資料5-2 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の中長期目標を達成するための計画(中長期計画)

序文
 「独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)」第35条の5の規定に基づき、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下「機構」という。)の平成28年4月1日から平成35年3月31日までの期間における中長期目標を達成するための計画(以下「中長期
計画」という。)を次のように作成する。

前文
 「国立研究開発法人放射線医学総合研究所の一部を改正する法律(平成27年法律第51号)」に基づき、平成28年4月1日より、国立研究開発法人放射線医学総合研究所(以下「放医研」という。)に、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)の一部業務を移管・統合することで、新たに量子科学技術と放射線医学の推進を担う研究開発法人とするため、名称および業務の目的と範囲を変更し、機構とすることとなった。
 放医研は、昭和32年の創立以来、放射線と人々の健康に関わる研究開発に多分野の学問を糾合して総合的に取り組む、国内で唯一の研究開発機関として、放射線医学に関する科学技術の水準の向上と、その成果の社会還元を目指して活動してきた。
 一方、原子力機構は、我が国における原子力に関する唯一の総合的な研究開発機関として、平成17年10月に発足し、国の原子力政策や科学技術政策に基づき、事業を進めてきた。文部科学省が示した「日本原子力研究開発機構の改革の基本的方向(平成25年8月日本原子力研究開発機構改革本部)」を受け、そのうち、多様な放射線利用を通じて科学技術の新分野開拓や産業等を支えることが期待される「量子ビーム応用研究開発」の一部事業及び将来のエネルギー源開発を国際共同研究プロジェクトで目指す「核融合研究開発」の事業について、放医研と統合することとなった。
 さらに、放医研及び原子力機構は、平成23年3月11日の「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故」(以下「東京電力福島第一原子力発電所事故」という。)以降は、事故からの復旧対策、復興に向けた取組への貢献を積極的に行ってきた。
 機構は、放医研及び原子力機構がこれまでの中期目標期間に得られた成果に基づき、「第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)」にある科学技術政策や、「健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)」にある世界最高水準の医療の提供に資する研究開発等に関する施策を踏まえて事業を行うとともに、「災害対策基本法(昭和36年法律第223号)」及び「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」に基づく指定公共機関として、関係行政機関や地方公共団体からの要請に応じた原子力災害時等における我が国全体の拠点としての貢献、あるいは、「国立研究開発法人放射線医学総合研究所見直し内容(平成27年9月2日原子力規制委員会)」により技術支援機関として原子力災害対策・放射線防護及び高度被ばく医療に係る研究等の実施を期待されている。
 これらを踏まえて、「放射線の人体への影響、放射線による人体の障害の予防、診断及び治療並びに放射線の医学的利用に関する研究開発等」、「量子ビーム応用研究開発」及び「核融合研究開発」及びそれらに関連する業務を実施する。
 研究開発の実施に当たっては、我が国全体の量子科学技術分野と放射線医学分野の研究開発成果の最大化を図るため、蓄積されてきたノウハウ・知見を基盤として、積極的に外部資金も活用し、国際的な研究開発動向や社会の要請に応える研究開発を行うとともに、機構内において融合的な研究開発も戦略的・積極的に行い最先端の研究開発領域を立ち上げ、活力と競争力の高い法人を目指す。さらに、先端的な研究施設・設備の共用を進めるとともに、国内外の機関との連携を強め、人材育成の推進や知的財産の整備等、量子科学技術や放射線医学に関する成果の発信に努め、社会の求めに応じた研究成果の還元を図る。
 また、業務の実施に当たっては、内部統制を強固にし、職員にコンプライアンスの徹底を図るとともに、常にPDCAサイクルを回すことで、透明性の高い機構経営を行う。

1 .研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する事項
1. 量子科学技術及び放射線に係る医学に関する研究開発
(1) 量子科学技術に関する萌芽・創成的研究開発
1) 拠点横断的研究開発
 各拠点が有する放射線医学、量子ビーム、核融合等の科学技術に関するノウハウ・知見や大学等の機構外部の知見等を相互に活用し、拠点横断的な組織等により融合的な研究開発を実施し、量子科学技術の進歩を牽引する可能性のある戦略的な研究開発を積極的に行う。

2) その他の萌芽的・創成的研究開発
 新たな発想や独創性に富んだ研究・技術課題の発掘を目指して主に若手を中心とした萌芽的・創成的研究開発等を行い、将来の研究開発課題の立ち上げや大型外部資金の獲得を目指す。

 なお、上記の研究開発については理事長のリーダーシップのもと、イノベーションセンターを中心とした支援体制により実施する。

(2) 放射線の革新的医学利用等のための研究開発
 「医療分野研究開発推進計画(平成26年7月健康・医療戦略推進本部)」では、放射性薬剤や生体計測装置の開発、病態診断・治療研究などの基礎・基盤研究を推進するとともに、分子イメージング技術について生体計測装置の開発の基礎・基盤研究の推進及び疾患に関しては認知症やうつ病等の精神疾患等の発症に関わる脳神経回路・機能の解明に向けた研究開発及び基盤整備並びにがんの基礎研究から実用化に向けた研究を進めるとされている。これらも踏まえ、分子イメージングによる精神・神経疾患やがんの診断と治療に資する研究を行う。
 また、「健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)」において、最先端の技術である重粒子線治療について科学的根拠を持った対外発信を目指すとされており、国民医療への普及・定着のため、保険収載に向けた取組を重点的に進め、保険収載に係る科学的・合理的判断に寄与する。

1) 光・量子イメージング技術を用いた疾患診断研究
●高齢化社会において重要性を増している認知症等の精神・神経疾患の病態の解明と診断の高度化を目的に、脳機能解明、疾患診断及び治療評価等の研究開発を基礎から臨床まで一貫した体制で行う。特に、精神・神経疾患の症状の背景にある回路レベルの異常(脳の領域間の連結や神経伝達の異常)と分子レベルの異常(毒性タンパク蓄積等)の解明に関し、多様なイメージ手法を用いて統合的に進める。
●我が国における主たる死因であるがんを始めとする疾患の診断の高度化を目的に、効果的な疾患診断法、治療効果を迅速に評価できる画像法等の研究を、基礎から臨床まで一貫した体制で行う。
●さらに、生体内現象を可視化するプローブライブラリを拡充するため、細胞から個体まで多彩なスケールで、疾患診断研究や創薬に有用なプローブを開発する。
●疾患診断計測技術としては、原子力機構から移管・統合された量子ビーム技術等も融合し、より高度な診断・治療に資する多様な基盤技術・知見を集約した画像化技術と画像解析技術の研究開発を行うとともに処理技術の高速化等の臨床的必要性の高い技術も開発する。
●大学や企業等と連携し、国民生活に還元できる新薬等の開発につながる脳機能や薬物評価指標等の開発研究を行う。

2) 放射性薬剤を用いた次世代がん治療研究
●これまで放医研が取り組んできた分子イメージング技術を発展させ、多発病変・微小転移のがんにも有効な放射線治療として、放射性核種による標的アイソトープ治療の研究開発を行う。さらに、新しい標的アイソトープ治療を目指した副作用の少ない放射性薬剤の開発を行うとともに、既存の放射性薬剤を含め体内輸送システムや生体内反応に関する研究、線量評価方法の開発、有害事象軽減のための研究等を推進し、標的アイソトープ治療の普及にも貢献する。その際には、学協会、大学、研究機関の協力も得て、研究開発を進める。
●また、新しい標的アイソトープ治療を可能とする加速器並びにRI製造装置を含む関連設備の高度化に資する研究開発を実施する。

3) 重粒子線を用いたがん治療研究
●重粒子線がん治療について、効果的で、患者負担が少なく(副作用低減を含む)、より短期間、より低コストの治療の実現を目的とした研究開発を行う。
●このため、質の高い臨床研究を実施する能力を有する他の機関や施設と連携し、既存の放射線治療や既存治療法との比較、線量分布の比較等の多施設共同研究を主導的に推進することにより、信頼性、再現性のある臨床的エビデンスを示し、重粒子線がん治療の優位性を示すとともに、保険収載を目指し、保険収載に係る科学的・合理的判断に寄与する。また、化学療法や手術等の他の療法との併用による集学的治療により、治療効果の増大と適応の拡大を目指す。
●また、重粒子線がん治療装置のさらなる高度化を目的とした加速器・照射技術の研究開発、特に画像誘導治療法や回転ガントリーを用いた強度変調重粒子線照射法の研究開発、さらには生物効果を考慮した治療計画等の研究開発を進める。また海外への普及に資する技術指導・人材育成・技術移転及び標準化等の体制強化を、国内及び国際連携をとりつつ進める。さらに超伝導等の革新的技術を用いた重粒子線治療装置の小型化研究を進める。
●放射線がん治療の臨床研究からのニーズ(難治性がんに対する線質および薬剤の最適化ならびに正常組織の障害及びリスクの予防等)に応え、様々な研究分野の知見を集約し、放射線の生物効果とそのメカニズムに関する研究を実施する。
●さらに臨床試料を診療情報と共にバンク化し、がんの基礎生物学研究への展開と臨床へのフィードバックを図る。

(3) 放射線影響・被ばく医療研究
 「国立研究開発法人放射線医学総合研究所見直し内容(平成27年9月2日原子力規制委員会)」において、放射線影響における基盤的研究を引き続き実施することが期待されている。これも踏まえ、放射線影響研究(特に低線量被ばく)に関する基礎研究を実施し、放射線影響評価の科学的基盤として必要とされている知見を収集、蓄積することで、放射線防護・規制に貢献する科学的な情報を創出・発信していく。また、これまで我が国の三次被ばく医療機関として、さらに、平成27年8月26日以降は高度被ばく医療支援センターとして、牽引的な役割を担うことで得られた線量評価や体内汚染治療等の成果をもとに、より高度な被ばく医療対応に向けた取組を進める。これらの実施に当たっては、放射線の利用と規制に関する利益相反の排除に十分配慮する。

1) 放射線影響研究
●年齢や線質、また生活習慣要因を考慮した発がん等の放射線影響の変動に関する実証研究を行い、動物実験等の成果や疫学的データを説明できるリスクモデルを構築する。実施に当たっては、様々な加速器等を用いた先端照射技術も活用する。
●特に次世代ゲノム・エピゲノム技術及び幹細胞生物学の手法を取り入れ、放射線被ばくによる中長期的影響が現れるメカニズムに関する新知見を創出する。
●また、学協会等と連携して環境放射線や医療被ばく及び職業被ばく等の実態を把握して、国民が受けている被ばく線量を評価し、線量低減化を目的とした研究開発を行う。
●さらに、国内外の研究機関や学協会等と連携して、放射線影響に関する知見を集約・分析し、取り組むべき課題を抽出するとともに課題解決のための活動を推進する体制の構築を目指す。この一環として、国内外の放射線影響研究に資するアーカイブ共同利用の拠点の構築を図る。

2) 被ばく医療研究
●放射線事故や放射線治療に伴う正常組織障害の治療及びリスクの低減化に資する先端的な研究を行う。特に、高線量被ばくや外傷や熱傷を伴った被ばくの治療に再生医療を適用してより効果的な治療にするため、幹細胞の高品質化や障害組織への定着等、新たな治療法の提案等について研究開発を行う。
●大規模な放射線災害時を含む多様な被ばく事故において、被ばく線量の迅速かつ正確な評価及びこれに必要な最新の技術開発を行う。すなわち、体内汚染の評価に必要となる体外計測技術の高度化やバイオアッセイの迅速化、シミュレーション技術の活用による線量評価の高度化、放射線場の画像化技術の開発、染色体を初めとした様々な生物指標を用いた生物線量評価手法の高度化等を行う。
●さらに、放射性核種による内部被ばくの線量低減を目的として、放射性核種の体内や臓器への分布と代謝メカニズムに基づく適切な線量評価の研究を行うとともに、治療薬を含めて効果的な排出方法を研究する。アクチニド核種の内部被ばくに対処できる技術水準を維持するための体制を確保する。

(4) 量子ビームの応用に関する研究開発(最先端量子ビーム技術開発と量子ビーム科学研究)
 第5期科学技術基本計画や「科学技術イノベーション総合戦略2015(平成27年6月19日閣議決定)」においては、新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術として「光・量子技術」が位置付けられ、光・量子技術の先導的推進を図ることが重要とされている。
 これも踏まえ、量子ビームの発生・制御及びこれらを用いた高精度な加工や観察等に係る最先端技術開発を推進するとともに、量子ビームの優れた機能を総合的に活用して、物質・材料科学、生命科学等の幅広い分野において本質的な課題を解決し世界を先導する研究開発を推し進め、革新的成果・シーズを創出し、産学官の連携等により、科学技術イノベーション創出を促進し、我が国の科学技術・学術及び産業の振興等に貢献する。

●最先端量子ビーム技術開発
 科学技術イノベーション創出に資する最先端量子ビーム技術を開発してユーザーの多様な要求に応えるため、イオン照射研究施設(TIARA)において高強度MeV級クラスターイオンビームの生成・利用等に係る加速器・ビーム技術の開発を行うとともに、光量子科学研究施設(J-KAREN等)において高強度化・高安定化等に係るレーザー技術の開発を行う。施設利用を通じて量子ビームの更なる利用拡大・普及を進める。

●量子ビーム科学研究(生命科学等)
拠点横断的な融合研究として、標的アイソトープ治療を目指し、アルファ線放出核種の製造・導入技術を開発する。また、創薬応用に向けて大型生体高分子の立体構造等の解析技術を開発するとともに、放射線の生物作用機構解明のために細胞集団の放射線ストレス応答等の解析技術を確立する。さらに、有用生物資源の創出や農林水産業の強化に寄与するため、植物等において量子ビームにより特定の変異を高頻度に誘発する因子を解明するための手法開発や植物RIイメージングによる解析・評価手法の体系化を行う。

●量子ビーム科学研究(物質・材料科学等)
 荷電粒子・RI等を利用した先端機能材料創製技術や革新的電子デバイスを実現するスピン情報制御・計測技術等を創出する。高強度レーザー駆動によるイオン加速や電子加速等の研究を推進する。また、レーザー及びレーザー駆動の量子ビームによる物質制御や計測技術の開発、産業利用に向けた物質検知、微量核種分析、元素分離技術等の高度化を行う。これらの基礎基盤的研究とともに、レーザーを用いたイメージング技術のための光源開発を拠点横断的な融合研究として行う。さらに、放射光と計算科学を活用して、水素貯蔵材料をはじめとする環境・エネルギー材料等の構造や品質、機能発現機構等の解析・評価手法を開発する。これらの研究開発により、省エネルギー・省資源型材料の基礎科学的理解を与え、クリーンで経済的なエネルギーシステムの構築、持続可能な循環型社会の実現等を支援する。

 これらの実施に当たっては、科学的意義、福島復興再生や超スマート社会等への社会的ニーズ及び出口を意識した経済・社会的インパクトの高い革新に至る可能性のある研究開発に取り組み、量子ビーム応用研究開発の特性に応じた研究組織・運営体系の工夫を行いつつ、機構内の各研究組織間の協働を促進し、国内外の大学、研究機関、産業界等との連携を積極的に図る。こうした連携協力を軸として、科学技術イノベーション創出を目指す国の公募事業への参画も目指す。

 上記(1)(2)(3)(4)については、課題ごとに達成目標及び時期を明確にし、研究開発に支障が生じない範囲で公表するとともに、目標期間半ばに外部専門家による中間評価を受け、その結果を研究業務運営に反映させる。

(5) 核融合に関する研究開発
 核融合エネルギーは、資源量が豊富で偏在がないといった供給安定性、安全性、環境適合性、核拡散抵抗性、放射性廃棄物の処理処分等の観点で優れた社会受容性を有し、恒久的な人類のエネルギー源として有力な候補であり、長期的な視点からエネルギー確保に貢献することが期待されており、早期の実用化が求められている。このため、「第三段階核融合研究開発基本計画(平成4年6月原子力委員会)」、「イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定(平成19年10月発効)」(以下「ITER協定」という。)、「核融合エネルギーの研究分野におけるより広範な取組を通じた活動の共同による実施に関する日本国政府と欧州原子力共同体との間の協定(平成19年6月発効)」(以下「BA協定」という。)、「エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)」等に基づき、核融合エネルギーの実用化に向けた研究開発を総合的に行う。具体的には、「ITER(国際熱核融合実験炉)計画」及び「核融合エネルギー研究分野における幅広いアプローチ活動」(以下「BA活動」という。)を国際約束に基づき、着実に推進しつつ、実験炉ITERを活用した研究開発、JT-60SAを活用した先進プラズマ研究開発、BA活動で整備した施設を活用・拡充した理工学研究開発へ、相互の連携と人材の流動化を図りつつ、事業を展開する。これにより、核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性の実証、及び原型炉建設判断に必要な技術基盤構築を進めるとともに、核融合技術を活用したイノベーションの創出に貢献する。
 研究開発の実施に当たっては、大学、研究機関、産業界などの研究者・技術者や各界の有識者などが参加する核融合エネルギーフォーラム活動等を通して、国内意見や知識を集約してITER計画及びBA活動に取り組むことにより国内連携・協力を推進し、国内核融合研究との成果の相互還流を進め、核融合エネルギーの実用化に向けた研究・技術開発を促進する。

1) ITER計画の推進
 ITER協定の下、国際的に合意した事業計画に基づき、大学、研究機関、産業界等との協力の下、国内機関としての業務を着実に実施する。また、実験炉ITERを活用した研究開発をオールジャパン体制で実施するための準備を進める。

a. ITER建設活動
 我が国が調達責任を有する超伝導導体、超伝導コイル及び中性粒子入射加熱装置実機試験施設用機器の製作を完了するとともに、高周波加熱装置、遠隔保守装置等の製作を進める。また、ITER建設地(仏国 サン・ポール・レ・デュランス)でイーター国際核融合エネルギー機構(以下「ITER機構」という。)が実施する機器の据付・組立等の統合作業を支援する。

b. ITER計画の運営への貢献
 ITER建設地への職員等の積極的な派遣などによりITER機構及び他極国内機関との連携を強化し、ITER計画の円滑な運営に貢献する。また、ITER機構への我が国からの人材提供の窓口としての役割を果たす。

c. オールジャパン体制の構築
 ITER建設地での統合作業(据付・組立・試験・検査)や完成後の運転・保守を見据えて、実験炉ITERを活用した研究開発をオールジャパン体制で実施するための準備を進める。

2) 幅広いアプローチ活動を活用して進める先進プラズマ研究開発
 BA協定の下、国際的に合意した事業計画に基づき、BA活動におけるサテライト・トカマク計画事業を実施機関として着実に実施するとともに、国際約束履行に不可欠なトカマク国内重点化装置計画(国内計画)を推進し、両計画の合同計画であるJT-60SA計画を進め運転を開始する。ITER計画を支援・補完し原型炉建設判断に必要な技術基盤を構築するため、炉心プラズマ研究開発を進め、JT-60SAを活用した先進プラズマ研究開発へ展開する。さらに、国際的に研究開発を主導できる人材の育成に取り組む。

a. JT-60SA計画
 BA活動で進めるサテライト・トカマク事業計画及び国内計画の合同計画であるJT-60SA計画を着実に推進し、JT-60SAの運転を開始する。
1 JT-60SAの機器製作及び組立
 JT-60SA 超伝導コイル等の我が国が調達責任を有する機器の製作を進めるとともに、日欧が製作する機器の組立を行う。
2 JT-60SA運転のための保守・整備及び調整
 JT-60SAで再使用するJT-60既存設備の保守・改修、装置技術開発・整備を進めるとともに、各機器の運転調整を実施してJT-60SAの運転に必要な総合調整を実施する。
3 JT-60SAの運転
 1 及び2 の着実な実施を踏まえ、JT-60SAの運転を開始する。
b. 炉心プラズマ研究開発
 ITER計画に必要な燃焼プラズマ制御研究やJT-60SAの中心的課題の解決に必要な定常高ベータ化研究を進めるとともに、統合予測コードの改良を進め、精度の高い両装置の総合性能の予測を行う。また、運転を開始するJT-60SAにおいて、ITERをはじめとする超伝導トカマク装置において初期に取り組むべきプラズマ着火等の炉心プラズマ研究開発を進める。
c. 国際的に研究開発を主導できる人材の育成
 国際協力や大学等との共同研究等を推進し、ITER計画やJT-60SA計画を主導できる人材の育成を行う。
3) 幅広いアプローチ活動等による核融合理工学研究開発
 BA協定の下、国際的に合意した事業計画に基づき、BA活動における国際核融合エネルギー研究センター事業等を実施機関として着実に推進する。また、原型炉建設判断に必要な技術基盤構築に向けて、国際協力及び国内協力の下、推進体制の構築及び人材の育成を進めつつ、BA活動で整備した施設を活用・拡充し、技術の蓄積を行う。
a. 国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業並びに国際核融合材料照射施設(IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(EVEDA)事業
1 IFERC事業
 予備的な原型炉設計活動と研究開発活動を完了するとともに、計算機シミュレーションセンターの運用及びITER遠隔実験センターの構築を完了する。
2 IFMIF-EVEDA事業
 IFMIF原型加速器の実証試験を完了する。
3 実施機関活動
 理解増進、六ヶ所サイト管理等をBA活動のホスト国として実施する。
b. BA活動で整備した施設を活用・拡充した研究開発
1 原型炉設計研究開発活動
 原型炉建設判断に必要な技術基盤構築のため、概念設計活動、低放射化フェライト鋼等の構造材料重照射データベース整備活動、増殖ブランケット機能材料の製造技術や先進機能材料の開発、トリチウム取扱技術開発を拡充して推進する。
2 テストブランケット計画
 ITERでの増殖ブランケット試験に向けて、試験モジュールの評価試験・設計・製作を進める。
3 理論・シミュレーション研究及び情報集約拠点活動
 計算機シミュレーションセンターを活用し、核燃焼プラズマの動特性を中心としたプラズマ予測確度の向上のためのシミュレーション研究を進める。また、ITER遠隔実験センターを国際的情報集約拠点として活用する。
4 核融合中性子源開発
 六ヶ所中性子源の開発として、IFMIF原型加速器の安定な運転・性能向上を行うとともに、リチウムループの建設、照射後試験設備及びトリチウム除去システムの整備、ビーム・ターゲット試験の準備を開始する。

2. 研究開発成果のわかりやすい普及及び成果活用の促進
●量子科学技術及び放射線に係る医学(以下、「量子科学技術等」という。)について、研究開発を行う意義の国民的理解を深めるため、当該研究開発によって期待される成果や社会還元の内容等について、適切かつわかりやすい情報発信を行う。特に、低線量放射線の影響等に関しては、国民目線に立って、わかりやすい情報発信と双方向のコミュニケーションに取り組む。
●特許等については、国内出願時の市場性、実用可能性等の審査などを含めた出願から、特許権の取得・保有及び活用までのガイドラインを策定し、特許権の国内外での効果的かつインパクトの高い実施許諾等の促進に取り組むとともに、ガイドラインの不断の見直しを行う。

3. 国際協力や産学官の連携による研究開発の推進
(1) 産学官との連携
●研究成果の最大化を目標に、産学官の連携拠点として、保有する施設、設備等を一定の条件のもとに提供するとともに、国内外の研究機関と連携し、国内外の人材を結集して、機構が中核となる体制を構築する。これにより、外部意見も取り入れて全体及び分野ごとの研究推進方策若しくは方針を策定しつつ、研究開発を推進する。
●また社会ニーズを的確に把握し、研究開発に反映して、共同研究等を効果的に進めること等により、産学官の共創を誘発する場の形成・活用及びインパクトの高い企業との共同研究を促進する。

(2) 国際展開・国際連携
●関係行政機関の要請を受けて、放射線に関わる安全管理、規制、被ばく医療対応あるいは研究に携わるUNSCEAR、ICRP、IAEA、WHO 等、国際的専門組織に、協力・人的貢献を行い、国際的なプレゼンスを高め、成果普及やネットワークの強化に向けた取組を行う。さらに、IAEA-CC やWHO-CC 機関として、放射線医科学研究の推進を行う。
●国際連携の実施に当たっては、国外の研究機関や国際機関との間で、個々の協力内容に相応しい協力取決めの締結等により効果的・効率的に進める。

4. 公的研究機関として担うべき機能
(1) 原子力災害対策・放射線防護等における中核機関としての機能
●「災害対策基本法(昭和36年法律第223号)」及び「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」に基づく指定公共機関及び原子力規制委員会の原子力災害対策・放射線防護のニーズに応える技術支援機関として、関係行政機関や地方公共団体からの要請に応じて、原子力事故時等における各拠点からの機材の提供や、専門的な人的・技術的支援を行うため、組織体制の整備及び専門的・技術的な水準の向上を図る。特に、組織の拡大に伴う機構横断的な人材活用によりモニタリング参集・派遣要員体制等の充実を図るとともに、原子力災害のほか、放射線事故、放射線/放射性物質を使用した武力攻撃事態等に対応できるよう、国等の訓練・研修に参加するとともに、自らも訓練・研修を実施する。また、医療、放射線計測や線量評価に関する機能の維持・整備によって支援体制を強化し、健康調査・健康相談を適切に行う観点から、公衆の被ばく線量評価を迅速に行えるよう、線量評価チームの確保等、公衆の被ばく線量評価体制を整備する。
●国外で放射線事故が発生した際にはIAEA/RANET等の要請に基づき、あるいは国内の放射線事故等に際し、人材の派遣を含む支援を行うため、緊急被ばく医療支援チーム(REMAT)を中心に対応体制を整備する。
●原子力規制委員会により指定された高度被ばく医療支援センターとして、国及び立地道府県等、さらには、原子力災害拠点病院等と協力し、高度専門的な診療及び支援並びに高度専門研修等を行うほか、我が国の被ばく医療体制の強化に貢献するため、他の高度被ばく医療支援センター等の被ばく医療拠点、救急・災害医療やその他の専門医療拠点等との相互交流を図る。
●放射線医科学分野の研究情報や被ばく線量データを集約するシステム開発やネットワーク構築を学協会等と連携して行い、収集した情報を、UNSCEAR、IAEA、WHO、ICRPやICRU等の国際的専門組織の報告書等に反映させる。また我が国における放射線防護に携わる人材の状況を把握するとともに、放射線作業者の実態を調査し、ファクトシート(科学的知見に基づく概要書)としてまとめる。さらに放射線医科学研究の専門機関として、国、地方公共団体、学会等、社会からのニーズに応えて、放射線被ばくに関する正確な情報を発信するとともに、放射線による被ばくの影響、健康障害、あるいは人体を防護するために必要となる科学的知見を得るための調査・解析等を行う。

(2) 福島復興再生への貢献
●「福島復興再生基本方針(平成24年7月13日閣議決定)」において、被ばく線量を正確に評価するための調査研究、低線量被ばくによる健康影響に係る調査研究、沿岸域を含めた放射性物質の環境動態に対する共同研究を行うとされている。
また、「避難解除等区域復興再生計画(平成26年6月改定 復興庁)」において、復旧作業員等の被ばくと健康との関連の評価に関する体制の整備、県民健康調査の適切かつ着実な実施に関し必要な取組を行うとされている。これらを受けて、国や福島県等からの要請に基づき、東電福島第一原子力発電所事故後の福島復興再生への支援に向けた調査・研究を包括的、かつ他の研究機関とも連携して行うとともに、それらの成果を国民はもとより、国、福島県、UNSCEAR等の国際的専門組織に対して、正確な科学的情報として発信する。
●特に、国民の安全と安心を科学的に支援するための、住民や原発作業員の被ばく線量と健康への影響に関する調査・研究、低線量・低線量率被ばくによる影響の評価とそのリスク予防に関する研究、放射性物質の環境中の動態とそれによる人や生態系への影響などの調査・研究を行う。
(3) 人材育成業務
●「第5期科学技術基本計画」に示されているように、イノベーションの芽を生み出すために、産学官の協力を得て、量子科学技術等の次世代を担う研究・技術人材の育成を実施する。
●放射線に係る専門機関として、放射線影響研究、被ばく医療研究及び線量評価研究等に関わる国内外専門人材の連携を強化し、知見や技術の継承と向上に務める。
●研修事業を通して、放射線防護や放射線の安全取扱い及び放射線事故対応や放射線利用等に関係する国内外の人材や、幅広く放射線の知識を国民に伝えるための人材の育成に取り組む。
●国際機関や大学・研究機関との協力を深めて、連携大学院制度の活用を推進する等、研究者・技術者や医療人材等も積極的に受け入れ、座学のみならずOJT等実践的な人材育成により資質の向上を図る。
●研究成果普及活動や理科教育支援等を通じて量子科学技術等に対する理解促進を図り、将来における当該分野の人材確保にも貢献する。
(4) 施設及び設備等の活用促進
●「第5期科学技術基本計画」においても示されたように、先端的な研究施設・設備を幅広く、産学官による共用に積極的に提供するため、先端研究基盤共用・プラットフォームとして、利用者の利便性を高める安定的な運転時間の確保や技術支援者の配置等の支援体制を充実・強化する。
●特に、HIMAC、TIARA、SPring-8専用BL、J-KAREN等、世界にも類を見ない貴重な量子ビーム・放射線源について、施設の共用あるいは共同研究・共同利用研究として国内外の研究者・技術者による活用を広く促進し、研究成果の最大化に貢献する。
●先端的な施設と技術を活用し質の高い実験動物の生産・飼育を行って研究に供給する。
●保有する施設、設備及び技術を活用し、薬剤や装置の品質管理と保証やそれに基づく臨床試験の信頼性保証、並びに、放射線等の分析・測定精度の校正や保証に貢献する。
●機構内外の研究に利用を促進し、当該分野の研究成果の最大化を図るために、各種装置開発、基盤技術の提供、研究の支援を行う。

2 .業務運営の効率化に関する目標を達成するためとるべき事項
1.効果的、効率的なマネジメント体制の確立
(1)効果的、効率的な組織運営
 理事長のリーダーシップの下、量子科学技術分野における研究成果の最大化を図るために、国の中核研究機関として経営戦略の企画・立案やリスク管理等の理事長のマネジメントの支援機能を強化し、柔軟かつ効果的な組織運営を行う。具体的に
は、次に掲げる事項を行う。
●機動的な資源(資金、人材)配分により、各部署の研究業務の効率を高め、研究成果の最大化も図る。
●複数の拠点に対するマネジメントを適切に機能させるため、役員と拠点幹部が経営課題等について共有・議論する会議体を設置し、ICTを活用しつつ定期的に運用する。
●機構が有する技術的なシーズを開発研究や事業化へと展開し、イノベーションを推進していくため、産学官の連携も戦略的に主導するイノベーションセンターを設置する。
●外部有識者を中心とした評価に基づくPDCAサイクルを通じた業務運営体制の改善・充実を図る。特に、原子力安全規制及び防災等への技術的支援に係る業務については、機構内に設置した外部有識者から成る規制支援審議会の意見を尊重し、当該業務の実効性、中立性及び透明性を確保する。
●法人全体のリスクについて課題の抽出、解決等を図るために、理事長の下に各拠点の長を構成員とする「リスク管理会議」を設置するとともに、各拠点にもそれと連動するリスク管理に係る会議を設置することによって、危機管理を含めた総合的なリスク管理システムを整備・運用する。

(2) 内部統制の強化
●理事長のリーダーシップの下、理事長が定める「基本理念と行動規範」を軸に統制環境を充実・強化させ、業務の有効性・効率性、事業活動に関わる法令等の遵守、規程及びマニュアル類の整備、資産の保全及び財務報告等の信頼性確保の達成に取り組む。
●経営環境の変化に対応し、意思決定の迅速化や業務の効率化を図るため、権限・責任体制の整備を行うとともに、経営に関する重要事項については定期的に理事会議において審議・報告し、適切なガバナンスを確保する。また、理事長の指示及び機構の重要決定事項が職員に周知徹底される仕組みを構築する。
●監事を補佐する体制整備を行うとともに、監事監査や内部監査等のモニタリングを通じて内部統制の機能状況を点検し、その結果を踏まえて必要な措置を講じる。
●全職員を対象とした教育・啓発の実施により、コンプライアンス、透明性、健全性、安全管理の確保を図る。
●研究不正に適切に対応するため、機構として研究不正を事前に防止する取組を強化するとともに、管理責任の明確化を図る。また、万が一研究不正が発生した際の対応のための体制の強化を図る。
●中長期目標の達成を阻害する重要なリスクの把握に組織として取り組むとともに研究不正に適切に対応するための体制を整備する。また、各部門は、リスクマネジメント教育の実施等により、組織的なリスクマネジメント機能の向上を図る。
●緊急時・大規模災害発生時等の対応について、危機管理体制の向上を図る。
●「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について(平成26年11月28日総務省行政管理局長通知)」に基づき業務方法書に定めた事項について、その運用を確実に図る。

(3) 研究組織間の連携、研究開発評価等による研究開発成果の最大化
 機構が複数拠点を擁する観点から、次に掲げる取組を実施・強化することにより、機構全体として研究成果の最大化に繋げる。
●拠点間を結ぶ広域LANを整備・維持することにより、各拠点において本部等に設置される各種ICTシステムを利用可能にし、効率的な業務を実施する。加えて、多拠点間テレビ会議システムを活用し、拠点間で円滑な情報共有、意見交換を行い、融合的な研究を活性化する。さらに、イントラネットを活用し、経営方針等重要な情報を速やかに各拠点の職員へ伝達する。
●組織内の研究インフラを有効に活用するため、共有可能な研究施設・設備をリスト化するとともに、イントラネット等でそのリストを機構内で共有し、機構内における施設・設備の共用化を促進する。これにより機構全体の施設・設備の最適化を図る。
●種々の要因を総合的に勘案し、統合の効果を最大にするために、常に最適な人員配置を担保できるよう随時組織体制を見直す。

 「独立行政法人の評価に関する指針」(平成26年9月総務大臣決定)や「研究開発成果の最大化に向けた国立研究開発法人の中長期目標の策定及び評価に関する指針」(平成26年7月総合科学技術・イノベーション会議)等に基づき、客観的で信頼性の高い自己評価を行い、その成果を研究計画や資源配分等に反映させることで研究開発成果の最大化と効果的かつ効率的な研究開発を行う。具体的には、次に掲げる事項を行う。
●自己評価に当たっては、評価軸に対応するように評価要素を定め、その評価要素には可能な限り定量的な実績を含めることとし、研究分野の特性に配慮しつつも、統一的な評価システムを整備・運用する。
●自己評価は、不断のPDCAサイクルの一部と位置づけ、自己評価において明らかとなった課題等が適切に研究計画等に反映されたかを管理する仕組みを構築するとともに、予算等の資源配分に適切に反映させる。
●より客観的な観点から研究開発の実績を見直し、有益な知見を得ることも目的として、外部有識者による評価委員会を組織し運用するとともに、評価結果を研究計画や資源の配分に活用する。

(4) 情報技術の活用等
 政府機関における情報セキュリティ対策を踏まえた情報セキュリティの確保を行うとともに、研究開発成果の最大化と業務運営の効率化のための情報技術基盤の継続的な維持・強化に努める。

2. 業務の合理化・効率化
(1) 経費の合理化・効率化
 機構の行う業務について既存事業の徹底した見直し、次に掲げる効率化を進める。
●運営費交付金を充当して行う事業は、新規に追加されるもの、拡充分は除外した上で、法人運営を行う上で各種法令等の定めにより発生する義務的経費等の特殊要因経費を除き、平成28年度を基準として、一般管理費(租税公課を除く。)については毎年度平均で前年度比3%以上、業務経費については毎年度平均で前年度比1%以上の効率化を図る。
●ただし、新規に追加されるものや拡充される分は翌年度から効率化を図ることとする。
●また、人件費の効率化については、2 .3の項に基づいて取り組むこととする。
●なお、経費の合理化・効率化を進めるに当たっては、次の点に配慮する。
●機構が放射性物質等を取り扱う法人であるという特殊性から、安全の確保を最優先とする。
●契約については、「独立行政法人における調達等合理化の取組の推進について(平成 27年5月25日、総務大臣決定)」に基づき、事務・事業の特性を踏まえ、PDCAサイクルにより、公正性・透明性を確保しつつ、自律的かつ継続的に調達等の合理化に取り組むため、調達等合理化計画を定めて業務運営の効率化を図る。
●「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」の趣旨に従い、長期性の観点からの将来を見越した先行投資、あるいは予見不可能性の観点から、研究上のブレイクスルーに伴う緊急的な集中投資等、研究開発の特性を踏まえた支出を行う。
●研究開発の成果の最大化に向けた取組との整合性を図る。

(2) 契約の適正化
●機構が策定する「調達等合理化計画」及び「契約監視委員会」による点検等を通じ、契約の適正化を推進し、業務運営の効率化を図る。
●機構が締結する契約については、国からの閣議決定等の主旨に沿って、研究成果の最大化を目指すために、一般競争入札を原則としつつも、真にやむを得ない場合においては、研究開発業務をはじめ機構の事務・事業の特性を踏まえ、その他合理的な調達を検討する。その際、随意契約を行う場合にあっても、公表の徹底等により透明性、公正性を図る。
●調達等合理化計画の実施状況を含む契約の適正な実施については、契約監視委員会の事後点検等を受け、その結果をウェブサイトにて公表する。

3. 人件費管理の適正化
●職員の給与については、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針(平成25年12月24日閣議決定)」を踏まえ、引き続き人件費の合理化・効率化を図るとともに、総人件費については政府の方針を踏まえ、厳しく見直しをするものとする。
●給与水準については、国家公務員の給与水準を十分考慮し、役職員給与の在り方について検証した上で、業務の特殊性を踏まえた適正な水準を維持するとともに、検証結果や取組状況を公表するものとする。また、適切な人材の確保のために必要に応じて弾力的な給与を設定できるものとし、その際には、国民に対して納得が得られる説明をする。

4. 情報公開に関する事項
 適正な業務運営及び国民からの信頼を確保するため、適切かつ積極的に情報の公開を行うとともに、個人情報の適切な保護を図る取り組みを推進する。具体的には、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第145号)及び独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)に基づき、適切に対応するとともに、職員への周知徹底を行う。

3 . 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画
1. 予算、収支計画及び資金計画
(1) 予算
(別紙)のとおり

【人件費の見積り】
期間中総額 68,726 百万円を支出する。
【運営費交付金の算定ルール】
○運営費交付金
A(y)=P(y)+C(y)+R(y)+ε(y)+ζ(y)-B(y)
A(y):当該事業年度における運営費交付金。
P(y):当該事業年度における人件費。(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)
C(y):当該事業年度における一般管理費。(人件費、特殊経費及び新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)
R(y):当該事業年度における業務経費。(人件費、特殊経費及び新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)
ε(y):当該事業年度における特殊経費。特殊経費は、当該事業年度の予算編成過程において、具体的に決定する人件費中の退職手当及び雇用保険料等並びに、平成28 年度末における法人運営を行う上で各種法令等の定めにより発生する義務的経費等の特殊要因経費とする。
ζ(y):当該事業年度における新規追加・拡充経費。新規に追加されるもの、拡充分など、社会的・政策的需要を受けて実施する事業に伴い増加する経費。当該事業年度の予算編成過程において具体的に決定。
B(y):当該事業年度における自己収入(定常的に見込まれる自己収入に限り、増加見込額及び臨時に発生する寄付金、受託収入、知財収入などその額が予見できない性質のものを除く。)の見積り。

○人件費(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)
P(y)=P(y-1)×α1(係数)×σ(係数)
P(y):当該事業年度における人件費。(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)P(y-1)は直前の事業年度におけるP(y)であり、直前の事業年度における新規追加・拡充経費分ζ(y-1)を含む。
α1:人件費効率化係数。中期目標に記載されている人件費に関する削減目標を踏まえ、当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。
σ:人件費調整係数。当該事業年度予算編成過程において、給与昇給率等を勘案し、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。

○一般管理費(人件費、特殊経費及び新規追加・拡充経費に含まれるものを除く)
C(y)=(Ec(y)-T(y))×α2(係数)+T(y)

・物件費(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く)
Ec(y)=Ec(y-1)×β
Ec(y):当該事業年度における一般管理費中の物件費。Ec(y-1)は直前の事業年度におけるEc(y)であり、直前の事業年度における新規追加・拡充経費分ζ(y-1)を含む。
T(y):当該事業年度における公租公課。
α2:一般管理費効率化係数。中期目標に記載されている一般管理費に関する削減目標を踏まえ、当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。
β:消費者物価指数。当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。

○業務経費(人件費、特殊経費及び新規追加・拡充経費に含まれるものを除く)
R(y)=Er(y)×α3(係数)
・物件費(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く)
Er(y)=Er(y-1)×β(係数)×γ(係数)
Er(y):当該事業年度における業務費中の物件費。(特殊経費、新規追加・拡充経費に含まれるものを除く。)Er(y-1)は直前の事業年度におけるEr(y)であり、直前の事業年度における新規追加・拡充経費分ζ(y-1)を含む。
α3:業務経費効率化係数。中期目標に記載されている削減目標を踏まえ、当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。
β:消費者物価指数。当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。
γ:業務政策係数。当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。

○ 自己収入
B(y)=B(y-1)×δ(係数)×λ(係数)
B(y):当該事業年度における自己収入の見積り。B(y-1)は直前の事業年度におけるB(y)。
δ:自己収入政策係数。過去の実績を勘案し、当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。
λ:収入調整係数。過去の実績における自己収入に対する利益の割合を勘案し、当該事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定する。

【中長期計画予算の見積りに際し使用した具体的係数及びその設定根拠等】
上記算定ルールに基づき、以下の仮定の下に試算している。
・運営費交付金の見積りについては、ε(特殊経費)は含まず、α2(一般管理費効率化係数)は平成28年度予算額を基準に毎年度3%の縮減、α3(業務効率化係数)は平成28年度予算額を基準に毎年度1%の縮減とし、λ(収入調整係数)を一律1として試算。
・事業経費中の物件費については、β(消費者物価指数)は変動がないもの(±0%)とし、γ(業務政策係数)は一律1として試算。
・人件費の見積りについては、σ(人件費調整係数)は変動がないもの(±0%)とし、退職者の人数の増減等がないものとして試算。
・自己収入の見積りについては、δ(自己収入政策係数)は変動がないもの(±0%)として試算。
(2) 収支計画
(別紙)のとおり
(3) 資金計画
(別紙)のとおり
(4) 自己収入の確保
●競争的研究資金等の外部資金を獲得して得られた成果も合わせて、運営費交付金による研究開発等を推進し、我が国全体の研究成果の最大化を図る。このために、大型の外部資金を中長期的かつ戦略的に獲得し執行するための体制を整備する。
●附属病院について、研究病院である特性を常に念頭に置きつつ、研究開発した診断・治療法を新たに保険収載あるいは先進医療へ導入させるためエビデンスの蓄積と他の治療方法との比較を国内外の他施設と協力して、進めて行く。その過程において、先進医療等の枠組みの中で、適切な範囲における収入の確保を図り機構の安定的運営に貢献する。

2. 短期借入金の限度額
 短期借入金の限度額は、37億円とする。
 短期借入金が想定される事態としては、運営費交付金の受入れの遅延、補助事業や受託業務に係る経費の暫時立替等がある。

3. 不要財産又は不要財産となることが見込まれる財産がある場合には、その処分に関する計画
 保有財産について、将来にわたり業務を確実に実施する上で必要か否かについて検証を実施し、必要性がなくなったと認められる場合は、独立行政法人通則法の手続にのっとり処分する。

4. 前号に規定する財産以外の重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画
 群馬県が実施する県道 13 号線(前橋長瀞線)及び県道 142 号線(綿貫篠塚線)の道路改築事業に伴い、群馬県高崎市の雑種地の一部について、群馬県に売却する。

5. 剰余金の使途
 決算における剰余金が生じた場合の使途は以下のとおりとする。
●臨床医学事業収益等自己収入を増加させるために必要な投資
●重点研究開発業務や国の中核研究機関としての活動に必要とされる業務の経費
●研究環境の整備や知的財産管理・技術移転に係る経費等
●職員の資質の向上に係る経費

4 . その他業務運営に関する重要事項
1. 施設及び設備に関する計画
機構内の老朽化した施設・設備について、そこで行われている研究・業務計画及
び安全性も十分に勘案、検討し、順次廃止又は更新する。
平成28年度から平成34年度内に整備・更新する施設・設備は次のとおりである。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 量子研究推進室)