総括部会 教科書検定手続き改善に関するワーキンググループ(第4回)・新教育課程に対応した教科書改善に関するワーキンググループ(第4回)合同会議 議事要旨

1.日時

平成20年6月16日(月曜日)10時~12時

2.場所

霞が関ビル33階 東海大学校友会館「望星の間」

3.議題

  1. 「教科書検定手続きの改善方策」及び「新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善方策」に関する関係団体からのヒアリングについて
  2. その他

4.出席者

委員

秋山委員、安彦委員(新教育課程WG主査)、伊藤委員、勝方委員、栗田委員、榊原委員、杉原委員、高倉委員(手続きWG主査)、谷坂委員、富岡委員、西沢委員、橋本委員、長谷川委員、波多野委員、濱口委員、広瀬委員、廣部委員、茂手木委員、山本委員

文部科学省

布村審議官、伯井教科書課長、串田教科書企画官 他

5.議事要旨

  • 審議に先立ち、合同ワーキンググループの進行は高倉主査が行うこととされ、高倉主査から、資料1について確認の依頼があった。
  • 本審議会の二つの審議事項(教科書検定手続きの改善方策及び新しい教育課程の実施に対応した教科書の改善方策)に関係のある団体のうち、全国連合小学校長会、社団法人日本PTA全国協議会及び社団法人教科書協会からのヒアリングを行い、質疑応答等を行った。また、事務局から、事前に文書意見の提出があった全国都道府県教育委員会連合会の意見紹介を行った。
  • 事務局より、資料4について説明を行った。

主な意見等は以下のとおり。

1.全国連合小学校長会のヒアリング概要

資料3「関係団体からの文書意見」に沿って発言。その後、質疑が行われた。

<教科書記述の正確性の確保について>

【委員】
 意見書の前段の学問的な公正・中立性ということと、後段の義務教育の目的が明示されたことにはどのようなつながりがあるか。学説が分かれる場合には両説書くべきということも含めて考えているか。

【ヒアリング団体】
 国家・社会の形成者としての資質を養うという調和のとれた義務教育を目指すことが教育基本法等に再定義されたが、教科書も公共の精神や社会の一員としての資質育成の視点から考慮されるべきである。争いのあることはそれぞれの立場で検証してもらえばよいが、校長会としてはあくまでも義務教育の目的に沿って公正 ・中立な教科書をつくっていただきたいし、公正・中立な採択をしていただきたい。

<新しい教育課程の実施に対応した教科書改善方策について>

【委員】
 今後、新しい学習指導要領に対応して教科書の厚さは増すと考えられるが、校長会としてはどのように考えるか。

【ヒアリング団体】
 現場の教師も含め、おおむね賛成の意見が多い。図工や音楽などでは特に、選べる教材が増えればよいと聞いている。ただし、授業時数との兼ね合いはある。

【委員】
 教科書の質・量が充実されることには賛成とのことだが、教師の仕事の大変さを考えると、教えやすさも必要と考えているということか。

【ヒアリング団体】
 両方必要である。背景となる記述や資料は、教科書を資料面から見れば、増えた方がよくなる。ただし、膨大な量に対応するためには、教科書の使いやすさも教師の授業力も向上していく必要があると考える。

<その他>

【委員】
 手続きの改善等についての校長会からの意見は、各教育委員会における採択に関するものと思われる。検定の段階について、校長会として何か意見はあるか。

【ヒアリング団体】
 現場の声が採択の場に適正に反映されることを担保していただきたい。様々な団体がその価値基準にかなったものを採択につなげようと働きかけることも見受けられる。採択に至っても公正・中立性が担保されるべきである。

2.社団法人日本PTA全国協議会のヒアリング概要

文書意見によらず、以下のとおり意見の発表があった後、質疑が行われた。

<意見概要>

  •  検定手続きの改善方策については、一層の透明性向上や、さらなる情報発信の必要があるのではないか。
  •  基礎的な知識が、単に詰め込まれた平面的な情報だけではなく、これからの時代に必要な、生きる力を育成するための深い知識や、それを応用する力となるような教科書が必要である。
  •  教師が教えやすい教科書より、子どもにとって学びやすい教科書であるべきである。また、質・量の充実を願う。

<質疑応答>

<検定手続きの透明性の一層の向上について>

【委員】
 検定についての一層の透明性向上と、さらなる情報発信とは具体的にどのようなことか。

【ヒアリング団体】
 審議内容を事細かに発信してほしいということではなく、こういう審議会の場で子どものために一生懸命審議されているということなどを伝える必要があると思う。また、我々保護者の意見も反映されるような場を設けていただきたい。

<新しい教育課程の実施に対応した教科書改善方策について>

【委員】
 教えやすい教科書という小学校長会からの意見に対し、子どもが理解できる、学びやすい教科書を望むということだが、学びやすい教科書は教えやすい教科書でもあると考えるがどうか。

【ヒアリング団体】
 「教えやすい」ということは教師が教科書をさらりと流して教えていくこととも考えられる。教師は教材研究の時間がなく大変とのことだが、子どもと向き合うための努力をしていただきたい。教師が深く勉強し知識も増えれば、子どもにも深く教えられる。

【委員】
 教科書を教えるのか、教科書で教えるのかという議論があるが、どう考えるか。教科書を最後まで教えないと、保護者から苦情が出ると聞いているがどうか。

【ヒアリング団体】
 使い分けが大事である。教師の裁量でよいが、教科書・教師両方の質を上げていただきたい。

3.社団法人教科書協会のヒアリング概要

資料3「関係団体からの文書意見」に沿って発言。その後、質疑が行われた。

<検定手続きの透明性の一層の向上について>

【委員】
 検定意見の表現は具体性に欠けているかもしれないが、発行者に伝える際には調査官から背景や事情・理由の説明があると思うが、それとの関連ではどうか。

【ヒアリング団体】
 発行者側もどう直せばよいのか知りたいので、具体的に質問し、詳しく答えてもらっている。さらに、文章で具体的に示していただきたい。

<専門的な見地からのきめ細やかな審議の確保について>

【委員】
 審議会の委員だけでなく、外部の専門家が必要かどうか、「特に慎重な判断を要する」事項というのは誰が決めるのか等、どのように考えるか。

【ヒアリング団体】
 社会的に影響を及ぼすものについては、国内だけでなく国外に及ぼす効果なども吟味しながら、専門・非専門問わず様々な角度から対処することが大事だと考える。

【委員】
 教育的配慮の観点は教科書づくりには必要な観点である。しかし、審議会委員としては図書の正確性や学習指導要領に照らした意見を付すものであり、審議会に求めるべきでないと考えるがどうか。

【ヒアリング団体】
 小・中・高の段階やレベルにより教科書の内容・記述に要求されるものは異なるため、発行者としてはそのレベルに応じた教育的配慮から、すべての学校段階で厳密な記述とはせずに簡略化したりすることもある。その観点から現場教師の意見聴取をするなど、考慮していただきたい。

<静ひつな環境における公正・中立な審議の確保について>

【委員】
 静ひつな環境と透明性の向上は理論的に矛盾するところがあるが、委員の分属の公開と透明性について、協会としてはどう考えるか。

【ヒアリング団体】
 委員の分属の公開は、審議過程ではなく検定決定後の時点でよいと考える。

【委員】
 発行者および執筆者はそれぞれの立場で審議内容について守秘義務があることは当然だということだが、これまで執筆者の中には自ら関わった内容を発表している人もいる。当然のことが当然に行われない場合は、どのようにすべきと考えるか。

【ヒアリング団体】
 発行者には守秘義務がある。編集者や著者とは各社で覚書を交わし、それを徹底するようにしているはずであるが、守秘義務が守られなかった場合にどうするかは申し上げにくい。そのようなことがないよう、各社で教科書に携わっている者のモラルをあげていくことが考えられる。

4.関係団体からの意見全体について意見交換

ヒアリングや関係団体からの文書意見等を踏まえて、教科書協会も交えて、意見交換を行った。

【委員】
 専門的な判断を要する事項については、歴史認識や諸外国との関係に関する問題などがあるかと思うが、どこが決めるのかについてはその部会又は小委員会であり、審議の場に専門家を呼んだり、文書を出していただくことについても同様である。

【委員】
 学習内容に関係がないと思われるイラストや漫画が多すぎると感じる。多用して理解しやすいようになるのか疑問に思うが、どうか。

【ヒアリング団体】
 教科書を使用する今の子どもたちは、テレビも雑誌も生まれたときからカラーで見ることが当たり前という状況の下で育ってきている。イラストや写真で煩雑になるなど、マイナスになっていると感じられれば、各社で工夫をするだろう。

【委員】
 イラストについては、煩雑さのみが懸念事項なのではなく、図や絵を載せることにより、かえって想像できる範囲を限定してしまうことにも留意していただきたい。

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初等中等教育局教科書課