教科書検定手続きの検討課題とこれまでの主な意見

1.教科書検定手続きの透明性の一層の向上

○議事等の公開のあり方

1 会議は非公開とする
<理由>
  本会議は、主として、検定申請された図書を対象として行政処分 の前提となる審査を行うものであるが、会議を公開した場合、委員の自由闊達な議論を通じて合意形成を図っていく上で支障が生じるおそれがある。

2 議事録については、原則として公開する。ただし、行政処分の前 提となる審査については、議事録、議事要旨ともに公開しない。 議事録は、匿名とし、会議終了後、事務局案を作成し出席委員・臨時委員に確認した上で公開する。
 <理由>   検定申請された図書を対象として行政処分の前提となる審査を行う会議の議事録又は議事要旨を公開した場合、委員の自由な意見交換が制約され、円滑な運営が妨げられるおそれがあり、検定を公正、円滑に実施する上で支障が生ずる。
【平成13年1月15日教科用図書検定調査審議会決定】
教科用図書検定調査審議会の議事内容の公開について
<現状>
  • 会議については、上記審議会決定により、総会、部会、小委員会とも非公開としている。
  • 議事録については、上記審議会決定により、総会について、発言者を匿名として議事の内容の概要について記載した文書を作成し、検定決定後にホームページで公開している。
  • 部会・小委員会については、「議事録」として、期日、会場、出席委員、検定申請に係る各教科書の合否の判定等の内容を記載された文書を作成している。
<検討課題>
  1. 現状の審議会決定においては、本審議会は、主として検定申請された図書を対象として行政処分の前提となる審査を行うものであるが、会議を公開した場合、委員の自由闊達な議論を通じて合意形成を図っていく上で支障が生じるおそれがあることから会議は非公開としている。このことについてどう考えるか。
  2. 1と同様、本審議会が、主として検定申請された図書を対象として行政処分の前提となる審査を行うものであることから、検定決定後において、その報告がなされる総会については、議事の概要を作成し、議事録として公開しているが、検定に関する実質的な調査審議が行われる部会については、自由闊達に意見を述べていただくということからも、委員の意見のやりとりを記録した文書は作成していない。このことについてどう考えるか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
○ 議事の公開のあり方について

  • 教科書検定について、国民各位からこれまで以上に信頼を得るためにも検定手続きの一層の透明性の確保についてご努力いただきたい。
  • 審議会委員と教科書調査官の役割やその関係について明確にし、審議結果に至る過程を透明化することで、検定に対する信頼度を高めるようにしなければならない。
  • 検定については審議会においてどのような議論がなされ、結論が出たかというプロセスを明らかにしていくことが重要であり、委員についても、どのような形で選任され、選任された委員がしっかり審議しているということを国民に知らせることは重要である。(検定手続きWG)(検定手続きWG)
  • 何が「公正・中立」なのかは時代や事象によって変わっていくものであるが、この点について、教科書の記述は実際に子どもたちに教える教師に自信と確信が持てる記述となっていることが望ましい。この意味でも検定において公正・中立な観点を十分に踏まえた論議をし、それをきちんと示していくということが今回の議論の方向性として大切であり、教師にとって確信を持てることにつながる。これまで検定審では行政処分を下すということで結論に至るプロセスを明らかにしてこなかったが、なぜこの結論に至ったのかを教師も含め、広く示していく必要がある。こうした点も踏まえ、公開することにどのようなメリットがあるのか、をこの論点整理に入れてほしい。(合同WG)
  • 外部からの指摘を見ていると、審議会の委員がどのように選ばれたかについても関心が高いように思われる。(検定手続きWG)
  • 検定を実質的に行っている小委員会の議事については、例えば昨年の日本史小委員会の報告における対応のように、概要を作成し公表すべきである。(検定手続きWG)
  • 検定審議会のすべての部会・小委員会について、今回の日本史小委員会のような詳細な報告を作成することは実務的には極めて困難であろう。(検定手続きWG)
  • 教科書検定は、静かな環境の中で専門家である委員の知見により、公正・中立に専門的・学術的に審議がなされることが重要であることから、会議自体を公開していなくとも、事後に議事の概要を公表することなどにより、透明性は確保できる。(検定手続きWG)
  • 検定を全て終えるまで外部に漏らすべきでない情報もあり、何でも逐次公開していくことを求めるのではなく、事後的に公表すればよいとも考えられる。(検定手続きWG)
  • 行政施策のあり方等を審議するのではなく、申請図書の合否について審査する審議会の性格上、各委員の具体的な発言を公表することは、自由闊達な議論を妨げることから難しいと思われるので、申請図書に対して、どのような意見が出されたのかがわかる議事の要旨を公表するのが良い方法ではないか。(検定手続きWG)
  • 審議会情報を公開する場合の原則としては、国民から要望があれば、誰がどのような発言をしたかということまでわかる方がよいと思うが、検定調査審議会は行政処分を行う審議会でもあり、個々の発言と委員の名前を結びつけるところまでは公開しなくてもよいと考えている。(検定手続きWG)
  • 仮に調査意見書を公表したとしても、検定意見は審議会において検討して付すものであるので、調査意見書をどの教科書調査官が作成したのかというところまでは公表する必要はないと考える。また、審議会の場で誰がどのような意見を出したのかまで公表する必要はないと考えるので、検定意見への意思形成がある程度わかるように議論をまとめたものを公表するのがよい。(検定手続きWG)
  • 議事概要的なものを作成し、議論の内容や会議の開催回数などの基本的な情報は伝える必要がある。他方、説明責任を果たすことが必要な論点や論争があるものや、配慮が必要なものなどがある場合は、事後で説明していくことは重要である。(検定手続きWG)
  • 議事録にも様々あり、審議会によっては発言者名や話し言葉をそのまま載せるものもあるが、これは意見のやりとりを把握するという点ではあまり意味がない。審議会で何が議論され、何が決まったのかということがわかるという意味では、まずは資料4に示される、昨年の日本史小委員会の議事概要のように、日程、主な議事、主な審議内容をまとめた「議事概要」を作成する必要がある。公開のタイミングとしては審議が終了した後がよい。部会・小委員会の分属がはっきりしていれば、本審議会の性格を踏まえれば、個々の発言者名まで明確にする必要はないと考える。ただし、会議の出席者は明記する必要がある。(検定手続きWG)
  • 資料4で例示された項目や内容を「議事概要」において公開すれば、何が議論され、どんな意見が出たかということがわかる。(検定手続きWG)
  • 議事の概要については、全教科において、従来と見解が変わったときや新しいことをつけ加えたりした際など、具体的な内容については各部会で判断して公表すべきである。そうしたことを通して、教科書の記述内容について教師が自信を持って指導できるようにすべきと考える。(検定手続きWG)
  • プロセスを公開すれば全て解決するわけではない。そのプロセスが正しいのかという論議がこれまで以上に巻き起こる可能性はある。そうした議論に耐えられるよう、審議会としての結論に至るまでの審議内容について、議論をより深く求めていく必要があると考える。その点からも、誤記・誤植審査に時間をかけるのは避けるべきである。(検定手続きWG)
  • 議事の公開方法などについては、審議会全体としての目安となるものを作成し、各部会特有の事情については各部会において検討するのも一つの方法であるのではないか。(検定手続きWG)
  • 審議内容の公開については、どの時点でどの内容を公表するのかが問題である。(検定手続きWG)
  • 誤記・誤植の審議にとらわれるあまり、審議に支障が生じていることから、明確な誤記・誤植などについては審議を行う前に、その対応について部会・小委員ごとに合意しておくことが必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 基本的に公開を原則として考えるが、議事や委員会の公開の時期を考慮し、有効に意見等が反映されるタイミングを考慮する。(全国市町村教育委員会連合会)
  • 審議会委員による審査については、審議中は静ひつな環境が確保されるようにすべきである。ただ、審査終了後は審議会の委員による審査によって検定意見がどのように付されたかということがわかるよう公表のあり方を検討すべきである。(検定手続きWG)
  • 検定手続きの透明性の向上を図ることは必要であるが、予断・憶測等の流布防止とともに、静ひつな環境を確保するためには、審議過程での公開は避けるべきであると考える。(教科書協会)
  • 審議状況は公表せず、論理的根拠等を明確に示すことができるようにする。(全国特別支援学校長会)
  • これまでの議論では、本審議会の性格から、会議そのものを公開するという方向にはなっていなかったと思う。事後的に議事概要を公開することが適当である。(検定手続きWG)
  • 国民の信頼を確保するために議事を公開していくという観点から考えると、現在公開資料としていない、例えば、教科書発行者から提出された合否についての反論書や検定意見に対する意見申立書などにかかるプロセスについても、公開していく方法が考えられる。(検定手続きWG)
  • 検定審査の過程の透明性を向上するためには、検定終了後に様々な情報を公開する必要がある。審議途中で公表すると外部からの圧力が考えられ、静ひつな環境を確保できない可能性がある。例えば、審議会に提出される資料のうち、現在は公開していない、検定意見書の原案である調査意見書も公開する必要がある。(検定手続きWG)
  • 委員の分属を公開することはもちろん、検定に携わった教科書調査官の氏名や経歴も公表すべきである。学習指導要領の解説書では、作成協力者だけでなく担当の教科調査官の名前も入っている。(検定手続きWG)
<国会での指摘>
衆議院・文部科学委員会(平成19年10月24日)(抜粋)

○小宮山(洋)委員
 渡海大臣は、10月9日の閣議後の記者会見で、検定審議会が非公開で開かれていることなど、今までのやり方でよかったかどうか検討していく、基本は公開ということだが、さまざまな疑義が生じないようにという面において、公開ということが大事なのではないでしょうかという趣旨のことを述べられていらっしゃいます。
 透明性をこれから高めていくということが大事だと思いますが、大臣のそれについてのお考えを伺いたいと思います。

○渡海国務大臣
 そういうふうに申し上げました。その後、いろいろな可能性について、私なりには、ああ、こういうこともできるかなと考えておりますが、最終的には、やはりこれも審議会の先生方の意見も聞かなきゃいけない。と申し上げますのは、やはり大事なことは、審議会というものが、先ほどから盛んにお話が出ていますように、いわゆる政治的圧力がかかるとか、政治的じゃなくてもいろいろな圧力がかからないような静かな環境の中でやっていただく必要があります。そうしますと、今考えられるのは、やはり後からいろいろな疑義がかからないように、終わった後に何らかの公開というものを図れないかなと。
 基本的には、審議会は、特に部会は、今までも議事録も非公開でございますが、それを全部そのままいくかどうか、そういったことも含めて、今、予断を持たないで、少し、審議会の委員の先生方にも御意見をいただきながら、今回これだけ疑義が出たわけでありますから、やはりその反省としてそういったことを考えていきたいという意味で申し上げた次第でございます。
参議院・文教科学委員会(平成19年10月30日)(抜粋)

○谷岡郁子君
 公開の議事録もない、そして非公開であるという審議の在り方、こういうものを考え直すときに来ているのではないかというふうに考えます。  以上、これが公正で中立と言えるのか、そしてこの当事者意識のなさということを放置してよいか、そして審議の在り方を考え直すときではないかということについてまずお尋ねいたしたいと思います。

○国務大臣(渡海紀三朗君)
 ただ、ただ最近私は申し上げておりますのは、そういった今日の先生を始めいろんな、例えば人選がおかしかったんじゃないかといろんな疑義が呈されているわけでありますから、そのことに関して我々はもう少し透明性を上げていくなり公開性を上げていく努力というものはしなければいけないんじゃないかというふうに、これは国会でも記者会見でも答弁させていただいております。やっぱりそういう努力をしていくことは、これは私の責任においてやらせていただきたいというふうに思っております。

○各部会・小委員会の委員分属の公開のあり方

<現状>
  • 発令時において氏名及び職名をホームページで公表。ただし、分属は示していない。
  • 検定結果の報告を行う総会議事録の参考資料として、部会別の委員一覧を公表。
    ただし、静ひつな環境における公正・中立な審議の確保が特に求められる場合は、小委員会を含む全ての部会の分属について非公開とした。)
<検討課題>
  1. 現状では、検定審査終了後、支障のない範囲で部会の委員分属について公開しているが、透明性の確保ということから、このことについて、どのように対応するのがよいのか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
○ 各部会・小委員会の委員分属の公開のあり方

  • 検定については審議会においてどのような議論がなされ、結論が出たかというプロセスを明らかにしていくことが重要であり、委員についても、どのような形で選任され、選任された委員がしっかり審議しているということを国民に知らせることは重要である。(再掲:検定手続きWG)
  • 外部からの指摘を見ていると、審議会の委員がどのように選ばれたかについても関心が高いように思われる。(再掲:検定手続きWG)
  • どのような教科書検定が行われたかについては、社会科に限らずどの科目でも国民の関心事であり、どのような委員において、どのような過程で教科書が検定されているかについて、できるだけ透明にしていくことが国民の要請であると考えられる。(検定手続きWG)
  • 委員の部会・小委員会への分属の公開については、検定プロセスの公開とリンクして考えるべきであって、プロセスを事後に概要としてまとめ公表するのであれば、委員についてもその時に明らかにすればよい。(検定手続きWG)
  • 委員の分属については、調べれば専門分野がわかり、どの部会に属するか推測できるので、はっきりと公表した方がよい。(検定手続きWG)
  • 実際問題として委員が毎年代わるわけではなく、継続して関わっている。分属を事後で公表したとしても、翌年度以降の静ひつな環境が確保されないのではないか。(検定手続きWG)
  • 小委員会の分属を公開する場合は、翌年度以降についてその影響を考える必要がある。(検定手続きWG)
  • 小委員会の分属については、少なくとも審議を終えた後に公開すべきである。公開により、なり手がいなくなるのではという意見もあるが、非公開の場合、憶測も招きかねず、また委員の職名などからその専門は推測できることから、どういう委員が選ばれているのかを示し、国民にとっての透明性の向上を高めるべきと考える。(検定手続きWG)
  • 委員の分属に関する透明性の確保と静ひつな環境の確保については、適切なバランスを考えるという発想が必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 透明性の確保と静ひつな環境の確保については、相反する面があり、そのバランスが重要である。(検定手続きWG)
<国会での指摘>
衆議院・文部科学委員会(平成19年10月24日)(抜粋)

○石井(郁)委員
 何でこの審議会委員の専門委員の名前は出せないんですか。おかしいでしょう。公正中立な審議会だ、そこで学術的に審議を行っているというわけですから、どういうふうにそれが行われたのかという点で、どなたがその専門委員なのかということは最低必要な、明らかにすべきことだと思うんですが、おかしいんじゃないですか。
 この点は、大臣いかがお考えですか。

○渡海国務大臣
 この委員の先生方につきましては、実は名前が知れたことがありまして、非常に、家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして、そして、そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして、今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います。
 名前を出さないから中立、公平、公正にならないということではないというふうにも考えます。その点は御理解をいただきたいというふうに思います。

○検定意見の伝達方法等のあり方

(申請図書の審査)
第7条 文部科学大臣は、申請図書について、検定の決定又は検定審査不合格の決定を行い、その旨を申請者に通知するものとする。ただし、必要な修正を行った後に再度審査を行うことが適当である場合には、決定 を留保して検定意見を申請者に通知するものとする。
【教科用図書検定規則】

第2 申請図書の審査手続
1 検定意見の通知(規則第7条関係)
  検定意見の通知は、別紙様式2の「検定意見書」を交付することにより行う。
【教科用図書検定規則実施細則】

※ 平成11年に教科用図書検定規則実施細則を改正。

<現状>
  • 平成12年度検定から、これまで口頭で行っていた検定意見の通知を文書(検定意見書)により通知。
  • 検定意見の通知後、申請者において補足説明の希望がある場合には、教科書調査官から口頭で補足説明(検定意見の趣旨)を行っている。
  • 補足説明について、テープレコーダ等により録音を希望する場合は、申請者・教科書課双方で録音をしている。
<検討課題>
  1. 現状では、発行者に対し、文書により検定意見の伝達を行うとともに、求めに応じて口頭で補足説明を行っている。このようなあり方や方法について、どう考えるか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
○ 検定意見の伝達方法等のあり方

  • 教科書検定制度は、検定意見通知などを見ても、行政法規に照らして慎重な手続きになっていると思う。一方で、運用も問われる。(検定手続きWG)
  • 検定意見をつけた趣旨がより正確に理解されるよう、検定意見の伝達の場などでの発行者とのコミュニケーションを工夫すべきである。(教科書改善WG)
  • 検定意見については、指摘事由をできるだけ具体的に記述することや、意見通知時に詳しく説明するなど、意見の意図が発行者に正確に伝わるようにしていただきたい。
  •                  (教科書協会)
  • 現在では検定意見は公開されており、公開の取組みは増してきているが、それでもなお検定意見の形成過程には不透明さが残る。 (検定手続きWG)
  • より良い教科書の編集・作成のためには、検定意見の伝達に当たって、調査官と発行者とのコミュニケーションについて工夫し、やりとりの中で改善に向けて反映させていくことができれば良いのではないか。  (検定手続きWG)
  • 現在は、検定意見書が発行者に渡され、補足説明の必要があればその場で発行者が質問し、調査官もその場で応じなければならないという状況から、どうしても十分に質疑応答ができないという指摘があったと思う。このため、事前に検定意見書を発行者へ渡し、内容を確認してもらった後に補足説明の場で質疑応答するという形がよいのではないか。         (検定手続きWG)
  • 検定意見の趣旨を正しく理解してもらうために、事前に検定意見書を渡し、口頭での補足説明がより充実するようにすべきである。(検定手続きWG)
  • 調査審議において特別な手続きを行った場合については、発行者に対する説明の仕方などについて検討が必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 現行制度をより丁寧にしていくことは必要である。反論書や意見申立書という正式な手続きに至る前に、検定意見の趣旨を発行者に対し調査官からしっかり説明することは重要である。その際、主要なものについては文書で伝えることも考えられるのではないか。(検定手続きWG)
  • 本審議会は行政処分を行う審議会であり、検定基準に照らして教科書記述にふさわしくない場合に検定意見を付すという方法をとっている。文書できめ細かい伝え方をするということになると、どうしても慎重な記述にならざるを得ない。文書によって検定意見の趣旨を伝えるには限界があるのではないか。(検定手続きWG)
  • 国会においても委員や調査官の選定のあり方について問題が指摘されたことについて、検討の視野に入れるべきである。(検定手続きWG)
<国会での指摘>
衆議院・文部科学委員会(平成19年10月24日)(抜粋)

○西委員
 例えば、調査官から教科書会社に対する通知というのですか、これなども、表面上は一言、短い文章ですが、具体的なサジェスチョンはまた口頭であるような感じも受けておりまして、個々の問題に対してきちっとした透明性、公開性、これをできるだけ確保するようにお願いをいたしたいと思っております。

○検定結果の公開のあり方

(申請図書の公開)
第17条 文部科学大臣は、検定審査終了後、別に定めるところにより、申請図書を公開することができる。
【教科用図書検定規則】

第5 申請図書の公開(規則第17条関係)
1 申請図書は、検定審査終了後初等中等教育局教科書課長の指定する場所と日時において閲覧することができる。                       【教科用図書検定規則実施細則】
※ 平成元年に教科用図書検定規則を改正。
<現状>
  • 平成2年度の検定に係る図書について、検定結果終了後(平成3年度)に、全教科の申請図書、見本本を公開。現在は、申請図書、見本本に加え、検定意見書、修正表などを公開(全国8会場)。
  • 教科書展示会場において、全教科の見本本の他、小・中・高等学校の歴史分野の検定意見書、修正表を展示(全国約840箇所)。
  • 小・中・高等学校の歴史分野の検定意見書、修正表については、ホームページでも公表。
<検討課題>
  1. 現在、検定結果終了後に実施している検定結果の公開については、申請図書、検定意見書、修正表、見本本などを公開資料としているが、この公開資料の更なる充実について、どう考えるか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
  • 国民の信頼を確保するために議事を公開していくという観点から考えると、現在公開資料としていない、例えば、教科書発行者から提出された合否についての反論書や検定意見に対する意見申立書などにかかるプロセスについても、公開していく方法が考えられる。(再掲:検定手続きWG)
  • 検定結果の公開の更なる充実として、反論書や意見申立書を公表していくという意見があるが、どのように検定意見が形成されたのかというプロセスを示すという意味からも、これらに加えて、教科書調査官が作成している検定意見書の原案である調査意見書も公表する必要がある。(検定手続きWG)
  • 仮に調査意見書を公表したとしても、検定意見は審議会において検討して付すものであるので、調査意見書をどの教科書調査官が作成したのかというところまでは公表する必要はないと考える。また、審議会の場で誰がどのような意見を出したのかまで公表する必要はないと考えるので、検定意見への意思形成がある程度わかるように議論をまとめたものを公表するのがよい。(再掲:検定手続きWG)
  • 検定審査の過程の透明性を向上するためには、検定終了後に様々な情報を公開する必要がある。審議途中で公表すると外部からの圧力が考えられ、静ひつな環境を確保できない可能性がある。例えば、審議会に提出される資料のうち、現在は公開していない、検定意見書の原案である調査意見書も公開する必要がある。(再掲:検定手続きWG)

○供給済教科書の訂正内容の公開のあり方

(検定済図書の訂正の手続)
第14条
3 前条第1項若しくは第2項の承認を受けた者又は同条第3項の訂正を 行った者は、その図書の供給が既に完了しているときは、速やかに当該 訂正の内容を、その図書を現に使用している学校の校長に通知しなけれ ばならない。
【教科用図書検定規則】

第3 検定済図書の訂正(規則第14条関係)
(4) 訂正内容の通知
 訂正の承認を受けた発行者又は届出により訂正を行った発行者は、図書の供給が既に完了しているときは、速やかに訂正の内容を、その図書を現に使用している学校の校長並びに当該学校を所管する教育委員会及び当該学校の存する都道府県の教育委員会に通知するとともに、訂正内容のうち誤記、誤植、脱字又は誤った事実の記載に係るものについては、この通知に加え、インターネットの利用その他適切な方法による訂正内容の周知に努めなければならない。
【教科用図書検定規則実施細則】

※ 当該図書を使用している校長等への訂正通知に加え、インターネットの利用等によっても誤記、誤植等の訂正内容の周知を行うよう、平成14年に教科用図書検定規則実施細則を改正し、同年10月から実施(発行者による努力義務規定)。

<検討課題>
  1. 現在、供給済図書の訂正内容の公開については、当該図書を使用している校長等への訂正通知に加え、各発行者においては、インターネットの利用その他適切な方法による訂正内容の周知に努めなければならないことを規定しいる。このような周知の方法について、どう考えるか。

2.専門的見地からのきめ細やかな審議の確保

○検定の審議にあたって特に慎重な判断を要する事項についての審議のあり方

○専門委員等の活用のあり方

(組織)
第1条
2 審議会に、特別の事項を調査審議させるため必要があるときは、臨時 委員を置くことができる。
3 審議会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員 を置くことができる。
【教科用図書検定調査審議会令】

 ※ 審議会等の整理合理化に関する基本計画(平成11年4月27日閣議決定)を受け、それまでの「調査員(検定申請のあった教科用図書の原稿を調査)」、「専門調査員(専門の事項を調査)」から、「専門委員(専門の事項を調査)」へ審議会令を改正。

<過去の事例>
  • 平成18年度検定高等学校日本史教科書の沖縄における集団自決に関する訂正申請を受け、日本史小委員会において、専門的見地から慎重かつ丁寧に調査審議を行った。また、専門家から文書により意見を聴取(9人:沖縄戦、沖縄史、軍事史等の専門家)。
  • 平成12年度検定中学校歴史教科書に関して、中国、韓国からの修正要求に対し、専門家の意見を聴取(18人:教科書審議会第2部会歴史小委員会のうち修正要求事項に関連する委員、及び外部の歴史学者)。
  • 平成12年度検定中学校歴史教科書に関して、中国、韓国からの修正要求に対し、意見聴取した外部の専門家数名を臨時委員として発令。
<検討課題>
  1. 昨年の日本史教科書の沖縄戦に係る訂正申請に対しては、専門家から意見聴取を行ったり、「基本的な考え方」を整理し、それを審議のよりどころにしたりするなどの対応を行った。通常の検定において、すべての審議について、今後、検定の作業量も勘案しながら、メリハリのある専門的できめ細やかな審議を行うにはどのような方途が考えられるか。
  2. 特に慎重な判断を要する事項や専門的な審議が必要な事項における専門委員の活用を始めとする審査手続きの整備について、どう考えるか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
○ 検定の審議にあたって特に慎重な判断を要する事項についての審議のあり方

  • 教科書検定における審議については、学術的な事項と誤記・誤植などの技術的な事項を分け、審議にメリハリをつけるべきである。 (検定手続きWG)
  • 検定意見の中で特に専門的な審議を要する事項をピックアップして審議することは必要である。科目の性格に応じて観点が異なるだろうが、過去の事例や経験を参考にしながら、部会ごとに事項を洗い出していけばよいのではないか。(検定手続きWG)
  • 議事の公開と関連するが、何を重点的に審議するかは部会ごとに状況が違うと考えられるので、抽象的な共通の基準を作成し、それを基に部会毎に判断するのが一般的ではないか。(検定手続きWG)
  • 例えば審議に先立ち、何を重点的に議論するかについて委員間で意志の確認を行うなどによって、メリハリのきいた審議を行う方策が必要である。(検定手続きWG)
  • 部会・小委員会ごとに専門的見地や視点も異なるので、具体的な事項については全体としては決めず、部会ごとにあらかじめ慎重な手続きをとる必要がある事項等を決めておく方法がよいと考える。(検定手続きWG)
  • 「特に判断を要する事項」については、必要に応じ審議会の委員の他に複数の専門家の意見を聴取するなど、特段の配慮が必要である。(再掲:教科書協会)
  • 例えば特定事項に対する専門委員の活用のあり方に改善の余地がある。(検定手続きWG)
  • 児童・生徒の発達段階や教育現場の状況に鑑みた「教育的配慮」という観点から、学校現場の経験豊かな人材の活用が望まれる。(教科書協会、全国高等学校PTA連合会)
<国会での指摘>
参議院・本会議(平成19年10月5日)(抜粋)
○福島みずほ君
 教科書検定について質問をします。
 沖縄の集団自決への軍の命令、強制について削除するという教科書検定について撤回すべきだと考えますが、いかがですか。また、集団自決について、軍の命令と強制があったことについて、未来を生きる子供たちに伝えるべきと考えますが、いかがですか。また、沖縄近現代史の専門家を検定審議会に入れるべきと考えますが、いかがですか。

○内閣総理大臣(福田康夫君)
 沖縄の集団自決に関し、検定意見の撤回、子供たちへの伝え方、審議会委員の人選についてお尋ねがございました。
 沖縄戦が住民を巻き込んだ悲惨な戦いであり、多くの人々が犠牲になったということを私はこれからも学校教育において子供たちにしっかりと教えていかなければならないと思います。
 ただ、教科書検定は審議会における専門的な審議を経て実施されることになっております。沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については、知事を始め沖縄県民の思いを重く受け止め、文部科学省において審議の方法も含めしっかりと検討いたしております。
衆議院・決算行政監視委員会(平成19年10月12日)(抜粋)
○横光委員
 皆さん、お聞きになったと思います。本当に、沖縄の歴史が変えられようとする審議会の中に沖縄戦の専門家がいなかったということなんです。私は、正直言って、信じられない思いです。

○渡海国務大臣
 横光議員の質問に率直にお答えをいたしました。今回そのようなヒアリングは行っていないというふうにもお答えさせていただきましたが、従来からそういった証言等を学術的に、そして専門的に研究をした結果としてあのような判断を下したというふうに思っております。

○横光委員  学術的に、専門的に全然研究していないじゃないですか、専門家もいないのに。よく言えますね。そのことが。どこに専門的に研究したんですか。専門家、いないじゃないですか。しかも、一番聞くべき人たちには聞いていない。無視している。そして、大きな転換を図ろうとしている。大変なことだと思います。
衆議院・文部科学委員会(平成19年10月24日)(抜粋)
○西委員
 現在、審議会の透明性の確保や情報公開、さらに沖縄条項の設置なども検討課題となっているふうに聞いておりますが、あわせて制度上の問題を見直すということを提案したいと思います。
 例えば、調査意見書にかかわる専門家の意見の聴取を、先ほどのように歴史認識にかかわる大きな変更の場合には義務づける、それから、変更の根拠となった資料等をきちっと添付する、それから議論となっているテーマの周知などが少なくとも必要ではないかというふうに私自身は考えておりますが、このことについて御意見を賜りたいと思います。

○金森政府参考人
 ただいま御指摘いただきました、例えば調査意見書に関する専門家の意見の聴取の義務づけでございますとか、変更の根拠となった資料の添付、審議会での専門家の議論の確保につきましては、教科書検定における専門性を向上させるための一つの御提案と受けとめているところでございます。
 また、議論となっているテーマの周知につきましては、教科書検定における審議の公開性を向上させるための一つの御提案として受けとめているところでございます。審議の公開性の向上につきましては、これまでも、従来口頭で行っていた検定意見の通知を平成12年には検定意見書による通知で実施することに変更したり、また、平成13年には、検定結果の公開資料に検定意見書や修正表を追加するといった取り組みをしてきたところでございます。
 今後とも、専門的な見地からの学問的な正確性を確保いたしますとともに、審議の公開性の向上と静ひつな環境の確保についてバランスのとれた審議を行って参りますよう努めてまいりたいと存じます。
参議院・文教科学委員会(平成19年10月30日)(抜粋)
○谷岡郁子君
 そうしますと、二回目、約五時間にわたる会議、三百分、このうちには十分のトイレ休憩も含んでいるわけですけれども、この中で審議が行われた。二百八十余項目の訂正について意見が闘わされたというふうに聞いております。これ、読み上げる時間も含めて一項目当たり一分以内外という大変短いところでございます。これを審議をあげなきゃいけないということになりますと、なかなかあだやおろそかでは意見を言いにくいというような環境がここに生まれてしまうのではないかというふうに考えます。
 しかも、私は様々な方々からそれが実際にどのように行われたかということを聞きまして、五時間余にわたる長い会議の中で、もちろんお疲れの方、少し腰を伸ばされたい方、また生理的な欲求というものがあるというようなことで席をお立ちになる方が審議の続行中にたくさんあるということを聞いています。言わば緊張感を欠いていた、しかも全員、出席委員が必ずしもチェックをした形ですべての項目が決まっていないということが明らかになっております。もちろん、沖縄戦については意見も何も出なかったということがこれまでも言われてきました。これで公正中立な慎重な審議が獲得されているお考えに大臣はなるのでしょうか。
 そして、政治介入をすべきではないというお話はよく分かりますけれども、それならば、四月以来、沖縄の方々がここまで悲痛な行為をされてきたということに対しては、審議会自身が本当に公正で慎重な審議が行われたかどうかということを自らチェックするということが当事者としての責任ではないかというふうに私は考えます。このプロセスと結論というものをちゃんとチェックされていない、審議会は一度も三月以来開かれていないということを感じます。これでは、幾ら公正中立な審議会に任せたといっても、審議会自身が当事者意識がないところで放置しておいていいのか。公開の議事録もない、そして非公開であるという審議の在り方、こういうものを考え直すときに来ているのではないかというふうに考えます。
 以上、これが公正で中立と言えるのか、そしてこの当事者意識のなさということを放置してよいのか、そして審議の在り方を考え直すべきときではないかといことについてまずお尋ねいたしたいと思います。


○政府参考人(金森越哉君)
 少し経緯も含めまして御説明を申し上げたいと存じます。
 教科書検定は、教科用図書検定調査審議会の専門的、学術的な調査審議に基づいて公正中立に実施しているものでございまして、今回の検定も同審議会における所定の手続きに基づいて行われたものと承知をいたしております。
 具体的に申し上げますと、今回の検定におきましては、それぞれの申請図書について、教科書調査官からの調査意見書の指摘箇所につきまして個々に説明をし、委員に審議を求めるという方法で調査審議を行いました。
 沖縄の集団自決に係る指摘箇所につきましては委員から特段の異論はなかったわけでございますけれども、この各分野の専門家である委員で構成される教科用図書検定調査審議会は学術的、専門的な立場から調査意見書を参考に申請図書の記述について検定意見を付すかどうかの判定を行うものでございまして、調査意見書のとおりに意見が付される場合もあれば、そうでない場合もございます。
 今回の検定におきましては、集団自決に係る記述に対する検定意見は教科書調査官の作成した調査意見書と同じ内容になってございますけれども、これは、審議会の各委員の専門的、学術的な知見に基づき調査審議した結果、調査意見書と同じ内容の検定意見を付すことが適当であると判断されたものと理解をいたしております。

○国務大臣(渡海紀三朗君)
 項目によっては非常に長く掛けた部分もあるし、それから、まあこれは問題ないねということでさっと行ったと、それは一つ一つ承知していないわけでございますが、今も局長から説明しましたような経緯であります。
 私は、基本的に審議会委員の先生方から、これじゃ時間が短いとかもう少し時間がないとできないとか、そういう声は出ているのかということはしっかりと確かめていただきました、先生のこの質問もいただいて。そういう意見は今のところ実は出ていませんという報告もいただいております。

3.静ひつな環境における公正・中立な審議の確保

○審議過程における情報管理のあり方

第5 申請図書の公開(規則第17条関係)
 2 申請者は、申請図書の検定審査が終了するまでは、当該申請図書並びに当該申請図書の審査に関し文部科学大臣に提出した文書及び文部科学大臣から通知された文書について、その内容が当該申請者以外の者の知るところとならないよう適切に管理しなければならない。
【教科用図書検定規則実施細則】

 ※ 平成12年の検定過程において、申請図書(白表紙本)が事前に流出したことを受け、「申請図書の情報管理」について、平成14年に教科用図書検定規則実施細則を改正。

(議事)
第3条
3 会長は、調査審議に支障があると認めるときは、調査審議の一時停止 その他必要な措置を講ずることができる。
【教科用図書検定調査審議会運営規則】

 ※ 平成12年の検定過程において、申請図書(白表紙本)が事前に流出したことを受け、「調査審議の一時停止その他必要な措置」を講ずることができるよう、平成15年に教科用図書検定調査審議会運営規則を改正。

<検討課題>
  • 「審議過程における情報管理のあり方」について、申請内容等の情報が漏洩した場合や審議の内容が対外的に伝わってしまった場合に、本審議会としてどのような対応をとるべきか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
○ 審議過程における情報管理のあり方

  • 採択する立場からは、どの教科書についても検定を経たということで信頼性が確保されていることが重要。また、審議中は審議会が十分に審議できる静ひつな環境が確保されるべきである。
  • (検定手続きWG)
  • どのような形で審議における静ひつな環境を確保していくかについては、しっかり議論したい。(検定手続きWG)
  • 透明性の確保と静ひつな環境の確保については、相反する面があり、そのバランスが重要である。(再掲:検定手続きWG)
  • 静ひつな環境の確保が必要であることをどう理解してもらうのかが重要であると考える。静ひつな環境の確保は透明度を下げるということではない。(検定手続きWG)
  • 発行者サイドから情報が流れた場合には何らかの「制裁」を加えることも考えてよいのではないか。(検定手続きWG)
  • 申請図書等の情報管理に関し、どのような対応を求めるかについては、教科書会社、執筆者、審議会委員によって分けて考える必要がある。
  •                       (検定手続きWG)
  • 関係者の情報管理については、細心の注意を必要とする。(全国市町村教育委員会連合会)
  • 教科書検定においては、検定決定に至るまでの静ひつな環境が保持され、公正・中立な審議が確保されなければならない。検定決定までは、発行者(執筆者を含む)をはじめ検定にかかわる者がそれぞれの立場で、審議内容に関して守秘義務を有することは当然である。(教科書協会)
  • 情報管理については、制度の面から言えば、審議会の委員には守秘義務がある。また、教科書会社と執筆者については仮に情報が出てしまった場合、資料3にあるとおり、審議の一時停止措置という一種の不利益を与える制度的な担保が既にあり、制度としては十分措置されていると考えられる。(検定手続きWG)
  • 審議の一時停止措置については、教科用図書検定調査審議会運営規則では「支障があると認めるとき」という抽象的な文言で示されており、具体的な手がかりがない。基準が明確でないと実際に適用できないこともあるので、例えば、申請図書等が流出したとき等が具体的なケースとして考えられると思うが、そうした基準を設けて適用しやすくするという方向は望ましいと思われる。(検定手続きWG)
  • 情報管理については、教科用図書検定規則実施細則上は申請図書についてのみ規定されており、訂正申請についての扱いが不明確になっているということであれば、訂正申請に関してもしっかり盛り込むことが重要である。(検定手続きWG)

4.教科書記述の正確性の確保

○正確性の確保を重視した検定手続きのあり方

1.教科書発行者における編集体制について

<過去の事例>
  
  • 「教科書記述の再確認等について(依頼)」平成18年3月課長通知及び平成15年12月課長通知において、各発行者に対し、編集・校正体制の現状と今後の改善・充実方策について報告を依頼。
  • 教科書協会主催による「教科書編集研修会(平成19年7月)」、「教科書ミス防止研修会(平成18年7月)」を開催。

2.著作者名等の提出及び公開について

第1 検定の申請
1 「検定審査申請書」の提出(教科用図書検定規則(平成元年文部省令 第20号。以下「規則」という。)第5条第1項関係)
(3) 添付書類
 申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名、職業などを記載した別紙様式1による「著作編修関係者名簿」1部を添付する。
【教科用図書検定規則実施細則】

※ 平成元年教科用図書検定規則実施細則において、「検定審査申請書」の添付書類として、申請図書の著作編修に関与したすべての者の氏名、職業などを記載した「著作編修関係者名簿」の提出を規定(それ以前は、教科用図書検定規則の実施の細目で規定)。

<現状>
  • 平成17年度の検定結果の公開から、検定審査申請書及びその添付書類などについても公開。ただし、公開期間は1年間のみ。

3.正確性の確保を重視した評点方式について

<現状>
  • 頁当たり検定意見(相当箇所)数方式。

→ 頁当たりの欠陥箇所数の多寡等によって判定を行う方式
なお、以前は、評点方式を採用。
「評点方式」
→ 欠陥の程度に応じた欠陥点を求め、各図書の頁数も加味した観点ごとの評点及び合計点を算出し、それらが基準に満たない場合に不合格 とする方式
 ※ 平成15年教科用図書検定審査要項を改正し、同年の検定から実施。

<検討課題>
  1. 検定意見の多くが正確性の欠陥を指摘するものであり、そのような誤記・誤植の調査審議に多くの時間を割いているというのが現状である。そこで、申請図書の完成度を上げる方策として、「教科書発行者における編集体制のあり方」、「教科書の監修者・著作者・編集者としての自覚を更に高める方策」や「正確性の確保を重視した検定手続きのあり方」等について、どのような改善方策が考えられるか。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
  • 検定済みである以上はどの教科書を採択したとしても、信頼性が確保されている必要がある。誤記・誤植は教科書会社の問題であり、その数を公開してもいいと考える。(検定手続きWG)
  • 教科書発行者は、誤りは許されないという自覚のもとに、教科書の編集を行うことは当然である。(全国市町村教育委員会連合会)
  • 正確性の確保については、技術的な問題もあると思う。例えば、誤記・誤植については、目に余るような記述が申請図書に見受けられる。(検定手続きWG)
  • 正確性に関して、用語の使い方などでも、誤植のレベルなのか、内容の正確性に関わるところなのか、その間にあって切り分けが難しいものもある。
  • 正確性は、何をもって正確かという問題があり、それは教科の特質とも関係がある。例えば、教科書の挿絵の正確性について、審議会委員がどの程度意見を言うのか。(検定手続きWG)
  • 誤植や単純な誤りについても一定数で不合格とするなど、教科書会社側が自ら努力するような、インセンティブの働くシステムづくりが必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 本来であれば、客観的に明白な誤記・誤植の割合が2年連続で一定以上あれば不合格というような厳しい制度も考えられるが、発行者にとって一番ソフトなインセンティブとして、まずやってみるということであれば、客観的に明白な誤記・誤植についての検定意見数を公表する案でよいと思う。(検定手続きWG)
  • 何が明白な誤記・誤植なのかということについては、例えばスペルミスなどがあるだろうが、明確な定義が必要である。定義が明確にできれば、誤記・誤植による検定意見がいくつ付されたのかがわかり、それを発表すれば、発行者に対してある程度ペナルティになるので、インセンティブが働くのではないか。(検定手続きWG)
  • 「客観的に明白な誤記・誤植」についての定義は難しいという意見があったが、検定決定後に客観的に明白な誤記・誤植について公表することを積み重ねていくことで、明確になる部分もあるのではないか。(検定手続きWG)
  • 誤記・誤植が多いという理由だけで教科書を不合格にするのは厳しすぎる措置である。中間点な対応は考えられないのか。例えば、審議前に一度チェックして、誤記・誤植が多い場合は申請を留保し、修正したものを再申請させるということも考えられるのではないか。そうすれば、実質の審議が遅れることにより、発行者に対してインセンティブが働くのではないか。 (検定手続きWG)
  • 例えば、ミスの数に応じて手数料を払うとか、国が編集体制をチェックするとか、それが難しければ教科書会社同士で編集体制のピアレビューを行うとか、編集体制をユーザーにも広く公表するなどの手段も考えられる。(検定手続きWG)
  • 正確性で判断が難しいような記述(例えば、表現が不自然なもの)などは、基準で規制することよりも、自由競争に任せるなど、採択側が望ましい記述ぶりを判断できるようにしてはどうか。(教科書改善WG)
  • 執筆担当者としての責任を自覚してもらうためにも、執筆担当箇者名を明記するなどの手段も考えられる。(検定手続きWG)
  • 監修者を置いている教科書発行者が多いが、この監修者の役割をもっと明確にすべきであるし、誤記・誤植に関しても関わるようにすべきである。(合同WG)
  • 校正の体制ができていない発行者も多い。例えば基本的な編集体制を義務づけることも必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 編集体制の基準を作成して、それを各発行者に遵守してもらうということも考えられるのはではないか。(検定手続きWG)
  • 編集体制の透明性と検定手続きの透明性は連動して位置付けられるのではないか。今後、編集体制の透明性を求めていくということになれば、監修者の責任やそれぞれの編集体制のあり方について公開し、ユーザーに公表していくということも必要なことではないか。(検定手続きWG)
  • これまでも、正確性の確保については審議会として教科書会社に求めてきたが、改善されていない状況にある。教科書の持つ社会的責任の大きさを考えれば、審議会としては教科書会社に編集体制等の強化を要求し、場合によっては、何らかの制度的措置を講ずる必要もあるのではないか。 (検定手続きWG)

5.その他の改善方策

○文部科学大臣と審議会との関係

<現在の法令上の規定>
学校教育法第34条
 小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。 2. 前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。 3. 第1項の検定の申請に係る教科用図書に関し調査審議させるための審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。以下同じ。)については、政令で定める。
  
学校教育法施行令第41条
法第34条第3項(法第49条、第62条、第70条第1項及び第82条において準用する場合を含む。)に規定する審議会等は、教科用図書検定調査審議会とする。
   
文部科学省組織令第87条
 教科用図書検定調査審議会は、学校教育法の規定に基づきその権限に属させられた事項を処理する。 2 前項に定めるもののほか、教科用図書検定調査審議会に関し必要な事項については、教科用図書検定調査審議会令(昭和25年政令第140号)の定めるところによる。
    
教科用図書検定規則第7条
 文部科学大臣は、申請図書について、検定の決定又は検定審査不合格の決定を行い、その旨を申請者に通知するものとする。ただし、必要な修正を行った後に再度申請を行うことが適当である場合には、決定を留保して検定意見を申請者に通知するものとする。
<従前の法令上の規定>
文部省組織令第70条
 法律の規定により置かれる審議会等のほか、本省に次の表の上欄に掲げる審議会を置き、これらの審議会の所掌事務は、それぞれ同表の下欄に掲げるとおりとする。

教科用図書検定調査
審議会
文部大臣の諮問に応じて、検定申請の教科用図書を調査し、及び教科用図書に関する重要事項を調査審議し、並びにこれらに関し必要と認める事項を文部大臣に建議すること
教科用図書検定規則第7条
 文部大臣は、申請図書について、教科用として適切であるかどうかを教科用図書検定調査審議会(以下「検定審議会」という。)に諮問し、その答申に基づいて、検定の決定又は検定審査不合格の決定を行い、その旨を申請者に通知するものとする。ただし、必要な修正を行った後に再度審査を行うことが適当であると検定審議会が認める場合には、決定を留保して検定意見を申請者に通知するものとする。
<改正の経緯>
  • 「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」(平成11年4月27日閣議決定)における「審議会等の設置に関する指針」において、審議会の審議事項は、法律又は政令において必ず審議することが定められているもの等に限ることと整理されたところである。
  • 平成12年10月の中央省庁再編に伴う審議会関係の規定の整備の際に、文部省組織令や教科用図書検定規則で明記されていた「諮問」及び「答申」を削除したところであるが、これは政省令で定められていた関係規定が削除されても、「検定の申請に係る教科用図書に関し調査審議する」旨の学校教育法第21条第3項の規定により、大臣の諮問・審議会からの答申という従来からの手続きが、制度的に予定されているので、政省令の「諮問」及び「答申」の文言が不要であると判断し、整理されたことによるものである。  なお、この改正により、教科書検定の手続きにおいて、文部科学大臣と検定審議会との関係が変更されたものではなく、文部科学大臣の諮問に応じ、教科用図書検定調査審議会が申請図書について調査審議し、答申が行われているところである。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
  • 文部科学大臣と本審議会との権限関係を明確にし、外から見てもわかりやすくするという観点から省令上明記した方がよいのではないか。(検定手続きWG)
  • 諮問・答申の手続きについては、中央省庁再編の際に審議会の役割の整理ということで全省庁横並びで整理されたものと思うが、大臣と審議会の関係について、文部科学省が独自に省令で手当をするということはできるのか。(検定手続きWG)

○審議会委員と教科書調査官の役割や選任について

<現状>
  • 審議会委員の選任については、各年度において検定が実施される学校種なども勘案しつつ、各専門分野ごとのバランスにも配慮しながら、学識、経験に優れた候補者の中から文部科学大臣が任命する。
  • 教科書調査官は、検定の審査において、事務局として申請図書の調査に当たり、調査意見書をはじめ必要な資料を作成することとされている。なお、その選任については、国家公務員法及び人事院規則に基づき、競争試験ではなく選考基準に基づき、選考により採用を行っている。
<WG及びヒアリング等における主な意見>
  • 審議会委員の在り方として、教科書調査官が作成した検定意見の原案の考え方を踏まえつつも委員が自らの知見により独自に判断し、検定意見を決定するという姿勢が必要ではないか。
  •                (合同WG)
  • 審議会と調査官の役割関係について、調査官は職務上検定意見書の原案を作る立場であることは理解しているが、その原案に対して審議会委員が自由に議論できるようになっているのか。審議会が独立して機能し、また独立性が担保されていることが重要である。審議会委員の選任についても、このような視点が必要ではないか。(検定手続きWG)
  • 審議会委員については、専門分野などのバランスを見ながら選任されていると思う。選ばれた委員は、専門を問わず申請された図書を全て読んだ上で審議会に臨み、その場で、調査官が作成した調査意見書について、それぞれの立場から自由に指摘をし、議論を経て検定意見書がまとめられている。審議会委員の選任は現状のとおりで問題はないと感じている。(検定手続きWG)
  • 審議の場では、教員の立場から意見を求められることがあるので、審議会委員には、実際に教科書を使う立場の者が入ることは必要である。(検定手続きWG)
  • 児童・生徒の発達段階や教育現場の状況に鑑みた「教育的配慮」という観点から、学校現場の経験豊かな人材の活用が望まれる。(再掲:教科書協会、全国高等学校PTA連合会)
  • 外部からの指摘を見ていると、審議会の委員がどのように選ばれたかについても関心が高いように思われる。(再掲:検定手続きWG)
  • 国会においても委員や調査官の選定のあり方について問題が指摘されたことについて、検討の視野に入れるべきである。(再掲:検定手続きWG)
  • 学歴や年齢、用語など、定めた当時の制度などが背景にあるので、今日的な状況に照らしてどうか、という視点から具体的に改めた方がよい。                                 (検定手続きWG)
  • 委員の分属を公開することはもちろん、検定に携わった教科書調査官の氏名や経歴も公表すべきである。学習指導要領の解説書では、作成協力者だけでなく担当の教科調査官の名前も入っている。(再掲:検定手続きWG)
  • 検定審査における調査官の役割は大きいので、透明性向上の観点から、氏名や職歴等の情報は公表した方がよいと考える。(検定手続きWG)
  • 現在審査要項で示されている教科書調査官の権限や職務内容を、省令レベルで規定して明確にすることはいいことだと思うが、他の審議会との横並びを考えずにできるのか、精査した方がよい。(検定手続きWG)
  • 教科書調査官の役割について省令等に明記するのはいいことである。審議会の審議にどんな教科書調査官が関わったのか明確にすべきと考えるが、それも教科書調査官の役割を明確にするということにつながっている。基本的に、「顔の見える検定」というものをイメージしているので、教科書調査官がどんな人であるのか、知ることができるようにした方がよい。(検定手続きWG)
  • 調査官の役割については、教科用図書検定審査要項に具体的に明記されているが、審査要項は審議会決定という内部規程であり、組織法令上の根拠としては若干弱いところがある。文部科学省組織規則等で規則できるかについては法制的に議論があると思うが、可能であればきっちり位置づけた方がよい。(検定手続きWG)
<国会での指摘>
参議院・文教科学委員会(平成19年10月30日)(抜粋)

○谷岡郁子君
 公正で中立な検定のためには、やはり幅広いバックグラウンドを持った人が当然必要になるかと思われるのに、なぜこのような状態が放置されているのか。変わるべきとは思われませんか、大臣、お答え願いたいと思います。

○国務大臣(渡海紀三朗君)
 教科書調査官は学術的、また専門的な審査をしていただくということでありますから、選考においては、それぞれの専門的な学問成果に関しその学識を有することや、視野が広く、初等中等教育に関し理解と見識を有することなどの能力の適性を総合的に判断して、公正適切に教科書用図書の調査を行えるかどうかという観点から慎重に人物評価を行っておるわけでございます。
 隔たりなく多様なバックグラウンドを持った人材から任用すべきとの議員の御指摘については、例えば複数の候補から選考を行うように努めるなど、能力、適性を総合的に判断をして職責に見合った人材が選考されるように取り組んでいきたいというふうに考えております。
 ただ、これは随分我々も議論をうちの内部でもいたしました。公募というような方法が本当になじむかどうかですね。というのは、なかなか、教科書調査官というのはある専門性を有してなければできない仕事であります。高度に学術的な知識、能力も必要であり、総合的にまた人物を見極めること、こういうこともありますから、必ずしも公募により難いというふうな面もございまして今のところ公募ということは考えていないわけでありますが、先ほど申し上げましたように、よりバランスのある、隔たりのない人選ということを今後努めてまいりたいというふうに思っております。
参議院・文教科学委員会(平成19年10月30日)(抜粋)

○亀井郁夫君
 次に、教科用図書検定調査審議会との関係についてお尋ねしたいと思いますが、特にこの教科用図書検定調査審議会というのは中立だということで大臣も大事にしておられますけれども、実は沖縄の問題について大集会が行われて、そこから沖縄県知事も大臣のところに陳情に来られたというふうなことで、非常に大臣も大事に考えておられるわけでありますが、これについては、教科用図書検定調査審議会に任せるんだというようなことをよく言われているけれども、そういう点についてはどのように考えられますか。これが変更するとすれば、これ委員の選任は文科省が選んだ委員ですから、そうすると選任の仕方がいろいろ問題があるんだと思いますけれども、これについてはどう考えられますか。

○国務大臣(渡海紀三朗君)
 そして、今回、委員の件についてお尋ねがございました。今回の検定に当たりましても、先ほど申し上げましたような趣旨にのっとって審議が行われたわけでございますがお尋ねの委員の件に関しましては、日本史の教科書検定、これにおける委員というのは古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をされておりまして、審議会においてはその知見を生かした専門的、学術的な調査、審議がなされておるというふうに理解をしておりまして、この委員の選任に問題があったというふうには考えておりません。

○亀井郁夫君
 せっかく検定について、これ委員会の委員の方で修正するよといって修正させて、再度それを直すというのは、やはり委員に、委員の中立性がいろいろ問題があるんじゃないかと思いますね。

○政府参考人(金森越哉君)
 教科用図書検定調査審議会の委員の選任についてお答えを申し上げます。
 現在この審議会では、社会科に関する学識経験を有する者を含めて、正委員、臨時委員合わせて百二十六名が任命されているところでございますが、教科用図書検定調査審議会の委員につきましては、各年度において検定が実施される学校種なども勘案しつつ、各専門分野ごとのバランスにも配慮しながら、学識経験に優れた候補者の中から文部科学大臣が任命しているところでございます。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課