国立研究開発法人審議会 物質・材料研究機構部会(第22回) 議事録

1.日時

令和4年11月30日(水曜日)13時00分~15時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構が達成すべき業務運営に関する目標(中長期目標)に関する変更案について
  2. その他

4.出席者

委員

浅見委員(部会長)、折茂委員(部会長代理)、篠藤委員、河野委員、知野委員、バッハ委員、平本委員、寒川委員

文部科学省

 森研究振興局長、木村審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、江頭研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)、長田研究振興局参事官(ナノテクノロジー・物質・材料担当)付 参事官補佐 

5.議事録

【浅見部会長】それでは予定の時刻になりましたので、第22回物質・材料研究機構部会を開会したいと思います。本日は皆様御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございました。それでは、会議を始める前に、出席者の紹介と配付資料の確認を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。私、8月に着任しました参事官補佐の長田でございます。今日は皆様お忙しいところ、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
まず、事務局のメンバーに関しまして変更がございましたので、簡単に御紹介させていただきます。まず、9月より研究振興局長に森が着任しております。局長、よろしければ一言いただけますか。
 
【森局長】研究振興局長の森でございます。皆様お忙しいところ、会に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。物質・材料研究機構につきましては、これまでもすぐれた研究活動が行われ、研究成果を上げているところでございますけれども、今後のさらなる発展に向けまして皆様方から様々な御意見をいただければと思ってございますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 
【長田参事官補佐】また、同じく9月より、審議官も新しく木村が着任しております。
 
【木村審議官】木村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日もよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
 
【長田参事官補佐】それでは続いて、委員の出席確認でございます。本日は全員に御参加いただいております。バッハ先生は途中30分程度、席を外されると聞いておりますが、いずれにせよ部会開催の定足数を満たしていることを御報告させていただきます。続きまして、配付資料の確認をいたします。配付資料は議事次第に記載のとおりでございます。資料の不足等ございましたら事務局までお知らせください。また、本日の会議につきましては、運営規則に基づきまして全て公開となります。また、本日は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ウェブ会議にて実施させていただいております。委員の皆様には机上資料2として配付しておりますけれども、自身の御発言時以外はマイクをミュートにしていただくとともに、ビデオもオフにしていただくようお願いします。また、発言を希望される場合は、Zoom下部のリアクション機能で「手を挙げる」を選択し、部会長または事務局から指名された後、マイク及びビデオをオンにしてから御発言をお願いいたします。
それでは、以降の進行を浅見部会長にお願いいたします。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしましたら、議題1に入りたいと思います。本年度はNIMSの中長期目標期間の最終年度でございますので、当部会では、8月に取りまとめた物質・材料研究機構の中長期目標期間の終了時の業務及び組織の見直し内容、これは参考資料5にありますけれども、これに基づいて、次期中長期目標案について審議することになっております。本日は、次期中長期目標期間における運営構想について、これはNIMSからヒアリングを行った後で、この中長期目標案の審議を行うという予定で進めたいと思います。
それでは最初に、NIMSから運営構想ということでヒアリングしていきたいと思いますので、事務局でNIMSの入室をお願いしたいと思います。
 
(機構関係者入室)
 
【宝野理事長】では、よろしくお願いします。
 
【浅見部会長】よろしくお願いします。
 
【宝野理事長】それでは、第5期中期計画の運営構想について説明させていただきます。
御存じのように、物質・材料研究機構(NIMS)は、2001年に金属材料技術研究所、無機材質研究所が合併いたしまして設立されましたが、その後、独立行政法人、国立研究開発法人に移行する過程で、2016年に特定国立研究開発法人に指定していただきました。それによって、NIMSのミッション、主に物質・材料科学技術に関する基礎・基盤研究等に加えて、特定研究開発法人としてのミッション、つまり、科学技術イノベーションの基盤となる世界トップレベルの成果を生み出す創造的業務を担うことが加わっております。
 そういった観点で、私ども運営の骨子といたしまして、材料科学技術における世界トップレベルの成果の創出を掲げ、これは私どもは大学ではございませんので、論文指標に基づくものだけではなくて、イノベーション創出、産業界への基盤研究貢献も重視して運営を行ってまいります。
 そのための運営の柱ですが、まず、運営費交付金プロジェクト、基盤研究部分を2つに性格づけしたいと思います。1つは社会課題解決のための研究開発、もう1つが技術革新を生み出すための基盤研究でございます。さらに、データ駆動型材料研究を我が国で普及させるため、マテリアルデータ中核拠点を形成してまいります。研究力を高めるためには優秀な人材が必要ですので、マテリアル人材が集う国際拠点の形成、さらに産業界との連携構築と研究成果の社会還元を柱として運用してまいります。
これらについて具体的にお示しいたします。まず、運営費交付金プロジェクトの基盤研究部分、それから社会課題解決のための研究開発に位置づけるもの、これが蓄電池、それから水素関連材料を中心としたエネルギー環境材料、蛍光体で代表される電子・光機能材料、永久磁石、データストレージ、メモリーで代表される磁性・スピントロニクス材料、さらに、社会基盤を支える構造材料、これらは非常に出口が近いものですから、社会課題解決のための研究開発と位置づけます。
 一方で、出口までは遠いけれども、今、革新技術を生み出すために行うべき基盤研究として、次期中期計画より高分子バイオ材料を新たに設けます。さらに、量子・ナノ材料、最後、マテリアル基盤ですが、これは先端解析とデータ駆動型解析手法を研究してまいります。
 8月に分類したときに、この電子・光機能材料、高分子・バイオ材料の位置づけが逆で私ども申請させていただいていたんですが、この間、次世代半導体に関わる我が国の社会情勢の変化、さらに海外有識者からの指摘を踏まえて、半導体をカバーする電子機能材料を社会課題解決、さらに高分子・バイオについては基盤研究として位置づけさせていただきたいと考えております。
 運営費交付金プロジェクトの進め方ですが、次期中期計画より1階・2階のプロジェクトで明確に分けます。1階は基盤プロジェクトでございまして、これは7年間コンスタントに継続すべき基盤研究で、ボトムアップ型でございまして、研究職全員に参加させます。これまでのNIMSの弱さというのは、プロジェクトと組織が一致していませんでしたから、例えばグループにおいても、グループリーダーが求心力を持たないという悪い側面がございました。そこで次期中期においては、拠点と組織とプロジェクトを一体化させる、つまり、拠点あるいは分野で1プロジェクト、それでグループリーダーがサブテーマを担当しますからグループの求心力が高まる、それによってミッション研究を遂行していただくというつくりです。
 さらに、重点プロジェクト、これはその時々に重要なテーマが出てまいりますから、7年間継続するのではなくて、毎年ピアレビューを行って、継続するかどうかを決めていく、機動的に行う部分です。これはトップダウン型でございまして、選抜メンバー、選りすぐったメンバーで行ってまいります。量子マテリアルは既に今中期計画中に始めておりますが、次年度からカーボンニュートラル、バイオマテリアル、さらに1年後にはマテリアル循環の立ち上げも考えております。こういったプロジェクトが外部資金で十分に運用されるようになったとき、そこで終了して、新規に新たに社会的要請の強い課題を立ち上げていくという、機動的に動ける構成にしたいと思っております。
 これまでは主にミッション研究の話をしてまいりましたが、優秀な若手研究者を魅了するには、ミッション研究だけではなかなか集まりません。そこで、自由な発想で創造的な研究を行える環境、これを50%保障するということで、自由発想研究支援を行います。シーズ研究費は全員に配分しますが、それに加えて、専門家による審査により採択される科研費の採択課題、これに対して、NIMSは大学院生が一般的にいませんから、研究のコストが大学とは大きく異なります。ですから、それを支援するために、自己収入から自由発想研究支援を行うという方針でございます。
 さらに、日本のデータ駆動型材料開発を加速するために、マテリアルのデータ中核拠点をNIMSの中に構築しております。これは今期補正予算で、クラウド基盤、さらに高度なAI解析基盤について予算措置をいただいているところですが、入れ物はできたけれども、データという魂を入れてそれを使えるようにしていくということで、次期中期における大きな仕事になります。
 そこで、まず、NIMSで生成されるような構造材料データシートとかMatNavi、こういったものに加えて、自動的に全国のマテリアルのデータが集まる仕組み、これは文科省が行っておられるマテリアル先端リサーチインフラ事業、この共用装置から自動的にデータが収集できるシステムを現在構築中でございます。さらに、文科省データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクトにおいても、データ運営部会を通して、この中にデータを納める。さらに、その他の国プロ、具体的には超合金データシートや液水構造材料評価等のデータもここに出てくる。さらに、先日のナノ材委員会で御指摘をいただいたんですが、こういったプロジェクトに入っていなくても、日本国内で良質のマテリアルデータをつくっておられる研究者がおられれば、それらをこの中に集約していただくためのインセンティブ措置を行うなどして、この入れ物に魂を込めていきたいと考えております。
 さらに、NIMSの研究力を高めるためには、研究は人ですから、強力な人材戦略が必要です。優秀な研究者がNIMSを目指すような、そういった環境をつくることが重要です。NIMSの強みというのは、教育負担がなく研究に専念できる、共用先端実験設備が充実、基盤研究費が大学に比べると恵まれています。スタートアップ資金を出せますし、優秀な若手をグループリーダーに登用できます。優れたリーダーのグループは幾らでも大きくなれる。こういったメリットがある反面、弱みとしては、研究の原動力となる若手の大学院生がいないことです。この弱みを補完するために、国内外の大学との連携を強化し、連携大学院・クロアポをさらに充実させていく、それによって優秀な研究者の獲得に向けたリクルーティング、人材の流動性やダイバーシティーを高めるためのシステム改革も同時に行ってまいります。
 そのためには、先ほど申し上げたように、NIMSが魅力的に見えなきゃいけない。そういったことで、今、ブランド化戦略3本柱というのを打ち立てようとしています。御存じのように、NIMSの広報は、アウトリーチにおいて非常に高い評価をいただいています。この対象を、これまでの中高生・一般の方から研究人材向けの広報を展開し、組織としての研究力の高さ等をどんどん外側に発信していこうと考えております。
 さらに、マテリアル人材が世界から集まる拠点を形成するために、従来から行ってまいりましたNIMS連携大学院制度、これは筑波大学から始まったものですが、研究職が各大学の教員ポストをいただいて、博士課程学生を受け入れるシステムです。現在156名、これ全員をNIMSジュニア研究員として雇用しております。
 さらに、NIMS連携拠点推進制度においては、大学の教員と共同研究を行うために、学生・院生が長期滞在できるシステムです。特にこれから強化していくのがKOSEN枠、高専では派遣研究員という制度がありますが、教員に研究費を支給してここに滞在させて、同時に学生が行き来できるような仕組みをつくってまいりました。
 さらに、国際連携大学院制度、これはNIMS連携大学院の国際版でございますが、現在30の協定校、今後、全てのIIT、それからオーストラリアの有力大学と、次年度中にも3件程度の増加が見込まれています。
 さらに、若手国際研究センター(ICYS)フェローにおいては、NIMSのトップ1%論文の16%がICYSフェローの貢献ですが、これをさらに強化するため、世界標準の給与に改定してまいります。
 企業との連携は私どもにとって非常に重要で、既に企業との連携センターがございますが、次年度もグローバル企業との連携センターが立ち上がる予定でございます。マテリアルオープンプラットフォーム、これはある分野内の水平連携でございますが、NIMSを基礎研究所的に使っていただくということです。基礎研究は参画企業全てで共有し、応用研究の部分は個別の共同研究によって進める。それから、NIMSの研究職だけでは専門性が足りませんから、大学等の人材をクロアポさせて、ここをプラットフォームとして産業界との基盤研究を進めていこうという考えでございます。
 最後に、スタートアップ支援につきまして、これは非常に我が国としても重要な施策でございますが、NIMSの取組は、今、他の特定研発法人はスタートアップ支援のために法人化を行っておりますが、我々はあえてそれを行わず、研究職380名、毎年最大で起業希望者5名程度です。ですから、NIMSで独自に行っていくんじゃなくて、専門性の高いベンチャーキャピタル、ユニバーサル・マテリアルズ・インキュベーターや、アントレプレナーパートナー、さらに東大TLOと連携して、これでスタートアップを伴走支援していく。さらに、NIMS1号ベンチャーであるオキサイドの古川社長がアドバイザーとして、全てのスタートアップ企業のコンサルティングをやっていただいているところです。さらに、SIP、マテリアルスタートアップで研究推進法人としての役割もございます。これらを活用して、スタートアップの流れをつくっていきたいと考えております。
 最後に、NIMSの立ち位置を御紹介させていただきたいんですが、これは、横軸にトップ10%論文の割合、縦軸に研究者1人当たりのトップ10%論文の割合です。この値というのは、今、国際卓越大学院の選定の基準となるとされている数値でございます。NIMSは全ての領域において他の候補大学よりも高い統計値を示しておりまして、この観点で我が国においては健闘している研究所であると言えると思います。
 一方で世界ランキングに目を向けますと、これは私、あまり外には出してないんですが、今日お見せいたしますと、世界的には我が国の全ての研究機関が、その被引用文献数によるランキングですが、値を下げています。NIMSも例外ではございません。こういうことで、日本ランキング1位では世界からどんどん取り残されていく。ですから、特定研発法人として世界最高水準の研究開発成果創出を目指すということで、それが実現可能かどうかはともかく、精神としてはこのようなV字回復を目指していきたいと考えており、それを実現できるような運営を行っていきたいと考えております。
 以上です。
 
【浅見部会長】宝野理事長、どうもありがとうございました。そうしましたら、ただいま御説明いただいた運営構想について、委員の先生方から御意見、御質問などを受けたいと思いますので、質問のある方は挙手のボタンを押していただきたいと思います。お願いいたします。
 折茂先生から手が挙がっていますので、折茂先生どうぞ。
 
【折茂委員】折茂でございます。宝野理事長、御説明ありがとうございました。すばらしい研究計画、次期の目標かと思います。特に8ページ目のマテリアルデータの中核拠点、これに関しまして、国プロの研究者だけではなくて、個人研究も含めてデータを集める研究者の裾野を広げていくという御説明があったかと思います。これは非常にすばらしいなと思いました。そのときに、インセンティブという言葉をお使いになったと思いますが、どういったインセンティブをお考えなのかなと。
 
【宝野理事長】これはまだ検討中でございます。実は先日の第8回ナノテクノロジー・材料科学技術委員会で、委員の先生がそういう提案をされたんです。それで私、それはもっともだと思います。データを収集することがこの事業で最も重要ですから、それに対してインセンティブを与えることは必要だと思います。これから何ができるかということは検討させていただきたいと思います。
 
【折茂委員】ありがとうございます。その内容によって、どの程度裾野が広がってくるかということに効いてくるかなと思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。ありがとうございます。
 浅見先生、まずは私からは以上でございます。
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしたら、寒川先生から手が挙がっていますので、お願いします。
 
【寒川委員】NTT、寒川です。御説明ありがとうございます。先ほど量子ナノ材料を今後強化されていくということで、産業界の量子技術のコンソーシアムのQ-STARでも、今後、量子マテリアル、量子デバイスとかを強化しようという意気込みはあるんですけれども、どこから手をつけていいか非常に悩んでいるところですので、いろいろな成果を出していただければありがたいと思います。
 それで、4ページのプロジェクトの線表みたいなところで、量子マテリアルがすぐぷつっと切れてしまって、次が続いていなかったので、どういうたてつけなのか心配になったんですけれども、どうでしょうか。
 
【宝野理事長】これは、既にこのプロジェクトは3年実施しております。それで、今後継続していくかどうかというのは、例えばピアレビューを行いまして、レベルの高い研究が進んでいる。さらに、このプロジェクトを進めると集合体ができますね。そうすると、外部資金に積極的にチャレンジしていただきたいんです。これは全て運営費交付金で賄っていますから、こういう集団で外部資金が取れると、それで賄っていけるでしょうということで、この重点プロジェクトにおいてはここを解消するということです。ただし基盤研究プロジェクトにおいても量子材料のプロジェクトは継続されますので、この特出しの研究というのはどこかで終了するかもしれないという意味です。
 
【寒川委員】分かりました。どうもありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。今の御質問に関連して教えていただきたいと思います。4ページ、5ページ、6ページのところで、プロジェクトとか組織、それから大きい狙いというのを御説明いただきました。毎年ピアレビューなどを利用して見直していくというお話だったんですが、その見直しというのは、大きい研究運営の骨格といいますか、考え方、骨子みたいなものは多分そのままずっと維持されると思うんですが、見直して変えていくというのは、具体的にはどういう部分を変えていくと想定されているのかを教えていただきたいんですが。
【宝野理事長】分かりました。今、話題に上がっているのが、この2階部分のプロジェクトです。それで、1階部分の基盤研究というのは、これらのプロジェクト、12プロジェクト、7年間、コンスタントに基盤研究として継続してまいります。その中で、この2階の重点プロジェクトは、それに加えて選抜メンバーで行わせるものです。それである程度の競争環境を整えて、外部の有識者に評価させて、この中には個人研究とチーム型研究があるんですけれども、ピアレビューを行って、例えばこれまでの実績ですと、非常に評価の低いものはそこで中断となります。ただし中断すると、その分、新たな提案を募集します。そのようにして、やる気のある方々を新たに登用するような仕組みで自動的に動かしていきたいということです。これによって非常に高い緊張感を持たせてプロジェクトを推進することができると思っています。実際、これまで、センサ・アクチュエータプロジェクト、それから量子マテリアルプロジェクトも、そのようなピアレビューを通してやってまいりましたが、毎年アドバイザーの先生方のアドバイスを反映しながら質が上がっていっていると実感しているところです。
 
【浅見部会長】ありがとうございます。そうすると、少し大きい括りとしてのカーボンニュートラルとかバイオマテリアルとか、そういったものは継続していく中で、個人あるいはグループの個々のテーマ自身については、競争環境をつくって、そこで見直して、いいものはどんどん伸ばすとか新しいものを採用する一方で、行き詰まっていたり変えたほうがいいものについてはやめていくという、そういう形だということでよろしいでしょうか。
 
【宝野理事長】おっしゃるとおりです。それで、評価が高いものについては増額、低いものについては減額という、めりはりのある運用をやっています。
 
【浅見部会長】分かりました。ありがとうございます。それでは、平本先生からお願いします。
【平本委員】平本でございます。ありがとうございました。先ほど半導体の話が出ました。次世代半導体に関わる社会情勢の変化で、研究領域の位置づけを変えたとのことでした。その理由について、これまでNIMSがどのように半導体に関わってきたのかも含めて御説明をお願いできますか。
 
【宝野理事長】ここでは若干見えにくくなっているんですが、電子・光機能材料の中に半導体の研究者がおります。例えば次世代の半導体として候補になっている二次元材料とか、あるいはその他の半導体をやっている研究者がいます。それで、次世代半導体につきましては大きなナショプロが動き始めまして、NIMSはLSTC、それに参画することになってございますので、半導体分野というのは社会課題解決に近いということで、8月時点では基盤研究に入れていたものを、いや、むしろこちらであろうということで、今日、変更をお願いしているところです。
 それに加えて、電子・光機能材料の中には、NIMSの特許ライセンス収入の大きな額をもたらしている蛍光体の研究もございます。ですから、蛍光体なんてまさに社会問題解決のため、社会実装も近い材料ですから、こちらの位置づけのほうがいいだろうと。一方で高分子・バイオ材料は、実は先月、NIMS Awardの受賞者で、海外のバイオ分野の有識者を呼んだんですけれども、バイオというのはなかなか社会実装が難しい。難しいというか、時間がかかる。認証とかも要りますから時間がかかる。むしろ研究機構等ではしっかり基礎研究をやって、材料でバイオの世界を変えていくといった目標立てのほうがいいんじゃないかというアドバイスをいただいて、高分子・バイオのほうは、技術革新を生み出す基盤研究という位置づけに変更させていただきたいということでございます。
 
【平本委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしましたら、順番で河野委員からお願いしたいと思います。
 
【河野委員】日本製鉄の河野でございます。いつもお世話になっております。私も基盤プロジェクトについてお伺いしたいんですけれども、国研としてこういった材料基盤の研究をしっかり固めていただくというのは非常に重要だと思っております。その中で、今回、プロジェクトリーダーと分野長、あるいはグループを整合させるような組織を考えられているということですが、一方で、これはボトムアップ型の研究ということで、具体的に、例えばプロジェクトリーダーとしてのミッションをどのような方向性に整合させるのか、そういったところは何かボトムアップと整合しないかなとも思うんですけれども、その辺りはどのような取組をされるのか、お聞かせください。
 
【宝野理事長】本年度、今期中期計画の最終年度でございますから、次期中期計画に当たってグループリーダー公募を考えています。グループリーダー公募の中で、自分たちが高度材料分野に限らず、マテリアル全体の中でどういうことをやっていくかというのを、グループリーダー候補が自ら提案していくと。そういう観点でボトムアップの思想が生かされています。
 
【河野委員】分かりました。その方向性を決めるのは、何か例えば国の施策であるとか、あるいは民間でこのような新たな技術が出そうだとかという、そういうところをサーチしながら選択していくことになるんでしょうか。
 
【宝野理事長】国の研究機関でございますから、これを立てる前に第6期科学技術基本計画並びにマテリアル戦略というのを参照いたしまして、それと大きく逸脱しない範囲内でのプロジェクト提案を行っています。それで、そのプロジェクトを採択するに当たって、外部の有識者の先生方に説明をしてアドバイスをいただきながら、このような最終的な形に持ってまいりました。
 
【河野委員】分かりました。ありがとうございました。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしましたら、知野委員お願いします。
 
【知野委員】ありがとうございます。2点ございます。1つは9ページの人材のところですけれども、流動性とかダイバーシティーを高めるためにシステム改革というのを挙げられていますけれども、これは具体的にはどういう内容を考えておいででしょうか。
 
【宝野理事長】流動性に関しましては、今年も具体例があったんですが、NIMSの場合、大学で既に教員をやっている方を、途中から経験者採用するケースが多いんです。かなり実績のある先生が、NIMSで研究に専念したいということで御応募いただいたんですが、給与を確定するときに、トータルで退職金あるいは年金で大きな損になる。そういうことでまとまらなかったというか、そういうことで、それはNIMSに限らず全ての研究機関において同じ問題を抱えているはずですから、我々のところで、キャリア途中で異動してもトータルでは損にならないようなシステムを構築していきたいと考えています。
 もう1つの例は、外国人研究者、世界トップレベル公募で、アメリカのさる大学の教員を、NIMSに世界トップレベル研究者として雇用しようとしていたんですが、その交渉過程で退職金問題が大きく出てまいりまして、ここはシステム改革が必要だなと感じました。
 それから、ダイバーシティーに関しましては、定年制職員の求人においても女性枠というのを設けているんですが、それだけでは十分じゃない。それは実績を見ていただければお分かりになると思うんですが、もっと積極的に取りに行くことをせざるを得ないなと感じているところです。
 
【知野委員】分かりました。それともう1点ですけれども、ブランド化戦略、とても大事なことだと思うんですけれども、その中で、「丸1 一般向け公募・アウトリーチ(既に高評価)」、まさにそのとおりだと思うんですが、その後は研究人材向け広報と、よりレベルがアップしていくような気がするんです。NIMSの場合には、一般の人にももうちょっと存在感・知名度があってもいいかなと感じておりますので、もう少しいろいろな幅広い人に興味を持ってもらうために、何か広報をもう一工夫しようとか、そういうことは考えておいででしょうか。
 
【宝野理事長】現在、人材室、それから広報室と連携して、NIMS全体でどのようにブランド化して、広報を含めて、アウトリーチのみならず、研究人材向け広報を強化するかということで委員会をつくって、これまでアウトリーチ分野で活躍してきた小林マイスターが、人材確保の分野でも案をつくっていくということで作業に入ったところでございます。
 それから、もっと市民に名前が知られるようにということはおっしゃるとおりでございますが、かなり力を入れてきている中で、それよりも一歩先にどうやって進んでいくかということは一つの課題だと感じております。
 
【知野委員】分かりました。裾野を広げることも、いつも心におとめいただければと思います。ありがとうございます。
 
【宝野理事長】どうもありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。今の質問の前段のところでもう少し質問させてください。ダイバーシティーということでいろいろな側面があるんですけれども、日本の中で注目されている点として、女性研究者比率とか女性職員の比率とか、そういったものがかなり強調されているんですが、女性の研究者の比率を上げていくことについては、これまでもNIMSはかなりいろいろな施策でやられてきたとは思います。理事長の立場から見られて、女性の比率が上がらないことの原因、要因として、NIMSの組織の設計というか、そういう側面もあるでしょうし、NIMSから見たときの外部の、こういうことがあったのではNIMSでいくら頑張ってもなかなか難しいという側面もあるでしょうけれども、そういうもので何か一つ二つ、理事長のお立場から、重要なのはこういうことじゃないかというのがあったら、少しお聞かせいただきたいんですが。
 
【宝野理事長】NIMSだけで頑張ってもどうにもならないというのは、NIMSは材料の研究所でございまして、材料分野においては大学院博士課程における女性比率が圧倒的に少ないというのが大きな理由です。
 それからもう一つの理由が、大学に取り負けていることです。御存じのように、東京大学はこれから300人女性教員を雇用する、東北大学においても、女性教員を採用するときに、その配偶者においてもポストをつくるとか、非常にアグレッシブな戦略を行っております。人の取り合いになったとき、どうしてもNIMSは取り負けるところがございまして、それで、育休・産休とかのシステム、それから人のメンタリティー、それを許容するメンタリティーはかなり進んでいるんですけれども、取り負けているところが一番大きいような気がいたします。
 あと、場所的な問題もございます。つくばということで、例えば相方が東京近辺に勤めているとなると、つくばは非常に不利益になる。そういったことで、例えばつくばというのは「住みたいまちランキング」で、驚いたことに関東圏で30位に入っているんです。29位です。ですから、そういったことをアピールして、教育環境も非常にいいですから。
 あともう一つは、保育園とかそういったものの設備。ただ、NIMSだけでは希望が大きくないですから、そこができるかどうかというのは分からないんですけれども、一言で申し上げると、取り負けているということに尽きると思います。それで、これから10兆円ファンドなんかでついて、大学で特任教員の定員が大きく増えていく中、NIMSがどうやって人材確保で戦い続けていくかというのは非常に大きな問題です。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。今の状況というのは大体よく分かりました。そこはいろいろと工夫は続けていただくにして、材料研究で母集団として女性が少ないということについては、バイオ系については女性比率がかなり高いと思いますので、そういう分野の拡充とかも含めて、ぜひ継続していろいろな施策をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それから、ほかに御意見ありますか。なければ私のほうから、あと1点だけ教えてください。13ページですが、これは今度の中長期の目標とか計画においては非常に重要な観点だと思います。今、国を挙げてといいますか、政府からはじまって企業、アカデミアまで科学技術の分野におけるイノベーションの世界ランキングで日本が非常に低下を続けている状態をとにかく何とかしようという危機感が高まっているわけですが、しかしながら実態として大企業に頼っていてもなかなか進まない。こうした点について、スタートアップで打開できないかということが出てきていると思います。今まで理事長も随分長いこと御経験がおありだと思うんですが、イノベーションの社会実装を目指していくときに、こういう起業前・起業後という幾つかのステップがある中で、難しい点というのはここがポイントであるとか、あるいはNIMSとしてはこういうところに重点を置いてやっていきたいという計画をお持ちだと思うんですけれども、もし強調されるとしたら、NIMSとしてどの辺についてスタートアップ支援ということを考えておられるのかを教えていただけますでしょうか。
 
【宝野理事長】日本でというか、NIMSも含めて、スタートアップを希望する人たちが比較的少ない。スタートアップを自らやりたいと思わない人にさせるわけにはいきませんから、まず本人の意思が重要です。その大きな理由の一つは、隣に成功した人がいないことだと思うんです。それで今、オキサイドの古川社長に毎年来ていただいて、それからスタートアップの審査のときも必ず出席していただいて、それから、始まってからも御指導いただいているんですが、横に成功した人がいるのは非常に大きな影響力を与えます。それで、最近のスタートアップの中でも非常にいい流れにいっているところもございますから、その辺をしっかりサポートして、成功したスタートアップが出たら、その体験を広く研究者に伝えることによって、次にまた目指したいという人材が増えてくると思います。
 それで、これは若干他力本願的な考え方ではございますが、SIPでマテリアルスタートアップのプロジェクトが、今はフィージビリティースタディーの段階ですが、UMIの木場社長が、木場道場といって、我が国のスタートアップを志す若手を集めて、そういった教育を行っておられます。そのホストをNIMSが務めますから、その機会も活用して、NIMSの研究者に、そういったスタートアップで成功すると、どういった世界もあるということを身近に感じさせる、これが最も近道じゃないかなという気が今いたしております。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。スタートする、起業をしようというマインドをどう醸成するかで、NIMSはそういう意味でも中核拠点のようになっていくことがいいのかなというお話、非常に印象深く伺いました。
 ほかの委員の先生方で、特に御質問、御意見ありますか。
そうしましたら、議題1のところ、NIMSからのお話はここでおしまいにしたいと思います。非常に具体的なレベルでの御説明をいただきまして、ありがとうございました。これを基に、いろいろ部会でも検討させていただきたいと思います。本当に宝野理事長、ありがとうございました。
 
【宝野理事長】どうもありがとうございました。
 
【浅見部会長】そうしましたら、事務局でNIMSの方々の退室をお願いしたいと思います。
 
【長田参事官補佐】少々お待ちください。
 
(機構関係者退室)
 
【長田参事官補佐】完了しました。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。では、ただいまの宝野理事長の御発表を踏まえまして、中長期目標の変更案の審議に入りたいと思います。事務局から最初に案の御説明をいただきたいと思いますので、お願いします。
 
【長田参事官補佐】それでは、資料の2から4に基づいて御説明をいたします。2が中目案の本体でございますが、まず、全体の構成ということで、今、画面に映っております資料3で簡単に構成を説明してから、本文の要点と考えているところをかいつまんで御説明します。
 まず、Ⅲが、研究開発の成果の最大化、また質の向上に関する事項ということで、一番肝になる部分でございますけれども、ここの構成としましては、左側の第4期は、1、2、3とある中で、1が研究、先ほどもいろいろと7つの領域みたいな議論がありましたが、そこに該当するようなところ、2が研究成果の情報発信、活用促進とした後に、3として、中核的機関としての活動として幅広い取組が、この3の中に入っています。これは背景としては、特定研発法人にNIMSが指定されたと。そして、特定法人は日本全体の中核的機関になるんだと。イノベーションを牽引する中核的機関になると。そういったことが決まるそこのタイミングで、この中長期目標が設定されましたので、その辺りを非常に意識した形の構成になっておりました。
 第5期に関しまして、今、案として提示しているものでは、まず、先ほど申し上げた中核的機関というところは、この7年間でNIMSもM-cubeに代表されるような様々な取組をされてこられて、かなり法人としての特定研発としての認知度は上がっているのかなと思っております。また、当然、昔の1の研究開発のところのトップの成果を出してこそ中核的機関になり得るとか、そういった議論もありますので、今回、第5期の中目案では、あえて一部のところを中核的機関としての活動として括るのではなくて、活動全体を通じて中核的機関としての役割を引き続き果たしてほしいということで、個別の取組ごとに応じて項目立てをしております。
 その中で、一番上の1のところは、先ほど宝野理事長からも御説明ございましたけれども、1.1社会課題の解決に貢献するための研究開発というところと、1.2技術革新を生み出すための研究開発、こういったものの2つに分けて考えてはどうかと考えております。
 また、2のところで、研究基盤の関係ですけれども、これまでですと、左側の3.1のところ、施設・設備並びにデータ基盤の共用ということで、施設・設備の共用とデータ関係が一つになっておったんですけれども、国のマテリアル革新力強化戦略等でも、データ駆動型研究を進めるためのDXプラットフォームの構築が国の政策の大きな主軸になってきていますので、ここを2の中の一番初めに特出しをしまして、その上で共用等を書いております。また、研究基盤ということで、人材関係のところをこちらに移しています。
 また、3と4に関しましては、多様な形態の連携構築、研究成果の社会還元、また研究成果等の発信力強化等ということで、それぞれの性質に応じまして組み替えた形で文書をつくっております。
 また、その下のⅣの、業務運営の改善及び効率化に関する事項に関しましても、例えば(1)の内部統制の中から情報関係のものを抜き出すといった取組をしながら構成を一部変えておりますが、基本的に大きな内容の増減があるというよりは、一度体系的に整理をしたと、そういう形の構成にしております。
 では、その上で、本文に入らせていただきます。資料2を御覧ください。まず、2ページ目、Ⅰのところ、これは最初に法人の位置づけ及び役割というところです。幾つかキーワード的なところだけ簡単に申し上げますと、まず、50行目、51行目、機構は我が国唯一の物質・材料科学技術に関する中核的機関としての役割を果たす国立研究開発法人であることを書いていますし、55行目からは、ウエルビーイングを実現できる社会、この辺り、国の政策にものっとった形ですけれども、そういった社会の実現に向け、総合知を積極的に活用しながら、新たな価値創出や社会・経済的な課題解決への取組において重要な役割を果たすべきだということを書いています。
 また、58行目の後ろのほうからは、マテリアル革新力強化戦略という国の戦略のところに言及していまして、60行目、先ほど御説明したように、データ駆動型研究開発の促進、そういった観点からデータ基盤共用等を進めていくべきということを位置づけております。
 65行目の最後の、我が国のイノベーションシステムを強力に牽引する中核機関となることが求められているということは、これは特定国研としての役割でございます。
 その観点から、69行目の最後のほうからですけれども、機構自らの研究開発成果の最大化を図るだけではなくて、大学や産業界等と積極的な連携等を通じまして、社会に貢献する技術シーズを絶え間なく創出したり、産業界に橋渡しすると。この辺りも特定国研としての位置づけを書いておるものでございます。
 Ⅰのところ、ほかにもいろいろと書かせていただいておりますが、国の政策で重要な位置づけとしては、今言ったようなところがメインかなと考えております。
 Ⅱ、中長期目標の期間は、今期と同じく7年とさせていただきたいと思っております。
 Ⅲが、先ほど申し上げました一番肝になるところでございます。Ⅲの100行目から書いてあるところは、基本的に以降を説明するところの概略みたいなものを書いてあるところですけれども、103から104行目の世界最高水準の研究開発成果を創出していくのは、研究開発をする法人としての一番まず最初にやるべきことということで書いていますし、106行目から107行目にかけましては、研究活動のデジタルトランスフォーメーション、研究DXをさらに進める。これはさっきのデータ駆動型研究も含みますが、こういったミッション、これは前の中目には書かれておりませんでしたけれども、こういったことを書かせていただいたり、107行目の最後のほうからは、研究開発の過程で創出される良質なマテリアルデータを収集・蓄積・利活用するためのデータ中核拠点の構築に取り組むことを書いております。
 また、111行目からは、前期より実施しているM-cube、これに関しては高い評価を得ていると認識しておりますので、こういったものを基軸としながら、引き続き様々な取組を積極的に進めていただきたいということを書いております。
 115行目の右側、「さらに、」のところは、これは特定研発法人として法律に基づきまして、文科大臣から仮に措置要求があった場合は要求に応じるということが法律上ありますので、このことを簡単に記載しています。
 次に、121行目の後半からですが、実は前回の見込み評価のときも、この部会でも意見を出していただいた今後の指摘事項といったところを踏まえたものですが、マテリアル分野の研究開発は我が国の産業力強化に大きく影響を及ぼすという観点から、123行目の右側、国際交流を含めた研究交流の促進による研究力・イノベーション力の強化を進めると。そういったことと、あと一方で、経済安全保障、そういった観点を確保する、このことを両立することが重要であるということで、ここを全体の前書きのところに書かせていただいております。
 関連するところで、データの共用のところはこういったところが一番関わってくるかと思いますので、そこにも類似の趣旨を書いていますので、後ほど説明いたします。
 1ポツ、こちらは基礎研究及び基盤的研究開発ですけれども、ここに関しましては、先ほど宝野理事長から御説明もあったとおり、130行目の右側、社会実装につなげるための研究開発、こういったものをやる必要があるし、132行目の最後の、未来社会の仕組みを大きく変革する可能性を秘めた革新技術を生み出すための研究開発、この両面からやっていく必要があるだろうということで、1.1、1.2という形で、2つの領域に分けて研究領域を設置するものとしております。
 140行目から、各研究領域では別紙に記載の目標の達成ということで、別紙は後ほど説明しますが、さっきの理事長からもプレゼンのあった7つの領域のことを指しております。こういった領域の目標の達成に向けまして、中長期計画において具体的に実施するような主要な研究と達成すべき技術目標を定めて、戦略的かつ計画的に研究開発を実施してくださいということを書いていますし、右側、これも理事長から説明がありましたが、将来の芽を創出するためのシーズ育成研究、こういったことの観点も視野に入れてやってほしいということを書いています。
 次に、5ページ目の上の3行ですが、これはさっき理事長も2階建ての研究を考えているとお話をされておりました。これは7つの今後7年間継続的にやる拠点の上に、重点的に機動的にやるべき課題があった場合に、選抜したチームをつくってやっていただくというところに関しまして、重点的かつ領域横断的に実施すべき研究開発については、上記の研究領域にとらわれない体制を柔軟に構築し、適切な実施期間・評価体系を設定した上で機動的に取り組むことと書いています。
 ここはこれ以上、目標の段階では、何の研究をするとかは書いていません。それは当然ですが、情勢に応じて、さっきの量子マテリアル等々とか出てくるものですので、例えば年度計画とか、そういったところとかに反映はいただいて、毎年度の評価ではしっかり評価いただきたいと思いますけれども、目標としてはこういった書きぶりにとどめております。
 下の1.1、1.2は、先ほど申し上げた7つ領域の重要性と、それらの研究領域に焦点を当てるべしということを補足的に解説しているものですので、ここは飛ばします。
 次に、6ページ目、ここが2ポツというところで、研究基盤の構築で、特に2.1、マテリアルDXプラットフォーム構築のためのデータ中核拠点の形成、これは一つ新しい今期の取組として強化を求めたいということで、多めに書いております。
 190行目の右側から、我が国全体として、データを収集・蓄積して、国内の産学の研究者が利活用するための基盤としてマテリアルDXプラットフォームの構築、これが国の政策全体として進められておりますが、機構においては、この中核を担うデータ中核拠点を構築していただいて、基盤整備等を進めていただくと。
 具体的には、195行目からの、まず、データの収集・蓄積に関しましては、世界最大級の材料データベースMatNavi、これのさらなる強化を図ってもらうということでございますし、先端研究を支える装置群から創出されるデータを蓄積するための基盤を構築すると。
 また、さっき理事長のプレゼンにもありました運営費交付金事業ではございませんけれども、さっき国の政策全体でやっていると申しましたが、文部科学省からの直接の事業として、197行目に書いてあるマテリアル先端リサーチインフラ、こういった予算事業がございまして、この仕組みの中で、機構は中核的なセンターハブとしての役割をお願いしております。
 この事業から発生する、要は全国の共用設備から出てきたデータ、こういったものをNIMSに一元的に収集・蓄積していただくということで、直接的には委託費での取組になりますが、重要な観点なので、こういった役割をしっかり果たしてくださいということを書いていますし、また、200行目の「また、同省」、文科省ですね、データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト、これはデータ駆動型の研究開発手法を開発していくというプロジェクトですけれども、これでも、例えばデータをどう取り扱うとか、データ駆動型手法をどのように展開していくか、こういったところを関係拠点等で議論するデータ連携部会というところの中核機関を、これもまたNIMSにお願いしておりますので、こういった役割もしっかり果たしてくださいと。そういった国の政策、事業、そういった関連するものに関しても関連して記載しております。
 また、206行目からですけれども、これが先ほど申し上げた経済安全保障等々の観点のところですが、我が国の国際競争力の強化の観点から、データをどこに共用して利活用を推進するかという範囲に関しましては、データの特性に応じて許容範囲を適切に定めていただきたいと。必ずしも全世界フルオープンというデータではないものもありますということだと思いますので、そういったところをしっかり留意してやっていただきたいことを記載しております。
 2.2は、施設及び設備の共用です。211行目にありますけれども、装置のリモート化、こういったことも重要な観点だと持っております。
 次の7ページ目の2.3につきましては、人材が集う国際的な拠点の形成、これは先ほどのプレゼンにもありましたし、前期から取り組まれています219行目の後ろのほうにありますマテリアルズ・グローバルセンター、こういった構築を進めてこられていますので、こういったものを引き続き強化して、223行目のところですけれども、大学・企業との人材交流や国際的な頭脳循環を活用しながら、性別・国籍などそれぞれの属性に応じて適切・有効な施策も実施して、人材育成の中核的な役割を果たしていただきたいということでございます。
 次に、3ポツのところが産業界との連携等でございます。まず、3.1のところですけれども、産業界との連携構築では、これもまた前期からやっておられています業界別水平連携のMOPの形成、また企業との2者間の連携を深化させる連携センター、こういった仕組みを通じてしっかりとやっていっていただきたいということを書いています。
 3.2の研究成果の社会還元、ここに関しましては、技術移転という観点とともに、246行目、外部専門機関等との連携をとりながら、スタートアップ段階の企業の支援を一層促進することを書かせていただいています。
 247行目の最後のほうからは、知財の関係は、知財を投資するとともに、国内外における権利化を戦略的に行っていただきたいと書いています。
 また、研究成果の中には、例えば事故調査への協力といった観点もありますので、250行目、251行目は、そういった高い専門性を駆使して、必ずしも産業的な成果展開というよりは、安全性・信頼性とか、そういった観点からの社会還元、そういった取組もやっていただきたいということを書いています。
 次、8ページ目のところが、発信力強化、プレゼンス向上、アウトリーチ等でございますが、4.1は学術面における研究成果等の情報発信、また、それによるプレゼンスの向上ということで、これはどちらかというと前回の中目にも沿うような形で記載しております。
 4.2の広報・アウトリーチ活動の推進に関しましては、先ほども議論ありました。266、267行目は、国民目線で分かりやすく紹介する取組を引き続きしっかり戦略的にやっていただきたいと。また、268から269行目ですけれども、国民各層の関心やリテラシーの向上に向けた取組も積極的に実施していただきたいことを書いています。
 270行目以降は、先ほど理事長からも新たなブランドの戦略を考えているというお話がありましたけれども、しっかり国内外の研究機関や大学、関係する産業界等へ発信しまして、国際的に活躍できる研究機関としての知名度・ブランド力を上げていただきたいことや、274行目、新たな視点での公募体制の充実や対外発信力の強化を図っていただきたいということを記載しております。
 次に、Ⅳ以降が、ここは業務運営の改善及び効率化に関する事項でございます。この中で重要なのは、9ページ目の1.1のところです。適切かつ効果的なマネジメント体制を確立するということで、この1.1は柔軟な業務を実現するための組織体制の整備等について記載しています。
 291行目からは、理事長のリーダーシップが存分に発揮されるよう、また最適な経営判断が得られるように、多角的な視点から業務運営を支える体制を構築していただきたいと。また、適切な責任・権限の分担を行って、効果的かつ効率的なマネジメント体制の強化につながる組織編成を行っていただきたいと書いています。
 研究運営に関しての留意点としては、295行目のところに書いています。ここも適切な研究環境の構築などといったところを整備していただきたいと書いていますし、299行目のところ、政府戦略や国際情勢、社会的ニーズ、研究の動向、こういったところをNIMSとして掘り下げて調査し、国内外におけるマテリアル研究開発を取り巻く動向をしっかりと把握していただきたいですし、また、機構の強みや弱み、国際的な位置づけ等の分析を行っていただいて、機構の研究戦略の企画・立案等にぜひ活用いただきたいと、そういったことを書いております。
 1.2のところは内部統制の適切な確保ということで、こちらは効果的・効率的な内部統制環境を実現していただきたいと書いております。例えば317行目、「特に、」というところですけれども、研究活動等における不正行為、研究費の不正使用、こういった防止等々につきましてもしっかりとチェック体制を強化してほしいということですし、319行目、安全保障貿易管理につきましても、法令や国の方針等を踏まえて、リスク低減に向けた適切な措置を行っていただくということを書いております。
 1.3は、そういった観点のところでもあるんですが、情報セキュリティーの関係です。国の様々な統一基準群といったものも出ていますので、こういったものを踏まえて、適切なセキュリティーに関する対応能力の維持向上に努めていただくと。一方で、329行目ですが、NIMSの中では、情報セキュリティーと、あと一方でNIMS自体の情報化、これを一体的に推進するための組織体制の整備を進めていますので、こういったところも一体的にやってくださいということを書いています。
 335行目から337行目は、機構として研究データポリシーというのを定めていますが、こうデータポリシーに基づいて適切に研究データの管理等を行うべきということで、これは他の法人も共通で、中目を改定するときにはしっかりと書くべしということで、このような観点も記載しています。
 1.4は、機構の業務運営等に係る第三者評価・助言をしっかりと聞いてくださいということですし、1.5は、職員の業務実績評価を効果的にやってくださいと。研究職、エンジニア職、事務職、それぞれの職務の特性に配慮してやっていただきたいということを書いています。
 2ポツが業務全体の改善及び効率化、2.1、経費の合理化・効率化に関しましては、これは今期の中長期目標と同等の書き方をしています。
 11ページの上から2行目、360行目の効率化係数のところは、これは事務的に政府部内で体制等とも調整をさせていただきますので、今の時点ではマルと書かせていただいています。
 2.2、人件費の適正化、2.3、契約の適正化、2.4、その他の業務運営面での対応等は、これらの観点で必要な取組を記載しています。
 Ⅴの、財務内容の改善に関するところですけれども、ここも自己収入の増加等に努めることを含め、必要な記載をさせていただいています。
 12ページに関しましては、その他業務運営に関する事項ということで、その中の2、人事に関する事項というのが最後にございますけれども、409行目から410行目、若手・女性研究者の活躍及び国際的に卓越した研究者の積極的採用・確保・育成等を進めていただきたいと。また、それらを進めるとともに、研究成果の最大化を図るために必要な研究支援者や技術者を確保し、これらの人材の処遇改善に努めていただきたいといった趣旨を記載しております。
 13ページは別紙で、先ほどあった7つの領域を13ページから14ページまで、目標の段階ではそれぞれ3行程度の大まかな書き方にしておりますけれども、先ほども本文で書いておりましたように、NIMSで定める中長期計画におきまして、主要なプロジェクトのより詳細、また計画についてはしっかりと記載いただきまして、それに基づいて毎年度評価をしていければと考えております。
 次のページの政策体系図というのは、先ほど申し上げたものを簡単なポンチ絵にまとめたもので、飛ばしますが、次のページからは評価軸になります。今期のところにもございますけれども、評価する項目ごとに、真ん中にありますけれども、評価軸として、例えば一番上のところであれば、研究開発を戦略的に推進できているかとか、あと2つ目のポツでありますけれども、社会課題の解決につながる有効性・実用性のある成果が得られているか等々の観点から評価軸をまとめております。
 また、右側は、その指標として評価指標と、あとは参考として、データとしてモニタリング指標ということで、産業界や学術機関との連携状況等を、一番上のものでは挙げたりということでしております。
 先ほど1.1と1.2というところを分けて、社会課題の解決に貢献するための研究開発、技術革新を生み出すための研究開発というところで2つに分けたいというお話がありました。ですので、評価軸に関しましても、ここは分ける形で記載しております。これらの領域、必ずしも、例えば下の技術革新を生み出すための研究開発から社会課題の解決に貢献する成果が出ないかということでは全くないわけでございまして、いずれの研究開発に関しましても共通的な評価指標だと思いますが、多くあると思います。
 一方で、上の社会課題解決のところですと、評価指標と一番右にありますけれども、こういったところで、より上から4つ目の社会課題の解決につなげるための有効性・実効性のある研究開発の進捗状況と書いてあるところもありますけれども、そういった観点をより主軸に評価をいただくのが適切なのかなと思いますし、下の技術革新を生み出すための研究開発であれば、評価指標の3つ目、将来の技術革新につなげるための新規性・持続性のある研究開発の進捗状況、こういった観点をどちらかというと軸に評価をいただくのが適切かと考えております。その他評価軸については、我々として考えられる軸、また評価指標をまとめておりますので、御参照いただければと思っております。
 最後に資料4について御説明させていただきますが、先般、前期のNIMSの中長期目標期間の評価ということで、見込み評価をしていただきました。これを受けまして、総合科学技術イノベーション会議にそれを送りまして、CSTIから、この評価自体は非常に適切であったということと、あとは、次期中長期目標を定めるに当たっては、こういう観点で検討してほしいという意見をいただいております。それが次の別紙というところで、上の隅括弧の「数値に対する意見」というところは、皆様中心に評価いただいた評価に関しては妥当であるということです。下の「次期中長期目標の検討に向けた意見」というところ、ここは幾つか論点を提示していただいています。
 主要なところですと、丸1 の4行目から5行目、今後はオープンサイエンスと経済安全保障等の研究インテグリティーのバランスに留意しつつ、引き続き加速化、これマテリアルデータの収集とかそういったところに関してですけれども、引き続き加速化を図ることという指摘です。丸2 は、今まで物質・材料研究機構が取り組まれてきたMOP、ICYS、こういった優れた取組は引き続き着実に実施していただきたいということ。丸3 に関しましては、3行目から4行目、材料分野でのスタートアップ・エコシステムの形成と発展に資する取組を推進してほしいこと。丸4 に関しましては、1行目、2行目、若手研究者、女性研究者など、多様な人材が国際的に活躍の場を拡大させていくことができるよう、これまで以上に後押しをしてほしい。また、丸4 の下から3行目辺り、専門職人材の処遇改善に基づくキャリアパスの定着にも努めるべき。このような指摘をいただいておりまして、これらの指摘に関しては、先ほど説明した要点の中にそれぞれ対応するような形で文言を入れさせていただいて、先ほど説明をしたということになります。
 以上になりましたが、事務局からの説明は以上です。本日と、あともう一度12月にも本部会は設定いただくよう考えておりますので、別に今日が決め切り場ではございませんのでぜひ、ぜひ皆様から様々な御意見等を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。ただいまの御説明の最後に事務局からおっしゃっていただいたように、今日は何かをまとめるというよりは、重要な観点についていろいろな意見をそれぞれの委員の先生方から出して、それに触発されてさらに深い議論を行って、次回の、12月15日になりますか、部会につなげるという位置づけでございますので、ぜひ自由な議論をお願いしたいと思います。御意見それから御質問があれば、それについて挙手をいただいて議論したいと思います。委員の先生方からぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 寒川委員お願いします。
 
【寒川委員】NTT、寒川です。御説明ありがとうございます。前のときは知財戦略といった項目が知財何たらとちゃんと立っていたと思うんですけれども、今回は社会還元の中に、3.2ですか、文章としては書いているけれども、知財戦略というのは特にうたっていないので、今までよりも知財を積極的に取るとかいう、そういうトーンを薄めたんですか。最初にまず知財を取って、その後、ノウハウを含めて技術移転を行うとか、スタートアップにするとか、そういう順番かと思うんだけれども、一番最後に知財も取りますと書いているので、そこの考え方がどうなのか気になったんですけれども。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。事務局としましては、知財、また、先ほどお話もありましたスタートアップ支援、こういったものも一体的に、知財だけで項目を立てるというよりも、社会還元という大きなくくりの中で全体を書かせていただくのが適切かということで書きました。そういった意味で、スタートアップとかを書いていますけれども、おっしゃったように、知財に関しての記載の部分の具体性というのは、若干前期の中目よりも、量とか項目立てという意味では少なくなっておりますけれども、当然、どの範囲というのはありますけれども、必要な知財の権利化を戦略的にやっていただくという趣旨の重要性自体に関しては引き続き重要なものと考えておりますが、そういった観点で、一つの項目に今回はまとめて書いているということでございます。
 
【寒川委員】特に材料は特許取っておかないと、いくらでもまねされてしまうので、それは気になるところだと思います。
 あともう1点教えてください。経済安全保障の関係で、データの管理とか共有について綿密にするようなことを書かれていたんですけれども、アカデミアで非常に悩ましいのは、中国人の研究者が結構いたりとかするかと思うんですけれども、そこは最近、文科省として何か方針があるのかどうか、どういう状況でしょうか。あまり露骨には書けないと思うんですけれども。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。そこに関しましては、外為法等の関連する国の法律・制度といったものが随時変わっているところでございまして、例えば安全保障貿易管理の関係で、どういった情報を人に渡すかというときに、その情報を受け取る方に第三者の国から例えば巨額なお金が入っていて、その方がコントロールされている状況にないかとか、そういったところを確認するとか、様々な仕組み上の強化が今、要請されているところでございます。これに関しましては、データに限らず、内部統制のところで安全保障貿易管理ということを書いておりますけれども、文言としてはこの程度ですけれども、ここに書いてある、社会情勢を注視しつつ法令や国の方針等を踏まえてしっかりやってくださいというのは、そういった状況に合わせて適切な体制また仕組みを内部で講じて対応していただきたいと、そういう趣旨で書いております。
 
【寒川委員】分かりました。どうもありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。ただいまの前半の質問、知財の点については、これはここであまり詳細にいろいろと具体的なこととはなかなかならないと思うんですが、一つは、今御指摘いただいたようなマテリアルとしての知財の重要性ということで言えば、基礎基盤研究で基本特許を取っていくという位置づけの部分と、それから例えばMOPとかを通じて企業との連携の中で実用化を見据えてどうしていくかという部分は、できるだけ整理して実際にNIMSには進めていただいたほうがいいと考えます。
 日本企業の知財の問題点についてはいろいろ指摘があります。例えばマテリアル、特にケミストリーの分野だと、様々な企業が持ち合いで細々とした特許を持っていて、何をやろうとしても、多くの日本企業の知財が関連してしまって身動きがとれないことが問題で、数年から10年ぐらい前にはかなり指摘されていました。今回、イノベーションエコシステムということを考えたときに、そういう複数の企業も参加して、NIMSという場を使って、NIMSの基盤研究の成果をどう活用していくかということを考えるべきではないでしょうか。知財をどういう形で活用して社会実装に持っていくのかということですが、これは日本としてどこかの企業が持っていればいいのかとか、あるいはとんがったスタートアップがしっかり権利を確保して、それを軸にして日本が主導権をとっていけばいいのかとか、結構いろいろな議論があると思います。今の世界での流れとしては、これまでのとにかく知財を取って排他的に独占していくという一辺倒のやり方から、重要な知財を軸にして、いかにクラブメンバーというのか、一つの大きい流れをつくっていくメンバーを集めて、そこで国としていかに産業振興につなげるかといったところを考えていかなきゃいけないようになってきています。これはNIMSに限る話ではないので、中長期目標の書き方がどうこうということではないんですけれども、その背景というのか、土台としてはそういうことがあることについては、ぜひ留意して考えていきたいと考えます。実際に評価の部分でも、単に件数がどうこうというよりは、そういう知財の使われ方とか、産官学連携の駆動力になっているかとか、そういったようなことも重要になるのかなと思いました。感想めいていてまとまらないですが、そんなことを考えました。
 それでは、先ほどから手が挙がっている篠藤委員お願いします。
 
【篠藤委員】ありがとうございます。私も知財に対しての書きぶりとしては、前回よりも少し薄いような感じがしました。あと2つほどお聞きしたいんですけれども、内部統制に関しての項目が、前回は充実強化でしたけれども、今回は適切な確保と変わっています。これは何となく感じるものが違うんですけれども、適切な確保とされた背景というのは何かございますかというのが一つ。
 それから経費のところで、今回も、まだ数字は入っておりませんけれども、効率化を数字で何%以上効率化を図ると書くということですけれども、もう既に何%も毎年下げてきていますので、これをまた次、パーセントとして縛ることは難しくなっていくのではないのかなと思うんですが、いかがでしょうか。
 
【長田参事官補佐】内部統制の適切な確保というところは、確かに受け取り側の印象というところはあろうかと思います。他法人とか様々な例を見ながらこのような書きぶりをしたということですけれども、ここを充実強化と書いた法人があっても全然いいですし、それはNIMSも前はそう書いていたということもありますので、もしそういったニュアンスをより出したほうが適切という御意見であれば、考えたいと思いました。それが1点目でございます。
 2点目の効率化係数のところは、おっしゃるとおり、様々な効率化を毎年度図りながら、一方で様々な社会情勢の変化で新しい研究予算も要るというところで、せめぎあいを財政当局等としながら予算を最終的に決めているところでございます。ここの効率化のところの数値目標を書かずにいれるかどうかというと、なかなか、御存じのとおり、ほかの法人でそういった法人もございませんので、政府全体の中で様々な議論をした上で、ここは決めていかないといけないんですけれども、先生のおっしゃった御趣旨は、非常におっしゃることはよく我々としても考えているところですし、一方でそういった、先ほど申し上げた新しい必要性とかそういったところも話しながら、全体の予算の確保に努めていきたいという考えであります。答えになってないかもしれませんけれども、以上です。
 
【篠藤委員】他法人との関係もありますし、NIMSだけが書かないというのもできないということであれば仕方がないのかもしれませんが、だんだん何となく組織が縮小していってしまうような印象を受けてしまうので、お話しさせていただきました。
 あと内部統制につきましては、適切な確保と充実強化では、取る側の印象としては、充実強化というと、より今よりも強固な組織にしていってというイメージがありますが、適切な確保だと、もうできているものを粛々と運営していくような感じがしてしまうので、ニュアンスが違うような気がいたしました。以上です。ありがとうございます。
 
【長田参事官補佐】検討させていただきます。ありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしましたら、知野委員お願いします。
 
【知野委員】ありがとうございます。12ページのところですけれども、415行目のところに、機構の研究者や技術者の技術・ノウハウが蓄積され、適切に活用・伝承されるよう組織として適切な方策を講じるとありますけれども、これは何か念頭に置いていらっしゃるんでしょうか。具体的なことをですね。
 
【長田参事官補佐】こちらの記載は、今、実は現行の中目にも同趣旨のことがあったと思いますけれども、個別の何らか制度を念頭に置いているというよりは、こういった技術・ノウハウの蓄積、さらに継承、こういったものは当然、特にNIMSのように技術者が結構大きな割合を占める法人には特に大事だろうということで、目標理念として書かせていただいています。
 
【知野委員】じゃあ、現行のものでも、人事のところでそういうことを触れていらっしゃるわけですね。
 
【長田参事官補佐】現行でもそのように記載しております。同趣旨です。
 
【知野委員】分かりました。その場合、NIMSとしてはどう対処しているんでしょうか。技術やノウハウを持つと思われる人を、例えば定年を超えても雇用し続けるとか、何かそういうことで対応しているんでしょうか。
 
【江頭参事官】事務局でございます。研究者だけではなくて技術者についても、マイスターという制度の御紹介をさせていただいたことがありますけれども、3段階ぐらいに職域を分けまして、研究者と同等のようなキャリアパスとか給与も含めた対応ということができるようにさせていただいておりまして、その辺はこの文書の中で取り組んでいることの一つなのかなと思います。
 
【知野委員】分かりました。何か今人材不足による問題が起きているのかということと、それから、基準をどのように適用しているのかと知りたくなった次第です。以上です。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。そうしましたら、折茂先生お願いします。
 
【折茂委員】折茂です。ありがとうございます。今の御議論とも対応するかもしれないのですが、資料の3、これはすごくよくまとまった比較だと思いました。第4期と第5期の比較で、第4期に、中核的機関としての活動の中の3.2で、研究者・技術者の育成と資質の向上ということで、ちゃんと技術者という名称が入っていたというのは私はすばらしいなと思っておりました。NIMSの特徴として、研究を支える、あるいは材料開発を支える技術者、支援者、そういった方々をとても大事にしていらっしゃるなという印象を持っておりました。それが新しいところでは、第5期の2.3で、マテリアル人材が集う国際的な拠点の形成ということで、文章を読ませていただいても、なかなか技術者、研究を支えるサポート体制というところが見にくくなっているのかなとは感じました。そういう意味で、もし、技術者や研究支援者を大事にしているんだよ、していくんだよという言葉が入れば、よりよいのかなと思いました。コメントでございます。以上です。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。確かに最後の人事に関する事項のところでは技術者のことも書いておるんですけれども、こういった研究開発の成果最大化の項目のところでの書きぶりがもうちょっとあってもいいんじゃないかということだと受け止めましたので、検討させていただきます。
 
【折茂委員】ありがとうございます。よろしくお願いします。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。ほかに委員の先生から何か議論のポイントはございますか。
 平本先生お願いします。
 
【平本委員】平本です。先ほど半導体のことを申し上げました。今回のこの長い文章を読みますと、国のいろいろな施策や方針に従って、いろいろなことが盛り込まれていますけれども、この文章に半導体という言葉が一言も入っていません。宝野理事長の資料には半導体という言葉が一つ入っていて、昨今の次世代半導体の流れを受けて、半導体に関連する部署の位置づけを変えるという説明がございました。また、最近大きな報道があった半導体の新しい研究センターにNIMSも加わるということですので、少し半導体への取組を盛り込んではいかがかと思った次第です。
 先ほど宝野理事長が二次元材料の半導体とおっしゃいましたが、次世代半導体というのはそういうものではなく、まさにシリコンの本流だと思います。シリコンの本流でも実はシリコンだけ使っているわけではなくて、様々な金属や絶縁体、その界面特性などでとても難しいところがあります。その辺りをNIMSの知見で解決していただくという位置づけにできると非常によいのではないかと考えております。以上です。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。少し検討させていただきたく思います。電子・光機能材料領域のところで先ほど理事長からもお話があったと思います。この機能領域の中では、様々な取組をする中に、先ほど理事長がお話しされたような研究もやられているということだと思いますので、そのようなところの様々な研究者がいる領域でもございますし、そこをどの程度、個別の技術もしくは半導体という分野のことを書くべきか、書けるか、改めて検討させていただければと思います。
 
【平本委員】個別の半導体というよりも、NIMSがLSTCという新しくできる国の大きな研究組織に加わることになったわけで、これは国の方針だと思うのですが、それに関わることの記載があってもいいのではないかという、そういう意味です。個々の半導体のことを取り上げろと申し上げているのではありません。
 
【長田参事官補佐】目標もしくは計画、様々な段階がありますので、それをどの段階で書くべきかということ等も含めて検討させていただければと思います。
 
【平本委員】分かりました。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。それでは、バッハ先生お願いします。
 
【バッハ委員】バッハです。理事長の説明の中にもあったんですけれども、今回、高分子・バイオ材料の領域は社会課題解決から技術革新へ移されたんですけれども、公募しているのは結構くせのある分野で、なぜある意味応用研究から基礎研究に移されたかは説明はなかったと思いますけれども、それについて何か説明ありますか。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。さっきの理事長のプレゼンの中でも我々も聞いた話ですけれども、海外の有識者等から、もちろん分野として将来の社会課題解決に重要であるというところを恐らく、そうではないということ、重要な分野だということだと思うんですけれども、社会実装とか実用化というところにかけては非常に長いスパンを要する研究領域であろうということで、よりどちらに重きを置くかというと、技術革新とか基盤研究という観点を重視した法人マネジメントが適切ではないかというお話を、理事長、NIMSから聞いております。そういった背景で、我々としてもそういったほうに置くことは一つ適切な考え方かなということで、今回このようにさせていただきました。
 
【バッハ委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【浅見部会長】それでは、河野委員お願いします。
 
【河野委員】データ中核拠点の件で文科省として御見解をお伺いしたいんですけれども、200行ぐらいのところですか、マテリアルDXプラットフォーム構築のためのデータ中核拠点の形成というところで、今、議論にもあったかもしれませんけれども、最後のところで、我が国の国際競争力強化の観点から、データごとの特性に応じて共用範囲を適切に定めて運用することとすると。多分ここの部分ってかなり重要だと思うんですが、この議論、具体的にどういった、日本としてどの区分を守らないといけないかとかというのを、これは個別に例えばNIMSならNIMSにその範囲を任せるのか、あるいは国として何らかの方針なり方向性を出されるのか、その辺りのところをお伺いしたいんですけれども。
 
【江頭参事官】ありがとうございます。今、具体的には文科省で、NIMSのクラウドの中に全国のデータを集めるという事業と、それからあとは、将来的にはNIMSのこういった集めたデータも活用したデータ駆動型の新しい材料研究開発プロジェクト、この2本を昨年度からスタートさせております。実質そこの中心は、いずれもNIMSとなっております。NIMSが両方の事業に中心になって入っておるんですけれども、その集めたデータをどのように構造化して整理するか、あるいはこの文科省の新しいプロジェクトもそうですし、理事長からのプレゼンテーションもあったような、ほかの国プロから出てくるような材料データもそうですけれども、もともとのデータを創出された人たちの活用時期とか、あるいは事業化の競争相手の存在も考えながら、データを収納する領域は分けて行うことを、今のところNIMS中心の関係機関も入った中で検討をしているところでございます。
 
【河野委員】分かりました。ありがとうございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。ただいまの2.1のところの話に続けての質問ですが、マテリアルDXプラットフォームといったときに、既にあるデータベースを活用できる様々なAIをはじめとしたツールをどうそろえていくかという問題と、新しいデータをどう取り込むかという、データ提供へのインセンティブが関わる問題があると思います。後者については宝野理事長の説明のところで議論があったと思いますが、その辺について具体的にどういう形でそれを考えていくのかとか、何を大事な情報として保護していくのかとかまだ今後詰めていく課題かもしれないですが、何か既に進んでいる議論があったら教えていただきたいと思います。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。まず、既に進んでいる議論としましては、マテリアル先端リサーチインフラという事業の中で、これはもともとナノプラットという設備の共用事業でした。今回、そこから出てきたデータをNIMSの中核拠点のシステムに入れて全体で共用できるようにしたいというのが一つの事業でして、まず、これに関しては、設備を使いに来る方が、データをみんなに共用していいかどうかを問うわけですけれども、そこでデータ共用をしてよいというのと、いや、しないでくれというところで、共用に当たっての料金体系で差をつけることが、一つインセンティブにならないかなということが、まず一つあります。
 あとはもう一つ、宝野理事長がさっきおっしゃったような、いろいろな研究者から出てくるデータを、自分も使うけれども、この中核拠点に入れてみんなで使うとよりよくなるよねという意味で、様々な研究データがここに集まるようなインセンティブというところの観点も重要だと思っておりまして、そこに関しては、今後とも引き続き文科省の内局事業、様々なデータ利活用の事業もありますので、そこで様々関係機関で議論するような場もございますので、そこでNIMSはじめ、様々なデータ利用にニーズを持っている研究機関等と議論しながら、引き続き検討していきたいと思っております。以上です。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。今の御説明で、例えばこの設備そのものはかなり優れた設備で、そこで研究したいという研究者がいれば、そこでどうぞ研究してください、だけれども、重要な一部のものを拒否するという自由はあるにせよ、多くのデータはここで蓄積することが条件になりますという、研究設備とか共同研究のメリットがインセンティブとなってということも様々あるのかなと受け止めました。ここはこれから議論が進むということなので、適宜、実態の運営としては工夫をしながらやっていくことになると考えておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 ほかの先生からの御意見とか御質問とかありますか。ないようでしたら、今日の議論も踏まえて後から追加で御質問、御意見等ございましたら、この会議の後で事務局まで御連絡いただくということでお願いしたいと思います。
 それでは、本日予定していた議題は以上になりますので、事務局から今後の連絡事項をお願いしたいと思います。
 
【長田参事官補佐】ありがとうございます。今、画面に映っております資料5で、今後のスケジュールを説明させていただきます。
 一番上の11月30日というのが本日の会議でございます。先ほど部会長からもお話ありましたけれども、12月5日までをめどとしまして、各委員から追加のコメントありましたら、メールで事務局までいただければ、それも本日の意見と含め検討させていただきたいと思います。
 その上で、次回12月15日1時からになりますけれども、本日の議論、またメールでの御意見を踏まえて、我々として改めて中長期目標を修正すべき点がないか検討させていただいた上で、この部会でお諮りさせていただきたいと思います。
 なお、本日CSTIからの意見の話がありましたけれども、ここまでに総務省でも審議会で我々の中目に対しての意見が出される見込みと伺っておりますので、それの御紹介もしつつ、そこへの対応についても御説明したいと思っております。
 なお、12月15日の後もまたメールで各委員から追加コメントをいただきつつ、事務局として一定のものをまとめ、来年年明けの1月に予定されています親の委員会ですけれども、もちろん部会長と御相談しながらまとめさせていただいた上で、親の国立研究開発法人審議会総会、ここでかけられます。これで様々な意見をいただく審議会のステップは終わりまして、その後、事務的に総務省の委員会、またCSTI、財務省、こういったところへの協議を経まして、2月末までに目標を大臣決定したいと、そのように考えておりますので、引き続き御協力をお願いいたします。
 また、連絡事項としまして、本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成しまして皆様にお諮りし、部会長に御確認いただいた後、ホームページにて公開する予定でございます。
 事務局からは以上でございます。
 
【浅見部会長】ありがとうございました。それでは、本日の部会はこれにて終了いたしたいと思います。
 どうも皆様ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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