平成14年度教科用図書検定調査審議会(第1回) 議事録

1.日時

平成14年4月9日(火曜日)14時~16時

2.場所

霞が関東京會舘ロイヤルルーム

3.議題

  1. 平成13年度教科書検定の実施状況・審議結果等について
  2. 教科書制度の見直しについて(ヒアリング)

4.出席者

委員

内藤喜之 審議会会長
第一部会(国語) 
梶木剛、鈴木斌、戸川芳郎、飛田良文
第二部会(社会) 
尾田幸雄、門村浩、神谷傳造、島村高嘉、杉本良男、中川了滋、長沼秀世、沼田哲、村木逸子、山田卓生
第三部会(算数・数学) 
菅野俊子、杉﨑洋一郎、田口政雄、西沢清子、和田秀男
第四部会(理科) 
吾妻完一、伊理武男、岩崎不二子、大井みさほ、大野照文、川崎明未、中村洋、森川靖、横井洋太
第五部会(音楽) 
蛭多令子、長沢功一、茂手木潔子
第六部会(図工・美術・書道) 
佐野光一、関出、馬渕明子
第七部会(外国語) 
井出祥子、笠原順路、高橋裕子、田辺洋二、村田年
第八部会(図工・美術・書道) 
浅見裕、岡本民夫、落合和彦、甲田充彦、栗原敏、和田清美
第九部会(家庭・情報・職業) 
安藤英義、犬塚傳也、上田堯夫、大泊巌、大橋博行、尾登誠一、片岡昭雄、片山倫子、木村耕、小澤紀美子、佐藤修、武市正人、武田恭明、谷坂隆俊、内藤喜之、林英輔、前田研一、山本康弘、山根隆一郎
第十部会(生活) 
大野照文

文部科学省

矢野初等中等教育局長、玉井大臣官房審議官、大槻教科書課長、舟橋教科書企画官、その他関係官

5.議事録

○会長から開会が告げられ、議事に先立ち、矢野初等中等教育局長から次のとおり挨拶があった。

 教科用図書検定調査審議会総会の開催にあたりまして、一言ご挨拶を申し上げます。先生方には日頃より教科書検定の実施に多大なご協力をいただいておりますことに改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。平成13年度の検定につきましては、早い教科では昨年の4月から審議会を開催いたしまして、熱心にご審議をいただきました。おかげを持ちまして全ての審議を無事終了することができました。今回の検定では高等学校の主として低学年で使用される教科書について審議をしていただいたわけでございますけれども、情報や福祉という新しい教科が設置されますとともに、各教科の中にも新しい科目が多数創設されました教育課程の初めての検定ということで大変なご負担をおかけしたことと存じます。今回ご審議いただいた図書につきましては、8月までに各教育委員会等において採択事務が進められ、平成15年度からの新しい高等学校の教育課程の実施に併せて使用されることになるわけでございます。新しい教育課程に対応した教科書の準備が整ったことにつきまして、これも偏に先生方のご尽力の賜でございます。厚く御礼を申し上げる次第でございます。
 さて、新年度は高等学校の主として中学年用の教科書についてご審議をいただくわけでございますが、併せて去る2月18日の本審議会総会でご検討をお願いいたしました、教科書制度の見直しについてもご議論をいただきたいと考えております。この教科書制度の見直しにつきましては、現在各部会等におきまして平成15年度からの新学習指導要領に基づく教科書の二巡目の検定・採択に向けて、検定・採択の双方についてどのような改善が可能であるか先生方に専門的な見地からご議論をいただいているところでございますけれども、本日も関係団体からご意見をいただくことになっております。この制度の見直しにつきましては、本審議会のご議論を踏まえまして、平成15年度検定の申請図書の編集作業に支障のないように、遅くとも本年夏頃までには結果をおとりまとめいただきまして、必要に応じて検定基準の改正等所要の措置を講じてまいりたいと考えているところでございます。
 先生方におかれましては、高等学校の教科書の検定審査を行いながら、併せてこの制度の見直しについてご議論をいただくことになり、一層のご負担をおかけすることになるわけでございますけれども、何卒ご指導ご協力を賜りますようお願いを申し上げましてご挨拶に代えさせていただきます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

○事務局から配布資料の確認があった。

○会長から、部会に属すべき委員、臨時委員について、配布資料1の教科用図書検定調査審議会委員名簿のとおり指名する旨の発言があった。

1.平成13年度教科書検定の実施状況・審議結果等について

○平成13年度の各部会における審議経過等について、各部会長又は部会長代理から次のとおり報告があった。

(第1部会)

 平成13年度は、審議会を6回開催いたしました。申請された高等学校の図書30点について調査・審議いたしました。高等学校用の図書30点の内訳は、国語総合が20点、国語表現(1)が7点、古典講読が3点でございました。審議会においてこれらについて慎重に審議しましたところ、多くの欠陥が目につきました。新学習指導要領の改訂点であります言語活動の教材が十分でないものが非常に多くございました。小中の方は既に準備が整っておったのでありましょうが、高等学校の方はこういう新しい観点に慣れなかったとみえまして、例えば、国語総合の20点の内11点が、こういう言語活動をまとめた教材として出ていないという状況がございました。障害者等に対する配慮が不足した記述の教材もございました。それから学習が成立しそうもないような設問、あまりにも特殊な説に基づいた設問もございました。その他文の係り受けがねじれているもの、記述に相互矛盾のあるもの、注の誤り、表記の誤りなどずいぶんたくさんの欠陥が見られました。このため国語総合20点、国語表現(1)7点、古典講読3点の30点全てについて合否の判定を保留して必要な修正を求めました。その後、修正された内容について再度審議いたしまして、その結果全てを合格と判定しました。以上でございます。

(第2部会)

 平成13年度は、部会・小委員会を併せて相当数の会合を開きましたが、地理歴史科34点、公民科28点、計62点に関して審議を行いました。内訳に関しましては、資料2に各教科毎の点数がありますのでご参照ください。いずれの図書に関しましても、昨年秋の段階では全て合否の判定を留保いたしまして、修正を求め、今年2月、3月にかけまして修正結果を再審査の上、全点に関しまして合格という判定を下しました。全体といたしまして、学習指導要領の改訂に伴う趣旨を必ずしも適切に反映していない申請図書も多々見受けられましたが、いずれも欠陥は検定により修正され、合格という結論に至りました。若干各教科について申し上げますと、日本史及び世界史は主題学習という問題に関しまして、若干の申請図書で学習指導要領に定めた取扱い上の問題点の不備がございましたが、これらは検定により適切に修正されました。また、歴史的事実に関する問題は、相当多数の不正確な記述、あるいは誤解のおそれがある表現等もございましたが、これに関しましても適切に修正されたと思います。なお日本史Bに関しまして、特に欠陥の多い申請図書がございましたが、これに関しましては、相当多数の欠陥箇所について修正を求め、いずれも最終的には修正が適切にされて検定合格に至りました。地理に関しましては、これも指導要領改訂の趣旨を必ずしも反映していない箇所が相当数見られました。したがって、いずれの申請図書も検定意見の数、修正の量に関しては膨大なものがございましたが、いずれもそれらの欠陥は適切に修正されたと思います。更に地図に関しましては、若干の不正確な表現が見られましたが、これらも修正されました。更に現代社会に関しましては、日本が直面する諸問題、例えば環境倫理、国際貢献、地球規模の環境問題等について不正確な記述や一面的な見解も見られましたが、検定によって適正な記述・扱いになったと思います。更に倫理につきましては、生命倫理の問題など、現代における様々な倫理的課題に関する記述に関して、その取扱いの公正さや適正さ、また正確性に若干の欠陥がありましたが、これらも最終的には検定によって適切に修正されたと思います。最後に政治・経済ですけれども、政治、法律、経済についての現状分析に関し必ずしも客観的とは言い難い記述や不正確な叙述が認められましたが、これらも検定によって修正されたと考えております。以上で第2部会の報告を終わります。

(第3部会)

 平成13年度は、審議会を10回開催いたしました。新指導要領に基づく高等学校数学の数学基礎の申請図書5点につきましては、審議会を1回開催し、審議の結果全てを合否留保とし、続く修正表に関する審議会では必要な修正が行われた箇所を再度審査し、全て合格と判定いたしました。更に新指導要領に基づく数学(1)と数学Aの申請図書各20点につきましては、審議会をそれぞれ3回開催し、全て合否留保とし、続く修正表に関する各種目の審議会では、必要な修正が行われた箇所を再度審査し、全て合格と判定いたしました。新科目である数学基礎につきましては、身近な事例を取り上げるなど工夫は良いのですが、その取扱いが理論的な考察に深入りするなど、科目の趣旨に添わないものになっているものが一部見られました。数学(1)・Aどちらの科目におきましても、今回学習指導要領が小・中学校で大きく改訂された結果による変更があるにもかかわらず、つい従来通りの記述を行ってしまった結果、学習指導要領の内容の記述が不足していたもの、学習指導要領の範囲を超えてしまったもの、学習指導要領に照らして扱いが不適切なもの、未習の用語について説明がなく学習上の支障が生ずるおそれがあるものや、最近見られるようになった数学の表現として正確性を欠くものが見られましたが、全体からみれば、そのような箇所は多くはございませんでした。なお彩色等につきましては、小・中学校の教科書同様、色刷り頁が増加しており、その結果、ポイント等がよりはっきりする等の効果を上げております。全体として今回指導要領の改訂の趣旨が生かされていると判断されます。以上でございます。

(第4部会)

 平成13年度におきましては、高等学校理科の必履修科目の申請図書、全部で61点を2つのグループに分けて審査いたしました。第1のグループにつきましては、物理(1)が9点、化学(1)が12点、生物(1)が12点、地学(1)が5点の計38点でありました。それぞれの小委員会における調査意見書の審議に基づきまして、部会での審議を行い、生物(1)の3点を不合格とすること、それ以外の35点を合否判定留保とすることの決定を行いました。不合格の3点につきましては、他の図書に比べて検定意見の総数が非常に多く、検定基準の範囲及び程度に関する意見の割合が高いという特徴がありました。続きまして、第1のグループで留保となりました図書についての修正表の審議につきましても、同様に各小委員会での審議に基づいて部会審議を行いまして、先の35点全点を合格といたしました。なお不合格としました生物(1)の3点につきましては、いずれも反論書が提出されましたが、これにつきましても、殆どの事項につきましては、反論は認められないとの結論を出し、最終的に不合格の決定がなされました。次に第2のグループにつきましては、今回の学習指導要領の改訂で新たに設けられた3つの種目、いわゆる新3種目に属するものであります。これらは、理科基礎が4点、理科総合Aが10点、理科総合Bが9点の計23点であります。これらについても、それぞれ3つの小委員会における調査意見書の審議に基づきまして部会での審議を行い、23点全点を合否判定留保といたしました。続きまして第2のグループの修正表の審議につきましては、特に理科総合A及び理科総合Bの調査意見書の審議過程に鑑みまして、当初から部会で審議するのが相当であると考えられましたので、もう一つの理科基礎も含めまして計4回の部会で修正表の審議を行い、全点を合格といたしました。理科全体を見まして言えることは、第1のグループにつきましては、物理、化学、生物、地学の(2)、いわゆる(2)の種目の学習内容であることが明白であるにもかかわらず、(1)の種目に記述されていて、学習指導要領の範囲外で不必要とされた事項が目立ちました。また、第2のグループ新3種目の方につきましては、学習指導要領に規定されている学習の展開の仕方、例えば具体的な課題を選んで研究させる、あるいは人間と環境の関わりを扱うなどが、具体的に生かされていないために扱いが不適切との意見を付された記述が目立ったという特徴がございます。以上簡単でございますが第4部会からの報告とさせていただきます。

(第5部会)

 第5部会では、審議会を平成13年度3回開催いたしまして、音楽(1)6点の申請図書について審議いたしました。6点とも学習指導要領改訂の趣旨を反映し、幅広い地域やジャンルを対象とした教材の多様化の傾向が見られるとともに、各社が特色をより一層明確に打ち出したものとなったと思われます。全面的に大幅な改訂が行われましたので、新たな教材や記述の箇所が多く様々な欠陥も見受けられました。また、当部会におきましては、小・中学校に引き続き出典一覧表の提出を求めておりますが、引用、記載に当たっての根拠や楽曲の改変等の表示方法等について欠陥が見受けられました。教材の信頼性をより一層高める観点から、この点につきましては、今後も継続して改善を図っていく必要があると考えております。いずれの申請図書にも修正を要する箇所がありましたので、合否の判定を留保し、必要な修正を求めました。そして修正された内容について再度審議した結果、6点すべてを合格と判定いたしました。以上でございます。

(第6部会)

 平成13年度美術、工芸につきましては、高校美術(1)において3社5点、工芸(1)において1社1点、合計6点の教科用図書が申請されてまいりました。10月に審議会を開催し、新学習指導要領を踏まえ、慎重に審議いたしました結果、本文の内容及び図版の扱い・選択等に不適切な箇所、また正確性を欠く記述が多く見受けられました。よって全6点について合否の判定を留保し、欠陥個所を検定意見として申請者に伝え修正を求めました。うち1社は、美術(1)2点につきましては、修正表提出期限までに修正表が提出されず、2月に開催いたしました修正表の審議会を経て検定規則第10条の3項により不合格といたしました。なお、この2点の図書につきましては、旧学習指導要領下における検定済みの現行図書と全く同一で、新学習指導要領において新たに加えられた領域、映像メディア表現についての記述がなく、修正を求めたものであります。その他の美術(1)3点、工芸(1)1点については、修正された内容を再度審議いたしました結果、4点とも合格と判定いたしました。書道につきましては、高校書道(1)7点が申請されました。慎重に審議を行いました結果、図書の内容に不適切な図版、正確性を欠く記述等が見られ、また一部には学習指導要領に照らして不必要な教材も見受けられましたため、全7点について合否の判定を留保し、必要な修正を求めました。修正された内容を再度審議いたしました結果、全点を合格と判定いたしました。

(第7部会)

 平成13年度は申請図書の審議会を10回開催いたしまして、高等学校英語(1)36冊、オーラル・コミュニケーション(1)19冊、計55冊について審議いたしました。その結果、英語(1)では、1冊を不合格といたしまして、残り35冊については修正が必要であるとの審議結果をえました。また、オーラル・コミュニケーション(1)では、19冊すべてについて修正が必要であるとの審議結果をえました。英語(1)で検定不合格の審議結果に至った図書は、全体を通しまして誤記・誤植が極めて多く、また、記述内容においても不正確であったり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げているという箇所があるなどの欠陥に加えて、指導要領に照らして必要な教材を扱っていない等の欠陥も指摘されました。図書内容に修正が必要であるため合否を留保した54冊の図書につきましては、検定意見を通知し、修正表の提出を求めました。その後、1月から2月に検定意見に従った修正内容を審議する審議会を開催し、54冊全てについて修正内容が適切であると認めましたので、すべてを合格と判定いたしました。今回の検定は、新しい学習指導要領と検定基準に基づく高校英語(1)及びオーラル・コミュニケ-ション(1)の初めての検定でありまして、学習指導要領改訂の主旨が適切に図書内容に反映されているかについても慎重に検討いたしました。その結果、今回の改訂の主要な変更点であります言語の使用場面と働きについて、その扱いが不十分な図書が多くあったほか、語いの制限を超えるものや、言語活動の扱いが不十分であるものなどもありまして、学習指導要領改訂の主旨が必ずしも十分理解されているとは思えないケースが少なからず見受けられました。ご報告は以上でございます。

(第8部会)

 平成13年度は、保健体育小委員会を2回、看護・福祉小委員会を3回、部会を1回開催をいたしました。まず、保健体育小委員会の審議状況についてでございますが、本年度は5点の申請があり、慎重に審議し、全ての申請本について合否の判定を留保し、修正を促した上、再度審査した結果、全て合格といたしました。今回の申請図書の特徴は、一巡目ではありましたが、概ね学習指導要領の理解はできていたようですが、一部に学習指導要領の理解が不十分なところ、あるいは誤解して解釈しているところ、一方的な解釈で記述がなされているところがありました。まず、保健では今回の学習指導要領の改訂の重要な学習課題であるヘルスプロモーションの考え方を生かし、人々の適切な生活行動を選択し実践することの記述が不適切なもの、あるいはこれを取り上げていないものがありました。さらに、飲酒・喫煙に関する適切な意志決定の行動選択が必要であることについても取り上げていないものがありました。申請本の調査中に心肺蘇生法の指針の改訂がございまして、これにつきましては、修正表で対応できるものについては、関連修正で対応しました。体育では、専門的な用語を配慮なく使っている箇所、一面的な見解や不適切な記述、定義の誤りなどの欠陥が数多くみられました。また、ユニークな図表を工夫したものがございましたが、内容的な誤りがありました。更に、各単元の導入部に問いの形式を入れて、生徒の関心を引くような工夫がみられた申請本もありましたが、内容的に本文との関連性がとらえられていなかったり、問の内容自体に誤りがあったものがございました。次に、看護・福祉の小委員会ですが、新設教科の福祉の科目に関しては、社会福祉基礎が3点、基礎介護が1点の申請がありました。これについて3回審議会を開き、慎重に審査をし、全て留保とし、修正を促した上で再度審議した結果、4点全て合格の判定といたしました。初めての検定でございましたので、まず、用語や概念の整理をいたしました。概念が整理されていない用語の使用につきましては、説明をした上で、同一の申請本では同一の用語を使うものといたしました。いずれの申請本につきましても学習指導要領に照らして取扱いが不適切な箇所がございました。まず、社会福祉基礎ですけれども、学習指導要領に示す福祉に関する民間活動の記述が少なく、全く記述のない申請本もありました。社会福祉分野の現状と課題では、高齢者・障害者福祉の各分野の制度が成立した社会的背景についての記述がいずれも不足しておりました。また、高齢者福祉制度につきましては、近年、制度の枠組みに大きな変化があったためか、サービスの在り方や名称について大分混乱がみられたようでございます。基礎介護につきましてですが、学習指導要領の理解が出来ておらず、取り扱いが不適切なところ、あるいは誤解を招く表現、不正確な記述等々が数多くありました。特に、高齢者の生活と介護では、医学的な理解が不十分で介護として理解しておくべき内容の整理ができておりませんでした。以上でございます。

(第9部会)

 平成13年度は、審議会を50回、うち部会1回、小委員会49回を開催いたしまして、検定申請のあった41種目112点について審議を行いました。この部会は、家庭、工業、商業、農業、水産および情報の6つの小委員会がそれぞれ担当する種目の審査を行うことになっておりまして、合否の判定も各小委員会で行うということにしております。最初に全体の共通事項を申し上げますと、いずれも1回目の審議におきましては合否の判定を留保いたしまして、その後、修正された内容について再度審議した結果、全てを合格ということにいたしております。以下各小委員会におきます審議状況を順次ご報告申し上げます。家庭小委員会では、10回委員会を開催いたしまして、高等学校普通教科の3種目19点、専門教科の2種目3点の合わせて5種目22点の申請図書の審議を行いました。今回の学習指導要領の改訂により、内容に大きな変更のございました普通教科種目の家庭基礎と専門教科種目のフードデザインにつきましては、内容の扱いに関して不適切な箇所が多くみられたということでございます。また普通教科種目の家庭総合には、表記・表現及び正確性の観点に照らしまして、大変多くの欠陥個所がみられる完成度の低い図書がございました。次に工業小委員会は、10回開催いたしまして、高等学校工業科の17種目27点について審議を行いました。全体に範囲・程度に関する欠陥は少なかったものの、学習指導要領に示す内容の範囲に含まれないものを取り上げている図書が見受けられました。また、多くの図書で、図と本文の相互の関係が不適切であったり、あるいは誤りや不正確な記述、用語の不統一といった欠陥が認められました。次に商業小委員会は5回開催いたしまして、ビジネス基礎、英語実務、簿記の3種目7点の審議を行いました。全体に範囲及び程度に関する意見は少なかったものの、選択・扱い及び組織・分量につきましては、学習する上で支障を生ずるおそれがある箇所、あるいは図書の内容の組織が不適切な箇所などが見受けられました。また、正確性及び表記・表現につきましては、誤り、不正確な記述、表記が不統一な箇所、理解し難い図などが多く見受けられました。農業小委員会は6回開催し、申請のございました5種目9点について審議を行いました。申請図書のうち、今回新たに設けられた種目につきましては、目標の観点からはずれた内容の扱いがみられたり、学習指導要領に示す内容が取り上げられていないなど、大きな欠陥が認められました。また多くの図書で、図と本文の相互の関係が不適切な箇所、誤りや不正確な記述など比較的多くの欠陥が認められました。水産小委員会では、水産基礎の1点につきまして、小委員会を2回開催いたしました。申請のございました図書には、学習指導要領に示す内容の1つが取り上げられていなかったほか、図と本文の相互の関係が不適切な箇所がみられました。また、記述の正確性及び表記・表現の観点からも比較的多くの欠陥が認められました。情報小委員会は計16回開催いたしまして、高等学校の普通教科情報の図書3種目31点、専門教育の情報関連図書7種目15点の合計10種目46点につきまして審議を行いました。普通教科情報及び専門教育情報科の図書につきましては、新しく設置された教科・科目の図書でありますことから、完成度について当初懸念がございましたけれども、実際に審査に当たってみますと、完成度が高いという印象がございました。いずれの図書も範囲・程度や内容の選択・扱いについては大きな欠陥は見あたりませんでしたけれども、正確性・表記・表現について比較的多くの欠陥が認められました。以上でございます。

○会長
 どうもありがとうございました。第1部会から第9部会まで部会報告が全部済んだわけですけども、これまでの報告に対しまして、何かご質問等ございましたら承わりたいと思いますが、特にございませんですか。非常に沢山の量の申請本を克明にご審議いただきまして、最初はかなり指導要領から外れたとこもあるとういう発言が多かったわけですが、だんだんこちらから指摘をすると直ってくると、第一回目は少し軽く考えてるんでしょうか。最終的には立派なものになるのでそれでいいわけですが、今後は第一回目も少し力を入れて欲しいというふうにした方が、審査の方が少し楽になるんではないかと思いました。

○事務局から、配付資料2に基づき、平成13年度教科用図書検定結果の公表について説明があった。

○事務局から、配付資料3に基づき、平成14年度審議予定について説明があった。

2.教科書制度の見直しについて(ヒアリング)

○会長
 教科書制度の見直しについて関係団体よりヒアリングを行いたいと考え、本日3つの団体より代表者にお越しいただいております。3団体の外、いくつかの関係団体からも書面にてご意見をいただいております。お手元の配付資料の4がそれでございます。最初に全国都道府県教育委員会連合会から、教科書制度見直しについてご意見を賜りたいと思います。それではよろしくお願いします。

(全国都道府県教育委員会連合会)

 全国都道府県教育委員会の連合会を代表いたしまして、皆様のこの審議会の席で教科書制度のあり方について意見表明の機会を与えていただきましたことをまず御礼を申し上げたいと存じます。教科書制度につきましては、教科書の編集・検定・採択といったことに関わりまして、これまでもいろんな課題が指摘されてきております。私どもといたしましては、次回の教科書採択までには何点か改善した方が良いと思われる点がございますので、その点につきましてお手元の資料に基づき意見を発表させていただきたいと存じます。内容といたしましては、これも資料にございますように、大きく二点、一つは教科書検定の見直し、もう一点は教科書採択の改善といったことでございます。まず最初の教科書検定の見直しでありますが、資料に書かせていただいておりますけれども、我が国の教科書検定制度、昭和22年に制定された学校教育法に基づきまして、著作者・編集者の創意工夫を生かしながら教育水準の維持向上、教育の機会均等の保障、適正な教育内容の維持、教育の中立性の確保といったことを実現することを目的として実施されておりまして、この制度の果たす役割は今後益々重要になってくると認識いたしております。そこで意見でございますが、これは二つございまして、まず一つは、教科書に発展的な学習内容の記述を許容する方向で検定基準を見直していただきたいというものであります。申すまでもなく学習指導要領の今回の改訂は、ゆとりの中で自ら学び、自ら考える力といったことで、生きる力の育成を基本として教育内容の厳選、基礎・基本の徹底を図ること、一人一人の個性を生かすための教育を推進することなどを基本的なねらいとして行われたものでございます。それはそれで好ましいわけでありますが、しかし、こうした中で一人一人の個性に応じて子供の力をより伸ばす方策として、理解の進んでいる子供に対しては、発展的な学習で力をより伸ばすということが求められるわけでございますので、恐らく今後各学校におきましては、発展的な学習や習熟の程度に応じた学習などが行われる。そうした学習のための教科書が求められることになるんではないかということが考えられるところであります。しかし、現行の検定制度では、教科用図書検定基準におきまして、学習指導要領に示す事項を不足なく取り上げ、不必要なものは取り上げていないことが条件として示されておりまして、学習指導要領をこえる内容については、教科書への記載は認められていないところであります。そこで、学習指導要領の範囲を超えた内容の記載が可能となる方向で、教科用図書検定基準の見直しを進めていただきたい。これが意見の一つ目でございます。なお、今後教科書にそれぞれの発行者の創意工夫によります、学習指導要領を超えた事項を記載することが仮に可能となるといった場合には、次の三点に留意する必要があるんではないかと思っております。一つは学習指導要領を超えた内容については、それが発展的な内容であるということが、明確に区別できるように工夫するということであります。二としては、発行者間の過剰な競争によって、より高度な内容やあるいはより多くの内容へとエスカレートしていかないよう、何らかの基準を設けるということが必要である。三としまして、知識・理解に偏った学力感に立つような内容・構成とならないようにするといったこの三点でございます。なおこの他に、高校入試や大学入試の問題内容が、より高度なより細かな知識を問う傾向とならないように留意すべきであるということについても申し添えさせていただきたいと存じます。
 次に、教科書の公正でバランスのとれた記述の在り方に関する意見でございます。教科書の作成に当たりましては、児童生徒の発達段階に応じて、客観的かつ公正な資料を用いることが重要でございます。また多面的、多角的に考察し、公正に判断する能力を養うということができるような、バランスのとれた内容となることが求められておるわけでございます。現在、教科書の内容につきましては、教科用図書検定基準におきまして、政治や宗教の扱いは公正であり、特定の政党や宗派またはその主義や信条に偏っていたり、それらを批判していたりすることはないこと、特定の事項、事象、分野等に偏ることなく全体として調和がとれていること、特定の事柄を特別に強調し過ぎたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりすることはないことなどの点に条件が付されております。これは我が国の教科書検定制度の目的といたしております、教育の中立性の確保、適正な教育内容の維持等に関わることでございまして、これまでも国民から支持されてきたところでございます。これからも教科書の記述内容につきましては、一般的に広く受容される公正な内容でありますとともに、児童生徒の既習の知識や理解力、判断力等に即したものとすることが肝要であると考えております。今後、教科書の中に異なった意見を取り上げたり、発展的な内容を取り扱ったりする場合が生じてくると思われますが、その際もこの点につきまして留意をいただけたらというふうにお願いをしたいと存じます。
 次に、教科書採択の改善についてでございます。教科書採択の権限はその学校を設置しております都道府県あるいは市町村の教育委員会にございますが、今後採択に際しての調査研究の充実や手続きの明確化について検討する必要があると考えております。こうした点から、ここでも二つの点について意見を述べさせていただきたいと思います。まず、調査研究の充実を図っていただきたいということでございます。見本の部数を増やしていただく、あるいは十分な調査研究期間を確保していただくといった内容であります。各市町村の教育委員会におきましては、地域の子供達に最も相応しい教科書を採択するというために十分な調査研究を行う必要がございます。教育委員会が自らの権限と責任において教科書を採択するためには、各市町村教育委員会に全発行者の見本が送付されなければならないわけであります。また今後、採択地区の小規模化に伴いまして、各採択地区の調査員によります、調査研究のための見本の必要部数も増加いたします。更に教科書に対する保護者や地域住民の関心は、非常に高いものがございまして、都道府県におきましては、教科書センターの拡充に努めることも必要であります。そのため現在の一万部という小・中学校用の教科書の見本の部数を大幅に増やす必要があるんではないかというふうに考えております。また、各発行者作成の教科書編集趣意書につきましては、本年度インターネットによりホームページからダウンロードできることとなっておりまして、大きな改善が図られたところでございます。更に、一層この点について教科書編集趣意書の内容が採択権者、あるいは保護者等に活用されるよう簡潔明瞭で充実したものにしていただけたらと思っております。なお十分な調査研究期間の確保でございますが、教科書の見本の送付期日を早めたり、あるいは採択の期限を現在の8月15日以降に設定するなどの措置につきましても検討していただけたらと存じます。以上の点を改善するために法改正等を含めた検討を是非お願いをいたしたいと思っております。次に、手続きの一層の明確化についてのお願いでございます。今後の教科書採択につきましては、三つの課題があるのではないかと思っております。一つは採択地区協議会とそれを構成する各市町村教育委員会との関係でございます。法的には義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律によりまして、市もしくは郡の区域又はこれらの区域をあわせた地域を採択地区として設定して、区域内の市町村が協議して種目毎に同一の教科書を採択することとなっております。今後も採択地区協議会と採択権者である各市町村教育委員会の関係から、採択を巡っての問題が生じることが考えられますが、各教育委員長等が、採択地区協議会に臨む際に、事前に教育委員会としての意思決定をする、それを踏まえて参加するなど各採択地区協議会におきまして採択の手続きを明確化していく必要があると思っております。また地方分権の推進に伴いまして、教育行政におきましても市町村教育委員会が主体的に判断する、積極的な施策展開が求められておりますことから、採択権者である市町村教育委員会の意向を教科書の採択結果により一層反映させることができますよう、今後更なる採択地区の小規模化に向けまして、法改正等含めた検討が望まれるところであります。次に、公正かつ適正な教科書採択の確保ということでございます。発行者や各種団体等の外部からの働きかけによります公正な採択への影響が懸念されますため、採択に関します会議につきましては、多くの市町村教育委員会では非公開としておりますが、外部からの様々な圧力に影響されることなく、公正かつ適正な教科書採択を確保しつつ、採択手続きの透明性を高めていくことが、今後の検討課題ではないかということでございます。
 次に、都道府県立高等学校等の教科書採択に係る手続きでありますが、都道府県立の高等学校等の教科書の採択につきましては、都道府県教育委員会が行うものであります。採択の手続きにつきましては、法的に明確な規定はございませんが、都道府県立高等学校等の全ての教科書を教育委員会が短期間であらゆる事項に渡って詳細に検討することは物理的にも困難でありますことから、現状では各学校での選定に基づき採択している都道府県が多いという実状になっております。外部への説明責任を果たすためにも、学科の特色とか生徒の実態等に即しまして、各学校が一層厳密に適切な教科書を選定する方策につきまして、検討していただけたらというふうに考えております。以上、全国都道府県教育委員会連合会としての意見を述べさせていただきました。よろしく検討をいただけたらというふうに思っております。ありがとうございました。

○会長
 どうもありがとうございました。ただ今、全国都道府県教育委員会連合会の理事の方から種々のご意見をいただきました。ただ今ございましたご意見もしくは説明に対し、何かご質問等ございますでしょうか。
なければ次の方に移らせていただきたいと思います。次に、全国市町村教育委員会連合会の方からご意見をお伺いさせていただきたいと思います。それではよろしくお願いします。

(全国市町村教育委員会連合会)

 今日はわざわざお呼びいただきましてありがとうございました。皆さんご存じと思いますが、全国の市町村は約3,200ございます。そこから意見を個々に求めることは困難でございましたので、各都道府県にお願いいたしました。短期間でしたので47都道府県のうち30都道府県から回答をいただきました。それを要約して説明申し上げたいと思います。まず、教科書検定の見直しでございます。意見としては二つございます。一つは、教科書に発展的な学習内容の記述を許容する方向での検定基準の見直し、これについての考えでございます。新学習指導要領では皆さんご存じのように完全学校週五日制、授業の削減という事情もございます。30パーセント削減と、大幅に削減されるわけですが、結局新しい教科書の内容も学習指導要領に定められた内容の範囲とされ、児童生徒の生きる力を育成するための基礎的・基本的な内容に厳選されております。また、より分かりやすく丁寧な教科書として文章表現が非常に少ない、写真、挿し絵とか図表やカラー化が非常に目立っております。学習内容の削減は一目瞭然でございますが、個人的には、文章が少なすぎる、これがひとつの学力の関係にも影響を与えるのではないかと懸念しております。4月から完全学校週五日制の実施という教育条件の中で、児童生徒に真の学力を保障することができるのか、学力低下を懸念する声が高まってきました。文部科学省からは学びのすすめと題する確かな学力向上のためのアピールが出されました。各学校では今悩んでいることが三点ございます。児童生徒の学習意欲を高め、学力の向上を図るためにまず宿題や課題を推奨するなど、そういう学ぶ習慣作りこれが一つ、それからできる子、これを更に伸ばすためには発展学習や習熟度別授業の導入これが一つ、それから放課後の補習など学力対策に取り組むこと、これが第三点として対応が現在求められているところです。また学習指導要領では学習すべき最低基準として、今までそれをこえる内容は認められなかった教科書でございますけれど、発展的な学習内容も盛り込めるように検定基準を見直す方針を示されました。これは習熟度別授業などの充実を目指したものであって、一人一人の個性に応じて子供の力をより伸ばすという、個に応じた授業の充実を期したものと考えております。
 以上るる申しましたが、以上のことから、本連合会としては、教科書に発展的な学習内容の記述を許容する方向の検定基準の見直しについて異論はございません。しかし、次の五点について配慮して欲しいと思います。一つは、発展的な学習内容のガイドランを一応国で示す必要があるんではないか、発展的な内容は何でも良いといって無制限にやられたら困るということです。それから二点目は、発展的な学習内容を何処まで広げるのか、その上限は今申し上げたように非常に難しい。過度の負担にならないような方向性を出して欲しい。三点目は、過去の詰め込み教育や受験競争に繋がることのないように配慮して欲しい。四点目は、基礎的・基本的内容の定着に支障のないようにするとともに、発展的な学習内容は明確に一応区別して記述した方がいいのではないか。表現が非常に難しいと思いますが、何らかの形で限度をある程度示す必要があるんではないか。五点目は、発展的な学習内容は学び方の方法や参考資料を記述し、学習意欲を高め、児童生徒が主体的に学べるようにするということです。これは課題を自ら発見して、個々に検討して研究していくという方向性はそこで学べるんではないか、こういう気がします。以上のように具体的な意見もありましたので、検討をお願いしたいと思います。
 それから、二点目ですが、教科書の公正でバランスのとれた記述の在り方、この二点目につきましては、検定基準、これは現在は検定審査の基本方針である総則、各教科共通、そして各教科固有の条件の三つから成り立っています。それぞれの条件は範囲及び程度、選択・扱い及び組織・分量これはどうなっているか、それから正確性及び表記・表現はどうかという、三つの観点から示されております。まず第一ですが、教科書における公正やバランスの確保、これはこの検定基準の遵守につきるわけです。前に示した検定基準を遵守していただければ、教科書は公正やバランスの確保については心配ないと思っております。しかし、教科書検定が行われる度に公正やバランスの問題が出てくるわけでございまして、特に社会科の歴史教科書においては、その内容や記述に多くの意見が向けられておりまして、一つの歴史的事実をどう見るかという歴史観についてそれぞれ意見の分かれることもあり、時代の流れとともに変化することもまた事実です。学習指導要領では、広い視野に立って多面的・多角的に考察し、国際社会に生きる民主的、平和的な国家・社会の形成者を育成することが書かれており、この視点に立てばどこまで許容できるかということが分かると思います。公正な歴史的見方や認識については、一面的な見解に偏ることなく、広い視野に立って多面的に考察していくことが大切だと思います。これが一点目で、二点目は政治や宗教の扱いは当然公正であり、特定の主義、主張、信条に偏らないことは言うまでもありません。この度問題になった近隣アジア諸国との間の近現代史の歴史的事象の扱いについては、国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がなされなければならないことは当然でございます。これが今述べた要望でございますが、教科書が児童生徒の主たる教材であることを改めて認識し、一面的な見解に偏らず正確で公正な内容で発達段階に即したものであること強く要望いたします。二点ございます。一つは正確で公正な内容、もう一つは子供達の発達段階に即したもの、この二点を注意していただきたいと思っております。
 次に、教科書採択の改善について申し上げます。この教科書採択の改善についても二点ございます。調査研究の充実ということです。これについては教科書が採択されるまでの一連の流れ、これはご存じだと思いますが、教科書検定が3月末に一応終了して、5月に検定に合格した教科書が全国の各教育委員会に送られまして、各教育委員会はこの見本を基に8月中旬までに教科書を採択して8月末に報告する、こういうことになっているわけです。5月から8月中旬までというと約3ヶ月半くらいの間に決めなくてはならない。各教育委員会が教科書を採択しなければならないのはこの期間でございます。教科書の内容を検討する期間は実質3ヶ月、今申し上げた3ヶ月程度しかないわけです。このような限られた期間の中で、果たして十分な調査研究が行われているのかどうかその辺が心配になるところです。要望としては、第一点、本連合会としては教科書採択のスケジュールを見直し、十分な調査研究期間を確保できるような改善を強く要望いたします。調査研究期間を確保できるように改善して欲しい、これが一点。それから、また各教育委員会に送付される見本の部数の上限でございますけど、小・中学校用は教科書1種については1万部とされていまして、全国の教育委員数を調べますと約1万7千人います。そうすると1万部しか送付できないわけですから、当然全員に行き渡りません。各教育委員会が設置する教科書展示会に展示される教科書は、限られた部数で形式的な公開展示という声も聞かれます。本件に関する各市町村教育委員会連合会からの具体的な意見をまとめますと、三点ございます。一点目は十分な調査研究をするために、少なくとも教育委員の人数以上の見本を確保できるようにして欲しい。二点目は十分な調査研究期間を確保するために、見本の送付時期を早めて欲しい。三点目は教科書展示場には十分な調査研究ができるだけの見本の部数、それから展示の期間が確保できるようにして欲しい。因みに、埼玉県の場合には、この展示会場が全県で22会場ございます。22会場で90市町村ありますから、90市町村が22会場の何処かへ行くことになります。こういう意見が、教科書採択について一層改善されるように要望として出ております。
 それから、二点目に移ります。採択手続きの一層の明確化。市町村立小中学校で使用する教科書採択の権限は、ご存じのように市町村教育委員会にあります。多くの地域でこの共同採択が行われております。採択地区は全国で500余り、1県平均12地区、1地区の平均構成は2ないし3市郡になっています。因みに、埼玉県の場合は、全県を10地区に分けています。このような中、今回の教科書採択である、採択地区協議会がいったん決めた教科書を採択地区内の市町村教育委員会が不採用にするという事態が生じました。ご存じのとおりだと思いますが、この場合の細則不備というか、そうなった時どうするかというような問題、それについてはあまり手続き等については、まだないというか、非常に不明確なところが多いわけです。また、共同採択には様々な課題もあり、次のような意見がございました。これは全部の都道府県ということではございません。1、2県程度そういう意見がございましたということで、ちょっと述べます。最初の第一点は、現在3市郡程度で採択地区ができています。構成されている採択地区を地区の実状を考慮して見直すことが必要ではないか、もう少し小さくしてもいいのではないかとこういう意見でございます。それから、二点目は共同採択の地区では、教科書採択の調査研究は共同で行います。採択は各教育委員会で行うのが現実的ではないか、だからいわゆる調査研究は共同でやるが、採択は各教育委員会で行うのが現実的ではないか、そうした方が混乱はないということ、そういう意見です。それから三点目、採択地区協議会と市町村教育委員会の意見が先ほど話しましたように異なった場合の対応は、現行法令に則り必要な規則や申し合わせ事項を整えた方がいいのではないか、そういう方がうまくいくだろうと思います。最終的には教育委員会が決めるということになりますから。以上共同採択に限らず、採択の経過や教育委員会の検討の概要など採択に至るまでの手順、方法等が十分明らかにされていないと言われています。教科書採択全般に透明性を高める声が大きくなっている今日、保護者や国民により開かれた採択に向かうのは必然の流れ、そういうふうに思います。教育委員が住民の代表として教育行政に責任を負っていることを考えれば、調査研究に基づいて慎重に審議し、必要に応じて審議経過等を公開し、採択手続きを一層明確にしていくことが必要と考えます。場合によっては、あるいは秘密会も必要かもしれません。ということを含めまして申し上げます。以上です。

○会長
 どうもありがとうございました。ただ今のご説明に関連いたしまして、ご意見とかご質問とかございますでしょうか。

○委員
 大変見識の高い内容のことをお書きいただいたんですけど、一点お伺いします。最初の頁の所ですが、検定基準の見直しについて異論はございませんという書き方をしていただいてるのですが、全国都道府県教育委員会連合会さんからは、この見直しを早急に進めていただきたいとやや踏み込んだ書き方でされてますので、これは格調が高いという意味で異論がないということは、おやりになられればというポジティブな内容として受け止めさせていただいてよろしゅうございますか。それともやりたいならやりなさいというニュアンスなのか、ちょっと気になりましたので、失礼な事お聞きしますがお伺いできればと思います。

(全国市町村教育委員会連合会)

 これは検定基準については、見直す方向で進めていただきたいという意味です。具体的な問題になってくると、またいろいろ問題があるかもしれません。それで配慮して欲しいというのがそこに書いてある以下の五点です。

○会長
 他にございませんですか。それでは時間もまいりましたので質疑応答はこのあたりで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 続きまして、社団法人教科書協会の方から教科書制度の見直し等ご意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

(社団法人教科書協会)

 どうぞよろしくお願いいたします。過日教科書制度の見直しにつきましてご質問いただき、今日私どもの返事を申し上げるわけでございますけれども、私どもはご承知のとおり教科書の発行者でございますので、教科書の企画編集また製作発行という面から眺めております。そういう面で少し見解が違うかもしれませんが、そういう立場でご覧いただきたいというふうに思います。まず、お手元の資料の10頁目でございます。ここでは簡単に書いておりますので、少し補足しながら話をしていきたいと思います。私どもの発行者は50社以上あるわけですけれども、今回全ての発行者の意見を聞くという時間的な余裕がございませんでしたので、主だった社から委員を出しまして、その委員の意見をまとめたというところでございますので、その点もご承知おきいただきたいと思います。
 一の見直しの内容についてでございますけれども、学習指導要領は最低基準であるとの立場から、教科書検定において発展的な学習内容の記述を許容することは望ましい。また、学習指導要領に必ずしも明記していないものであっても、主たる学習内容との関連性について、発達段階等も踏まえて柔軟に認めていただきたい。これは学習指導要領が最低基準であるということから、やはり現場においてもそれ以上の内容を授業で取り上げたいという気持ちが強いだろうと、ですから、それに対しまして教科書でもそれに応えたいとい気持ちが一つあります。それから二つ目に、指導要領に明記していないものであっても、児童生徒の理解をより深めたり、また興味関心に応じて伸ばしていくような内容は、取り上げたいという希望があります。今回の検定では、不必要であるというような意見がついたようでございますけども、その辺りのことを言っているわけでございます。二でございます。発展的な学習の内容が、学習指導要領に示されていない事項、学習指導要領を超える内容を想定していると思われますが、どのようなものをお考えでしょうか。これは私ども今回どのようなものを考えたらいいかということで、的が絞れないという状況でございます。例えば、具体例を示していただきたいと思います。ここでは、これまでと違ってどのような内容が許容されるのか、各教科で具体例をある程度示していただきたい。我々としては、義務教育の教科書でございますので、各社でバラツキが大きくなってもいけないと考えております。そういう面で具体例をお願いしたいということでございます。三、検定基準を見直すことによりまして発展的な学習内容の対応が図られると考えております。これは検定基準の第2章各教科共通の条件、第3章各教科固有の条件との条文でしばりを外すということによりまして、発展的な学習内容への対応は図られるのではないかということで、是非見直しを図っていただきたいということでございます。四、学習指導要領の各教科の内容の取扱いのしばりを緩和することによりまして、発展的な学習内容への対応が図られると思っております。これにつきましては、学習指導要領の各教科の内容の取扱い、しばりと言っておりますけれども、これがこれまでのスタンスと同じであれば、発展的な学習を取り上げる余地がほとんどないわけですから是非一部見直し、或いは運用上の緩和を図っていただきたいとお願いしたいところでございます。五、発展的な学習内容の取り上げ方や分量を示すべきである。この発展的な学習内容につきましては、コラム的な扱いではなく、本文でも扱えるようにすれば効果があるんではなかろうかと、いずれにしましても取り上げ方、本文、コラム、資料など明確にしていただきたいと思っているところでございます。以上が発展的な学習内容についての私どもの意見要望でございます。六番目、七番目はスケジュールに関する事柄でございます。六、17年度用のことでございますけども、小学校用は既に編集作業は始まっておりまして、告示の時期を早めていただきたい。場合によっては、検定期間の短縮をお願いしたいと考えるところでございます。これはもう既にこの夏まで取りまとめということでございますけれども、来年の春の小学校用の検定提出を考えますと、特に検定基準の見直しの告示を早くしていただきたい。特に小学校の教科書というのは写真とかイラストとか図版とか製作に時間がかかるという事情でございますので、急いでいる状況でございます。七、発展的な学習内容に限らず、検定に際しては同一教科並びに教科(種目)間での検定意見が異ならないように調整を図っていただきたい。これにつきましては、今回の検定でも学習指導要領の解釈によりまして、同一教科でやはりちょっとバラツキがあると、不公平感を招いているというところがございます。また、小中同一科目、教科また種目についても同様のことが言えるということが言われております。そういうことで七番目の意見を出させていただいております。八、九は質問事項でございます。八、発展的な学習内容は新たな時間数が必要であると考えております。その時間数をどのように考えておられるのでしょうかということでございます。発展的な学習を取り入れることは、何処でその時間を確保できるのかが問題となるということでございます。あくまで教科内の時間で扱うのか、教科内のゆとりの時間、宿題、補習の時間なども念頭にあるのでしょうか。またあるいは総合的な学習の時間、また中学校では選択教科の時間で扱うのか、その基本的なところをお示しいただきたいということでございます。九、発展的な学習内容を取り入れる教科につきましては、教科的には国語、算数、数学、理科、英語などとすることが可能でしょうか。これはあえて私どもが絞っているわけですけども、本来は、原則的には全教科対象であると思っておりますけれども、特に今申し上げました教科については学力低下が危惧されておりますので、その辺りの教科が対象ではないのかなというふうに思っているところでございます。以上、見直しの内容についての意見要望でございます。二つ目の見直しといたしまして、教科書の公正でバランスのとれた記述の在り方につきましてですが、これにつきましては私ども日々教科書の作成に当たりまして、常に心がけておるというふうに申し上げておきたいと思います。
 それでは次に、教科書採択の改善に関しての意見要望でございます。一、調査研究の充実の見本の部数増でございます。13年度の採択の実状を見ましても、やはり部数増と言うことが必要ではなかろうかという認識を持っておりますけども、ここに教科書採択に関して、教科書内容の十分な調査研究は極めて重要な事柄であると、教科書見本につきまして、現行規定では小中教科書ではそれぞれ1万部、高等学校教科書についても5千部、上限として送付できることになっております。しかし、より充実した教科書内容の調査研究をするためには、現行規定の見本の部数では不十分であるという声もあるようでございます。そういうことで益々強まる情報公開に対応するためにも、現行の1万部から2万6千部への見本の部数増を提案させていただきたいと思います。なお見本の費用につきましては、必要経費として教科書定価の算定に反映していただきたいというふうに考えております。中身でございますけれども、次の表の下の欄のところでご覧いただきたいと思います。まず、市町村教育委員会に現行各1部送付を5部送付に変更してはいかがかと、理由は教育委員並びに選定委員の方々に限られた期間でより深く研究、検討していただくためということでございます。これは表の中の上から3行目をご覧いただきたいと思います。市町村教育委員会各1部、3,408が送付先で現在は3,408でございます。提案はそれを5部にいたしまして、17,040ということでございます。二つ目に、教科書センターに現行各2部送付いたしますけども、これを4部に変更する。理由は教科書採択に対する現場や教師、また一般の方々が独自に閲覧できるような教科書センターでの見本展示は、情報公開の観点からも現行部数では不十分であるということでございます。これはご覧いただきます表の中の7行目のところで教科書センターというところがございます。現在は各2部、送付先は776で部数は1,552でございます。これを各4部として3,104、それからもう一つは、私どもやはりある一定の予備を持ちたいということで、小学校では1,461部、中学校では926部ということでございます。これは採択地区が今後小規模化される可能性がありますので、ある程度予備を持っていなければならないということで、表をご覧いただきますと、総合計が26,000ということでございます。次に、高等学校用の見本でございますけれども、高等学校の見本につきましては、現在5,000部を限度として都道府県教育委員会、また高等学校を設置する教育委員会、また高等学校、教科書センターに送付することができることとなっております。現在、高等学校が約5,479という数字があがってきておりますので、5,500ということからもこの部数につきましても6,000部へ見本の部数を増加いただければと思います。これにつきましても見本費用は必要経費として、教科書の定価算定に反映していただきたいと思っているところでございます。
 二の調査研究の充実でございますけれども、これは十分な調査研究期間の確保ということでございます。私どもの経験的なところから意見が出ているわけでございますけれども、現行の調査期間の中で、運用面の工夫で、今回指摘された件は解決できるんではなかろうかと思っております。現行の調査期間は、4月1日から8月15日でございます。4月1日を早めることは、行政、現場とも人事等がございますので、新学期にならないと協議会は発足しにくいという難しい状況があると思います。終了期間を延ばしますと、私どもにとりまして供給本の製造に支障を来すということがございます。これはひいては、教科書代金の概算払いの条件を満たすということが困難になってまいりますので、私どもといたしましては、運用面の工夫で解決できるのではなかとうかということが一つでございます。それから、見本の部数を増加することによりまして、複数の先生、調査員でございますけれども、例えば、地区の調査委員会の先生、また選定委員会の先生にも調査をしていただくことが可能になるということで、期間の延長がなくても実質的な調査期間、研究期間が確保できると思っているところでございます。それから、教科書センターなどの展示会場での一般公開期間を2週間から1ヶ月間に延長するということもあるのではなかろうかと思います。これは、一般の先生も十分な調査研究期間の確保が可能であると思います。その他といたしまして、これは直接採択には関係ないと思うのですが、やはり日常的に十分な調査研究を行うためには、全国の学校図書館や公立図書館に全ての検定教科書を備え付けることが望ましいのではなかろうかとも思っているところでございます。
 最後に、三の手続きの一層の明確化については、教科書採択が公正に行われますことを希望しますということしか申し上げられませんので、そのようにお含み取りいただきたいと思います。以上を持ちまして教科書協会としての見解と要望それから質問を含めて申し上げました。ありがとうございました。

○会長
 どうもありがとうございました。ただ今ご意見、ご質問等ございましたが、なにかお聞きになりたいことはございますか。

○委員
 発展的な学習内容は教科を限定されておりまして、社会科、地歴関係は外されております。社会科、地理、歴史関係それから倫理、公民等に関しまして、なるほど指導要領とか基準に関して何を発展的とするかは大変難しい問題であるとは思いますが、敢えて社会科関係を限定されることが果たして好ましいかどうか、即ち私の考えでは社会科、地歴、公民等に関しましてもより詳しい記述を行う等々は十分可能であると思いますし、またそのことが教科書によって非常に詳細な記述のあるもの、あるいは比較的簡略な記述のあるものという具合に、教科書にバラエティーがあることが、むしろこれからの教育に関して望ましいことだろうと思います。その点で、発展的な学習内容をどう解釈するかという問題は残りますけれども、教科に関して社会科系統を外されるようなお考え方に関しては、私は若干訂正をしていただきたいと思っております。以上です。

(社団法人教科書協会)

 先ほど申しましたように、全教科が対象になるのは当然だと思いますが、まだ実際上、新しい指導要領による教科書自体使われてない現状から見まして、ある程度過剰にならないためには、ある程度のしぼりが必要ではないかなと思います。また、今の社会科で言いますと、いろんな指導事項が多岐にわたっておりますので、最低基準といいますか、もっと基礎的なことを工夫するというか、そういう方向にウェイトをかけた方がいいんではないかなとは思っております。お答えになっているかどうか分かりませんが、そういうふうに考えております。

(社団法人教科書協会)

 意見が異なってもやむを得ないと思いますので、述べさせていただきたいと思いますけども、私自身の会社は社会科専門でございます。ですからここで書かれていることは、この教科以外やらないということを必ずしも限定しているわけではなくて、一応全教科対象になるというふうに我々思っております。その中でも特に極めて危惧されるのは、こういう教科ではなかろうかという認識としてご理解いただきたいと思います。確かに社会科の場合いろんなバーを引くのは難しいというのはあると思いますし、逆に、書けばいくらでも書けるという、先生ご指摘のとおりだと思います。ですからその点で我々として考えますと、社会科もかなり書き込める要素が大きいだけに、その点は逆に文部科学省方でもご検討いただきたいと思います。

(社団法人教科書協会)

 最後に、教科書発行者としてお願いでございますけれども、発展的な学習内容について、これからやっていくわけでございますけれども、これについて検定意見がつきまして、減点対象になりますと、不合格ということを非常におそれております。発展的な学習内容の検定につきましては、減点対象とはしないでいただきたいということをお願い申し上げておきたいというところでございます。

○委員
 私はまだそんなに経験がないんですけれども、これは別に今回の見直しだけに関わる問題ではないのですが、減点法で今行っているんですけれども、工夫がある点について反映しづらいというところが、私を含めて何人かの先生方お考えになっていると思いますので、その辺のところは、少し考えていただければと思います。減点はしないでくださいとおっしゃっても、ちょっとそれは検定の委員の側としては、問題点については指摘させていただくということは堅持せざるを得ないと思います。

○会長
 それでは他にございませんようですので、質疑応答はこの辺で終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。以上で三つの団体からご意見をいただいたことになります。次回以降、教科書制度の見直しについてご議論をいただくこととしております。特に今日委員の先生方から何かその辺でご発言ございますでしょうか。

○委員
 度々発言をして申し訳ございませんが、今回の見直しに関連いたしまして、私感じましたことを幾つか申し上げておきます。
 一つは、検定制度が、例えば全国都道府県教育委員会連合会の方でこの制度の果たす役割は、今後益々重要となっていくというような認識をいただいたことは非常にありがたいことであります。その中で、今回の見直しにつきましても、例えば量的しばり、質的しばり、これは教科書を作っておられる会社の方々もどの程度のガイドラインがあるかということについて、ガイドラインを必要としますので、これも私どもが関与するのか、あるいは決めれたものに則って今後審議を進めさせていただくのかということを教えていただきたいと思います。それで、質的なしばり、その他について関連するんですが、おそらく全国の教育大学の附属学校あるいは実験校と呼ばれるようなところで、カリキュラムについて様々の実験をして、その成果がまとめられていると思うんです。そういうものがもし集約されているのであれば、あるいは今後集約されていくとすれば、それは現場での教育のことではありますけれども、より良い教科書を作っていく上で、データ、資料が手に入るのではないかと思います。国民の皆さんのご批判は有るんですけれども、私どもも具体的にどういう問題点があって、どう直すかということについては、やはり科学的な方法に基づくべきでありますから、そういう経験がもし蓄積されているのであれば、是非とも今後積極的に蓄積していただき、我々にもフィードバックしていただきたい。
 それから、指導要領に対する現場で私どもやっておりますが、様々な問題点、疑義あるいは単純に我々が解釈の上で苦しむことが時々ございます。その時のフィードバックの仕方ということが、今のところ保障されていないように思います。その点是非とも、場合によっては指導要領をお作りになった方もおられるはずですから、こういう場でご一緒に討論をさせていただければありがたい。
 それから、調査官の皆様方は、もの凄い努力をされております。今後、そういう例えば指導要領よりある意味で多様化する方向に検定を進めようということですから、調査官の先生方の負担が極端に増えると思います。それは人的な意味での手当がひょっとすると必要かもしれません。それから、多様なことに対しての研究をした上で調査、判定をするわけですから、そういう調査官の方の再教育あるいは自己的に啓発するための時間ということを保障してあげていただきたいと思います。それから、私ども検定だけに関わりますが、現実には現場でこういう多様化をした場合にですね、小中高の先生方の負担が当然増えてまいります。それから内容が多様化するわけですから、現行の例えば、非常に多くの人数の学級でこういうことが実施可能かどうかということについてもご協議いただければと思います。教員の教材研究のゆとりということについて、少し時間を上げていただかないと困ると思いますのは、私ども例えば大学の博物館でいろんな先生が来られるのですが、総合的な学習の時間のための事前の勉強をしたいんだけれども、なかなかそういうことに対しての理解を得られないので、祝日にしかこれないというような問題があります。ですから、制度中に取り組んだ時間の配分を先生方の自己啓発のためにも取っていただきたいと思います。
 あとは、日常この業務に携わっている時に感じますことを三つ申し上げます。一つは、今申しましたように、工夫に対する評価ということが我々にはできないということを一点申し上げておきます。いい工夫のある教科書に対しての評価をどうするかということが、時々じくじたる思いでおります。それから、先ほど申しました指導要領に対する疑問点が生じた場合のフィードバックの仕方を何らかの形で保障していただきたい。それから、複数の教科書を見てますと、勿論同じ教科書会社の方が複数の教科書を審査に持ち込まれることもあるように思いますが、私たちは全部覆面で見ておりますので分かりませんが、似たような写真が複数の教科書で使われているということについて、これは教科書の編集者の方々の努力で、ご自身で一番いい写真、図表を探してこなければならないというふうな改善の面もあるかと思います。以上です。

○会長
 どうもありがとうございました。

○事務局
 たくさんご指摘いただいたわけでございますが、全てに今お答えすることはできないかと思いますが、一つ考えなければいけないことは、先程来、教科書発行者の方からも話がありましたように、もう既に小学校の編集が始まっているということで、それに向けて夏までに基準をお示しするということで、それに間に合わせるものと間に合わないもの、中長期的に取り組んでいかなければいけないものは整理しなければいけないと思っております。
 あと、若干ご質問にお答えできるようなところとして申し上げますと、例えば、今の学級の人数の話でございますが、この4月から教職員の定数改善ということで、特に算数・数学ですとか英語等の教科については、少人数で指導できるような先生の増員ということも計画してございます。更には、直接定数と関連する部分とそれぞれの定数内で工夫できる部分があろうかと思いますけれども、ティーム・ティーチングですとか少人数指導ということも、積極的に推進しておりまして、現に、都道府県や市町村ではそういったことについて、独自で先生方を雇用されて取り組んでおられる。あるいは、保護者の参加を得てそういったことに取り組んでおられるという例もあろうかと思います。だんだんそういう方向になって行くのかと思っております。
 それから、指導要領の話でございますが、ご案内かと思いますが、これまでは約10年に一度改訂したわけでございますけれども、今後は指導要領につきましても、これまで見直す時にだけ教育課程審議会という審議会を設けまして、見直しを行っていただいたわけでございますが、今後は中央教育審議会の中に常置の担当の分科会を設けまして、そちらの方で見直しを必要に応じて行っていくと、更に勿論見直しに際しては先生がご指摘いただいたような、附属での取り組みがどれだけ反映できるかというのは、個々に調査しなければならないと思いますが、一つには全国的な学力のテストを行って、それに基づいてそういったことも反映しながら、次にどういった指導要領を作っていく必要があるのかといったことをこれから実施するということになっているわけでございます。いろんな評価を踏まえて見直しを行っていくというような方向性でございます。
 それから、個別の指導要領に対する疑問点等がありますれば、また部会等でお出しいただきまして、それにつきましては可能な限り教科書調査官を通じて学習指導要領の担当セクションの方にフィードバックさせていただきたいと思っております。現状で取りあえずお答えのできるところは以上でございます。

○会長
 どうもありがとうございました。次回以降、教科書制度の見直しについてご議論いただくことになると思いますけども、今日3団体からいろんな意見も出ましたし、先生方いろいろご意見もあろうと思いますので、今後の審議会でいろいろご意見を出していただきたいと思います。それではご多用中ご出席いただきましてどうもありがとうございました。

○事務局から次回の開催については改めて連絡する旨の説明があり、会長から閉会が告げられた。

お問合せ先

初等中等教育局教科書課

-- 登録:平成21年以前 --