現在、2つの大きいプロジェクトが進んでいます。1つは、ETS−8でございまして、これは非常に大型のアンテナを使う移動体通信用の技術試験衛星でございますけれども、産業界の方からは、早期実証、早期にこの大きな衛星バスの技術を実証してほしいという要求が非常に高いわけでございます。一方、先ほど申しましたように増強型のロケットの打上げというのが延びる。ETS−8をそのまま延ばしていいかというと、こちらの方は早く打ち上げる必要があるということで、今後、ETS−8をもう少し何とか軽量化できないかという検討をする。一方で、増強型は間に合いませんけれども、標準型を何か増強する段階的な開発スケジュールというものがないか。こういうことで、そのいい妥協点を見つけて、早期打上げを目指す必要があるとしております。
   それから、インターネット衛星でございますけれども、従来の衛星に比べまして、これはユーザー要求を非常に重視した利用を中心に考えた今、計画になっておりまして、この点は非常に評価に値するということを述べております。
   情報収集衛星についてはほぼ計画どおり進んでおりまして、特にコメントはつけておりません。
   それから、宇宙科学ですが、国際的にも日本は指導的な役割を果たしておりますし、今後とも国際協力を進めながら、もっと強力に進める分野である。ただ、宇宙研のプロジェクトは小規模な点もございますけれども、プロジェクトの成功基準、サクセスクライテリアとか目標の優先度設定というのがはっきり明文化されておりませんので、それはちゃんと明文化しておいた方が、あとの評価とか資源配分に非常に有効であるということを言っております。
   それから、7ページの後半から、NASDAの共通的事項として、資金計画・人員計画を述べておりますけれども、資金計画でございます、8ページへ参りますが、一昨年以来のこういう財政状況になりますと、既存計画がどうしてもお金が足りないということで変更を余儀なくされております。こういうことによって、場合によっては衛星の打上げ、せっかく打ち上げても時期を失したとか、その意義が失われるということもなりかねませんので、今後はプロジェクトを立てる場合にもっと重点化を図る必要があるということを述べております。
   人員計画につきましては、NASDAでは依然としていろいろ努力はされていますけれども、事業規模と人的資源のバランスが崩れている、人的資源が足りないということで、民間にできることは極力民間側に責任を持って移管するということを提言してございます。それから、信頼性・品質保証ですけれども、これは事故・不具合の発生防止の必須の事柄でございますので、もっと強化しなさい、と述べております。
   それから、広報・教育普及活動は、少ない人数ながら一生懸命やっていることは認めますが、まだまだ幾つかの点で改善の余地があるということで、その改善すべきことについて8ページの下の方に書いてございます。
   それから、NASDAでは昨年くらいから開発環境の高度情報化ということを進めておられます。開発だけではなくて、いろいろなプロジェクトの管理・企画・経営、こういうことにもいわゆるIT技術を使ってやろうということで、かなり大がかりなプログラムを組んでおられますが、これはNASDAとか関連企業だけじゃなくて、きのうの新聞発表もされているようですが、3機関の統合ということになりますと、もう3機関はもとより関連企業、大学、そういうところと情報が簡単にお互いにオンラインで十分やりとりできるように相互間の連携調整を進める必要がある。いろいろなシステムが日本の中に入り込んでくると、効率が非常に落ちるということで、最初からそこを考えなさいということを言っております。
   それから、新規の計画でございますが、こういう財政状況でございまして、ことしの新規の計画は1個で、ISASの金星探査計画でございます。これにつきましては、佐藤委員に主査をやっていただきまして小委員会を設けまして、いろいろな科学的な意義だとかマネジメントの上で問題はないかということを議論していただいて、これについては後で、後ろの方に参考についておりますけれども、これは準備も十分整っていて、着手することが適当であるという小委員会の報告をいただいておりますが、その小委員会報告に沿ってこの部会でも、この計画は開発研究を行うことが妥当であるという結論にしてございます。
   いろいろな衛星等の打上げが延びたり、変更になったりしておりますが、それについては、17ページでございますが、一番最後に今後の打上げ計画ということで掲げております。
   以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   部会長代理を務められました栗木委員、それから部会委員の五代委員、何か補足されることはございますか。いかがでしょうか。

 五代委員 

   今、予算的に非常に厳しい段階ですけれども、ここには出てこないようないろいろな将来の芽というか、そういうものはそれほどお金がかかるわけじゃないですから、それを枯らさないように、それを育成するようなことを心がけていただきたい。こういうのは、あまり表には、こういうところに書くほどではないのかもしれませんけれども、そういうことをお願いしたいと思います。

 長柄委員 

   この部会としては将来の芽、いわゆる芽を育てるというところは、この部会としていいとか悪いとかいうのはもうやめましょう、ということにしております。そこはNASDAの経営者なりISASの幹部なり、それぞれNALとか、おやりになればいいので、非常に小規模な段階では、早い段階で、こういうプロジェクトを将来やりたいんだけれども、研究しようかどうかというようなことは、どんどん各研究所なり組織がおやりになればいいでしょう。ここでそれを全部紹介していただいて、いいとか悪いとかやると、むしろディスカッションするんじゃないかと思います。

 五代委員 

   それはやめましたよね。

 長柄委員 

   はい。そういうことはここでやっておりません。

 五代委員 

   ですから、やらないということなんだけれども、是非そういうのはどんどん推進してくださいということだけ申し上げたいと思います。

 井口委員長 

   ありがとうございます。
   栗木委員。

 栗木委員 

   1つ気がつきましたのは、宇宙開発委員会としてこの中の文言ではなくて、こういう計画に対して中止・延期・凍結といったような決断をしたということは、基本計画に対するインパクトはある程度配慮したということになるのではないかと。そういうことから考えますと、今のところ、私自身が担当しましたプロジェクトの中間的な評価を行うときに、外部の環境が変わったのでこういうことを変更します、そのときにはこういう決断をしますというルールづくりは一応できておるんですが、こういう大きな外部的な要因があらわれたときにどう処置するか。そのときは計画・評価部会で諮るということで、今までは1件ずつのプロジェクトが出てきたときの評価を行うという体制ができていたように私は思うんですが、今回のように大きな外の状況が変わったということの対処を、これが例になるかもしれませんけれども、やはり十分考えておく必要があるのではないか、そういうことを感じました。宇宙開発委員会だけで決められないところもあるので、皆さんの合意としてこの結果をコンクルージョンという格好ではなかなか書きにくいだろうなというところも、この素案の段階から見ていて感じていたのですが、宇宙開発委員会が、そのような大きなディスターバンスを与えられたときに、どういうことができるかという、そこを方策としてやはり考えておく必要があるのではないか、そういうことがありました。

 井口委員長 

   ありがとうございます。
   この審議結果につきましては10ページに、4月11日付で宇宙開発委員会が計画・評価部会に審議の依頼をしています。その基本的な考え方というのは、真ん中あたりの1.の(1)にありますように「宇宙開発に関する活動全般の進捗状況等に関する調査審議」、一種のこれは長柄委員長代理がレビューという表現をされましたが、まさしくそれに当てはまるものと私は理解するんですが、そういう考え方でよろしいですか。

 長柄委員 

   今回は要するに新規だろうと継続だろうと、いずれにしても全体の活動状況のアニュアルレビューであるというつもりでこの部会を運営するということでありました。ほかのいろいろな各省の活動についても聞いたんですが、なかなか皆さん、正直言って、本当のことをこういう部会に出して、すべてオープンにしてディスクローズするということは今までなかったものですから、今までも新規のものについては出さざるを得なかったわけですが、新規でも何でもなくて、それが現在どうなっているかというのをディスクローズしてくださいということをお願いしたところ、なかなか素直には、「はい、そうですか、やりましょう」というところは最初なかったんですが、でも、結果としては関係機関から全部出していただいて、そしてオープンの場で、簡単ではございますが、レビューができたということはよかったと思います。

 井口委員長 

   これから、きのう遠山大臣が記者会見で話されましたように3機関の統合問題もありますし、それに従っていろいろなプロジェクトの変更があり得るんだろうと思いますが、そのときには今、栗木委員がおっしゃったようなことも、宇宙開発委員会で組み込むようなことも考えていかなければいけないのではないかという気がいたします。

 澤田委員 

   予算が非常に厳しいというのは客観的情勢としてわかります。今話のあったデータ中継衛星、2機は金がかかるから1機に絞るということですが、大体の規模は来年度からの見通しとして、どのぐらい減額というものを想定した計画なのでしょうか。ちなみに、1機分が幾らぐらいになるのか。トータルとしての要求だから、これからの部分というのは当然出てくるものがあるんでしょうけれども、何か1つのシーリングみたいなものを作ったのでしょうか。

 長柄委員 

   今年は予算編成が非常に変則的で、8月10日に閣議で「一般歳出は約10%削減する。いわゆる5兆円減税だ」と、こう言うんですね。そういうことで文部科学省の要求限度がこれだけあるというふうに、ただ単純じゃなくて、特殊法人はどうするなど、いろいろあった結果、NASDAについては約100億円近く、前年度よりもめり込むということになっております。NASDAの方はもともと新規がなくても、宇宙ステーション等の計画が増えますので、200億円ぐらいはどうしても増やしてほしいということだったんですが、逆に100億円ぐらい減になるということで、どうしても300億円分くらいの経費を何とか捻出しなきゃいかんということで、中止だとか凍結だとか延期とか、こういうことで先週、先々週になりますか、13日とか14日ごろにそういう案が出てまいりまして、これをこの部会でもきょう午前中、紹介したわけですけれども、お金が300億円ぐらい不足するということで、こういう措置をとるのはいいことじゃないけれども、やむを得ない措置であるという結論になったわけです。ですから、予定が高過ぎたかどうかわかりませんが、予定よりも300億円ほど不足したということでございます。その大部分は宇宙ステーションと衛星でかぶっているというか、そこで捻出しております。

 井口委員長 

   だから、現時点での平成14年度予算は織り込み済みということと理解してよろしいわけでしょうか。

 長柄委員 

   今、要求段階、今度の8月末に要求するものがそのまま通れば、この姿で資金的にいけるはずでございます。

 井口委員長 

   この審議結果につきましては宇宙開発委員会の了承を求められておりますが、澤田委員はきょう初めて聞かれたわけですけれども、いかがでしょうか。御了承いただけますか。

 澤田委員 

   はい。

 井口委員長 

   それでは、委員会として了承することにいたします。どうもありがとうございました。それでは、3の「その他」でございますが、4つほど項目がございます。最初に、「H−2Aロケット試験機1号機打上げ整備作業状況について」、宇宙開発事業団の三戸理事に御報告をお願いいたします。

 三戸宇宙開発団理事 

   本資料の説明に入る前に、本資料に書いてあることですけれども、冒頭、御報告したことがあります。よろしいでしょうか。

 井口委員長 

   どうぞ。

 三戸宇宙開発団理事 

   本日、宇宙開発事業団はH−2A試験機1号機に関しまして、2段の液体酸素圧力調整弁の作動不良により、予定打上げ日25日を変更いたしまして、28日以降にするという旨を決定し、発表いたしました。
   その件につきましては以上です。

 井口委員長 

   いつになるかというのは、いつごろわかそうなんですか。

 三戸宇宙開発団理事 

   現在、原因究明中でございまして、1つのめどとしては、まず23日にどうなるかということで考えております。あと、詳細につきましてはまた後で。
   では、本資料に戻りまして御説明いたします。H−2Aロケット試験機1号機の射場整備作業につきましては、7月12日より開始いたしまして、それぞれの点検等を終えまして、8月9日に極低温試験を行う段取りとなりました。その間におきましては落雷等の予想外の地上設備の被害等がありましたが、ロケット機体につきましては予想以上に順調に推移してまいりました。
   極低温点検試験の結果につきましては、試験の内容ですけれども、これは打上げ前のリハーサルというような位置づけでございまして、LE−7Aエンジンの着火直前までをシミュレーションいたします試験でございます。その試験中におきまして幾つかの不具合がございまして、結果としましては予定の時刻よりも「X=0」が2時間ないし2時間半後ろに延期されましたが、試験としては予定どおり実施され、ほぼ予定どおりのデータが得られました。その内容につきましては、特記事項として表にして、2ページ目に表を載せてございます。まず、表の1番ですけれども、GPSの受信機テレメータデータに断続的なデータ欠損が発生したという事象でございます。これにつきましては、地上のテレメータデータ処理装置内のインターフェースボードの不良と特定いたしまして、それを交換し、確認試験を行って、不具合が発生しないことを確認いたしました。
   2番目の事象でございますが、これも極低温点検時ですが、テレメータデータ処理を行うタスク支援装置という地上装置でございますが、それが、その問題で一時、2段のテレメータデータが処理されない状態になりました。これにつきましては、オンボードソフトウエアと地上のテレメータデータ処理装置とのインターフェースの不良と特定いたしまして、対策処置といたしましては、テレメータデータ処理プログラムの改修を行い、再試験の後、不具合が発生しないことを確認いたしました。
   3番目ですけれども、これも極低温点検時ですが、第1段エンジン部の酸素濃度が、規定内ではありますが、若干上昇したという事象、まずこれが1つです。もう一つは、その対象物につきましては、これは第1段の酸素注排液弁でございまして、それを持ち帰って、分解点検したところ、内部に黒色粉末が見られたということでございます。
   原因ですが、もともとこの1段酸素注排液弁につきましては、弁軸から酸素を排気するという特性を持っておりまして、これが予定の量より多かったということでございます。それから、黒色粉末につきましては、工場での作動確認時に設備から混入したものということでございます。
   対策・処置でございますが、まず本注排液弁につきましては、2段、2号機用のものと交換しました。それから黒色粉末につきましては、他の弁につきましていろいろ影響評価を実施しまして、かつ、現在、内部漏洩点検、内部漏洩していないかどうかを点検いたしました。かつ、その弁の中に黒色粉末があるかどうかにつきましては、その弁にガスを通しまして、その出てきたガスを分析いたしまして、黒色粉末がない。もし仮にあったとしても黒色粉末がもう既にボディーにこすりついているというふうなことで、機能・性能上に問題ないことを確認いたしました。
   それから、4番目ですけれども、保安用コマンド、これは中之山局ですけれども、これが試験中に送信断となったということで、これにつきましては、電波の出力調整用部品の不具合と特定いたしまして、これを交換し、確認いたしました。
   5番目が、先ほどのバルブ作動、Y−3のバルブ作動点検中に2段液体酸素タンク圧力調整用弁の、これは実は冗長系になっておりまして、そのうちのバックアップ用の予備バルブが作動しなかったということでございます。現在調査中でございます。分解点検したところでは、潤滑剤の剥離及び粉状の粒子が確認されております。現在、三菱重工業の名誘において原因究明をしているところでございます。
   3ページ目に、この最後の点につきまして若干説明いたします。下のところに弁が2つ並んでおりまして、右側がプライマリーで、左側がセカンダリーということで、このセカンダリーの方が作動不良ということでございます。この弁の作動につきまして、推進システム、タンク加圧システムについて簡単に説明いたしますと、まず、LH2タンクの中にヘリウムの気蓄器が3つ並んでおります。これをLOXタンク、液体酸素のタンクの中で温めまして、LOXとほぼ同じ温度にしまして、それを圧力調整弁によって流量を制御することによって、LOXタンクの圧力を制御するという仕組みになっております。
   現在、この不良のバルブについては原因を究明中ということで、途中までの経過を説明してくれますか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   実は分解は種子島宇宙センターでできたんですが、その後、いろいろな計測機器、分析機器が必要なので、工場へ持ち運んで実施することとしておりましたが、ちょうど台風通過に当たって交通機関が一切なくて、運び出すことができない状態になりました。それで昨日、朝、運び出すことができまして、それで昼過ぎ、3時ごろに工場に搬入して、その後、まずは内部で見つかったごみの粒子の分析、それから、その後、実際、何か寸法形状に異常がないかということで、一時的な寸法調査をいたしました。それで、ごみ状の粒子状の分析結果は、現在のところは外部から入ったような成分はなくて、バルブ内部に使われている材料から発生したような成分のものであるということがわかっております。それから寸法に関しても、現時点では計測した範囲で異常は見つかっていません。今後引き続き、詳細の寸法調査、それから、ほかのいろいろな調査を合わせてやる計画です。

 三戸宇宙開発団理事 

   そういうことで、以上、報告を終わります。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   御質問、御意見、ございますでしょうか。
   そうすると、この3番目のOFDVの黒色粉末と5番目のバルブの粉末とは、全く別のものなのですか。

 三戸宇宙開発団理事 

   ええ、これは試験装置が既に違いますので、その試験装置から何か悪いものが入ったということはありません。

 栗木委員 

   この粉末の方の材質はわかったんですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   3番目の黒色粉末ですか。

 栗木委員 

   ええ。

 今野(宇宙開発事業団) 

   これはステンレス系の材料の酸化物、マンガンの酸化物、それから鉄の酸化物、それからクロムの酸化物というのが分析結果として出ております。

 栗木委員 

   ステンレス起因のでしょうか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   ステンレス系に含まれている材料の酸化物が出ているということです。

 三戸宇宙開発団理事 

   バルブの試験に使う装置のある一部に可能性があるということで、現在、さらに詳細に詰めておりますが、多分それが一時期出て、その後なくなってしまったのではないかということで、ある時期に作ったものについて集中的に今、調べています。

 井口委員長 

   何カ月前にも配管か何かからダストのような物が見つかったというのがありますね。ロケットに限らず、精密機械にとってダストコントロールというのは基礎の基礎ですよね。それが次から次へとあらわれるということに関しては非常に心配を感じます。今度の打上げにどうこうというのはもう間に合わないこともありますし、しっかりチェックすることが大事だと思いますけれども、その後でもダストコントロールの管理とか、その辺は少し見直す必要があるのかもしれませんね。

 栗木委員 

   注排弁であればフィルターがどっちかに入っていますよね。

 今野(宇宙開発事業団) 

   注排弁自体の一番上流に入っています。

 栗木委員 

   いや、試験機から入ったということだったんですから、そうすると、試験設備と何か被試験体との間で生じたのでしょうか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   注排弁のバルブ単体の機能試験をやるときに、ですか。

 栗木委員 

   バルブ単体の機能試験をやるときに。

 今野(宇宙開発事業団) 

   そのときに装置を使って機能試験をやるんですが、その装置から入った、ということでしょうか。

 栗木委員 

   その間にはフィルターはないんですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   ないんです。その装置に入るガスのところでフィルターは入っているんですが。

 栗木委員 

   そっちに入っているのですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   ですから、フィルターのレイアウトもちょっと考えないといけないと考えています。

 栗木委員 

   粉末は10ミクロン、20ミクロンぐらいのものですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   かなり細かい粉末ですね。

 三戸宇宙開発団理事 

   これは、粒そのものはスペックインなんですけれども、ただ、量が多いということです。

 栗木委員 

   フィルターでも10ミクロンはきついですね。
   もうひとつ、最後の、今問題になっているバルブですが、これは履歴は残っているんですか。どのぐらいのサイクル作動させたのか。

 三戸宇宙開発団理事 

   今、大体40回ぐらい作動させていまして、フライト中は20回ぐらいなんですけれども、要求スペックとしては200回。もちろん認定試験等ではそのぐらいはやっています。

 井口委員長 

   二重系でバックアップだからという考えはあるのかもしれませんが。

 三戸宇宙開発団理事 

   そうは言いましても、打上げ前はなかなか。

 井口委員長 

   ええ。だけど、打上げ前に見つかったというのは、ある意味で不幸中の幸いと言えるのかもしれませんね。

 澤田委員 

   このバルブは全部材質から何から国産なんですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   はい、もともとの金属も国産ですね。設計も日本でやっていますし、材料も日本で、組立て、加工からすべて日本でやっています。

 澤田委員 

   今までのロケットでも使われてきたものなんですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   これはH−2のころと変わって、H−2A用ということで新たに開発したバルブで、2段としては8号機から既に、8号機に実際このバルブで2段が飛んでいます。ただ、2段はパーフェクトな機能を確認していないので、我々が得ている2段着火から200秒のデータでは正常に機能しています。

 澤田委員 

   この表の2番目のデータ処理プログラムを改修したという話ですが、それは、今までもそのプログラムでデータ処理をやっていたわけですか。

 三戸宇宙開発団理事 

   はい、そうです。

 澤田委員 

   何かそれをさわって、こういう事故が起こったということですか。

 三戸宇宙開発団理事 

   インターフェースが不十分で、ある場合に起きる。だから、必ず起きるということじゃなくて、要するに起こる事象があるということです。通常は起きないんですけれども、もう少し詳しく言いますと、オンボードソフトウエアの方を停止したときに下の方が勝手に動いたというときに、どうもあそこのデータのやりとりで同期がとれなくなってというような感じで、全部だめになってしまうということで、今回、その辺のオンボードソフトウエアが停止したときには、下の方も、通信のやりとりのところをしっかり停止して、両方の動きを合わせるというような改修をしています。

 澤田委員 

   今までのテストではそういうことはなかったんですね。

 三戸宇宙開発団理事 

   そういうことはなかったですね。

 澤田委員 

   そういう事象がなかったのか、そのときでもソフトはソフトとして機能していたのか、このときだけそういう不具合が何か……。

 三戸宇宙開発団理事 

   何回も使っています。

 澤田委員 

   何回も使っていて、今度だけ。

 三戸宇宙開発団理事 

   はい、そうです。

 澤田委員 

   心配なのは、手直しすると大概失敗することが多いから、そこで何かあって、僕はこういうミスが出たのかなと思ったんだけれども。

 井口委員長 

   だけど、原因はわかったわけですね。

 三戸宇宙開発団理事 

   はい、原因はわかっています。

 栗木委員 

   1つ、ロケット用のバルブの常識がないので先ほども回数を伺ったんですが、普通、衛星のバルブですと10の6乗回くらいオン・オフサイクルをやらせるんですが、ロケット用のバルブというのはそんなに回数はやらせないものなんですか。つまりどこまでやればいいということはありませんけれども、かなりけた違いに余裕をとるのが衛星用のバルブという認識を持っていたものですから。

 今野(宇宙開発事業団) 

   衛星用のバルブは、ミッションが長いと結構長い間稼働状態となりますので。

 栗木委員 

   流量が小さいことは小さいんですよね。

 今野(宇宙開発事業団) 

   だけど、実際、ロケット用のバルブは、下手すると使わないものは数回で使わないということで。

 栗木委員 

   だから、いいのでしょうか、回数はそれでいいのかということが今、ちょっと頭に浮かんだものですから。

 今野(宇宙開発事業団) 

   一応ノミナルでは、先ほど申し上げましたように、大体四、五十回くらいしか実際、作動させないですけれども、要求としては200回という要求を設定しています。それで実際に確認試験はそれの3倍から4倍の作動試験をやって、開発時の結果としては問題ないということで評価しています。例えば衛星用のバルブでも、いわゆる注排弁はメタルタッチのバルブですので、あれは大体100回ですね。ですから、これもシュート部はメタル部分があるんですが、一応そういう要求設定で余裕をとっています。

 栗木委員 

   ただ、圧力調整弁の機能としてはオンサイクル、つまりオンオフですから、ある意味では動作機能としては衛星の三軸制御なんかをやるときの、あのモードに似ていますよね。

 今野(宇宙開発事業団) 

   そうです。ただ、流量と流速圧力がかなり違います。

 栗木委員 

   そうすると、制作側は大体10の3乗回ぐらいで試験をやっている、そういう感じですか。

 今野(宇宙開発事業団) 

   そうですね。

 五代委員 

   要するに液体ロケットというのは、エンジンとか何かをあるところに配置すればできてしまいます。残りはバルブですよね。バルブに問題がなければ、基本的にはいいはずで、私はH−1のときからやっていて、覚えておられるかもしれないけれども、バルブ総点検というのを指示しましたよね。あのときに結局、バルブというのは、その母機の端っこみたいなものだから、重視されないわけではないけれども、表に出てこなかったんですね。会社とNASDAの方で、それぞれのバルブで担当者を決めて、使い方も含めて設計法など、バルブなんかではつまらないトラブルが起きないようにしましょうということで徹底的にやって、それで一時減ったと思うんですよ。しかしやっぱりまだありますね。バルブって軽視しているわけじゃないけれども、液体ロケットというのは、さっき言ったように基本的なところを除いたら、あとバルブだけですね。

 井口委員長 

   パイプとバルブのお化けだと私、昔、五代さんに言ったことを覚えておりますけど、「きく6号」から始まって、「おりひめ・ひこぼし」もバルブでしょう。それ以外にもバルブが起こしている事故ってものすごい多いんです。

 三戸宇宙開発団理事 

   今回、私、開発にタッチしていないのですけれども、聞いた話によりますと、H−2とどこが違うのか。例えばH−2でも2段の加圧制御をやっているわけですね。ところが、H−2の場合はこれにレギュレーターが入っていますね。それを今回レギュレーターをなしにして、1つのこのバルブで全部やっちゃおうという、いわゆる簡略化の一環としてやっているところはあるということも原因としてあるかなと思いますけれども。

 今野(宇宙開発事業団) 

   H−2のときに、極低温ヘリウムレギュレーターを使って、その後で加圧制御弁でコントロールするというシステムを採用していたんですが、その極低温ヘリウムレギュレーターが非常にトラブルが多くて、それでもう少しトラブルのない形でレギュレーターなしでということで、この新しいシステムを開発してまいりました。

 五代委員 

   三戸さんが言ったように簡略化だからという話じゃないと思うんだ。

 今野(宇宙開発事業団) 

   トラブルを少なくするためということもありました。

 栗木委員 

   使い方は明らかにオン・オフサイクルなんですよね。

 五代委員 

   粒子だとかごみだとか何とかというのは、そういう話ですね。

 栗木委員 

   内部から出てくるというと、必ず磨耗に起因する感じがするものですから。そうすると、試験回数、どのぐらいやったのかな。

 三戸宇宙開発団理事 

   今回の粒子は、多分潤滑剤ではないかと。

 今野(宇宙開発事業団) 

   メタルとメタルの潤滑になっていまして、ドライ状態でどうしてもなるので、そこに二硫化モリブデンのスパッタリングで潤滑をできるだけ確保するという設計にしていまして、それがこすれてごみになって出ているというところがございます。

 五代委員 

   だけど、二硫化モリブデンについても寿命試験とかいろいろやっているわけでしょう。

 今野(宇宙開発事業団) 

   はい。

 栗木委員 

   衛星ですと、大体オンサイクルで三軸に使うというと4乗回、5乗回なんですね。もうひとけた、つまり納入条件としては10の6乗回で納入させますよね。ですけど、本当にやっているところというのは1000万回やっていると聞きました。7乗回やっているということです。

 今野(宇宙開発事業団) 

   それはやっぱり10の6乗ぐらいの実際のオペレーションを行いますので、それに対してマージンをとってやらなきゃいけないということは間違いない。我々としては一応ノミナルのオペレーションに対して、大体10倍ぐらいは開発試験としてやっているんですが、それからさらに余裕をとるという形では、今まではやってきていなかったということです。

 井口委員長 

   五代委員が昔、バルブの研究のような基礎的なことであれば、何もそんなに高額の研究費がなくたってできるんだと言っておられましたね。

 五代委員 

   ええ。それで実際にも少しやりました。それが反映されてないんじゃないか。

 井口委員長 

   専門の研究者を集めて、少しまたロケットの打上げが終わった後で、その辺をしっかり議論してはいかがでしょうか。

 五代委員 

   ええ。動くところってそんなにないんですよ。基本的にはバルブなんですよ。大きいバルブはみんな一生懸命見ますが、どうしても小さいものは、見方がどうかなと思います。

 三戸宇宙開発団理事 

   今回そういう意味では、極低温試験のときには問題は多分バルブの漏れとか作動フィルターだろうというふうに考えていたのですけれども、実はこのバルブについては、飛行中に動くバルブなので極低温点検では動いていない。ただ、これは要するにオンオフですけれども、オフのとき閉めているといっても、微量には流れるもので、それは圧力がかかることによって、そういうことがあるんですけれども、実際にはやはり極低温点検では必ずしも全部が点検できているとは言えないところがあるかなと思います。

 井口委員長 

   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、どうも御報告ありがとうございました。
   次に、2番目に「宇宙開発の内外の現状報告」、事務局の宇宙政策課の田中さんにお願いいたします。これは前回、8月1日からきょうまでどんなことが起こったかという報告でございます。

 田中(事務局) 

   それでは、お手元の資料に基づきまして簡単に報告させていただきます。先週、先々週と本委員会は休会でございましたので、今回は8月1日から8月22日まで3週間分でございます。まず、1.宇宙開発委員会の活動でございますが、これにつきましては、先ほど報告がございましたとおり計画・評価部会の第8回目が開催されました。それから、2.宇宙開発に関する国内の動向でございます。今回は主としてNASDAによって行われました燃焼試験、2種類の燃焼試験について書いております。1つは、両方とも改良インデューサを用いたLE−7Aの試験でございますが、いわゆる認定型エンジンの燃焼試験ございます。これはインデューサに厳しい条件での試験でございまして、8月6日に第8回、8月11日に第9回目が行われました。いずれも計画どおり終了しております。それから、もう一種類でございますが、同時並行で行われております2号機用エンジンの領収燃焼試験でございます。こちらは第1回につきましては8月11日、第2回につきましては8月15日、第3回につきましては8月18日に行われまして、これもいずれも計画どおり終了しております。
   1枚めくりまして、宇宙開発に関する海外の動向、主なものでございます。まず、8月3日でございますが、これは毎年恒例のものでございますが、スペース・ニュース社によります調査で、2000年の宇宙関連企業の売上げ上位50社が発表になりました。当調査によりますと、2000年の宇宙関連企業売上げ第1位はロッキード・マーチン社でございまして、宇宙関連売上高は約90億ドル、日本円にすれば1兆円前後かと思われます。第2位はボーイング社で約71.7億ドルです。それから3位はヒューズ・エレクトロニクス社で、こちらは上位2社とは違いまして、どちらかといえば衛星に特化した企業でございますが、62.6億ドルでございます。日本企業でございますが、第12位に三菱電機が約10.5億ドル、第19位にNECが約5.6億ドルということでございます。
   それから、8月6日でございますが、タイタンロケットによりまして、米空軍のミッションでございますが、早期警戒衛星の打上げが成功しました。これはタイタンロケットとしてはことし2回目の打上げでございます。 それから、8月8日水曜日、これは8日にNASAから発表があったということでございますが、NASAのステニス宇宙センターにおいて、NASAが開発しておりますロケットプレーンの試験機でございますX−33用に開発されたリニア・エアロスパイクエンジンの第3回目の燃焼試験を実施されました。これは成功裏に終了したとのことでございます。
   それから、同じく8月8日でございますが、アリアン5の技術調査報告と是正措置が発表されました。このアリアン・フライト142で、御承知のとおり不具合が発生したわけですが、これに対しまして技術評価委員会が組織されまして、8月1日にアリアンスペース社に対しまして調査報告書を提出し、その概要が公表されたものでございます。
   その内容を簡単に申しますと、ミッションの詳細と不具合の原因ということでございますが、このフライトに関しまして打上げ前の準備作業はすべて正常でありました。それから、問題となりましたエスタスエンジンの点火の前のアリアン5の飛行はすべて正常でございました。ただし、エスタスエンジンの点火時に圧力変動が原因で燃焼が不安定になって、その燃焼が不安定になった結果として、エンジンの燃焼条件が悪化し、まず推力が定格以下に低下した。それから、もう一つ、この燃焼の不安定さによって推進剤、モノメチルヒドラジンでございますが、こちらが早期に枯渇しまして、エンジンは予定よりも早く止まってしまったということでございます。ちなみに、今回の不具合とアリアン4の方の推進系には全く関連性はないとのことでございます。
   この報告に基づきまして技術評価委員会はアリアンスペース社に対して是正措置を勧告しまして、それに従ってアリアンスペース社は実行計画を提示いたしました。今後、この実行計画が予定どおり実施されますと、アリアン5の飛行は2001年11月下旬に再開される予定でございます。これは不具合前のスケジュールに対しておよそ2カ月の遅れとなります。
   続きまして、8月9日でございますが、米国のデルタロケットによりまして太陽風観測探査機「ジェネシス」の打上げが成功いたしました。これによりましてデルタ2ロケットは43回連続して打上げに成功したこととなります。
   8月11日でございますが、NASAはスペースシャトル「ディスカバリー号」を日本時間の8月11日午前6時10分にケネディ宇宙センターから打ち上げました。今回の主たるミッションは、宇宙ステーションに滞在している搭乗員の交代、それから、多目的補給モジュール「レオナルド」を用いてISSへの実験ラックや補給物資の搬入を行うことでございます。なお、当シャトルにつきましては、予定では日本時間8月23日午前1時46分、すなわち今晩遅くにケネディスペースセンターに戻ってくる予定でございます。
   1枚めくりまして、8月17日金曜日でございますが、NASAはISSに2002年下期に打ち上げる23名の宇宙飛行士を発表いたしました。これによりますと野口聡一宇宙飛行士はSTS114として来年の11月に打上げということでございます。
   それから、8月20日、21日には、米国によりましてISS評価チームの会合が行われました。また、8月21日火曜日でございますが、ロシアのソユーズロケットによりまして、日本時間の8月21日午後6時23分、先日でございますが、バイコヌール宇宙基地よりソユーズロケットは打ち上げられまして、宇宙ステーションへの補給、それからNASDAの実験装置の搬入等が行われることとになっております。
   簡単でございますが、以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   何か、御質問はございますでしょうか。よろしゅうございますか。どうもありがとうございました。
   それでは、局長の方から昨日の3機関の統合について。お願いいたします。

 今村局長 

   お手元の資料、30−3−3のとおりでありますけれども、昨日、遠山文部科学大臣から御報告がございました「宇宙の研究開発機関の在り方について」ということで、特にこの宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所・宇宙科学研究所におきましては、この4月に運営本部を設置し、事業の一体的な運営に当たってきました。一方、特殊法人の事業見直しという中で、宇宙開発事業団におきましては「効率的・効果的な研究開発の実施の観点から、宇宙科学技術研究所及び航空宇宙技術研究所の宇宙開発関係事業と統合する」との指摘を受けました。こうした状況を踏まえまして、我が国の宇宙開発を担う宇宙3機関を統合し、その力を結集して、宇宙の研究開発を一段と効率よく効果的に行う体制を構築するということで、この3機関を統合するという方針を大臣が明らかにされたところであります。
   今後につきましては、青山文部科学副大臣のもとに「宇宙3機関統合準備会議」を設置し、宇宙開発委員、宇宙3機関関係者・有識者を交えて、この統合に向けてそのあり方を検討し、今年度末までに取りまとめるということとしております。
   また、14年度予算の概算要求の中で、統合準備のための事務的な経費でございますが、これを要求するという方針も明らかにされております。
   1ページめくっていただきまして、進め方は今のとおりでございますが、段取りといたしましては、今年度9月、速やかに宇宙3機関統合準備会議を開いて、我が国の宇宙開発の在り方全体を視野に入れつつ、それを踏まえた統合後の機関のあり方を検討していくということで、具体的な検討課題としては、新組織の主たる機能、推進体制、産業界との連携のあり方、大学共同利用、大学院生教育など人材養成のあり方といったことを中心に基本的なデザインについての議論を行っていただくということでございます。
   これを受けまして若干の事務経費を活用しつつ、宇宙3機関の実務的な準備委員会を14年度にスタートいたしまして、組織・企画・経営、人事、それから、財務会計制度のインテグレーションといったような作業を進める、こういう段取りでございます。
   以上、御報告申し上げます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。
   何か御質問、ございますでしょうか。
   この検討、宇宙3機関統合準備会議というのは、もう来月ぐらいから始まるわけですね。

 今村局長 

   はい、今、まさにその準備を進めているということです。

 井口委員長 

   よろしゅうございますか。
   それでは、前回の議事要旨につきましては後ほど御確認くださいますようにお願いいたします。
   最後に、「長柄委員退任ご挨拶」とありますが、実は長柄委員長代理が3年の任期が参りまして、何日かは正確な日は知らないんですけれども、退任をなさいます。長柄委員を本当に一言でご紹介申し上げますと、平成7年に宇宙開発委員会の委員、常勤になられました。その前は理化学研究所の副理事長をなさっておられました。3年過ぎまして、また平成10年に2期目の宇宙開発委員、今度は委員長代理をそのときから今日まで続けられました。その間、記録によりますと、200に近い報告書を出しておられます。その中には2回の例の打上げ失敗がございまして、宇宙開発基本問題懇談会を主催されたり、それから、特別会合を主催されたりしました。さらに昨年暮れには、そのときまでは宇宙開発委員会が日本全体の宇宙開発を見ておりましたものですから、最後ということで、「我が国の宇宙開発の中長期戦略」を大変苦労の末、まとめられました。現在、我々もそれにのっとって宇宙開発を進めているわけであります。
   また、前回8月1日には、ここにもありますけれども、長柄タスクフォースの報告書として「我が国の宇宙開発利用システムの課題と刷新の方向」という、これからの方向に向けて大変貴重ないろいろな御提言をいただきました。そういうことで20世紀から21世紀の2世紀の長きにわたり日本の宇宙開発を適切に御指導くださいました。宇宙開発委員会といたしまして心から感謝をいたします。どうもありがとうございます。(拍手)
   今後について一言申し上げますと、現在でももう既に、姫路にありますスプリング8を見ています財団法人、今、名前は忘れましたけれども、そこの非常勤の副理事長をしておられます。ここを終えられましたらそこの常勤の副理事長におなりになると伺っております。
   それでは、御挨拶をお願いします。

 長柄委員 

   今、先生の方から、私が何をやったか、いっぱい資料をお持ちになって、私は先ほどあいさつしろということで、これを探してきまして、私は6年間何があったかな、とこれで見まして、6年間、長いようでもあり短いようでもあったんですが、これを見ますと、95年以前というのは、93年にH−2の1号機がうまくいって、94年に2号機、3号機とうまくいって、それから、95年、私が就任した年にはJ−1が、HYFLEXでちょっと海に落ちたことがありますけれども、ロケットは非常にうまくいって、その次に4号機がADEOSを上げている。それから、5号機は順番が後になっていますけれども、6号機はTRMMを上げているというようなことで、日本のロケットというのは大変なものである。打てば全部うまくいく。外国の方々は、日本は大してお金をかけないのに何であんなにロケットがうまくいくものか。そんな雰囲気のちょうど真ん中あたりに就任しました。
   その後、この表を見ていますと、ADEOSが1年で機能停止したとか、それから、ETS−7も結果としてはよかったんですけれども、最初は初期故障ということで、いろいろそれこそソフトの特性を間違えたとか何とかで瀕死の状態が大分長い間続きまして、それから、ランデブー・ドッキングもうまくいかない。結果としてうまくいったんですけれども、そんなようなことで、ちょうど日本の宇宙開発が、技術導入をベースにしたせいもあったかもしれませんが、非常にうまく順調に進んで、最盛期に、非常にレベルが上がったと思った瞬間に私が参加しまして、私が参加した途端にいろいろトラブルが発生してきたという時代におりました。
   私自身、宇宙の専門家でもありませんし、何か役に立ったかどうか非常に怪しいんですけれども、順調というか、H−2Aの1号機がもうちょっと早く上がれば、一番いいときに入って、一番またいいときの始まりに退任できるかなと思ったんですけれども、残念ながら、今週、あすいっぱいで任期満了となりますので、任期は終わりますけれども、来週の打上げがうまくいくことを祈っていたいと思います。どうも皆さんありがとうございました。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。
   それでは、以上で第30回宇宙開発委員会を閉会にいたします。どうもありがとうございました。

−−−了−−−



(研究開発局宇宙政策課)

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