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宇宙開発委員会

2001/07/18 議事録
第27回宇宙開発委員会議事録



第27回宇宙開発委員会議事録

1. 日 時
平成13年7月18日(水)13:56〜15:19

2. 場所
経済産業省別館827会議室

3. 議 題  
  (1) アリアン5ロケットによる衛星打上げに関する不具合について
  (2) (財)日本宇宙少年団の活動と夏季行事について
  (3) 再使用型ロケット実験機、第2回離着陸実験(RVT-6)の結果について
  (4) 評価指針特別部会報告について
  (5) その他

4. 資 料  
  委27−1 アリアンスペースフライト142
  委27−2 YACの活動と夏季行事
  委27−3 再使用型ロケット実験機、第2回離着陸実験(RVT-6)の結果について
  委27−4−1 宇宙開発に関するプロジェクトの評価指針
  委27−4−2 宇宙開発に関するプロジェクトの評価指針のポイント
  委27−5 第26回宇宙開発委員会議事要旨(案)

5. 出席者
 
  宇宙開発委員会委員長 井口雅一
  宇宙開発委員会委員 長柄喜一郎
  栗木恭一
  五代富文

  アリアンスペース社東京事務所代表 ジャン・ルイ・クロードン
  アリアンスペース社東京事務所副代表 高松聖司

  (財)日本宇宙少年団理事長 松本零士
  (財)日本宇宙少年団専務理事 岩崎信夫

  文部科学省宇宙科学研究所 稲谷芳文
  文部科学省研究開発局技術評価推進官 澤邊正彦
  文部科学省研究開発局宇宙政策課長 芝田政之

6. 議事内容

 井口委員長 

   それでは、第27回の宇宙開発委員会を始めさせていただきます。
本日は、3件の報告と、それから、1件、了承を得たいことがございます。
それでは、最初、議題の1番目でございますけれども、「アリアン5ロケットによる衛星打上げに関する不具合について」、アリアンスペース社の東京事務所の代表でありますクロードンさんと副代表の高松さんに来ていただいておりますので、お話を承りたいと思います。それでは、アリアンについてお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 クロードン代表 

   今日はできるだけ短い時間を使って簡単に御説明したいと思います。情報も少ないので、あるだけ情報を使って御報告したいと思います。

 高松副代表 

   アリアンスペースの高松です。アリアン・フライト142、アリアン510ですけれども、先週の金曜日に打ち上げたんですが、目標軌道に達することができませんでした。今、あまり情報がありませんけれども、現段階でわかっていることを御説明したいと思っています。
   今回の事故はアリアン5で起こったわけですが、アリアン5の現状はどうなっているかと言いますと、アリアン5は、初飛行が1996年に行われました。開発飛行試験は3回行われまして、98年の3回目のフライトの後でクオリファイされまして、商業運用は4号機から、いわゆる504と呼ばれる打上げからが商業運用になっております。それが1999年の末からのスタートですけれども、今回の失敗があったのはフライト510ということで、商業打上げの7回目、商業打上げとしては初めての失敗になります。アリアン5全体で見ると10回目の打上げということになります。
   アリアン5で打ち上げられた日本の衛星は、今回510ですけれども、その前の509、そのもう一つ前の508と、日本のペイロードが3つ続けて搭載されておりまして、最初は、それは商業打ち上げというよりは日欧の協力だったわけですが、NASDAさんの展開アンテナ実験ペイロード、その後、B−SATさんのB−SAT−2a、今回のB−SAT−2bということになります。
   簡単にアリアン5の機体構成について御説明いたします。アリアン5は2段式と言うべきか、3段式と言うべきか、ちょうどその間ぐらいにあるものですけれども、非常に大きいコア・ステージという液酸・液水のエンジンを積んだステージがあります。その両側にかなり大型のEAPと呼ばれる固体ブースタが搭載されておりまして、上段部としてEPS、これはフランス語になっていますけれども、ストアラブル・プラペラント・ステージということで、液酸・液水を使っているコア・ステージとは違って、いわゆるヒドラジン系の常温貯蔵型の燃料を使っている上段部というような形になります。打上げのときは推力の90%ぐらいを固体ブースタで出します。まず、この液酸・液水のヴァルカン・エンジンに点火をして、燃焼の安定を確認した後、固体ブースタに点火をして、リフトオフというシークエンスになりますけれども、実際に地上付近で推力を発生しているのは、ほとんどがこのEAPと呼ばれる固体ブースタです。したがって、このEPCというのは、フライト中に点火してもいいんですが、液酸・液水エンジンなので、点火が非常にデリケートだということで、地上で   点火をしてリフトオフとなります。したがって、機体構成としては2段式に固体ブースタがついたというふうにも見えますけれども、軌道設計の観点から言うと、1段目がEAP、固体ブースタで、2段目がEPC、3段目がEPSと考えることもできます。
   今回の打上げ形態ですけれども、2衛星同時打上げ形態をとっておりまして、これがフェアリングの部分です。フェアリング内の上側に欧州宇宙機関のアルテミスという衛星が搭載されました。シルダ5と呼ばれる2衛星同時打上げの装置を介して、この中にB−SATさんのB−SAT−2b衛星を搭載するという2衛星同時打上げ形態で打上げを行ったわけです。
   アルテミスの打上げ時重量が3100キログラム、B−SAT−2bが1298キログラムということですから、両方足し合わせても4.5トンに満たない。アリアン5は2衛星同時打上げで6トン近い打上げ能力がありますので、この打上げ能力の余裕というものは、投入軌道をエネルギーの高い軌道に投入するというような形で行われました。
   2つとも、静止衛星に最終的になりますけれども、ロケット側といたしましては、その静止軌道に達する前の静止トランスファ軌道と呼ばれる楕円軌道に投入するわけです。高い方の遠地点高度が大体3万6000キロで、静止軌道とほぼ同じ高度、近地点高度と軌道傾斜角が、通常のアリアン5の打上げですと、近地点高度が大体560キロメートルぐらい、軌道傾斜角が7度ぐらいなんですが、今回パフォーマンスに余裕があったので、軌道傾斜角を2度まで倒して、しかも、近地点高度を858キロメートルまで上げるという軌道を目標軌道のパラメーターとして設定いたしました。
   この打上げの打上げウインドウは、クールー時間、南米フランス領のギアナ、クールーというところから打ち上げますけれども、ここで7月12日木曜日の午後6時58分から8時30分というのが、打上げウインドウとして設定されました。クールーと東京の間にはちょうど12時間の時差があります。ちょうどこの裏がクールーになるわけですけれども、東京時間で7月13日の午前6時58分から8時30分というのが打上げウインドウです。
   実際、フライトで起こった状況について御説明いたしますが、まず、リフトオフは日本時間7月13日の午前6時58分、つまり打上げウインドウが開いた瞬間にリフトオフいたしました。リフトオフまでの打上げ準備はすべて順調で、ロケット系、衛星系、天候地上系、オールグリーンの状態で、6時58分、ウインドウが開くと同時のリフトオフは非常にスムーズでした。
   その後、固体ブースタとコア・ステージの燃焼のフライトに入るわけですが、固体ブースタEAP、それから、その後のコア・ステージのEPCのフライトはともに正常でした。EAPは燃焼時間が大体2分半ぐらいありまして、固体ブースタを分離。その後、EPCは大体トータルで10分ぐらい燃えるんですけれども、これも順調に軌道を上昇していきまして、EPCのフライトが終了した段階で、EPCと上段のEPSを分離する、これも正常に行われました。
   この後、上段のEPSの点火ということになるわけですが、EPSを点火して3秒後に燃焼圧の異常が認められました。推力を直接はかれないので、燃焼室の圧力をはかっているセンサーがあるわけですが、このセンサーはリアルタイムでこのデータを見ていますが、これが大きく振動するような、そういうふうな兆候を見せました。その後、この燃焼圧のテレメータが途絶したという情報もあるんですが、これはまだ未確認です。
   燃焼圧の異常はあったんですけれども、ロケット自身は加速を続けておりますので、上段エンジンは点火はしているということで、フライトは続けたんですが、テレメーターデータによると、酸化剤と燃料の混合比がおかしい。その結果、推力が規定値に達しませんで、規定値の80%の推力で飛行を続けるというような形になりました。
   オンボードコンピュータは、一定推力に達しないということを感知いたしまして、80%の推力で軌道回復をするように誘導則を組み直して、フライトを続けたわけですが、予定燃焼終了時間の大体80秒ぐらい前に、上段エンジンが停止いたしました。これはオンボードコンピュータが目標軌道に達したということで、点火停止コマンドを送って停止したわけではなくて、おそらくは酸化剤あるいは推進剤、どちらかわかりませんけれども、なくなってしまったということで、センサーが、もう燃やすものがないという情報を出しまして、停止シークエンスに入るというような形で停止が行われたわけです。
   推力が規定値より20%少なかったことと、燃焼停止が予定秒時の80秒前だということで、当然、速度ロスがあるわけですけれども、秒速500メートルぐらいの速度ロスがありました。秒速8.5キロか8.6キロくらいまでは行ったんですけれども、少し足りなかった。
   ただ、軌道速度には達しておりましたので、実際の目標軌道には到達しませんでしたけれども、低い軌道に投入されました。したがって、ロケット側はこの低い軌道に衛星を投入するという作業を行うシークエンスに入りまして、まず上側に乗っているアルテミスを分離、その後、B−SAT−2bをカバーしているシルダ5を分離して、B−SAT−2bを最終的に分離したというような形でミッションが終了しております。
   速度が足りなかったということで、低い軌道に入ったということなんですが、低い軌道というのはどれぐらいかといいますと、近地点高度が予定で858キロに対して592キロメートル、遠地点高度は予定の大体半分ぐらい、約3万6000に対して1万7500ぐらい、軌道傾斜角が2度まで倒さなくてはいけないところを2.9度というエネルギーの低い軌道に投入されたわけです。
   この問題があったのはEPSと呼ばれる上段部であることは明らかなんですが、このEPSというステージはどういうふうになっているかといいますと、これがEPSの全体像なんですが、縦方向に非常に短いステージになります。ここにエスタスというエンジンが搭載されていて、そのノズルが見えますが、このエスタスエンジンのノズルを囲むように4つの大きな球形タンクと黒い小さな球形タンクが2個あります。これは衛星のアポジエンジンなどに使われている2液混合型の自己着火のタイプでして、この4つある大きなタンクのうちの2つは、燃料としてモノメチルヒドラジンを搭載して、あとの2つは、酸化剤である4酸化2窒素を搭載しています。こちらが燃料のタンクで、こちらが酸化剤のタンクです。
   ここに燃焼室があるわけですけれども、この燃料、酸化剤を燃焼室に送るメカニズムというのは非常にシンプルで、ここに黒い小さなタンク、これはヘリウムの加圧タンクですが、ヘリウムで液面に圧力をかけて、燃焼室に燃料と酸化剤を送る、いわゆるガス圧方式と呼ばれるもので、ターボポンプのような回転機械が何もない、非常にシンプルなものです。
   現在わかっているテレメーターデータですと、このヘリウムタンクからの圧力のかかり方は正常であったというふうに報告されておりますので、ここからこの間のどこかで問題があった。原因はまだわかりませんが、現象としてはこの間で問題があったというところまでが明らかになっております。
   今後の予定ですけれども、7月、これは現地時間で書いておりますが、日本時間は13日ですけれども、現地時間7月12日に事故が発生いたしまして、これが木曜日ですけれども、翌月曜日の7月16日に技術調査委員会が設立されております。お手元の資料の2ページ目に、技術調査委員会のメンバーのリストがあります。テレメーターの解析にはこれから入るわけですが、8月の上旬に最初の報告を行うということをめどに作業を進めていくということになります。
   したがって、今後はテレメーターの解析と技術調査委員会の報告を待たなくてはいけないわけですが、アリアンスペースの方針で非常にはっきりしておりますのは、透明性確保、信頼性、柔軟性の重視、それから商業打上げ志向ということで、我々は活動のすべてを商業打上げに依っています。これを誤解されないように説明するのは難しいんですが、失敗というのはあってはいけないことなんですけれども、今の技術レベルでは「ある」ということも考えなくてはいけない。したがって、失敗そのものも、そのリカバリーも、我々の仕事の1つであるという考え方にのっとって、ユーザーへのインパクトがミニマムになるような手段を講ずるというのが、アリアンスペースの基本的な方針となります。
   したがって、具体的にはユーザーサイドから見てビジビリティーといいますか、透明性が確保されるということと、当然、信頼性を第一番に考えることは申すまでもありません。それから、事故の影響というのは必ず出るわけですけれども、商業打上げとそれからユーザーの利益ということを考えて、できる限りの柔軟性を発揮するということが重要になります。まとめて言いますと、商業打上げという作業の中でリスクをミニマムにするということで事故対策に挑むという考え方は、これまでのアリアンスペースの考え方ですし、これからも変わることはありません。
   次の打上げですけれども、もともとのマニフェストですと、8月23日にインテルサットの902をアリアン4で打ち上げることになっておりました。今回の事故原因は、アリアン5の上段エンジンということがはっきりしておりまして、アリアン4とは技術的には相関がありませんので、8月23日のインテルサット902の打上げは予定どおり行うということで、現在、打上げ準備作業を進めております。
   今日現在わかっておりますのは、以上になります。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。それでは、御質問、御意見がございましたら、お願いいたします。

 芝田課長 

   アルテミスは独自の推進力を持っていて、軌道投入を試みるというふうに報道されていますけれども、それはもう始まっていて、今やっているところということですか。

 高松副代表 

   我々はわからないところなんですが、ロケット側の作業というのは分離をした段階で終わってしまうので、低い軌道から最終軌道に到達する手段というのは、ユーザーと衛星メーカーとが議論することになります。ロケット側は、できることがあれば何でも手伝うんですが、基本的には分離した後は、ロケットはもうなくなっているので、手伝えることがありません。

 クロードン代表 

   ただし、メーカーであるアレニア・スパシオと欧州宇宙機関の話によりますと、GEOには到達できそうだが、どのぐらいの寿命が残るのか、が問題だと言っていました。インフォーマルな話ですけれども。

 栗木委員 

   私、個人的にアルテミスに積まれているイギリスのイオンエンジンと、それから、ドイツのリタ10でしたか、リタだったと思う。これはかなりヨーロッパにとっては大きな試験ではないかなと思ったんですけれども、この2つのシステムは健全に働いているんですか。まだそこまではわからないのでしょうか。

 高松副代表 

   まだわかりません。

 栗木委員 

   これから火を入れるというところですか。

 高松副代表 

   こちらの情報は先週、日本時間の金曜から夜の真夜中の情報ですけれども、ESAのチームは、イオンエンジンなどを搭載しているので、トータルで考えたときにこの衛星はフレキシビリティがあり、したがって、それを最大限に使ってミッションを最大限に確保できるようなメニューをこれから考えるんだ、と言っておりました。

 井口委員長 

   お答えになりにくいかもしれませんが、こういうことがあると、保険料などは上がる可能性はあるんですか。

 高松副代表 

   非常にいい質問だと思います。先ほど透明性、信頼性、柔軟性が重要だと言った点なんですけれども、保険料に影響が出る可能性はあります。しかし、今、例えばアリアン4は非常に信頼性がある。世界で最も信頼性があると言われていますけれども、その信頼性でも97%ないしは98%、つまりほかの交通機関と比べるとはるかに事故率は大きいということになります。したがって、ユーザーである衛星のオペレーターも、衛星メーカーも、それから保険会社も、プロフェッショナルなので、事故は避け得ないという前提でビジネスを行っています。
   そうすると、事故そのものが起こったということに対して反応するのではなくて、その事故が起こった後の対策をどういうふうにとるか。どういったフレキシビリティーを見せて、打上げの遅れをミニマムにして、どういった透明性を確保して保険会社に説明をするかというのが、保険料を上げるか、上げないかという決め手になりまして、アリアン4は、信頼性があると言いながらも事故の経験が我々ありますけれども、事故があったということで保険料が上がったということはありません。逆に、中国の長征が、今は少しよくなったんですけれども、信頼性を少し犠牲にして低価格で参入してきていたときは、事故が何回か続いたことがあって、そのときは保険料率があっという間に10%、20%、30%となって、最終的に付保不能ということになって、中国自身もたしかIAFのときだったと思うんですけれども、これからは必要な投資を行って信頼性確保に努力するということになって、また回復したということです。したがって、保険に対する問題というのは、事故そのものというよりも、その前後の会社としての対応の仕方によって上がる場合と上がらない場合があります。

 五代委員 

   EPSの実績はどのぐらいありましたか。

 高松副代表 

   フライト実績ですか。

 五代委員 

   ええ。

 高松副代表 

   フライト実績は9回ですね。10回打ち上げましたけれども、最初の1回はEPSに点火する前に事故を起こしておりますから、502から510までと。

 五代委員 

   だけど、EPS自身は全くの新規開発じゃなかったのではないでしょうか。

 高松副代表 

   モノメチルヒドラジンと4酸化2窒素の組み合わせというのは、アリアン1の時代から……。

 五代委員 

   全部使っていましたね。

 高松副代表 

   ええ、第1段、第2段、液体ブースタは全部そうなので、そういう意味ではエンジン機数で言うと、まあ、同じ構造ではありませんが、アリアン1からのときはバイキングと呼ばれるエンジンでしたけれども、これは1000機以上飛んでいます。

 クロードン代表 

   システムとしてかなり違いますけれども。

 井口委員長 

   アルテミスが計画軌道に乗った、乗せることに成功した、とかいったことはどこかから正式な発表があるんでしょうか。

 塩満室長 

   これはESAのプロジェクトですので、ESAの方から情報を得るべきものです。

 五代委員 

   実際にはそのための解析をして、どういうふうにアクションをとるか決めて、それでアクションを始めるというまでに時間がかかるんですね。ただ、いろいろなことで時間的余裕があるかないかということも関係してきますが。

 クロードン代表 

   バン・アレン帯を通っていますから、10日間あるかないかというぐらいの話です。

 五代委員 

   ええ、だからこの何日間が、皆さん、一番頭を使っているときですね。

 クロードン代表 

   今、最適化をやっているんじゃないかと思います。

 高松副代表 

   衛星そのものは、分離した後、ちょっと時間がかかるということで、すぐセーフモードに入れて、セーフモードで2機とも飛んでいますから、軌道は低いんですが、完全にユーザーのコントロールには入っています。

 栗木委員 

   太陽電池はもう広げた状態で。

 高松副代表 

   アルテミスは広げたと思うんですけれども、未確認です。

 井口委員長 

   B−SATの方はどうなんですか。

 塩満室長 

   B−SATは今、技術的な検討をしているところで、現在得ている情報では、かなり悲観的です。

 井口委員長 

   ほかに御意見はございますか。よろしゅうございますか。それでは、どうもありがとうございました。
   次の議題に移らせていただきます。「財団法人日本宇宙少年団の活動と夏季行事について」、財団法人日本宇宙少年団の理事長の松本さんと専務理事の岩崎さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。

 松本理事長 

   御紹介いただきました日本宇宙少年団の理事長を仰せつかっております松本です。我々の活動は、「夢・科学・挑戦」という意味で、要するにこれから長大な未来という可能性のある時間を持っている子供たちとともに、宇宙開発へのエネルギーを作り上げていこう、それを目的として活動している団体です。我々の目的及び方向性というのが、途中、多少ふらついた時期もありました。ところが、宇宙開発事業団、当時の科学技術庁その他、宇宙科学研究所あるいは専門の先生方の大勢の御支援を受けまして、近年、会員数も非常にふえてきました。気合が入ってきたところなんですけれども、そういうことで、我々は「夢」と言ってありますけれども、これは将来にかける願望です、目的意識ですから、そういうことで多大なエネルギーを作れたらというのを理念としております。
   活動内容につきましては、岩崎専務理事の方から御説明申し上げます。私はしゃべり出すと止まらない人間でありまして、周回軌道が無限大になりますので、一応ここでごあいさつだけにさせていただきます。

 岩崎専務理事 

   岩崎と申します。それでは、御説明いたします。今日はYACの活動と夏季の行事ということで御説明します。まず、YACの活動というのは、今、説明があったとおりです。我々の財産というのは、地域に根づいたネットワーク、それを支えている分団にはリーダーがいるんですけれども、リーダー、それから講演・執筆を引き受けてくれている宇宙飛行士を含んだ、非常に幅広い、宇宙と科学、心の問題を教えることのできる先生方です。こういう日本でも例を見ないネットワークを土台にいたしまして、宇宙、それから科学の普及・啓発・教育について、1つのYAC理念のもとに統合的に、ということを我々の目的として活動しております。
   具体的な活動ですけれども、団員といたしましては全国に110分団あります。すべてこれはボランティアベースでやられている団員です。その中で例えばペットボトルでロケットを飛ばそうとか、工作教室を開こうとか、望遠鏡で土星を見ようとか、サマーキャンプ、インターネットと、そういったいろいろなことを各分団で手がけております。団員数は現在、ちょっと少ないんですが、約4500人、これでも徐々にふえております。それを指導するリーダーも600人程度ということです。
   それに対して我々本部の方は、そういう活動・事業を行いつつ、1つは、『ジュニア・サイエンティスト』という月刊雑誌、その前は『エルファイブ』という人工衛星・ロケット専門の雑誌だったんですけれども、もう少し科学の一般誌ということで『ジュニア・サイエンティスト』を編集・配布しております。ここら辺のコンセプトとしましては、子供に科学のおもしろさをわかってもらうとともに、科学を担っているのも人間、研究者であるということを子供たちにわかってもらおうというコンセプトでやっております。
   それから、もう一つは、『スペースガイド』という、それぞれデータ集、ここら辺を編集・配布しております。
   それから、NASDAと一緒になりまして、いろいろリーダーズセミナー、コズミックカレッジなどを運営しております。
   また、今年から1つ、科学館と学校の連携のための学習資料の開発・普及という非常に大きな仕事をいただいておりまして、これは科学館を学校教育で活用しやすくすることを目的に、教材を製作しております。地域性を出したもの、それから全国で使えるという2タイプに対して、今年度は15の科学館を選び、パイロット的に実施しております。
   それから、助成金をいただきまして、これも今年からですけれども、「子ども宇宙ゆめ体験事業」というものを、今計画しているところですが、こういう体験活動を通じまして、YACの本部、地域のリーダが中心になって、これに対して指導しております。
   どんなことをやっているかということを最後のページに示しております。分団長会議というのを開いておりまして、その場で毎年「昨年はこんなことをやった」という報告を聞いております。今回は今年の5月ですけれども、そのときは68人ぐらい、それから松本理事長、それから毛利宇宙飛行士がうちの団長なので、毛利団長、それから宇宙研の的川先生も参加しまして、報告を聞きました。
   3つぐらい、その中から例を挙げたんですけれども、1つは、アルコールロケット1号機の打上げに成功したということです。本当は今日デモンストレーションをしようと思ったんですけれども、いろいろありますので、持ってきませんでしたけれども、こういう右にあるような点火施設をやって、これのいいところはカウントダウンで、「3、2、1、0」で発射できるということで、8メートルぐらい飛ばせます。
   それから、2つ目の例として、これは岩手県の水沢の方からですけれども、ケナフという、これはハイビスカス系の成長すると4メートルぐらいになる1年草ですけれども、これを春の種まき、それから夏の草刈り、水、それから秋に花を咲かせる。11月に収穫しまして、それをすいて、はがきを作る。正月には年賀状を送る。そういうことを昼間やって、夜には天文台で、あそこには水沢天文台がありますので、いろいろ星座の観測をしたという例です。
   そして3番目は、鹿児島のサンシャインテクノ分団からの報告で、小学校の高学年から不登校になっていた子が、YACの活動で自分より小さな子の面倒を見ている間に心を開いて、高1の今は学校へも通っている、非常に明るい子になった、というような報告もありました。
   資料の前に戻っていただきまして、こういう報告があったということで、これから夏に入るわけですけれども、夏にYACではいろいろ活動をいたします。特に1番目に書きました「国際コンファランス」を今年度は日本の主催でやります。これはYACの国際的な組織、そこに書いてありますようにYAIというヤング・アストロノート・インターナショナルという組織に、これは1987年に組織されたのですが、現在12カ国が加盟しております。そこで、今年は日本でやるということで、海外から韓国、香港、中国、オーストラリア、フランス、スリランカ、フィリピンと行った国々から60名程度参加する予定になっています。これも当初は100名程度参加の予定だったんですけれども、例の教科書問題で韓国が大分減ったというのがありまして、さらには中国がビザの関係の向こうの手続ミスで来れなくなったということで、それでも何人かは来ますけれども、60名程度ということになっています。これは石川県金沢市と我々が共催して、主催・共催の関係で行います。これは、来週の火曜日から行います。
   それから、それに引き続きまして「スペースサイエンスセミナー」ですけれども、これはそのコンファレンスに参加した海外の人を連れて、富山県の小矢部というところに移りまして、宇宙飛行士との交流、このときは星出宇宙飛行士に来てもらうことにしておりますが、そういった活動を予定しています。
   それから、種子島のスペースキャンプ、これはそれまでの300〜400人に比べて非常に少ない70人くらいの参加人員ですけれども、鹿児島、それから種子島の町の御支援をいただきまして、宇宙の射場、それから、いろいろな地元の子、都会の子が集まって体験活動をするというのが3番目です。
   それから、4番目から6番目まで、これは宇宙開発事業団が主催いたします。我々は運営を任されているということで、1つは、これは毎年やっているんですけれども、「コズミックカレッジ」を開いて、「宇宙飛行士、宇宙科学者になろう」ということをスローガンに、いろいろな講義、実験を行います。
   それから、もう一つ「エデュケーターコース」、これは子供ではなく先生を対象にしまして、つくばで、これは8月8日から9日、10日と行います。
   あともう一つ、宇宙科学研究所のある臼田で、これは子供たち対象に望遠鏡を作ったり、いろいろなことをして、みんなで楽しく過ごそうというイベントを行います。もしもよろしければ、細かいところは一応コピーを1つずつ、その中からパンフを用意しましたので、もしも取材等をしていただける方がおりましたら、是非パンフをお持ちいただきたいと思います。
   以上で私の説明を終わります。

 松本理事長 

   そういうわけでして、私たちの目的というのは、子供たちを通じて、未来という時間の中で、この宇宙開発というものに巨大な支援をしてくれるためのエネルギーを蓄積していく、それが基本的な考え方です。そして、全員が宇宙飛行士にもちろんなるわけでもないし、それぞれの分野に子供たちは進むわけですけれども、心のどこかに宇宙開発に対する理念とか、そういった情熱を抱いててくれれば、私はこれは何にもまさる巨大なエネルギーとなって、宇宙開発、つまりロケットを宇宙へ打ち上げていく巨大なエネルギーになってくれるはずだと確信を持っております。
   それからもう一つ、宇宙へ飛ぶ以上、もう国境などと言っている場合ではありません。私は、脳細胞の数は世界中全部同じだ、速い遅いの問題はあっても、地球人という一体感というのが非常に大事なことで、宇宙開発というのは、そういう部分についての国境を取り払うという協力体制を作り上げていくという、その母体になるはずだという確信のもとに国際交流、特に子供たち同士の交流ということに非常に力を入れております。そして、子供たちの世代から、お互いの理念あるいは夢を理解し合えば、地球上での確執も確実に減るだろう。将来、地球人という形での生命体になれるはずだ。そういう、やや自分の職業柄、つい夢は壮大になってしまうんですけれども、私は、夢は大きければ大きいほどいいというのが信念でありまして、そういう形で国際間の交流を進めながら、ともに肩を並べて、今はたとえけんかしていても、将来の我々の子孫はともに肩を並べて、ともに宇宙を飛びましょう、こういうメッセージを発し続けたいと思います。何カ国かからはそれに対する確実な反応も得ております。ともに肩を並べて飛ぶこともあるでしょう。そういうことで、そのエネルギーに未来を託す、と言ったらいいでしょうか。ただし、その中で私たちの子孫が、何代か後の子孫が宇宙開発の現場で惨めな思いをすることのありませんように、「ここのハッチをあけてよろしいでしょうか」と恐る恐る聞く立場じゃなくて、「あける」と言ったら断固としてあける。そのかわり「あいつがあけるんならば」という絶対の信頼感をかち取れるような、私たちの子孫が存在していることを、してくれることを願って、こういう活動を続けるわけです。惨めな思いをさせたくない。ともに対等の能力を持った仲間として、私たちの子孫が宇宙を渡っていける日が来ますように、それを願ってこういう活動をしているわけです。
   さきに申し上げましたけれども、私の名前の「零」というのは、丸をかくと、実は無限大になるんですね。この周回軌道はしゃべり出すと3日ぐらい続きますので、収拾がつかないことで有名であります。ですけど、どうか子供たちとともに描いている情熱だけはよろしく御理解いただき、また御支援を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 井口委員長 

   どうもありがとうございます。御質問、御意見ございましたら、お願いします。
   事務的なことですけれども、補助金を受けておられると伺いましたけれども、どこからですか。

 岩崎専務理事 

   補助金は、まだいただいていないんですけれども、オリンピック青少年センターから「子ども宇宙ゆめ体験事業」ということでこれから審査していただくものが一番大きいです。それからほかには、例えば大きく出していただいたのが、名古屋のパチンコ屋さんで成功した人の会社とか、そういう意味ではいろいろなところから補助金、賛助金という形で出してもらっています。それから、具体的な賛助金としましては、宇宙関係の幾つかの企業からいただいております。

 井口委員長 

   NASDAはどうですか。

 岩崎専務理事 

   NASDAは補助金ではなくて、コズミックカレッジとか、全体で説明したようなものの運営を任せていただいて、それで言うなれば大スポンサーをやっていただいています。

 栗木委員 

   私も宇宙科学研究所におりましたころに、小中学生が大勢参加する一般的なところに講演を頼まれて、講演に行ったことがございます。大体年齢層を見ますと、年寄りか若い小中学生でして、真ん中が欠けておりまして、真ん中は大体あしたのことが忙しくて、そんなの聞いている暇がないという、そんな感じでした。お年寄りはどちらかというと、地球の寿命があと、太陽系も含めて50億年、そういう話が大好きでございまして、ところが、子供の方は「宇宙にいつ行けるの」という極めて切実な質問が出てくるというのが、大体私の統計的な感触であります。
   10年ぐらい前ですと、私も「君たちが大人になるころには行けるよ」と言って返事をしておったんですが、10年たってみまして、なかなかまだ行けないなということを最近は極めて重く感じておりまして、随分空手形を発行したなという感じがしております。しかしながら、最近はそれが言いにくくなったということは、少し近づいているのかなという予感も多少ありまして、この次の発表に、再利用型ロケット実験機のお話を宇宙研の稲谷先生が発表されますが、これも終局的には、きっと人を乗せるものだと私は確信しておりまして、その分だけ近づいたということから、いつかは空手形じゃなくて、もう少ししっかりした手形を、是非このYACの方にお渡ししたいなと思っております。私の希望でございます。

 松本理事長 

   実はその抜けていた層が今、皆、パソコン・コンピューターに飛びついておりまして、それで実はだんだん埋まりつつあるんです。そして、作業自体が国際化しまして、国境はもうないんです。そういうことで夢という単純にサイエンスフィクション的な世界を通じて、それから、技術的なものをお互いに意見を交流しながら、そういう活動が既に始まってしまっています。ですから、国境が消えつつあって、私自身も、仕事で恐縮ですけれども、自分の仕事もいきなり国境を越えて作業して、いきなり世界中にぶちまけるという作業になってきております。ですから、もう世代的なそういう意味での区分けが次第にぼんやりしてきました。
   私も確かにこの年までには火星に行くつもりでいたんですよ。行けると小学生のときには確信していたんです。ところが、ほかのものは全部現実化したのに、宇宙開発だけが想像より遅い。これはやはりそれだけ難物である、それだけ手ごわい相手だというのがよくわかるわけです。でも、私は手ごわいだけにやりがいがあると思っています。私自身が月ぐらいにまでは行く夢はまだ捨てておりません。だから、ロケットの1個や2個、これはここで言っていいかどうかわかりませんが、海へ飛び込んだからといって、そのことについて私は悲観する必要はない。それぐらい手ごわい技術的な壁を突破しなければならない相手である。そして、それを突破して、信頼できる技術を確立しないことには人類の未来はないというふうに、子供たちと一緒に、これは夢じゃないです、願望を語り合いたいわけです。そういうわけで、その点では気合が入っておりますので、どうか御安心ください。

 井口委員長 

   大変な激励をしていただいた気もします。私も子供たちが宇宙飛行士の話を聞いたりするときの目の輝きといいますか、あれを見ますと、我々の責任というのは大変重いという感じを常に持っております。
   また、大学の先生の話でも、今、一番優秀な学生が来るのは宇宙だと言うんですね。私の親戚の今度、大学に入るのが、宇宙をやりたいと言うんですけれども、身近になりますと、その後の就職が大変だ。これをまた我々が何とか努力して解決しなければいけない1つの課題だと思っております。今日は我々を大変元気づけてくださるお話をいただきまして、まことにありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
   それでは、次に、「再使用型ロケット実験機、第2回離着陸実験(RVT−6)の結果について」、文部科学省宇宙科学研究所の稲谷教授に御報告をいただきます。

 稲谷教授 

   宇宙研の稲谷です。先ほどの「難物」にという話に対する助になっているかどうかは、皆さんに御判断いただきたいと思いますけれども、我々、気持ちとしてはそういう気持ちでやっております。将来に向けて、現在、ロケットにはいろいろな問題があるという話になっております。我々としましても、もう少し先の将来に向けて、どういうことをやったらいいかということを真剣に考えております。そのうちで、今の使い捨てのロケットではなく、再使用という言葉を使いますけれども、そのロケットができるならば「飛行機のようにどんどん繰り返し飛んでいるような図式になる」という将来の夢、その具体的なイメージは後でお話ししますけれども、頭の中はそういうことを考えて、それで今日できること、あしたできることを、できれば計算機の中の世界とか、紙の上ではなくて、実践を伴った形でやりたいというのが基本の考えであります。
   将来に向けてということで、どういうエンジンのスタイルになるかとか、機体をもっと軽くしないといけない、など、要するに技術的な議論というものはかなり多くされているわけですけれども、もう一つ足りないのは、どういうものを目標にすべきかという話、これがなかなか先の話なので、10年後を考えるか、20年後を考えるか、あるいはもっと先かというところで、ある意味で後ろの境界条件がオープンであるために、いろいろな話がなかなか現実味を持って進められないというのが環境としてあります。アメリカがやっているからこれをやろうとか、よそがやっているからこれ、それは考えとしてはありますけれども、我々独自に将来どういうふうになるかということを自分の頭で考えて、そのために何が必要か、そういうアプローチをしたいというふうに考えています。
   この宇宙研の中の基礎研究という範疇の非常に小規模な、予算的に言って小規模なところでやっておりますが、我々としては今後、日本の中で、あるいは今、行政改革その他で「宇宙3機関が連携してやりなさい」というような環境になる中で、その中でできれば我々の考えが生かされていくような方向で考えたい。
   ついては、物で実践するのが一番知識を蓄積するという意味では効果的であるということで、実験機を作るというような形で仕事をさせていただいています。しかしながら、小規模な実験ではありますので、あまり大きな期待をしても、いきなり宇宙に行ったとか、上に行って、地球の丸いところの写真を撮ったとか、そこまではなかなか行くのは大変でして、言い方を変えれば、その辺をぷらぷらと飛んで歩けということではあるかもしれませんけれども、後で絵をお見せしますが、その実験風景とか、やっているものの姿を見ていただいて、少しでも将来に近づいたというふうに感じていただければ幸いかと思います。
   今、使い捨てロケットは、いろいろな事故の失敗などはもちろんありますけれども、そういうことは飛び越えて、ある意味で技術的には完成している。もちろん残された問題は少なくはない。ただ、将来の輸送システム、それがどんなものであるかについては非常に大きな議論があります。先ほど申しましたけれども、その議論において、実はどういうものを目指すべきかの議論については、現在のところ、なかなか収束しておりません。しかしながら、気持ちとしてはということも含めて、ロケットがもっと身近になって、先ほどのお話ではありませんが、だれでもそれに乗っかっていける。だれでもお金を払えば、それから返ってくる利益を直接的に享受できる。そういうことになるためには、もっと輸送のコストが下がる、あるいは非常に効率的な運用ができる、そういうシステムにならないといけないというふうに考えています。具体的な例については後でお話しします。
   そのためには、今の「使い捨てロケット」ということとの対比においてどういうことが言えるかということが大事で、もちろん行ったり来たりただ帰ってくるだけ、1回帰ってくるだけの技術ができたらそれが再利用、と言えなくもないですが、そういう話はとんでもなくて、それがどんどん何回も繰り返しできる、もちろんそのためには高い信頼性と安全性が必要です。ここで安全性と申しますのも、いろいろ意味があります。故障しないという意味の安全と、故障したときにどうするか、そういう安全。それから、もちろん非常にシンプルなシステムで軌道上まで往復しようとしますと、これではもうエンジンも機体もすべて高性能になり、多くの課題があります。
   我々はこれにどういうふうにアクセスするか。今日あしたでそういうものは一気に作れない。それは段階的に行った方がいいでしょう。そういう繰り返しができるような機体を、少し大きな規模で、例えば大気圏の外に行って帰ってくるというような実験機を作って、そこでいろいろな技術を考えながら勉強したらどうかということを提案していく。これは少し大きな規模になりますので、開発までに4〜5年、ということになると思いますけれども、最初のスタートは、既存の技術レベルでスタートできるというふうに考えています。
   それをスタートさせたいというプロポーズをしているわけですけれども、プロポーズだけではやはり計算だ、紙の上だという話になりますので、それでは、本当にプロポーザルが迫力を持って受け入れられるというためには「物で試しましょう」ということで、できる範囲で小さなものを作って飛ばしていくというのが、現在の図式です。
   今この時点でできることは、もちろんすべてのことができるわけではありませんが、特に繰り返しに特化したようなエンジンに関する部分、エンジンはもちろん将来必要という意味で、液体水素を燃料にしたロケットエンジンを使う。では、おりてくるためにはどうするか。いろいろなおり方がありますけれども、我々は小規模な実験からスタートできるという意味で、上がっておりるというのをロケットエンジンでやっています。その中で繰り返しのためのいろいろな技術を勉強しよう。そういうことがこの実験の目的であります。
   一昨年になりますが、既に1回実験を行っています。後との比較で、これがいかにしょぼいものだったかというのをここでお見せします。
   これは液体水素のエンジンです。H−2などの燃料としてはおなじみのものです。2年前にこの実験を終えまして、初めてやったので、「初めてやりました」ということをお知らせしまして、多少、「ああ、こんなこともできるのか」というインパクトはあったかと思います。ここから、これが今回の実験、後で少し細かくお見せしますけれども、大分宇宙に行けそうかなという気がするかどうかというところを御覧いただけたらと思います。
   これは点火前にエンジンを冷やすために、水素酸素を流して、ここで点火します。煙が邪魔していますが。
   これだけと言えばこれだけなんですが、後でお見せしますけれども、再使用ということで、どういうことが使い捨てロケットと違うかということをひとつお話しします。少なくとも繰り返し飛ばせる仕立てを1回手に入れると、いろいろなことが何回もできる、これは当たり前です。使い捨てロケットのミッションというのはどういうことか。開発をずっとやってきて、完成しました。最初の1発目からフルのミッションを課せられて、フルスペックのフライトをしないといけない。そこでいろいろなリスクがあるために、設計が保守的になったり、検証が十分足りない場合は失敗したりする、そういうことです。それに比べて、再使用というのは、繰り返し飛ばせる環境というのを私たちとしては積極的に使う。
   具体的に何をやるかというと、飛ばすためにいろいろな新しい技術を入れながら実験をする。現に、この一番左のものが2年前に飛ばした機体で、真ん中の機体を飛ばしたというのが今回の実験なわけですけれども、このエンジンは再使用のことを考慮して、耐久性を上げるためのいろいろな工夫をして作った新しいエンジンです。それから、将来、飛ぶときに備えてGPSを航行データとして、それをループに入れて飛ぶ。これもなかなか、GPS、GPSと皆さん言いますけれども、本当にループに入れて飛んだというのは、あまり話は聞かない。すべて調べたわけではありませんが、初めてに近いんじゃないでしょうか。
   それから、将来に備えてエアロシェルを取り付けて、空力を管理する。そのあたりのいろいろなことをして、飛行範囲を拡大していくというようなことを繰り返して、再使用の環境を利用するという形の開発スタイルをとります。
   この次に、もし可能であれば、あるいは事情が許せば、さらに軽量化のための技術、タンクを複合剤化するであるとか、エンジンの推力制御性を上げるとか、1回上に上がって、エンジンを止めて、またつけておりてくるなど、そういう形で飛行能力を拡大していく。3番目をいつやるかについては、今検討中ですけれども、またうまくいけば御紹介できる機会があるかと思います。
   それから、もう一つは、これは今回3回、繰り返して飛ばしたわけですけれども、3回のフライトの高度と飛行距離のデータはこのようになっています。これは何が言いたいかといいますと、再使用ができるために、飛ばす範囲も最初はこわごわ、もうちょっと勇気を出して、オーケーだったらもっと行こう。そういうことが繰り返しできる。これも使い捨てロケットではあり得ないことで、振り返ってみると、飛行機というのは多分こういうふうに開発してきたのではないかと思います。我々、ロケットの世界にいると、ロケットのやり方が当たり前だと思っていることに対して、「再使用というのはいろいろな意味で違う」ということを、例えばこういう実験機を飛ばすことで知らしめることがもしできれば、それも成果の1つかなというふうには思っております。そのあたりは皆さん、どう御判断いただくか。我々としてはそういう主張をしたいというふうに考えております。
   ちょっと先の話もしますけれども、再使用の行き先は何かということについて、いろいろな議論があるというのは先ほど最初にお話をいたしました。我々の考えている意味で、本当の意味で再使用が役に立つ、あるいは経済的にみんながそこからの利益を享受できるようになるという仕事で、今、定量化された予測がなされているのは、1つは「宇宙旅行」、もう一つは「太陽発電」です。その他いろいろな提案がありますけれども、この2つについては仕事の規模とか、社会的なインターフェースの部分、そういうことでかなり軽量化されています。少なくともこの2つの最終ゴールを実現するためには、輸送コストというのを、経済性というところからさかのぼって、2けたのコストダウンが必要です。そうすると、どかんと宇宙の輸送の需要が伸びる。けた違いに伸びるということが指摘されています。
   ただし、それは今日明日といった話ではなく、すぐにはやってこない。そうしますと、今、何が必要かというと、これに対して現在の輸送需要、先ほど来あります通信衛星とか放送、電波を広く薄くばらまいて広く薄くお金を集めましょう、といったことが経済的には成り立っているわけですけれども、これとそれとの間に非常に大きなギャップがある。そうすると、実際、再使用のR&Dをやる立場の我々として考えるべきは、ここからここへのトランジションをどういうふうにするかというところが一番問題となります。そこで、ここでの開発目標みたいなところは、ある意味でポリシーとして設定していただくことになります。いただくというのを我々の立場で言っていいのかどうかわかりませんけれども、必ずしもこの両極端ある中でやれというのでは、アクティビティとしてもなかなかつらいということが言えると思います。
   我々としては、今のアクティビティが、プロモーションとしてこういう3つの技術課題についてチャレンジしているわけですから、ここで次の目標を30年、40年ではなく、5年かあるいは10年かというところで、どういうものをセットするか、これが今非常に大きな議論になるかと思っておりまして、いろいろなレベルでこの議論をしていきたいと思っています。ただ、議論しているだけではなかなか進まないというのも、我々としては、そのサイドでは今のような形で物をもって示したいというのが、アクティビティの考えです。
   この写真をお見せしますが、この間の実験です。これで離陸をして・・・、この間にどこか、宇宙へどこまで行くか、100キロ、地球を1周するかということをして、その後で・・・、というふうにイメージを膨らませていただければ、あるいはこういうものがもう少しあれば、私たちはできると思っています。
   ですから、さっきの松本先生の話の後で、示し合わせたような感じで申したのではありませんし、それから、栗木先生が人を乗せよとおっしゃるかどうか知りませんけれども、そういうポテンシャル、少なくとも安全に帰ってくる仕立てを作ろうというアクティビティという意味では、そこに共通点はあって、我々も何か形で、先ほどクエスチョンマークが3つ並んでいる絵をお見せしましたけれども、そこの目標として何か絵になることを見つけて、みんなが元気を出して、力を出し合える、そういう場になっていければ、我々の仕事の発展としても幸いだ、そういうふうに考えております。
   以上、御報告と余分なこともしゃべりましたけれども。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。御質問、御意見がありましたら。

 五代委員 

   再利用からいずれは有人という意味で、技術的に今までの、要するに「使い切り」と違う技術開発がいっぱいあるんですね。これまた非常に皆さんも夢を持ちますし、それから間違いなくこういう方向に行くわけですね。形態はわかりませんけれども。私自身も3年、4年くらい前ですか、ホワイトサンズで例のDC−Xの、実際のこういう飛行実験をゴールディン長官とかと一緒に見たことがあります。そのときは非常に大成功でしたけれども、その次の1カ月ぐらい後にやったときには、足が1本うまく開かないというので、そこで終わって、壊れちゃったんですね。燃えちゃったんです。こういう実験というのは、私、できるだけ繰り返して、いろいろなパラメーターをとるのがいいと思うんですが、実験1回あたりの金額は今どれぐらいミニマムでできるのでしょうか。できる限り実験を繰り返したらと思うんですけれども。

 稲谷教授 

   この実験についてということですか。

 五代委員 

   ええ、例えばこの2で言えば。あるいはその次の3の場合でもよろしいですが。

 稲谷教授 

   機体が1回でき上がってしまいますと、人件費をどう勘定するかは難しいところがありますけれども、大体30人ぐらいの人件費、インハウスが20人、メーカーの方が7〜8人、もう少し考えると10人ぐらいですか。それから、あとは消耗品の燃料代その他です。1回の実験、この実験に限って言えば、この3回飛ばしたキャンペーンで大体2000万弱ぐらいのキャンペーンです。規模的には、そのうちの消耗品とか燃料というよりは、人件費が多いと思います。
   それから、ハードウエアはいろいろ作るために投資をしていますけれども、この1件のためにゼロから作ったんじゃない。先ほども説明しましたように1回目を作って、そのうち半分を乗せたりしています。今、宇宙研の中では4000〜5000万より下の規模のことを基礎開発と言っております。年間我々が使えるお金というのは、先ほどの試験機も含めてそれぐらいのものです。
   ですから、設計とか物の試験とか、そういうものにできるだけインハウスの人間を使って、その人件費は半年ぐらいはもちろん半分になるかもしれませんけれども、そういうことで外部に対して発生する費用というのは少なくした上で、今のような形で、この規模の実験はできる。もう少し大きな規模になったときに、1発当たり幾らのフライトができるかというのも考える必要がありますけれども、それも100万円というのは難しくて、1000万円という規模になります。それをもっと人手を減らすとか、そういうことをしないと、経済性は出てこない。ただし、実験機のレベルでは、そういうことを試しながらやるのが実験機だと思いますので、今の時点ではそういう形です。

 五代委員 

   このあいだの実験では、2号機はもともと想定していた試験項目をほぼ終えたわけですか。

 稲谷教授 

   はい。エンジンの再使用性、寿命を管理した設計というのをやりました。ただし、これはもちろんこのエンジンを燃やしたのは、燃焼試験も含めて15〜16回やったと思いますけれども、その範囲では予定の機能を出しています。それから、エアロシェルをつけたというのは、これは水素漏れに非常に注意したいと思った結果でして、水素漏れをどうやって防ぐか、それは機体の設計上、つなぐ箇所をできるだけ溶接化するとかそういう工夫をしたということ、水素検知の方法、それをリアルタイムでモニターして、危なければ止めるという操作、そしてその運用を考える、といったことが挙げられます。
   それから、航法系は、先ほど言いましたGPSをループに入れて飛ばす。これも3回飛ばしたうちの2回目、3回目はそのGPSで飛ばす。もちろん飛行中の安全、現実には3日半のうちに3回の飛行をするという強行軍ではあったんですが、それはやむを得ずの部分もありますけれども、デイリーフライトをするかどうか。何かやるときの1つの目標になります。そのデイリーフライトのインターバルは、定量的に10日間続けろと言えば苦しいかもしれませんけれども、3日間ぐらい続けてデイリーフライトをやるというのはできる。そういう意味で、ある種システムも安定をしてきたし、再使用性もあるということで、そういうところはもちろんこの仕立て自身は、いろいろ問題はありますけれども、次に作るときの参考になるような情報は非常に多く得られたと考えています。

 井口委員長 

   先生御自身は、いつごろになったらこれにお乗りになりますか。

 稲谷教授 

   実はこのあたりに人が乗った絵を作ったんですけれども、今日はお見せしませんけど。

 五代委員 

   それは何なんですか。RVTの何番になると。

 稲谷教授 

   それは人工の写真の話でして、これのてっぺんに人を乗せた写真を作ったんですけれども、まあ、冗談抜きにして、我々は別のところで旅行のための安全の基準をどうするかという仕事をしています。そのためには、飛行機と同じ部分も多いんですが、故障したときに安全におりるという仕立てをつけることが一番です。信頼性の向上というと、単に99を99.9にするということではなくて、あるいは冗長を2から3にするということじゃなくて、こいつが死んでもこいつが補って、安全に飛ぶ、そういうシステムにしなきゃいけない。これはまだ古くさいロケットのスタイル、エンジンは1機しかありません。それが壊れたらもうお釈迦です、ということになっていますので、そういった「人が乗っていい」という安全性に関して、飛行機の基準をそのまま当てはめていいとはもちろん思いませんけれども、そこの考察を十分した上で、ロケットではこれで必要十分であろうということをして、これの発展型みたいなことをすれば、それは水素であろうが、何であろうが、そういう安全の対策をやっていれば可能だと思いますので、   いつからと言われますと、もちろん「適切な投資が行われれば」という前提はあると思いますけれども、技術的には、さっき言った何十年先ではなくてもう少し10年とかいう単位でそういう投資をやれば、それは十分できると思っています。
   ただし、1段式で宇宙へ行けという話は、これはまた別の難しさがあります。それとこれとを一緒にするか別にするか、その辺が議論になるかと思います。これは5メートル上がれ、100メートル上がれというようなもの、あるいは100キロまで上がって帰ってくるというようなものは、私の気持ちとしては「10年以内には十分できる」と申し上げますが、ただそこから先が多分難しいことであろう、と個人的にはそう思います。

 栗木委員 

   航空機の話が幾つか出てまいりましたので、私もそのアナロジーで2つばかり、これはお聞きしたいんじゃなくて、今後の活動の中で是非調査も含めてやっていただきたいなと思いますのは、先ほど出ました有人飛行と太陽発電の話です。要するにパッセンジャーとカーゴ、両方の役割が輸送系には今後出てくると思うんです。航空機の歴史を見ますと、どちらが先かというと、例えば郵便事業のようなものが先に出てきて、命知らずのパイロットが飛んでいるうちに、旅客、いわゆるパッセンジャーの方がついてきた。今後、商業的に再利用型の信頼性を高めていくプロセスの中で、2つのパスをどう仕分けして、あるいはどういう割合で進めていくか。おそらく航空関係の方は極めてそういうセンスをお持ちだろうと思いますが、現在のカーゴとパッセンジャーがどのぐらいのフリークエンシーで飛んでいるかというのは私はよく知らないのですが、ほとんどカーゴは夜間飛んでいるんだろうなと思っていたりしますけれども、そのあたりも是非調査をしていただきたい。
   もう一つは、先ほどの絵を見ていましたら、向こうに海が見えました。それがちょっと気になりました。私、航空でもって飛行機のデザインをやりましたが、低翼はいいけれども、高翼を作ると必ず着水したときの逃げ方を考えろと言われました。あの足のまま海へおりちゃいますと、どうやって逃げ出すかということもちょっと気になりましたので、必ずこういうものが飛ぶときには、思いどおりのところへおりられるとは限らないので、そうすると、海へおりた場合はどうかというようなことも是非、飛行機のセンスでお考えいただければ、と思います。よろしくお願いします。

 稲谷教授 

   今の御質問の部分については、スタディの中で、海に落ちたらどうなるかという計算をしています。ボトンとこうなっちゃって、キャビンが下になって落ちちゃう。あるいは非常脱出のことを考えると、飛行機と同じ基準の90秒間では全員逃げられない。それをこういうプロジェクトでどうするか。答えはまだないんですけれども、そういう問題認識はもちろん先生と共有してよいかと思いますので、何とか答えを見つけよう、あるいはどうするかということを考えようと考えています。承知しました。

 五代委員 

   いずれにしても、無人のミサイルとは言わないけれども、使い切りロケットから出た文化と、完全な飛行機、要するに人を乗せるという文化と、かなり違うわけですね。そこを全部、飛行機の文化にするというと成り立たない。だから、そこで非常にいいところを探していただいて、どういう問題があって、そこのところをどうしていったらいいのかという、そのあたりを今度また教えてください。よろしくお願いします。

 稲谷教授 

   一緒に御議論させていただきたいと思います。

 井口委員長 

   先生どうもありがとうございました。
次は「評価指針特別部会報告」を、栗木先生と、それから技術評価推進官の澤邊さんにお願いをします。

 栗木委員 

   それでは、27−4−1の資料と、それから4−2、両方に基づきまして御説明申し上げます。宇宙開発委員会の方から、大型のプロジェクトの進め方について、事前、中間、それから事後と、どのような評価をしていくべきか、あるいはそれは仕組みとしてどういうシステムを用意すべきか、そういうような付託を受けまして、この部会を開いて、報告書にまとめました。これもまだこれから運用していく段階でいろいろあるかと思います。私どもがやりましたのは、6回の会合のうち、前半は諸外国ではどうやっているか。特にNASAではどうやっているか。そういうようなサーベイから、これを自分なりに解釈して、どんなような基準を作っていくか。あるいは、これをすぐに当てはめると、今、これの対象となる宇宙開発事業団では、これを受け止めてもらえるかどうか。そんなような使い勝手も含めて、とりあえずの調査を行いました。
   その動機と、その感懐といいますか、この指針をまとめていく上で感じましたことが、この表紙の裏表紙のところに書いてございます「はじめに」と書いたこの1枚でございます。それから、それに続く目次の中身が、このA3の横長の紙に概要が書いてございますので、まず「はじめに」をざっと読み上げまして、その後、どこにその項目が該当するかというような順序でご説明したいと思います。
   「はじめに」は、字句を追って読みますと、平成12年の末に宇宙開発委員会が策定した「我が国の宇宙開発の中長期戦略」が出されました。「宇宙開発活動のマネジメント」が取り上げられまして、多くの資源を投入する宇宙開発活動の評価の必要性が説かれました。そのねらいは、開発着手前の企画立案活動を精査して、適切に資源を配分し、着手後のリスクを最小限に抑えるとともに、開発終了後はその成果の得失面、よかった面、悪かった面、両方から評価して以降の開発活動につなげることにある。
   他方、中央省庁再編前の科学技術会議は、平成9年に「国の研究開発全般に共通する評価の実施の在り方についての大綱的指針」という長いタイトルの書類を作成しまして、これは表題にもあるとおり、一般的な評価指針、例えば大学の研究等にも適用されるような評価指針を出す。しかしながら、これが宇宙に使うということから、宇宙開発委員会は評価指針特別部会を設け、宇宙開発に特化した評価を宇宙開発委員会が行う際の指針をまとめることとなった。
   宇宙プロジェクトの開発は単独でも5年を超えるものが多く、その成果が連綿として継続・発展をもたらすためには、大規模な開発の流れ、衛星とかロケットでございますが、大規模な開発の流れ(プログラム)に適正に位置づけられ、最大の効果を発揮せねばならない。こうした体系化された企画立案が従来の宇宙開発では十分でなかったということが、上記の「中長期戦略」にも指摘されており、今後は十分に内容をただして、国民にも納得できるプロジェクトであることを確認する必要がある。
   こうした意図を含んでまとめた本指針は宇宙開発プロジェクト全般を対象としているが、ロケット、人工衛星、宇宙ステーションなど、各々異なる性質を持っていること、またそのミッションに含まれる長期的視野に立って人類の新しい知見を得るという活動を含むものもあることから、今後の適用に当たっては指針を踏まえて事前に評価実施要領を定めることとしている。また、本指針は金科玉条というより、広く活用されてこそその目的を果たすのであるから、必要に応じて見直しも行い、開発実施機関にも受容される評価指針としていきたいというのが、この部会の作業に当たりました全員の趣旨でございます。
   その中身というのが、横長の紙にまとめてございます。まず、評価指針の位置づけでございますが、これは宇宙開発委員会が、宇宙開発事業団の実施する大規模プロジェクトの進行管理を評価するという共通的な考え方に立っております。個々のプロジェクトは、先ほど申し上げたようにロケット、人工衛星、少し性質が違うもの、これをどう当てはめるかという議論をした上で当てはめていくことが大切だ、と書いてございます。
   本文の方の11ページを御覧になっていただきますと、図−1というのがございます。ここに位置づけがチャートでもって示されております。箱が3つ、4つと段になって並んでおりますが、一番上の方にございますのは、政策決定レベル、この最終的な意思決定者というのが文部科学大臣ということになっております。宇宙開発事業団から、こういうようなプロジェクトを実施したいというようなこと、あるいはそれを踏まえて宇宙開発委員会の方で出した基本計画というのがございますと、そのプロジェクトをどのように実施するかという、宇宙開発事業団の方から出てきた方針を宇宙開発委員会が精査しまして、プロジェクトの方向性がそれでよろしいかどうか、どうやるべきであるということを助言するという格好で、これは文部科学大臣に報告するというとになっております。これを踏まえて文部科学大臣がその政策の最終的な意思決定者としてプロジェクトにゴーをかける。
   こういったような枠組みで行われますと、プロジェクトの細々した話ではなくて、大づかみに従来の開発の流れにきちっとはまっているかどうかということが、宇宙開発委員会の中での一番の関心事となります。この下の方に書いてある小さい箱がございますが、これは宇宙開発事業団が個別にいろいろな審査を行ったり、設計の審査を行ったり、技術的な検討をすることを表しています。ここは実施機関に任せようというのが、宇宙開発委員会の趣旨でございます。
   横長の資料に戻りまして、右上の隅に書きました箱の中にある対象は大規模なもの、小さなものは宇宙開発委員会はやらないけれども、ある程度以上大きいものを精査していきます。基本的な考え方としては、開始時、中間、終わったときの評価ということに力を入れると同時に、社会的な、科学技術的な、あるいは経済的な意義をただして、このプロジェクトを行う上で、そのコストと、これに内在するどうしても避けられないリスクは受容できる範囲になっているかどうかということも含めて、コストとリスクを評価していく。その結果を、多額の資金を必要とする宇宙開発を実施するということからも、先ほどの図にも書いておいたんですが、国民にこれを公開してからプロジェクトの着手に当たる、というのがこの本筋でございます。
   この資料では3段階、3つのプロセスを経ておりますが、これも概念的に書いたもので、具体的なプロジェクトが出てきますと、要らないものがあったり、実際にはこの事前の評価が何段階にもわたったりということがあるかと思われます。事前評価の段階では目的の意義だとか目標とか、きちっと優先度も確認した上で、それが評価の場に出ていく。それから、リスクの管理、システムの選定、いろいろなオプションについて検討したか、というようなことも判断をして助言をする。
   右側の方にa、b、c、d、e、f、g、hまで書いてありますが、こういう細かいことも一応やってくださいよということでこういうものを出してもらって、これらの大所高所から見たときの方針というのに間違いがないかということを見ていきます。
   それから、もしこれでもって開発にゴーがかかった後、中間評価になりますが、開発着手したときの条件、環境条件、社会的な技術的動向、それから、国際的な環境条件、そういうものが変わって、このまま続けていいかどうかということになったときに、この中間評価を行って、宇宙開発委員会としては、場合によっては大幅な変更とか中断も考える。それから、開発自身のマイルストーンというのがうまく実施されているかどうかということも見ていきます。
   このようなことで見直したときに、「事前評価」というのがうまく機能していたかどうか、ということも、逆に事前評価に対する評価という格好で受け止めていこう。つまり、それは事前に評価するのも、最初からうまくいくとは必ずしも限りませんから、そういう場合にはこうやって事前評価をやっていくべきだという反省もここで生まれてこよう。そういうような認識でこの中間評価を書いております。
   事後の評価は、プロジェクトがうまくいったかどうかということを効率性について判断することになります。事後の評価を精査して将来の計画にフィードバックする、ということが、この事後評価の一番大事な点であろうと考えております。その右に向かって矢印が書いてございますけれども、成果の「アウトプット」と「アウトカム」について、ここだけ細かい話ですが、この委員会でも部会でももめた点でございまして、御紹介しておきます。
   「アウトプット」というのは何かといいますと、例えばロケットを作る。人工衛星を作る。それがうまくできました。軌道上で働きました。これが「アウトプット」でありまして、つまり、これは目標を立てるときに、そういうものを作ります、働かせますといったようなことを指します。しかしながら、これを長い目で見たときに、商業利用がこれによって展開しただろうか。それが有人の場合にはお客さんを乗せるようになったであろうか。そういう極めて超長期的な意義を踏まえて目指しているものというのが、これによって第一歩が築かれたか、そういうようなことを「アウトカム」という片仮名で表現しております。したがって、この「アウトカム」の方はやや時間がかかって、打上げが終わったからといって、すぐに結論が出るものじゃない。もっと簡単な例を書きますと、ある橋をかけました。橋が立派にかかりました。しかし、その橋を渡るときにお客さんから料金を取って、橋床の建設費をまかなうべく、うまく経営として成り立つようなことはできるでしょうか。これは「アウトカム」でありまして、かなり時間をかけて見ないとわからない。そういうような中身に分け   まして、最終的な評価というのもある程度時間をかけてやっていこうというのが、この趣旨でございます。
   こういうことを行うに当たっては、留意事項に書きましたように幾つかの観点、実際に評価される場合、過度の負担にならないようにする、公表の仕方、事業団が行う内部評価を尊重する、知的所有権などはこれらは保護するような格好での公開というのが必要、そそして、これも先ほど申し上げたように金科玉条ではないので、これが用いられるということが最終目標ですので、見直しもやっていい、そういうようなことをまとめて留意事項といたしました。以上でございます。

 井口委員長 

   どうもありがとうございました。これは特別部会の報告ですが、特別部会の委員は、部会長が栗木委員、長柄委員と五代委員が委員でございますが、3人の御賛成のもとに出されたんでしょうか。

 栗木委員 

   と思っております。

 井口委員長 

   そうであれば、ここでも4人のうちの3人御賛成であれば、もう私もこの部会にはちゃんと出て、意見は申し上げておりますので、全員が賛成、了承ということでございますので、この評価指針を了承ということにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
   あと1件は、前回の会議の議事要旨でございます。後ほど御確認をお願いいたします。
   それでは、本日はこれで終了いたしたいと思います。第27回宇宙開発委員会を閉会いたします。ありがとうございました。


−−−了−−−



(研究開発局宇宙政策課)

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