高等学校「現代の国語」に関する教科書検定の考え方 について

令和3年8月24日

高等学校「現代の国語」に関する教科書検定の考え方 について
 

教科用図書検定調査審議会 第一部会 国語小委員会

 令和2年度高等学校「現代の国語」の教科書検定において、「高等学校「現代の国語」に関する教科書検定の考え方について(検討依頼)」(以下単に「検討依頼」という。)に記載された図書の審査が行われた際には、小説を取り上げた箇所について「学習指導要領に示す内容の取扱いに照らして、扱いが不適切である。(内容の取扱い(4)のイ「「B書くこと」及び「C読むこと」のそれぞれの(2)に掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。」)」との検定意見を付した。当該検定意見を踏まえ、教科書発行者から提出された修正表においては、教材自体が変更されるのではなく、各小説教材の最後に学習活動として設定された「学習の手引き」「活動の手引き」の内容が修正された。
 今般の学習指導要領改訂の趣旨を踏まえれば、高等学校「現代の国語」の教材としてこのような形で小説が盛り込まれることは本来想定されていないところであるが、「現代の国語」の教科書として文学作品を掲載することが一切禁じられている訳ではないことから、本小委員会としては、学習指導要領に照らして直ちに欠陥であるとは判断せず、当該図書について合格と判定したものである。

 一方で、検定決定後、検討依頼で指摘されたように、当該発行者のホームページにおいて、学習指導要領の趣旨に沿っていないかのような宣伝がなされるなど、現場に疑義を生じさせる事態となったことについては遺憾であり、重く受け止める必要がある。

 こうした経緯も踏まえて、今後、同様の事態を招くことのないよう、高等学校「現代の国語」の教科書の検定においては、小説教材を扱うことについて、学習指導要領の趣旨に照らし、より一層厳正な審査を行うこととする。

  なお、当該発行者からは、小説教材に関する訂正申請がなされ、本小委員会としては、この訂正は教科用図書検定規則第14条第2項の規定に照らし妥当なものであり、これを承認することが適当であるとしたところである。

教科書検定制度は、民間の発行者の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するとともに、国民の教育を受ける権利を実質的に保障する観点から、適正な教育内容の維持等の要請に応えるために実施されているものであり、本小委員会においてもこうした要請に応え、教科書検定に対する国民の信頼を高めるため、今後とも、専門的な調査審議を行い、公正な検定審査を行っていく所存である。