最近の教科用図書検定基準の改正経緯等

(平成11年改正)

  • 教育課程審議会答申(平成10年7月)
  • 学習指導要領の改訂(平成10年12月)
のポイント
教科用図書検定調査審議会における議論 義務教育諸学校教科用図書検定基準の主な改正点(平成11年1月)
新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善について(建議)(平成10年11月)のポイント 改正前 改正後
(教育課程審議会答申)
  • 「生きる力」の育成
  • 教育内容の厳選
  • 選択学習の幅の拡大
  • 学び方や問題解決能力の育成の重視
(学習指導要領の改訂)
ゆとりのある教育を展開し、基礎・基本の確実な定着と個性を生かす教育の充実。
(ア)教科書に記述すべき内容の範囲、その選択や扱いについては、教育内容の厳選を図り、学習を効果的に進める上で適切なものとする観点から、図書全体を通して基礎的・基本的な内容に厳選され、不必要に拡大、深入りしないようにする。 図書の内容は、基礎的、基本的な内容を習得させる上で適切な事項に精選されており、網羅的、羅列的になっているところはないこと。
共通2-(10)
図書の内容は、基礎的、基本的な内容を習得させる上で適切な事項に厳選されており、網羅的、羅列的になっているところはないこと。
共通2-(5)
(イ) 教育の内容の厳選を図るため、複数の教科に関連する内容の各教科書における扱いについては、今回の教育課程の基準の改善に当たり、教科間で重複する内容の 精選を図ることが示されていることにかんがみ、学習指導要領に定める各教科等の目標、内容及び内容の取扱いに示された範囲にとどめ、不必要に他の教科等の 内容と重複した内容が扱われないようにする。 図書の内容に、他の教科、学習指導要領に示す他の分野又は他の領域、道徳及び特別活動の内容と矛盾するところはないこと。
共通2-(6)
図書の内容に、他の教科、学習指導要領に示す他の分野又は他の領域、道徳及び特別活動の内容と矛盾するところや不必要に重複しているところはないこと。
共通2-(7)
(エ)写真、挿絵等の掲載については、一層の信頼性の確保が図られるようにする。 引用、掲載された教材や資料については、著作権法上必要な出所や著作者名その他必要に応じて出典、年次など学習上必要な事項が示されていること。
共通2-(12)
引用、掲載された教材、写真、挿絵、統計資料その他の著作物は、信頼性のある適切なものが選ばれ、著作権法上必要な出所や著作者名その他必要に応じて出典、年次など学習上必要な事項が示されていること。
共通2-(13)

(平成14年改正)

  • 学びのすすめ(平成14年1月)
  • 学習指導要領の改訂(平成15年12月)
のポイント
教科用図書検定調査審議会における議論 義務教育諸学校教科用図書検定基準の主な改正点
(平成14年8月)
教科書制度の改善について(検討のまとめ)(平成14年7月)のポイント 改正前 改正後
(学びのすすめ)
  • きめ細やかな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身につける
  • 発展的な学習で一人一人の個性等に応じて子どもの力をより伸ばす
  • 学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高める
  • 学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身につける
  • 確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する
(学習指導要領の改訂)
学習指導要領に示しているすべての児童生徒に指導する内容等を確実に指導した上で、児童生徒の実態を踏まえ、学習指導要領に示していない内容を加えて指導することができることを明確化
学習指導要領の各教科等の内容に示されていない内容について、記述上の留意点等一定の条件を設けた上で、教科書に記述することを可能とすることが、多様な教科書を求めていく上で適当である。 本文、問題、説明文、注、資料、作品、挿絵、写真、図など教科用図書の内容(以下「図書の内容」という。)には、学習指導要領に示す目標、学習指導要領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに照らして、不必要なものは取り上げていないこと。
共通1-(2)
本文、問題、説明文、注、資料、作品、挿絵、写真、図など教科用図書の内容(以下「図書の内容」という。)には、学習指導要領に示す目標、学習指導要領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに照らして、不必要なものは取り上げていないこと。ただし、本文以外の図書の内容において、学習指導要領に示す内容や学習指導要領に示す内容の取扱いに示す事項との適切な関連の下、学習指導要領に示す目標や 学習指導要領に示す内容の趣旨を逸脱せず、児童又は生徒の負担過重とならない範囲で、学習指導要領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに示す事 項以外の事項(以下「学習指導要領に示していない内容」という。)を取り上げることができること。
共通1-(2)
図書の内容は、基礎的、基本的な内容を習得させる上で適切な事項に厳選されており、網羅的、羅列的になっているところはないこと。
共通2-(5)
図書の内容は、厳選されており、網羅的、羅列的になっているところはないこと。
共通2-(5)
全体として系統的、発展的に組織されており、学校教育法施行規則別表第1又は別表第2に定める授業時数並びに学習指導要領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに照らして、全体の分量及びその配分は適切であること。
共通2-(9)
図書の内容(学習指導要領に示していない内容を除く。)は、全体として系統的、発展的に組織されており、学校教育法施行規則別表第1又は別表第2に定める授業時数並びに学習指導要領に示す内容及び学習指導要領に示す内容の取扱いに照らして、全体の分量及び配分は適切であること。また、学習指導要領に示していない内容を取り上げる場合には、その分量は適切であること。
共通2-(9)
図書の内容のうち、説明文、注、資料などは、主たる記述と関連付けて扱われており、当該内容の的確な理解に資する程度であること。
共通2-(11)
図書の内容のうち、説明文、注、資料などは、主たる記述と適切に関連付けて扱われていること。
共通2-(11)
(項目なし) 学習指導要領に示していない内容を取り上げる場合には、それ以外の内容と区別され、学習指導要領に示していない内容であることが明示されていること。
共通2-(12)
児童生徒が使用する上で公正さやバランスを更に求めることが可能となるよう、検定基準の関連する規定の改正を行い、これらの観点からの教科書記述のより一層の改善を図ることが必要である。 話題や題材の選択及び扱いは、特定の事項、事象、分野などに偏ることなく、全体として調和がとれていること。
共通2-(3)
話題や題材の選択及び扱いは、児童又は生徒が学習内容を理解する上に支障を生ずるおそれがないよう、特定の事項、事象、分野などに偏ることなく、全体として調和がとれていること。
共通2-(3)
図書の内容に、特定の事柄を特別に強調し過ぎていたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないこと。
共通2-(4)
図書の内容に、児童又は生徒が学習内容を理解する上に支障を生ずるおそれがないよう、特定の事柄を特別に強調し過ぎていたり、一面的な見解を十分な配慮なく取り上げていたりするところはないこと。
共通2-(4)

○新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善について(建議)(平成10年11月)(抜粋)

3 教科用図書検定基準の改善

 文部省は、検定における基準として義務教育諸学校教科用図書検定基準及び高等学校教科用図書検定基準を定めている。これらの検定基準においては、検定審査の基本方針である総則のほか、各教科共通の条件及び各教科固有の条件について、「範囲及び程度」、「選択・扱い及び組織・分量」、「正確性及び表記・表現」の3つの観点から具体的な規定が定められている。
 前述の「教育課程の基準の改善の趣旨を踏まえた質の高い教科書の作成」については、教科書の著作・編集における取組に負うところが大きいが、これを実効あるものとするためには、特に、教科書に記述される内容が、基礎的・基本的内容に厳選され、児童生徒がゆとりをもって学習することができるようにするとの観点から、検定基準においても配慮を行うことが求められる。
 したがって、検定基準については、以下のような観点から改善を図ることとし、その具体的内容について、学習指導要領に定める各教科等の目標、内容等を踏まえながら、今後検討を行うことが必要である。

  • (ア)教科書に記述すべき内容の範囲、その選択や扱いについては、教育内容の厳選を図り、学習を効果的に進める上で適切なものとする観点から、図書全体を通して基礎的・基本的な内容に厳選され、不必要に拡大、深入りしないようにする。
  • (イ)教育内容の厳選を図るため、複数の教科に関連する内容の各教科書における扱いについては、今回の教育課程の基準の改善に当たり、教科間で重複する内容の精選を図ることが示されていることにかんがみ、学習指導要領に定める各教科等の目標、内容及び内容の取扱いに示された範囲にとどめ、不必要に他の教科等の内容と重複した内容が扱われないようにする。
  • (ウ)実践的、体験的な内容のうち、各学校における創意工夫を生かした特色ある指導に委ねることが適当と認められるものについては、教科書に記述することを要しないことなどとする。
  • (エ)写真、挿絵等の掲載については、一層の信頼性の確保が図られるようにする。

○教科書制度の改善について(検討のまとめ)(平成14年7月)(抜粋)

第1部 教科書検定の改善について

1 教科書に「発展的な学習内容」等の記述を可能とすることについて

  •  本審議会において、教科書の基本的な性格や様々な指摘等を踏まえて検討した結果、教科書に、児童生徒の理解をより深めたり、興味・関心に応じて学習を拡げたりする観点から、学習指導要領の各教科等の内容に示された内容以外の記述を行うことが基本的に認められていない現在の検定基準のままでは、今後の新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた特色ある学校教育活動を展開する上で、必ずしも十分な対応を行うことが難しい面もあると考えた。このため、学習指導要領の各教科等の内容に示されていない内容について、記述上の留意点等一定の条件を設けた上で、教科書に記述することを可能とすることが、多様な教科書を求めていく上で適当であるとの結論を得た(これらの教科書に記述を可能とする学習指導要領に示されていない内容としては、(2)に述べるように、学習指導要領に示された学習内容を更に深める発展的な内容や、興味・関心に応じて拡張的に取り上げる内容など多様なものが考えられることから、以下においては、これらを「『発展的な学習内容』等」と記述することとする。)。

2 教科書記述をより公正でバランスのとれたものとすることについて

  •  本審議会に対し関係団体から寄せられた意見においては、今後とも教科書記述の公正さ等を確保することが重要であるとするもの、これまでの検定基準に基づいた公正さ等の確保の方向を支持するものに加え、特に、教科書が心身の発達過程にある児童生徒のための主たる教材であることを踏まえ、児童生徒の発達段階に応じ、その理解力や判断力に即した内容となっていることが必要であるとするものが多く見られた。具体的には、例えば見解が分かれている内容を取り上げる場合には、児童生徒の発達段階等を踏まえ、断定を避けるだけでなく、異なる見解の内容にも触れるなど、児童生徒が見解が分かれていることを理解でき、多面的・多角的に判断できるようなバランスのとれた内容となっていることを求める意見が多く寄せられた。
  •  このような指摘も踏まえ、現在の検定基準の基本的な在り方を踏まえつつ、必要に応じ、児童生徒が使用する上で公正さやバランスを更に求めることが可能となるよう、検定基準の関連する規定の改正を行い、これらの観点からの教科書記述のより一層の改善を図ることが必要である。

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初等中等教育局教科書課