令和4年度子供の読書活動推進に関する有識者会議(第1回)議事録

1.日時

令和4年6月29日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

WEB会議(Zoom利用)

3.議事録

令和4年度子供の読書活動推進に関する有識者会議(第1回)
令和4年6月29日
 
※冒頭非公開
〇工藤専門官よりオンライン会議の進行と公開、配布資料についての確認があった。
〇藤原総合教育政策局長より、挨拶があった。
○委員の互選により秋田委員が座長に、堀川委員が副座長に就任された。

【工藤専門官】  ここからライブ配信になります。以降は秋田座長に進行をお願いしたいと思いますけれども、その前に、座長、副座長から一言御挨拶いただければと思っております。座長、よろしくお願いいたします。
【秋田座長】  ありがとうございます。ただいま座長を拝命いたしました、学習院大学の秋田喜代美と申します。
 第4次の計画の折にも策定に関わらせていただきましたが、その後、コロナが生じたり、また、デジタル社会へと子供を取り巻く読書環境も大きく変わっております。
 今回、委員の皆様の御専門の見識を伺いながら、ぜひ取りまとめのほうに向かってまいりたいと思いますので、御協力のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上になります。
【工藤専門官】  ありがとうございました。
 堀川副座長にも一言御挨拶いただければと思っております。
【堀川副座長】  副座長を務めさせていただきます堀川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 GIGAスクール構想が進んで、学びの方法においても、ICT活用という選択肢が増えて、学校では模索しているところも多いと思います。こうした大きな変化の時代に、子供の読書活動の推進を考えるこの場に参加させていただいたことを大変うれしく感謝しております。座長の秋田先生のお隣には座れませんでしたけれど、オンラインですので、残念ながらお隣の席ではありませんが、副座長として一生懸命やらせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまから、本日の議題のほうに入りたいと思います。
 本日は、初回でもあり、まずは子供の読書活動推進に関する現状につきまして、事務局から御説明をいただき、その後、意見交換の時間を設けようと思います。
 まず、事務局より、子供の読書活動推進に関する現状などについて、御説明をよろしくお願いいたします。
【工藤専門官】  それでは、子供の読書活動の推進に関する現状につきまして説明をさせていただきます。
 資料につきましては、資料3から6までになります。今、資料を共有いたします。
 それでは、資料3になりますけれども、第4次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」についてまとめている概要資料になります。
 まず、この第4次計画が、平成30年4月に閣議決定がなされまして、おおむね5年、平成30年度から今年度にわたります施策の基本的な方針と具体的な方策を明らかにするものということで定められている計画になっております。この第4次計画の策定に当たりましては、子供の読書活動推進に関する有識者会議を5回にわたり開催いたしまして、論点を整理していただきまして、第4次基本計画に盛り込んだところでございます。この第4次基本計画につきましては、これまで第3次までの取組状況を踏まえまして、課題として、不読率、1か月に1冊も本を読まない子供の割合につきまして、特に高校生の不読率が依然として高くなっておりまして、なかなか改善されていない状況にあるということが課題として挙げられておりました。
 そうした状況につきまして分析を行いまして、3つ項目として抽出いたしまして、それに対応する形で、第4次基本計画の推進方策をまとめております。
 分析の1点目につきましては、中学生までの読書習慣の形成が不十分な子供たちが、そのまま高校生となっているのではないか。そのためには、改正の主なポイントの1つ目になりますけれども、発達段階ごとの効果的な取組を推進していく必要があるとしております。分析の2点目になりますけれども、中学生までに読書習慣のある子供でも、高校生になって、読者の関心度合いが低下していって読書から離れてしまうのではないか。そのためには、読書への関心を高める取組を充実させていく必要があるとしております。
 これらの2点の推進方策については、次のページで具体的に、家庭、学校、地域と、それぞれのところでの取組方策をまとめております。
 また前のページに戻りまして、分析の3点目になりますけれども、スマートフォンの普及等による子供の読書環境への影響の可能性があるということで、読書環境の変化に関する実態把握、分析を行う必要があるとしております。
 第4次計画の概要といたしましては、以上となっております。
 続きまして、資料4につきましては、第4次計画の策定後の対応状況につきましてまとめて整理した資料になっております。こちら、大部になっており、事前に送付させていただいておりますので、説明は簡単にさせていただきます。基本計画の記載事項ごとに、関連する現状のデータですとか、あとは第4次計画中に実施した内容と、今年度実施する内容をまとめた資料になっております。基本計画の内容に沿った形でどういうことを5年間でやってきたかをまとめた資料になっております。また、御覧いただければと思っております。
 続きまして、資料5になります。子供の読書活動に関する現状についてまとめたものでございます。
 こちらは、まず、スライドの1ページ目の読書の意義、効果でございますけれども、「子どもの読書活動の推進に関する法律」では、「子どもの読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、想像力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身につけていく上で欠くことのできないもの」とされております。
 また、スライド1ページ目の真ん中に掲載しておりますが、独立行政法人国立青少年教育振興機構による、「子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究」、こちら、令和3年度の調査研究になりますけれども、こちらでは、子供の頃の読書量が多い人は、そうでない人よりも客観的、論理的に考える力や何事にも進んで取り組む姿勢や意欲といった意識・非認知能力、語彙力、文章理解力という認知機能が高い傾向にあることが明らかになっております。また、その読書のツールには関係なく、読書をしている人はしていない人よりも意識・非認知能力が高い傾向にあることや、本、紙媒体で読書をしている人の意識・非認知能力は最も高い傾向にあるという結果が公表されております。
 また、スライドの2ページ目は読書活動と学力との関係になりますが、読書が好きと肯定的に回答する子供の正答率が高い傾向にある、こういったことから読書活動が学力の向上によい影響があるということが言えるかと思っております。
 続きまして、読書活動に関する各種データにつきまして御紹介させていただきます。
 まず、スライドの3ページ目は朝の読書活動の各学校で取り組まれている全校一斉の読書活動を実施している割合になりますけれども、これまで小中高校とも増加傾向にありましたが、直近のデータでは少し伸び悩みの傾向があるということが出ております。
 続きまして、スライドの4ページ目は小中高校生の1か月当たりの読書冊数の推移になります。こちらですけれども、小学生、中学生はやや増加傾向にあり、高校生については、ほぼ横ばいで推移しております。
 続いて、スライドの5ページ目は基本計画で数値目標として定められております不読率についてです。不読率の数値目標につきましては、第3次計画におきまして、第3次策定の平成24年度から10年間で不読率を半減させることを目標としておりまして、現行の第4次計画においても、その数値目標を継続して目標とすることとしております。具体的には、今年度の令和4年度までに不読率を、小学生は2%以下、中学生は8%以下、高校生は26%以下という数値目標を定めているところでございます。
 一方で、現状につきましては、なかなかその数値目標の達成というところは難しい状況にあり、特に高校生の不読率につきましては、依然として高い数値となっております。
 スライドの6ページ目は、高校生の不読に関しまして、文部科学省の委託により調査研究をしておる内容になりますけれども、高校生が本を読まない理由につきましては、上から3つ御紹介させていただきますと、一番多い理由が、「ほかの活動等で時間がなかったから」、次に多い理由が、「ほかにしたいことがあったから」、3番目が「ふだんから本を読まないから」になっております。
 こちらの理由をもう少し細かく分析したものがスライドの7ページ目になりますけれども、先ほど御説明させていただいた上位2つ、「ほかの活動等で時間がなかったから」、「ほかにしたいことがあったから」と回答した高校生は、中学生のときは、「本をよく、まあまあ読んでいた」というような状況、もしくは「本が好きである」という傾向がございます。一方で、ふだんから本を読まないと回答した高校生につきましては、中学生のときに、「そもそも本を読んでいなかった」、「本が好きではない」という傾向があるということが分かっております。
 また、スライドの8ページ目は読書をするきっかけですけれども、「好きな作家やジャンルがある」、あとは、「物語を読むことが好きだから」という理由が、小中高全年代において上位を占めている状況となっておりまして、ある程度本が身近にある環境があることが、読書活動につながっていくことが推察されると思っております。
 そして、これらの調査結果等を踏まえまして、高校生に対する読書の推進方策を図式化したものが、スライドの9ページ目の表になっております。中学生のときに本を読んでいたり本が好きだったものの、高校生になってから本を読まなくなったというような方に対しましては、限られた時間の中で読書をしたり、読書の優先順位が上がるようなきっかけづくりを行う必要があるのではないかと考えております。また、もともと中学生のときから「本を読んでいなかった」、「本が好きではない」というような回答をした高校生の方に対しましては、やはり高校生になってもなかなか本を読む機会というのが少ないというのが現状であるかと思います。こちらに関しましては、先ほどのものとはまた別のアプローチが必要でございまして、高校生になるまでに、まずは読書習慣を形成する必要があるというようなことを考えております。
 続きまして、スライドの10ページは電子書籍の読書状況につきまして、文部科学省の調査研究の結果を御紹介させていただきます。
 こちらは、児童生徒が過去1か月間において電子書籍をどの程度読んだかという、平成30年度の調査になっております。このときは、小学生、中学生、高校生のいずれも約2割程度が電子書籍を読んだと回答されております。こちらは平成30年度の調査となりますので、1人1台端末が普及した現時点でどうなっているかというところはまだ分からないところではありますけれども、御紹介させていただきます。
 併せて、スライドの11ページ目にありますが、平成30年度の当時でも、「紙の本を読んでいないけれども、電子書籍を読んだ」と回答した子供も、ごく少ない割合ですけれどもおりました。こうした子供たちがいることも含めて、電子書籍との関わり方や、読書活動の在り方については考えていく必要があるのではないかと考えております。
 また、スライドの12ページ目は、民間の世論調査で、電子書籍を読んだことのある割合を年代ごとに示したものになっております。若い年代ほど電子書籍を読んだことがあるという回答の割合が高くなっております。
 そしてスライドの13ページ目からは、また文部科学省の調査研究に戻りますけれども、子供の読書活動で電子書籍を活用した取組を行っているかという問いを自治体に聞いたものになります。令和2年度の調査になりますけれども、この時点で、「電子書籍を活用した取組を行っている」というような回答をした割合は約1割弱になっております。
その取組を行っている自治体に対しまして、スライドの14ページではどういう取組を行っているかを聞いた質問になります。「公立図書館の設備や蔵書の充実」ですとか、「公共図書館の利用増大」、「特別な配慮を必要とする子供たち向けの電子書籍の購入」が回答の上位に来ております。
 また、スライドの16ページで公立図書館の電子書籍の導入状況につきましても聞いております。「電子書籍を貸し出している」ところが約1割、「導入予定がある」、「検討している」という回答があった自治体が約3割弱となっております。
 さらに、スライドの17ページで電子書籍の活用が、児童生徒の読書活動推進につながった図書館はどういう取組を行っているかを調べております。「つながった」と回答した図書館が、そうでない図書館に比べて、電子書籍を活用した様々な取組を行っているという結果になっております。
 資料5につきましては以上とさせていただきますけれども、参考資料で、基礎的な資料も添付していますので、また随時御覧いただければと思っております。
 これらの現状等も踏まえまして、事務局で、本会議の論点の案につきまして検討いたしました。こちらが資料6になります。
 1つ目ですけれども、発達段階や多様な特性に応じた読書習慣の形成、2つ目が読書とICT(情報通信技術)のベストミックス、3つ目が地方公共団体の推進体制という3つの柱で考えております。
 まず、1つ目の発達段階や多様な特性に応じた読書習慣の形成についてです。生涯にわたって読書に親しみ、読書を楽しむためには、発達段階に応じて読書習慣を身につける必要があると考えております。子供が本を読み、本を好きになるようにするためには、乳幼児期から読書習慣を形成するために、どういった取組が効果的であるのか、学校教育において主体的・対話的な深い学びの実現に向けて取組が今も実践されているところですが、そうしたところと関連させて、どういった取組を行うことが効果的なのか。また、高校生の時間が限られている中で、読書をするきっかけになるような効果的な取組というのはどのようなものか、さらに特別な支援が必要な子供や外国籍の子供など、誰もが読書に親しむ環境を整備していくということがますます求められてきておりますので、そうした中で、推進方策はどのようなものになるのか。あと最後に、学校、NPO、公立図書館、民間団体等の連携をどのように促進するか、こうしたところが論点になるのかなと考えておりまして、提示させていただいております。
 また、2つ目の読書とICTのベストミックスになりますけれども、スマートフォン、電子書籍の普及やSNSなどのコミュニケーションが多様化している中で、ICTの活用を読書活動にどう結びつけていくのか。紙と電子書籍、それぞれの強みを生かして読書活動をどう考えていくのか。こういったところが論点として考えられるのかなと思っております。
 最後、3つ目ですけれども、地方公共団体における推進体制についてとなります。読書活動推進の基礎となる読書推進計画の策定をどのように促進させていくのか。地域間、学校間における読書活動推進の取組の差を解消するために、どのような方策が考えられるのか。また、これらの主体、読書活動を支える人材、例えば司書教諭や学校司書の方々をどのように育成していくのか。こうしたところが論点に考えられるかと思っております。
 以上、3点が事務局で考えました論点でございますけれども、こちらのほうに限らず、委員の先生の皆様からも御自由に御意見等もいただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは以上になります。
【秋田座長】  御説明をありがとうございました。
 それでは、事務局から御説明がありました、子供の読書活動推進の現状等を踏まえ、本日は委員の先生方から、御認識されておられる子供の読書活動の現状や課題の取組内容などについて御発言をいただければというふうに思います。今回は第1回、初回でございますので、五十音順に御発表をお願いできればと思います。
 それでは初めに、有山委員からお願いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【有山委員】  よろしくお願いします。初めまして、軽井沢風越学園の有山裕美子といいます。今、主に小学校3、4年生を担当しています。現場の1教員として、こういった会議に参加させていただけることを大変うれしく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 私が勤務する風越学園は、学校全体がライブラリーになっていて、すぐそばに本があって、いつでも子供が本を手に取れるという環境を大事にしています。また、幼稚園の子供たちから中学3年生まで在籍していまして、まさしく発達段階に応じて、幼稚園から中学3年生の子供たちの読書をどうやって支えていくかというのを常に課題にしております。
 そうした環境の中で、読書をするというときに、本当に豊かに読むということはどういうことなんだろうということをいつも考えています。言葉の意味が分かるとか字づらが追えるということだけでは、やはり豊かな読書とは言えないのではないか。たとえば、自分の体験と結びつけながら、それを読書の中で想像力を膨らませていったり発展させていったりする、そういった本当に豊かな読書というのを常に考えていきたいなということを日々感じています。
 また、子供たちの次の1冊をどう手渡すかということも、一人一人を見ながら大切にしています。本校では、「読書科」という科目を設定していて、国語の中でひたすら読む、たっぷり読む、「読んで読んで読みまくる」という時間をつくっているのですが、そのときも、やはり先ほど言った豊かな読書は何だろう、といったことを意識しながら常に授業を行なっています。「豊かな読書とは何か」、ということもまた、委員の先生方と一緒に考えていきたいなと思っています。
 論点の中にある、高校生の不読という話ですが、私は一昨年まで東京の中高に勤務していたのですが、やはりなかなか高校生が読書に結びつかないというのは悩みの種でした。しかし読まないといっても、テキストにはかなり触れていて、実際にはデバイスの中で多くの文字を読んでいます。その文字を読んでいる力をどう読書に結びつけていけるということは、私の中で、やはりとても気になっているところであります。
 また、新学習指導要領の中で、高校国語の文学作品の取扱いがいろいろ変化してきているということもあって、改めて高校生に本をどう届けるかということを先生方と一緒に考えていきたいなと思っています。
 3つ目のICTとのベストミックスという点ですが、前任校で電子書籍を活用していました。その時の体験を通して感じていることは、紙か電子かのそれぞれのよさを生かした読書の在り方ももちろん大事なのですが、先ほど申し上げた通り、子供たちは、常にデバイスを持ってたくさんのテキストに触れているので、単に紙か電子かではない、ICTを使った新しい読書の在り方というのも模索していきたいなと思っています。例えば、読書の中で感想を外に伝えていくときにICTを活用したり、自分で電子書籍をつくることに関わったりするとか、アウトプットも含めたICTを使った読書の在り方も考えていきたいと思っています。
 公共との連携という点では、長野県立図書館もいよいよ電子書籍を導入するということになりまして、長野県立から電子書籍が借りられるかな、という話も学校の中で出ていまして、学校と公共図書館など、いろんなところが連携して読書を考えていくということはとても大事だなと思っています。
 ちょっと雑多な意見になってしまいましたが、より豊かな読書をどう支えていくか、この会議を通して考えていけたらなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】  有山委員、ありがとうございます。
 それでは、続きまして、稲井委員、お願いいたします。
【稲井委員】  大正大学で教育学を担当している稲井でございます。1年半前にオープンした新しい附属図書館の館長を務めております。
 論点について現在考えているところを申し上げます。まず、高校生の不読率をどう解消するかということなですが、高校生はZ世代といわれていて、今話題になっていますように、動画も1.5倍速で見るような世代でございます。スマートフォンと非常に親和性が高い世代で、高校生は多忙ということですが、コロナ禍で部活動が制限されたにもかかわらず、なかなか本を読むということにはつながっていないと思うのです。新しい学習指導要領の中で、探究学習、探究科目も複数設置され、高校の現場の探究学習、大学や社会につながる学びとして、そういう意識・関心が大変高まってきているのを現場を回りながら実感しているところでございます。
 これを好機と捉えて、例えば探究科目や、あるいは高等学校で今まであまり重視されてこなかった「総合的な探究の時間」の中に、探究学習を通して本と出会い、本をしっかり読んでいくようにする。物語や小説を読むのとは異なりますけれども、課題を解決するために読んでいく、そういう目的意識を持って、本と出会い、本をしっかり読んでいく、そういう場も同時に設定していく必要があるのではないのかということを、まず1点目として思っております。これが、実社会・実生活につながる読書の役割になると思います。
 2点目のICTとのベストミックスについてです。私は学校図書館だけには限界がある、学校には限界があると思いますので、公共図書館、あるいは大学の附属図書館を活用して、連携し合って、対面、あるいはオンラインで、本と出会ったり本について知ったりするようなコミュニティー、そういうものを対面とオンラインで試行的につくっていく必要があると考えております。本学の図書館も豊島区と連携して、児童生徒が自由に行き来できるような場にしようと準備中ですが、そういう「サードプレイス」のような場を、地域の中に、学校教育と連携してつくっていく必要があると考えております。
 3点目の公共自治体の役割です。学校の働き方改革が言われる中で、なかなか、学校教育にも私はやはり限界があると思います。電子書籍を段階的に例えば導入していく、あるいは新聞についても、電子版を読めるような状況を段階的につくっていくためには、やはり自治体の、特に公共図書館の力を借りる必要があると思います。それをどうつないでいくかなのですが、例えば読書コーディネーターのような、地域の公的機関と学校教育を結びつくような人材、そういうものも試行的に実施しながら、ICTとの公共団体の役割をうまく活用していくという道も模索していいのではないかと思います。新指導要領の中で、「社会に開かれた教育課程の実現」ということがかなりいわれていて、これは、ややもすると抽象的に捉えられがちです。私は、「地域に開かれた学校づくり」をもっと先に進める好機と捉えていますので、学校と様々な機関が、手を取り合って、子供たちの読書活動のために模索をする必要がある、その例として電子書籍の段階的な導入、読書コーディネーターのようなものを活用していく、そんな道もあっていいのではないかと考えます。
 つまり、まとめますと、学校教育だけは、やはり、どうしても人材の面、時間的な面で制限がございますので、様々な社会の人材や、そういう面で強い方の力を借りながら、いろいろな本と出会う、知る場をつくっていく、そういうことが必要だと考えております。
 3点の「論点」について、今考えていることは、以上でございます。失礼いたします。
【秋田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、鎌田委員、お願いをいたします。
【鎌田委員】  こんにちは、鎌田です。どうぞよろしくお願いいたします。
 現在、帝京大学教育学部の初等教育学科で教師教育に携わっています。教育方法・社会科教育に関心があるのですが、教育方法としての学校図書館、読書の指導に強い関心を持っていて、現場の先生方と授業研究をベースにしながら、授業改善などにも取り組んでいます。
 今回の会議に参加させていただくにあたって、今まで資料として読ませていただいた子供の読書活動の推進に関する計画などの様々な研究レポートをもう一度読み直して考えたのですが、論点の1つとして挙げられている、高校生が読書をするきっかけになるような効果的な取組はということは、非常に示唆に富むような指摘がされているのですが、私の専門としては、その手前は大丈夫なのかなというのがとても気になっていました。
 小中学生は、極めて高確率で本を読んでいるというようなデータが出ているのですが、本当に読めているのかなとか、有用な自分の学び方の方法として読書が果たしてできているのだろうか。それを考えますと、例えば調査の数値というのは大変貴重なものだとは思うのですが、これについて見直す必要がないだろうかということがずっと気になっていました。
 ただ、私の関心は、学校現場の割にミクロなところにありますので、なかなかそちらのほうには意は行かなかったのですが、そこを考えたいなというのが、1つ関心としてございます。
 なぜそのようなことを考えるかと申しますと、私は教育方法が専門の1つだと申し上げたのですが、この十数年間、ICT機器を学校に導入するという、先生方と共同研究を重ねてきて、ツールとか環境とかについては関心の高い先生が多くいらっしゃるのですが、それを使ってどのような学びを展開していくかというところには、まだあまり関心がいっていないような感じを受けているのです。ところが、学校図書館を活用されて探究されている、実践されている先生方は、そこにこそ重点があると私は捉えています。だから、うまくこの両者が連携してくださると、いい時代がやってくるのではないかなというような気がしているので、まずはこのICTと、それから紙媒体だけではないとは思うのですが、読書の考え方の革新みたいなところを考えていきたいなと思っています。
 ということで、1つ目の私が気になっている点は、先ほどの論点では主体的、対話的な深い学びの実現に向けた効果的な取組というところで、初等中等教育の実態と絡み合わせて子供たちの読書実態を考え直していくということが重要ではないかと考えています。特にその中で、先生たちの意識はどうなっているのかということがあまり話題にされていない気がするのですが、そこがとても大切な気がしています。幾つか関わらせていただいている自治体の中では、うまくその辺が機能しているところがあるのですが、そのポイントになるのは、先生方の意識が非常に他の地域と違うことが挙げられるかなと思います。他の地域の先生方に意識がないということを申し上げるつもりではないのですが、優先順位の問題があるのだと思うのです。学校現場は、皆さん御承知のとおり、大変忙しくて、先生方の働き方改革に取り組まなければならない状況なので、たくさんやらなければいけないことがあるし、子供たちにとって、これも必要、これも必要ということで、日夜先生方が頑張られていると思うのですけれど、その中の優先順位をどうしていくのかということが1つ課題になっていると思います。私は、読書とか図書館を活用して探究的に学ぶということは、少なく教えて多くが学べるようになっていくためにはとても大切な方法だと思っているのですが、なかなかそこにいかないのはなぜなのか、そこを変えていくためには何が必要なのかということが、この委員の皆さんと一緒に御議論させていただいて考えられるとよいなと思っています。
 その中の1つとして、まずは、論点のところの(3)のところで示されていた地方公共団体の推進体制についてということで、先ほど稲井先生からも御指摘があって、私もそのとおりだなと思いましたが、学校だけでは確かにうまくやっていけない、公共や地域の方々との連携はとても大切。ですが、学校の中にも実は推進の担当されている方がいらっしゃるので、学校司書とか、それから取りわけ課題だと思っているのは、司書教諭の先生方の意識改革であるとか、働きかけ方をどういうふうに変えていけるかということで、司書教諭のパワーアップみたいなことを考えていかなければいけないのではないかと思っています。
 最後にもう1点、ICTとのことを考えて、そこのことを指摘させていただいておしまいにしたいと思うのですが、電子媒体であろうが紙媒体であろうが、どこでもいいから、子供たちと活字とかそういうものを結びつけることができるのであったら、つなげていかなければいけないのではないかというのが私の関心事です。もちろん、今心理学の研究の中で様々なことが言われてきていて、紙のほうが有効だという話も重々承知しているのですけれど、でも、デジタルからだったら入れる子供がいるのだったら、せっかく国もGIGAスクールで、学校現場に、電子機器を入れてくださっていますから、そこからつなげることも一緒に考えていきたいと思います。
 すいません、以上です。
【秋田座長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして、桑原委員、お願いいたします。
【桑原委員】  よろしくお願いいたします。私は、平田村立ひらたこども園で保育教諭をしております桑原真希と申します。本日は、すばらしい先生方と御一緒させていただけること、大変光栄に思っております。こういった貴重な経験をさせていただくことに感謝しまして、園での読書活動のためにも学ばせていただきたいなと思っております。
 私どものひらたこども園では、ゼロ歳児から就学前児童まで、6歳児までをお預かりする幼保連携型認定こども園となっております。現在、私は3歳児のクラス担任をしておりまして、毎日が追いかけっこのような、そういった日々を送っております。
 当園では、読書活動に関しまして、独自の読書活動計画を作成しております。ゼロ歳児から6歳児までが全ての読書活動に対して、「発達段階に応じたねらい」を設定しております。全職員で情報を共有しながら読書活動に励んでおります。
 中でも、「家読」という活動、これを計画の柱としておりまして、園児と保護者と職員と、読み聞かせボランティアの方々を含めた地域の皆さんとが1つの輪となるような、切れ目のない読書活動を行っているところです。
 論点につきまして、先ほど、いろんな先生方のお話を聞きながら、そのとおりだなと考えながら聞いていたのですが、この論点の乳幼児期からの読書習慣を形成するために効果的な取組はどのようなものなのかということに関して、思っていることですが、ゼロ歳から6歳まで、同じ活動では駄目といいますか、ゼロ歳児ならではの読書活動、6歳児だからできる読書活動というものがあるかと思います。幼保教育要領から、私どもは、園の教育課程を編成して、その中で「ねらい」を設定してという活動が、保育活動の中には十分活かされているのですが、やっぱりその読書活動であっても「ねらい」というものはやはりあってもいいのかなと思っています。この「ねらい」をゼロ歳児から6歳児まで細かく設定していくことが、発達段階に非常に有効かなと思っています。
 資料のほうを共有させていただきたいのですが、私どもの読書の活動のねらいというものを今年度からさせていただいているものがありまして、これは、読書活動の今年度のものですけれども、この読書活動ですが、大きな活動の目標としては、「絵本大好き」と言えるこどもの育成と、これが最終的な目標で、どの学年もここに行き着くようにというか、こういったことが言えるお子さんだったらいいなと考えています。そして、発達段階に応じた活動のねらいというもので、活動一つ一つに、ゼロ歳児だったらこんな姿があったらいいな、5歳児だったらこんな姿があったらいいなというものを、今年度初めて「ねらい」として設定してみました。こういったものが、設定の中でやっていく上で、非常に重要なのかなというふうに考えています。
 読書のICTのベストミックスについてですけれども、私、高校生の息子がおりまして、ちょっと息子にいろいろと聞いてみたりもしたんですけれども、紙と電子書籍のそれぞれの強みは何だろうということを聞いてみたんです。そのときに、紙はデータじゃないので、通信費が気にしなくていいと。ギガ数を気にしなくていいというところで、電子書籍のよさは何と聞きましたら、手軽さだと。やっぱり簡単に入れるし、いつでも読めるという、その手軽さがいいと。ただ、ギガ数の設定をもっと多くしてくれれば、もっと僕は読めるのになという話もしていましたけれども、そういった強みというのは紙にも電子書籍にもあるので、そういったものを比較できるような、何か目に見えるような形があったらいいのになというふうには考えています。
 地方公共団体の推進体制についてなのですが、これには、私の自治体も含めて思っているところがありまして、担当者と行政との温度差であったりとか、やりたいなと思ったことがすぐにできるわけではないといいますか、そういったところの温度差、その温度差を策定する段階でどうやって埋めていくのかなという、その課題をすごく感じています。やっぱり努力義務なので、強制ではないので、どうしても現場で思っている熱量と行政の考える熱量というのが違ってくるのかなというふうにも思います。そこをもう少し改善できたらいいなというふうに思っています。
 読書活動を支える人材をどのように育成するのかというものに関しましては、私どもは保育士として働いておりますので、図書に関する専門的な知識というものが乏しいと、自分でもっと学べなければいけないなというふうに常に思います。読書の活動を通して思うことですけれども、実務経験が、例えば何年あったらこんな資格がもらえるよとか、学校で言う学校司書というか、司書としての役割といいますか、「司書保育士」のような、そういったものが自分の中にあれば、きっとモチベーションとしても先生たちも違うのかなというふうにも思ったりもしています。
 子供の読書の意欲には環境が大きく関わってくるのかなとも思っていますが、全ての子供たちが同じ環境にいるわけではなくて、手にする絵本が少しでも多く届くように、私たち大人がいかに環境を整えていくかが大きな課題かなと思っています。決してハード面の環境だけではなくて、人的な環境といいますか、それをよく知った大人たちが子供たちに関わるということがすごく大事かなというふうに思っています。
 先生方の御意見も伺いながら、本当だなと思いながら先ほどから聞いていました。自身の学びとさせていただけましたら、大変ありがたく思います。
 長くなってしまいまして、申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】  ありがとうございました。
 それでは、設楽委員、お願いいたします。
【設楽委員】  全国学校図書館協議会の設楽です。よろしくお願いします。
 当会は、全国に62組織の学校図書館研究団体がありまして、研究団体の先生方と一緒に、日々読書推進と、学校図書館の振興等で、子供たちの学びをどのように育むかについて研究しております。
 先ほど資料にもありましたが、当会は、毎年、学校読書調査と、学校図書館調査を実施しております。学校読書調査で一番引用されるのは、「5月1か月間の読書冊数の推移」です。確かに小中学生は、2000年以降、読書冊数が増えてきたという結果が出ております。これは、「子ども読書年」「子どもの読書活動の推進に関する法律」「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」等の施策によって読書推進がなされた結果ではないかなと考えております。一方、高校生については、相変わらず読書冊数は横ばいで、これが読書離れにつながっているという御意見があります。このことについては、もう少し分析しないといけないとは思います。読書調査は、ただ単に読書冊数、「本を何冊読んだ」かの調査です。読んだ本のページ数までは調査していません。
 小中学生に比べて、高校生は1冊が厚い本を読む傾向があるのは御承知のとおりです。長い間の読書調査をしていて、高校生を取り巻くデバイス環境が大きく変わっています。つまり、ポケットベルから携帯電話、スマートフォンというように、多様なデバイスが高校生の身の回りにあふれる中で、読書冊数が横ばいということは、読書をするという、習慣がある程度身についているとも分析できます。また、別の調査では、小中学生の頃に本を読んだ高校生は、確かに部活動とかで忙しくなるとしても、やはり本を読むという結果が示されています。従いまして、本を読む生徒とそうでない生徒の二極化が進んでいるということは事実だと思います。このことにつきまして、議論を進めて、いかに高校生が読書に親しむかについて研究したいと考えております。
 また、ICTの活用については、学校図書館には紙の資料がたくさんありますが、紙だけではなく、電子書籍の活用も大切だと考えております。さらに、紙も電子もということについては、紙であるとか電子であるとかというメディアの違いではなくて、鎌田先生や稲井先生のご指摘のように、中身の問題だと思います。つまり、子供たちが読みたくなるようなコンテンツをどのように提供できるかが非常に重要だと思います。そのためには、紙であるとか電子であるといったメディアの違いを論ずるよりも、やはりメディアとしての特徴は何か、電子メディアとしての特徴は何かということを踏まえて、紙と電子の両方を上手に活用していくことが、これから大切ではないかなと考えております。
 当会では、電子メディアの手軽さは、否定できないものと捉えております。電子メディアを資料の検索に活用して、紙メディアで深く読み解くような、電子と紙のメディアの特徴をそれぞれ踏まえた学習の仕方を提案したいと考えております。
 また、学校図書館はなかなか予算的に難しい状況ではありますが、電子書籍を学校図書館単独で導入するのは、各研究団体の意見を聞いても難しいとのことです。先ほど稲井先生からありましたように、地域で連携して、電子書籍ライブラリーの充実を通して、学校で公共図書館から電子書籍が借りられるようなシステムをつくっていくことが豊かな読書活動につながっていくと考えております。
 最後に、読書については、やはり2通りあると思います。読書をして楽しみ、喜びのための読書と、もう一つは、読書によって学び、調べるための読書です。この2つの読み方の違い明確に指導することで、子供たちがどういう資料から何を学び取るかが確立していくと考えております。
 雑駁ですけれども、以上です。
【秋田座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして、島委員、お願いをいたします。
【島委員】  日本図書館協会児童青少年委員会委員長の島と申します。どうぞよろしくお願いをいたします。
 5分ということですので、1つに的を絞って、資料を共有してお話をさせていただきたいと思います。
 有識者会議の検討項目の1つに、発達段階に応じた読書習慣の形成がございます。そこで、子供の成長と子供の読書を支えるものという視点でイメージ図を作成してみました。これは、学校図書館、幼稚園・保育園、家庭、読書ボランティア、公立図書館に分けて、子供の読書との関係性を強弱3つの星印で示したものです。
 上から見ていきますと、学校図書館は、小学校1年生から高校生まで強い関係性がございます。幼稚園・保育園は、園によって大きな差があると思いますが、一定の関係性があると思います。家庭は、乳幼児期には強い関係性がありますが、年齢が上がるごとに関係性は弱くなっていくのが一般的であろうと考えています。読書ボランティアは、乳幼児から小学生までを対象に活動を行っている場合が多く、小学生までのところに星印を入れてみました。
 公立図書館のところを御覧ください。「プレパパママ教室」というのがございます。自治体の健康センターなどでは、出産前のパパママを対象に育児教室が開催されているところがあります。私も呼ばれて30分ほど絵本のお話をさせていただいたことがあります。子供の年齢のところでは、マイナス0.5歳のところに印をつけました。三、四か月になりますと、自治体によって呼び方が違いますが、「ブックスタート」を図書館が中心になったり、協力して行っている自治体が多いと思います。
 次に、乳幼児向けおはなし会がございます。この事業は、コロナ禍で中止した図書館が多かったのですが、ここに来て、定員を少なくしたり回数を増やしたりして、再開する図書館が増え始めております。コロナ禍の前ですけれども、私が勤めていた図書館では、ベビーカーが一列にずらっと並び大変好評な事業でした。
 幼稚園・保育園などへの団体貸出し、出張お話し会など、親子で図書館を利用される以外にも、学齢前の子供との関係性は強いものと思います。子供が小学生になると、学校図書館との関係が強くなります。公立図書館との関係では、放課後の利用、土日、長期休暇のときの個人利用に加え、学校図書館との連携協力も子供の読書を支えるものであると思います。公立図書館では12歳から18歳を対象に、ヤングアダルトサービス(YAサービス)を実施しております。この世代にどう読書の楽しみを伝えていくのかというのは、今現場では大変苦労しているところでございます。このYAサービスも、今後、充実していくことが大切だろうと思います。全体的には、公立図書館は、地域に対して読書の大切さを発信していくという大きな役割があります。
公立図書館の特徴をまとめますと、1つは、地域社会のなかの図書館であるということ、読書ボランティアや読書バリアフリーや多文化支援などのグループとの連携、子ども食堂などへの団体貸出しなど住民との関係、また、自治体の各機関との連携協力など、本を通して地域づくりに貢献する役割を持っているというふうに思っております。
 2つ目は、公立図書館は誰でも利用できる機関です。親子、きょうだい、友だちとの利用が多くあります。お互いが誘い合って、読書への関心が高まっていくものだと思っております。
 3つ目は、継ぎ目のない子供への読書支援です。子供の成長段階の変化に対して、公立図書館は、継ぎ目のない読書支援ができる機関だと思います。このように、子供の成長と子供の読書を支える機関との関係をイメージ図で表してみました。そこから見えてくるのは、学齢前の対策と、学校図書館などとの連携協力の体制づくりをどうつくっていくかだと私は考えています。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、清水委員、お願いをいたします。
【清水委員】  東京子ども図書館の清水千秋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 自己紹介を兼ねて、当館の活動を御紹介させていただきたいと思います。ちょっとお付き合いくださいませ。
 私自身は、2002年より職員として働いておりまして、児童室や分室のかつら文庫などで子供への直接サービスを担当するほか、近年では、お話、ストーリーテリングやブックトークなどの講座の講師なども務めております。
 当館は、1950年代から60年代にかけて、都内4カ所で始められた、家庭文庫が基になって生まれた、全国でも珍しい私立の図書館です。子供たちへのサービスのほかに、子供と本の世界で働く大人のために、資料室の運営、出版、講演講座の開催、人材育成など、様々な活動を行っています。
 館の運営は、事業収入のほか、全国に1,800人ほど御寄附を寄せてくださっている会員の方々がいらっしゃいます。コロナ禍で講師を派遣できないケースが続きまして、自館での来館型の催しも思うように開催できないこともあって、財政的にはかなり厳しい状況が続いております。
 当館は、家庭文庫時代から脈々と受け継がれている2つの思いがあります。ひとつは、自分たちが大好きで大切に思っている本を子供たちと一緒に楽しみたいということ。それからもう一つは、子供たちが本を読む姿から、子供のためのよい本とは何かを学びたいということです。
 こうして、設立から48年、2024年には50周年を迎える団体です。そして、名誉理事には石井桃子さん、それから名誉理事長には松岡享子さんがいて、松岡さんは残念ながら1月にお亡くなりになりました。
 先週なんですけれども、近隣の中野区の小学校を訪問して、授業時間の45分をいただいておはなし会をしてきました。その折、学校司書としてその小学校に10年ほど勤務しておられる先生からこんな話を聞きました。感染症対策のため、図書の時間は貸出しと返却のみという状況が長く続いていて、子供に直接声かけをする機会が、このコロナ禍で随分と減ってしまったそうなんです。すると、子供が本を読めなくなってきているという実感がすごくあるそうなんです。長く勤務されていることで、子供たち一人一人の読書傾向を熟知しておられて、今がチャンスという、そういう機を逃さずに、その子の読書力が伸ばせるように本を勧めてこられたそうなんですけれども、例えばこれまでなら、4年生に問題なく勧められたような物語の本が、6年生でようやくというような状況にあるそうなんです。中野区は学校司書が各校に1名ずつ、そして週4日16時間と、条件はともかくなのですが、配置されております。近隣の県でも、1人で数校兼務しているというような話もよく聞きますので、都内では比較的恵まれた環境の小学校でもこのような状況なんです。もともとの環境による格差というのが、コロナ禍でますます広がってしまっているのではないかと大変心配しております。
 私は、子供に本を手渡す大人が身近にいることが、読書力を伸ばし、読書環境を身につける一番の近道だと考えています。つまり、司書や学校司書の待遇の問題、それから専門性の確保の問題というのが、より一層重要になってきているとひしひしと感じています。
 当館は、保護者の方々と直接対面でやり取りをして、ダイレクトにそういった声を聞けるだけでなく、コロナ禍でもZoomを使った講座など多数開催しておりますので、全国の図書館員や、それからボランティアの方々、司書の方々ともつながりを持ち続けております。ネットやスマホ、それから受験、習い事と、子供の読書環境をよくしていくには多くの問題があると思いますが、この会議では、私の周囲から聞こえてくる生の声というのもできるだけ多く委員の皆様にも知っていただきながら、基本計画の策定に関わっていきたいと思います。たくさん学ばせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【秋田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、白井委員、お願いいたします。
【白井委員】  ブックスタートの白井です。
 前回の有識者会議に引き続きまして、また委員を拝命いたしまして、皆さんと意見を共有させていただき、読書のことについていろいろ将来を考える、私どもにとっても勉強になりますし、何かお役に立つことができればと思っております。
 ブックスタートのことについては、今、これまでの御発言にもちょっと触れていただきましたが、自己紹介も兼ねまして、少し活動について紹介させていただきますと、ブックスタートの活動が日本で始まりましたのは2001年からです。英国で1992年に始まりまして、日本は国としては2番目、2001年4月には12の自治体で始まりました。2002年度末には約300自治体に広がりました。それから、平成の大合併とかいろいろな事情の中で、言わば草の根的にじわじわと広がって今日に至っております。現在では、およそ60%の自治体で実施をしておりまして、生まれてくる今の日本の赤ちゃんのほぼ半数が対象になっています。主にゼロ歳児を対象にしているんですが、絵本を手渡すだけではなくて、そこで絵本をシェアする。シェアブックスと呼んでいるんですけれど、絵本を赤ちゃんに広げて見せて一緒に楽しむ。その体験とともに絵本を手渡す活動です。自治体ごとに、自治体の予算でもって行われています。私どもはその推進団体として、この活動を全国に普及するためのいろいろな活動を行っております。
 当初より、出版界の応援をもらって、この活動が民間の活動として自立できるような形で、ここまで20年経過しました。20年のこれまでの活動を振り返りまして、今年の2月に書籍『ブックスタートの20年』を刊行しました。機会がありましたらお目通しをいただければありがたいと思っております。
 前回の会議から5年の間に各地のブックスタートにもいろんなことがありまして、特にコロナのことはかなり大きな影響がありました。私は今マスクなしで話しておりますけれど、ほとんどの地域ではやっぱりマスクをして、いろいろな感染対策をしながら、このブックスタートをやっていく。それで、いろいろ自治体ごとに、いろいろな工夫も生まれました。マスクをしているということは口元が見えないんです。保護者に対しても、赤ちゃんに対しても。そうすると、なかなか伝わらないものがありまして、それをどういうふうに伝えるか。結局は、マスクで見えないところを、目の表情とか、あるいは声とか、様々な工夫をすることによって心を伝えていく。その中でマスクの下は心の笑顔というような言葉が出てきました。
 ブックスタートの大事なところは、乳幼児時期からの読書習慣を形成するため、1つのきっかけづくりでありますので、やっぱり楽しさなんです。絵本を広げたときの楽しさ、そこから、その経験を基に、学びということも、いずれはつながっていくと思う。最初の段階の本との出会い、楽しさの経験、それがあることによって、また高校生ぐらいになったときの読書も深まるきっかけになるのではないかと思っております。
 これまでも全ての赤ちゃんに、このブックスタートのきっかけをもって本に出会ってもらうことを大事に考えてきました。全ての赤ちゃんの中には、外国語を母語とする赤ちゃんや保護者も障害のある方もいらっしゃいます。そうした方々に向けて多言語対応の資料や点字などによる資料も作成しています。これからも大事にしてきたいところです。
 年齢、性別、あるいは文化の違いも超えて、絵本1冊を持って赤ちゃんに近づけば、誰もが赤ちゃんと心を通わせることができるのがブックスタートの大きな特徴だと思います。誰もが参画できる、そういうところを、これからも大事な部分として考えていきたいと思っております。
 おかげさまで、20年の間にじわじわと広がったことによって、この活動の対象となった赤ちゃん、あるいは保護者の方も、だんだん増えております。ブックスタートを経験して、それによって得た本の喜びを今度は自分も応援する側から提供したいという方々も多くなってきたかなと思っています。そういう方々にも、子供への読書に参画する呼びかけといいますか、機会とか、そういうものもつくっていければというふうに思っております。長くなってしまいましたけれど、そのようなことを考えておりまして、また皆様と意見を共有しながら、これからのことを考えていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【秋田座長】  本当に恐縮でございますけれども、あと6名おられますので、残りの方にも恐縮ですが、お一人5分以内でお願いをしたいと思います。
 富永委員、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。
 
【富永委員】  よろしくお願いいたします。千葉県市川市教育委員会学校教育部指導課の富永と申します。このような会議に参加させていただきますこと、大変光栄に思いますとともに、大きな責任を感じているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは、学校教育における学校図書館活用という視点から、本市の読書活動についてお話をさせていただきます。
 まず、中央教育審議会より示された令和の日本型学校教育では、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現が求められています。また、これらの学びは一体的に充実させ、主体的、対話的で深い学びに向けた授業改善につなげていくことが重要だと考えます。私は、ここに読書教育が大いに関わると考えております。
 では、画面を共有させていただきます。映りましたでしょうか。
 こちらは、市川市のリーフレットとなります。本市では、生きる力・夢や希望を育む学校図書館を目指すべき図書館像として掲げ、学校図書館と公共図書館、さらに学校図書館相互のネットワークを構築することにより、学校図書館を通して教育活動の推進を図り、児童生徒の豊かな心、自ら学ぶ力を育み、生涯にわたって学び続ける市民の育成を目指してまいりました。これは、リカレント教育にも通じる理念であると考えます。
 本市の読書活動への取組というのは1950年代より始まっておりまして、本の力に着目した読書教育を皮切りに、学校図書館を活用した取組を通して現在に至っております。また、学校司書の配置も1979年から配置し、子供たちの学びを授業者である教諭とともに支えてまいりました。さらに、司書教諭の配置も2003年に完了しております。その後、2006年、文部科学省の研究委嘱事業を足がかりとして、市川市学校図書館支援センターを設置し、子供たちの読書活動や学習活動に、豊富な図書をはじめとする様々な情報を提供し、豊かな読書力、言語力、確かな問題解決能力の育成を推進してまいりました。以前、私はここの事務局を行っておりました。
 続きまして、本市の学校図書館は、読書生活を支える図書館、学習を支える図書館、研究を支える図書館の3つの機能を併せ持った図書館づくりを推進しております。そのほかにも、新聞を取り入れた学習の歴史も深く、新聞を読むだけではなく、児童生徒が自ら集めた情報をまとめて新聞を作成するという活動も、読書教育と同様に学校教育の中で実践してまいりました。学校生活の中では、先ほどどなたか先生もおっしゃっていましたけれども、読書活動は、目的を持って読む場面が多くなってくると考えます。児童生徒は、読書活動も新聞活用もどちらも学びの場面において文字情報であるという点が一致しているというところから学んでいくと思います。読書活動から、児童生徒は、この文字情報を個人の学びとしてまず最初に獲得していくと考えます。その際に、学校図書館を活用すると、授業者である教諭だけでなく、学校司書が一緒に関わることができ、個に応じた最適な学習環境を整えていくことができると考えます。
 次に、児童生徒は、集めた文字情報を基に、他者との関わりを求めて協働的な学習へと学びを進化させていきます。2017年に、市内の小中学生約3,000人に対して、授業で図書を活用した後に行ったアンケートでは、新しいことを発見した、ほかのことも調べたくなったという主体的な学びにつながる回答だけでなく、内容を友達に教えてあげた、友達との会話が増えたという対話的で協働的な学びにつながる回答もありました。これらの実態を、高等教育へもつないでいきたいと考えております。
 今後はGIGAスクール構想による1人1台のタブレットを活用することで、デジタル媒体も併用しながら文字情報を収集し、友達との情報共有や発信を通して読書活動の進化を目指していきたいと考えております。先生方と一緒に学んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【秋田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、中野委員、お願いいたします。
【中野委員】  東京都立多摩図書館の館長の中野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 東京都には、都立の図書館が2館ございまして、中央図書館と多摩図書館となっております。多摩図書館は、特に雑誌と児童青少年向けの資料を中心とする図書館というふうになってございます。
 多摩図書館の現状などを、今回、自己紹介がてら御紹介させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 現在、東京都は、令和3年度から7年度の5年間を計画期間とする第4次東京都子供読書活動推進計画というのを立てておりまして、それに基づいて子供読書活動推進に取り組んでございます。計画は、やはり高校生の不読率が依然として高いなどの課題ですとか、読書バリアフリー法の施行ですとか、学習指導要領の改訂等の状況を踏まえて策定されたものでございます。都立多摩図書館では、児童向けのエリア、絵本ですとか児童向けの図書を特に集めているエリアを「こどものへや」と称して特別にエリアをつくってございまして、そこに、昨年度、バリアフリーの本ですとか読みやすい本を並べた「りんごの棚」というのを設置したところでございます。このりんごの棚というのは、スウェーデンの図書館にりんごの棚というものがあって、それを参考にしたものなのですけれども、そこに、LLブックですとか、布の絵本とか、バリアフリー的な絵本を設置しています。特に子供におですね、幼児が手に取って見る、五感で感じられるというんですか、それができるという、五感で感じて読めるということで非常に好評でございまして、改めて、絵本というか、電子書籍ではなくて乳幼児期になるかと思うのですが、その時期の紙というか、布の絵本もあるのですが、五感で感じる絵本というのも大事なのではないかなというふうに思っているところでございます。
 今後は、日本語を母語としない子供たち、この子供たちが日本語を学んだり日本の歴史とか文化を理解することができる、やさしい日本語で書かれた本のコーナーなども設置したいと考えておりまして、また、特別支援学校での読み聞かせなども活動としてやっているのですけれども、その読み聞かせに関する本の冊子を改訂していきたいと考えております。
 また、高校生世代が参加する形の図書館の展示なども検討しているところでございます。
 高校生世代は図書館に、試験勉強のときにはかなり来るのですが、そのほかのときはなかなか来なかったりというのもございます。あと、青少年向けのコーナーで本をいろいろ展示しているのですが、なかなか青少年といいましても、中学生と高校生で、またその子供の発達段階と能力によっても違いますので、大人の本とほとんど変わらない本なんかもコーナーに置いています。特に人気なのが、進路に関する本のコーナー、大学の紹介ですとか職業の紹介ですとか、入学するにはどうすればいいか、そのような資料に関する本のコーナーというのを設けておりまして、そこが非常に好評というかよく使われている状況でございます。
 変わってコロナの関係なのですけれども、多摩図書館の来館サービスは、座席を少なくして、時間ごとの入替え制としておりまして、原則予約制としています。こどものへやも一般の方と同様に、座席を少なくして予約制を取り入れてきたんですが、それにより子供の来館へのハードルが高くなってしまいまして、特に小学生の利用が減少してしまっている現状でございます。常連の子供たちが離れていってしまった、学校の帰りにぷらっと寄っていただいていた子供たちが、当日利用の整理券というのもあるのですが、やはりちょっと敷居が高くなってしまって離れていってしまったというのが現状でございます。
 ただ、7月4日からはこどものへやの予約制はやめますので、夏休みに向けて自由研究の展示なども行って、子供たちの来館を促していきたいというふうに考えてございます。
 また、コロナにより集客型の事業も中止となってしまいまして、多摩図書館、区市町村立の図書館の児童サービス担当者向けの研修を毎年開催しているのですが、2年間ほぼ中止となってしまいました。区市町村への支援は多摩図書館の大事な事業でございますし、区市町村からも都への要望として非常に多いというのが現状でございますので、非常に忸怩たる思いを抱えていたところでございます。今年度からは、年2回、こういった研修も開催する予定でございますので、そういう意味では、また元の形にだんだん戻っていくのかなというふうに思っているところでございます。
 以上でございます。
【秋田座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、野口委員、お願いをいたします。
【野口委員】  専修大学の文学部で図書館情報学の教育と研究にあたっております野口と申します。よろしくお願いいたします。
 私は、子供の読書の推進、主に学校図書館に焦点を当てた研究をこれまで行ってきております。中でも、読書のバリアフリーであるとか、電子書籍の活用などに関心を持って研究を行ってまいりました。
 今回の論点の中の1つ目のところでは、もう何人かの方からも御発言がありましたけれども、特別な支援が必要な子供や外国にルーツのある子供への読書の推進というところに、これまで関心を持っていろいろな調査研究なども行ってきました。中でも、全国学校図書館協議会と私の研究室が共同で、6年に一度、全国の特別支援学校の学校図書館の詳細な実態調査を行っております。直近の調査は2019年に行ったのですけれども、その結果などを見ますと、特別支援学校では、小中高等学校の学校図書館と比べて、学校司書の配置率であるとか図書標準の達成率など、非常に大きな開きがあるのが現状です。ですので、特別支援学校の学校図書館環境をどう改善していくのか、充実していくのかということが非常に大きな課題になっていると思います。
 また、文部科学省は、令和2年度に学校図書館の現状に関する調査を行っておりますけれども、そこで初めて小中高等学校におけるバリアフリー図書などの所蔵状況を調べて公表しています。非常に貴重なデータだと思いますけれども、それを拝見しても、やはり小中高校でのバリアフリー図書の整備状況もまだこれからという状況になっております。
 今は、小中高等学校でも特別な支援が必要な子供たちはたくさん学んでおりますので、学校図書館の読書バリアフリーをどう推進していくのかということは非常に大きなテーマになっていると思います。読書バリアフリー法が2019年に制定されておりますけれども、取組を具体化していくのはまだこれからという段階だと思います。各学校図書館の予算も限りがありますし、やはり地域の公共図書館や点字図書館などとどう連携を強化していくのかが、読書バリアフリーの推進という視点でも非常に重要なポイントになってくるのではないかと考えております。
 また、論点の3点目にも関わりますけれども、司書教諭、学校司書の皆さん方の中には、どういったバリアフリー図書があるのかをまだ御存知ない方もいらっしゃいます。支援機器などについても、同様かと思います。ですので、研修の機会の確保は非常に重要ではないかと思っております。そういった辺りも、教育委員会とか公共図書館などと連携してどう進めていくのかがカギになるのではないかと思います。
 それから論点の2つ目、ICTの部分ですが、ここは先ほど鎌田委員が言われたことに私も全く同意するところでして、紙か電子かというよりも、紙でも電子でも読書のきっかけにつながっていくのであれば活用していくという視点が大事ではないかと思います。また、バリアフリーとか多言語対応も、電子書籍では可能なコンテンツもありますので、そういった視点でのICTの活用ということも可能性としては大きいのではないかと思います。
 最後にもう1点だけですが、今回、外国にルーツのある子供の読書活動推進が論点として上がってきているのは非常に大切なことだと思っております。同時に考えたいのは、外国に住んでいる日本の子供たちの読書活動の充実についても見逃してはいけない視点なのではないかと思うのです。今月17日に、在外教育施設における教育の振興に関する法律が施行になっております。日本人学校等における図書室の環境の整備・充実などを通して、外国に住んでいても国内の子供たちと同じように日本語で読書できる環境を保障していくことは非常に大切ではないかと思います。そういった視点などもこの計画の中に今後盛り込めるのかどうかは別にしても、委員のみなさんで共有しておく必要があると思っております。
 私からは以上です。よろしくお願いいたします。
【秋田座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、福田委員、お願いをいたします。
【福田委員】  こんにちは。三郷市読書活動アドバイザーの福田孝子です。
 私は、長年、小学校で教員、司書教諭を務めてきました。その後、三郷市の教育委員会で市の読書活動を推進したり、東京学芸大学で非常勤講師として司書教諭資格講座などを担当したりしてきました。現在は、三郷市内の読書活動推進に携わるとともに、広く市内外の中学生、高校生、大学生、地域の方々と読書会活動を展開しております。また、学校図書館活性化のサポートを全国学校図書館協議会学校図書館スーパーバイザーとして活動しています。学校司書、司書教諭の方々と接することも多く、子供たちの読書に対する情報も数多く入ってきております。また、学校図書館と端末をどうベストミックスしていくかということにも取り組んでいます。
 その中で感じていることを幾つか述べさせていただきたいと思います。
 1つは、読む力の大切さです。1人1台タブレット端末が入りました。紙の本であれウェブサイトの情報であれ、つまり、アナログであれデジタルであれ、読む力がないと読めないということです。小学校低学年から、この読む力をつけていく大切さを今痛感をしております。子供たちの育ちに読み聞かせが大切と言われて、以前より、乳幼児から絵本や読み聞かせに関心を持つ保護者の方々が増えてきました。とてもうれしいことです。
 しかし、その一方で、冊数は増えているけれど、子供たちの「読みの力」はついていないという声が多々聞こえてきます。この「読みの力」は、読書を楽しむ力になるとともに、主体的に学び、学びを支えていくスキルにもなってきます。発達段階に即して小学校の段階で「読みの力」をつけていく大切さを、鎌田先生もおっしゃっていましたが、痛感をしております。
 もう一つは、中高生の読書です。前回、高校生は忙しくても読書習慣が身についている生徒は読んでいる。だから、中学校卒業までに読書習慣を身につけさせていくことに努めようという方針が出されました。この読書習慣を身につけさせるためにいろいろ取り組んできましたが、読書の魅力を感じる時間、読書習慣を身につけさせる時間はどこかという問いを、様々な中学生、高校生、大学生に聞きましたところ、やはり朝読書の時間確保がキーポイントといいます。ぜひ、このことについても考えていく必要があると思っています。
 そして、読書会の重要さです。インプットしたらアウトプットする。読書は本来個で行うものですが、そこで感じたことをアウトプットし合う対話、コミュニケーションを通じながら学び合う、ここが魅力です。本を中心に話し合うことが楽しいと、中学生、高校生、大学生は話します。読書会を重ねることで、クラスや学校全体、地域で読書コミュニティーが生まれていきます。このことが、中高生の効果的な取組の大きな1つであると感じています。今まで述べてきたことに対するキーパーソンは、人、特に子供たちの一番身近にいる教員だと感じています。読書が大事だと言われながら、子供たちの読書を生きる力として育てるというより、読書は単なる個人の趣味だ、大人になったときの趣味になればよいと考えている教員が、実はたくさんいます。教員が子供にとっての読書の意義を捉え直して、クラスで日々読み聞かせをしたり本の紹介をしたり、個々の子供にクラスで働きかけていけば確かな読書推進ができていくと思います。
 さらに、多くの教員の働きかけがあれば、クラスや学校、家庭、地域を含んでの読書コミュニティーが育成していけると思います。そこにICT活用が入ってくると思っています。
 ICTとのベストミックスですが、教員の中からもう学校図書館は不要だと、教室でこの端末があれば足りるという声も聞いたりもします。しかし、紙の本か電子書籍かということではなくて、学びを深めていくためには、どういう使い方があるのかということを考えています。情報メディアの特色を生かして、タブレット端末の強みを生かしながら、読書活動や学びをどう深めていけるかのことを考えていきたいです。
 そして、もう既に子供たち自身が本の紹介をする、ブックトークをするという活動を子供たち自身が端末で録画をして共有し合う、図書委員会の発信も端末で行っていくということが行われています。それから1年生でも、電子書籍ということではなく、本の一部を学校図書館から各自の端末に送信して取り入れて、本の読み方、調べ方の初歩から教えていくという方法に取り組んでいる学校もあります。
 ですから、ICTと学校図書館のベストミックスという点からも、読書活動のことを考えていきたいと思っております。
 第4回に引き続き委員を務めさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
【秋田座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、堀川副座長のほうにも御意見をお願いいたします。
【堀川副座長】  堀川です。今は放送大学で客員教員をしております。ずっと学校図書館を中心に動いてきました。
 この会議が始まる前に、第4次の基本的な計画をもう一度拝見しました。それを読んでみると、読書がなぜ必要かという、読書を推進する意義というか理由が、もっとここに書かれてもいいのではないかというように感じました。以前から、読書の意義というと、読書体験、想像するとか感情の体験をする、それが人間性の涵養につながるというような、人間としての成長という面と、それからもう一つ、これは第4次の計画の中の21ページに書かれていますが、「普通教育の目標の1つに、読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと」というようにありますが、つまり、国語力の育成ということだと思います。
 そして、この第4次の計画の6ページの真ん中よりちょっと下のところに、こんなふうに書かれています。「読書活動は、精査した情報を基に自分の考えを形成し、表現するなどの、新しい時代に必要となる資質能力を育むことに資するという点からも、その重要性が高まっていると考えられる」という文言がありますが、実際に現行の学習指導要領の国語の言語活動の例を見てみますと、自分が読むとか理解するとかという自己完結型といえるような読書のほかに、今回の指導要領の言語活動の例には、伝え合ったり、報告したり、説明したり、提案したりというような、言わば協働型の読書という、共有するという面がとても強調されています。そうした中で、思考力、判断力、表現力が培われていくのではないかと思います。
 ちょっと前に、国際子ども図書館のオンライン講座を拝見しました。その中で、菅谷明子さんという、アメリカに住んでいらっしゃるジャーナリストで、日本では、『未来をつくる図書館』という岩波新書を書かれて有名な方ですが、その菅谷さんがおっしゃっていたのは、本はあくまで踏み台だと。踏み台という面白い表現をされていましたけれど、素材ともおっしゃっていました。1つのテーマを学ぶのに、いろいろな本、フィクションであれ小説であれ、いろいろな種類の本を読んで、それを読んで共有する、本を読むことは共有することだと。それによって自分の立ち位置が修正されたりとか視野を広げたりすることができるというようにおっしゃっていましたが、その中で、授業自体が読書会のようなものだというようにおっしゃったのがとても印象的でした。
 こうした、先ほども福田委員さんがおっしゃいましたように、資料・情報をインプットして、自分の中で考えて、それをアウトプットする、他者と共有する、この連鎖の繰り返しが必要だと思いますし、そうした中で、思考力、判断力、表現力、そして情報活用能力が育まれていくんだと思います。
 こうした読書の意義を明確にして、なぜ読書推進をするのかということを明確にして、周りの働きかける大人たち、行政も含めて、その方たちに意義が分かっていただかないと推進に進まないだろうというように思います。
 すみません、以上で終わりです。ありがとうございました。
【秋田座長】  どうもありがとうございます。
 それでは、最後になりますが、私も個人の意見として、若干発言をさせていただきたいと思います。
 私は、発達心理学や教育学の観点から、実証的に子供の読書や発達に関する調査研究をしながら学校の現場にも関わるというような仕事をしております。
 その中で、コロナ禍におきまして、実際に東京大学のCedep等で調査をしまして、はっきりしてきていることは、経済による格差が、本を御自宅で時間ができて読める子供と、全く図書館が閉まったために読み聞かせも家庭ではできなくなったり、本にアクセスができなくなったというような子供たちもいて、改めて地域が子供たちをサポートしていくことの必要性ということを感じたところであります。家庭の経済の格差なく子供たちが本に出会えるためには、園や学校、地域の環境を、どのように子供とつないでいくのかというところがとても大きいと思っています。
 全国の保育所や幼稚園の絵本の調査をさせていただくと、学校は図書標準がありますけれども、幼児期は、幼児教育の無償化は始まっていますが、図書標準というものがないので、これだけ格差があっていいのかと思うほど園によって絵本の蔵書冊数に違いがあるということも明らかになってきております。ただし、悲観的なことだけではなく、その少ない園が地域の図書館からの団体貸出しを有効に活用することによって、その園のリソースがなくても、連携によって子供たちに本を手渡すことができているような園や自治体もあるというようなことがあります。連携ということが、実際に、ものであったり、人であったりつないでいくことによってできていくことが、これから読書習慣の形成ということを考えたときに大事だと思います。まさに生まれる前、乳児期から様々な発達段階による必要性ということを島委員が御報告くださいましたけれども、そうしたことが必要であります。そこにおいてこれから問題になるのは、もちろん冊数や時間も大事ですけれども、絵本や本に触れ合うプロセスでしょうか、プロセスの質、読書の経験の質というようなことを私どもは考えていくことが重要になってくるのではないかと思っているところです。
 今回調査をしてみて、幼児につきましては、読書、絵本を読むということ以外に、遊びとか運動とか様々なものの中で、知的なリテラシーと非認知能力と言われる能力の両方に影響があるのは、本と触れ合うことのみであることも明らかになってきています。やはり乳幼児期、それから学童期と、こうした経験が重要だというようなことを、先ほど堀川副座長もお話がありましたが、なぜ私たちは本と触れ合う経験が、これからの新たな時代の資質能力を育んでいくのかというところへのメッセージの発信が重要になってくるのではないかと考えています。
 学校は、GIGAスクールが普及してきていますけれども、PISAの2018年度で、学校において長い文章を読む時間が、先進諸国で最下位が日本でございます。つまり、学習内容を教科で教えられても長い文章を読む経験が教科の授業の中で行われていないということも明らかになってきています。今、深い学びや探究的な学習ということが、先ほどから委員の中でもお話がありましたけれども、やはり読書と授業を分けるのではなく、様々な視点の中で、やはり深い学びを保障していくための読書経験ということを考えていくことが重要であろうと思います。
 先ほどから紙かデジタルかという話について、メディアの方法ではなくて、やはり内容や経験ではないかという御意見に私自身も賛成をしております。東大の森川先生が言われていますが、今がデジタルの助走期であり、これから2020年から2040年がデジタル社会の飛翔期になっていくそうです。そういう中において、デジタルネイティブの子供たちが、私も乳幼児期には紙の経験や布の絵本経験等が重要だと思う一方で、やはりデジタルというものがイコール電子書籍というだけではなく、先ほど福田委員も言われましたけれども、多様な形でオンラインを通して人と人がつながったり、本を紹介し合ったり、対話をし合ったり、そうしたことに活用されたりが必要と思います。また、野口委員が言われましたが、ハンディがある子供たちにとって、通常の本だけでは補えない部分をデジタル書籍がいかに補い使っていけるのかということを考えていくことも今後必要だと思っています。
 また最後に、第4次計画策定のときにも入れたことでありますが、主体的、対話的、深い学びの主体は子どもであり、子供は、読書を行う主体であります。本を読めと大人から言われて読んでいくのではなく、子供自らが読書推進を仲間同士で紹介し合ったり、子供自身が担い手になって参画していくことが重要です。この時代のこれからの読書についてどう考えていくのかというときに、やはり子供の声を聞いていくことも極めて重要ではないかと思います。ちょうど6月22日にこども基本法が成立いたしました。子供が学ぶ権利を保障されていく、全ての子供たちの権利を保障し、意見表明をできる権利も保障されてきています。そうした中で、子供が読みたい本を自由に読んで参画していくという権利を、私たちでどう様々な場で保障していくのかということも、今後、重要なことではないかと思います。文部科学省の様々な施策の中でも、子供目線、子供主体の政策ということが言われています。子供読書推進におきましても、その辺り、第5次のところでは、第4次をさらに発展させながら考えていく必要もあるのではないだろうかと考えます。そして、それを支える人材育成として、先ほどありました学校司書や司書教諭はもちろんのこと、教員や保育者、それから地域の読書コーディネーターとか、それから絵本専門士という、生涯にわたって絵本を様々な場で応援していく資格等も含め、いろいろな人材の育成の在り方を考えていくことが必要と考えます。
 若干長くなりましたけれども、私の個人的意見も発言をさせていただきました。本当は議事録ではそろそろ会議の終了時間ということなんですが、そろそろではなく、既に若干終了予定時刻を超えてしまいましたけれども、最後に事務局のほうから連絡事項をお願いいたします。
【工藤専門官】  本日は、たくさんの御意見ありがとうございました。次回の会議につきましては、7月26日火曜日14時から16時を予定しております。また今回と同じくオンラインで実施する予定でございます。
 次回以降ですけれども、読書活動に関連する発表を予定しております。こちらにつきましては、有識者の皆様に御相談をさせていただきながら進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。詳細につきましては、追って御連絡させていただきます。
 連絡事項、以上となります。
【秋田座長】  それでは、本日はこれにて閉会をさせていただきたいと思います。皆様、お忙しいところ御出席いただきまして、誠にありがとうございました。どうもありがとうございます。
 
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