「発展的な学習内容」に関する論点整理メモ

 児童生徒一人一人の個に応じた指導を充実する観点から、学習指導要領に示していない内容(「発展的な学習内容」)については、平成14年8月に教科用図書検定基準が改正され、一定の条件のもとで教科書への記述が可能となった。(一部の教科を除き、平成15年度検定から適用)

○教科書に記述されている「発展的な学習内容」

  •  学習指導要領に示された内容の理解をより深める記述
  •  児童生徒の興味・関心を広げる記述
  •  児童生徒が主体的に取り組み、意欲を高めることができる記述

※ 記述の状況(分量)については5ページを参照

○検定における「発展的な学習内容」について

 他の記述と同様、内容の正確性などの観点から検定に当たるとともに、以下の点についても留意してきたところ。

※ 該当する検定基準については資料5を参照

  •  本文以外での記述とすること
  •  学習指導要領と適切に関連し、学習指導要領の趣旨に逸脱しないこと
  •  児童生徒の負担過重にならないこと
  •  分量が適切であること
    →検定における扱い
    小・中学校用教科書では1割程度、高校用教科書では2割程度を上限
  •  学習指導要領に示された内容と明確に区分され、学習指導要領に示していない内容であることが明示されていること
    →検定における扱い
    「発展的な学習内容であること」「すべての児童生徒が一律に学習する内容ではないこと」等を明示

○「発展的な学習内容」についての論点

・ 「発展的な学習内容」の位置付けについて

 個に応じた指導の充実を図る観点から、「発展的な学習内容」の位置付けをどのように考えるか

・ 分量及び内容の制限について

 「発展的な学習内容」について、上限を定めることにより、分量及び内容について抑制的に働く可能性がある現在の検定基準及びその扱いについてどう考えるか。

・ 区分及び明示について

 児童生徒が一律に学習する内容ではないという趣旨を徹底する観点から、「発展的な学習内容であること」「児童生徒が一律に学習する内容ではないこと」等の明示する、現在の検定基準及びその扱いについてどう考えるか。

・ 入学者選抜における扱いについて

 「発展的な学習内容」は、すべての児童生徒が一律に学習する内容ではないことから、従来から入学者選抜において出題対象にしないよう十分留意する必要があるとしてきており、今後も同様の配慮が必要と考えられることについては、どのように考えるか。

○参考資料

・ 小学校学習指導要領(平成20年3月告示)【抜粋】

第1章 総則

第2 内容等の取扱いに関する共通的事項

2 学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができる。また、第2章以下に示す内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての児童に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。ただし、これらの場合には、第2章以下に示す各教科、道徳、外国語活動及び特別活動並びに各学年の目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。

・ 中学校学習指導要領(平成20年3月告示)【抜粋】

第1章 総則

第2 内容等の取扱いに関する共通的事項

2 学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができる。また、第2章以下に示す内容の取扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての生徒に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。ただし、これらの場合には、第2章以下に示す各教科、道徳及び特別活動並びに各学年、各分野又は各言語の目標や内容の趣旨を逸脱したり、生徒の負担過重となったりすることのないようにしなければならない。

・ 中学校学習指導要領解説 総則編(平成20年7月)【抜粋】

第3章 第2節 1 各教科等の内容の共通的取扱い

 本項は,前項を踏まえた上で,学校において特に必要であると認められる場合には,学習指導要領に示していない内容でも,これを加えて教育課程を編成,実施することができることを示しているものである。前項と本項をあわせて学習指導要領に示す内容の取扱いの基本的な原則を示しているものである。すなわち,学習指導要領に示している内容は,すべての生徒に対して確実に指導しなければならないものであると同時に,個に応じた指導を充実する観点から,生徒の学習状況などその実態等に応じて,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能である(学習指導要領の「基準性」)。
このように,学習指導要領の基準性が明確に示されている趣旨を踏まえ,学習指導要領に示している,すべての生徒に対して指導するものとする内容の確実な定着を図り,さらに知識・技能を深めたり高めたりするとともに,思考力・判断力,表現力等を豊かにし,学習意欲を一層高めたりすることが期待される。

 ただし,これらの場合にあっても,まずは学習指導要領に示しているすべての生徒に対して指導するものとする内容の確実な定着が求められることは前述したとおりである。また,学習指導要領に示した各教科,道徳及び特別活動並びに各学年の目標や内容の趣旨を逸脱しないことが必要である。すなわち,学習指導要領に示している内容を生徒が理解するために関連のある事柄などについての指導を行うことであって,全く関連のない事柄を脈絡無く教えることは避けなければならない。さらに,これらの指導によって,生徒の負担が過重となったりすることのないよう,十分に留意しなければならない。

・ 中央教育審議会答申(平成20年1月17日)【抜粋】

 主たる教材として重要な役割を果たす教科書については、その質・量両面での充実が求められる。子どもが学習内容について十分に理解を深め、基礎的・基本的な知識・技能を確実に身に付けるとともに、それらを活用する力をはぐくむように、繰り返し学習や知識・技能を活用する学習、発展的な学習に自ら取り組み、知識・技能の定着や思考を深めることを促すような工夫が凝らされた読み応えのある教科書が提供されるような諸条件が整えられることが重要である。そのため、例えば、子どもの学習意欲を高め、教師が子どもにより教えやすくするようにするとともに、子どもが学ぶにあたって必要な学習内容が質的にも量的にも十分に確保されるよう記述内容を工夫しつつ、教科書のページ数を増加させるようにしたり、発展的な学習に関する記述の一層の充実が図られるようにすることなどが必要である。

※ 学習指導要領の「はどめ規定」について

 いわゆる「はどめ規定」は、学習指導要領において、発展的な内容を教えてはならないという趣旨ではなく、すべての児童生徒に共通に指導するべきではない事項について現行学習指導要領で「(…の)事項は扱わないものとする」等と定めていたもの。教科書においては、従来から「発展的な学習内容」として記述することが可能。(例:中学校理科「イオン」)
 現行学習指導要領で「扱わないこと」等とされていた内容が、新学習指導要領において共通に指導する内容とされた場合は、教科書においても学習指導要領に示されている内容として記述されることとなる。

・ 発展的な学習内容の記述状況(小学校)【15年度検定】

教科・科目等 種目 発展のある図書/全図書 発展の割合
(平均)
発展の割合
(最多図書)
発展の割合
(最小図書)
国語 国語 13/15 1.0% 2.8% 0.3%
書写 13/15 1.5% 2.8% 0.3%
社会 社会 14/15 3.7% 7.7% 1.1%
地図 0/2
算数 算数 36/36 3.6% 6.5% 1.3%
理科 理科 24/24 7.7% 13.1% 2.3%
生活 生活 6/10 2.5% 6.1% 0.8%
音楽 音楽 8/9 1.3% 2.8% 0.4%
図画工作 図画工作 1/9 0.3% 0.3%
家庭 家庭 2/2 5.0% 7.7% 2.3%
保健 保健 9/10 3.0% 6.7% 1.1%

・ 発展的な学習内容の記述状況(中学校)【16年度検定】

教科・科目等 種目 発展のある図書/全図書 発展の割合
(平均)
発展の割合
(最多図書)
発展の割合
(最小図書)
国語 国語 9/10 1.7% 3.6% 1.1%
書写 10/12 4.1% 14.1% 2.2%
社会 地理 3/6 1.8% 4.4% 2.5%
歴史 0/8
公民 3/8 1.0% 3.9% 0.4%
地図 0/2
数学 数学 21/21 4.2% 10.4% 1.0%
理科 第1分野 5/5 6.5% 7.9% 5.6%
第2分野 5/5 7.5% 8.2% 6.5%
音楽 (一般) 2/4 0.3% 0.6% 0.6%
(器楽合奏) 1/2 0.5% 1.0%
美術 美術 0/6
保健体育 保健体育 3/3 5.9% 6.4% 5.3%
技術・家庭 技術 2/2 2.6% 3.3% 2.0%
家庭 2/2 6.4% 6.6% 6.1%
外国語 英語 6/7 0.4% 0.7% 0.1%

<参考:教科書制度の改善について(検討のまとめ)(平成14年7月31日)【抜粋】>

(2)教科書に記述を可能とする「発展的な学習内容」等の考え方

1. 教科書においては、その基本的性格を踏まえ、以下のような考え方に基づき、「発展的な学習内容」等の記述を可能とすることが適当である。

ア 学習指導要領の目標、内容の趣旨を逸脱するものでないこと
イ 児童生徒の心身の発達段階に適応しており、負担過重とならないものであること
ウ 主たる学習内容との適切な関連を有するものであること

2. 1.の考え方に基づき、「発展的な学習内容」等として、以下のような内容について、記述を可能とすることが適当である。

ア 学習指導要領において、当該学年、科目、分野又は言語(以下、「学年等」という。)の学習内容とされていない内容
(ただし、「発展的な学習内容」等自体の詳細な理解や習熟を図る扱いとなっていないこと)
a 学習指導要領上、隣接した後の学年等の学習内容(隣接した学年等以外の学習内容であっても、当該学年等の学習内容と直接的な系統性があるものを含む)とされている内容
(ただし、当該学年等の学習内容を押さえた上で導入的に取り上げていること)
(※)なお、当該学年等の学習内容を説明するために導入的に前の学年等の学習内容に触れたり、前の学年等の学習内容を復習的に記述することについては、従来の検定でも許容されており、これらの記述については、今後とも、「発展的な学習内容」等としてではなく、許容することが適当である。
b 学習指導要領上、当該学年等では「扱わない」とされている内容
c 学習指導要領上、どの学年等でも扱うこととされていない内容

イ 学習指導要領において扱い方が制限されている内容
a 学習指導要領の内容の取扱いにおいて、「…程度にとどめる」、「…深入りしない」、「…平易に扱う」、「…簡単に扱う」、「定性的に扱う」など、当該内容を扱うことを前提にした上で、その扱い方を制限する規定(いわゆる「はどめ規定」)が設けられているものについて、それらの制限を超えた内容

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