国立研究開発法人審議会 宇宙航空研究開発機構部会(第7回) 議事録

1.日時

平成29年6月27日(火曜日) 14時00分~18時00分

2.場所

総務省8階 第1特別会議室

3.議題

  1. 文部科学省宇宙航空研究開発機構部会の部会長及び部会長代理の選出について
  2. 文部科学省宇宙航空研究開発機構部会に関する諸規定について
  3. 平成28年度及び第3期中期目標期間終了時に見込まれる業務実績評価等の進め方について
  4. 宇宙航空研究開発機構からのヒアリング
  5. その他

4.出席者

委員

【文部科学省】
部会長 髙橋 德行 
部会長代理 古城 佳子
臨時委員 永原 裕子
臨時委員 白坂 成功
臨時委員 黒田 有彩
臨時委員 スティーブスクワイヤーズ

【総務省】
部会長 梅比良 正弘
委員 知野 恵子
専門委員 入澤 雄太
専門委員 生越 由美
専門委員 小塚 荘一郎
専門委員 末松 憲治
専門委員 藤野 義之
専門委員 藤本 正代

文部科学省

堀内宇宙開発利用課長
山之内宇宙開発利用課企画官
佐々木宇宙開発利用課課長補佐

【総務省】
新田宇宙通信政策課長
中谷宇宙通信政策課衛星開発推進官

【説明者】
宇宙航空研究開発機構
坪井理事
山本理事
布野理事
浜崎理事
常田理事
今井理事
舘技術参与

5.議事録

【佐々木課長補佐】  それでは、定刻となりましたので、ただいまより総務省及び文部科学省JAXA部会を合同で開催いたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。文部科学省JAXA部会については、本年度最初の開催でございますので、部会長をお選びいただくまでの間、文部科学省の事務局が進行役を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 初めに、本日の会議の出席者につきまして、総務省JAXA部会では委員3名中2名が出席し、定足数を満たしていることを報告いたします。また、文部科学省JAXA部会では、委員及び議事に関係のある臨時委員7名中6名が出席し、定足数を満たしていることを報告いたします。また、本日の部会は公開とさせていただきます。
 まず、事務局より幾つかお知らせがございます。本日の配付資料について御案内申し上げます。資料については、議事次第のとおり配付してございます。なお、資料3につきましては、机上の青いファイルにとじ込んだ資料、資料4につきましては机上のオレンジ色のファイルにとじ込んだ資料、参考資料につきましては、文部科学省側は緑色のファイル、総務省側は水色のファイルにとじ込んだ資料です。また、ヒアリングの時間割も兼ねております本日のヒアリング項目一覧につきましては、座席表と一緒に別途机上に置かせていただいております。欠落等の不備がございましたら、事務局までお知らせ願います。
 続きまして、人事に係る案件がございますので、文部科学省国立研究開発法人審議会宇宙航空研究開発機構部会運営規則にのっとりまして、議題(1)文部科学省宇宙航空研究開発機構部会の部会長及び部会長代理の選出については、会議は非公開の扱いとさせていただきますので、ご了承願います。
 なお、本日の部会は、議題(1)と(2)につきましては、文部科学省JAXA部会のみの案件となりますので、総務省側委員の皆様におかれましては、大変申し訳ございませんが、そのままお待ちいただければと思います。お座りいただいたままで結構でございます。
 それでは、資料1に文部科学省JAXA部会委員の名簿がございますので、名簿の順に本日御出席の委員の方々を御紹介させていただきます。
 まず、トヨフジ海運株式会社代表取締役社長、髙橋德行委員です。

【髙橋委員】  よろしくお願いいたします。

【佐々木課長補佐】  次に、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授、白坂成功委員です。

【白坂臨時委員】  よろしくお願いします。

【佐々木課長補佐】  次に、日本学術振興会学術システム研究センター副所長、永原裕子委員です。

【永原臨時委員】  永原でございます。よろしくお願いいたします。

【佐々木課長補佐】  次に、株式会社アンタレス代表取締役、黒田有彩委員です。

【黒田臨時委員】  黒田です。よろしくお願いします。

【佐々木課長補佐】  また、委員としましては、ほかに東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授、古城佳子委員が就任されておりますが、遅れて御出席される予定です。
 早稲田大学商学学術院教授、平野正雄委員におかれましては、本日御欠席との御連絡を頂いておりますので、事務局よりこの場で御紹介させていただきます。
 加えて、宇宙科学・探査プログラム分野に関する御審議をいただく委員として、コーネル大学教授、スティーブ・スクワイヤーズ委員に御就任いただいておりますので、あわせて御紹介させていただきます。本日の議題(4)宇宙航空研究開発機構からのヒアリングにおいて、本日のヒアリング項目一覧の項目番号2、宇宙科学・探査について御参加いただくこととなっています。


議題

(1)文部科学省宇宙航空研究開発機構部会の部会長及び部会長代理の選出について

【佐々木課長補佐】  それでは、議題(1)に入ります。
 
(中略:非公開審議)

(傍聴者入室)

(2) 文部科学省宇宙航空研究開発機構部会に関する諸規定について

【髙橋部会長】  それでは、国立研究開発法人審議会宇宙航空研究開発機構部会の議事進行をしたいと思います。
 本日は、JAXAの平成28年度実績評価に加え、第3期の見込評価のヒアリングも行いますので長時間の部会となりますが、委員の皆様、JAXAの皆様、文部科学省、総務省の皆様、何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の議事次第に従いまして議事を進めてまいりたいと思います。議題(2)に関し、事務局から説明をお願いいたします。

【佐々木課長補佐】  それでは、議題(2)宇宙航空研究開発機構部会に関する諸規定について、事務局より御説明いたします。文部科学省JAXA部会は、今回が今年度最初の部会でありまして、新たに入っていただいた委員もおられますので、部会の運営規則について簡単に御説明いたします。
 参考資料のファイル、インデックスでいうと3番になりますが、参考資料2-2を御覧ください。文部科学省のJAXA部会においては、昨年度運営規則を定めておりまして、この運営規則の第2条においては、やむを得ない理由により部会の会議を開催する余裕がない場合においては書面による議決ができることと、その手続について記載されています。
 次に、第3条については、議決権の特例が記載されております。第1項ではJAXAの役職員の議決権、第2項では利害関係を有する者の議決権、第3項では外国人委員の議決権の制限について規定されています。第2項と第3項の具体の内容につきましては、参考資料2-3、インデックスでいうと4番になりますが「議決権の特例について」に定めておりまして、利害関係者を有する者に該当する者は第1条第1項の1から4号のとおりです。加えて、外国人委員につきましては第1条第2項において、宇宙科学分野に限りJAXAの中長期目標の策定及び変更、業務実績評価等を御審議いただくこととしております。
 参考資料2-2の運営規則に戻っていただきまして、第4条は会議の公開について定めております。原則として部会の会議は公開で行うこととなっておりますが、部会長の決定、その他の人事に係る案件、機構の業務の実績に関する評価に係る案件、その他審議の円滑な実施に影響を生じるものは非公開とすることができることとされています。会議の公開に係る具体的な手続につきましては、参考資料2-4、インデックス5番において、第2条に会議の傍聴登録、第3条に会議資料の公表、第4条に議事録の公表を定めております。
 説明は以上です。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。

(3) 平成28年度及び第3期中期目標期間終了時に見込まれる業務実績評価等の進め方について

【髙橋部会長】  次に、議題(3)に移ります。なお、これ以降は総務省のJAXA部会との合同審議とさせていただきます。議事進行につきましては、総務省、梅比良JAXA部会長殿と御相談の上、引き続き私が務めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、平成28年度及び第3期中期目標期間終了時に見込まれる業務実績評価等の進め方について、事務局から説明をお願いいたします。

【佐々木課長補佐】  それでは、資料2、平成28年度及び第3期中期目標期間終了時に見込まれる業務実績評価等の進め方について、事務局から御説明差し上げます。
 まず、独立行政法人の評価につきましては、主務大臣が実施することとされておりますが、そのための政府統一的な指針といたしまして、参考資料4-1に総務大臣が定める独立行政法人の評価に関する指針を配付させていただいております。この参考資料4-1を横に置きつつ説明をお聞きいただければと思います。
 資料2に戻っていただきまして、1.今年度の審議内容については3点御審議いただく予定でございます。1つ目は平成28年度業務実績評価です。平成28年度業務実績評価につきましては、国立研究開発法人の研究開発成果の最大化及び適正・効果的かつ効率的な業務運営の確保のため、毎年度実施しているものです。今年度においても、JAXAから平成28年度の業務に関する報告及び事項評価をヒアリングし、委員の方々に御意見を頂きます。年度評価の詳細な目的、趣旨、基本方針につきましては、参考資料4-1の17ページの真ん中あたりに記載がございますので、適宜御参照ください。
 2つ目は第3期中期目標期間の見込評価です。JAXAの第3期中期目標期間は平成25年度から平成29年度であり、今年度が現行の中長期目標期間終了年度に当たるため、この見込評価を実施いたします。参考資料4-1の18ページの上側を適宜御参照いただければと思いますが、見込評価につきましては、中長期目標期間終了時の法人の業務及び組織の全般にわたる検討並びに新中長期目標の策定に活用すること等に資することを目的とし、中長期目標期間終了時の直前の年度、すなわちJAXAでいうと平成28年度までの業務実績や、その評価等を踏まえ、法人の中長期目標期間の終了時に見込まれる中長期目標の期間における実務の実績等を調査分析し、中長期目標の達成状況等の全体について総合的に評価することとされています。
 3つ目は組織・業務の見直し内容です。これについては、適宜参考資料4-4を御覧いただければと思いますが、独立行政法人通則法第35条の7の第1項におきまして、主務大臣は見込評価を行った際には、中長期目標期間の終了時までに業務及び組織の全般にわたる検討を行うこととされておりまして、この検討というのが組織・業務全般の見直しに当たります。平成30年度からの新たな中長期目標を策定するに当たり、JAXAの組織・業務をどのように見直していくのか、今後内容について御意見を頂きたいと考えております。
 なお、本見直し内容については8月末に主務大臣において決定し、その後、9月以降に再度部会において、本見直し内容を反映しつつ、中長期目標・中長期計画について数回議論し、来年2月以降に主務大臣が決定・認可する予定でございます。
 次に、2.昨年度からの主な変更点に入りますけれども、中期目標について特段変更はございません。中期計画につきましては、平成28年度の補正予算の使途を特定する目的で、平成28年12月13日付で変更しております。参考資料5-3に中期計画の新旧対照表がございますので、適宜御参照いただければと思います。
 次に、3.業務実績評価の進め方についてですが、1ページ後半から2ページに記載しております本評価の主体は主務大臣でございますので、4府省の国立研究開発審議会においては、昨年度と同様にS、A、B、Cの評定を付することはせず、JAXAの自己評価について、その評定や評価内容を変更する必要があると判断される場合に御意見を頂くことを主たる目的とします。評定や評価内容に疑義がない場合でも、御意見等を頂いても当然結構でございます。
 また、本日、JAXAの自己評価書をもとにヒアリングを実施いたします。ヒアリング後、机上配布資料2-1、2-2、総務省側の委員の方々におかれては2-1、文部科学省側におかれては2-2の御意見記入シートに御意見等を記入し、事務局にご提出いただきます。4府省それぞれが次回以降のヒアリング結果を踏まえた委員の皆様の御意見を事務局において集約いたしまして、部会の御意見として取りまとめた後、審議会の御意見として決定いたします。各項目のS、A、B、Cの評定につきましては、4府省の審議会の御意見を踏まえまして、4府省において協議の上、決定させていただく予定です。S、A、B、Cの評定を含む評価書につきましては、4府省間の協議に基づくものとなりますので、頂いた御意見とは異なる結果となる可能性もございますので、その点をご了承いただければと思います。また、見込評価についても年度評価と同様の進め方とさせていただきます。
 次に、3ページに移りまして4.組織・業務全般の見直し内容の審議の進め方でございますが、業務実績評価と同様、各委員から御意見を頂くことを主たる目的としまして、審議会において見直し内容を決定することはいたしません。具体の進め方としましては、JAXAの自己評価ヒアリングと並行しまして4府省において見直し内容案を作成し、委員の皆様にご提示した上で、御意見を頂きたいと考えております。
 業務実績評価と同様、4府省それぞれにおいて委員の皆様の御意見を事務局において集約し、部会の御意見として取りまとめた後審議会の御意見として決定し、その後4府省において協議の上、主務大臣としてのJAXAの組織・業務全般の見直し内容を決定いたします。
 次、4ページ以降の5.業務実績評価及び組織・業務全般の見直しに係る日程につきましては、適宜御参照いただければと思います。
 最後に、御意見記入シートについて御説明させていただきます。総務省の委員の皆様は机上配布資料1-1、文部科学省の委員の皆様は机上配布資料1-2を御覧ください。本日のヒアリングを踏まえまして、御意見をシートに記入していただきます。評価は主務大臣の責任で行うこととなりますので、委員の皆様にS、A、B、Cの評定を書き込んでいただく必要はございませんが、この部会においては委員の皆様から頂いた御意見を取りまとめますので、各項目に対し、基本的にJAXAによる自己評価とはS、A、B、Cの評定を異なるものにすべきと判断される場合に御意見を記入いただけますと幸いです。次々回に委員皆様から頂いた御意見を取りまとめる予定です。今後、4府省の審議会の御意見を踏まえ、最終的に4府省合同で評定を付した評価書を決定させていただく予定です。
 事務局からの説明は以上です。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 ただいまの事務局よりの説明において、ご不明な点あるいは確認したい点がございましたら補足させていただきますけれども、何かございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、審議会としての意見を主務大臣に述べるための作業を進めていくことといたしたいと思います。

(4) 宇宙航空研究開発機構からのヒアリング

【髙橋部会長】  次に、議題(4)に移ります。本日の合同ヒアリングですが、参考資料3-1においてお示ししている本年度の評価の項目の中から、本日のヒアリング項目一覧においてお示ししている事項に沿ってヒアリングを行う予定であります。
 それでは、まずJAXAから、平成28年度及び第3期中期目標期間終了時に見込まれる業務実績評価の自己評価結果の「総括」をお願いいたします。

【JAXA(坪井)】  評価を担当しております理事の坪井と申します。よろしくお願いいたします。
 今年度が中期目標期間の最終年度ということで、業務実績等報告書は28年度のものと中期目標期間終了見込のものの2冊がございます。まず、各項目の説明につきましては、最初に資料4のオレンジ色のファイルの見込評価を御説明して、次に青色のファイルの資料3の平成28年度評価を説明するという形でやらせていただこうかと思います。
 それでは、まず資料4のオレンジ色のファイルの方でございます。開いていただきますと、大変恐縮ですが目次のところに通し番号を振っていないわけですけれども、各項目ごとにアルファベットと数字となっていますので、このページで適宜各項目を御参照いただければと思います。
 1ページが総論でございます。第3期からJAXAの中長期目標は、政府が定める宇宙基本計画に基づかなければならないなどの法律的な措置もなされまして進めてきているところでございます。政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関という位置づけが、宇宙基本計画で与えられたところでございます。
 それぞれ各項目の概要でございますが、1つは、まず新たに宇宙安全保障の分野の事業が始まったという点。2点目、非宇宙分野からの技術・人材の糾合によるオープンイノベーションという新しい試みを始めたという点。3点目、宇宙輸送分野では、高い打ち上げ成功率・オンタイム率を誇っております。また、この期間には初の商業用静止衛星の打ち上げもございましたし、今新たにH3ロケットの開発にも着手しているという状況にございまして、新しい進め方として事業化の方針を有する企業が開発当初から参画するという新しい形態も採用しているところでございます。
 2ページでございます。衛星分野では、防災機関が利用するということの定着、またそういったものの民生利用への展開や宇宙産業の裾野の拡大に貢献した点があろうかと思います。また、地球温暖化の関係では、温室効果ガスの排出量測定の標準的なものになるように、今努力を進めているところでございます。
 次の有人分野では、日本人初の国際宇宙ステーションの船長に若田飛行士がなるなど、そういった宇宙飛行士の活躍。また宇宙ステーション補給機「こうのとり」は100%の成功ということで、他国からも頼られる高い技術を確立してございます。また、「きぼう」の利用の中では、例えば創薬研究開発ベンチャー企業との包括的な利用形態といったところや、超小型衛星の放出といったところでも活動が広がっております。
 宇宙科学の分野では、さまざまな学術成果の創出がございました。ただ、残念ながらX線天文衛星「ひとみ」の異常事象というのもありましたが、こちらについてはそこで判明した要因の再発防止策などを速やかに実行に移しているところでございます。
 航空分野では、超音速機の設計概念実証のことですとか、世界で初めて晴天時の乱気流を実用レベルで検知する技術といったところがございました。
 また、事業共通部門や一般管理部門のところでは、職員の意識改善や情報セキュリティを高めること、従来の本部制を改めるような大規模な組織再編や、人事の関係ではクロスアポイントメント制度で民間企業などの方を受け入れていること、また女性活躍やワーク・ライフ・バランスの実現にも取り組むとともに、産業振興というところにも新たな組織をつくって進めていることなど、概要をまとめますと、このようなところが第3期の大きな点かと思います。
 4ページは、JAXAの評価をどのようにまとめてきたか、5ページは、評定区分がございます。
 6ページ、7ページは平成25年度からの内部評価結果になるわけでございますけれども、7ページを御覧いただくと、ここに見込評価と28年度の評価の全体の評定が書いてございます。見込評価ですと評定の区分が33ございまして、我々の自己評価ではSが5つ、Aが18、Bが10となります。また、28年度評価は32項目ございまして、Sが3つ、Aが9つ、Bが20というようなことで自己評価をさせていただきました。
 なお、全体といたしましてⅡの業務効率化とかⅧの業務運営に関する事項については、単年度ではなかなか成果が出にくい面があるわけですけども、通期では成果があらわれ、目標値を超えて達成するようなものもあるという観点を含めて評価しております。
 また、第2期の中期計画期間と比較してこの第3期中期計画期間において大きな進展が見られたという場合は、そういった点も含めて評価しているということでございます。
 見込評価の概要については以上でございます。
 次に、資料3、青色のファイルが平成28年度の評価でございます。こちらも最初のところはほぼ同じ構成になっております。1ページ、概要になりますけども、28年度の評定をわりと我々がよい評定をしたものについてのポイントをまとめているものでございます。また、2ページは、28年度の主な成果を時系列の形で並べているものでございます。
 個々の事業につきましてはそれぞれの担当理事から御説明させていただきたいと思います。概要は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、これまでの御説明に対する御質疑がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、続いて、各項目のヒアリングに移りたいと思います。それでは、本日のヒアリング項目一覧の項目番号2「宇宙科学・探査」について、JAXAより御説明をお願いいたします。

【JAXA(國中)】  それでは、宇宙科学・探査の項につきまして御説明申し上げたいと思います。本来であれば常田理事、宇宙科学研究所所長から御説明を申し上げる必要があるのでございますが、本日体調不良でお休みをいただいておりますので、かわりに國中から御説明申し上げます。
 該当するページはオレンジ色のファイルのC-18ページ、及び青色のファイルのC-23ページになります。見込評価の資料を中心に御説明申し上げたいと思います。
 見込評価は、自己評価の評定としてAを申請させていただきたいと存じます。まず1番、プロジェクトや学術研究による成果創出の項を御説明させていただきたいと思います。宇宙プロジェクトから達成した学術研究成果といたしまして、この4年間で1,370編の研究発表、査読付き論文を発表してございます。そのうち、『Science』誌掲載は9編、『Nature』は5編、高被引用論文については57編を出版してございます。宇宙科学研究所の組織規模に照らしますと、優れた論文創出と自己評価してございます。
 具体的な学術研究の成果につきましては、このページに5個列挙させていただいております。1つ目は「ひとみ」の観測結果でございますけれども、銀河団の中心部にあります高温ガスの熱速度が150~200キロメートル/秒と比較的低速度であるということを見出すことができました。これは従来の仮説に照らし合わせますと大変想定外の結果でありました。このことは銀河系を分析するに当たって大きな一石を投ずることになったと信じております。本件につきましては『Nature』に発表された論文でございます。
 2つ目はX線天文衛星「すざく」により得られた成果でございますが、100億年以上昔の太古に鉄等の重元素が宇宙全体にばらまかれた時代があり、それが現宇宙に存在するほとんどの重元素の起源であるということをつまびらかにいたしました。これにつきましても『Nature』に発表された科学成果でございます。
 3つ目は太陽観測衛星「ひので」の観測結果によりまして、太陽表面のコロナ加熱機構を明確にすることができてございます。
4つ目は惑星分光観測衛星「ひさき」によって得られました成果でございますが、木星磁気圏の外部から内側に向けて電子輸送が起きているということを、観測的な証拠をもとに解明することができてございます。これにつきましても『Science』にて公表された科学成果になっております。
 5つ目は「はやぶさ」によって回収されましたイトカワの表面物質の詳細な分析によりまして、その表面には40億年以上昔の歴史が刻まれていることが明らかになりました。こういった科学成果により、太陽系の進化や惑星形成の解明につながるものと期待されております。
 また、なお書きではございますが、「はやぶさ」に始まる小惑星探査の取り組みは、米国NASAのOSIRIS-REx小惑星探査機の打ち上げを誘導するなど、宇宙科学研究所が小惑星探査の世界的潮流をつくったということが言えるのではなかろうかと考えております。
 見込評価には記載されておりませんが、単年度評価の項にもう一点科学成果が挙げられておりまして、金星探査機「あかつき」によって、従来であればスーパーローテーションという大変高速の大気の流れがあるわけですけれども、それに抗して地表表面に固定された弓形の模様を新たに発見することができております。これは表面形状、山岳地形によって励起される大気の流れがこういった模様をつくり出しているということがわかってきてございます。こういった科学成果は、今論文を準備しておりまして、中期計画の最終年度、本年度中に多く出版される見込でありますので、本年度も引き続き科学成果が創出されるものと期待しております。
 ページをめくっていただきましてC-19ページになります。ここではプロジェクトの成果を列挙してございます。1つ目は「ひとみ」に搭載されました機械式冷凍機の運転が実証されておりまして、50ミリケルビンという極低温を宇宙で実現させることに成功いたしました。この技術はさらに後続のミッションに貢献できるものと期待しております。
 2つ目は「はやぶさ」に関連する事項でございます。「はやぶさ2」は現在順調に小惑星Ryuguに向けて運航を続けておりますけれども、この運航を支える軌道決定技術といたしまして、Delta-DORという新しい技術を実戦投入してございます。従来のレンジ・アンド・レンジ・レートによる軌道決定よりもさらに10倍の軌道決定精度を実現し、「はやぶさ2」の運航に非常に大きく寄与してございます。
 3つ目の「あかつき」につきましては、平成22年の軌道投入に失敗いたしまして、その後、5年間にわたる探査期の延命運用に努めておりましたところ、平成27年にようやく金星周回軌道への投入に成功いたしました。これにより、我が国として初めて地球外惑星への探査機投入を実現したということになります。この成果につきましては、平成29年度に文部科学大臣表彰等多くの評価をいただいているところでございます。
 次の第2項がプロジェクトマネジメント改革に関する事象であります。この件につきましては大変重要な事項ですので、単年度評価の青色のファイル、C-23ページを御覧いただきたいと思います。平成27年度の評価におきまして、ISASにおけるプロジェクトマネジメント体制の見直しということを指摘いただいていたわけでございますけれども、昨年の「ひとみ」の喪失にも起因しまして、JAXA、ISASといたしましては、プロジェクト業務改革を断行してございます。具体的にはアクションプランを立案いたしまして、これをもとにJAXA共通のルールを策定しております。従前では工学、理学が一体となって探査機を開発するという体制を敷いておりましたけれども、昨今の大型化・複雑化する宇宙機システムの開発に際しましては、新たな方式を採用してプロジェクト推進を行っていきたいと考えております。
 具体的には、プロジェクト管理をつかさどるプロジェクトマネジャーと、サイエンス推進、サイエンスの最大化を図るプリンシパルインベスティゲーター2名をプロジェクトに配置し、両者の適切なバランスを確保してプロジェクトを遂行するという新たな体制を敷いてございます。この新しい方式は、X線天文衛星代替機プロジェクト及び新宇宙探査用地上局のプロジェクトに採用し、現在プロジェクト推進を図っているところでございます。
 第2項目になりますが、ジオスペース探査機「あらせ」につきましては「ひとみ」喪失以前から開発していたプロジェクトでございますけれども、打ち上げに際しまして、この前項のアクションプランを適用しJAXA全体の支援を受けて総点検を実施いたしました。これによりシステムの健全性及び打ち上げ後の初期運用の補強を行って、万全の体制で「あらせ」の打ち上げ運用を行ってまいりました。これにより、2016年12月20日に探査機の宇宙投入に成功してございます。現在までのところ、「あらせ」は軌道上の不具合は0件で、大変安定した軌道運用と観測が行われているところでございます。
 第3項は、X線天文衛星代替機の立ち上げでございます。既にご存じのとおり、「ひとみ」の喪失という大きな事象を発生させてしまいました。日本はX線分野では大変大きな実績を上げてきたわけですけれども、これにより長い空白期間を生じる可能性があったわけでございますが、宇宙開発コミュニティとの議論、海外機関、NASA・ESAへの再発防止策の説明などにより今後の協力を取りつけることに成功いたしまして、X線天文衛星代替機の計画を新たに立案することができました。政府の支援も得まして、今年度からシステム開発に着手するめどをいただいております。これにより、日本が国際的に主導的な地位を確保するとともに、「ひとみ」喪失により失われた国内外の信頼を速やかに回復することができたと信じてございます。非常に短期間でこういった信頼回復ができたことをもちまして、ぜひとも平成28年度、それから中期計画見込評価につきましては評価Aをいただきたいと存じております。
 オレンジ色のファイルに戻っていただきまして、C-19ページになります。最後の第3項は産業振興に対する取り組みでございます。「ひとみ」のセンサを応用いたしました超広角コンプトンカメラを臨床利用するというような活動を行っております。
 また、高信頼や耐放射線性のあるMPUの開発などを手がけております。こういった技術は民間への応用が期待できるものと考えておりまして、産業利用への貢献を引き続き実施しているところでございます。
 簡単ではございますが、以上、説明とさせていただきたいと思います。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対する御質疑をお願いいたします。梅比良部会長、よろしくお願いします。

【梅比良部会長】  新しいプロジェクトマネジメント改革ということで、プロジェクトマネジャーと、あとプリンシパルインベストゲーターの2つの体制でというお話なんですが、具体的にはどういう役割分担という格好でやるということにされたんでしょうか。

【JAXA(國中)】  衛星設計それからプロジェクト管理につきましては、プロジェクトマネジャーがその責任を担うということになります。一方、観測機器の開発、仕様設定、それから出てきました科学成果を分析して科学的な成果の最大化を図るという部分につきましてはプリンシパルインベスティゲーターが担うといった体制を想定したものです。

【梅比良部会長】  じゃあ、衛星そのものの話はプロジェクトマネジャーがやって、中に積むような新しい機器、特に新しい部分についてはインベスティゲーターが担当するという体制ですか。わかりました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかによろしいでしょうか。永原委員、お願いします。

【永原臨時委員】  ただいま御説明個別の科学的成果をいろいろ御紹介いただきましたが、資料を拝見しますと、中期計画期間全体のいろいろな総括的な数字なども示されております。いただいた資料の例えばC-29ページですか、研究成果発表として全部まとまってしまっていて、個々のミッションがどれだけの成果を生み出して、それが人材育成にどのようにつながったか、若い人が分野の成果等にどのように貢献したかというようなことがわかりません。ただいまお答えいただかなくて結構ですので、それらの点につきまして、次回までにもう少し具体的に成果を御紹介いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

【JAXA(國中)】  それでは、持ち帰りまして対応させていただきたいと存じます。

【髙橋部会長】  どうぞ。

【藤野専門委員】  人材が重要だという御指摘がありましたが、C-31ページにおいて、JAXA関連の学位取得者の数が何か右肩下がりで下がっている。JAXAさんでどうお考えになるのか。この要因に関して伺いたいと思います。

【JAXA(國中)】  御指摘はC-31ページの右下にあるグラフのことの対応かと存じ上げます。

【藤野専門委員】  そうです。

【JAXA(國中)】  青いラインが修士の学生、赤いラインが博士の学生を意味しております。この修士の学位取得者の低下については、引き続き分析が必要かと考えております。一方、博士取得者につきましては、我々が先導する科学的なデータを蓄積し、それをより詳細に分析することを学生のなりわいとして研究対象としているということで、堅調に維持できているものと考えております。

【藤野専門委員】  博士課程はその通りであるが、研究者の入口である修士課程が減っていくということは、全体としての科学技術を下支えする人材が減っていくことにつながる。その懸念がこの資料から読み取れるように感じます。きちんとした分析をされて、これをどのように将来持っていくかということについてご見解をいただければと思います。

【JAXA(國中)】  宇宙科学研究所では、宇宙科学研究所が主体的に研究開発、それから科学データの分析、それから論文発表というようなことを担うだけではなくて、拠点建設ということに今努めております。他大学と連携して、宇宙科学研究所がそれを担うだけではなくて、そのファンクションを他大学に移転して、個々個別の研究を、例えば「あらせ」(ERG)の観測データを分析する拠点を、名古屋大学に設置して、その機能を強化することに努めております。
 ですから、ここにあらわれている数字は宇宙科学研究所単体の数字を示しているわけですけれども、そうではなくて、裾野を日本全国に展開させるということを意図しまして、そういった拠点建設を今複数件実施しているところでございます。一例ではございますけれども、そういった方式で、宇宙科学研究所が囲い込むのではなくて、この知見を日本全体に広めるという方向で我々は対処していきたいと考えております。

【藤野専門委員】  わかりました。人材育成は非常に大事ですので、そういうところがきちんとできた暁には、数字でここに紹介していただければと思います。

【JAXA(國中)】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。白坂委員、お願いします。

【白坂臨時委員】  説明ありがとうございます。基本的には限られた予算の中で多様なミッションをやりながら、しかも論文もかなりの本数を出しながら、外部資金も獲得するというので、すばらしく進んできているかと思います。
 中期の目標の中で大学共同利用システムを基本とした学術研究というのが一番という書き方をしてある中でお聞きしたいのが、資料のC-32ページ、大学共同利用システムの運営というところで、将来ミッションの立ち上げに向けて、理工学委員会において今後20年の長期計画の検討及び研究公募の仕組みの見直しを開始したとございます。この見直しを開始したのは何か理由があってこういうふうに変えようという意図があって今やっているのかと、もしこの辺、どういったことが見直しの理由になって、どう改善しようとしているのかがあれば教えていただきたいのですが。

【JAXA(國中)】  従前は宇宙科学研究所がミッションを立案するという機能の範囲内で何とかプロジェクトミッション運用が行われてきたわけですけれども、宇宙科学の裾野が大変広がりまして、多くの分野が出てきております。例えばX線から宇宙科学研究所は始まったわけですけれども、現在では赤外線であるとか太陽観測であるとかいろいろな分野に発展していくわけです。そういった全ての機能を宇宙科学研究所でそろえるというのは、人材的にも予算的にも無理がございます。ですから、大学共同利用機関の機能を十分に生かしまして、先ほど申し上げました研究拠点であるとか、それからコミュニティから将来のミッションを立案して提案してもらうと、こういった機能を充足させていただきたいと考えております。そういったものを宇宙科学研究所の宇宙理学委員会、宇宙工学委員会というようなチャネルでもって御提案いただいて、具体的にそれを遂行するに立っては宇宙研の持っております工学・理学の機能を十分に生かしまして、それによってミッションをつくっていくと、そういった形を実現したいと考えております。

【白坂臨時委員】  ありがとうございます。すごく良い方向だと思いますので、ぜひ引き続き進めていただければと思います。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。藤本委員、お願いします。

【藤本専門委員】  C-30ページの左上の外部資金獲得状況を拝見しますと、共同研究とか受託研究がふえていると見えるのですけれども、何か特段の御努力とか工夫をなされてこのような結果になっているとか、そういったことはありますでしょうか。

【JAXA(國中)】  やはり全体予算的には大分厳しい状況があります。我々の主なる予算の使い方としては、まずはプロジェクト、宇宙機を成立させると、より完全な宇宙機を開発し、より安定に宇宙運用を行っていくというところに今注力せざるを得ないわけです。そういう意味では、宇宙研の持っている予算で基礎研究分野への投資を手厚くするには少し厳しい状況があります。その意味では外部資金を積極的に取りに行って、基礎研究分野をより遂行させるということに注力するということを方針として考えておりまして、ここ数年は外部資金獲得に向けて構成員に努力するように仕向けております。そういった成果がここ数年際立ってあらわれたのではないかなと考えております。

【髙橋部会長】  知野委員、お願いします。

【知野委員】  中期目標のC-30ページ、『Science』及び『Nature』のところですが、論文数を見ますと1,370編中『Science』が9、『Nature』が5とありますけれども、決して数がふえているのではなくて、むしろピークが2007年とか11年とかそういうときにあって、かなり落ちているように見えますが、どういう事情があるのでしょうか。

【JAXA(國中)】  より詳細な分析は必要であろうと思いますけれども、ミッションというのが数年に一度探査機や観測装置を上げておりますので、そういったものが成果を上げるにはやはり時間がかかるため、毎年、安定的にたくさんの論文を出すというのはなかなか難しいのではないかなと考えております。例えば「はやぶさ」を上げるなり、X線天文衛星を上げるなり、「あらせ」を上げるなりと定期的に上げるわけではありませんので、そういった山、谷のサイクルがこういった結果になっているのではないかなと考えております。

【知野委員】  その辺はやはり分析が必要かなと思いましたのは、最近日本の論文の出方が少なくなっているというのが、宇宙に限らずいろいろなところで指摘されていますし、それから1,370編中、『Nature』と『Science』をあわせて14というのは、報道などで伝えられるのと比べるとかなり少ない印象を受けたもので、そのあたりでどうしてなんだろうかという気がいたしましたので。

【JAXA(國中)】  我々の担っているところはビッグサイエンスの領域でありまして、多くの衛星を上げて、それによって成果を出すので、基礎分野ですと比較的多くの研究者が小さな領域で際立つ成果を上げられるので、年間の数にしては比較的安定な数字が見込めるとは思います。我々のところは衛星を上げて観測して、観測結果から論文をつくる、書くというようなサイクルになりますので、なかなか安定的な数字を求めるのは難しいのではないかなと考えているものです。
 それから、著名な論文誌への投稿数が少ないということにつきましては、我々としても努力して、科学的な成果の最大化というのに努めていきたいと考えておりますので、御指摘を真摯に受けまして、今後改善に努めていきたいと考えております。

【髙橋部会長】  ほかはいかがでしょうか。どうぞ、白坂先生。

【白坂臨時委員】  すみません、もう一点だけ教えてください。予算額というか、どれだけのお金を使っているかのところを知りたいのですが、C-17ページですか、今回の分野の中で、要は宇宙研のこの分野の中で使っている規模感というのが、外部資金のほうはわかったのですがも、外部資金じゃない部分、つまりトータルでどんな規模感で今推移しているのかというのは、どこかを見ればわかる情報はありますか。かなりのプロジェクト数もありますし、ちょっと気にしていますのは、外部資金は結構伸びており、人員と資金との関係です。C-17ページを見れば良いですか。
このときに予算額と決算額とあるのですが、決算額というのは外部獲得資金も含めた額ですか、それとも別だと思えば良いですか。つまり、これにプラスすれば良いのですか。

【JAXA(國中)】  済みません、本件につきましては確認させていただいて、正しい数字を御案内させていただけないでしょうか。

【白坂臨時委員】  ありがとうございます。気にしましたのは、外部資金が増えていますよね。それに対して人があまり変わっていないとなると、個々の人たちに対する負荷は増えているのかなとかそういうのがちょっと気になりました。せっかく成果は上がっているのですが、このあたりのバランスがどうなっているかというのを気にしたというのが質問の意図になります。ありがとうございます。

【JAXA(國中)】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  永原委員、どうぞ。

【永原臨時委員】  もう一点お伺いしますが、宇宙政策委員会ができてロードマップが明文化されてからすでに大分時間がたっておりますが、マイルストーンと書かれているC-35ページで、新しい計画の立案が意外とペースがゆっくりしているのではないかと思います。一つ一つのミッションは10年なりで長い時間がかかることを考えると、もっと多様な計画が議論され、調査されていても良いように思うのですが、検討状況はいかがでしょうか。新規に計画・検討したことはC-40ページあたりに書かれておりますが、これも次回で結構ですので、もう少し長期的な状況をお聞きかせいただきたいと思います。

【JAXA(國中)】  わかりました。本日は単年度と中期計画についてフォーカスした内容になってございまして、それ以降につきましてはあまり多くの説明ページを設けておりませんので、持ち帰って対応させていただきたいと思います。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、スクワイヤーズ委員は本議題のみの御出席となりますので、最後にスクワイヤーズ委員からコメントがございましたらお願いしたいと思いますけども、よろしいでしょうか。

【スクワイヤーズ臨時委員】  日本語でお話しできなくて申し訳ございません。本日はお招きいただきまして大変光栄です。ありがとうございます。
 簡単に申し上げます。まず、28年度の総合評価と、そして見込評価を順次お伝えいたします。
 2016年は、JAXAの宇宙科学にとっては非常に重要なすばらしい年ではなかったかと思います。時間がございませんので4つの点に絞ってお話いたします。「あかつき」「ひさき」「あらせ」「はやぶさ2」の4点です。
 「あかつき」は現在金星周回ということで非常に順調に運用されております。これによりまして金星の表面から上空へ上がる波のような大気現象というものを、これまで知られなかった現象というのを発見することができました。これによりまして、こういった軌道の観測がこれまで期待していなかった下層大気に関する深い情報を提供することができるのだということ、そしてそれが将来にわたる大きな発見につながるのではないかという新たな可能性に満ちた結果だったと思います。
 2点目ですけれども、「ひさき」に関しましても、木星での新たな現象の発見という非常にすばらしい成果がございました。木星の磁気圏奥深くに位置する大きな衛星のイオから来る内部のイオトーラスの現象を発見することができました。そして、それが太陽風の動圧変化に応答するという結果をもたらしました。この「あかつき」と「ひさき」の新たな成果は、今後、将来のさらなる発見につながる大きな成果であったと思いますし、さらなる理論的な研究というのも欠かせないと思います。
 テクニカルな分野に関しましては、「あらせ」が滞りなく打ち上げられて最終軌道に乗り、そして全ての機器の展開、チェックが終了し、3か月前より通常の運用が開始されて、現在のところ非常にスムーズに運用されております。
 「はやぶさ2」のミッションに関しましても、これまでのところ全く問題がございません。科学的な機器のチェックアウト、そして長期的なイオンエンジンのオペレーション、そしてKaバンド、ダウンリンクのデモンストレーション、さらにはDelta-DORによる軌道の決定ということで順調に進んでいると思います。とりわけDelta-DORによる軌道決定というのは、おそらく日本では最初の成功ではないかと思います。
 2013年から2017年に係る5か年の期間ですけれども、これも先ほど申し上げましたように大きな成果が含まれていると思います。さらにはGEOTAIL、「すざく」、「ひので」といったものも大きな成功でございました。それに伴いまして3,000ものパブリケーションにつながったという成果もございます。そして、BepiColombo、Mercury Magnetospheric Orbiterが衛星に無事にデリバーされ、そして全てのスケジュールと技術的な点をクリアしたということです。さらには「あかつき」のリカバリーですけれども、これも非常にすばらしい成果でございまして、NASAを含め、世界中の垂涎の的になりました。
 この2017年度の残りを予測してみますと、「あかつき」、「あらせ」、そしてBepiColomboのローンチ前のテストサポート、それと「はやぶさ2」に関するプリパレーションといったことから多くの新たなペーパーが生まれるのではないかと期待しております。
 もちろん、この第3期の中には非常に残念な出来事もございました。「ひとみ」の異常ということです。しかしながら、こういった失敗というのは、NASAも含めた世界における大きな宇宙機関ではいずれも経験していることでございまして、その中には人命が失われた事件もございました。こういったことは確かに悲劇ではありますけれども、長期的に見ますと、その出来事そのものから得られる教訓、それにどう対応していくかということから考えまして、非常に重要な教訓を残してくれるものではないかと思います。JAXAの「ひとみ」の失敗を見直すプロセスは非常に完全で透明性の高いものでございましたし、適切な是正措置も取られようとしております。そして、これまでのところ非常に確実なステップをもちまして昨年度実行されました。こういった失敗から学んだ厳しい教訓を将来に生かしていくということが非常に重要ではないかと思います。
 まとめといたしましては、昨年度、そして第3期中期の見込評価に関しましては、宇宙科学を進化させるために非常にすばらしいものがあると思います。私の具体的な評価に関しましては、文書としてまた後ほどお送りさせていただきます。ありがとうございました。

【髙橋部会長】  スクワイヤーズさん、大変ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移らせていただきたいと思います。続きまして、本日のヒアリング項目の項目3「有人宇宙活動」につきまして、JAXAより御説明をお願いいたします。

【JAXA(浜崎)】  浜崎でございます。よろしくお願いいたします。お手元の見込評価、オレンジ色のファイルのC-49ページから御説明させていただきます。
 C-49ページで、見込評価の自己評価といたしましてはSをつけさせていただきました。大きな理由でございますが、宇宙ステーションのJEMが完成いたしましたのが前中期期間の途中、2009年でございます。前中期期間は2008年から12年、この途中でJEMが完成して、利用を開始したところでございましたけれども、本中期期間の中に利用が本格化いたしまして、有償利用という仕組みも完成し、成果は大きく拡大しております。また、有望分野を重点化するなどの戦略的な取り組みも行って顕著な成果が出ていることから、Sとさせていただいています。
 また、根拠といたしましては3点述べさせていただきます。1つ目が前中期期間では初めて有人機関であるJEMを完成させて運用・利用を開始したところでございますが、この後、効率的に有人宇宙技術を獲得してきたということ。それからISS計画において他国からも頼られるような高い技術を確立してまいりました。宇宙飛行士の活躍にとどまらず、JEM及びHTVの安定した運用を達成することができました。特にHTV6号機ではISSの運用延長に必須のバッテリーの輸送を依頼されるなど、他国からも非常に信頼される高い技術を確立することができました。
 特に我が国が開発いたしました安全なISSの接近技術が、本中期において米国民間輸送機でも採用されて新しいスタンダードの1つとなったとともに、「きぼう」からの超小型衛星放出が全てで150機以上という実績を重ねていまして、これについても新しい方式を確立しております。注の1番にありますように現在宇宙機はプログレス、アメリカのドラゴン、シグナス、日本のHTVと4種類ございますが、HTVのみが唯一100%の成功率を維持しております。
 また、有人宇宙技術の獲得という観点では、各国が宇宙プログラムに投じた総額を比較いたしますと、アメリカが80兆円、ヨーロッパが2.2兆円に対して、日本は総額で8,000億円ということで、ヨーロッパとほぼ同規模の有人宇宙技術に比較いたしましても、はるかに効率的に有人宇宙技術を獲得できたと考えております。
 2つ目が国際協力の推進でございます。前中期では運用開始に向けた国際約束を果たすということを中心としてまいりましたけれども、本中期ではそれに加え、宇宙ステーションの利用は各国が独自で行うという枠組みを超え、NASAとJAXA間でのISSの共同利用の促進計画を締結いたしまして、例えばマウスのサンプルの交換、それからお互いのユニークな実験装置の相互利用を行うなどの新たな協力関係に移行しております。
 さらには、アジアとの協力を進めまして、特にアジア各国が強く求めております人材育成の機能、これにつきましては、JAXAは十分持っておりませんけれども、この人材育成機能を持つ大学と、それからJAXAの持つユニークな超小型衛星の放出能力、それから安価で定期的な放出機会、年に四、五回の打ち上げの機会がございますので、これを組み合わせて1つのパッケージとしたサービスとして提供するということによりまして、人材育成と衛星放出をあわせた日本ならではの形ということで国際協力を推進しております。実際にフィリピン初の国産の超小型衛星の放出では、留学生、それから政府高官の打ち上げ・放出への立ち会い等、またフィリピン国内での大きな報道がなされまして、外交関係を高める上でも大きな効果があったと考えております。
 また、宇宙飛行士がアジアの学生を対象とした公募型簡易実験を行っておりますが、これにつきましても従来は大学レベルとの協力だったものを国レベルの協力とすることができまして、タイでは科学大臣の出席などを得ることができました。また国連とも新たな協定を締結いたしまして、ケニア初の超小型衛星が選定されて、今後打ち上げられる予定になっております。これにつきましては、外務省の持続可能な開発目標に向けた科学技術外交の4つのアクションにおいても取り上げられております。
 C-50ページでございます。3つ目として、新しい利用環境・技術の提供と、それから仕組みづくりについてお話をさせていただきます。前期は基礎的な実験の技術を獲得すること、それからいろいろなものを試行錯誤的、探索的にやってみるということで技術を蓄積してまいりました。これによって基本的な実験技術を確立するとともに、どういう分野で有効かということの見極めをつけることができました。これを生かしまして、本中期では有望分野として4つの分野、新薬設計、加齢研究、超小型衛星放出、それから船外のポート、これは実験の場所でございますが、これの利用を重点化するということをいたしまして、超小型衛星の放出能力を倍増したり、あるいは4℃でのたんぱく質の結晶生成を可能にしたり、それから小動物を0Gと1Gで対照実験することなどの新しい環境をつくることができました。
 これによりまして、超小型衛星は前中期では放出機数が5機だったわけですが、今期では152機と大幅にふやすことができましたし、これにつきましては『Science』誌の「2014年の科学ブレークスルー10選」に選ばれることができました。また、たんぱく質の結晶につきましては、たんぱく質の種結晶を宇宙に持っていくだけでは十分な結晶ができず、構造決定ができませんけれども、これに対して不純物の除去の方法、それから溶媒等の濃度、種類、時間等のコントロールにつきましてさまざまなノウハウをJAXAで積み重ねてまいりました。これを組み合わせることによりまして、いろいろなたんぱく質の結晶を高い確率で生成することが可能となって、その構造を決定して新しい薬の開発に資するというようなことが可能となっております。これにつきましては創薬ベンチャー企業と有償の利用契約、長期的な利用契約を結んだり、あるいは東北大学、北大、九工大などと戦略的パートナーシップを結ぶなどのさらなる事業拡大に向けた取り組みを進めております。
 また、NASAとの関係におきましては、C-59ページでございますけれども、NASAのプログラムマネージャーのカーク・シャーマン氏からJAXAの活動について幅広く意見を聞くことを行いました。詳細は御紹介いたしませんけれども、NASAからも非常に信頼できるパートナーとして大きく貢献しているということ、特に最後の自由意見では、「ISSプログラムにおける日本の協力は欠かせない。非常に重要な役割を果たしており、継続的参加と今後の協力について楽しみにしている」というようなコメントをいただいております。
 続きまして、年度評価のほうで若干簡単に御紹介させていただきます。年度評価、青色のファイルのC-66ページを御覧いただければと思います。
 年度評価はA評定とさせていただきました。特に国際協力を推進したこと、それから利用に関しての仕組みづくりを行ったことが特筆すべき事項でございます。国際協力につきましては、先ほどお話ししましたように日米政府の新たな協力の枠組みを用いまして、JAXAとNASA間で新たな仕事をしております。従来ではできなかった、枠組みを超えてマウスのサンプルをお互いに交換すること、それから互いに持っていない装置を使い合うことというような仕組みの調整を進めております。さらには、先ほどお話しいたしましたが北大、東北大、九工大、国連等と新たな戦略的なパートナーシップ協定を結びまして、オールジャパンで利用を推進する仕組みを構築しております。
 2項につきましては、先ほど申し上げましたように有望分野を4つの分野に特定いたしまして集中的に能力向上を図って、外国ではまだ対応できないような新たな、例えば4℃の低温でのたんぱく質の実験を可能とすること、あるいは0Gと1Gの両方でのマウスの影響を見ること、それから超小型衛星の放出能力を持つことなど、我が国唯一の形でのいろいろな利用の仕組みづくりを整えていくことができました。
 説明は以上でございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対する御質疑をお願いいたします。知野委員、お願いします。

【知野委員】  オレンジのほうの中期目標のSのことなんですけども、ISSに関しては確かにいろいろと成果は出ているのでしょうが、この間言われ続けてきたことは、やはりお金がかかり過ぎているのではないかと、年間の運用費が400億円前後を行ったり来たりしているということです。よく費用対効果と言われますけれども、そのあたりが一番今まで問題にされてきたと思うんです。
 この期間、費用を下げるという意味で何か努められたことがありましたら教えていただけますでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  まず、全体的に運用経費を少しずつ圧縮しておりまして、これは運用がきちんとできていること、それからあと宇宙飛行士、それから地上管制官等のスキルの向上ということもありますが、運用経費を着実に低下させております。約十数%だと思いますが、これまで下げてまいりました。
 そのほかは、実験装置等については2つのことをやっております。1つは宇宙ステーションをつくるとき、当初、第2期のときには有人の安全ということを考慮すると非常に難しい、従前以上に安全環境に特に気を配った、ある面高度な設計をしなきゃいけない、それからお金の関係でも一発必中型でいかなきゃいけないということで、慎重に試験をして打ち上げるというやり方をしておりましたけども、第3期では大幅にそのやり方を変えました。実は宇宙飛行士が快適に過ごせる環境というのは、逆に言うと非常に機器にとっても優しい環境でありまして、打ち上げ期のときの振動も少ない、物資も衛星のような運び方をするのではなくて、バッグに入れて梱包材に入れて運ぶようなやり方をするということが常態化してきましたので、設計の基本的な考え方を変えて、我々はリトライ共用設計と言っているんですけども、宇宙飛行士がある部分については修繕したり調整したりすることも可能だと。それから機器について、もし壊れた場合には、最悪の場合は地上に降ろして再度打ち上げることもできるということからスピードアップを図って、一発必中型の慎重に試験をするというやり方を大分変えて、一つ一つの実験装置の単価を下げてスピードアップを図っております。これを船内の実験についてはいろいろな分野で進めておりまして、特にライフサイエンス系の実験についてはその効果がかなり大きいということで、そこを中心に進めているというようなことがございます。
 もう一点、大きなコストダウンとしては、今開発中の「こうのとり」の後継機にかなり新しい技術を放り込みまして、ほぼ同じ質量の「こうのとり」の後継機ですけれども、搭載できる荷物の量が約45%ふえる設計をしております。ここはさまざまなちょっとした工夫の積み重ねでございまして、大きな飛び道具を使っているわけではありません。ただ少しずつのすき間を、いわゆるすき間家具のように円筒の中に四角い荷物を詰めますので、その角の隅っこのすき間にさらに小さい棚をつくって詰め込むとか、それからバッグの固縛の仕方をきめ細かくするような、まさに日本人ならではのきめ細かい詰め込みを少しずつ工夫してまいりまして、それによって結果的には今開発中のHTV-Xでは、現行機について45%程度荷物をたくさん積める見込が立っております。それによって単価としてはそれだけの低コスト化ができると考えています。

【知野委員】  これは毎年10%ずつ費用を下げてきているということでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  毎年10%はありませんで、約1~2%ずつ下げてきていまして、トータルで十数%獲得したと。

【知野委員】  わかりました。それと新しいHTVのお話がありました。しかし、本期間中では今のHTVが100%の成功率ということですが、ただ年間の運用費400億円前後のうち、大半がHTVに注がれているのではないでしょうか。実験の装置で工夫されていますけれども、このHTVをどうするか、もう少し安くできないのでしょうか。それは新しいもの、開発中のものができるまではちょっと難しいという、つまり今現在のものではコストダウンがこの期間はできてこなかったということでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  今HTVの6号機まで飛ばしておりまして、今のHTVは9号機までこのまま飛ばす予定でございます。これについては、まず当初のときに2号機から7号機までまとめて発注しておりますので、それによって大幅なコストダウンが可能となりました。従前、宇宙機は1機か2機しかせいぜい開発できないところを、長期的な契約を結ぶことによって大幅に下げております。8号機、9号機は宇宙ステーションの運用が2016年から20年まで延びた際のプラスアルファということで後から追加しておりますが、ここはあえてあまり新規ものは取り込まない、最低限の部品の枯渇等によってできなくなった部分以外は極力既存の技術を使ってランニングコストを下げる形にしております。その分、HTV-Xについては根本のところから投資して、全体の設計をやり直すことによって大幅に下げようというやり方でやっております。

【知野委員】  大幅なコストダウンというのはどれくらいのコストダウンをされるんでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  ランニングコストとして、今HTVと、それからH3のコストダウンもありますけども、あわせて全体として半分から3分の2ぐらいを狙っております。

【知野委員】  狙っているということではなく、HTVを2~7号機までまとめ買いしたことによってコストダウンを実現されたと説明されましたが、どのぐらい下げられたのでしょうか。そのときのまとめ買いの効果ですが。

【JAXA(浜崎)】  1号機は開発費が全て入っていますので、1号機と比べての比較はできません。1機だけのときのコスト全体は覚えておりませんけど、とにかくまとめて調達することによって下げたという。

【知野委員】  そうですか、大幅とおっしゃるから、例えば1割とか2割とか、私たちはそのように考えるのですが。

【JAXA(浜崎)】  1機ずつの調達の正確な数値を私は今持っていませんけれども、感覚で申し上げるのはちょっとどうかと思いますが、少なくとも2~3割はいっているとは思いますが、ちょっと調べてみます。

【知野委員】  そうですね、大幅ということなので、ぜひともお願いします。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。末松委員。

【末松専門委員】  有人宇宙活動という技術を取得するというのは非常に意義があって、順調にいっているというのはわかりました。一方で、実験棟のJEMの使い方という面で考えたときに、たんぱく質の結晶生成、創薬というところのアウトプットが1つ出てきたというのはわかりましたが,やはりJEMの使い方としてこれだけでいいのかという話があるのではないかと思います。もう少し何か幅広い使い方ができないのかなというのと、それから、今までの実験内容に対しての総括というのですか、ここについては逆に言うとあまり意味がなかったというような、報告書には書きにくいとは思うのですけども、そこら辺の総括は内部では行われていると理解してよろしいのでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  まず、たんぱく質については重点的なものをお話しいたしましたけれども、もう少し細かいところはオレンジ色のファイルのC-54ページ以降に幾つか書いてございます。たんぱく質以外ですと、特に静電浮遊炉で材料実験、それからサイエンス的な観点で言いますと宇宙医学の実験、それから燃焼にかかわる流体物理学にかかわる実験等がいろいろと行われております。科学的な成果については論文生成まで2年程度かかりますが、それができ次第ということで、1件、1件評価を行っております。

【末松専門委員】  宇宙じゃなければできないとか、宇宙の実験室を民間で利用してもらうという成果の出方とかいう面で、特筆するものはございますか。論文として出てくるというのはわかるのですけども。

【JAXA(浜崎)】  まず、たんぱく質実験でも、いろいろな実験全てそうですけけれども、JEMでなければ得られない実験以外は基本的には行っておりません。

【末松専門委員】  産業界に対して、出口論として論じられるようなレベルだと理解してよろしいのですか。創薬についてはよくお話を聞いているのでわかっているのですけども、それ以外についてです。

【JAXA(浜崎)】  まず、JEMでの考え方ですけれども、最初はプロセスを理解する、現象を理解するということから科学的な利用が先に走ります。その後で、なるべく企業にも使っていただくということで、順次有償利用化を進めています。特に企業の場合には成果を独占されたいという要望が非常に強いものですから、成果を公開しなくてもよろしい、そのかわり必要経費をいただくという形で順次有償化しております。現時点でも有償化しているものがかなりございまして、たんぱく質結晶生成実験、それから静電浮遊炉による高温材料の特性試験、それから超小型衛星の開発、打ち上げ、それから宇宙空間での長期間の暴露実験、これらのものは全て有償制度をつくって、企業あるいはほかの研究機関からの有償利用を受け付けております。実際、宇宙ステーション計画の中でほかのパートナーを含めても有償利用の制度というのは持っていなくて、各パートナー、例えばアメリカの幾つかの企業にただで使わせているということはありますけれども、国レベルで費用を負担いただいている制度を持っているというのはJAXAだけでございます。

【末松専門委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  生越委員、お願いします。

【生越専門委員】  オレンジのファイルのC-49ページのところなんですけれども、注2に関することですが、有人宇宙技術獲得を効率的に推進してきた、この証拠としてアメリカは約80兆円で欧州が2.2兆円、日本が0.8兆円となっているんですけれども、後から参入すれば費用が安くなるというのはどの世界でも言えることで、だから効率的に技術獲得をしたというのは、アメリカ人がもしこれを読んだら、非常にどういう表現なんだろうと思うので、だからちょっと表現ぶりを変えられるか、データを違うもので証明されるかしたほうがいいんじゃないかなという気がするんですけれど、いかがでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  まず、有人宇宙技術を効率的に獲得するというのは、政府の目標として宇宙ステーションをスタートしたときに掲げていましたので、それに対する指標というので幾つか考えていました。その中で、アメリカの場合はアポロ計画のお金がこれに含まれておりますので参考としては違う、C-51ページに少し詳しく書いておりますが、アメリカはマーキュリー計画以降、それから欧州はスペースラブと宇宙ステーション、日本は宇宙ステーション計画と「こうのとり」という形で積算させていただいております。少なくとも指標として欧州と日本のやっている規模はほぼ同等でございますので、そういう意味では少なくともそこの部分については十分効率化されていると言えるだろうと。あとは技術レベルの比較になりますけれども、宇宙ステーションのモジュールも日本が最大のモジュールでございまして、機能的にもほかのモジュールより大きな機能を持っているという観点からして、決して引けはとらないと思います。ただ、ほかの観点での指標はなかなかつくれないということで、今私どもはこれを使わせていただきました。
 あとは個々の技術レベルで、日本でも全ての技術をやっているわけではありません。例えば宇宙服は日本もヨーロッパも持っておりませんし、それから宇宙ステーションの中で、いわばアメリカが持っていなくて日本が持っている機能もあるということを全体をなべて、効率的にということを単純にお金だけで、投資金額だけで書いたのがこの表でございます。もっと多角的な観点から評価を続けてまいりたいと思います。

【生越専門委員】  効率的に推進してきたというのを証明したいというお気持ちは重々わかるんですけど、やっぱり投資金額、アメリカのアポロ計画から全部比較して日本は安く済んでいるというのは、多分納得はできないんじゃないかと思うので、そこら辺の表現ぶりを御検討いただければと思います。

【JAXA(浜崎)】  わかりました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかにありませんでしょうか。梅比良部会長。

【梅比良部会長】  超小型衛星がすごくふえたというのは、テクニカルな問題ですか。それとも制度の問題でこういうふうにふやせたということなんでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  2つあると思います。まず超小型衛星が標準化されて、10センチ級の超小型衛星を各大学等がつくれるような環境が整ってきたこと。日本の大学でも非常に多くやられておりますし、それからある面キットというのも、部分的なキットが販売されたりしております。それから、さらには九州工業大学等がそれをシリーズ化して、いろいろな学生を受け入れて、学生さんを含めて衛星をつくるというようなことが、システマティックに教育のプログラムの中で行われるようになってきています。というのは、教育プログラムに組むためには時間の観点が極めて大事で、従来の衛星ですと、例えば開発に5年以上かかっていましたので、ドクターコースの学生さんでやっても間に合わない。ところが最短の衛星ですと衛星の開発が半年から1年、それをいただいてから私どもが打ち上げる場合、最短で3カ月で打ち上げられるようになってきた。ここに宇宙ステーションが安定的に運用されたことと仕組みづくりがうまくいって、カリキュラムにもはまるようになってきたというのが一番大きなことだと思います。
 技術的にも安定してきて、学生さんのつくった超小型衛星が、打ち上げ環境も緩いということもありますけれども、それによって1年、2年ちゃんと機能するというようになっているということ、両方が相まった成果だと思います。

【梅比良部会長】  衛星の生産性が上がったということ……。

【JAXA(浜崎)】  両方の成果だと思います。

【梅比良部会長】  それが大きい。
 あと、この部分で有償化しているというお話だったんですけれども、企業に対してのみ有償化なんですか。それともそういう研究のものに対しては無償とか、その辺はどういうふうな考え方でやっておられるんでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  ものによって違いますけれども、例えば超小型衛星では、現時点では無償にしているのは国連のものと、それから特別な国際協力があるトルコの衛星、これだけが無償でございまして、そのほかは全て有償です。企業でも大学でも外国でも同じ金額にさせていただいております。

【梅比良部会長】  原価計算というのはどうされているんですか、お値段を決めるときの。

【JAXA(浜崎)】  どこまでお金をいただくかというのは、原価の考え方を一応統一してつくりまして、少なくとも衛星をつくるために必要な消耗品、それから機材のうちで使い回せない部分、それからあと人件費で外注費等で必要になる金額……。

【梅比良部会長】  済みません、小型衛星を、例えば……。

【JAXA(浜崎)】  打ち上げに関する費用?

【梅比良部会長】  済みません、いろいろなものでありますよね、例えば新薬開発のためにやるとかそういうのも全部おしなべて有償だというお話かと思いますので、そういったものを含めて全部の話ですか。

【JAXA(浜崎)】  考え方は統一されております。そのサービスを提供するために必要な消耗品等、それから外注費というような人件費、それから、その次にJAXAの人件費の中で限られたものついていただいております。それから打ち上げ費、これについては国内のユーザーについてはいただいておりません。外国のユーザーについては一部分的にいただいている、大体そういう順番でお金の考え方を統一しまして有償化しております。

【梅比良部会長】  では原価を補えるということですね。

【JAXA(浜崎)】  基本的には原価のプラスアルファをカバーしていただくというのが基本。ただし、打ち上げ費までチャージしますとかなり高額になってしまいますので、打ち上げ費回収費はいただいていないというのが考え方でございます。

【梅比良部会長】  わかりました。

【髙橋部会長】  永原委員、お願いします。

【永原臨時委員】  S評価とされている点につき、簡単に質問させていただきます。一般的に考えるとSというのは当初想定していたことより飛躍的に良かった結果があったときではないかと思うのですが、お伺いしていますと、中期計画としてやる予定であったことを全てきっちりしっかりやったというように聞こえます。AではなくSと判断される特筆すべき何かがあったのでしょうか。

【JAXA(浜崎)】  まず、当初計画としては、中期計画を立てた時点では、私どもとしては宇宙ステーションの運用を始めたばかりでございましたので、ほんとうに定常的に安全にどこまで続くかということすらはっきりわからない状態で、その当時計画した装置をしっかりと使いこなすだけ、それを利用するというのが基本的な考え方でございました。それに対して、成果としては安定運用に伴ってユーザーの数もかなりふえてきましたので、装置の能力をいろいろなもの、先ほどお示ししましたけど倍増するような計画も既に立てて、それを既に達成して、例えばたんぱく質の結晶生成実験でも超小型衛星についても大幅な数の増加になっておりますので、その部分が期待以上の成果ということでS評定にさせていただいております。

【髙橋部会長】  最後に私からも1つコメントしたいのですが、1つは、先ほどありました有人宇宙プログラムに投じた総額がアメリカと欧州と比べるというのは、無理があるのかなと思います。やはり歴史も違うし、やっていることも違うので。むしろ今までのお話を聞いていても費用対効果、いわゆるインプットに対するアウトカムが重要だと思うのです。ISSに対しての総額投資がまず幾らか、私の知っている範囲では、たしかもう日本は約1兆円近いお金をISSには投じているのではないのかなと……。

【JAXA(浜崎)】  8,000億円でございます。

【髙橋部会長】  宇宙開発委員会の資料では2010年までに7,100億円と書いてあるのですが、それ以降、毎年400億円と。それで計算すると16年度までに約1兆円近いのですが、これは宇宙開発委員会に出した数字ですから一度調べてください。

【JAXA(浜崎)】  わかりました。

【髙橋部会長】  1兆円とすると、1兆円の投資にふさわしい成果は何かということを、JAXAで議論し、コンセンサスを得る説明をする必要があると思います。第4期も続きますので、お願いしたいと思います。
 以上です。

【JAXA(浜崎)】  わかりました。ちょっと補足させていただきますと、C-51ページにありますが、2011年までの費用で8,000億円という数字でございます。ですから、最新の数字はまた戻って計算させていただきます。
 それから、アウトプットにつきましてはなかなか定量化が難しいものもありますし、国際協力の成果などなかなか事前に設定するのが難しいものがございますけれども、4期に向けて、その辺のところをさらに詰めてまいりたいと考えます。

【髙橋部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に入らせていただきたいと思います。項目番号4「宇宙太陽光発電」と、項目番号5「個別プロジェクトを支える産業基盤・科学技術基盤の強化策」について、続けてお願いいたします。

【JAXA(今井)】  研究開発部門を担当しております理事の今井でございます。2件を続けて御説明させていただきます。
 では、お手元のオレンジ色のファイルを御覧ください。ページはC-60ページになります。宇宙太陽光発電につきまして最初に説明をいたします。詳しくはC-62ページを御覧ください。
 中期計画において、JAXAとしては、無線によるエネルギーの送受電技術を中心に宇宙太陽光発電の研究開発に取り組んでまいりました。本期間における具体的な実績でございますが、1つはマイクロ波を用いたエネルギー伝送ということで、このマイクロ波のエネルギー伝送につきましては、Japan Space Systemsさんが電力を送信するためのアンテナを研究開発されております。JAXAはそのアンテナを用いて大きなシステムを組む際にビームを集光させる、エネルギーを効率よく送るためには数多くのアンテナをいっぱい組み合わせて集光する技術が必要になってまいります。ここの技術を主として行いました。
 具体的には、この写真にございますように地上における伝送技術実験を行いまして、その写真の下のほうにありますように、各アンテナ間の補正を電子的に行うということで効率的にエネルギーを伝送するという技術を開発しました。このようにマイクロ波につきましては関連技術の研究を地道に積み重ねております。
 それから、もう一つのエネルギー伝送技術でありますレーザー光を用いた伝送技術、これはJAXAが主体となってやっておりまして、この場合、特に問題になりますのは大気の中を光を通して伝送するということで、その影響についての基礎的なデータを得るということが必要になります。これにつきましては、高さ方向に高い距離をとれますエレベーター試験塔を活用させていただきまして、ここで伝送実験を行い、基礎的なデータを取得いたしました。
 また、大型の構造物ということで、実際の宇宙太陽光発電を行う場合には軌道上にキロメートルオーダーの構造物を効率的に構築する必要がございます。このためには、いかに軽量化して大きな構造物をつくるかということが重要になりますが、それにつきましては計量で組み立てやすい構造ということで、三角形状でジョイント部を少なくして軽量な構造物をつくることができるという技術を研究開発いたしました。この写真にあるようなものでございます。
 また、全体のシナリオづくりということで、宇宙太陽光発電は何十年もかかる研究開発計画でありますが、その中で得られた技術を社会的な課題、利用に使っていくことで、無線エネルギー伝送社会に対して貢献するということがある意味宇宙太陽光発電の近道につながるだろうということも含めまして、関係の専門家の方々に参加をいただきまして、シナリオづくりを検討していただきました。この中から幾つか社会的な応用例というのを答申いただきまして、これについてもJAXAとしては検討に取り組んでございます。
 以上のことを踏まえまして、全体としては計画どおり作業を進めたということで、自己評価はBとさせていただきました。
 続けて、個別プロジェクトを支える産業基盤・科学技術基盤の強化策について御説明いたします。
 オレンジ色のファイルのC-65ページを御覧ください。本件につきましては、自己評価としてはA評価とさせていただきました。まず、本項目でございますけれども、従来、主としてJAXAの研究開発部門でありますけれども、プロジェクト等を確実に推進するための技術ということで、その成果はどちらかというとプロジェクトの中に含まれて評価されてまいりました。ただ、プロジェクトの中に埋まってしまいますと、個々のプロジェクトに対しては成果が出るのですが、横断的な効果ということで、それをいかに効率的にやるか、またそこで得られた技術、成果をより広く宇宙産業等の競争力につなげるということが重要だと考えまして、本中期計画におきましては、C-65の中段にありますように3つの観点を持ちまして研究開発を進めてまいりました。1番目は、宇宙機の競争力の鍵となる共通的で効果の高い技術に取り組むということ。2番目が自在性、自立性の観点から機器の課題について取り組むということ。3番目は、プロジェクトの確実な達成を行う中で得られた技術についてはしっかりと産業界の課題解決、より広く応用に展開していくこと、この3つの観点で本中期計画に取り組んでまいりました。
 その成果の顕著な例ということで、以下に御紹介させていただきます。まず1つ目の競争力強化でございますが、1番目は技術試験衛星9号機で実現いたしましたホールスラスタと静止GPSRです。電気推進を用います技術試験衛星9号機では、例えば従来の衛星ですと、化学推進ですと5トン級の衛星になるのですが、これに電気推進を使うと、同じだけのミッションを3トン級の衛星で実現できると、非常に効率的でございます。ただ、弱点としましては推力が非常に小さいので、ロケットで打ち上げてから静止に持っていくまでに期間が非常にかかるということ、その期間の運用にかかる費用も出てくるということ、こういうことが課題となっておりましたが、これに対して研究開発に取り組みまして、従来のスラスタ技術が、海外ではここにありますように290ミリニュートン級のものが製品でございますが、これに対して、現在の研究開発では370ミリニュートン級という大推力を達成いたしております。
 また、静止GPSRという静止に移行する軌道においても使える技術というのを開発いたしまして、自動航法することで効果的に電気推進でも軌道上まで持っていくと、こういう技術の合わせ技を技術試験衛星9号機に対して提案し、これの開発の主たる企業として選定されました企業側からは、商業展開時においてもこの技術を使っていきたいということで採用されました。
 2番目はリチウムイオン電池で、これは日本の得意とする技術ということで、これを伸ばしまして、宇宙ステーションのように米国からも評価されて、ここにこの技術が使われるというところまで持っていくことができました。
 また、3番目は将来に向けての話ですが、宇宙機の寿命を延ばしたいということで、特に課題となっておりますのは機構部品、その中でも最もキーとなります太陽電池パドルを回転させる駆動機構、これはハーモニックドライブというところなんですが、これにつきましてJAXAの研究開発の結果、従来品に対して15倍の寿命を達成するという大きなジャンプの成果を得ることができました。この機構につきましては、実質寿命はほぼ考えなくてよいという研究開発の成果が出まして、これは企業側と今製品化に向けて取り組んでいるところでございます。
 次のページに移りまして、自在性のところの例でございます。1つ目が電源用の部品です。宇宙用の半導体部品というのは耐放射線性を要求されまして、現状はほとんどが海外品に頼っているところです。その中でも、特に電源系の部品というのは全ての衛星宇宙機に共通的に使われます。そこに狙いをつけまして、日本の得意な化合物半導体技術を用いることで海外品に比べて30%以上損失が低いと。電源系の場合は特に損失が重要になってまいりますので、そこを狙って低損失の電源用部品というのを開発いたしました。これにつきましては、既に昨年度に製品化を行いまして、国内のみならず、海外からも多くの引き合いが来ているということで企業側から話を聞いております。
 また、2番目は高精度の汚染センサ、これは衛星、特に観測衛星は高性能化するに伴いまして非常にわずかなガスでも、これが観測を行う光学系に付着しますと性能低下の原因になってしまう、特に長期間使っていくうちにはどんどん性能が低下していくという問題があります。そういうことを正確に開発段階から図っていくということが重要になりますが、これも従来は米国製品1社のみが世界標準でありました。ただ幾つか問題を抱えていましたところ、国内にあります優れた技術を活用することで米国製品に比べても性能が高い、しかも約半分ぐらいのコストで入手できるという製品化に、これも成功いたしました。これにつきましても、国内のみならず、欧州の宇宙機関からも使いたいということで引き合いが来てございます。
 3番目が、こういったプロジェクトを支える技術において開発した技術を広く使っていくという観点でございます。1つ目がシミュレーション技術。これはロケットのエンジン開発に主として活用してきたものですけれども、この成果がいろいろなところから評価されまして、国が進めます水素利用事業、水素のスタンドをつくる場合の保安基準をつくらないといけないのですけれども、その保安基準をつくる上で、水素が漏えいしたときにこれが気体なのか、液体なのかによって保安距離がかなり異なるということがございますが、その現象を実験とシミュレーションで初めて可視化すること、しかも再現することに成功いたしました。これによりまして、水素スタンドの技術基準の策定に貢献しております。また、この数値シミュレーション技術のJAXAの得意なところは、物理化学的なプロセスに化学反応、特に燃焼、エンジンは燃焼いたしますので燃焼に伴う化学反応も盛り込んだシミュレーション技術、これが得意でございます。このシミュレーション技術に対して自動車業界からも着目していただきまして、エンジンの燃焼解析とか設計に使いたいということで、19件程度プログラムの利用許諾について応えております。
 そのほか、民生技術につきましては、極限技術関係でJAXAが進めてまいりました非常にわずかな熱膨張率を測定する装置、これを測定装置として製品化するということで、宇宙のみならず多様な分野において使っていただくということに反映いたしております。
 そういったことを含めまして、1つの定量的な成果といたしまして、このページの下に特許、それから受託研究件数、受託金額ということを第2期と比較する形でお示ししました。特に受託研究件数と受託研究金額は主として研究開発部門のものでございますけれども、第2期と比較していただきますと、受託研究件数では現状において既に3倍程度、受託金額につきましても現状で6倍程度ということで、これまでの取り組みの成果が出てきているのではないかと考えてございます。以上を総合いたしまして、本項目につきましては自己評価をAとさせていただきました。
 最後に1点、青色のファイル、年度評価の資料のC-84ページですが、、これは民生技術の実証機会に協力するということで、SS-520の4号機において民生技術の活用ということを行わせていただいたのですけれども、残念ながら最終的に超小型衛星自体を導入することはできませんでしたが、1段燃焼までは正常に行うということで、幾つかの民生技術につきましては健全に機能したということも確認してございます。本件につきましてはしっかりと原因究明を行いまして、今年度再チャレンジをさせていただくということで、今年度末にはしっかりとした成果報告ができるようにしたいと思います。
 御説明は以上でございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 御質疑をお願いいたします。小塚委員、お願いします。

【小塚専門委員】  御説明ありがとうございます。本項目では、かなり商業展開とか民生品への利用というようなことをお話しいただいたと思いますが、その場合の考え方、つまり移転相手方の選定の仕方とか、それから移転の条件の取り決め方などについてはどのようにしておられるか、もうちょっと御説明いただけますでしょうか。

【JAXA(今井)】  まず、JAXAで研究開発した内容の主目的は、国のプロジェクトをしっかり進めていくということでございます。ただ、それを広く応用するという観点で、JAXAの取り組み全体といたしまして新事業促進部という部門をつくりました。そこがある意味コーディネーター機能を果たしまして、いろいろ課題を抱えている企業、産業界さんからこういう課題があると、それに対してJAXAの中で適切な技術があるだろうかということについてマッチングしていただきまして、まずはそこから始まるということになります。
 次に、お互いの役割分担につきましては、それぞれ我々ができること、それから企業側からいただいた計画を精査いたしまして、これはかなりいろいろなケースバイケースがございますけれども、彼らのビジネスプランについては、その部分については企業さん側からの負担であると。それに対して、我々の技術を適用するところについては我々に受託をいただきまして、民間企業さんからの受託経費ということでそれに対応するということを基本としてございます。

【小塚専門委員】  わかりました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。梅比良部会長、お願いします。

【梅比良部会長】  いろいろ開発した技術を民生に転用して広く使っていただくというのは非常にいいことで、前中期期間に比べればかなり大きく進展しているので、これは非常に高く評価したいと私は思います。
 それで、一方で宇宙太陽光発電の話については何か粛々とやっている感じで、いろいろな技術がもしできていれば、いろいろな格好でそういう中途切り出しみたいなことができると思うので、そういうような取り組みというのはされていないんですか。

【JAXA(今井)】  その御指摘もございまして、外部委員の方に、今までは宇宙関係の人が多ございましたけれども、それ以外にもビジネスコンサルタントですとか、ベンチャー企業を見ている方にも入ってもらいまして、この技術を広く応用できないかという観点からいろいろお話をいただいて、それが一つは、我々は中間的な成果ということで、例えばドローンへの電力伝送ができないかとかそういう可能性も、そういうことを得意とされているところと話をさせていただいて、検討はしているところでございます。

【梅比良部会長】  それではまだ検討中ということで、一応取り組みは始められているということですね。

【JAXA(今井)】  はい。

【梅比良部会長】  わかりました。ありがとうございます。ぜひいろいろやっていただきたいなと思います。

【髙橋部会長】  永原委員、お願いします。

【永原臨時委員】  研究開発の成果が民生利用されて非常によく進んだ点は、私も高く評価させていただきたいと思うのですが、1つお伺いしたいのは、進展段階についてです。国内的には以前と比べると非常に進展はあるのは確かですが、国際的に見たときに国際競争力を持つほどのものなのか、それとも国際的には遅れていたものが追いついてきているということなのかというあたりはいかがでしょうか。いろいろな要素があるので一言で言うのは難しいかと思いますが。

【JAXA(今井)】  本日御紹介させていただきましたものは、まず国際的にも競争力があるものと考えてございます。そうでないと産業界としてもなかなか受けてもらえないということがございますので、ベンチマーキングもしっかりやって、その中で競争力のあるものということで御紹介させていただきました。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。藤本委員、お願いします。

【藤本専門委員】  前の意見と少し重なるかもしれないのですけれども、資料のC-62ページの最後のところに、「外部諮問委員会の助言も得て、中間段階での成果の社会実装を意識した研究の進め方を導入」という記述があるのですけれども、大変すばらしく、非常に重要な取組みだと思いますので、もう少し具体的に御説明いただけますか。

【JAXA(今井)】  この中でいただいたのは、基本的にはエネルギー伝送をここでやっておりますので、例えば電気自動車に対してエネルギーを伝送できないか、あるいは災害時等において、例えば離島とかの災害現場に対して無線で電力伝送できないか、それから近々の例では、ドローンのように飛行時間が制約されてしまうものに対して長時間滞空させて観測できるようなことができないか、そういった答申をいただいておりまして、我々のほうでそれを少しシナリオ化して技術パッケージのような形にして、そういうことをやられているところに説明に回って、御関心を示していただいたところとまず共同研究できないかというところを今御相談している状況でございます。

【藤本専門委員】  ありがとうございました。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょう。知野委員、お願いします。

【知野委員】  SS-520のことですが、実験自体は失敗したけれど、搭載民生部品が健全に機能したことを確認したという御説明をいただきましたが、超小型ロケットを、もともと衛星を打ち上げようとかそういう輸送に使おうというようなことは考えていないのでしょうか。仮に今回の実験が成功したとしても1回しか実験を予定していなかったと聞いていましたので、その辺は、JAXAとしてはどのようにお考えなのでしょうか。

【JAXA】  まずは技術の実証ということで打ち上げさせていただいて、技術移転等を含めては今後展開させていただきたいと考えています。

【知野委員】  では、超小型衛星の打ち上げに使う、安く打ち上げる手段ができるんだというようなお話ではもともとなかったということなのでしょうか。

【JAXA】  そういう技術をまず確立するというもので、このロケット自体そのものがそういうロケットになるというわけではないということです。

【知野委員】  そうすると、今回民生部品がきちんと機能したというだけで納得してよろしいのでしょうか。

【JAXA(國中)】  基本的には、こういったロケットサービスはJAXAが主体的にするのではなくて、民間企業がその担い手となるという考え方でおります。そのための技術実証として、民生機械を使ったロケット打ち上げをJAXAは主導的な立場で民間企業に貢献していると。今のところ具体的な案をお示しする段階にはありませんけれども、将来的にはこれは技術トランスファーの一環として民間企業に協力しているものです。今回のこのSS-520自体は3キロ程度の衛星しか打ち上げる能力がありませんので、これ自体で事業化が成立するとはJAXAも考えておりませんし、民間企業も考えていないので、ここで養われた技術、証明された技術を、おそらく民間企業が立案するであろう、より大型のロケット開発に仕向けられるのではないかと、我々としては考えております。でも、こういった事業はJAXAが主体で行うものではないという識別をしております。

【髙橋部会長】  ほかはよろしいでしょうか。白坂委員、お願いします。

【白坂臨時委員】  説明ありがとうございます。基本的にはいろいろな技術開発をやられていて、成果が出ていると認識しております。次に向けてさらにという希望といいますか要望というのがあります。といいますのは、私ももともと宇宙開発をやっていた人間として、外に出ると、宇宙開発をやってきた人たちに、この固有技術だけではなくて、システム技術とかプロジェクトマネジメントとか、そういったところに対する要望が、かなり強くあります。特に宇宙開発をやってきた方々というのは大規模なシステムをまとめてきた、その実績を社会は非常に高く評価しています。そういったものをぜひトランスファーしてほしいという要望はすごくありますので、そういったプロジェクトマネジメントとかシステム技術みたいなものも、これももちろん宇宙開発の中でより良くしていくとともに、ぜひ外部に、単なる事例紹介ではなくて、どういったやり方をしているのかや、どういうふうにやるとこういった高いリスクを持ったプロジェクトが回せるのかなどをぜひとも伝えてください。研究開発もそうだと思うのですが、最近は研究開発自体もなかなか皆さん苦労されていまして、かなり難しいことをやり始めています。自動車業界などもそうですが、そういったところは、宇宙開発を行っている人たちがどういうアプローチで研究開発をやっているかというところを知りたがっています。宇宙のコミュニティの中には、大変すばらしいプロマネの方々がいらっしゃって、それでシステムをまとめている方がいらっしゃるのは認識していますが、そういった方々が外部のほかの産業の方々に対してそれをトランスファーするというのを、ぜひ今後、もっともっとやっていただければなと思っています。今後の要望となります。ありがとうございます。

【JAXA(今井)】  ありがとうございます。私どももシステム関係の研究グループというのを設けておりまして、宇宙業界のみならず、自動車業界ですとか他の業界でそういうことをやられている方との意見交換というのも始めてございます。ぜひご報告できるような成果を上げていきたいと思います。

【白坂臨時委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  生越委員、お願いします。

【生越専門委員】  オレンジのファイルのC-66ページなんですけれども、特許出願件数を、ふえているということで出していただいております。ブルーのほうを見ると、この特許出願件数は国内と国外の両方をあわせた数だということが書いてあるんですけれど、実態的に国内、国外は何件ぐらいなんでしょうかということをお伺いしたくて、あと出願件数というのは、出願するだけだと1万5,000円で出願できますので幾らでもできるんですが、実際に権利をとっているとか、海外でとっているとか、さっきテクノロジートランスファーのお話がありましたが、それの前提は権利がないと企業は参入できないところがあるので、こういったところはどう考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

【JAXA(今井)】  問題は認識してございます。まず数字につきましては、ちょっと今手元にございませんが、まだ残念ながらかなりの部分は国内特許でございます。ただし、今回御説明しているように海外に対して競争力のあるものにつきましては海外特許を取るようにということで、今は鋭意取り組んでおります。
 また、御指摘いただきました全体的な戦略につきましては、知財部門がJAXAの中にございまして、ここの強化も図っておりますので、そこと連携してやっていきたいと思います。

【生越専門委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかはよろしいですか。
 それでは、次の項目に行きたいと思います。続いて、項目番号6「宇宙空間における法の支配の実現・強化」についてお願いします。

【JAXA(山本)】  JAXAの企画・国際担当理事の山本でございます。よろしくお願いいたします。
 本件についてはちょっと特殊な表題になっていますので、資料の説明の前に若干背景を説明させていただきたいと思います。言うまでもなく、近年、先進国だけじゃなくていろいろな国が宇宙に参画しておりますし、国家機関だけではなくていろいろなベンチャー企業も参加すると。中にはたくさんのコンステレーションの小型衛星を打つというような極めて急激な変化が起こっている時代を迎えております。
 このことから、各国が安定的に宇宙を活用するためには、一定の国際ルールを守っていかなければなかなか安全的な運用ができないということで、そういう観点で法の支配の実現という言葉を使って活動しているところであります。これは、宇宙基本計画の中にもこういう活動についての重要性が指摘されているところであります。
 この項目は年度評価、それから見込評価ともにA評価でございまして、重複する部分もございますので、主としてオレンジ色のファイルを中心に説明させていただきたいと思います。
 1点だけ、E-33ページの評価軸のところで、法の支配ということでございますが、やはり評価軸としては、政府によります外交あるいは安全保障分野に対して、JAXAがどの程度貢献してきたかといったところが評価軸になっております。具体的には、A評価をさせていただいておりますので、そのA評価をした根拠につきまして34ページ、35ページを中心に御説明させていただくことにしたいと思います。
 まず、評価の根拠でございますが、1ポツと2ポツに分けて整理しております。特にこの5年間というスパンの中で何が新しく変わったかということでございますが、1.外交・安全保障に関しましては、特に中期計画の途中に、日米間の大きな枠組みでございますが日米安全保障協議委員会、いわゆる2+2を含めます大きな枠組みが成立いたしまして、宇宙に関するさまざまな議論がなされ、特に日米におけるSSA(宇宙状況把握)に対する協力が大変大きく前進しました。この中で、言うまでもなくJAXAは日本側の実施機関といたしまして、カウンターパートであります米国側の実施機関、これはSSAのデータを最も世界的にも保有していると言われておりますJSpOCという機関との間でMOUを結びまして、情報の交換、あるいは情報の共有を開始しております。
 このようなことが、我々が運営しております衛星に対してデブリの衝突の回避を提言するわけですけども、新しい情報を活用しまして大変事業的にも前進したというのが(1)の1ポツ目でございます。
 それから、引き続きまして2ポツ目は、米国が主催する多国間のSSAという枠組みでございますが、特にテーブルエクササイズと称する机上での演習というのが計画されておりました。なかなかこれは日本の中では経験がなかったのですけども、この中期計画期間で初めて参画いたしまして、特にJAXA側は技術的な支援ということでこの会議に出席いたしまして、日本側としても非常に重要な解析なりデータが提供できるんだということを示すことで日本のプレンゼンスを発揮できたということを1つの成果として整理しております。
 それから3ポツ目がさらに具体的な設備の整備ということになりますが、宇宙基本計画の中にも明記されております30年代半ばまでに国としてのSSAの施設をつくって運用を始めるんだといったような政策に呼応して、JAXAといたしましては28年度から新しくSSAの設備の整備に入ることができました。
 それから(2)は、もう少し幅広い国際的な外交といたしましてJICAとの協力を挙げております。JICAというのは言うまでもなく途上国に対して人材育成あるいは資金の援助といったようなところを受け持つところでございますので、技術的な面と、そういった政策的な面が相互に補完し合いまして、いわゆる外交的なプレンゼンスを発揮するという活動を展開したという意味でございます。
 それから、後段はちょっと文章がわかりにくいのですが、国連が最近主張しております持続可能な開発(Sustainable Developments Goals:SDGs)というものに対しても、我が社が持っておりますいろいろな観測能力を発揮して、こういったアジェンダに対する貢献を発揮できているということでございます。
 それから、35ページに移りまして、ここは国連における宇宙空間平和利用の促進ということで、先ほども若干例が出ましたが、JAXAあるいは日本の強みであります「きぼう」からの小型衛星の放出という機能を十分に活用いたしまして、国連宇宙部と協力したプロジェクトでございますが、途上国の打ち上げの機会を提供したということですが、特に重要なポイントは2行目の後段にあります、選定に当たりましては、小型衛星といえども宇宙物体に対する登録あるいはその周波数の申請等々国際法を遵守しないといけないということを徹底いたしまして、広く法に対する認識を共有させていただいたということが重要なポイントだと思っております。
 最後に(2)でございます。この中期期間中のこととして2つ、JAXAの人材が国際的に活躍したということで、特にこの国連の宇宙空間平和利用委員会におきましては堀川技術参与が議長に就任し、この当時は先進国と途上国の間でかなり火花の散る議論がされたと聞いておりますが、その中でも、先ほどから出ておりますが、いわゆるSDGsと称して発展しております持続可能な開発に関する議論というものをCOPUOS(国連宇宙空間平和利用委員会)の主要なテーマにすることを堀川議長が提案し、有効な議論がされたという結果が残っております。このあたりも含めまして、第2回の宇宙大賞の中で外務大臣賞を堀川技術参与が受賞しております。
 それから今年の3月、COPUOSの科学技術小委員会におきまして向井技術参与が小委員会の議長に就任したということで、あわせて彼らの議長という職をJAXAとしても後押しし、国際的なプレゼンスの向上に貢献したというところをもってA評価とさせていただきました。
 なお、最後に年次評価につきましてもA評価にしておりますが、このオレンジのページでいいますと(1)の3つ目のポツ、それから1ポツの(2)の部分、それから35ページの2ポツの(1)、このあたりが年度評価にも共通した事項でありますので、説明を割愛し、A評価ということで説明にかえたいと思います。よろしくお願いします。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、御質疑をお願いいたします。よろしいでしょうか。では、白坂委員、お願いします。

【白坂臨時委員】  説明ありがとうございます。ちょっと控え目に評価されていると感じたのは、中期計画に全くなかったような、例えばSSAのように急激に立ち上がってきて、おそらく中期の中では明示的になかったものに対して、かなり積極的なアクティビティをやられていますし、SDGsももしかしたらなかったのかもしれないのですが、全く中期にはなかったものの活動をちゃんと取り込みながら、一方でCOPUOSの中では単なる支援ではなくてちゃんとリードするようなことまでやっているのにAというのはSで出してきてももしかしたらおかしくないのかもと聞きながら、中期の目標を見ながら思ったのですけども、そのあたりはどのようにお考えですか。

【JAXA(山本)】  大変ありがとうございます。私どもも、もちろんこの活動につきましては、E-34ページにありますとおり、過去4年間にわたりましてAとさせていただいてきております。もちろん今おっしゃっていただいたとおり、もともと中期をスタートする時点に想定しなかったようないろいろな変化が起こった中で、かなりの力を入れてきたということに対して高く評価していただくことは大変ありがたいのですけども、ここは過去の経緯も含めてA評価とさせていただきました。

【白坂臨時委員】  わかりました。ありがとうございました。宇宙政策委員会の方ではSSAというのは急激に立ち上がってきていまして、そういった一方で、やはりJAXAさんが中核として動かないといけないという期待感もある中、本当にそこをしっかりとやってきたのは、中期の全体でAとしても、例えば年度でSにするとかいろいろなことも考えられるのかなと思ってコメントさせていただきました。

【JAXA(山本)】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  小塚委員、お願いします。

【小塚専門委員】  SSAの重要性については私もよく認識していますし、ぜひ進めていただきたいのですが、一応「法の支配」という項目のもとで伺いますと、SSAが法の支配の項目の中心的事項であろうかという点が少し気になりまして、本来法の支配ということで言うと、今御説明いただいた中期見込の方では2.として書いておられる国連等における議論をリードするということであると考えられます。堀川参与も向井さんもすばらしい方で、非常に国際社会から信頼を受けているとは思いますが、日本のプレゼンスとして見たときに国際枠組みづくりに対してどれぐらい主導的立場がとれているのか。これはもちろんJAXAは外交の主体ではありませんので、あくまでも外務省が表に出ることではありますが、近年COPUOSで議論になりました、例えば小型衛星の管理の問題とか、例えば宇宙資源開発の当否の問題ということについて、日本がどれぐらい主導的な立場を、スタンスをとれているかということをもう少し伺えますでしょうか。

【JAXA(山本)】  この後ろのページに書いていますけども、基本的にはデブリに対する対応の仕方、そのあたりを中心にJAXA側の、JAXAといいますか日本側の考え方について主張し、それが今後一定のルールとして制定されることをまずは柱としてやっていっているところです。おっしゃっているとおり、もう少し幅広い議論があり、資源の探査の話についても、例えばルクセンブルクとアメリカしかまだ内部的な法がないとか、いろいろな問題を抱えているところは承知していますけども、そういうことでお答えになっていれば幸いです。
 それからもう一つ、やはりおっしゃるとおりなかなかSSAの話というのと法の支配というのは結びつきにくいのですけど、そういう意味もあって一番最初に評価軸のところで若干のエクスキューズをしたんですけども、E-33ページの右のオレンジのボックスの一番上に評価軸というのが載っていると思いますが、幅広い意味での政府に対する外交あるいは安全保障にJAXAがどう貢献したかという評価軸になっていることもあり、若干SSAについても触れさせていただいたというところであります。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。そうしますと、SSAの問題も、あるいは国際的な場面での議論についても、主としてデブリの問題にフォーカスしているという意味で、JAXAとしては宇宙空間の宇宙活動に関するルールづくりというのがこの法の支配の項目の一番重要な部分であると、そうお考えになっていると理解してよろしいでしょうか。

【JAXA(山本)】  はい。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、一旦ここで休憩に入らせていただきたいと思います。ちょっと短いのですが、4時25分に再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。


( 休憩 )


【髙橋部会長】  それでは、再開したいと思います。
 続きまして、項目番号7「衛星測位」、8「衛星リモートセンシング」、9「衛星通信・衛星放送」の3項目につきまして、続けて御説明をお願いいたします。

【JAXA(舘)】  JAXAの技術参与の舘と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料に従いまして御説明いたします。まずB-1、衛星測位でございます。B-3を見ていただきますと、私どもの年度評価についてはBといたしました。そして見込評価をAといたしました。
 その背景でございますけれども、「みちびき」につきましては非常に地道に精度を向上させているという点と、研究の成果としてMADOCAという測位を正確に推定するシステムについても、地道に前中期計画から進めているのですが、やはり高い精度を求めて地道に来たということで、結果的に非常に高いものが生まれているということで見込評価をAといたしました。
 それについて詳しく御説明したいと思います。まず、「みちびき」の社会浸透でございますけれども、こちらにつきましては、「みちびき」は今年の2月28日に内閣府に移管いたしまして、これが実用ミッションを担うということでございます。
 一方で、測位の信号につきましては、高い稼働率とともに、信号の精度でありますSIS-UREという、これは衛星の軌道推定とクロックの持っている誤差からなりますけれども、打ち上げた当時は約80センチでございました。それが地道に軌道の精度を高めることで、現在は40センチまで向上させてきました。これは地道な努力によってここまで持ってきたということで、結果的には、これはGPSの平均でございますが、こちらに対して比較しても十分優れたものになってきているところでございます。
 この「みちびき」を使ったチップベンダーでございますが、世界のチップベンダーがこの「みちびき」について対応したラインアップをしています。したがいまして、皆さんが使っています、例えばモバイルフォンとかなんかにも「みちびき」が入っているということです。一方、最近では補強信号L1-SAIFというやつも含まれたチップも出てきているということで、非常に社会に浸透しているというのが、まず挙げられるかと思います。
 さらにはトップクラスの研究開発の成果ということですが、MADOCAというのは精密な軌道とクロックを推定するシステム、これは「みちびき」だけはございません、GPSあるいはGLONASSというものについての軌道を推定するものでございます。そして、これを使うとそれぞれの正確なユーザーの位置がわかるということでございまして、JAXAは世界に90カ所ぐらいの拠点を置きまして、そのデータをもとにそれぞれの衛星の個々の軌道推定とクロック推定をやりまして成果を出しております。それがB-4ページに表としてなっていますが、このレベルでいきますと世界トップクラスの精度が出ております。これは上段がGPSで、下段がGLONASSというロシアの測位衛星でございます。このようにしまして非常に高い精度を達成したということです。
 その結果、B-4ページを御覧いただくとわかると思うのですが、成果がユーザーのレベルで言いますと、B-4ページの下の丸2と書いているところございますが、ユーザーレベルでも水平で3センチ、垂直で6センチというのを達成しております。もちろん受信機そのものは通常の受信機ではございませんので、今は専用の受信機が必要となります。
 このMADOCAの補正信号は、「みちびき」から直接送る方法と、インターネットから送るということもしております。現在、リアルタイムでは「みちびき」から送っておりますし、インターネットで配信もしております。
 続きまして、B-5ページでございますが、こちらでは「みちびき」に対応するチップが表として出ておりますけれども、御覧いただくとわかるとおり、一昨年あたりから100%「みちびき」対応のものがラインアップされております。
 こういう成果がありまして、軌道推定のところでございますけれども、3のポツの(2)でございますが、こちらのほうはMADOCAをベースにして配信するということで、これが内閣府さんのほうで検討されています。移管後も初号機について、MADOCAのプロダクトを利用することが検討されているという状況でございます。
 また、企業関係ではITSに向けたサービスとして、MADOCAのアプリケーション事業が民間主導で立ち上がっております。最近ではグローバル測位サービス株式会社が設立されたと聞いております。さらには、産学官連携でMADOCAを使っていこうということで、利用検討会も設立されているという状況がございます。
 以上のことにより、当初予定したものよりも非常に進んでいるということで、全体の成果としまして見込はAといたしました。
 年度評価でございますが、かぶっている内容がございますので、こちらのほうは省略させていただきます。
 続きまして、衛星リモートセンシングです。B-6ページ以降になります。
 B-11ページを御覧いただければと思います。見込評価はS、年度評価はAといたしました。まず、見込評価Sのほうから御説明したいと思います。
 今中期計画ではGPM/DPRとか「だいち2号」(ALOS-2)の打上げがございました。民間企業との連携などによって、衛星のデータがほぼ倍の規模で利用されるようになりました。
 さらにALOS-2につきましては、防災機関と連携して、発災後の状況把握はもとより、予兆を検出して入山規制などに使うということにも生かされております。また、GCOM-Wという、これは「しずく」と言われている衛星でございますが、こちらは気象庁だけではなく世界の気象機関が使っているということで、衛星データ自身が社会インフラ化したと考えております。
 さらにはGOSATにおける国別の二酸化炭素の排出量の把握とか、衛星の全球降水マップ、後ほど御説明いたしますが、これが世界で活用されているということで、我々としては、国際的な社会問題にも活用されるようになったということでSという評価にしております。
 具体的に説明させていただきますと、まず、B-11の1というところでございます。衛星データ利用の拡大ということで、ここに書いてありますようにGPMあるいは「だいち2号」が打ち上って、衛星データの利用が年平均で2倍となりました。その背景には、いろいろなデータの利用が拡大したというところがあるかと思います。さらには、民間企業と連携して「だいち」のデータを使った3Dの地図がございます。これも後ほど御説明したいと思います。あるいは「しずく」を使ったり、複数の衛星を使った全球降水マップ、これは私どもはGSMaPと呼んでいますが、これがさまざまな分野に利用されるようになりました。そういうことが大きな効果になっていると思っております。
 ここにはGCOMのユーザー数登録が書いてありますが、これは後ほど御説明したいと思います。
 続いて、衛星データの社会インフラ化でございますけれども、こちらにつきましては「だいち2号」でございますが、非常に微少な地殻変動等を捉えることができていまして、これによって、従来の航空機とか地上では観測できなかったものが面的な監視、あるいは広域な監視ができるということでございます。
 これらのデータにつきましては、国土地理院さんを通じまして地震予知連、気象庁を通じまして火山噴火予知連等において定常的に使われております。このデータを使ったことによって箱根とか桜島の火山の監視、あるいは入山規制、あるいは熊本地震への対応ということにも、なくてはならないというものになってきております。
 続いて、12ページの「しずく」でございますが、「しずく」は気象庁、NOAAといった世界の機関が使っているということで、先ほど申したとおりで、世界中の750機関がこれを使うようになっております。気象機関だけではなくて、船の安全航行ということで海上保安庁さん、さらには漁業情報サービスセンターさん、通常JAFICと呼んでおりますが、ここでは漁場の把握とか管理のために使っております。JAFICさんでは提供サービス、これはエビスくんというのが漁船に搭載されているのですが、この利用数が、打ち上げ前の370隻に対しまして2015年6月時点で660隻ということで、試算によりますと年間の燃料代が40億円ほど削減されているという報告がございます。
 続いて、衛星データの国際的な社会問題解決に活用ということでございますが、こちらにつきましては「いぶき」(GOSAT)ですが、CO2の観測に加えて全球のメタンの観測も世界に先駆けてやっております。地域別あるいは季節別の放出量の変化を明らかにしております。人為的なCO2の排出量ということでは、国レベルで排出量の監視・検証が衛星でできるのではないかというのを世界で初めて明らかにしております。今後、パリ協定に基づきますと各国が温室効果ガス排出量の報告が義務づけられていることから、「GOSAT」シリーズによる温室効果ガス排出量の監視・検証が世界的な標準になるような活動を、環境省さんとともに働きかけることとしております。
 続いて、複数データの活用でございますが、こちらについてはGSMaPというのがございますので、後ほどこれを、図を通じて御説明したいと思います。
 また、下のほうに米印の1~5がございますが、こちらはそれぞれ宇宙開発利用大賞等々の賞をいただいたものでございます。
 それでは、図で御説明したいと思いますので、B-17ページを御覧いただけますか。これは「だいち2号」を使った箱根の入山規制の例でございます。通常ですと火山噴火後にどういう噴火状態だったかというのを調べて、それを解析に使って次の対応に使うというのが通常でございましたけれども、この箱根の場合につきましては噴火の予兆からずっと見ておりまして、それを解析することによってその情報自身を箱根町に出しまして、地方自治体が判断してこれを入山規制に用いたということで、今までにない、事前に減災とか予防に使われたという初めての例だと思っております。
 続きまして、B-24ページでございます。こちらは温室効果ガスの観測結果でございます。こちらも先ほど申しましたようにメタンの排出量ということで、GOSATは二酸化炭素だけじゃなくて濃度が非常に低いメタンも観測することができまして、それが大陸レベルでございますけれども観測して、これを公表しております。特に人為的なメタンがどうなっているかというのをアジアのところで示しておりますが、このあたりで人為的なメタンを出しているということがわかっております。これの解析は国立環境研究所さんが行っておりました。
 続いてB-25ページでございますが、ここにつきましては二酸化炭素ですが、二酸化炭素の話として右側のところですが、これはインベントリと申しまして排出を計算している従来のやり方に比べて、GOSATを使ったときにどうかということですが、日本付近で誤差が多いのは、どうしてもデータ数が少ないのでこういう誤差が多くなっておりますけれども、東南アジアあるいは南アジアについては、ほぼインベントリ、これは地上の観測から得られたものと「いぶき」から得られたものがほぼ等しいということで、地上の観測点が少ないので、GOSATを使って世界を見ると、全体が国レベルでもわかるということを示した1つの例でございます。
 続きまして、B-28ページでございます。これは複数の衛星を使って雨を観測しております。従来は1時間の雨量を4時間ごとに出しておりましたけれども、これをもう少し早くするということで、ここにGSMaP_NOWということで、これは「ひまわり」のデータを入れまして1時間の雨量を30分ごとに更新して、それを世界に発信しています。こうすることによってユーザーの登録数が飛躍的にふえております。これは特に東南アジアを含めた地域とか、あるいは小笠原なんかの地上レーダーがない場所において、地上レーダーの代わりに使うとか、島のところにおいても実際の現在の降水量を見るのにこれを使っているという実例がございます。あるいはいろいろな形で、右下の民間が保険として使うという例もございます。このように従来我々が予想してなかった利用が出てきたというところが新しいことかと思います。
 さらにはB-29ページを御覧いただきますと、「だいち」という衛星自身は既に停波しておりますけれども、「だいち」はたくさんのデータをとられていまして、このデータから3次元のデータをつくるということで、ほぼ全世界の3次元のデータをつくることができました。これは私どもがアルゴリズムをつくりまして、企業さんがこれを世界に販売するという、いわゆるJAXAと企業さんとのコラボレーションでこれをやっています。そうすることによって飛躍的にいろいろなところで使われるということで、ナイジェリアでのポリオウイルスを例に挙げると、これは下水等の流れがどうなっているのか、地図がない国ではわからないのですが、これが5メートルの分解能で世界最高レベルの解像度でいくとその流れがわかって、ここにはつくっちゃいけないよとかそういうものに使われていると聞いております。3次元データは民間利用で我々の気づかないようないろいろなアイデアが出てきて使われているということで、これは非常に企業さんと組んだいい例だと思っております。
 続きまして、B-31、32ページです。これは「しずく」の例でございますけれども、「しずく」は先ほど言いましたように世界の気象機関に使われております。NOAAはアメリカの気象機関で、こちらのほうは受信機を自分たちで準備して受信しているということで、いかに彼らが「しずく」をを重要視しているかのあらわれだと思っております。それをあらわしたのがB-32ページで、非常にユーザー数がふえているというのも一目瞭然だと思っております。
 続いて、年度評価に触れたいと思いますので、大変申し訳ございませんが青色のファイルについて少し触れさせていただきたいと思います。ページで申しますとB-12ページでございます。
 こちらに幾つかA評価とした根拠が書かれてございますけども、これは28年度に行われたことなのですが、「だいち」による社会インフラ化ということで、防災機関にタイムリーにデータを出した話とか、あるいは先ほど言いました「いぶき」の話が出ていますが、その中でも幾つか御紹介したところがございましたので、触れたいと思います。
 実際の事例をもって説明したいと思いますので、大変恐縮ですがB-24ページを御覧いただけますか。これは私どもではなくて国土交通省さんによる東北地方を襲った昨年の台風10号の例でございますけれども、この表を見ていただくとわかるかと思うのですが、29日にJAXAから観測可能域の情報を提供いたしました。岩手県で大雨が降ったということで、JAXAと観測域の調整を行いまして、JAXAに緊急観測依頼が来たのが19時です。22時40分に観測をやりました。これはよくわかるかと思うのですが夜中です。合成開口レーダーですから昼夜拘わらず、しかも多少の雨だったら大丈夫ということで観測をやりました。その観測を、我々はそれから判読できるようにスピードアップもいたしまして、5時にはこの結果を国土交通省さんに渡しました。そして、このデータをもとに彼らは被災場所へヘリを出すということに使ったという例です。これは防災への緊急的な対応に使えるという1つの例だと思っております。
 次のページに我々が解析、1次的な解析なので全てが当たっているわけではないんですけれども、こういうように即時に対応して防災ヘリを飛ばすということができた1つの例として示しております。
 さらに例としましてB-35ページになります。これは国際的な対応として、JICAと組みまして熱帯雨林の早期警戒システム、JJ-FASTと呼んでおりますが、これを昨年から運用しております。これは熱帯雨林のところは違法伐採等を取り締まるということが大事になりますけれども、雨などにより熱帯雨林というのはなかなか観測ができないところですが、これは先ほど言いましたように合成開口レーダーでございますのでそれが見られるということで、この合成開口レーダーを使ったデータをアフリカあるいは南米に今展開しておりまして、今年度ではもう全世界の熱帯雨林のデータを提供する用意ができております。これはホームページ上でこういうように見えております。
 最後はB-36ページでございますが、こちらは先ほど申しましたようにGSMaP、雨の情報につきましてはフィジーとかそういう島国で天気予報のかわりに使っているという事例でございます。
 リモートセンシングについては以上でございます。
 最後に衛星通信・衛星放送の話をしたいと思います。オレンジ色のファイルに戻っていただきまして、B-34ページを御覧いただけますか。34ページを御覧いただきますと、JAXAが持っている通信放送衛星ですが、これにDRTSがありますので実際には5つございます。そのうちDRTSとWINDS、ETS-Ⅷはほぼ後期運用段階、EST-Ⅷは今年1月に停波いたしました。一方で、新しいものは今まさに開発中でございまして、データ中継衛星と次期技術試験衛星9号というのを立ち上げて、開発しているところでございます。
 全体の評価としては、B-35ページでございますが、この期間でそれほど進展しているわけではないのでBといたしました。あと、年度評価についてもBということにしております。
 具体的な内容でございますけれども、B-36ページは技術試験衛星とデータ中継衛星が書いてございます。B-37ページを御覧いただけますか。ETS-Ⅷでございます。ETS-Ⅷは10年間の寿命を達成、これは、もともと設計上、バス機器は10年もつということを設計したので、設計寿命を全うしまして今年1月10日に停波いたしました。その間いろいろな利用をされていますけれども、後期利用段階という形での利用で、そんなに多数の利用はされておりませんでした。
 続いてWINDSでございますが、WINDSにつきましても、今センチネルアジアとか、あるいはDMATという災害派遣医療チームのところで訓練等に使っています。実際に熊本地震のときにはこのチームが被災場所に入りまして、この装置を持って入っています。これは移動する装置で、大体300キロぐらいの装置なのですが、それを分割して持って入ることができます。ということで、こういう形でここに書いてありますように、5時間後にDMATがWINDSの地球局を持って入ったということでございます。こういう形で今利用は進めております。
 一方で、ここで停波されたETS-Ⅷの話でございますが、38ページに書いてございますけれども、ETS-Ⅷの成果としてこれらの企業さんが衛星を受注しているということで、ETS-Ⅷの基礎的な技術が生かされたということをここに示してございます。
 続いて、年度評価のほうに行かせていただきまして、青色のファイルのB-47でございます。ここに光データ中継衛星と技術試験衛星9号について多少触れておりますので、御説明したいと思います。
 今現在、光データ中継衛星の核となっております光アンテナを開発しております。このアンテナを使って光を使う理由は、一定8ギガbpsと非常に高い伝送に使うという狙いがあって、その背景には先ほどのレーダー衛星のさらに次世代の先進レーダー衛星とか、先進光学衛星に対応するために、こういう光を使ったアンテナの開発を今やっております。
 一方、次の49ページでございますが、次期技術試験衛星ですが、先ほど研究開発の話にもあったかと思うのですが、技術試験衛星9号ではホールスラスタというものを使いまして、一言で言うとオール電化衛星です。化学燃料を使わずに電気の推進で進めるということで、全体的に燃料が少なくて、重量が4割ぐらいカットできるという優れたものでございます。これをいきなり次世代の通信衛星にできないので、技術試験を着実に進めた上で、それを今度は企業さんのほうで通信衛星等々に役立てていただくということで、これの進め方も従来とは違って、JAXAが開発してから企業さんという形ではなくて、あらかじめ企業を選定いたしまして、企業さんと一緒になってやるという新たな取り組みを始めました。ということで、今現在、このEST-Ⅸが開発途中にあるということでございます。途中段階ですので、成果そのものについてはご報告できない状況でございますが、一応こういうようなことで衛星通信と放送は進めているということでございます。
 説明は以上でございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、御質疑をお願いいたします。梅比良部会長、お願いします。

【梅比良部会長】  ALOS-2の利用がすごく進んできたというのは非常に高く評価できるかと思います。一方で、例えばさっきの3D地図の話だと、JAXAと民間企業が一緒に協力しながらやっているような格好なんですけども、そういった契約関係とかライセンスのようなものはどういうやり方でされているんでしょうか。

【JAXA(舘)】  地図をつくるソフトウェアはJAXAがつくって、それを使って私どもは全体の衛星から立体視のデータをつくります。それを企業さんが売るという販売の契約になって、我々はそれのかわりにロイヤリティの収入をいただくという形になっています。

【梅比良部会長】  げすな質問になって恐縮なんですけども、例えば幾らかで売ったらその何割かがJAXAに来るという感じですか。

【JAXA(舘)】  はい、まさにそういうやり方です。

【梅比良部会長】  なるほど、わかりました。

【髙橋部会長】  ほかにいかがでしょうか。末松委員。

【末松専門委員】  同じ測位の話なのですけれども、いよいよ今年度2号機、3号機と打ち上げるようになって、非常によいタイミングでこういう評価になったのではないかなと思います。特にチップベンダーさんが「みちびき」対応のものをかなり入れてくださったというのは非常に大きくて、これに対しての働きかけというのはかなり大変だったと思うのですけども、具体的にJAXAさんとしてどんなことをされたのかをお聞きせいただけますでしょうか。

【JAXA(舘)】  まず、使ってもらうためにこういう信号ですというマニュアルをつくって、しかも英文で出していくということを最初にやりました。そうすることで普及していくと、それが1つ普及すれば次が出てくると。ベンダーさんにとってみればいろいろな衛星データを使ったほうが精度が高くなるので、もちろん精度が悪いとよくないので、精度も含めてそういうマニュアルをオープンにしていくということに最初から取り組んだというのがコアだと思います。

【末松専門委員】  特にほかのシステムに比べて、日本のあたりでないとなかなか使えないというシステムにもかかわらず入れてくださったという面で、かなり大変なことだったんじゃないかなと思いますし、そういう面では非常にご努力された成果ではないのかなと思うので、評価としてAとされるというのは非常によくわかりました。こういう成果は、単年度でずっとBになってしまっているんですけれども、衛星が打ち上げられる今年度の成果で評価を上げるのか、昨年度の段階で単年度で上げるのがいいのかというので悩むかとは思うんですけども、そこら辺はどんなふうにお考えなのでしょうか、単年度とトータルとしての評価ということに関して。

【JAXA(舘)】  例えば今のチップベンダーの話だって、100%になったのは27年ですから一昨年度になっちゃうので、じゃあ、一昨年度の成果かというふうになるのですが、ちょっとそこは一個一個地道にやっていった成果なので、なかなか単年度で切るのは難しくて、例えば先ほど申しましたように精度を上げていくのも、最初は80センチ弱の精度だったのをどんどん毎年上げていった結果としてよくなっているので、どこかで区切るというのはなかなか難しくてBという状態が続いていたというのが今の実態です。

【末松専門委員】  全体としての成果はすばらしいと思いました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかはいかがでしょうか。藤野委員、お願いします。

【藤野専門委員】  通信放送のところで次期技術試験衛星を検討されるということで、災害時のインフラとして非常に重要だと認識しております。
 B-47ページのところの説明ぶりで仕様設定を行ったと書かれている部分について、若干意味がとれなかったので、補足説明をお願いします。

【JAXA(舘)】  主な仕様としては、例えばどれくらいの性能が要るとか、例えばホールスラスタを使うのにどうしたらいいかとか、あるいはバッテリーを使うのにどうしたらいいかとか、そういうのを企業さんの意向とJAXAの意向があって、それでどれぐらいにしましょうという検討をしているというのをやっています。

【藤野専門委員】  でも、衛星バスに関してその詳細を検討しているという話ですね。

【JAXA(舘)】  そういうことです。

【藤野専門委員】  わかりました。

【髙橋部会長】  知野委員、お願いします。

【知野委員】  ETS-Ⅸですが、、今回、まず企業を選定された新たな取り組みという御説明を伺いました。これはH3ロケットでもとられているやり方だと思います。H3の場合には企業と一緒に進めることで国際競争力を持たせるために価格を半減させるという目標を掲げていますけれども、ETS-Ⅸの場合には産業競争力というと漠然とした感じもするのですが、何を具体的な目標に掲げているのでしょうか。

【JAXA(舘)】  具体的には企業さんのほうが、これを使った通信衛星あるいは実用衛星を年2機受注するというのを発表しております。したがって、産業競争力としては国際的な需要があると思うのですが、その中でも年2機はとっていくというのを表明していますので、まさに産業競争力に役立っていると思っています。

【髙橋部会長】  ほかはいかがでしょうか。白坂委員、お願いします。

【白坂臨時委員】  御説明ありがとうございます。すみません、2点ありまして、1つ目が測位の方ですが、準天頂は順調にどんどん性能が上がってきてすばらしいと思っています。ただGPSも世代がどんどん進んでいき、1、2、3と来ている中で、では、準天頂も今のこのシリーズではなくて次の世代だとか、やっぱりどんどん先を世界は目指すわけで、その中で準天頂も同じく先に追いつくのか、先を走るのかわからないですが、そういった意味で個々のものを改善するのではなくて世代を変えるような準天頂、次の準天頂というところの研究みたいなことはされているのでしょうか。

【JAXA(舘)】  オレンジ色のファイルのB-5に書いてありますけれども、将来の測位ということで研究開発を内閣府さんから受託しております。ですから、将来的にはそういう研究の検討の中で進めて、次の世代をどうしたらいいかということで進めていきたいと思っています。

【白坂臨時委員】  何となくこれを見ると、何かちょっと小さい範囲のことをやっているように見えたのですが、そうではなくて次の……。

【JAXA(舘)】  ことも想定した上でと。

【白坂臨時委員】  想定してということですね、わかりました。ありがとうございます。
 すみません、もう一点、通信衛星の方で光データ中継衛星ですが、これも世界的な競争といいますか、ヨーロッパもアメリカもやっていますが、ベンチマーク的にはどれぐらいのものなのかちょっとわからなかったんですが、世界のトップクラスのレベルで、ヨーロッパとかアメリカに対してどういう点で勝っているといいますか、そのあたりで何かございますか。追いつこうとしているのか、抜いて先を行こうとしているのかが資料からは見えなかったのですが。

【JAXA(舘)】  基本的には同等レベルだと思うのですけれども、1.8ギガで、ただヨーロッパとは周波数帯が違っていますので、そのあたりを生かしていきたいかなと思います。

【白坂臨時委員】  重量ですとか、つまりユーザーからするとそういったところも気になるかなと、そのあたりも大体同じようなものと考えてよろしいでしょうか。

【JAXA(舘)】  それはまだ検討中なので、例えば軽くなっているとかそういうのは次の世代なのかもしれません。まだ試験という形です。

【白坂臨時委員】  わかりました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ほかはよろしいでしょうか。梅比良部会長、お願いします。

【梅比良部会長】  「みちびき」の関係なんですけれども、40センチという精度までいって、これは地道な改善でやったんで、単年度はBだけどもトータルではAですという自己評価ということなんですけども、これはやはりもうちょっとわかるようにしていただけないだろうか。例えばこういうものと、こういうものと、こういうものができたのでトータルとして、前はこうだったんだけども今はここまでいきましたというようなことが、これからはなかなかそう読み取りにくいんです。それをはっきりさせていただくようなことはできませんでしょうか。

【JAXA(舘)】  はい、わかりました。ちょっと検討させてください。

【梅比良部会長】  済みません。

【髙橋部会長】  私もそれは思っていまして、やはり年度評価が全てBで、期間評価がAというのは、そこのしっかりとしたロジックといいますか、わかりやすい説明が要るのかなと思います。
 測位衛星に関していうと、高い精度というのは大変評価できるのですが、いつでもどこでもという持続的な測位、米国のGPSに頼らない自立した測位、この持続的で自立したという観点がもう一つの大きな柱と思うのです。ですから、高い精度だけできても、それがある期間、ある場所だけでしかサービスが提供できないのであれば、まだ大きな課題があると思われます。持続測位と米国GPSに頼らない自立性の確保ということもしっかりと課題として表した方が良いのかなとは思いました。

 【JAXA(舘)】  今ここに書いてございますけれど、MADOCAのベースとしたセンチメータのデータを配信することは内閣府さんのほうで検討されていますから、実用の準天頂からも同じようなMADOCAの信号は出せると今思っています。

【JAXA(山本)】  基本的に国とJAXAの役割分担があって、そういう将来の構想をどうするべきかというのは内閣府を中心にやられているのですけども、もちろん先ほど質問があったように将来のためにどういう研究をしないといけないかという観点では、JAXAの貢献も非常に重要だと思っておりますので、今おっしゃっていただいた、まずは今年度打ち上げて4機体制、その4機体制というのは確かに1機が上空にいるんですけど、まだまだ自立状態でないので、次に7機体制に移るということを聞いております。その7機体制に向けてはどういう研究開発があるかというのが先ほどの質問に当たるのですけども、JAXAとしても3つほどの新しい要素を提案いたしまして、それでさらに第2世代の準天頂の精度向上に向かうべく研究開発しているところです。

【髙橋部会長】  よろしくお願いいたします。
 それでは、次の項目に移りたいと思います。続いて、「宇宙輸送システム」について御説明をお願いいたします。

【JAXA(布野)】  輸送系を担当しております理事の布野でございます。よろしくお願いいたします。
 資料はオレンジ色のファイルA-13ページをお開きください。まず、宇宙輸送システムの中期計画でございますけれども、宇宙輸送システムの自立的な宇宙輸送能力を保持していくというのが大きな目標でございます。まず、液体燃料ロケットに関しましては自立的打ち上げ能力の拡大、それから国際競争力の強化のためのH3の開発を着実に進めるということ。それからH-ⅡA/Bロケットに関しましては、一層の信頼性向上を図るとともに、世界最高水準の打ち上げ成功率を維持すること。それからH-ⅡAロケットについては、打ち上げサービス国際競争力を強化するということがうたわれております。
 さらに、固体燃料ロケットに関しましては、これはイプシロンでございますけれども、革新的な運用性を有するイプシロンの研究開発、それから打ち上げ需要に対応するために高度化の開発を行うということ、それからH3が立ち上がったということで、H3との固体ロケットブースターのシナジー効果の検討を行うというのが主な中期目標になってございます。
 それに対しまして、見込の評価としてサマリーがA-16ページに書いてございます。内部評価といたしましては2つの点でS評価とさせていただいております。1つは継続的な信頼性、運用性の向上の取り組みによりまして、基幹ロケットの世界水準を凌駕する高い打ち上げ成功率・オンタイム率を維持しているということと、それから前中期期間の2倍以上の打ち上げを確実に実施したということ、これによりまして我が国の宇宙輸送システムの自立性の確保に顕著な成果を上げたという点が1つでございます。
 もう一つが、基幹ロケットの高度化開発によりましてH-ⅡAロケットの本格的な国際市場への参入を可能にするととともに、世界初のロバストな飛行安全航法センサの実用化によりまして追尾レーダー老朽化の更新費の削減につなげるなど、宇宙輸送システムの抜本的な刷新を図ったという点でございます。
 具体的にもう少し御説明させていただきますけれども、最初に宇宙輸送システムの自立性確保の確実な進歩というポイントでございますが、昨今の宇宙基本計画工程表に示すとおり、連続の打ち上げが必要となっているという状況の中、継続的な信頼性、運用性の向上の取り組みを図ることによりまして高い打ち上げ成功率・オンタイム率、具体的にはH-ⅡBロケットをあわせまして成功率は97.4%、それから過去5年間のオンタイム打ち上げ率は、気候、気象の条件は除き、機体とか設備の不具合で打ち上げがおくれることなく、決められた時刻に打ち上げている割合ですが、それが100%となっているというここと、それから前中期期間中に基幹ロケットの打ち上げは11機でございました。現中期期間、今は見込でございますけれども、今年度の打ち上げが全て予定どおりに打ち上げられた場合には23機の打ち上げになります。現状、この6月1日の準天頂衛星の2号機の打ち上げまでを含めますと17機ということで、前中期の打ち上げ実績を大きく上回っておりますし、このまま予定どおりいけば2倍以上の打ち上げをこなすという結果になることでございます。
 これを実現するための具体な取り組みといたしまして、主なポイントとして3つ挙げてございます。1つは打ち上げの設備でございますけれども、御案内のとおり種子島、内之浦の打ち上げ設備は非常に老朽化しているということと、それから予算的にもこういう基盤的な維持費がなかなか伸びない、削られるという状況の中、確実な設備維持を実施してきているということで、打ち上げ関連設備の状況分析、優先度評価を実施いたしまして、健全性を維持するということで限られた老朽化経費の中で最適なタイミングで保全を行うということで、打ち上げを延期させるとかそういう大きな不具合を起こさないということを継続的に実施してきているということがポイントでございます。
 それから、前中期に比べて打ち上げ機数が倍増になっているというポイントに関しましては、打ち上げ整備作業、打ってからその後整備してまた整備作業をするという打ち上げ間隔の短縮という観点では、点検作業の自動化とか効率化を図ることによりまして、従前、前中期では打ち上げ間隔が79日でございましたけれども、現中期では実績51日まで短縮するということで、多数の打ち上げ需要に対応できるような体制等を整えているということでございます。
 それからもう一つですけれども、これは昨年打ち上げましたイプシロン2号機で開発した手法でございますけれども、海上船舶危険解析手法を改善し、海上警戒区域のエリアを大幅に縮小することで、船舶の進入リスクを大幅に減らしたということで打ち上げのオンタイム率とかそういうのを向上させたということでございます。
 ちなみにイプシロンの1号機を打ったときには、まずイプシロンを打ち上げている内之浦は大隅海峡でございますけれども、国際海峡になっており外国船の航行が非常に多いという状況でございまして、試験機を打ったときにも残念ながら外国のタンカーが入って打ち上げを延期したという状況がございました。そういう事態を改善するために海上警戒区域を大幅に減らしたというところでございます。
 それから、こういう高い信頼性、それからオンタイム率を維持したという観点で、そういうことが海外のユーザーにも高く評価されまして、29号機では高度化機体で初の商業衛星の打ち上げを受注したと。それから、そういう信頼性、オンタイム打ち上げ率を評価されて、UAEの火星探査機の打ち上げ受注にもつながったという点。それから、イプシロンロケットに関しましては、試験機それから昨年打ちました強化型のイプシロンの打ち上げ成功によりまして、H-ⅡA/Bと、それから小型のイプシロンという大小の衛星を打ち上げるロケットのフリートが完成したという点で、自立性の確保に関して前中期に比べまして大きな確実な進歩があったと評価してございます。
 もう一つのポイントといたしまして、宇宙輸送システムの抜本的な刷新について御説明させていただきます。先ほども申し上げましたように、基幹ロケットの高度化開発によりまして商業衛星の打ち上げを27年10月に成功したわけですけれども、御案内のとおり種子島宇宙センターは世界の打ち上げ射場に比べまして高緯度に位置しているということで、打ち上げ能力のハンディキャップを負っていました。それをロングコースト技術というものを開発しまして、世界の商業衛星の打ち上げの対応能力を7%から50%に大幅に拡大することができ、H-ⅡAの本格的な国際市場への参入を可能にしたということでございまして、こういう技術をそのままH3に引き継いでいく。この取組みの要はH3につながっているということでございます。
 もう一つが飛行安全の革新ということでございまして、ロケットの飛行安全をつかさどるのはレーダートランスポンダというものを積んでレーダーでロケットを追尾するという形でやってきているものを、自律的な飛行安全の航法センサを積むということで、追尾レーダーを必要としないで飛行安全ができるようなシステムに、つまり地上のインフラなくてできるような簡素化のシステムに変更できるというめどが立ちました。これによりまして今後老朽化が進んでおりますダウンレンジのレーダー局の更新費を全て取りやめることができるということで、約40億円の維持費削減のめどが立ったということでございます。
 それから3つ目が、H3の開発に着手したということでございまして、これは国際競争力の向上、それから自立性の確保という観点で今開発を進めているものでございますけども、まずこの取り組みにおきましては民間の主体性を重視した基本協定というものを結びまして、運用段階におきましては民間企業が自立的に運用していくというスキームをつくった、つまり今まで国がずっと面倒を見るというスキームから、運用段階になれば民間企業が責任を持って維持・運用していくという仕組みをつくって今開発を進めているという意味で、従来の輸送系のやり方からの抜本的な刷新を図っているという観点で、見込評価としてはS評価をさせていただいております。
 チャートで説明を補足させていただきますが、A-21ページが前中期と現中期の打ち上げ機数でございまして、前期11機に対しまして23機ということで倍増になっている点。それから、左下でございますけれども、打ち上げ成功率に関しましては、世界の基幹ロケットと遜色のない高い打ち上げ成功率を示しているという点。それから、オンタイム打ち上げ率に関しましては、他の主力ロケットをはるかに凌駕する高い安定的な打ち上げのオンタイム率を誇っている点でございます。
 それから、22ページは高度化機体で開発しましたロングコースト技術による成果でございますけれども、これは静止衛星重量と衛星が静止化するための必要な増速量をこれまで打ち上げられた衛星でプロットしたものでございます。これを見ていただきますと、真ん中の1,500メートル/秒のところに衛星が集中しているのが御覧いただけると思いますけれども、これがアリアンの打ち上げ射場のギアナ、これは北緯5度でございますけれども、ここから打った場合の必要増速量になってございます。これが世界の標準の打ち上げ方になっております。それに対しまして、種子島宇宙センターは北緯30度ということで軌道傾斜角が大きいということで、その分、衛星は静止化のために必要な増速量が必要になる。1,830ということで、この330メートル/秒を衛星に負わせるということで非常にハンディキャップを負っていたということでございますけれども、ロングコースト技術といってロケットで遠地点まで行って、遠地点で衛星の増速量をロケットが負担してやるということで世界標準の増速量までできる。オレンジのチャートでございますが、現状H-ⅡAでは7%というのが、高度化をやったことで約50%の衛星まで打てることになったということで、これでようやく世界の市場に参入できる能力がついたということになっております。その技術を使いまして今H3を開発しておりますが、それが上の線で描いてありまあすが、H3になれば世界の需要は全てこなせるようなものになるということでございます。
 それから、A-23で海上警戒区域の1号機と2号機の比較が書いてございますけれども、1号機の場合はこういう広い状況でした。海上警戒区域は飛行経路のばらつきとか破片のばらつき等で決まっているんですが、従来は飛行経路のばらつきを3シグマいっぱいにとって、破片が爆発して一番遠くに飛ぶというある種安全側の解析をしていたんですけれども、今回ばらつきの確率を考慮したモンテカルロ・シミュレーションすることによって大幅に縮めたということで、オンタイム打ち上げの維持を確保したということでございます。
 それから右のチャートが先ほどの飛行安全の航法センサで、機体に飛行安全航法センサを積むということでレーダー局を不要化するということで、維持費を40億円削減させるめどを立てたということでございます。
 それから年度評価でちょっと補足させていただきたいので、青色のファイルA-20ページを御覧いただきたいのですけれども、年度評価におきましてもS評価にさせていただいております。これはH-ⅡA/B、イプシロンロケット、昨年の実績ですけれども、11月から5カ月間に5機を打ち上げるという打ち上げ計画の中で、全てオンタイムで打ち上げたということ。それから、先ほど申しました海上警戒区域の改善手法を開発したこと。それから、航法センサの実用化のめどを立てたということでS評価にさせていただいております。1点、どういう状況だったかということだけ補足させていただきます。A-26ページでございますけれども、もともと昨年度は10月から5機を打つという、後半の半年に打つという状況でございましたけども、年度が始まって8月になって「こうのとり」の不具合が起きて下の状況になったということで、もともと年度当初は167日間で5機ということで、これまでにない非常にタイトな状況で打つ計画でした。これまでの最高が170日間で4機という状況でしたけれども、「こうのとり」の不具合によりまして結果的に135日間で5機を打つという非常に厳しい状況になったということ。それから、機体はH-Ⅱが202と204、それからH-ⅡB、イプシロンという4機種という、従来同じ機体でないものを打ち上げ整備するということ。もう一つが、下のチャートを見ていただくと予備日なしと書いてございますけども、これは全く余裕もない、全てオンスケジュールで上がって打つということで、要はこういう11月から年度末にかけての非常にタイトな中で確実に打ち上げをこなしたという観点でS評価にさせていただいております。
 御説明は以上でございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 御質疑をお願いいたします。梅比良部会長、お願いします。

【梅比良部会長】  先ほど135日で5日という、それをちゃんとやったんだよというお話があったんですけど、これは何かそのための工夫とか、具体的なものでもし挙げられるものがあれば教えていただきたいんですが。

【JAXA(布野)】  先ほど申し上げたように、まずイプシロンで海上警戒区域を大幅に減らしたというのが1つのポイントだと思います。それから、先ほどの青色のファイルのA-26ページ、下のチャートを見ていただきますと、イプシロンというのが、H-ⅡBを12月9日に打ち上げてから11日後の12月20日に打ち上げているのですけども、実はここに「こうのとり」が入ってきたことによりましてイプシロンの射場整備作業が分断されて、連続的にできないということになりました。そのために、リスクを回避するために本来は衛星系、ロケット系、射場系をあわせて整備していくのですけど、射場系が種子島でやっているもので一緒にできないという中で、リスクを回避するために、実は衛星とロケットだけで先行して整備を進めました。実はランチャーがすごい老朽化しているもので、そこで不具合が出たんです。たまたま事前にそういうリスクを潰すという計画を入れたために、結果的には不具合を事前に潰せてこのスケジュールでいったというようなこと。それから、先ほど4機種の機体を打ち上げるといいましたが、これは例えば飛行安全をやっているメンバーは、事前に個々の号機で飛行安全の訓練をやるんですね。つまり機体が4機種あるということは全然違うことをやるという中で、この短期間ではとても大変だということで、まずはスタッフを拡充するということをやりました。開発をやっている人間も当然運用を知るべきだということもあって、H3で開発をやっている人間も運用を経験させるということで、そういうスタッフを充実させました。また、訓練を前広にして回すとか、ありとあらゆることをやってリスクを縮めたということで、だから結果的に最終の33号機は天候によって1日ずれたんですけども、それ以外は予定されたとおりに打ち上げられたということで、特に32号機、33号機というのは防衛省さんのXバンドという衛星とCSICEさんの情報収集衛星ということで、年度末に安全保障にかかわる衛星が続いたという中で、そこが年度内に確実に打ち上げられたというのは我々としてもよくできたと評価してございます。

【梅比良部会長】  じゃあ、定常的にこういうふう早くやるというよりは、今回は非常に厳しいスケジュールになって、何とかやり遂げたという。

【JAXA(布野)】  はい、厳しい中での実施でした。先ほど申しましたように過去、一番最短だったのが170日間で4機という状況ですので、今までにない状況に追い込まれたところです。

【梅比良部会長】  わかりました。ありがとうございます。

【髙橋部会長】  知野委員、お願いします。

【知野委員】  H-ⅡAとH-ⅡBですけども、これは三菱重工さんに移管されて、三菱重工が打ち上げたというような報道にもなっているんですけども、やっぱり今のお話を伺っていますと民間企業だけでは打ち上げができないということなのでしょうか。

【JAXA(布野)】  今H-ⅡA/Bがどういう運用をしていますかというと、三菱重工業さんが打ち上げサービスをやられ、JAXAは安全監理業務をやるというたてつけで運用しています。JAXAは信頼性向上という取組みをずっと継続的にやっておりまして、何をやっているかというと、今H-ⅡA/Bに関しては全部三菱重工業さんにお任せというわけではなくて、毎号機打ち上げた結果について何か問題はないかということを全てチェックして、是正があれば直すとかそういうのを並行してやってきているということがございます。今H-ⅡAでも34機しか打っていないということで、例えば自動車産業とかそういう信頼性の観点でいえば全然数が足りないという中で、地道な信頼性維持とかそういうのを並行してやってきていて今こういう状況になっていると考えています。表には見えませんけどもJAXAとしては毎号機チェックして、問題があれば是正するという繰り返しをずっとやってきているというのが、今のH-ⅡA/Bの世界でございます。

【知野委員】  つまり、民間企業としてまだひとり立ちしてビジネスというような感じではないのでしょうか。

【JAXA(布野)】  まだそこまではいっていなくて、H3のときにはそこをもっと歩を進めて主体的にできるような構図に持っていこうというのが現状でございます。

【知野委員】  もう一つ、イプシロンですが、2号機を3年あいて打ち上げましたけれども、今後どのぐらいのペースで打ち上げていかれるのでしょうか。

【JAXA(布野)】  強化型の開発を挟んだということで3年あきました。トラブルがあって非常に苦労したのですけども、今後は革新小型とか公募小型というスキームがあって、年に1機ぐらいのペースでは打っていくということで今計画してございます。

【知野委員】  そして、それはH-ⅡA/ⅡBと同じように民間移管を、どのぐらいの時期にされるのでしょうか。

【JAXA(布野)】  今シナジーの検討をしておりますけども、あわせて低コスト化を図って競争力を持たせてちゃんとした維持をしていくという方向に持っていこうと考えております。今検討はしてございます。

【知野委員】  相当先ですかね。

【JAXA(布野)】  いや、先にならないように、要はのろのろしていますとH-ⅡA/Bがもうフェードアウトするとイプシロンも維持できなくなりますので、そのタイミングを目がけてやっていかないといけない課題だと認識してございます。

【髙橋部会長】  ほかはよろしいでしょうか。藤本委員、お願いします。

【藤本専門委員】  設備の老朽化に対していろいろな工夫をして削減を図られて、しかも不適合事案も最小限に抑えられたということで、地道なお取り組みの成果ではないかなと思うのですけれども、どのような取り組みをされたのかと、効果についてもう少し具体的なものがあれば教えていただければと思います。

【JAXA(布野)】  先ほども申し上げましたけども、もうH-Ⅱの時代から使っている設備も山ほどございまして、古いものは30年選手とかそういう状況です。そういう中で、いわゆる設備を抜本的に刷新するとかそういうことができればいいのですけれども、今H3に向けて設備もそこに合わせて変えていくという意味で、老朽化更新費もそんなにかけられないという状況の中で、いかに致命的な不具合を起こさないかということにずっと腐心してきております。具体的に何をやってきたかというと、種子島ですと保全管理システムというのを準備しておりまして、過去の不具合を全部データベースに入れていて、劣化傾向とかを見ながら、もう故障の時期だとかそういうものを把握しながら、限られた予算の中で寿命が来るものに重点的に予算を入れるとか、そういうたゆまぬやりくりをしながら何とか今維持してきているという状況です。これがずっと続くかというとなかなか厳しい状況もあって、そこはH3に目がけて使うものは刷新していくとかそういう中で、今苦しい中で乗り切ろうというのが正直なところでございます。

【髙橋部会長】  白坂委員、お願いします。

【白坂臨時委員】  ありがとうございます。まだ今年もたくさん打ち上げもあって、すごく大変だという理解をしておりまして、その大変さをもうちょっと理解したいので質問したいのですが、イプシロンとH-ⅡA/Bとのところでの大変さというのは、これは人がかぶっているというところでしょうか。

【JAXA(布野)】  設備もかぶっています。

【白坂臨時委員】  設備もかぶっているとはどういうことでしょうか。

【JAXA(布野)】  はい。飛行安全はシステムが種子島にありまして、イプシロンの飛行安全も種子島でやります。スタッフも設備もかぶっています。

【白坂臨時委員】  わかりました。H-ⅡA同士の連続の打ち上げ、例えば32と33はそうだと思うのですが、大体2か月ぐらいが今最短のぎりぎりでしょうか。

【JAXA(布野)】  今同じパッドを使いますので、それが最短51日です。

【白坂臨時委員】  それに対して、H-ⅡAとBの間と、ここの37というのは、本当にもうぎりぎりの、設備を使うぎりぎりで回していたというイメージでよろしいですか。

【JAXA(布野)】  はい。予備日なしというのは、もう何かあったらおくれる玉突き状態になっていたという状況です。

【白坂臨時委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。黒田委員、お願いします。

【黒田臨時委員】  あまり宇宙のニュースに詳しくない人と、「あっ、またロケットが打ち上がったんだね」というような会話を最近しました。ロケットの打ち上げ自体が、特別なニュースではなく、日常に溶け込んだ時代になって来ているなと感じています。1年のうちでもそれくらいの本数が打ち上がっていて、成功率も高くなっていてすばらしく思います。その中で一般の方も、今回のロケットには何が載っているのだろうというところに着目し始めています。これから民間の企業もどんどん人工衛星などを打ち上げていきたい、という時代に来ていると思うのですが、現状のロケット打ち上げの本数に対して、ロケットに載せたいものの関係は、どうなっているのでしょうか。何年も待つ必要があるのでしょうか。

【JAXA(布野)】  要はどのぐらいの需要が待っていますかとかそういう意味ですか。

【髙橋部会長】  需要と打ち上げ能力の関係で、打ち上げの頻度を含めた能力に対して需要が多いと随分待たなきゃならないですねと、その辺の状況はという御質問です。

【JAXA(布野)】  今のところ、H-ⅡA/Bは工程表で記述されている世界ですので、今の製造能力だとか、打ち上げの機数とかを前提にして計画が練られているということと、残念ながらまだ本格的に商業がとれる状況ではないということもあって、今は政府ミッションとかそういうものが多く、今年とか去年は多数機でしたけども、平均すると大体3機とか4機ぐらいという状況です。今後、H3になったときにどれだけ広がるかという世界です。

【髙橋部会長】  載せる衛星を含めて今は調整しているからあまり需要と供給のアンバランスは生じないけども、これから商業衛星で海外の需要を獲得してくると今度は足りないというような局面にはなるという、多分そういうことだと思います。

【JAXA(布野)】  済みません、ありがとうございます。

【黒田臨時委員】  ありがとうございます。

【髙橋部会長】  それでは、時間の都合上、このあたりでこの項目は……。

【梅比良部会長】  1点だけ、打ち上げの設備が相当老朽化しているのをすごく心配するんですけれども、これはいつか抜本的にかえようというような計画はあるんですか。

【JAXA(布野)】  やはりH3目がけて今はロケットも設備も刷新しています。従来の地上設備を維持していくのも半分にするということで、これまでは地上のチェックアウト装置を山ほど持って、それで維持費がかかるんですけど、H3になれば機体で自分で点検するとかいうことで、そういう地上設備に依存することも減らすとかで、半減を目指しておりまして、それに合わせて必要なものは整備しますし、そうじゃないものはできるだけそこまで延命させてという、今はそういう中でやっています。

【梅比良部会長】  わかりました。どうも済みませんでした。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、次の項目に移らせていただきたいと思います。時間の都合上、項目番号11「その他の取組」と項目番号12「基盤的な施設・設備の整備」を続けて御説明をお願いしたいと思いますので、まず、「その他の取組」からよろしくお願いいたします。

【JAXA(山本)】  表題が漠として詳しくないのですが、その他というのはロケットや衛星以外を中心とした、特に民生分野の宇宙利用と、宇宙安全保障にかかわる事業についてまとめているところです。
 今申し上げました民生分野と安全保障の2つに分かれておりますが、民生分野につきましては年度評価、見込評価ともにBですので、説明は割愛させていただき、宇宙安全保障のところにつきましては年度評価がB、それから見込評価がAということになっておりますので、ここの見込評価のAを中心に説明したいと思います。ページでいいますと、オレンジ色のファイルのA-26ページから始まるところです。
 これも先ほど来、部会長からの御指摘がありました年度評価と見込評価が違うというところになりますので、まずそこから考え方を簡単に述べたいと思います。まず、比較するときに、年度評価は当然ながら次年度との比較となりますけども、今回のこの表題につきましては、特にこの5年間、前中期の5年間と今中期の5年間にどういう大きな変化があったかという観点で整理しました。
 特にこの今期の中期計画の中では、28年4月に宇宙基本計画が改定されたこととか、あるいはこの中期の途中で特に防衛省との関係が強化されて、防衛装備庁、当時は技術研究本部でしたが、そこのトップとJAXAのトップが1つの調整の会議体をつくるという大きなフレームワークの中で、JAXAと防衛省関係機関との協力が非常に大きく変わったということをもって、この5年間の変化を評価させていただきました。
 具体的にはA-27ページのAと評価した根拠ですけども、先ほどSSAにつきましてはかなり説明させていただきましたので、時間の都合上、防衛省のところだけを説明させていただくことにしたいと思います。
 2ポツの防衛省との連携でございます。これは歴史的に防衛省さんとの関係につきましてはセンシティブなところがありましたが、先ほど申し上げましたとおり今中期の中の26年度にトップ同士の会合も含めたフレームワークをつくりまして、具体的な研究をスタートさせております。特に航空部門におきましてはここに書いてあります4つのテーマ、それから衛星については3件、さらには有人分野の1件といった形で協力が進んでおります。
 このような協力と並行いたしまして、(2)にありますとおり人事の交流につきましても積極的に取り組みまして、JAXA側からの出向あるいは防衛省さんからの受け入れという形で相互に人材交流を行っておりまして、現在も定着した状態で推移しております。
 それから3番目でございますが、こういった協力が実を結んだ例として、2020年に打ち上げますJAXAの先進光学衛星に、防衛省さんがこれまで研究を重ねてきておりました赤外線のセンサを搭載し、打ち上げるということで、まさに共同のプロジェクトとして具体的な事業が進んでおります。
 加えまして、航空部門でございます。防衛省さんが開発いたしましたF7エンジンの利用を前提として、これをテストベットというような形で、JAXAも将来のエンジン開発に活用させていただくということで、新しい取り組みが始まったところであります。特にF7エンジンを活用したJAXAとしての次世代のエンジン開発、これは長年の間なかなか取り組めなかったテーマでございますが、次期中長期におきましても非常に重要な位置づけでこの国産のエンジン開発に取り組もうとしておりますので、これも防衛省さんとのF7エンジンによる協力が大きな基盤となっているということでございます。
 説明は以上にさせていただきたいと思います。

【髙橋部会長】  続けて、「基盤的な施設・設備の整備」についてお願いします。

【JAXA(舘)】  それでは、お手元の資料のオレンジ色のファイルのE-14で説明させていただきます。これも先ほどの議論ですが、単年度ではBとしました。これは施設の維持ということで、単年度で見るのは難しく、全体を俯瞰して見るとやはり成果が非常に出ているというところで、通期としてはAといたしました。
 ここは先ほど述べたとおりコスト全体で見ても5年間で29億円下がっていると、もちろんこういうコストを削減して次の投資にかけるというやり方で地道に取り組んでいるというのが今の実態でございます。
 また、外部供用も進めています。私どもの設備としては当然宇宙機の試験に使うのですが、そういう機器があいている間は別のことにも使っていただくということで、そういう展開も進めているということがございます。
 A評価とした根拠でございますが、ここで幾つか研究もやっておりますので、ここを最初に記載しております。40年間の積み上げ、7,500件ぐらいの不具合があるのですが、この中から3年かけて衛星の熱サイクルに起因するような不具合を抽出しまして、試験の回数をできるだけ減らせないかという検討をずっとやってきました。その結果として、今まで8サイクルやらなきゃいけないというものを4サイクルにすることができるということで、これは長年の検討課題でしたけれども、2トン級の衛星だと1,500万円ぐらいの削減、通常ですと3カ月かかるところを1.4カ月でできるということで、これを標準化するという取り組みをしております。
 また、追跡関係でございますが、追跡関係の軌道の推定ということで、先ほど説明しましたJAXAが開発したMADOCAと重力モデルを使うことによって低軌道、これは「だいち」みたいな軌道でございますが、こちらの軌道設定精度を非常に高くして、15センチから4センチにするということで世界トップクラスの推定ができるようになりました。これをすることによって、先ほどの衛星のところで説明いたしましたけど、干渉技術ができて、変位をさらに詳細に推定することができるということになります。
 外部供用は、先ほど言いましたようにいろいろな企業に使ってもらいたいということで、一昨年から取り組みを始めており、28年度はそういうのがかなり増えてきております。これがなかなか難しいのは、衛星の試験がふえれば当然使えない期間が長くなってしまうので、これは必ずしも多くなったのがいいというわけではないのですが、こういう外部のユーザーに使っていただくということで、28年度につきましては収入がふえ、全体としては4年間で3億4,000万円の収入になっております。
 コスト削減の努力も引き続きやっております。当然のことながら、かなり試験設備が古くなっているという老朽化の問題がありますけれども、例えば振動試験装置2台あったやつを新しいもの1台にして維持管理費を削減するとか、不具合が発生したものを全部分析していきまして、例えばスペースチャンバーのポンプの周期を6年ごとの点検ではなくて10年でも十分だということがわかったということで、24年度比では年間約2億円の削減を達成したと。
 あるいは、追跡関係でも臼田とか内之浦の設備も、全て筑波からリモートでコントロールできるようになりました。こうすることで、これは効果が出るのはちょっと先になりますけれども、30年には3.3億円、それから31年には3.8億円ということでコスト削減が見込まれております。この見込まれる範囲でどこまで評価できるかというのはあるのですけれども、私どもとしてはこういう地道な努力をやっているということでA評価にいたしました。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。
 それでは、御質疑をお願いいたします。
 私から1つありますけども、MADOCAを運用して改善して、低軌道衛星の軌道決定精度向上と非常にすばらしい成果を上げたりですとか、それから振動環境緩和装置も、視察のときに見せていただきましたが、これも大変すばらしい装置だと思います。これは施設・設備の整備というよりも、技術開発そのものじゃないのかなと。要素技術といいますか、まさに基盤を支える技術の方で、項目でいくと5番目の個別プロジェクトを支える基盤技術というような感じがしました。施設・設備の項目に挙げるのが良いのか、あるいはいろいろなプロジェクトを支える基盤技術に入れるのが良いか、そのあたりはいかがでしょうか。

【JAXA(舘)】  この項目で、我々は試験技術や維持だけをやっているのではなくて、維持をしつつも研究も一緒に両面でやっているということでここに整理しております。

【髙橋部会長】  ほかはよろしいですか。白坂委員、どうぞ。

【白坂臨時委員】  説明ありがとうございます。SSAはこちらにもあったのですね。小塚委員が言ったとおり、それもどう書き分けるかを整理していただければ良いかなと思います。
 今のところも、熱サイクルの件も、実は衛星側からするとすごく効果があるところだと思います。おそらくこれもまさに試験設備を使っている方々がいろいろデータを分析した結果として書かれているのでここに書かれているのだと思うのですが、これも整理学だと思うのですが、かぶらないようにどこかにちゃんと入れておいてもらえればと思います。ただ、設備として見ると評価はしづらいかもしれない、これも本当に衛星開発、JAXAさんの調達する衛星全てに影響を及ぼすぐらい大きな成果になっていると思いますので、うまく評価できるところに書いていただければ、これ自体はすごい成果だと思います。ありがとうございます。

【JAXA(山本)】  次期中長期の策定をこれから始めるところでございまして、今おっしゃっていただいたようないろいろな整理学上のわかりにくい点があるということも我々は認識しておりまして、次のときには何とか改善したいと思っております。

【髙橋部会長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 以上で本日のヒアリングを全て終了いたしました。最後に文部科学省及び総務省事務局より、それぞれ事務連絡をお願いいたします。 

(5) その他

【佐々木課長補佐】  文部科学省側の事務局でございます。冒頭に御説明差し上げましたとおり、机上配布資料1-2を踏まえまして、机上配布資料2-2の御意見記入シートにご記入いただきまして、ご提出をお願いいたします。項目に黄色マーカーで着色しているものが本日ヒアリングした項目になります。御意見記入シートの電子ファイルにつきましては、本日夜に事務局よりメールで送付いたします。本日分の御意見記入シートのご提出につきましては、期限が短くて大変恐縮ですが、7月6日木曜日の13時までにお願いいたします。
 なお、評価を行う上で必要な御質問や追加資料の御依頼につきましては、こちらも期限が短くて大変恐縮ですが、電子メールなどで、明日6月28日水曜日中に事務局まで御連絡いただければと思います。回答の作成に時間がかかる場合もございますので、お早めに御依頼いただければと思います。
 また、参考資料をまとめて挟んである備付資料のファイルにつきましては次回以降も使用いたしますので、お持ち帰りにならないようお願いいたします。資料3と資料4の青とオレンジのファイルにつきましても、そのまま机上に残していただくか、もしお持ち帰りになりたという場合には、お手数ですが次回の部会の際にお持ちいただきますようお願いいたします。
 次回の文部科学省JAXA部会は7月6日木曜日の13時から、文部科学省3階第1特別会議室にて開催予定ですので、御出席のほど、どうぞよろしくお願いします。
 本日は長い間、どうもありがとうございました。
 それでは、総務省さんの事務局、お願いします。

【中谷推進官】  総務省の事務局でございます。総務省側も同様に机上配布資料1-1の要領を踏まえまして、机上配布資料2-1の御意見記入シートにご記入いただき、ご提出をお願いいたします。御意見記入シートの電子ファイルにつきましては、昨日事務局から電子メールでお送りしておりますので、ご確認いただければと思います。
 また、本日分の御意見記入シートのご提出につきましては、期限が短くて恐縮でございますが、7月6日13時までにご提出いただければと思います。
 さらに、評価を行う上で必要な御質問、追加資料の御依頼につきましては、電子メール等におきまして、恐縮でございますが明日、6月28日中に事務局まで御連絡をいただければと思います。
 なお、淡い青色のファイル、参考資料のファイルにつきましては、次回以降も使用いたしますのでお持ち帰りにならないようにお願いいたします。また、資料3と4、濃い青色と濃いオレンジ色のファイルにつきましては、そのまま机上に残していただくか、お持ち帰りになる場合には次回の会合にお持ちいただきますようお願いいたします。
 次回の総務省のJAXA部会につきましては、7月11日14時半から予定しております。会議室につきましては、決まり次第御連絡させていただきます。
 本日は、長時間にわたる御審議、まことにありがとうございました。以上でございます。

【髙橋部会長】  以上で文部科学省JAXA部会、総務省JAXA部会の合同部会を閉会したいと思います。本日は長時間のご対応、大変ありがとうございました。

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課