令和6年12月12日(木曜日)15時00分~17時00分
部会長 栗原 和枝 東北大学未来科学技術共同研究センター 教授
部会長代理 伊地知 寛博 成城大学社会イノベーション学部 教授
臨時委員 上野 裕子三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社政策研究事業本部 主任研究員
臨時委員 小松 英一郎マックス・プランク天体物理学研究所 所長
臨時委員 東嶋 和子科学ジャーナリスト
臨時委員 長谷山 美紀北海道大学 副学長、大学院情報科学研究院長・教授
臨時委員 東山 哲也東京大学大学院理学系研究科 教授
臨時委員 森 初果東京大学 副学長、東京大学物性研究所 教授
臨時委員 安永 裕幸国際連合工業開発機関(UNIDO) 事務次長
臨時委員 吉村 隆一般社団法人日本経済団体連合会21世紀政策研究所 事務局長
【栗原部会長】 定刻になりましたので、ただいまより、第35回国立研究開発法人審議会理化学研究所部会を開会します。
本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき公開の扱いといたしますので、皆様、御承知おきお願いいたします。
本日は、議題1、理化学研究所の次期中長期目標(案)について、議題2、理化学研究所の次期中長期計画(案)について御議論いただく予定でございます。よろしくお願いします。
まず初めに、事務局より、本日の出席者等について説明をお願いいたします。
【葛谷推進官】 それでは、事務局から出席者についてお伝えいたします。
本日の出席者については、赤澤委員より御欠席の御連絡をいただいております。そのほか10名の委員の方が御出席予定でございます。
現在、森委員が遅れておりますけれども、後ほど御参加されると聞いております。
続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。資料は議事次第、資料1から3、参考資料をメールで事前にてお送りしております。
資料1が次期中長期目標(案)、資料2が次期中長期計画(案)の概要でございます。資料3は、今後の予定の資料になっております。資料に関して不足等ございましたら事務局までお知らせください。資料の欠落等ございませんでしょうか。御確認ありがとうございました。
続きまして、本日の進め方でございます。まず、次期中長期目標(案)につきまして、資料1で御説明させていただき、御議論いたします。その後、資料2で、次期中長期計画(案)の概要について、理研より御説明させていただきます。その後、御議論させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【栗原部会長】 それでは、議事に入らせていただきます。
議題1、理化学研究所の次期中長期目標(案)について、文科省より御説明いただきます。よろしくお願いします。
【葛谷推進官】 それでは、資料1に基づいて御説明します。本日御説明する次期中長期目標(案)につきましては、前回部会での御意見、そして、参考資料2にございますが、独立行政法人等の中(長)期目標の策定について、独立行政法人評価制度委員会よりも出されておりますので、こちらを踏まえた修正をしております。また、内閣府総合科学技術・イノベーション推進事務局より出されております理化学研究所の次期中長期目標策定にあたっての指摘事項、こちらは参考資料3にございますけれども、このも踏まえて修正しております。
最初に、参考資料2と3でどのような御意見があったのかについて御説明した後、今回修正すべき点について御説明したいと思います。
参考資料2をお願いいたします。こちらは独法評価委員会より出されております資料でございまして、まず1ページ目で、2パラグラフ目でございまして、「委員会として、個々の令和6年度見直し対象法人等について、その目標に具体的に盛り込むことを検討していただきたい点(以下『留意事項』という。)を下記のとおり取りまとめる」ということで留意事項をいただいております。
また、この下に、「特に」といったところの、3パラ目でございますけれども、業務・内部管理運営方針のうち、「事業の改善や新たな価値実現を果たすデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する」ことや、「法人が使命を果たしていく上で必要な人材の専門性を一層高度化させるための人材の確保・育成を促す」ことは、法人が取り巻く環境の変化に柔軟に対応し、質の高いサービスを継続的に提供する上で基盤となる重要な事項であることから、個々の業務に関する目標とともに具体的に盛り込んでいただきたいといったところを意見としていただいております。
続いて、留意事項でございますけれども、3ページ目、お願いします。留意事項、3点いただいておりまして、1つ目が、激しい国際競争の中で、我が国の研究機関のプレゼンスを高めていくため、特定国立研究開発法人として世界最高水準の研究成果の創出がなされているか適切に評価できるような目標又は指標を設定するべきではないか。
2つ目が、先進的な研究環境の整備として、優れた若手研究者や女性研究者等の育成・輩出に向けて、有期雇用の通算契約期間の上限規制撤廃、給与の弾力化、女性限定公募の加速等の取組を実施してきていることから、各取組の効果を適切に評価しつつ、流動性と安定性を高いレベルで両立した人材の確保・育成のための取組を更に推進することが重要ではないか。
3点目が、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律に基づき出資している株式会社理研イノベーションの産業界とのつながりが強い等の優位性を最大限活用し、法人が有する研究シーズを産業界に能動的に提案するとともに、その成果を法人の成果として適切に評価できるような目標又は指標を設定するべきではないかといった意見をいただいております。
続きまして、参考資料3をお願いします。こちらは、総合科学技術・イノベーション会議の評価専門調査会より指摘事項をいただいているところでございます。
次のページ、お願いします。具体的な指摘事項については、こちらのページにございます。1パラ目からでございますけれども、「理化学研究所には、特定国立研究開発法人として、総合的な研究機関の強みを活かした新たな取組を推進し、他の国立研究開発法人、大学、企業等との連携を強化しつつ、他の研究機関の模範となる先駆的な研究システムを構築することが求められる」と言われております。「その際、柔軟な人事・給与の仕組みによる多様な人材の確保、国立研究開発法人との連携・協力による研究推進支援人材等の育成、研究成果の知的財産の適切な管理、及び健全な研究推進の前提となる研究セキュリティ・インテグリティ等の取組を先導していただきたい」という意見がございます。
続いて、「また、科学技術・イノベーション基本計画等の実現に向け、世界最高水準の研究成果を生み出し、イノベーションを持続的に創出する自然科学の総合的な研究機関として、最先端の研究を推進する上で、海外に対する競合優位性を確保するための方策を明確化しつつ、社会実装に向けてスタートアップの振興に貢献していただきたい」と。「また、理事長のリーダーシップの下、目指すべき理化学研究所の姿を示すとともに、経営資源の配分戦略を明確化し、効果的なマネジメント(法人の統治のみならず組織化された研究マネジメントを含む)及び体制面の整備に取り組んでいただきたい」といった意見をいただいているところでございます。
また資料1に戻っていただければと思います。先ほど御説明いたしました、独法評価委員会や、CSTIの評価専門調査会からの文書への対応につきましては、前回御説明した資料においても対応していたところでございます。このため、今回は修正点、変更した点を中心に御説明させていただきます。
次のページ、お願いします。まず目次でございます。伊地知委員からのコメントでございまして、3.3の(1)のところ、前回、研究領域というところにしておりましたけれども、ほかの目次と並びを取りまして、「研究領域による卓越した科学研究の推進」ということで修正しております。
続いて、次のページ、お願いします。続きまして、安永委員からの、科学技術・イノベーションが世界から期待されているといったコメントを踏まえまして、15行目から、「我が国の経済社会の発展と国民の福祉の向上に寄与するとともに世界の科学技術の進歩と人類社会の持続的な発展に貢献することが期待されている」と、また、下の27行目から、「科学技術・イノベーションに対する期待は大きく」、「これらの期待に応え、将来社会における重要な役割を果たす」といったところを追加しております。
続いて、109行目、お願いします。こちらは先ほどのCSTI、評価専門調査会の意見で、研究推進支援人材の育成に当たっては、ほかの国立研究開発法人との連携というところのコメントがございますので、これを踏まえた修正をしております。
続いて、136行目、お願いします。ありがとうございます。森委員からのコメントでございまして、こちらは今、「アカデミアとの協創」というところを追加しております。前回は、下のほうにございます146行目で、産業界においては、産学協創という言葉を使っておりましたけれども、アカデミアのほうにはございませんでした。これを踏まえて、アカデミアとの協創も大事だという御指摘ございましたので、この点について追加させていただいております。
続いて、180行目をお願いします。続きまして、安永委員のコメントでございまして、理研は尖った人材だけではなくて、幅広い視野を持った人材、こういった多様な人材を確保することが大事だという御意見をいただいておりまして、ここをしっかり明記するという観点で、多様な人材を確保といったところを追記しております。
続いて、181行目から、「安定性と流動性を高いレベルで両立した」という辺りについて、具体的な施策を、どういったものをしているのかというのを書いたほうがいいのではないかという点について、赤澤委員よりコメントいただいております。こちらについては、185行目から、原案において「卓越した研究者を招聘するための弾力的な処遇、研究プロジェクトに対応した柔軟な有期雇用期間の設定」を記載しておりますし、併せて中長期計画案、本日、参考資料4にございますけれども、246行目のところから、「特に、国際的に見て高い研究力を誇る研究者を採用する際には」といった辺りから、253行目でございますけれども、「優秀な人材が理研から国内大学・研究機関に転出する際に、研究活動を止めることなくシームレスに転出先に移籍し、躍進するための支援を行う」、こういった辺りに記載しているところでございます。
続いて、また資料1に戻っていただいて、186行目からでございまして、こちらは森委員からのコメントでございます。ダイバーシティを計画的に推進する観点についてしっかり記載したほうがいいのではないかという御指摘を受けまして、「多様な視点から研究を推進する観点から」といったところ、また、188行目でございます。「研究環境の整備」といったところを書いておりますけれども、研究以外の環境、こういったところの整備も大事だという御指摘いただきまして、その点につきまして、「研究」を削除し、幅広い環境の整備というところを見えるようにさせていただきました。
続いて、267行目、物理科学領域のところで、化学といったところについてもしっかりと明記したほうがいいのではないかといった御指摘をいただいておりました。こちらにつきましては、中長期計画、参考資料4の275行目のところ、「また、分野横断的な取組として純粋数学を含む数理科学及び化学分野について理研全体で強化していく」と明記させていただいております。
続いて、資料1、423行目でございます。こちらは先ほど参考資料2、独法評価委員会からの指摘の中で、業務管理及び内部管理の指摘を踏まえて、DXに関しての推進というところがございましたけれども、こういった指針というか、ガイドラインを踏まえまして、「情報化推進による利便性の向上等を図る」といったところを追加しております。
続いて15ページの指標をお願いします。3.1の一番右端です。こちらは伊地知委員からのコメントを踏まえまして、「適切な評価を踏まえた法人運営の改善状況」といった形で修正させていただいております。
あと、最後のページ、お願いします。今回、17ページ目に、「国立研究開発法人理化学研究所の使命等の目標との関係」というものを追加しております。こちらは、これまで御議論してきた内容をまとめたものでございまして、特に新しい内容はございません。こちらを追加した理由としては、独立行政法人の中長期目標策定の指針がございまして、こちらに基づいて追加しているといったところでございます。
説明は以上でございます。
【栗原部会長】 どうもありがとうございました。委員のコメントを非常に丁寧に入れていただいたと思います。
それでは、今の文科省からの説明を受け、委員の皆様から御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。上野委員、お願いします。
【上野委員】 ありがとうございます。資料1の序文のところに、特定国立研究開発法人であるということで、その「期待に応え」とか、「重要な役割を果たす」といった文言が追加されたのは非常によいと思います。
後ろのほうで、今、説明には入っていなかったですが、指標の中長期目標について、今申し上げても大丈夫でしょうか。
【栗原部会長】 はい、どうぞ。
【上野委員】 では、スライド16のモニタリング指標のところですけれども、前回、気づかなかったので申し上げますが、モニタリング指標に、上の枠の下から4行目、組織対組織での産業界との連携数の後ろに、知的財産の新規出願件数だけが書かれているんですけれども、特許は出願しただけでは意味は薄く、審査請求して、保有して、それが活用されて、初めて価値を持つものですので、出願件数だけを指標にすると、取れないような内容でもとにかく出願件数だけ増やそうと注力してしまうような悪い方向に誘導しかねないと思います。また、今、産業界との連携数の後に出願件数だけ書かれているんですが、産業界との連携がなくても知財は生まれますし、知財はそうでなくても重要ですので、まずは行を分けて書いて、その上で、出願件数に加えて、保有件数も基本的な指標として加えるべきと思います。
次に、保有しているだけではコストでしかなくて、活用されて、初めて価値を持つものですので、その年度に実施許諾、ライセンスした件数、また、前から実施許諾しているものも含めて、実施許諾中の特許の件数といったことも加えるとよいと思いますし、活用されない特許は持っていてもコストがかかるだけなので、手放すことも含めて知財は戦略的に管理することが重要だと思います。
前から理研様はそこの意識を持っておられて、10年以上保有する特許が使われている割合、実施比率というのを出して、低い場合は棚卸しをすることもされていらっしゃって、ほかの公的研究機関ではなかなかそこまでの意識を持っていらっしゃらないところもある中で、10年以上保有する特許の実施許諾比率というのも、実施率というのも出していらっしゃるので、こういった指標、今後も変更、追加ができるということかもしれないですが、評価はあらかじめ定めた基準に基づいて行って決定するというのが基本ですので、重要な指標は目標の時点で記載しておくのが適切かなと思います。
以上です。
【栗原部会長】 上野委員の今の御指摘は、考え方としてはそのとおりだと思いますが、今、知的財産に関しては、3-3の一番最後のモニタリング指標のところに、従来からの知的財産の新規出願件数、保有件数等々、今、委員のおっしゃったようなところがモニタリング指標になっていって、上野委員の御意見は、すでにモニタリング指標の中にあるということでよろしいでしょうか。
この産業界との組織対組織での連携に関して、こういうものを殊さらこの中に書くか、あるいは全体の中で判断いただければいいのかということに関しては、もしかすると、少し理研と、それから、事務局の側で御検討いただくというようなことかと思いますけれど、いかがでしょうか。
【上野委員】 ありがとうございます。そうですね。おっしゃるとおり、17ページのほうにも書かれているのを気づきましたので、そちらのほうに今申し上げた話で追加すると、実施許諾の件数が新規のものと、新規出願件数となっているので、実施許諾もそれに合わせるとすると、新規のものと、それから、実施許諾中の件数ということ、それから、10年以上保有する特許の実施許諾比率というようなところが、追加するとすればあるかなと思います。
【栗原部会長】 それは後段のところで、全体として考えていただいたらいいのではないかと思いますのは、特許は出願してから実際に審査請求するまでにも状況によって数年かかります。それからさらに実施許諾というとさらにかかるので、直近のところで見ていくのだと、申請件数でもいいのかと思いますが、理研全体としての活動として見るところですと、その後で書かれているようなことをきちっとフォローしていただくというのが大事かなと思います。
今の産業界との連携のところで、実施許諾まで行くとなると、事業化のところで、産業界も、内部でもいろいろ検討いただく必要があるでしょうし、かなり時間のかかることなので出願件数にされているのではないかと思うので、おっしゃっている御意見の意義は非常によく分かりますが、ここの連携の活動のところに全部書かなくちゃいけないのかというのは御検討いただいたらいいかなと思います。
【上野委員】 先ほど申しましたのは、17ページのほうにあるのを拝見しましたので、スライド16のところに追記する必要はないと思います。
【栗原部会長】 こちらのほうでやっていただければいいと思います。
【上野委員】 委員長がおっしゃっているとおりで、16ページに全部追記する必要性はないと思います。17ページにおいて、実施許諾件数について、新規のものと、それから、現在、実施許諾中のものが、ここの17ページにおいてあるほうがいいのかなと思います。
【栗原部会長】 分かりました。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。検討させていただきたいと思います。重要な御指摘だと思いますし、10年以上の実施化率も現行の中長期目標にも入っていますので、検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
【上野委員】 ありがとうございます。
【栗原部会長】 ほかに御意見ございますでしょうか。吉村委員、どうぞ。
【吉村委員】 先ほど説明の最後で、(資料1、13ページに)情報化推進の話が出ていて、利便性向上と入れましたという御説明があったと思います。DXの重要性などが指摘される中で、情報化に関し、便利になるというだけの記述で、理研の認識として大丈夫なのかということを感じました。文脈もあると思いますが、この表現でよいか確認させていただければと思います。
【栗原部会長】 それでは、事務局からお答えいただければと。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。御指摘のとおり、情報化推進は利便性だけではございませんけれども、ここの中では、情報システムの整備、いわゆる下支えのところを示しています。おっしゃるとおり、研究に係るDXは、前の3.1の(2)のところで、「理研の研究力を強化する情報基盤・環境の研究開発・整備」といった辺りでしっかり示しております。場所に応じて書き分けているということで御理解いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【吉村委員】 御説明ありがとうございました。了解しました。安心しました。ありがとうございます。
【栗原部会長】 理研全体の情報ネットワークというのは非常に強力に整備されているところなので、それに関しての記載と理解しておりました。
ほかに御意見ありましたらお願いします。
特によろしいでしょうか。これはもう夏の部会から出ている御意見、それから、前回の部会で出ている御意見等、非常によく反映していただいていると思いますので、ないようでしたら議題2に進みたいと思います。
【森委員】 すみません。ちょっと細かいことでもよろしいですか。
【栗原部会長】 結構です。
【森委員】 5ページのところでの「理研を触媒にしたアカデミア全体の活性化」ということで、アカデミアとの協創ということを文言に入れていただきました。その中で、特にということで、国内外の大学、研究機関との先端研究との推進とか、そういうことで、組織対組織で、今、我々のところもやらせていただいておりますが、施設を使い合い、強磁場とか、うちは中性子とか使っていただき、あるいはこの研究会を一緒に毎年やらせていただいて、非常によい先端研究推進ができているので、そういうところも評価していただく、加えていただくというのはいかがでしょうかというのが一つです。
それから2つ目が、9ページのところの「物理科学」というところです。これに関しましては、「物理、工学、化学の連携・融合により」ということで、272行に、「革新的な計測・解析技術等の開発・活用に通じ」とあります。そのような形で、量子技術あるいはエネルギー変換に資する物質材料の開発みたいなところも非常に活発にやっていらっしゃると思いますが、そういうところは入れない、科学という意味でも入れないのでしょうかというところが2つ目です。
それから、3つ目のところでは、これは10ページになって、309行目のところで、「世界の放射光科学を牽引する存在であり続けるための維持管理・高度化」ということで、とてもすばらしいと思いますが、Spring-8-2、SACLAということも含めて、施設、それから装置も含めて、革新的な技術をそこで育てて、それを供するというところで、施設、装置等の維持管理・高度化というところまでが入るのでしょうかということが質問です。
よろしいでしょうか。質問というか、実際はそうじゃないかなと思っておりますが、そこのところを御検討いただければと思います。
【栗原部会長】 今の御指摘は、御意見として検討いただくということでよろしいですか。
【葛谷推進官】 ありがとうございます。いただいたところ、最後の点、まさしく施設だけではなく、設備とか、そこも当然、付属するものの維持管理・高度化というのは当然関係してきますし、個別の中長期計画の中では当然、設備とかそういったものの高度化技術というのも入っておりますので、目標の中ではそこまで細かく書いていないというのが実態でございます。
【森委員】 分かりました。安心しました。何かSpring-8-2とか設備だけのことが書いてあったので、そこまで含めるということで。
【葛谷推進官】 あと、2点目について、物理科学では、材料的な研究について取り組むこととしており、中長期計画の創発物性科学の中で研究内容について細かく個別に書いております。
【森委員】 分かりました。
【葛谷推進官】 今回、領域化するということで、融合研究の主なところを具体的に書いておりまして、個別の研究は中長期計画にも記載しております。そういった意味では、理研としてこれまで進めてきているような創発物性関係の研究もしっかりやっていくというところは位置づけられております。
あと、最初の5ページ目のところは、コメント、先端研究とかそういった話ございましたけれども、基本的に当然そういったところも一緒にやっていくということを念頭に書いておりますので、そこは先生の御指摘の点は実施していくことはあると思います。
【森委員】 大きな政策と、それから、細かい計画があるということは理解いたしました。どうもありがとうございます。
【栗原部会長】 ありがとうございました。実際に研究計画のほうではかなり細かくいろいろ書いていただいていると思うのでという御回答でした。
ほかにございますでしょうか。
【東山委員】 すみません。聞こえていますでしょうか。
【栗原部会長】 東山委員、どうぞ。
【東山委員】 よろしいですか。研究領域のところで、研究領域による卓越した科学研究の推進というのが追加されて、とても良いと思って拝見しておりました。前回ほとんど参加できておらず、議論がもしあったとしたら申し訳ないですが、210行目からを拝見しますと、近い分野で有機的に連携させて、その領域ごとに卓越した研究を推進するということ自体はいいですけども、領域ごとということが結構強調されている感じがあります。元の図でもある意味、分野を分けるような形になっているので、領域ごとでの研究の推進はもちろん重要ですけど、さらに領域間での連携による研究に挑戦するとか、そこを目指すといったようなことはなくても大丈夫でしょうか。分けたイメージがありますが。
【葛谷推進官】 10ページ目を御覧いただければと思いますが、322行目からです。御指摘の点、重要な視点で、まさに理研として総合力を生かした研究ということで、領域にとどまらず、領域と領域の融合も含め、研究も含めてやっていくということが大事でございまして、(3)の総合力を発揮させるための研究開発といった、項目を起こしておりまして、その中で研究領域を超えた知の糾合によるということで、領域と領域との連携とか、当然、領域内の個別の分野と個別の分野の融合とか、こういったところも含めて、基本的につなぐ科学をしっかり推進していくということを整理させていただいております。
【東山委員】 分かりました。失礼いたしました。承知しました。
【栗原部会長】 あと、領域というのがかなり広いもので、従来のセンターが複数併せて一つの領域ということで今回定義されていますので、一般的に言う領域という言葉に比べると、はるかにそれ自体も広いと理解しております。
【東山委員】 承知しました。私が関連します環境科学はセンターがそんなにたくさん入っていないものでして、やはり横の連携というのが少し気になりながら図を見ていたこともあります。でも、問題ありません。ありがとうございます。
【栗原部会長】 環境科学はそうですね。環境科学とか、前回私が申し上げた化学とかは、今回、比較的、少し弱い感じはあるので、計画のほうで、そういう部分に関しては御配慮いただいていると御説明いただいたところです。
【東山委員】 承知しました。ありがとうございます。
【栗原部会長】 ほかにありますでしょうか。
では、次へ進ませていただきます。次は議題2、理化学研究所の次期中長期計画(案)について、理研より御説明をお願いいたします。
五神理事長、御発表お願いいたします。
【五神理事長】 理事長の五神です。委員の先生方、お忙しいところ御参加いただき、ありがとうございます。
それでは、次期中長期計画について、資料2に沿って御説明させていただきます。
理化学研究所は、今から107年前に設立されました。当時は、第一次世界大戦の最中で、日本の産業は殖産興業で進めてきた重工業が中心でしたが、なかなか立ち行かないことから、独創的な知恵を使った新しい産業をつくるために、基礎科学の研究所が必要なのではないかということがルーツになっています。それから107年経ち、今まさに、20世紀後半の高度経済成長を支えたものづくりではない形の価値創造、産業振興が問われている中で、理研の現代的な役割を再確認しながら再定義しようというところで、次期中長期計画の期間を迎えています。
その卓越した研究を進めるためには、研究者一人一人の独創性が必要ですが、それだけではなく、人類社会が未来に必要としている知恵にどうつなげ、それを人類の繁栄あるいは経済的な成長につなげていくか、ということに資する貢献をしたいと思います。
具体的には、計画書の項目に従って、説明させていただきます。まず経営について、領域の導入により、どう効果的に理研の機能を発揮していくか御説明します。次に、国際的な頭脳循環のハブになるために、どのように次期中長期の中で実践し、さらに、理研の本務である卓越した研究をどう進めていくか、あるいは、大きな研究基盤をどのように進めていくか。そして、その領域を超えた連携、これをつなぐ科学と呼んでいますが、これを進めるための具体的な方策として、現中長期計画の後半に導入したTRIPの発展について御説明し、最後に、運営上の重要な課題への対処について御説明します。
まず、領域を設定した理由についてご説明します。理研には13のセンターと2つの本部がありますが、これらの総合力を発揮するためには、細分化された運営では限界があると感じました。理事長が鵜飼のような形で、15の鵜をコントロールすることは、理研の力を発揮する形としてはなじまず、よりダイナミックな、分野を超えた連携をするためには、比較的近い領域での連携を強化するとともに、領域内を総括する者(領域総括)同士の日常的な会話を通じて総合力を活かすことができる仕組みの構築が必要です。サイエンス視点で、サイエンスメリットを中心とした理研の経営が国際的にも卓越性を伸ばしていくために不可欠ですので、各分野において国際的にも卓越した研究者に領域総括をお願いし、全体を見ながら、領域同士も議論しながら進めていく形を取りたいと考えています。
先ほどの質疑の中でも議論されたように、環境科学は基礎科学が求められるものとして極めて重要です。現時点では、十分にセンターが配置されているわけではありませんが、この領域を超えた連携の中で必要なものがより充実していく形で、次期中長期計画を進めたいと考えています。
続いて、6ページの右上にある図は、現中長期計画におけるガバナンスの体制ですが、それを領域を中心とした5ページの絵に沿った形で、分野を超えた連携の下で、ガバナンス体制も再整理していく方針です。サイエンスだけでなく研究人材をより有効に活用するために、センターを超えて移動できる仕組み、あるいは適材適所で活躍していただくことを進めたいと思います。理事会の意思決定プロセスに、領域総括の方々が参画することにより、理研におけるサイエンス視点での経営判断を迅速かつ強力に進められる形にしたいと思っています。その結果については、各センターを統括しているセンター長にはきちんと伝えて、全所内に周知、浸透させていきます。
また、理研には卓越した研究者が多数おり、その研究者による理研科学者会議があります。この会議は、理研の中でトップサイエンティストとして活躍している方々に、現場目線で経営層に提言していただくこととしており、引き続きこの機能を活用していきたいと思います。
そのほか、グローバルな視点での理研の立ち位置について、理研は世界の科学技術を支える公共財であり、日本だけでなく世界の公共財であるという視点から、国際的な学術コミュニティー、仲間からの助言を常に受けられるようにすること、国内においては、産業界も含めて、未来の産業をどうつくるかが理研の基礎科学研究の重要なミッションですので、その方々との交流も引き続き行っていきます。明確な課題を設定した上で評価していただくことをこれまでも行っていますが、引き続き行っていきたいと思います。
さて、研究活動の最大化をするために、今までの研究運営は研究費の配分に目が行きがちでしたが、大事な研究資源としては、人件費ももちろん大事ですが、スペースなども非常に重要になっています。
また、この先の7年を考えますと、大きな研究機関として求められることとして、カーボンフットプリントを意識する、我々の活動自身が地球環境に対してエコであることが強く求められると思います。予算があれば大型機器を調達すればいいのではなく、その機器をつくるのにどの程度CO2を排出したのかも考慮しながら、それをきちんと使い尽くす利用計画が必要です。さらに効率を上げるため、機器の共用などを進めることで、地球環境の負荷をなるべく減らし、プラスになる知をつくり出していくように進めていきたいと思います。その結果として、例えば若いPIが理研にきたときに、共通機器がより充実しているので、研究を迅速に立ち上げることができ、人材の頭脳循環などにも資するだろうし、機器の共用利用を通じて研究者同士の交流も活性化し、新たな知恵も出てくるだろうと考えています。
さらに、研究資源の全体最適化という意味では、運営費交付金をどう配分するかだけでなく、公的なプロジェクト、あるいは民間企業との組織対組織の共同研究なども積極的に進め、財源をより充実させていくことで、理研全体のスケールメリットを活かし、より大きな資金循環の中に理研が積極的に入っていくことになります。ただし、その大きな資金流入があった場合に、利益として民間企業のように配分するのではなく、公的な研究機関として、社会全体に循環していきます。特に大学との連携においては、理研の資金循環機能が強化されれば、それを大学との連携強化の原資としても活用していきたいと考えています。
これらを進めるためには、研究を支える支援系の人材の強化も極めて重要になります。例えば、単に運営費交付金を執行するだけではなく、高度化が必要だと思います。特に、情報セキュリティや研究インテグリティなど、新たな課題への対応には専門的な知見を鍛えていくことも必要です。
8ページの図は、今年の採用内定者に、どうステップアップしていただこうと思っているかを説明するために作成したものです。最初は様々な部署を経験しながら、自分の専門性の活かし方を各人にも認識していただき、その上で、専門人材としてより高度化していくのか、ジェネラリストになるのかも行き来できるように進めていきたいと思います。世界に卓越した研究者と対等に働くことができるサポート人材を育て、トップの研究者とトップのサポート人材が力を発揮することにより、価値の最大化を図ることを狙っています。
私は長い間、東京大学で、学の立場から日本の研究教育を強化することに取り組んできましたが、理研に着任し、中から見て感じたのは、理研を触媒として、日本に限らず、人類社会の成長に向けた改革の駆動力になるべきだと思いました。それは、基礎研究は新しい知恵が生み出される場で、社会の成長のためにはその知恵が必要になるからです。その知恵を社会の成長という大きな目標を掲げて皆で共有し、日々の好奇心を駆動力とする活動を進めていくことをビジョンとしています。そのためには、学との連携はより強化する必要があり、社会実装という意味では、経済活動を直接駆動している産業界、これは国内の企業だけではなく、世界的な企業との連携を進めていきたいと思います。
ここ最近の例を10ページにまとめていますが、先日退任が発表されましたインテルのパット・ゲルシンガーCEOは、退任される直前の二、三週間前にも理研に来ていただき、共同研究について熱く語り合った仲です。そのほか、ベルギーのimec、アメリカの国立研究所、マックス・プランク協会などとの連携も積極的に進めています。右上の写真は、10月に行ったグローバル・コモンズに関するフォーラムで、これは東京大学とポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム博士と共に進めている三者連携の一環です。
さて、大学連携の戦略的な推進は非常に重要です。今、大学はいろいろな意味で経営体としてどう伸ばしていくかが困難な状況にあります。日本は少子化が進んでいますので、18歳を育てて社会に送り出す発射台のイメージですと、大学は縮小しなければいけないという議論になってしまいます。しかし、資本集約型の経済からナレッジ・インテンシブな経済に移行する中で、知をクリエイトすることは、まさに国力そのものなので、大学の価値を、18歳を産業モデルが決まっているところに送り出す発射台だという捉え方は修正すべきであろうと申し上げてきました。
そういう意味では、理研の持っている資源を新しい形で、Win-Winの関係で大学と連携したいと考えています。11ページに示したのは、京都大学と理研の組織対組織の連携を表現している図です。京都大学には京都大学高等研究院という全体を束ねる組織があり、そこと理研が手を結びながら、いろいろな分野で組織対組織の連携を進めていく計画で、大学と理研の強みの相乗効果を発揮する仕組みになっています。
もう一つ、産業界との協創は、組織対組織の連携の意味で特に使っていますが、それ以外に、知を社会実装する意味では、スタートアップがとても重要だろうと思います。
東京大学でも、私が総長在任中にスタートアップ企業が200社程度から400社程度まで倍増しましたが、学術的な強みを活かした分野にスタートアップが出ているかというと必ずしもそうではなく、強みがまだ完全にはマッチしない状況でした。特にテック系は研究力が必要でなかなか産業化しにくいため、例えばプルーフ・オブ・コンセプトのために、「SPring-8」や「富岳」などの理研の資源をより活用することが可能になれば、ディープテックのスタートアップ支援として有効だろうと考えています。
スタートアップを強化するために、理研では、理研鼎業という100%出資の子会社を設立しましたが、日本におけるイノベーション創出の機会を増やすための活動をパワーアップする目的をより明確化するため、社名も理系イノベーションと改めました。また、2022年に私が理事長に就任してすぐに山本氏(前東大TLO社長)をアドバイザーに据え、いろいろな改良施策を進めてきており、今年の6月には社長に就任していただきました。これらの取組によって、12ページの図にありますように、新規の実施許諾の収入及び新規の実施許諾の件数なども着実に伸びており、理研の強みを発揮する体制が整いつつあります。
さて、サイエンス発展の原動力はもちろん人材にあるわけです。理研が国際的な頭脳循環の場を提供していく中で、研究者雇用の安定性と流動性を両立させる必要があります。前回の目標の議論の中でも話がありましたが、方針としては、まず弾力的な人事制度の整備を行います。かなり硬直的な部分がありましたので、それについては既に制度改定をほぼ終えています。そして、多様性・公平性・包摂性に関する国際標準が重要ですが、残念ながら、現時点では理研は標準からはまだ大分ずれています。女性の活躍、あるいは外国人の登用で劣後していますので、より充実させていきます。
施策としては、若手を特にエンカレッジすることが我が国全体の人材力という意味で極めて重要なので、白眉制度を改良したECLプログラムをより強化していくことと、その前段階の大学院生やポスドクなどの支援拡充に取り組んでいます。支援の金額の単価も改定しました。若手研究者の人材登用、育成の枠組みを整備していくことについては、世界的な研究リーダーとして活躍する女性や外国人の研究者を、ただ公募して待つのではなく、戦略的にサーチをしながら採用し、日本で働きやすいような環境を準備していきます。もう一つ重要なことは、頭脳循環ですので、理研から転出していく方も応援する必要があります。理研時代はいい環境の下でいい研究ができましたが、転出先ですぐに環境が整っていないことを理由にテーマを縮小するような話があってはいけないので、理研時代に使用していた研究機器等は引き続き使用できるように保証し、場合によっては共同研究の枠組みなどを活用して支援も続けるための金銭的な支援も考えています。この安定性と流動性が両輪ではありますが、これまでは7年間の中長期計画の終わりに一旦リセットするというリジッドな制度になっていました。この3月で、その制度に従って一区切りになりますが、次期からは必ずしも中長期期間にとらわれないような形で、継続あるいは見直しも期の途中でもできるようにし、より安定的に発展できるようにしようと考えています。
給与については、日本の給与制度はかなり国際標準からずれているので、まずはその給与制度を直す必要があると考えています。既に行ったことではありますが、管理職ポストの公募においては、前職の現給の補償を募集要項の中に明示してあります。先ほども申し上げましたが、転出していく方々の支援の拡充も行います。また、雇い止め問題が社会問題化しましたが、理研は有期雇用契約における通算契約期間の上限規制を既に撤廃しています。有期プロジェクトであっても通算上限を一律に定めず、また、必要な有期雇用制度についてはきちんと活用できるようにするなど、既に改めています。
大学との連携の上で特に重要なのは、クロスアポイントメント制度と考えています。これまでは、成果が大学なのか理研なのかがよく分からないため比較的慎重な運用をしてきましたが、現在の日本の研究環境を考えますと、例えば大学との連携であれば、両者の良い点を最大活用する意味で、クロスアポイントメント制度は積極的に活用すべきだと考えています。エフォートの分割という硬直的な仕組みではなくて、クロスアポイントメントを活用することのインセンティブを追求していきます。
昨今、研究セキュリティ、研究インテグリティの問題が複雑化している中で、特に経済安全保障の問題などは、基礎研究であっても深刻です。これは研究者をあらゆるリスクから守って自由に研究する環境を整える意味で、組織としてのマネジメント強化は不可欠です。そのために高い専門性と実務経験を有する法律事務所と包括的な契約を既に締結しており、常時相談ができるよう、週何日か数人の法務のプロフェッショナルが常駐しています。そして、研究インテグリティ、経済安全保障本部を設置するなども進めています。また、基礎研究であっても、量子技術やAIなどは機微な研究になりますので、研究者が安全に研究を行えるセキュアな環境を整え、そのための施設も充実させていきます。14ページの航空写真の赤枠で囲った3.3ヘクタールの土地は、松林の国有地でしたが、取得のお願いをしてきました。既に取得は進んでおり、現在審議中の補正予算で、この土地に建設する施設予算も認められる方向で進んでおります。この施設で、研究者が安全に研究に専念できるような環境を整えることをソフト、ハード両面から進めています。
理研に就任した際に感じたのは、やはり無から有を生み出さないと新しい知恵は出ないので、研究者自身が極めたいと願う研究、キュリオシティ・ドリブンの部分を衰えさせては駄目だということです。ただし、それは何もなければランダムウォークになってしまうので、それでは国研としての責務は果たせないため、人類の未来に必要となる学知というのは何だろうということを常に考えてきました。これには分野を超えた日々の議論が大事ですが、分野を重ねることは可能であり、キュリオシティ・ドリブンの研究を妨げることではないだろうと思ったため、それを実装するために「Transformative Research Innovation Platform of RIKEN platforms」という計画を提案しました。これがTRIP構想です。
ただし、ただ連携しなさいと言ってもつながりようがないわけですが、データ駆動が非常に重要になっていることが明らかでした。良いデータをつくることは計測装置を高度化する意味で、分野を問わず全ての研究者が求めていることです。そこを出発点とし、それを新しいアルゴリズム、あるいは数理を使ってどう解析するか。そして、それをデジタルツインなど、あるいは量子コンピュータを使って新しい手法で解析することで、研究をデータ駆動で加速する仕組みとして掲げ、これであれば理研のどの分野の研究者であっても参加できると思い、進めました。この枠組みの中で一緒に活動することによって、分野を超えた連携の芽が出てくることを期待し、設計しました。このTRIP構想をスタートした後に、御承知のように、ジェネレーティブAIという大きなことが起こり、このデータ駆動がサイエンスの研究においても極めて重要になり、今ではAI for Science、TRIP-AGISというプログラムとして、さらに加速しています。
本年7月の評価では、TRIPはまだ成果が十分には出ていないとの指摘がありましたが、現場としては物凄い勢いで理研全体に浸透していると感じていましたので、どう説明したらよいのかを考えていました。先月、このTRIPのリトリートの第2回目を行いました。第1回目は1月に行いましたが、僅か10か月の間に、参加しているほぼ全部のセンターで、物凄く大きな進展がありました。16ページでは仁科の加速器科学、BDR、BRCの研究成果を取り上げていますが、例えば仁科では、過去30年間で取得してきたデータを、予測科学、あるいは推論を使い、より精密で系統的なデータに仕上げることが可能となり、それを受けて、この1年間で多量のデータをよりシステマチックに取得できた、という報告もありました。
また、アドバイザーとして、フェニックス・ベンチャー・パートナーズという会社の神部氏を特別顧問にお願いしていますが、十数年前に米国のシリコンバレーでナノテク材料のパイオニアベンチャーをつくり上げた、日本の起業家の先駆者である彼がこの10か月間の進歩を見て非常に驚いたとおっしゃっていました。西海岸に持っていってもすぐに売れるようなものも次々出てくるのではないかと実感した、とおっしゃっていただいたので、これを発展させていきたいと思っています。
これを具体的に進める意味では、先ほど説明しました領域を活用しながら基礎研究あるいは課題解決型のプログラム、大きな分野横断、センター横断型のプログラムを皆で立案し、国や産業界に提案しながら、それを課題解決に向けて貢献できるよう期限を定めて、集中的に進めるものをつくろうとしています。これは船になっているので、一旦乗ったら降りられないような絵に見えますが、そうではなく、自由に乗り降り、あるいは、より大きな船ができれば乗り換えられるような柔軟な仕組みを考えています。
研究領域については、数理・計算・情報科学、生命科学、環境科学、物理科学がありますが、それに加えて、理研の強みであるオリジナルな研究をする開拓科学をきちんと堅持して進めていくように領域の枠組みを定めています。環境科学は、現在、メンバーは少ないですが、TRIP事業の中から、グローバル・コモンズの研究などのようにほぼ全てのセンターが参加している状況になりつつあります。
先ほどAI for Scienceの話をしましたが、それが一番上にあり、それに加えて、量子コンピュータを使う時代だからこそ、量子力学の基礎をもう1回深く議論しようとしています。特に非平衡で開放系なものが世の中の普通ですが、その中で量子論はどのように働いているのかといったことを、フィジックスの限られたターゲットだけではなく、幅広に議論していきたいと思います。ジェネレーティブAIなどのように、AIの知能がすごく進んでいます。AIの推論計算は、ユーザーがChatGPTを使うたびにサーバーで行われていますが、次のステップとして、その推論計算のチップがより省エネルギーで、ロボットに収まるようなデバイスに、数年以内になるだろうと思います。それらを装着したロボットは物凄い知能を持ったロボットになるだろうから、それに備えたAIの高度化、ジェネレーティブAIの高度化あるいはロボティクスの高度化などを総合的に行う、大変壮大なプログラムを今進めています。
そのほかの今後に向けた詳細については、もし御質問があれば御紹介したいと思いますが、グローバル・コモンズ、ライフコースという世代をつなぐ生命科学、そして、数学と化学ということを想定して、準備を進めています。
やや抽象的な絵ですが、化学については、かなり壮大なプログラムを立てて議論を進めており、化学の試験管の中で合成するようなイメージを超えた新しい創出の方法があるのではないかと考えています。新しい解析の手法があるのではないかというように、化学の枠を見直すような計画をぜひ7年の間に物にしたいと思います。
フラッグシップとなる大型の基盤は、既に放射光についてはSPring-8の高輝度化、8-2の計画があります。「富岳」については、「富岳」NEXTがちょうど同時に準備に取りかかります。2025年をそのスタート年として、現在、予算要求を進めているところですが、理研の計画を止めずに進められそうな状況になっています。これらとも関連しますが、我が国に限らず、半導体は全てのエコでスマートな社会をつくるための基礎になりますので、半導体についても積極的に関わっていこうとしています。SEMICON Japanという10万人規模のイベントが昨日から行われていますが、その冒頭でキーノートスピーチを行わせていただき、理研の本気度を伝えてきたところです。
最終ページの業務運営改革については、既に御説明しましたように、人材確保・育成が極めて重要で、それを円滑に進めるために、どのように運営の仕組みを変えるべきかを考えていたと言っても過言ではありません。
研究施設・設備については、今日は具体的には説明できませんでしたが、バイオリソースを世界の研究者に提供していることは理研の重要なミッションになっています。これは、理研がきちんと血統書つきのような形で確認したバイオリソースを世界中に配布する事業で、ライフサイエンス研究の信頼性を高める、サイエンスのトラストを高める意味で極めて重要な事業ですので、これも手を緩めずに進めていきます。
また、先ほども申し上げましたが、理研の活動自身がエコであるように、カーボンフットプリントなども意識しながら効果的な運営を進めていきます。
少し長くなりましたが、以上です。御清聴ありがとうございました。
【栗原部会長】 どうもありがとうございました。大変丁寧に御説明いただきました。
それでは、理研からの御説明を受けて、委員の皆様から御質問、御意見等ありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
【小松委員】 すみません。ちょっといいですか。
【栗原部会長】 はい、どうぞ。
【小松委員】 研究管理職というのは何を指すのでしたっけ。事務方ではなくて、研究者ということですか。
【五神理事長】 そのとおりです。プリンシパル・インベスティゲーターを、ここでは研究管理職と呼んでいます。
【小松委員】 研究管理職以外、いわゆるポスドクとかの選考の際にもやはり多様性、公平性、包摂性は必要だと思いますが、研究管理職に特化する理由というのはあるんですか。
【五神理事長】 多様性で一番劣っているのが研究管理職ですので、そこを強化する意味で、もちろんポスドクなどは、ジェンダー、平等、国籍もオープンになっています。一番難しいところを明確化しました。
【小松委員】 なるほど。分かりました。それから、領域のところで、全体的なプレゼンテーション、非常にドラスティックな計画で、これから理研をドラスティックに変えていくというすごい計画ですばらしいと思いますが、これから具体的なことは詰めていくのかもしれないですが、領域の中のセンター間の研究をうまく本当につなぐ科学を促進していく上で、今回、領域長もいらっしゃいますけども、何か具体的なアイデアがもう既にあるのでしたらお聞きしたいのは、これは個人的な興味なのですけども、例えば、今、理研の中で、ファンディングプログラムがあると。つまり、こういう研究、こういう領域を超えるような、センターを超えるような研究がしたいと若手がアプライして、その中で理研の中で審議して、お金をつけていくみたいなそういうプログラムがあって、非常に理研の中でも重要だという話を聞きまして、例えばそういうものを個々の領域がそれぞれに持って、積極的にこのプロジェクトをアプライしてもらって、審議して、お金をつけていくみたいな、そういうサブプログラムみたいなものをつくったりするのか、それとも何かいろいろなやり方はあると思いますが、何か既に具体的なアイデアがあれば聞きたいなと思いました。
【五神理事長】 ありがとうございます。既に理研の中には、先ほど示した理研科学者会議があり、その会議のボトムアップ的な議論の中で、理研にどういう新しい分野を導入すべきか、あるいは研究者の雇用についての判断や新領域の開拓プログラムを公募しながらそれを選定する仕組みがあります。現在も非常に機能していますが、それだけでは足りず、やはり中の研究者の視点だけでなく、外との交流のネットワークを強く持っている領域総括の方と理事を交えて、外からの視点も含めた上で、より戦略的にボトムアップとトップダウンを進めていこうとしています。
例えば、新しい分野、こういう分野が大事になってきたかもしれないが、まだ理研にはないと言った場合に、どのようにその分野を補強していくかということを領域総括の方に議論していただきながら、もちろん私も参加して進めていきます。
また、実は領域総括の方との議論は既に始まっていまして、今日お示しした計画は、この領域総括の方との議論の中で、現在の理研の仕組みの継続性を担保しつつ、どのように実効性のある改革を進めたらいいかを議論したものです。
2022年4月に理研の理事長に就任しましたが、私だけのアイデアでは到底、実現可能なものはできないことから、領域総括の方の多くはセンター長経験者でもありますので、理研の仕組みのいい面、悪い面をよく御存じの方々と議論しながらつくり、シームレスに進めることができると思っています。
【小松委員】 そうですね。だから、本当に今後の中長期計画の中ですごく重要な、評価する際でも重要な点、領域、あるいはTRIPも重要になると思っていて、だから、ともすれば、領域長の方々は各領域にあるセンターの、何というか、オーガナイズというか、何かそういうふうになってしまいがちなのかもしれないですけど、そこからセンター間での共同でしかできないような新しい知恵を生み出してきたのか。非常に難しい作業だと思いますが、これからも興味を持って注視していきたいと思います。
【五神理事長】 ありがとうございます。数センターを束ねるボスを上に乗せたわけではなく、むしろ13、15あるセンターをつなぐため、それを有効に進めるための工夫であり、資料の5ページの絵では十分に表現されていないかもしれませんが、それぞれの円の境界をややぼかしてあるのはそういう思いもあるためです。全体としてつなぐための仕組みとしてこれを機能させることが狙いです。
【栗原部会長】 私は、これはつなぐ仕組みと思って拝見していまして、領域内のセンターが連携してほしいということよりは、全体としてTRIPの構想の中に、必要な個別のものがうまく上がってくるように、理研全体を一遍に見るのではなくて、間に、もう少しきめ細かく見るための領域長の方がいらして、いろいろなセンターにあるものが十分に活用できる、そのポテンシャルが最大限に発揮されるようにという意味での領域だと思って拝見しておりましたけれど、五神先生、そうですよね。
【五神理事長】 はい。そのとおりです。ただ、それだけではなかなか自動的にはつながりません。ところが、オール理研で、予算獲得も含めてTRIPという装置を動かしましたので、TRIPをいかに皆で盛り上げるかを駆動力として実践的につないでいく、それがうまくいけば全体のパイが大きくなるので、皆さんにとってもWin-Winだということです。たった10か月であれだけの成果が出てきたのは、その仕掛けが非常にうまく機能していると私は見ています。それを今日も参加していただいている文部科学省の担当課の方々にもよく理解していただいて、応援していただいています。
【栗原部会長】 補足いただきまして、ありがとうございました。
安永委員、お願いします。
【安永委員】 五神理事長、丁寧な御説明、どうもありがとうございました。スライドの8ページについて、まさしく五神先生がおっしゃったように、世界に卓越した研究者たちと対等に協働できる、言ってみれば、研究運営管理人材というのは非常に大事だと思います。特に理研ですとか、大規模な、なおかつ高度な研究をやっておられる特定研発にとっては、どれもこういった方々が非常に大事だと思います。これを見ていますと、企画、研究推進系、人事・総務系、財務・経理系、連携促進系、それから、5番の施設・安全管理系、実はどれも物すごく専門性が高いと思います。
私は実は産総研で理事をやっていたことがありまして、そこで各大学と産総研の共同ラボをつくったことがありますが、このときに非常に感じたのは、こういう研究運営管理系のプロフェッショナルというのが、今、すごく必要とされていると。過去は、特に人事・総務と財務・経理系は、昔の独法といいますか、昔の国研の管理運営システムを引き継いでいればよかったのが、新しいお金、それから、新しい人事体系というものを柔軟に駆動することが必要になる。それから、企画、研究推進系や連携促進系では、まさしく研究者の方々と、ここはこうじゃないですか、こうやられたほうがよろしいのではないでしょうか。こういうことをきちんと提言できるような人材が必要になってまいります。
あえて個別の大学名は申し上げませんけれども、私が8つぐらい大学連携を実施した中で非常に思いましたのは、大学によっても非常に特徴があって、私は産総研代表として交渉に行っているわけですけれども、学内で研究をやられる先生方と研究管理の方々、しかも、権利関係の方々も、人事・総務系の方と、財務・経理系の方々の御意見が違うことがあります。ところが、五神先生がおられた東大ではそういうことが全然なかったです。非常にトップダウンで総長のお考えが浸透していて、なおかつ、それが実務でもかなり敷衍をして、仕事を進めやすい形になってきていたと思います。だから、この分野は、私は非常に大事だと思います。
ここからが質問ですけれども、このキャリアパスに基づく人材育成策をつくるというのは、実は物すごく大変だと思います。国からの運営費交付金、それから、いろいろな競争的資金を扱っているとなると、そういうものの扱いに習熟するということも当然必要だし、なおかつ新しいことを国内の関係大学や関係機関、あるいは外国の研究機関とも一緒にやっていく。ここをうまくサポートするというのは物すごいスキルが必要だと思います。
そういったことで、どのような人材育成策の策定手順といいますか、プロセスを考えておられるのか。もし今のお考えをお聞かせいただけるのでしたら大変ありがたいと思っております。
以上でございます。
【五神理事長】 前職の東大総長の時代に議論したことがあります。国立大学の場合には、法人化される前は国の機関だったので、文科省からくる事務総長、事務局長が事務職員を統括すればよいということで、役所の一組織のような仕組みが定着していましたが、それが法人化されたことで、大学の裁量で人を採用するようになりました。ところが、人事制度については、私が総長になったのは2015年なので10年以上経っていましたが、国立大学、公務員としての形態がかなり残っており、優秀な人を民間並みのルールで採用しても、その人たちが公務員よりも給与水準が悪く、昇格も遅い人事制度が硬直化していましたので、それを全部直しました。
昇格ルールについても、メリットベースで上がれるような形を変えました。理研の場合は、そこまで公務員型が定着している状況とは少し違いますが、運営費交付金を上手に運用すればよいオペレーションであったことには変わりなく、新しいプロジェクトを立ててパイを増やしていくような活動について、研究者と一緒にやる機能は十分に育っていなかったわけです。
そのため、研究者と支援系の事務の人たちと一緒に、この次期中長期計画、あるいはTRIP構想などを立てながら、どういう価値に向かっていくかというビジョンをまずシンプルに立てて共有し、それを実践するためにそれぞれの役割で何をやったらいいかを調べていきながら進めようとしています。多くの場合、今までやっていたことに倣いたいとなりますが、私はそれについては、理研法の立法の原点を確認しながら、やれるべきことを広げていくことを一つずつやってきており、2年半余りの中で、それは私が思った以上に浸透しています。次期中長期計画を立てる上でも、研究者がやることが大学では多いですが、この支援人材の人たちが高度化する中で、シナリオをつくることも一緒にできるようになってきています。
ここで一番大事なことは、トップダウンでビジョンを明確化することと、トップが責任を取る、リスクを取ることを明確に述べることで、それがないと、過去のやり方に寄りかかることになり、結局ルールは変わらないと思います。理研には、それに対する十分な対応力を備えた人材が、既にかなり備わっているのが私の実感であります。
【安永委員】 ありがとうございました。
【五神理事長】 よろしくお願いします。
【栗原部会長】 それでは、ほかに御意見、御質問ありましたらお願いします。いかがでしょうか。
【伊地知部会長代理】 伊地知ですけれども、よろしいでしょうか。
【栗原部会長】 はい、どうぞ。今、お二人、手を挙げておりますが、順番にお願いします。
【伊地知部会長代理】 ありがとうございます。目標を踏まえて、具体的に計画として理研がどのようにされようとしているのかということが、全体についてよく分かったというところです。大変細かいところで恐縮ですけれども、研究領域の中で具体的にどのようにされるかというところがやはり計画の中で書かれているというところかと思います。そのときに、物理科学のところの記載、これは参考資料4ですけれども、個々の「研究」についてであると428行以降になります。ほかの研究領域では、既存の研究センターに対応する「研究」が段落の冒頭に来るということで、センターに該当したところでどういう活動をされようとしているかというのが比較的分かりやすい形になっているのですが、物理科学においては、確かにその段落中において該当する「研究」は出てきますけれども、段落の冒頭には出てきません。これは物理科学のところについては何かお考えがあって、こういうような計画にされているのかどうなのか。この研究領域の中において各センターに該当する部分とか、どういった動き方になるのかというところで、これが文書上に何か表われているのかどうか、その辺りをお伺いできればと思います。細かいことで恐縮です。
【栗原部会長】 では、事務局からお願いします。
【葛谷推進官】 参考資料4の細かいところをいただきまして、ありがとうございます。この資料については、まさに最初のところに書いてあるとおり、暫定版というところで、御指摘の点について全体の並びを取ると、最初にその言葉がないということで少し読みづらいというところがあるかもしれません。そこについては調整をしていきたいと思います。大きなルールというのが個別にはなくて、今こういう形でまとめているということで理解いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【伊地知部会長代理】 ありがとうございました。承知しました。
【栗原部会長】 それでは、東山委員、お願いします。
【東山委員】 ありがとうございます。21スライド目について、2つあります。中長期目標を見ていたときに、フラッグシップのところで、例えばSPring-8とか、あとは「富岳」も次の世代を考えているのと同様に、設備の更新とともに、次、どういう方向に進んでいくかというのがあります。一方で同じところにバイオリソースがあって、どういう運営をしていくか、運営の内容のことが中心に書いてあったので、バイオリソースについては設備ではなく運営で次の方向性を目指すのかと思いました。
ここを見たら、バイオリソースのほうの設備もエネルギー効率とかそういった観点では更新していくのだと思いまして、そういう意味では、何か、もちろんエネルギー効率とか老朽化対策は大事ですけども、研究的にバイオリソースにおいて、新しい視点で設備を更新していくというのもあるのでしょうか。例えばTRIPの関係で、情報、良質なデータをそこで直接取ったりということも、この設備の更新の中に含めていったりというような構想があるのかと思って、伺いたいと思いました。それが1点目です。
【五神理事長】 お答えしてよろしいでしょうか。
【栗原部会長】 どうぞ。
【五神理事長】 バイオリソースについては、細胞があればいい、モデルマウスがあればいいという話ではなく、そのデータが極めて重要で、統一フォーマットをきちんと主導しながら決め、世界中の研究者と共有化していく必要があります。その中で、そのデータの活用についてのスキルも発展させていくことを現在進めているところで、TRIP構想でほかの専門性を持った人たちとの連携や高度化が進んでいます。
もう一つは、ライフ系で、生物系の試料を世界に提供することにおけるサイエンスそのものの信用です。サイエンス活動空間のコモンズとして保全し守っていく意味で、バイオリソースの数は極めて重要ですので、この7年間で強化していきたいと思っています。現在、施設の老朽化がかなり進んでいる中で、コモンズを守ることを地球環境だけではなく、より知的な活動のコモンズという意味で大事だと主張していき、なるべく次期中長期の前半で老朽施設の改善を図りたいと思っています。
また、この7年間を考えたときに重要なことは、生物の研究で重要な動物実験を行う研究が、倫理の問題から世界的に見ると行いにくくなっていくことです。その代替をどう考えていくのかについては、例えばオルガノイドのようなものを先端の半導体技術と組み合わせて、データ化していくようなことも、現時点では研究という形で理研の中で進めていますが、それをバイオリソースの提供という形にシフトしていくだろうことも見て取れると思います。次期中長期計画の段階では、予測の範囲になるためあまり具体的には書いていませんが、大変重要な共通インフラになるだろうと思っています。
【東山委員】 ありがとうございます。すみません。もう1点よろしいですかね。先ほども議論ありましたが、研究管理運営を担うプロフェッショナルを育てていくということで、自身が大学に所属しております者として伺いたいのですが、一方で、多様性、国際化というのも非常に重要なミッションだと思います。国際化を進めようとすると随所に各部署に国際化を進めていく必要が生じたりするのかと思いますが、実際この研究管理運営を担うプロフェッショナルを育てていくという中で、国際化はどのように位置づけられているというか、どう両立させていかれようとしているのか伺いたいと思いました。
【五神理事長】 まず、基本的な語学のスキルは最低限必要で、事務系、支援系の人事採用においても、英語の運用能力などはお伺いしています。ただし、それが劣っている人を排除するということではなく、スキルアップの機会を与えながら成長してもらおうと思っています。これは個人的な見解ですが、生成AIの進化が日に日に進んでいる中で、いわゆる標準的な意味での外国語対応というもののサービスに要する労力が大幅に減ってきていることを実感しています。そういうものを運用できるスキルを高めるようなトレーニングコースなども提供して、全体的な底上げをすることができていくだろうと思っています。半年前に比べて、最近使ってみるとすごくいいと感じていますので、今まで日本の研究機関、あるいは大学では、語学スキルが大きな問題であり課題でしたが、生成AIのようなものをうまく使いこなしていくことによって解消していくだろうと思います。もちろん使用については注意深く行っていく必要がありますが、理研には専門家がたくさんいるので、そういう人たちと連携をしながら事務機能も高めていくことを進めています。
【東山委員】 どうもありがとうございました。
【栗原部会長】 ほかにございますでしょうか。
もしなければ私からひとつお伺いできればと思います。頭脳循環は非常に重要なことだと思っております。それでずっとここのところ言われているのは、若手が外国にあまり行っていないねということですけれども、前回、夏の部会のときに、人の出入りをお伺いしましたら、外国人は若い方がポスドクで来られて、非常に高位の職で、むしろ理研としては出てほしくないぐらい、外へ戻っていかれる。日本人に関しては、人数も少ないし、博士研究員として出て、外国で経験した方が高位の職で戻られている場合はちょっと少ない。今後ハブとしてやっていかれるのであると、例えば今から各国とのいろいろな主要機関との連携をする中で、ジョイントラボのようなものを、外国のラボを理研に置くとか、理研のラボを外国の研究機関に置くところで、もうそこに常駐していただいて、日本人の若手に活躍いただくというようなこともあるのかなと思いますが、現在の御計画の中では、外国での、特に一緒に働いた経験のある人たちを増やすというのは非常に大事かと思っておりますけれど、具体的な先生の御計画というのはどういうものがありますでしょうか。
【五神理事長】 ありがとうございます。ブルックヘブン国立研究所(BNL)には、理研とBNLの連携センターがあり、もう27年活動しています。初代がTsung Dao Lee先生だったこともあり、頭脳循環として核物理学の分野では世界的にも高く評価されています。
エレクトロンイオンコライダーという新しい加速器計画も始まるところで、理研だけでなく、大阪大学、東京大学とも連携したプロジェクトをまさに今、要求している予算の中でスタートさせ、より大規模に様々な年齢層の研究者が行き来できるようにしています。加えて、バークレーでは、数理科学を中心としたサイトが既に動いていますので、先ほど京都大学と理研のスキームをお示ししましたが、それに類する形として、左側が海外の研究機関であってもよいのかなと思っています。既にバークレーとは、具体的な活動の実績があるため、引き続き進めていく計画になっています。
また、プログラムの中ではFundamental Quantum Scienceを新たに始めますが、これも来年度には予算措置され、スタートする運びとなりつつあります。その関連では、ハーバード大学の物理学のグループと理研がバイのMOUを結び、若手の研究者を長期派遣する交流事業の準備を始めています。実際に、助教クラスで派遣する研究者も決まりつつありますが、ハーバード大学に派遣する場合にはハーバード大学基準の年俸7万8,000ドル以上でなければならないと言われており、日本の標準的な状況がかなり世界からずれていることも実感しています。こういったことを信頼できるグループとともに着実に進めていこうと思っています。
【栗原部会長】 大変心強く拝聴しました。それで、そういう活動を広げていただくことが、流動と安定ということについて、なかなか難しい両立だと思いますが、比較的着実に、しかも、理研の非常に進んだところで、人の交流が広がっていくというのは大変楽しみな御活動だと思います。よろしくお願いできればと思います。
【五神理事長】 ありがとうございます。ただし、研究者のシステムの流動性と安定性は、理研だけではできないです。
【栗原部会長】 そうですよね。
【五神理事長】 今、大きな問題は、理研で若手のときによい研究をした人たちが、例えば転出先で学生を指導しながら研究する場合、研究環境が急激に劣化してしまわないよう、理研が出来る限りのサポートをしようとしていますが、そもそもポストがないと、それもできないわけです。そのため、日本全体の研究者育成、頭脳循環のポートフォリオとしてどう設計し、どこにどういうポストを配備すべきかを国家的な規模で設計しないといけないと思っています。この構想のための基礎となるエビデンスを積み上げることが、理研の目下のミッションだと思っており、有力な研究大学などとともに進めたいと思っています。ただ、最近大学側からの提案が弱くなっており、理研に提案を持ち込んでくれる大学はあまり多くはなく、むしろサポートしてほしいという陳情や要望の話が前面に出るような状況になっているため、大学関係をもう少し強化することと同時にやっていくことが極めて重要だと、この計画を立てている中でも感じていました。理研のサポートだけでは足りないかもしれないので、理研部会の先生方にも、そういった視点でのサポートをお願いしたいと思います。
【栗原部会長】 ありがとうございました。より大局的なお話を伺いました。先生方、よろしくお願いします。本当に安定性と流動性というのはもう長いこと言われている日本の大学の大きな課題だと思っております。
ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、ありがとうございました。目標案については、この部会で承認ということが必要ですので、追加で御意見いただいた点、あるいは、今後、いろいろ検討の中で出てくる点に関しましては、事務局と相談させていただいて、最終案は部会長一任とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ありがとうございます。特に御異論がなければ、ただいま述べたような形で進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。御承認いただき、ありがとうございました。
それでは、議題3、その他に移ります。今後の予定について事務局から御説明をお願いいたします。
【葛谷推進官】 事務局から御説明いたします。資料3に基づいて説明します。下のほう、本日、12月12日ということで、第35回理研部会にて御議論させていただきました。中長期目標案と中長期計画案につきましては、本日の御意見を踏まえまして、引き続き検討させていただきます。
また、予備日としておりました12月19日につきましては、本日で中長期目標案についての議論は終了いたしましたので、開催いたしません。
今後の予定につきましては、下のほうにございますけれども、1月下旬に、文科省における理研部会の上の審議会でございますけれども、国立研究開発法人審議会にて、次期中長期目標案が議論されます。そして、その後、各省協議を経て、2月下旬を目途に、中長期目標案が決定する見込みになっております。その後、中長期目標案を決定したと法人に通知し、法人より計画が提出されまして、3月末、年度内に中長期計画まで策定するといった流れになっております。
あともう1点、本日の議論は、議事録として作成し、事務局から理研部会の委員の皆様にも確認させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【栗原部会長】 ありがとうございました。
それでは、本日の議題は全て終了いたしましたが、全体を通じまして、委員の皆様から何か御意見、御質問等ございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、どうもありがとうございました。本日は御議論、それから、理研の理事長からの大変丁寧な御説明、ありがとうございました。
以上で第35回理化学研究所部会を閉会いたします。ありがとうございました。
―― 了 ――