令和2年度JAXA業務実績ヒアリング(第2回) 議事録

1.日時

令和3年7月7日(水曜日) 13時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 宇宙航空研究開発機構の令和2年度における業務実績評価の進め方について
  2. 宇宙航空研究開発機構からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

【文部科学省JAXA部会】
部会長 髙橋 德行
臨時委員 黒田 有彩
臨時委員 中村 昭子
臨時委員 平野 正雄

【総務省JAXA部会】
委員 知野 恵子
専門委員 入澤 雄太
専門委員 篠永 英之
専門委員 矢入 郁子

文部科学省

文部科学省研究開発局宇宙開発利用課企画官 笠谷 圭吾
文部科学省研究開発局宇宙開発利用課専門職 横井 奈央

【説明者】
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事長 山川 宏
理事 寺田 弘慈
理事 佐々木 宏
理事 張替 正敏
理事 石井 康夫
理事 大山 真未
理事補佐 泉 達司

5.議事録

【事務局:宇宙開発利用課 笠谷企画官】 定刻となりましたので、第2回令和2年度JAXA業務実績ヒアリングを開催いたします。
 本日は、皆様お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。本日は、JAXAを共管する4府省、内閣府、総務省、文科省、経産省合同でのヒアリングで、昨日7月6日に開催した第1回ヒアリングと同じ内容のものです。
 本日の進行は、私、文科省宇宙開発利用課の笠谷が務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、まず資料ゼロ、議事次第を御覧ください。
 資料は1から3の3点、参考資料は1から4-5の9点を、また机上配付資料は1から3までの3点の構成となっております。このほか色つきのアジェンダをお送りしております。
 なお、一部の安全保障等に関わる事項については、資料及び議事を公開できないため、本日のヒアリング終了後に改めてメールで資料をお送りいたします。令和2年度における業務実績に関する評価についての御意見をいただく際には、この後ほどお送りする資料も御考慮いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 なお、本日はオンラインということで、委員の方々におかれましては、御発言されない時間はマイク、映像ともミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際には、音声をオンにするとともに、可能でしたら映像もオンにしていただければと思います。
 それでは、議題1のほうに移りたいと思います。
 まず、議題1でございます。宇宙航空研究開発機構の令和2年度における業務実績評価の進め方について、事務局より説明させていただきます。
 まず、本日のヒアリングの進め方ですが、色つきのアジェンダ資料に沿って、資料3について、JAXAから順次説明をいただき、委員の皆様には、机上配付資料2の記入シートに御意見を御記入いただきます。記入シートには、JAXAの自己評価のS、A、B、C、Dの評価が適当でないとお考えの際には、理由とともにその旨を御記入ください。また、JAXAの評価が適当であるという場合でも、委員のコメント等がございましたら御記入ください。特に御意見のない事項については、御記入いただく必要はありません。
 評価項目は資料2のとおりで、これはJAXAの第4期中長期目標に基づいた項目であり、各項目ごとに担当府省は決まっております。S、A、B、C、Dの評定については、資料2のページ2、3にありますように、設定区分の考え方の例が示されております。評定を御検討いただく際の参考にしてください。
まず、資料1を御説明いたします。まず、資料1でございますが、この評価の進め方について説明いたします。
 まず、1ページ目でございますが国立研究開発法人制度について申し上げます。まず、大きい関わりとして、国の業務をどこでやっていくかという話の中で、実施部門の一つとして独立行政法人というものがあります。民間の主体に委ねた場合、必ずしも実施されないおそれがあり、実施されないときには、国民生活及び社会経済の安定等に支障に生じるもの、そのような業務を独立行政法人で行うということになっているのですが、その後、平成27年にはその独立行政法人の中でも、仕事のタイプに応じて類型がなされまして、JAXA等研究開発を行う法人は国立研究開発法人として位置づけられております。
 また、2ページ目でございます。
 皆様が所属いただいております国立研究開発法人の審議会等についてでございます。先ほど申し上げましたJAXAのほうは、文部科学省、内閣府、総務省、経済産業省の4府省の共管となっておりまして、このページ左下にあるとおり、それぞれ国立研究開発法人審議会等がございまして、その中にJAXAを見ていただく皆様の分科会ですとか、JAXAの審議会とか、そのようなものが設置されているということでございます。
 3ページでございます。
 業務実績評価のスケジュールでございます。少しJAXAの場合は、ちょっと今ほど申し上げました4府省共管ということもあって、ほかの法人とは少し違っておりまして、まず、この表の右側でございますが、これが本日のまずJAXAからのヒアリングということでございまして、これを基に皆様意見を御提出いただくと。委員の皆様からいただいた意見をそれぞれの各府省の事務局のほうでまとめて、各府省の部会、分科会としての意見を取りまとめ、そしてそれぞれ各府省の審議会等が行われて、そこで各府省としての評価を定めていただくと。
 さらに、JAXAの場合、4府省ございますので、この4府省の評価の結果を協議して、一つの統一した評価書を作成して、8月下旬には業務実績の評価の決定ということになっている予定でございます。
 今、7月のもう上旬でございまして、非常に時間がない中でこうやって進めさせていただくことになって、委員の方々には、短い時間での締切りとなって大変恐縮なのですが、評価等への御協力をお願いいたします。
 そして、4ページでございますが、令和2年度の業務実績評価の進め方ということでございまして、それらも踏まえて、各委員の意見を各省の方でまとめまして、各府省の部会等で意見を取りまとめ、そして4省庁の協議を経て評価をまとめていくという風な流れになるということでございます。
 7ページでございますが、日程の詳細でございます。昨日、本日とヒアリングを行いまして、各部会等はそれぞれ7月20日から8月3日にかけて行われます。また、総務省、文科省においては、さらに国立研究開発法人の審議会のほうが8月4日、11日とあるということで予定されております。短期間の日程で、委員各位には御負担いただくことが多いかと思いますが、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 資料1の説明は以上でございます。
 それで、本日のヒアリング後に、この机上配付資料1に記載の締切りまでに各府省事務局に記入シートを提出いただきますようお願いいたします。
 また、本日のヒアリングを踏まえまして、評価を行う上でさらに必要な御質問ですとか、追加で確認されたい資料等ございましたら、各府省の事務局まで御連絡ください。適宜回答させていただきたいと思います。
 御提出いただきました御意見につきましては、事務局において集約した上で、次回各府省の分科会や部会に提示させていただき、分科会や部会の御意見として取りまとめたいと思います。その後に、4府省で協議を行いまして一つの評価書を作成するという流れとなっております。
 何かこの資料1につきまして、御質問等はございますでしょうか。
 よろしいですかね。それでは、ヒアリングのほうに入りたいと思います。
 御手元に色つきのアジェンダ資料、JAXA自己評価書、御意見記入シート、机上配付資料2を御用意ください。ちょっと長丁場となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ヒアリングに入ります前に、冒頭JAXAの山川理事長から、委員各位に御挨拶いただきたいと思います。山川理事長、お願いいたします。

【JAXA(山川理事長)】 ただいま御紹介いただきましたJAXA理事長の山川でございます。本日は、このような機会いただきましてありがとうございます。本日は、委員の皆様に評価いただくに当たりまして、2020年度のJAXAの業務実績について、自己評価をした結果を御説明させていただきます。
 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構――JAXAは、第4期中長期目標期間の3年目となります2020年度におきまして、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、感染対策を徹底しつつ、まず小惑星探査機はやぶさ2による小惑星リュウグウからのサンプルリターンや、こうのとり(HTV)最終号機による国際宇宙ステーションISSへの補給ミッション、そして米国の民間有人宇宙船クルードラゴン運用初号機への野口宇宙飛行士の搭乗など、多くの重要なミッションを達成することができました。
 日本の自立的な宇宙活動を支える宇宙輸送分野におきましては、現在の基幹ロケットでありますH-2A、H-2B、そしてイプシロンの打ち上げ連続50回成功を達成しました。
 また、ISS計画の国際パートナーとして、JAXAが長年かけて培ってきました国際的な信頼は、米国が提唱するアルテミス計画や月周回有人拠点ゲートウェイにおきます日本のプレゼンスの維持、そして向上に着実に生かされております。
 また、JAXAの各事業を支えます重要な取組として、ロケット打ち上げ射場等の重要設備などの老朽化対策や新型コロナ感染拡大の中でのセキュリティー対策を踏まえましたテレワーク環境の整備、そして各種プロジェクト等の国際協力を推進する国際調整業務、そして国民や社会への説明責任を果たし、一層の理解増進を図るための情報発信、さらに次世代を担う人材育成への貢献などに努めました。
 昨年2020年6月には、国の宇宙政策の基本方針宇宙基本計画が5年ぶりに改訂されまして、多様な国益に貢献するため、基盤強化と利用拡大の好循環を実現する自立した宇宙利用大国となることを目指すことになりました。このような改訂を受けまして、JAXAは我が国の宇宙航空開発利用を技術で支える中核的な実施機関としまして、各種プロジェクトをはじめとする研究開発と、これを支える業務のあらゆる面で役職員一丸となって挑戦し続けてまいりました。
 具体的な実績につきましては、この後各担当役員等から報告させていただきますが、委員の皆様からいただいた御意見はJAXAの業務に生かしてまいりたいと思いますので、御評価をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【事務局:宇宙開発利用課 笠谷企画官】 山川理事長、ありがとうございました。
 続きまして、JAXAから令和2年度における業務実績評価の自己評価結果の総括をお願いいたします。
 では、大山理事、よろしくお願いいたします。

【JAXA(大山理事)】 評価担当理事の大山でございます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。
 では、私から3点ほど、全体について御説明いたします。
 まず、1点目ですが、通しページ11ページ、今投影されているところですが、自己評価結果の一覧になっています。去年4月以降、一定の事業等のまとまりの細分化項目ごとに担当理事等から実績報告を受けて、理事長による自己評価を実施しております。また、同時に、この一定の事業等のまとまり単位での評価につきましても、この細分化項目の評価結果を踏まえて、理事長が総合的に勘案をして行っております。また、本年より文科省JAXA部会様から示されましたプロセス、アウトプット、アウトカム評価基準を踏まえまして自己評価を実施してございます。
 評価結果は、この一覧のとおりでして、細分化項目単位ではS評定が4項目、A評定が14項目、そしてB評定が6項目となってございます。S評定は昨年度に比べて減っておりますが、衛星リモートセンシング、それから宇宙科学・探査、そして新たな価値を実現する宇宙産業基盤・科学技術基盤の維持・強化、そして航空科学技術、この4項目につきましては、やはり我が国全体としての研究開発成果最大化に向けて、特に顕著なアウトカム等の成果が創出されたというふうに評価しましてS評定としてございます。
 それから、大きな2点目ですが、資料のつくりについてでございます。次のページですけれども、主に内閣府様、それから文科省JAXA部会様からの御意見を反映いたしまして、より御評価いただきやすい、適切な評価をいただけるようにフォーマットを変更してございます。
 具体的に申しますと、当初の計画に対する進捗状況やアウトプット・アウトカムに応じて御評価をいただけるようにということで、欄を中長期計画、年度計画、実績、アウトカムを対比させる形で並べてございます。さらに、記載の内容に応じまして、顕著な成果を赤、次年度以降に実施する計画を灰色、そして計画どおりでなかった実績を青ということで色分けをして記載してございます。そのほか、補足資料におきましても、主な成果の背景やアウトカムが視覚的に分かりやすいようにということで工夫をさせていただいてございます。
 3点目でございますが、JAXAの評価項目の相関関係についてでございます。通し16ページでございます。
 この辺りも少し関係が分かりにくいという御示唆もこれまでいただいておりましたので、JAXAの評価項目の相関関係を図にしてございます。これら各項目、どのような関係になっているかということの御説明をさせていただきたいと存じます。
 まず、中央のローマ数字3.3に宇宙政策の目標達成に向けたプロジェクトに係る項目がブルーの箱で縦に並んでいるものでございます。さらにプロジェクト全体に関係するものとして、一番左側の宇宙輸送、そして右側が追跡運用や環境試験等の基盤となるようなプロジェクトというふうになってございます。
 その下のローマ数字3.4は、個々の分野を横断する取組として民間企業との協業や産業振興、あるいは宇宙産業の基盤・科学技術基盤といったものがございます。
 さらに、大きく左側でございますが、プロジェクトや横断的な研究開発の取組を支える取組といたしまして、国際協力・調査、理解増進・教育、プロジェクトマネジメント等があるという構造、構図になってございます。
 さらに、これら全体を支えるものとして、一番下でございますが、業務運営の改善・効率化、内部統制、人的資源等がございまして、これらの全体の構図でもって、一番上の欄にございますような宇宙安全保障の確保や災害対策、経済成長とイノベーション、さらには科学・探査による新たな知の創造、宇宙活動を支える総合的基盤の強化といった国からいただいております中長期目標の取組に向けまして、これを目指して成果の最大化に努めているということを示しているという関係になってございます。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ありがとうございます。
 それでは、続きまして、個別の評価項目のヒアリングに入ります。なお、時間の都合上、幾つかの項目をまとめて説明いただき、その後まとめて御質疑いただくことにしたいと思いますので、御了承ください。
 初めに、ローマ数字3.3.1準天頂衛星システム等、ローマ数字3.3.5衛星リモートセンシング、ローマ数字3.3.10衛星通信等の技術実証について、JAXA寺田理事より御説明お願いいたします。

【JAXA(寺田理事)】 人工衛星の開発・運用・利用、それから宇宙状況・海洋状況把握等を担当いたします寺田でございます。
 それでは、御説明事項として、まずローマ数字3.3.1の準天頂衛星システムについて説明申し上げます。
 資料は、A-9ページ、通しの26ページからになりますが、準天頂衛星システム等は年度計画で設定しました業務を計画どおり実施したということで、自己評価をBといたしました。主な業務実績評価について、御説明いたします。
 まず、高性能測位システムの開発ですが、A-12ページに準天頂衛星システムの開発、事業の経緯を示してございます。準天頂衛星初号機はJAXAで開発し、2010年に打ち上げまして、技術実証後2017年に内閣府に移管し、同じく2017年度から現在運用中の4機体制、ここに5から7号機の3機を加えてGPS衛星がなくても持続測位可能な7機体制構築に向けた開発が始まっております。持続測位が可能なシステムに拡張するためには、5~7号機にはより高精度な測位精度が必要になるということで、それに対応する地上系と併せて内閣府からの受託契約に基づいてJAXAで開発を行っております。
 A-9ページに戻っていただきまして、2020年度の実績でございますが、この測位ミッションペイロードの開発につきまして、具体的には衛星間測距、衛星地上間測距、高安定時刻生成機と地上系の基本設計及び詳細設計を計画どおり進めました。また、将来測位システムの検討及びPRECT――これは衛星地上間測距でございますが、それに対応する追跡管制局と予備局の業務を内閣府から業務受託によってこれを追加いたしました。
 それから、二つ目は、高精度軌道時刻推定技術等に関する研究開発でございます。JAXAが開発しました測位衛星の軌道時刻を高精度に測定、推定いたしますツール――MADOCAというツールでございますが、その性能向上について、JAXA内外の知見も活用して精度向上を図りまして、特に精度が悪い静止衛星、準天頂衛星の3号機の軌道時刻推定では、これまでの測距誤差40センチを10センチまで向上させることができたと。
 それから、29ページ、A-23ページに飛んでいただけますか。
 TAKUMIというツールなのですが、このTAKUMIの機能拡張です。このTAKUMIというのは、JAXAで開発した軌道上、特に低軌道の衛星の軌道を高精度に決定するツールでありまして、昨年11月に打ち上げました光データ中継衛星(JDRS)に搭載したGPS受信機によって得られたデータを基に、衛星の時刻、位置、速度を高精度に決定するGPS航法を静止軌道で初めて国内で実現いたしました。特に、静止衛星ではGPS信号を利用する場合、GPS衛星より高い高度にある静止衛星は、地球の電離層の影響をより強く受けるということで、電離層を通過するGPS信号は敢えて棄却する、使わないということで、安定して数10センチメートルレベルの推定精度を達成したということであります。
 それで、アウトカムになりますけれども、静止軌道衛星におけるGPS航法、この成功は、米国に次ぎ世界で2番目の成果というものになったということです。
A-9、10、11ページにその他ですが、衛星測位技術の研究や解析センターの機能の国内設置について、あるいは国土地理院との検討など、さらには測位利用ビジネスの推進が多くなっておりますけれども、年度計画で設定した業務を計画どおり実施したということで、自己評価をBといたしました。
 以上が準天頂衛星システム等です。
 続いて、ローマ数字3.3.5の衛星リモートセンシングになります。通しページが79ページ、A-63ページになります。ここから説明したいと思います。
 衛星リモートセンシングにおいては、洪水予測、降水予報、災害時の情報収集、我が国の食料安全保障の確立、民間企業による商用サービスなど衛星データの利活用が様々な分野に拡大・浸透・定着に向けて、特に顕著な成果の創出があったと評価いたしまして、自己評価をSといたしました。具体的な成果を説明いたします。
 まず、洪水予測等での水循環シミュレーションシステムToday's Earth、この成果でございます。Today's Earthは東京大学と共同で開発を進める陸上の水循環シミュレーションですけれども、2020年度九州地方などに7月豪雨、それから10月、11月にはフィリピン、ベトナム等で台風の被災があったと。これに対してToday's Earthを用いて解析結果を公開しまして、洪水危険地域の推定結果の有効性を示しました。
 81ページ、A-65ページをお願いします。
 Today's Earthは、ここに示しますように、衛星の観測データとモデルを融合させて高度なシミュレーションを行いまして、水循環に関する各種物理量に加えまして、河川氾濫等の危険等の情報を計算、画像表示してウェブサイトを通じて公開しているというものであります。
 このToday's Earthは、全球システムと日本域システムというのがありまして、特に日本域版の高解像度版、Today's Earth-JAPAN、これは空間解像度が約1キロメートルで、リアルタイムでデータを提供すると。それから、それとともに、次のページにありますが、これは2019年の10月の台風19号の予測実験結果を示していますけれども、日本各地の破堤箇所142地点中129地点を捕捉率約90%で洪水発生相当の危険情報を1日以上前に算出できたと。こういった予測精度の実証を得まして、30時間先以上の長時間洪水予測ができる国内最先端のものになるということです。2020年の7月豪雨では、筑後川の氾濫時の状況把握にも寄与いたしました。
 それから、63ページに戻っていただいきたいのですが、予測情報について、気象業務法、あるいは関連法令により一般公開することができていません。ただ、SIPでの活用や、あるいは東大との共同研究に参画している和歌山県、長野県、21県市区町において利用実証が進められているということで、こういった活動も評価されまして、これまで許可されなかった民間等による洪水予測について許可されることも含めた関連法令等の改正の動きも出始めていると。こういったアウトカムを生じているというものであります。
 それから、次に説明いたしますのは、全球降水マップについての成果です。全球降水マップ(GSMaP)の成果につきましては、これまでも高い評価を得てきておりますけれども、2020年度はこのGSMaPをさらに大きく進展させまして、理化学研究所、千葉大、東大等の国際共同研究グループとともに、5日後までのリアルタイム降水予測システムを開発いたしまして、2020年8月より公開を開始しているところであります。
 67ページを見ていただきたいのですが、降水観測データを数値天気予報に直接利用する予測精度向上には信頼性のある大量の降水観測データと信頼性のあるデータ同化手法の両方が必要であるということで、理研等と連携して研究を重ねて開発を進めることで、世界で初めて降水観測データの数値天気予報に直接利用した5日後予報を実現いたしました。GSMaPを生かした降水の予報は、地上に設置する雨量計やレーダーなどの降水観測が限られている地域などで、地球規模で増大する大雨、あるいは渇水対応へのさらなる寄与が期待されるというものであります。
 それから、次のページに防災インターフェースシステムを示しています。この防災インターフェースシステムなのですが、これまで災害が発生したときに、観測要求は電話、メール等のやり取りによって関心エリアの特定等が個別に行われていたというものであります。これを観測要求受付からデータ提供までをワンストップでスムーズに対応でき、災害が発生した際には、国内の防災ユーザーから緊急観測の要請を受けて、JAXAが運用する衛星のみならず、国際的な枠組みで提供される衛星観測データを入手して、災害前後の画像から被災状況を抽出して防災ユーザーに迅速に提供すると。こういったシステムを開発いたしまして、2020年の10月から運用を開始したところであります。これによれば、迅速に災害に対応でき、複数衛星データの利用、それから高度な解析処理を必要とするケースなどに寄与することができるというものであります。
 それから、これらの成果に加えまして、次のページで2020年度は新型コロナウイルス感染症に対する衛星データを用いた取組ということで、NASA、ESA、JAXAの3機関協力で感染症の流行前後の地球環境や経済活動などの状況把握を実施いたしました。
 ここに示しております解析事例は、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)による大都市のCO2濃度について、特に東京と北京において2016年、19年の平均値と2020年の比較を行ったものであります。図の左下のほうにあります黄色、緑になるほど、これはCO2濃度が低いということで、2020年の1、2、3月の高度4キロ以下の地上における二酸化炭素の排出の活動が小さくなっているということだと思います。
 それから、政府の宇宙政策との協調・連携と政府・民間ユーザーによる衛星データの利用拡大として、新たな実利用化の事例を含む衛星データ利用拡大に係る顕著な成果というものを創出いたしました。
 次のページですけれども、これは土壌水分量、日射量等の農業気象データや作物の生育状況をモニターできます農林水産省による農業気象情報衛星モニタリングシステム(JASMAI)というシステムです。これを2021年1月より一般公開しているものです。食料安全保障の確立など諸課題の解決のため、海外の主要穀物生産地帯における穀物、それから農産物の生育に係る情報を地図やグラフ形式で提供するというシステムでありまして、農林水産省によれば、同省による我が国の食料安全保障における独自の情報の収集体制の確立に寄与したという評価をいただいているものです。
 それから、あとこれらに加えまして、損害保険事業分野では、あいおいニッセイ同和損保が大規模自然災害による被害受付。資料A-64ページを示していただけますか。損保事業分野では、あいおいニッセイ同和損保が大規模自然災害による被害受付や保険金支払いを速やかに進められるようにToday's Earthを活用しているとか、あるいは現地調査を待たずに被害地域等を早期に把握して、損害保険業界全体が早期に支払いができるような実証実験や、あるいは電気通信事業分野でもALOS-2の解析データを用いた災害時の早期設備復旧を目指す取組、さらには監査の分野でも、船舶運航に係る燃料費や人件費の検証などを正確に把握するため、ALOS-2で取得するAIS情報を用いる取組。こういったものが開発されるなど、多くの民間企業と連携しながら、国民の日々の生活維持・向上に直結し、社会課題や生活者一人一人に役立つような具体的取組を数多く生み出したということであります。
 71ページに、国内外の関係機関への衛星データの提供数の推移を例年示してございますけれども、2020年度も確実に一昨年度より提供支援を伸ばしているということ。このような衛星データの利活用が様々な分野へ拡大・浸透・定着し、特に顕著な成果の一つであったと評価いたしましてS評価といたしました。
 続いて、ローマ数字3.3.10の項目の衛星通信等の技術実証になります。A-187ページ、通しの203ページからです。
 衛星通信等の技術実証の項目では、国際競争力確保の観点から、顕著な成果の創出があったと評価いたしまして、自己評価をAといたしました。
 具体的な成果は、大きく二つあるということで、まず一つ目は、光データ中継衛星です。光データ中継衛星(JDRS)ですけれども、こちらは事前に公表した打ち上げ予定日、2020年の11月29日になりますけれども、その日どおりにオンタイムで打ち上げに成功いたしました。打ち上げに至る前までには、コロナ禍に伴う国内外の状況を踏まえた感染防止など、十分な対応を行い、各種支援や射場への衛星輸送、それから追跡管制に係る事前作業等を確実に着実に進めまして、予定どおりの打ち上げに成功いたしました。
 また、打ち上げ直後の太陽電池パドル展開、姿勢確立、それから静止軌道への投入などのクリティカルフェーズも無事に予定どおり実施しまして、その後の初期機能確認も、これは今年の5月になりますけれども、予定どおり完了することができました。
 そして、JDRSに搭載した光衛星間通信システム(LUCAS)の成果でございますけれども、A-190ページを見ていただけますか、通しの206ページになります。そこに光通信機器の海外製品との比較を示してございます。
 JDRS搭載の光通信機器は、使用いたします波長が1.5ミクロンということで、この波長は伝送損失が小さく、今後の宇宙光通信で主流となる将来性を有していると。これは米国NASAにも先行する取組であります。そして、この光データ中継衛星で実証を目指す光通信の通信速度は1.8ギガbpsということで、欧州と並び世界最高速度を達成する見込みであります。
 ちなみに、NASAも波長1.5ミクロンを使用する開発を進めておりますけれども、NASAのデータ中継技術実証機の打ち上げは2021年の予定ということで、さらに目指す通信速度は1.244ギガbpsということになります。
 次のページで、我が国の宇宙光通信の流れとその性能を示してございますが、LUCASはデータレート1.8ギガbpsで国内最高、かつ伝送距離も静止衛星と低軌道衛星間という最長のものになっております。
 2020年度は、世界でこの最もスペックの高いLUCASの開発を完了したということ、そしてそれを打ち上げまして、次のページですけれども、JDRSに搭載された静止軌道上の光通信機器と沖縄にありますNICTの光地上局、この間で高い精度が要求されます補足追尾に成功したという、そういった成果を上げました。
 それから、A-188ページに戻っていただきまして、もう一つの成果となりますこれは技術試験衛星9号機(ETS-9)において、より高度な衛星への仕様変更、計画変更を行ったことで、世界の通信衛星市場の急激な変動に対応するために200ギガbps級の通信能力に対応し、かつ柔軟な通信設定を可能とするデジタル化技術を適用しました通信ペイロードの開発を追加するという、そういった仕様変更をETS-9において、これ2020年度に行ったということであります。
 ETS-9は、2017年に開発に着手いたしましたが、194ページに飛んでいただけますか。その後、2019年頃から急激な動向変換、特に欧米の衛星メーカー、エアバスですとかタレス・アレーニアとかボーイング社が相次いで柔軟な通信設定が可能となるような通信ペイロードをフルデジタル化した通信衛星、こういったものを打ち上げるという発表がありました。
 次のページですが、ETS-9の開発移行時点では、ETS-9の成果を反映する次世代通信衛星の通信能力は100ギガbps級で、これで産業競争力があるだろうというふうに想定しておりました。ところが、先ほど説明いたしましたように、その後に世界の通信衛星市場が急激に変動いたしまして、それに対応するためにスループット1ギガbps当たり価格1ミリオンダラー程度、これを目指しまして200ギガbps級の能力と柔軟な通信設定を可能とするデジタル化技術を適用した通信ペイロードが開発できなければ国際競争力は持ち得ないということになりまして、そこでETS-9において、開発当初の想定衛星重量であります5トン、これを維持して通信容量の増大と柔軟な通信設定ができるような、そういった通信装置のデジタル化技術の実証を行うというように計画変更して、これらの計画を追加するということをいたしました。
 この計画変更についてなんですが、次のページ、この図の左側、従来の衛星の開発手法でありますいわゆるウォーターフォール式、この開発方式ではミッション要求の設定から、軌道上運用を行い、成果が得られるまで数年オーダーの時間がかかってしまうということで、特に変化の激しい商業通信衛星市場においては、衛星通信技術の進歩、非常に著しくて、当時のミッション要求のままでは競争力を確保することは難しいということで、ETS-9ではまさにその産業競争力の強化というのが衛星開発の目的でありますので、このたびこの計画変更につきましては、開発の途中段階、それも衛星システムの設計開発が開始された後にミッション要求を見直して衛星システム開発仕様の変更を行うという、かなりチャレンジングな計画変更を行ったというもの、その計画変更を仕上げたということであります。これが2020年度の成果になります。
 それで、次のページに、この結果、新たに搭載することといたしました通信の実証システムとそれからアクティブな熱制御システムを説明いたしますが、この新たに搭載することにいたしました機器は、御覧になっているものでございまして、これによって送信部のデジタル化によるビーム照射域のフレキシブル化、それから信号処理部の強化による大容量化、通信容量配分・通信地域のフレキシビリティの向上、受信部を構成する機器の高効率化、小型軽量化、こういったものを行う予定です。
 それから、アクティブ熱制御実証システムですが、これも従来、通信ペイロードというよりも、かなり高い排熱要求、あるいは高熱流束を伴う発熱機器が搭載されるということで、これを効率的に熱輸送しなければいけないということで、従来のパッシブな毛細管力を用いたヒートパイプによるいわゆる受動的な熱制御方式では限界があるということで、この静止衛星では、これまでに軌道上の実績はあまりないですけれども、ほとんどがないのですけれども、メカニカルポンプを用いた二相流のポンプループによるアクティブな熱制御の実証を行うというもので、こういったものによって急速に変動する商業衛星市場に競争力を確保するということを狙っております。
 A-188ページに戻っていただきますが、この取組につきましては、衛星における産業競争力強化に資する方策と評価されまして、2020年度の宇宙政策委員会が新設しました宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)の一環として初めて位置づけられたというものであります。この計画変更には多くの関係機関との調整と技術検討が求められましたが、これを進めて、これによって技術の獲得と併せて国際競争力強化に資する実証の道筋を立てることができたというふうに思っております。
 こういった活動によりまして、特に国際競争力確保という観点から顕著な成果の創出があったと評価してA評価といたしました。
 説明は以上になります。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ありがとうございます。
 それでは、ただいまの説明に対して委員のほうから御質問等ございましたらお願いいたします。
 なお、御質問される場合は、挙手のマークを上げていただくか、もし事務局が気づくのが遅いようでしたら、しゃべっていただければ、その上でこちらから委員を御指名させていただきますので、御質問いただければと思います。
 それでは、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 まず、全体を通してですけれども、今回非常に分かりやすい業務報告書に改善していただきまして、大変ありがとうございました。大変評価しやすい報告書になったと思います。
 衛星通信の件ですが、A-191ページでLUCASの性能が非常に優れているのですけれども、これはどのような技術によって実現できたのか、お聞きしたいのですけれども、よろしくお願いいたします。

【JAXA(寺田理事)】 LUCASの技術ですね。まず、この光通信技術ですが、JAXAのヘリテージとしては、過去OICETSという衛星で光通信の実験を実証しております。その後、搭載機会はなかったのですが、例えば光ファイバーの能力向上ですとか、あるいは搭載機の追尾性能の向上ですとか、あるいは軽量化等を図りまして飛躍的なものに仕上げてございます。
 特に、この開発において非常に苦労した点は、やはり光ファイバーを使って高出力を出すこと、特に高出力を出すに当たって、特に熱の制御に非常に苦労いたしました。いろいろなところに熱が集中してしまうとか、ファイバーのつなぎ方一つでそこに熱がたまってしまって破損をしてしまうとか、そういったことがありました。それから、寿命ですね。こちらも地上で試験をしていると、思わぬ、何ていうのですか、出力が下がってしまうというようなこともありまして、それも一つ一つその原因を究明して仕上げたという、そういったものであります。特に、出力部とそれから制御ですね、そこについて、いろいろと技術を投入したというふうに言えるかと思います。

【髙橋委員】 ありがとうございました。いずれにしても、これは国産技術ということでいいですね。

【JAXA(寺田理事)】 光ファイバーは外国から購入してございます。

【髙橋委員】 それ以外は。

【JAXA(寺田理事)】 あと全体のシステムインテグレーション、システム設計、それからシステム等については国産であります。ただ一部コンポーネントは買い物、光ファイバーや高出力増幅器等は一部買い物でございますが、それ以外は国産でございます。

【髙橋委員】 はい、ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ありがとうございました。
 それでは、次、知野委員お願いいたします。

【知野委員】 ありがとうございます。リモートセンシングのところでちょっとお尋ねします。例年ここのところ、自己評価でSが設定されていますけれども、今年特に実績評価でハイライトされるのはどの点なのでしょうか。
 それと、この間の筑波の公開のときにもちょっと質問しましたけれども、気象業務に気象業務法の改正も視野に含めた検討がされているということですけれども、これはどのレベルでの検討でしょうか。つまり実現性としてはどのくらい先というふうに御覧になっているのでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 まず、最初のS評価で今年ハイライトしたいのは、最初に御説明させていただきましたToday's Earthです。Today's Earthはかなり前から開発していたのですが、途中御説明したように、昨年、それから一昨年の知見に基づいて30時間先まで予測することができたという点、予測はそういう意味ではかなりできるのですけれども、それが非常に精度高くできるという実証も得て、これなら使えるというものになったというふうに理解しています。
 それで、そのようなものについて、SIPですとか、あるいは地方公共団体には一般公開という形ではないのですけど、個別にデータを提供して、実際に避難情報の周知、それから迅速化についても実際に使っていただいているところではあります。
 それで、実際に公開できるようになるかということについてなんですが、今まさに議論を行っているところであります。この洪水及び土砂・災害のあり方について議論がされているのですが、ちょっと具体的にいつぐらいになるかというのは見通せないんですけれども、早ければ今年度中と期待しているのですが、いずれにせよ議論されていて、今日も災害といいますか、大雨が降っているという状況でありますので、とにかく使われるといいますか、一般に公開できるような状態になるということになるように議論されているというふうに理解しています。

【知野委員】 分かりました。それから、ETS-9のことですけれども、途中で設計を変更されたということで、かなりチャレンジングな計画変更をされたというふうに御説明いただきましたけれども、これからもこのような方策を取っていかれるのでしょうか。これはチャレンジングであると同時にリスクも大きいと思うのですけれども、その辺りはどうお考えでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 まず、計画変更については、説明したように、これまでいわゆるウォーターフォール型という形で、最初に目標を設定して、そのときにいろいろお金も含めて目標を設定してやるというのがこれまでのいわゆる一般的なやり方でした。今後、やっぱりそういったものでは開発している間にどんどん環境が変わって、それで競争力が持ち得ないというものになっていくということなので、例えば代表的な開発手法としてアジャイル型の開発というのがあるかと思いますが、そういったものをどんどん試行していこうというふうに考えております。
 それで、リスクに関しては、これはまず、これができるようになったというのは、やっぱり社内でのいわゆるプロセス変更といいますか、計画変更をするときに、十分な審査をいたします。それで、そのときにはもちろん入口だけではなく、あるいは技術的にどれだけリスクがあるかということもしっかり審査した上で計画変更を進めていくということになります。
 この計画変更がいわゆる技術的にもできたというのは、実は今日、後で御報告があるかと思いますけれども、いわゆる基盤的な研究のところでその準備をしっかりやってきたというのがあって、それを採用できるということになってございます。
 したがいまして、もちろん計画変更というのはリスクが伴いますが、そのリスクを、何ていうのですかね、十分そのリスクは小さいということを評価した上で計画変更をしてございます。

【知野委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 続きまして、篠永委員、お願いします。

【篠永委員】 総務省委員、東洋大学の篠永と申します。
 準天頂と衛星通信について確認の質問です。まず、準天頂ですけども、ここ最近の評価を見ますと、ずっとBということになっていまして、それから先ほどのお話ですと、独自の測距ができる衛星構成と地上局の新設をするということになっているのですけれども、これはもう今後も粛々と計画を進めていくと、そういったお考えでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 はい。まず、この事業については、内閣府から受託してやっているものでありまして、JAXAの中ではいわゆるプロジェクトという扱いで開発をしているものです。そのプロジェクトの開発に関しては、なかなか打ち上げて、それであるいは完成としてというような成果が出ない、プロジェクトをやっている途中ですね、なかなか成果を出しにくいので、どうしても計画どおり進んでいるというだけではA評価にならないということでB評価ということになりましたが、そういった観点で粛々と進めております。
 いろいろとそれに加えて、JAXAのほうではいわゆるプロジェクトとして開発をするものだけではなくて、新たに研究を立ち上げて、それでそこで新しい成果が出そうということで取り組んでございますが、まだ残念ながらA評価に足るだけの成果が出されてないというような状況でございます。

【篠永委員】 分かりました。プロジェクトとしての扱いと、あと内部での別途の研究も進められていると、了解しました。
 続いて、衛星通信ですけども、光関係ですね、ここのところについては非常にクリアに理解しました。それから、ETS、静止衛星についてですけれども、国際的に例えばインマルサットのような場合には、比較的ニッチなトラフィックをグローバルに集める、そういうことで静止衛星でも200ギガ程度で、ユーザー側に対してもサービスが出来ていると思うのですけれども、今後さらにユーザーリンクでのサービスレートが例えば1ギガビットとかになってくると、静止衛星としての通信容量、あとフィーダリンクの問題とかですね、そういった問題が出てくると。
 さらには、遅延の問題が如何としても克服できないということで、昨年度のコメントも見てみたのですが、これもやはり低軌道衛星ですね、JAXAとしての強みを生かして取り組むと書かれているのですけれども、そういったところの取組というのはどうなっているのでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 御指摘のとおり、この通信衛星を巡る環境、いわゆる静止通信衛星を巡る環境も随分と様変わりといいますか変化しております。特に、メガコンステという形で低軌道衛星で通信ネットワークを作り出して割と静止軌道から地上へのディレイのないということで、幾つか小型コンステで通信システムを構成するということが今どんどん主流になりつつあります。もちろんそういった動きもよくチェックしております。
 ただ、静止衛星に関しては、いきなりなくなりませんで、しっかりまだ需要があるということは確認しております。そういった観点でも、タレス社やボーイング社も新しい衛星を開発しようということで提案していることと理解していまして、 まずは静止衛星としての競争力をETS9等で獲得したいと考えておりますし、一方で小型衛星、特に衛星のコンステレーションに対しても、よくその環境、何ていうか、その動向をよく調査して、どう対応しようかということを今まさにJAXAの中でも検討しているというところであります。

【篠永委員】 低軌道衛星に関して、JAXAさんでは地球観測関係の衛星、いろいろと飛ばしているわけですけれども、この低軌道でJAXAの強みを生かした取組というと、何、どの分野、例えば衛星バスの話なのか、それとも低軌道ですと、衛星寿命が比較的短くなってしまう、それに対しての取組をされるのか。あと日本の国内の産業の強化ということも考えますと、どの分野でやっていくのかと。その辺のお考えをお聞かせください。

【JAXA(寺田理事)】 そうですね、御指摘のとおり、まさに特に小型の衛星というのは、JAXAの力なくても多くの企業がそれに取り組んでいるという状況になっています。ただ、今回光衛星通信機器を一つ仕上げたのですけれども、これをもっと小型軽量化、あるいは1.8ギガbpsのような高いデータレートをもう少し小さくしてでも小型衛星間同士で光通信ができるような、そういったものも、そうやって全体がネットワーク化されてデータのやり取りができるような、そんな機器を開発すべきではないかというような感じで、今社内で議論しております。

【篠永委員】 分かりました。小型衛星間の光リンクということになりますと、同一軌道であるかどうかとか、その辺でポインティングの難易度というのもかなり変わってくるかと思いますけれども、そういったところも含めて検討されているということでよろしいでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 はい、まさにどういう光通信機器を載せるべきかという検討をやっているところであります。

【篠永委員】 ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ほかに御質問のある委員はいらっしゃいますでしょうか。大丈夫ですか。それでは、衛星のほうの説明はこれで終了したいと思います。ありがとうございます。

【JAXA(寺田理事)】 ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 続きまして、3.3.9宇宙輸送システムについて、JAXAの布野理事から説明お願いいたします。

【JAXA(布野理事)】 JAXAで宇宙輸送系を担当しております理事の布野でございます。宇宙輸送システムの20年度の主な業務実績について御報告申し上げます。
 業務実績表のA-166ページをお開きください。
 まず、H3ロケットでございますけれども、20年度試験機1号機の打ち上げを目指して開発をしておりましたが、第1段エンジンの認定試験時におきまして、燃焼室の開口及び液体水素ターボポンプの疲労損傷という不適合が発生いたしまして、21年度の打ち上げとする計画に見直しをしてございます。不適合に対します原因究明及び対策など妥当性を検証するための追加試験を実施いたしまして、不適合の対応策を確定してございます。今後、認定試験を実施しましてエンジンの開発仕様を確定する予定でございます。
 エンジンの不適合対応と並行いたしまして、ロケット及び地上システムを組み合わせた総合システム試験を前倒しで実施いたしまして、打ち上げ当日の極低温推進薬充填を含めた一連の作業確認を行いまして、2021年度に打ち上げに向けて着実に開発を進めているところでございます。
 ページを1枚進めていただいて、167ページでございます。
 イプシロン関連の業務実績でございます。今年度打ち上げが予定されておりますイプシロン5号機に関しましては、機体製造、それから機能試験を確実に実施しておりまして、今年度の打ち上げに向け、進捗しているところでございます。
 それから、H3とのシナジー対応開発として取り組んでおりますイプシロンSロケットに関しましては、民間事業者を主体とした打ち上げサービス移行を目指しまして、株式会社IHIエアロスペース社と「イプシロンSロケット開発及び打ち上げ輸送サービス事業の実施に関する基本協定」を昨年度締結いたしまして開発を進めているところでございます。
 また、本格的な市場参入に向けまして、イプシロンロケットに関しまして初めての海外衛星となりますベトナムの地球観測衛星LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)の実証機での打ち上げを受注したところでございます。
 基幹ロケットの打ち上げに関しましては、昨年度新型コロナウイルスが蔓延する中、宇宙ステーション補給、惑星探査、安全保障ミッション等、打ち上げ期間制約が厳しく遅延することが許されない3機の打ち上げでございましたが、いずれもオンタイムで打ち上げ成功してございまして、世界トップの成功率、オンタイム率を維持しているところでございます。
 A-168ページを御覧ください。
 打ち上げに関しまして留意したポイントを三つ挙げてございます。一つは、まずは徹底したコロナ感染対策というところでございまして、離島での医療設備が充実していない種子島での打ち上げということで、打ち上げに出入りする関係者全てに対して徹底した感染防止対策を行うとともに、地元の住民の方々の不安を払拭するために役場と連携した情報共有・発信をするとともに、極力入島者の削減に努める等の対策を行いまして、結果3回の打ち上げを通じて一人の感染者も出さずに打ち上げを完了してございます。
 二つ目の取組がH3用の設備を用いたH-2A遠隔運用というところでございまして、H2-A43号機JDRSの打ち上げにおきましては、キリバス共和国のクリスマス島の追尾局の運用が必須でございました。しかしながら、昨年の3月以来、キリバス共和国の国境封鎖が継続しております。これは現在も続いておりますが、打ち上げ時の運用要員がキリバス共和国に入島できないという状況でした。これのため、急遽種子島からリモート運用が可能なH3用の専用設備をリモートによりましてH-2A用に改修するという方針を急遽取りまして、結果現地に運用要員を送り込むことなく種子島からリモート運用によりまして打ち上げ予定どおりにオンタイムで打ち上げることができました。
 三つ目の取組が設備保全の抜本的な見直しということで、2019年度に打ち上げ延期につながる設備不適合を起こしたことを踏まえまして、原子力等他産業の最新手法、知見を取り入れまして、種子島の保全方法を劣化メカニズムに応じた保全方法に抜本的に見直しを行いまして、昨年度から試行をしてございます。結果、打ち上げ延期につながるような不適合を起こさず、全て打ち上げオンタイムにつながりました。
 A-169ページを御覧ください。
 運用性改善の取組でございます。これまでも打ち上げに際しまして、有人飛行物体との衝突回避に関しまして、確率的手法を段階的に取り入れてまいりましたけれども、昨年度はGTO軌道への確率COLAの適用を確立し、これで全ての軌道に対し適用が可能になり、適切な打ち上げ機会の確保が可能となりました。
 最後に、H-2B9号機の打ち上げでH-2Bの打ち上げを終了した点でございます。2009年度の初号機から昨年度まで9機の打ち上げを全て100%の成功を達成しまして、国際宇宙ステーションの物資補給に大きく貢献してございます。また、H-2Bの開発を通じまして得られました技術、また開発を通じまして育った若手人材がH3開発に引き継がれておりまして、技術、人材継承の両面で我が国の基幹ロケットの維持・発展に重要な役割を果たして運用を終了してございます。
添付資料を使いまして説明を補足させていただきます。A-171ページを御覧ください。
 これはH3の不適合対応に対しまして、解析のみならずタービンのひずみ、燃焼器の温度を直接計測するという仕掛けを作りまして、原因究明、対応策の検討を行い、対応策を確立してございます。
 A-173ページを御覧ください。
 イプシロンロケットのS対応の基本協定に関する補足でございます。左に記述してございますように、基本協定によりまして、JAXA及び民間事業者の開発段階、運用段階でのそれぞれの役割を合意して協定を締結してございます。運用段階におきましては、民間事業者が主体的に打ち上げサービス事業を展開するという取決めになってございまして、これは中長期計画で求められております民間事業者が主体となって打ち上げサービスへ移行するという政策目標に向け、大きな進捗ができたというふうに評価してございます。
 A-174ページは、成功率、オンタイム率のベンチマークです。御覧ください。
 A-175ページに、クリスマスダウンレンジ局の遠隔運用についての御説明でございます。左の図にございますように、クリスマス島は太平洋の真ん中にございまして、静止衛星の打ち上げにおけますロケットの状況をモニターするためには必須の追尾局でございます。H3からは、経費の削減のために遠隔運用が可能になるような設備を整備しているところでございますが、急遽H3用の設備を用いまして、種子島から遠隔操作でH-2A用に切り替えるという作業を行い、打ち上げを実施したものでございます。
 A-176ページを御覧ください。
 種子島の保全の見直しでございます。例で配管の肉厚の減少の保全、予防保全の取組を説明してございますが、劣化状況を定期的に診断し、点検整備周期を適正化させて打ち上げ延期リスクを継続的に低減させるという保全の仕組みを構築し、昨年度から試行してございます。今後、成果をPDCAで回して、この予防保全の取組を定着する計画でございます。
 A-178ページを御覧ください。
 H-2B運用終了でございます。9機を打ち上げ、国際宇宙ステーションの物資補給に貢献したわけですが、特記といたしまして、2015年に5号機を打ち上げましたけれども、その前にロシア、アメリカの補給機が3回連続して失敗をしておりまして、ステーションの運用を継続するためにも失敗が許されない打ち上げでございましたけれども、確実に打ち上げを成功し、ステーションの維持に貢献したということでございます。
 下にH-2Bで開発されましたエンジンクラスタ技術、大型フェアリング技術、制御再突入技術等、いずれもH3へ技術は引き継がれておりますし、右側、H2AからH3までの開発、20年間ございますけれども、その間に開発あったということで、この開発を経験した若手技術者がH3につながっているというところでございます。
 A-166ページに戻っていただきまして、以上コロナ禍の状況の中で世界トップ水準の成功率、オンタイム率の維持、それからイプシロンSの基本協定を締結するなど、年度計画を上回る顕著な成果を上げましたけれども、H3試験機の打ち上げ年度の見直しということもあり、総合的な自己評価といたしましてはB評価としてございます。
 説明については以上でございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して御質問等ございましたらお願いいたします。
 じゃあ、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 少し辛口のコメントになるかと思います。A-161の年度計画実績のところですけれども、H3ロケットは2020年度に打ち上げる計画でしたので、実績としては計画どおりいかなかったということで、青字で表現したほうが望ましいのではないかと思います。打ち上げ日程を延期して、年度計画を途中で変更したとしても、当初の計画に対しては計画遅れが発生したわけですので、これは真摯に計画遅れとして記載したほうがいいと思います。計画遅れが発生した場合、計画を変更して計画どおりに進めましたということが前例としてJAXAに広まり、JAXAの規律が低下することを懸念しましたので、意見としてコメントいたします。
 一方で、技術的な課題解決のため、H3ロケット打ち上げを延期したのは正しい判断だったと思います。また、決して恥ずべき結果ではないと思っています。ですから、このことによってC評価にすべきではないと思っています。
 ただし、H3ロケットに関しては別な問題があると思います。それは、H3ロケット打ち上げ延期に伴ってALOS-3の打ち上げが延期になってしまったということです。ALOS-3は、JAXAのホームページでも国や自治体の防災活動、災害対応になくてはならない手段の一つとして紹介されています。その理由は、80センチの地上分解能を有する光学カメラを搭載して、建物の倒壊や道路の寸断状況など、速やかにクリアな映像として確認できるからです。
 毎年のように甚大な豪雨災害が発生し、先週も静岡で豪雨災害が起こり、多くの犠牲者が出ております。一刻も早い運用が望まれているALOS-3は、最初の計画において、H3ロケット試験機ではなくH2Aロケットで確実に2020年度に打ち上げるという経営判断をしてもよかったのではないかなと思います。ALOS-3の打ち上げ延期については、JAXAとしても真摯に向き合って、年度評価の中で記録として記載してほしいと思いますが、いかがでしょうか。

【JAXA(布野理事)】 要は途中から変わったからいいのだとか、そういうつもりは一切ございません。この遅延を起こしたこと、ALOS-3の打ち上げ延期につながった、今髙橋先生がおっしゃった非常に大きな問題であるということを認識しております。
 それから、遅延に伴うこととH2Aでの打ち上げに関しましては、JAXA全体での経営陣を含めた議論の中でこういう形で行くという決定がなされておりますが、それはH2Aが残り機数とかユーザーのアロケーションの問題、それからもろもろの中で経営判断をされてこういう形になったものでございます。

【髙橋委員】 ありがとうございました。いずれにしても、かなりに真摯に受け止めているということで安心しましたけれども、このように待ったなしの衛星と、開発中のロケットの組み合わせというのは、どうあるべきかということはしっかりと今回の事例を参考にして、ぜひ議論しておいてほしいなと思います。よろしくお願いいたします。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 それでは、篠永委員、お願いします。

【篠永委員】 よろしくお願いいたします。大型のロンチャーのロケットについての質問になります。これまでH2の打ち上げの成功率、非常に国際的に見ても高いと、そういった評がありました。それで、逆に衛星を打ち上げる事業者から見ると、やはり衛星の打ち上げ成功率とそれとコストと、あとその衛星に掛ける保険金ですね、それの最小値、ミニマムを通常評価してどこのロンチャーでどこから打ち上げるかと、そういったことを決めているわけですけれども、今回のH3については、その辺の競争力ということでどんな状況でしょうか。

【JAXA(布野理事)】 価格的にも競合ができるレベルにミッション要求を設定して開発をしているということと、それからH2AB等のヘリテージとして高い信頼性を併せ持って国際競争力を高め、国際市場でのさらなる進展を目指して開発を進めているというものでございます。
 当然安いというのは重要なファクターでございますけれども、それのみではなくて信頼性とかそういうものの中で選ばれていくというものでございますが、昨年度42号機でUAEの火星探査、これは商業打ち上げですけれども、今出ています174ページですけれども、UAEの長官のコメントを載せてございますけれども、今回コストよりも成功率というか信頼性で選んだということを言っていただいておりまして、そういうもろもろの要素の中で選ばれていくということでございまして、H3に関しましては、先ほど申し上げましたように、コスト競争力でも対抗できるようなレベル、それから信頼性をこれからも維持していくという、そういう戦略の中で開発を進めさせていただいているところでございます。

【篠永委員】 分かりました。今年度不具合が生じて、若干の遅延が生じたというお話ですけれども、私個人として期待しておりますので、よろしくお願いします。

【JAXA(布野理事)】 ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ほかの委員の先生方、御意見のある方いらっしゃいますでしょうか。
 知野委員、お願いします。

【知野委員】 よろしくお願いします。イプシロンロケットSですけれども、民間の打ち上げサービス協定を結び、そしてベトナムの衛星を打ち上げ、実証機ということで、つまり初号機で打ち上げるということになったそうですけれども、ここから先、商用としてやっていくに当たっての打ち上げの見込みはどういうものが予定されているのでしょうか。

【JAXA(布野理事)】 まずは、国のミッションというか、科学、地球観測実証という国の打ち上げというものを年間1機程度は確実に打つという、そういう前提の中で、国際的にも戦える価格設定、それから信頼性の高さを維持するということで商業受注を1機、2機程度の受注を持って進めていくというのが当面の目標でございます。

【知野委員】 分かりました。それと、H3の価格、国際競争力を持つかどうかというのは、後ほど資料をお送りいただけるということでしょうか。
というのは、H3は今までのH2Aの半分の価格になるということで計画が進められ、かつ国のいろんなプロジェクトも打ち上げ費用が半額だということで進んできているところがありますので、その辺の見通しはどうなのかというところをお尋ねしたいのですが、今ここででもよろしいでしょうか。それとも差し支えありますでしょうか。

【JAXA(布野理事)】 別途ご説明させていただきます。

【知野委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 それでは、ほかの委員の先生、御質問のある方、いらっしゃらないということでございますので、それでは輸送系の説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございます。

【JAXA(布野理事)】 ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 それでは、続きまして、3.3.6宇宙科学・探査について、JAXAの國中理事より御説明願います。

【JAXA(國中理事)】 よろしいでしょうか。宇宙科学研究所から御説明させていただきます。
 宇宙科学・探査はA-76ページから始まります。
 右上に記載されておりますように、Sを申告させていただきたいと思います。以下は図表を用いて御説明したいと思います。
 A-94ページまで飛んでください。
 このページははやぶさ2の総括を示してございます。はやぶさ2は、2014年に打ち上げまして、小惑星リュウグウにランデブーし、数々のオペレーションを行った上で6年後の2020年12月に地球に帰還いたしました。本年度の年度評価で、一応はやぶさ2は一通りのミッションを達成いたしましたので、はやぶさ2全体も本年度の評価の対象といたしていただければと思いまして、このページを用意してございます。
 青四角の中、顕著な成果でございますが、これまでに154編の科学論文に掲載しておりまして、米国のCNNやニューヨークタイムズなどでも取り上げられ、日本の科学技術力を世界にアピールできたものと考えております。また、たくさんの工学上の世界初を達成しておるということ、それから最終行になりますが、サンプルは合計5.4グラム、想定以上のサンプルを確保することができました。
 右側、赤い枠の中、アウトカムですけれども、内閣総理大臣賞受賞など外部表彰をたくさん受けております。それから、回収されましたカプセルの本体につきましても、相模原市立博物館、上野の科学博物館等で展示を行い、多くの来場者を得ております。また、2010年にはやぶさ、2020年にはやぶさ2の回収、そして今開発中のMMXフォボスサンプルリターンを2029年に実施することを予定しておりまして、このように定期的なサンプルリターン計画の実現に弾みをつけたと考えております。
 次のページ、A-95ページが打ち上げ当初に設定いたしましたサクセスクライテリアですが、緑枠、ハッチングしたところは全て達成いたしました。白抜きのところは現在取りかかっておりますサンプルの分析でありまして、ここを除く部分について、全体御評価をお願いしたいというものであります。
 A-96ページ目は、本年度、2020年度に関することにフォーカスしたものでございまして、はやぶさ2の回収に関する事柄を記載してございます。今もう御紹介しましたように、カプセルの回収に成功いたしました。右側の青い中段の写真が、カプセルが地球に突入するときの映像、写真になっておりまして、その下がカプセルの中に入っておりました黒い砂礫であります。その隣、左側がマリンレーダと書いてありますけれども、JAXAの宇宙探査イノベーションハブ事業で株式会社光電製作所と共同で開発しました高性能マリンレーダをウーメラに持ち込みまして、カプセルの探索に役立てるということが実行されました。
 次のページがアウトカム、97ページ目ですけれども、はやぶさ2ではO(オー)リングを用いたコンテナを利用しておりまして、採取した砂礫から発生したガス採取にも成功しております。米国が推し進めるサンプルリターン(アポロ、STARDUST、ジェネシス、OSIRIS-REX)については、このような気密コンテナを用いておりませんので、世界を凌駕する成果が上げられつつあるということです。
 また、アウトリーチにも注力いたしまして、YOUTUBEやニコニコ生放送などを利用し、70万件のアクセスをいただいております。それから、地方公共団体、宇宙研が実験設備を擁しております北海道大樹町、秋田県能代市、岩手県大船渡市、宮城県角田市、長野県佐久市、神奈川県相模原市、鹿児島県肝付町の皆様とタイアップをいたしましたアウトリーチを実施いたしました。このページの中央のところの写真は、相模原市で開催していただきましたカプセル班出発時の壮行会、それからその右下はカプセルが相模原キャンパスに搬入されるときに横断幕を用いての歓迎をしていただいて、そのように地方の活性化にも協力できたと考えております。
 A-98ページ目が数々の外部受賞のリストになってございます。
 その次のページ、A-99ページ目からが科学的な成果になっておりまして、はやぶさ2に搭載されましたリモセン装置によりまして小惑星リュウグウの分析が着々と進んでおりまして、サイエンス誌やネイチャー、アストロノミーなどに多くの論文を提出させていただいております。
 A-101ページ目は、はやぶさ1で取ってまいりましたイトカワの粒子についても分析が進んでおりまして、僅かながらですが水が発見されたという論文を提出することができました。
 それから、101ページ目の下半分は火星から飛んできたと考えられている隕石につきまして、非破壊で窒素化合物を分析する手法を開発したという報告になってございます。この手法は、先ほど御紹介したMMXで火星フォボスからのサンプル、それから米国が実施しております火星表面サンプルリターンで取ってきますサンプルの分析にも応用できる将来をつなげる成果と考えております。
 A-102ページ目がその他の探査機になりますが、金星探査機あかつきが金星現象でありますスーパーローテーションという特異な現象のメカニズムを明らかにするという科学成果を達成いたしました。これはサイエンス誌に掲載されたものです。また、下半分は今から1000年前に発生した超新星の残骸のかに星雲から出てきます「かにパルサー」が起こしております巨大電磁パルスという現象はこれまでも知られていたのですが、電波とX線が同期して発生しているということを初めて発見いたしました。これについては、写真で右下に記載されております臼田の64メートルアンテナを利用したもので、このアンテナは衛星追跡に使っておるものですが、宇宙天文領域にも応用できるというということが証明されました。
 103ページ下側がかぐや月探査機の科学成果です。
 それから、104ページ目がひのでという太陽望遠鏡の成果がサイエンスアドバンスなどに掲載されております。
 それから、105ページがあらせ磁気圏探査機の成果になります。
 106ページ目が、また少し毛色の変わった成果になりまして、スペースステーションにラット(ネズミ)の実験で使っております人工重力発生装置というのがあるんですけれども、これを応用いたしまして、この中に写真で示すような砂時計状の物体を入れまして、中に砂、砂礫を入れまして、いろいろな重力環境でこの砂を堆積させて、堆積状況を観察するという実験をいたしました。これは低重力天体、月や火星などで着陸する場合にどういうふうに地面が挙動するか、もしくはローバやロボットを走行させるときにどのような路面になるのか、もしくは何か建設するような場合には土壌の情報が必要ですので、そういったところに役立つものと考えております。
 さらに、その下はデイノコッカスという細胞を宇宙に、ISSの曝露部に3年間露出いたしまして、その生存状況を調べたというものでありまして、数十年間宇宙でも生き残るということが分かりました。これは火星から地球に向けて生物がそのまま移動できる可能性を示したものです。これはたんぽぽ計画と呼んでおりまして、たんぽぽが綿毛を使って植生を延ばしていくのと同様に、生命も宇宙の中で発展していく、移動できることを示す実験結果になります。
 107ページ以降は参考資料になりますので省略いたしますが、107ページだけ御紹介させていただきますと、コロナで活動が制限される状況があったわけですけれども、それをはねのけて、はやぶさ2の回収のために100人に及ぶJAXA職員をオーストラリアに送りまして回収に成功いたしました。これを実施するためにはオーストラリア政府、南オーストラリア州政府に御理解をいただくということに成功したものと考えております。写真に示すように、ジャン・アダムス駐日オーストラリア大使に相模原に出向いていただくとか、メーガン・クラークオーストラリア宇宙庁長官にウーメラまで来ていただくというようなオーストラリア日本間の友好にも寄与できたものと考えております。
 説明は以上になります。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ありがとうございます。では、質問のある方。お願いいたします。
 篠永委員、お願いします。

【篠永委員】 少し教えていただきたいのですけれども、そちら相模原、今300名程度ということでやられているということですけれども、例えば、はやぶさ2にしてもいろんなミッションがあって、その中で例えば軌道計算については、もう完全に内部で閉じてやっているですとか、あと衛星の軌道修正についても完全に閉じているとか、一方、あるところ、例えばカプセルの気密の部分については外注をしているとか、そういった切り分けがあるかと思うのですけれども、その辺はどういうお考えでどういったことをやっているか。その辺を教えてください。

【JAXA(國中理事)】 これはJAXA全体のことになりますが、BCP――Business Continuity Planというのを立てておりまして、優先順位づけをして優先度の高いものは出勤をして活動しております。衛星維持や衛星の運用につきましては、これはBCPの中でも上位にランクされておりまして、それから先ほど御指摘のあったサンプルの取扱いについても、急を要する作業ですので、BCPで上位にランクして優先的に事業を実施しております。こんな考え方で行っております。

【篠永委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 続きましては、知野委員お願いします。

【知野委員】 ありがとうございます。今度、はやぶさ2の後はMMXということですけれども、はやぶさとはやぶさ2のときを比べますと、やはり技術者の方、研究者の方、人材を育てていらっしゃるし、それから情報発信に関しても格段によくなったというふうに感じています。そうすると、日本の宇宙科学のことを考えますと、MMXはもちろんですけれども、そこから先のことも含めて考えていかねばならないと思うのですが、そこから先はどのような計画になり、取り組んでいらっしゃるのでしょうか。

【JAXA(國中理事)】 分かりました。惑星探査というのを着実に進めて、確実、それから広範囲に進めていきたいと考えております。宇宙科学研究所が独自に自ら実施する計画とJAXA宇宙科学研究所の実力も世界から認められるようになってきておりまして、世界から請われてコンポーネントや我々の知見を提供するというような参画の仕方もたくさん進んできておりまして、こういったものをベストミックスで進めていきたいと考えております。
 一方、宇宙天文という領域につきましては、現在ASTRO-Hの後継機XRISM(クリズム)というのを開発しておりますけれども、これを2022年度に確実に打ち上げるということを今目下実施しております。その先の計画といたしましても、LiteBIRDであるとか、小型JASMINEであるとか、SOLAR-C太陽望遠鏡の後継機ですけれども、こういったものを実現すべく開発し進めているという段階にあります。

【知野委員】 分かりました。とてもたくさんあるのですね。

【JAXA(國中理事)】 はい、引き続きよろしくお願いいたします。

【知野委員】 ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ほかの委員の方で質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。
 中村委員、お願いします。

【中村委員】 ありがとうございます。文科省の委員の中村です。
 今回、コロナ禍にあってもサンプルの回収のためにオーストラリアまで要員をお送りになられて、無事回収されたというのはすごくよかったなと思うのですけれども、MMXに向けてももう既にそういう国際的な協調ですか、というのは行われているのですか。協力に向けて活動とか。

【JAXA(國中理事)】 はい、米国、それからヨーロッパからの協力の取付けにはもう既に成功しておりまして、ヨーロッパからローバを提供いただくと。ヨーロッパと言いましてもドイツとフランスの連合になるのですけれども。それから、アメリカにつきましても、中性子分光計であるとか、サンプル採取装置などの提供をしてもらう旨、協力関係が既に取り付けられております。それから、オーストラリア政府、また再び、三度ですね、ウーメラでの回収を考えておりまして、オーストラリア政府とも前広な交渉に取りかかっておるところです。

【中村委員】 10年ごとにサンプルが帰ってくるというのは、10年ごとにまた若い人に刺激を与えて、次は自分らの番だと思っていただける機会を設けられるということだと思うので、知野委員からもありましたけれども、その先についても着々と進めていただきたいなと感じました。ありがとうございます。

【JAXA(國中理事)】 ありがとうございます。御指導よろしくお願いいたします。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ほかの委員はよろしいでしょうか。それでは、科学探査のほうの御説明を終わらせていただきます。ありがとうございます。

【JAXA(國中理事)】 どうもありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 続きまして、ローマ数字3.3.8ISSを含む地球低軌道活動、ローマ数字3.3.7国際宇宙探査について、JAXA佐々木理事より御説明お願いします。

【JAXA(佐々木理事)】 ISSを含む地球低軌道活動、それから国際宇宙探査、佐々木のほうから御説明させていただきます。
 まず、ISSを含む地球低軌道活動ですが、A-147ページを御覧ください。自己評価はAとさせていただいています。評定根拠としては大きく二つございます。
 一つは、コロナ禍の中で、理事長からもございましたように、感染対策をしっかり取った上で、筑波での運用だけではなくて、野口宇宙飛行士の打ち上げ、これはヨーロッパや日本での訓練を受けて行っておりました。フロリダからしっかりと打ち上げを行っております。また、様々な実験の成果回収におきましても、カリフォルニア等に行きまして回収を行っているというところです。
 特に、こうのとりにつきましては、布野理事からも報告ありましたように、種子島から5月に打ち上げました。宇宙ステーションにおきまして、期限の切れたバッテリーを運用していましたが、遅れを許さない状況の中でバッテリーを輸送するという役割を担いまして、他の補給船が遅れる中で確実に計画どおり打ち上げて補給を完遂したということが一つ特筆されるものです。
 それから、もう一点はきぼうの利用です。10年間かけて様々な成果、それから民間への移管といったことを行ってきましたが、昨年度は新たな取組を行っています。大きく四つありますが、一つは科学技術のところで臓器創出を目指したiPS細胞を用いた立体培養の技術の開発、また創薬分野のニーズが高い膜タンパクの結晶化技術の開発というのに取り組み、技術実証を行いました。また、JAXAでできない民間の事業として宇宙放送局やアバターのような取組も昨年度から開始しております。さらには、アジアンハーブ、ロボットプログラムチャレンジといった新しい取組を通して新興国、アジアを中心とした国々の宇宙参画や人材育成への貢献をしているということ。そして最後、國中理事からも御報告ありましたように、低重力環境を模擬するシステムを構築して、探査に向けた月、火星での環境における実験を開始するといったような新しい地球低軌道利用の可能性を開いたという点にございます。
 個別に御説明をさせていただきます。補足の151ページを御覧ください。
 ここはこうのとりの9号機の打ち上げを示しております。先ほど言いましたように、5月21日に、これは当初の計画どおりに打ち上げをして補給を完遂しました。各国の補給船が遅れる中で、計画どおり到着をしまして通常よりも1か月長い3か月間係留して廃棄等の貢献をしているといったところであります。
 今回、9号機全てが終わりまして、全て成功させたという点では非常に国際的なプレゼンスを確保できたのではないかなというふうに考えています。様々な技術的な成果については、宇宙開発利用部会等でも御報告させていただいていますが、この技術については、HTV-Xに継承していきたいというふうに考えております。
 次、御覧ください。152ページ、 宇宙飛行士です。宇宙飛行士の打ち上げに関しては、野口宇宙飛行士が昨年11月、さらに星出宇宙飛行士、今年の5月ですが、事前の様々な訓練を行ってきました。打ち上げについては、家族支援、それから健康管理、そして広報活動等必要最小限の人間が米国に行きまして対応したということでございます。
 また、長期滞在している野口宇宙飛行士に関しては、様々な科学実験だけではなくて船外活動によって宇宙ステーションの維持、発展に貢献してくれたとことになります。その中でも、特に民間の宇宙船で初めて外国人を搭載するということで、彼の様々な経験を踏まえて、Crew-1の4名においても非常に高いリーダーシップを発揮しながら貢献してくれたと思いますし、米国におきまして、副大統領自らJAXAの貢献というのを高く評価してくれたということはございました。
 次、この利用の分野ですが、153ページは民間の事業実証の場としての進展ということを述べさせていただいています。従来から民間への事業移管、民間の活用ということを行ってきましたが、超小型衛星放出につきましては、きぼうだけではなくてHTV-Xを使った放出、そしてタンパク質の結晶化実験についても民間への事業移管ということを進めております。
 それに加えまして、先ほど述べました宇宙放送局といったような新たな取組について、従来できなかった安全技術の評価、プロセスの効率化や安全要求に対する技術支援をすることによって進めるように取り組んでまいりました。その結果として、スペインのベンチャー企業の実験も実現して、スペインの国王からの感謝の意を述べられたといったような活動が進められております。
 それから、次のページ154ページは、さらにきぼうの能力向上といったことで、先ほど述べましたように、3次元の立体培養技術や膜タンパクの結晶化実験等、新たな取組を進めているといったところになります。従来のタンパク質結晶実験や静電浮遊炉、それから様々な遺伝子のマウス実験等の成果につきましては、それぞれアウトプットとしていろんな科学的成果が出ていますけれども、今後新しい成果が期待できるようになったというふうに認識しております。
 155ページ目は、国際的な新興国の宇宙参加、人材育成になりますけれども、従来から多くの新興国の衛星を打ち上げておりますけれども、今回きぼうロボットプログラミングチャレンジ競技会というのを開催しまして、太平洋で学生が313チーム参画をしてロボット協議会を実施したといったことや、アジアンハーブ実験につきましても、アジア太平洋で12か国が参加をして多くの関係者が宇宙実験を経験して人材育成にも貢献できたというふうに考えています。これらを通して、宇宙開発の特にアジア太平洋地域での日本の存在感を高めたというふうに考えております。
それから、156ページですが、日米関係という観点では、今回2021年から4年間の延長に際して日米オープン・プラットフォーム・パートナーシップというのを結びまして日米協力の強化を推進するというのが一つの計画の柱になっておりますが、JAXAが有しています小動物宇宙飼育システムや静電浮遊炉を使った日米共同の実験というのが始まっております。
 最後、157ページは低重力環境等を活用した軌道上での実験ということで、先ほど國中理事からも御紹介ありましたような惑星表面の重力依存性の調査を行うような実験についても始まっているということで、多くの新しい取組をして成果を上げてきたといったことを御紹介させていただきます。
続きまして、国際宇宙探査になります。ページは126ページになります。こちらも自己評価をAとさせていただいております。ポイントは、やはり二つございます。
 昨年度は、政府レベルで基盤的な協力の枠組み、月周回有人拠点ゲートウェイに関する日米間のMOUが結ばれたり、月面活動に関する多国間政治的宣言であるアルテミス合意、そして文部科学省さんとNASA間の意向表明――JEDIと呼んでいますが、こういうような協力の枠組みが構築されました。これに向けて、JAXAは2007年から国際宇宙探査協働グループという国際的な枠組みの中で主導的な役割を果たして大きな計画の立案、それから国際宇宙ステーション計画の成果を活用して米国、特にNASAとの技術調整を行って、基盤的な協力枠組みの下地をつくってきたというのが一つです。
 もう一点は、宇宙開発利用技術を支える中核的実施機関として、先ほどの合意に係る日本の貢献の各要素のシステム検討であったり、研究開発を行ってきまして、システムの実現性、それから技術の優位性を示すといったことで、国際的な各国からの高い評価を獲得して、これらの貢献要素というのをしっかりと枠組みに取り込んでいただいて、日本のプレゼンスの向上に貢献したといったことを述べさせていただいています。
 個別については補足で御説明をさせていただきます。
 まず、国際協力の枠組みの128ページになります。この国際宇宙共同探査協働グループですけれども、昨年まで3年間はJAXAが議長機関として月・火星のシナリオ、技術検討を主導してまいりました。このグループにつきましては、各国多くの宇宙機関が参加しておりますけれども、宇宙機関で議論をしたロードマップを取りまとめて、各宇宙機関がその政府に対して説明をして、政策に取り込んでもらうというような枠組みになっております。日本では、JAXAがこのロードマップを踏まえた提案を政府のほうにさせていただいて、様々な政策に反映いただいているというのが一つの流れです。
 一方、米国におきましては、NASAのほうが米国の国家宇宙会議においてこのロードマップの内容を御説明し、その結果、科学、月資源開発、有人火星探査といった多くを目的とした月のインフラ、サービスを開発するという考え方を米国の国家宇宙政策2020に反映していただいたというのが成果です。
 あわせて、このISECGにつきましては、議長国の間に15機関から24機関という参画国を増やすことによって、世界の人類GDPの80%の国が参加すると。こういうことで、世界の宇宙機関での宇宙探査の政策の活動について、日本のプレゼンスを高めたということがあります。
 それから、次、二つ、生命維持機能とゲートウェイの物資補給を129、130ページで御説明しておりますが、これらにつきましては、ゲートウェイでの日本の主要な貢献アイテムというふうになっております。
 生命維持機能につきましては、これがないとゲートウェイが運用できないという非常に重要なものになりますけれども、各国もそれぞれ分担ということでは目指しておりました。この中で、日本の技術が高く評価された形で認められたということになります。
 具体的には、主なものとして水再生システム、それから空気再生システムでございます。水再生システムについては、再生率85%以上で飲料水基準を満足するようなものをつくるということが目的になっていまして、地上でしっかりと実証することまで至っております。米国では、これらは85%まで達成できてないという状況でもありますし、部分的にではありますけれども高圧電気分解によって浄化再生技術を実証しているといった成果があります。また、ダイヤモンド電極等新たな技術のめどを得て、大体数十%の電力を抑えることが構築できたというふうに考えております。
 また、空気再生システムにおきましても、宇宙ステーションよりも狭い空間で、さらにCO2の要求濃度が厳しいという状況の中で、低消費電力で実現する見込みを得たことによって、今回の成果になっております。
 これらによりまして、ゲートウェイのMOUにこの技術で貢献していることが合意されました。今後、さらには月面活動においても、この技術を活用する。また、ここには書いてございませんが、こういう技術は地上にも反映できるだろうというふうな期待をしております。
 物資補給につきましては、現在ISSで開発していますHTV-Xを活用してドッキングシステムを開発しています。ゲートウェイにおきましては、宇宙ステーションに比べて人が少ないということで、有人が介在しない自動でドッキングする必要がございます。そのためには、近くまで接近するためのセンサー、そしてドッキング機構が必要で、これらについては、イノベーションハブ等で民間企業とJAXA共同で開発した高感度3Dの画像センサーを踏まえたFlash Lidarを開発してめどを得ているところです。
 また、ドッキングシステムにつきましても、高い軽量化かつ電力のほうも標準に比べて半分のピーク電力で運行できるようなドッキング機構の開発をして進めているといったことで、同じようにゲートウェイのMOUの中で中核機能になる物資補給機能で貢献するということで合意をしました。
今後、この技術は地球低軌道での様々なミッションにも活用できますし、このFlash Lidar自体は民生転用が期待されて、自動運転の車載センサーにも使われるというふうに聞いております。
 それから、次、補足4、補足5、131、132は、JEDIにおきまして、月面活動での日本の貢献ということで識別されているものになります。
 まずは、月面での表面探査技術ということで、各国水資源に関して取り組んでおりますが、日本は水資源センサー技術をしっかりと取り組みまして、世界初で月面での水重量濃度の直接計測のめどを得たというところで進めております。
 また、日本の得意でありますリチウムイオン電池につきましても、もともと世界最高密度のもののめどを得ておりましたが、月におけるミッション運用でも問題ないことまで確認をして、これらを通して、ここに書いていませんがJEDIにおきまして日本が着陸探査をして水資源等のデータを取得するといったことが示されております。また、これらの技術で将来の与圧ローバ等にも使われるだろうというふうな期待をしております。
 それから、132ページは有人与圧ローバに向けた研究開発になります。これは昨年2019年度の御報告でも行っておりますけれども、NASA、それからトヨタとの共同検討、それからトヨタ自動車の共同研究ということを進めてまいりました。JAXAだけではなくて宇宙産業枠を越えた多くの会社が参加して開発を進める体制を構築しております。
 さらに、本田技術研究所の高圧水電解技術等を活用した取組を開発しまして、より多くの民間企業が参加する仕組みを構築したということがあります。また、この油圧ローバに必要な月面でのデータ取得のために超小型ロボットを月面に送り込むというミッションを立ち上げまして、この月輸送サービスを民間企業とサービス契約をするといった新たな取組にも着手しております。
 アウトカムとしては、JEDIによってこういう日本の貢献要素というのは位置づけられましたから、将来月面での日本人の宇宙飛行士の活動機会を確保、また与圧ローバによって先進国としてのプレゼンスを確保できるといったような含みを考えてございます。
 最後、補足の6につきましては、参考ですけれども、さらに将来に向けたSLIMを発展させた着陸技術の精度向上や水資源の確保のための断熱性能向上といったような取組もしておりますが、ここでは割愛したいと思います。
 御説明は以上になります。お願いします。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対する御質問等ございましたらお願いします。
 じゃあ、髙橋委員お願いします。

【髙橋委員】 御説明ありがとうございました。ISSでちょっと1点お伺いしたいのですけれども、今後アルテミス計画ですとか、ゲートウェイなどへの参画が本格化していくと、JAXAのリソースをそちらのほうに徐々に移行していく、投入していく必要があると思います。一方、JAXAのリソースも限りがありますので、例えばISSのきぼうの運営そのものを民間に委託して、JAXAの負担を大幅に減らすというようなことも考えてもいいのではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

【JAXA(佐々木理事)】 はい、ありがとうございます。我々もそれも一つのオプションとして考えさせていただいています。ただ、これにつきましては、実際運営できるかどうかという実現性も含めてしっかりと考えていく必要があろうかと思っていまして、それについて、様々な企業さん等と意見交換とか、それから政府での委員会での議論というのを進めていく必要があるかと思っています。

【髙橋委員】 民間委託を実現するためには、技術的な能力ですとか、資金面とか、体制もあると思いますけれども、一つの選択肢として検討していただきたいと思います。

【JAXA(佐々木理事)】 はい、承知しました。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 それでは、知野委員お願いします。

【知野委員】 ありがとうございます。ISSでの宇宙放送局などのお話がありましたけれども、エンタメ系のことですね。これからJAXAとしては、こういうエンタメ系に対してどのように関わられるおつもりなのでしょうか。民間の宇宙飛行で今度宇宙ステーションに滞在する日本の実業家もいますし、これからそういう人たちが増えていくと思いますし、一方でこのエンタメ系をJAXAとしてはあんまりやり過ぎると最初の目的からそれてしまうかなという気もするので、その辺のお考えをお聞かせください。

【JAXA(佐々木理事)】 エンタメどうこうというような観点ではなくて、我々としてはISSの利用として大きく三つの柱を考えてございます。先ほども実証してきましたけれども、まず一つは科学的なサイエンスの分野としてしっかりとやっていくというのが一つ。それから、もう一つは、当然探査にむけた技術開発ですね。これを、ISSを活用してやっていくこと。そして、もう一つは、いわゆるエンタメを含みますが民間利用ですね、民間利用を促進すると。これによって国の予算を使わずに低軌道の利用を進めていくと。この三つを柱にして、これを例えば均等に三分割してやっていくのような考え方で進めていくというふうに考えていまして、これについては文科省などの委員会でも御説明をさせていただいてきております。

【知野委員】 その民間利用の割合というのは、どのぐらいのものを考えておいでなのですか。

【JAXA(佐々木理事)】 これは、最終的にはやっぱり3分の1ぐらいというのはまずはあって、我々が運用している間は3分の1ぐらいあるというふうに考えていますが、ここはやはり需要と供給の関係もありますので、段階的に広げていくのだろうなというふうに考えています。当然、JAXAが未来永劫低軌道活動を主体でやるというよりは、将来は当然民間のほうでしっかりやるべきだというふうに思っていますので、ISSというわけではないのですが、将来はしっかりと民間が運用できるようなものを目指して、それに向けた段階的な取組というふうな理解をしています。

【知野委員】 分かりました。それと、ISSの今後に関してはまさに国の政策、考えることだと思いますけれども、2024年以降、今のところは決まってないわけですよね。それで、この場合JAXAとしての危機管理ですが、老朽化もとても進んでいますので、やめるとかそういう話が出てくることも含めて、どのように危機管理体制というのを整えてらっしゃるんでしょうか。このままずっと続くということをもう前提にされているんでしょうか。その辺教えてください。

【JAXA(佐々木理事)】 ISSの運用については、もともと2015年までで、それから2020年、2024年と延長してきました。そのたびに議論あるところなのですが、使えなくなった、もしくはやめるときにどうやって廃棄するかというのは国際的にも議論を進めております。
 あともう一点、そうですね、危機管理というわけではないのですが、常に技術的な評価を行って、技術的に継続できるかどうかというのを行っているところで、現在ほぼ2028年、2030年ぐらいまでは技術的には継続できるんだろうなという見通しはできつつあるといったところです。

【知野委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 それでは、篠永委員、お願いします。

【篠永委員】 国際宇宙探査について質問させていただきます。まず、ISECGという組織ですけれども、これはいつできてどういった運営をしているのかと、あとJAXAさんは議長をされたということですけれども、これはどの程度の期間、議長という活動をされるのでしょうか。

【JAXA(佐々木理事)】 ISECGにつきましては、2007年からスタートしています。ちょうど当時月探査というのが一度注目された時期でした。運営ですが、基本的には宇宙機関が参加しております。特に中心的に行っているのがNASA、JAXA、ESA、CSA、ただしここには中国、それからロシアも参加をしています。主に議長国としては、最初の四つの国が2年から3年、大体2年ぐらいですけれども、間隔で交代で行ってきているということで、今回、昨年の10月で交代をしましたが、それまで足かけ3年、2年強の期間、JAXAが議長国として推進してまいりました。

【篠永委員】 分かりました。この分野はかなり最初赤字でいろいろと成果があったということが書かれているのですけれども、ロビーイングといいますか、政治的な活動というのが非常に重要だと思うのですけれども、一方、宇宙探査では28名という人員が書かれているのですけれども、それで十分なのか、それともやりくりをされているのか、その辺もお教えください。

【JAXA(佐々木理事)】 宇宙探査につきましては、システムの検討、それから国際調整が始まった段階ということで、28名、かなり精鋭を集めていただいていますけれども、しっかり行っています。実は、その具体的なゲートウェイのプロジェクトのスタート、それからドッキング実証といったものにつきましては、実は有人部門の中で取り組むといいますか実行しているということで、それぞれ得意分野を活用しながら行っているといったところです。また、ローバの技術等につきましては、宇宙科学研究所のメンバーも参加いただいて進めるということで、オールJAXAで国際宇宙探査の準備を進めているといったことになります。

【篠永委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 笠谷企画官)】 ほかに御質問のある委員の方いらっしゃいますでしょうか。それでは、ないようでございますので、佐々木理事の御説明は以上でございます。ありがとうございました。

【JAXA(佐々木理事)】 ありがとうございました。

【事務局】 それでは、ここで休憩を取りたいのですが、当初15分の予定だったのですが、少し時間が押していますので、10分間の休憩にします。15時15分から再開いたしたいと思いますので、またその時間になりましたら事務局から再開しますので、よろしくお願いします。では、15時15分から再開させていただきます。

〔 休 憩 〕

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 それでは、ここからの進行は文部科学省の横井が務めさせていただきます。どうぞ皆様よろしくお願いいたします。
 それでは、早速ヒアリングを再開いたします。
 続きまして、ローマ数字3.3.11人工衛星等の開発・運用を支える基盤技術について、JAXAの張替理事よりよろしくお願いいたします。

【JAXA(張替理事)】 担当しております張替と申します。御説明させていただきます。
 まず、A-207ページを御覧ください。自己評価ですが、研究開発成果の最大化の観点から、特に効率的な環境試験を行うための技術研究の成果を複数標準類等への反映することができました。これによって、早期にJAXA内外のユーザーに対してこの新しい標準に基づく試験をしていただけることになりました。このことにより自己評価をAというふうにしております。
 それでは、詳細内容につきましては補足を御覧いただきながら御説明申し上げたいと思います。A-208ページのほうにお移りください。
 まず、年度計画の順序に基づきまして環境試験設備の利用拡大で2件御報告申し上げます。
 一つは、利用拡大に関わるベンチャー育成、コンテンツ提供ということで、JAXAベンチャーとして立ち上がりましたSEESE、右に書いてございますけれども、環境試験をワンストップのサービスで行うとする、これはベンチャーですけれども、そこに対して解析プログラムを提供して、試験設備だけではなくて解析までも含めて、ベンチャーのワンストップサービスの拡大に向けて貢献をさせていただきました。
 続いて、つくば市との協定に基づく利用拡大活動ということで、つくば市と相互協力の促進に関する基本協定を昨年度結ばせていただきまして、その中で産業振興に関する連携も評価するという項目を立てさせていただきました。その一環として、つくば市のスタートアップ推進室と協力をさせていただいて、設備の御紹介という会をさせていただき、参加企業25社程度が御参加いただいたということで、この協定で補助金で宇宙だけに限ってつくられた試験設備を産業振興という形で宇宙関係以外の方にも御提供できるという形になっております。
 続きまして、A-209ページを御覧ください。
 ここでA評定の根拠としております規定類への早期反映ということで2件御説明を申し上げます。
 一つは、熱真空試験要求の緩和・効率化ということでございまして、これは1970年当時、米国の標準を元にその試験要求がJAXA標準として定められているのですけれども、既に欧米ではユーザーに応じた試験の時間の長さといったものが選択できるようになっておりまして、このことがコスト増大の一要因となっていました。
 試験には、右のアウトカムのほうの図を見ていただくと分かりやすいのですけれども、熱真空の中で高温さらし浸し試験、上の赤いラインですね、それから低温のさらし浸し試験というがございまして、その中で長時間、72時間高温さらし、低温さらしをするというのがそれぞれ1か月標準の中で決められています。
 この存在理由というのがあんまりはっきりしてなかったのですけれども、それを過去の地上試験不具合7,000件以上を分析した結果、この長時間のさらし試験で出てくる不具合、アウトガスとそれから充填剤のリーク等に限られるということでして、そうであれば、アウトガスとかリークが関係のあるコンポーネントであったりとか、衛星の方々がこれを使っていただければいいわけではないかということで、この時間を廃止して今システム側で自由に設定できるようにした結果、最低の場合、アウトカムの右下にありますように、長時間の試験がなくなって3日間程度の試験で済むということになりました。
 2番目、音響試験技術の改善でございます。これは、昨今、PM、FMというステップを踏んだ開発ではなくて、つくったものをPFM、あるいは民製品をそのまま宇宙に打ち上げるということで、試験を地上でしっかりして、そこで不具合が出なかったら打ち上げるという、そういう形になっております。
そうすると、試験のための累積疲労というのがたまって、宇宙へ打ち上げる時点でその疲労がピーク、リミットを超えて不具合を起こすということがあり得ますので、累積疲労の管理に非常に手間がかかっていました。しかし、真ん中のアウトプットにありますように、過去H2Aで打ち上げた16機分のフライトデータを音響の情報を見ると、右のアウトカムにありますように、想定されたフライトによる疲労よりもかなり低い部分のレベルの疲労で済んでいるということで、最後の一押しで壊れるということは基本的にはないということが分かりまして、これによって累積疲労管理ということをしなくてもよいということが標準の中で改訂できました。
 これは、技術的にやはり重要ですので、日本機械学会とか海外の学会でもちゃんと御報告をして専門家の評価を受けて、この熱真空と併せて二つの標準の改訂につながったということですね。
 これは一昨年度、PPP的手法によって試験の運営を民間事業者に委託をして、その空いた時間といいますか、それで生み出されたリソースを試験技術の高度化に費やすべきだという昨年のこの本部会での評価委員の先生方の御意見、御指示等に沿うような結果が一つ、ワンストップでありますけれども、出せたのかなというふうに評価しておりましてAとさせていただきました。
 以降は、継続的な取組ということで資料をまとめておりますので、御覧いただければと思います。私からの御説明は以上になります。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して何か御質問等ありましたらお願いいたします。
 知野委員、よろしくお願いします。

【知野委員】 ありがとうございます。環境試験設備の宇宙以外の事業も含めて民間利用を促進されたということですけども、今、そういう民間の使用率とか、あるいは、これに伴って、何か費用収入とかはあるのでしょうか。どのぐらいなのでしょうか、それは。

【JAXA(張替理事)】 はい。昨年度コロナ禍ではありましたけれども、PPP的手法で、上手く運営が回りまして、46件の外部からの利用がございまして、それに基づく収入がありました。これは一昨年度と比べますと、15件ぐらい増えておりまして、コロナ禍でも、きちんと設備の運営がなされたというふうに理解しております。
 以上でございます。

【知野委員】 収入に関してはいかがでしょうか。どういう数字だったのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 それは、詳細は承知しておりませんが、この資料の中に、収入部分が掲載されていると思いますので、そちらを参照いただければよいかと存じます。

【知野委員】 はい、分かりました。何か目標値みたいなものをこれから設定されたりしていくのですか。これから毎年。

【JAXA(張替理事)】  いや。基本的には、やはり設備はきちんと運営していく。その中で、やはりその試験技術の向上にJAXAとしては、きちんと責務を果たすというふうに考えておりますので、利用の費用等々で目標値を定めてということでは、現在は考えておりません。

【知野委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、引き続きまして、平野委員、よろしくお願いいたします。

【平野委員】 文科省委員の平野ですけれども、JAXAベンチャーということで、今回環境試験の外部化ということでの御説明だと思うのですが、このJAXAベンチャーというものについてもう少し御説明いただきたいのと、今回の環境評価以外、ほかの部門も含めて、こうしたものというのは、JAXAの中で展開されようとされているのか。あと、認識があっているかどうかの確認なのですけど、これはベンチャーというぐらいですから、委託者としての事業なのかという点。したがって、せっかくある設備があるとか、こういった固定費の部分というのを少しでも外部化したり、オープン化したりすることによって、回収していく営みをやっていくべきではないか。その辺りの一つはJAXAベンチャー、もう一つは、こういったJAXAの資産、設備をオープン化していく取組について、どういうことになっているのか教えていただければ。

【JAXA(張替理事)】 はい。JAXAベンチャーにつきましては、これは1例ではございますが、それを担当している項目、年度計画の中で項目がございますので、そこで御回答を差し上げたほうがいいと思います。環境試験技術ということで、ベンチャーをやっているということではございませんので、そちらのほうに回答を譲りたいと思います。
 それから、環境試験技術の環境試験設備の運用を外部へ開放するということですが、これについては、まず、運用自体を外部の事業者の方に担っていただくことで、我々のその固定費を下げるということと、リソースを研究のほうに振り向けるということは、御理解のとおりでございます。
また、この宇宙に関する新規事業参入者がたくさんおられますので、そういった方々に有効に活用していただくような技術的なサポートというのは、JAXA自体でしっかりと続けていきたいと考えております。
 以上です。

【平野委員】 分かりました。じゃあ、また後ほど、別の御説明者に質問すればよいですね。

【JAXA(張替理事)】 はい、ベンチャーについては、そちらのほうでお聞きいただければと思います。

【JAXA(石井理事)】 すいません。石井と申しますけれども、ローマ数字3.4.1項のほうで、後ほど少し御説明を後ほどさせていただきたいと思います。

【平野委員】 はい、よろしくお願いします。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 続きまして、篠永委員、お願いいたします。

【篠永委員】 今回の評定なのですけども、国際標準への反映が非常に大きな成果であると挙げられていますが、例えば、高温低温さらしの時間が短縮したことによる、開発期間が3分の1に短縮と、そういったこととか、累積疲労が無視できると、そういったところが、標準に逐次反映されているとこなんですけども、私がお伺いしたかったのは、ここでISOの15864というふうに書かれているのですけども、こういった標準は、開発に対してマンダトリーな条件になっているのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 はい。衛星開発の主体によってJAXA標準を使うかどうかというのはデベンドしておきますので、少なくともJAXA衛星を開発する上で、JAXA標準がマンダトリーというふうに考えていただければ結構です。
 一方、ISOでJAXA標準をリファーしている場合もございますので、例えばISO標準を使う場合でも、この根本になっていますJAXA標準の中で要求を緩和するということは非常に大きな波及効果があるというふうに考えております。

【篠永委員】 分かりました。ということは、JAXA標準については、JAXAの発注開発品についてはマンダトリーであって、あとISO等の国際標準については、それは、それを使う開発組織が決めると、そういうことですね。

【JAXA(張替理事)】 はい、おっしゃるとおりでございます。

【篠永委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。ほかにはいらっしゃいますか。大丈夫そうですね。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、ローマ数字3.4.2、新たな価値を実現する宇宙産業基盤・科学技術基盤の維持・強化について、引き続きJAXAより御説明をお願いします。

【JAXA(張替理事)】 引き続きまして、担当いたします張替のほうから御報告申し上げます。
 ページはB-44ページを御覧ください。
 まず自己評価ですが、我が国の宇宙活動を支える総合的基盤の強化として、宇宙輸送の低コスト化、人工衛星の高性能化と高信頼化、それから宇宙活動の自在性確保に関して、顕著な成果があったこと。それから、また、新たな利用価値の創出として、通信衛星のデジタライゼーションに関する成果もあったということ。世界分野連携でも大きな成果があったということで、これらは、民間の宇宙産業参入やあるいは国際競争力強化、社会実装につながっとって、そういったことの観点から評価をSとさせていただきます。
 評定理由2ページにわたって書いております。詳細は補足資料を使って御説明申し上げますが、書き方だけ御説明します。太い黒字のアンダーラインは、JAXAがどのような技術で課題を解決したか。主にアウトプットな観点で書いております。赤い太字のアンダーラインについては、現時点で得られております、社会実装、契約等が結ばれた等のアウトカム、それから黒い細字のラインは、今後見込まれるアウトカムということになっております。
 それでは、詳細について、補足資料を基に御説明をさせていただきます。
 B-46ページを御覧ください。
 まず、宇宙輸送の低コスト化につながる成果として、自律飛行安全ソフトウエアの開発でございます。青い箱の中に、背景、それからこの研究開発の目標、そしてそれを解決するための課題を列挙しております。青い太字の中でアウトプットとして、その課題を解決するために、その番号ごとにどういう技術をJAXAが開発して成果を得たかということ。赤い部分には現時点で得られているアウトカム、オレンジの部分は期待されるアウトカムという、そういう形で全て統一して書いてございます。
 まず、飛行安全ソフトウエアですけれども、現時点では、ロケットからテレメーターデータを地上の高性能の計算機によってリアルタイムで予測して、図に見えますような青い落下域が、人がいるところに重ならないようなところでの飛行中断ならば、それでロケットにコマンドを指令しています。
このような方法ですと、飛行安全用に信頼性の高い地上局が複数必要になるということと、地上局のないところではロケットの動力飛行ができずに、ロケットの打ち上げというのが十分に発揮できないという、そういう問題がございました。
 また、民間打ち上げに関しましては、民間打ち上げ事業者の参入に関しましては、こういった地上局の配備やコスト負担になるということで、自律飛行安全ということを搭載計算機でできるアルゴリズム、そして飛行安全要求の適合性といったものを解決する必要がございました。
青い中で、その技術課題の解決方法について書いております。基本的には、ルックアップテーブルを使って、事前に落下域を想定しておくことで、地上での計算機の能力を、それほど使わないという、そういうアルゴリズムを二つ用意したということと、それから飛行安全の適合性については、過去のフライトデータ全てで検証するとともに、異常飛行のシミュレーションも行って、アルゴリズム的に大丈夫だということを、JAXAの飛行安全の要求に対して適合すると、そういう確認をしたということです。
 得られたアウトカムとしては、今年度打ち上げを予定しておられますスタートアップの民間企業のほうに使われて自律飛行安全で打ち上げられるということになっています。将来想定されるものとしては、基幹ロケットへの導入による自律飛行安全の発展、それから、計算機が向上することは、ヘルスマネジメントといったことにもつながると考えています。
 次のページ、B-47ページを御覧ください。
 これは宇宙輸送の低コスト化ですが、炭素複合材によるラティス構造と、それから非火工品の小型衛星分離機構について述べさせていただいています。ラティス構造は網の目のような構造を鋼材でつくるものですけれども、これでつくるときに、非常に重量は低くなるのですけれども、生産の工数が増えてコスト高になるということと、交点で座屈する可能性があるという課題がございました。
 それに対しまして、JAXAでは、置き型という円筒形のものに六角形の型を張りつけて、設置して、それにフィラメントワインリングでプリグレーブを一筆書きで書いていくということで、生産コストを下げるとともに、これで熱硬化した後は置き型を取れば、円筒形になりますので、すっと横に抜けて、物が出来上がるというそういう形のものを発明いたしました。さらに、その置き型の膨張を利用して、その交差部のところでの座屈を起きないようにしたということで、軽量を要求されDESTINY+のキックステージのダンカン部への採用が決定しております。
 非火工品につきましては、海外の品物は非常に高いということと、加工品だと衝撃が強いという、この課題を解決するために、アルミをうまく使う。あるいは、非火工品で分離ボルトがゆっくりと離れるような信頼性の高いリンク機能をつける等々の工夫を行って、スタートアップ企業のロケットに搭載するということが決まっております。
 次のページ、48ページになります。
 人工衛星の高性能化ということで、静止軌道用のGPS受信機の開発でございます。GPSを静止軌道で使うということは、遠距離の地球の陰を通ってくる電波を使うということと、もう一つは静止軌道だけではなくて、トランスファー軌道、低軌道から静止軌道に打ち上げられる、その軌道の高度が変化するところでも使いたいという要望がありまして、そのために、低いGPS信号、約10分の1ぐらいの信号から、それに対して、さらに50dBの信号の変動があるという中でGPS信号を正常にロックさせるという、そういう技術課題がありました。
 真ん中にあります課題解決の方法ですけども、米国等では高利得アンテナ等を大規模なのを作っているのですけど、我々のほうでは普通のアンテナで、複数の相関器を同時に動かすことで、その信号を合成することで、低い信号から、あるいはその低軌道のところで大きくなった信号も、引き続き、そういうワイドレンジのところで受信ができるアルゴリズムを開発して、低コスト化を図ったということ、JDRSで実際にGPSを静止軌道、この受信機を動かした結果として、右下にありますように、四つ以上の衛星が常時見えているということと、航法精度も要求の100メートル以下を十分達成できたということで得られたアウトカムとしても海外メーカーから、もう既にこういった製品はございませんので、RFIを受けるなど、国内外市場の製品等には採用が決定しております。
 あと得られるアウトカムとしては、トランスファー軌道で電気推進を使って、ゆっくりと軌道を上げていくという、そのときに制御を要求されるところでのGPS受信機というのはこれしかございませんで、採用が決定しているということと、将来月近傍でのGPSの利用も開けるという期待されております。
 続きまして、49ページでございます。
 宇宙活動の技術体制の確保ということで、少量多品種の生産ができる新しい生産方式ということで、宇宙用半導体はロットの大きい製品ですと、ロットも大きいのですけども、少量宇宙用で使うというところになると非常にコスト高になるということです。
 そのために、産総研で開発したミニマルファブという、そういう新しい技術があるのですけれども、これが安定的に製品をつくることの技術が非常に難しかったということで、それについて我々のほうはチャレンジしてまいりました。
 右の青い箱にありますように、2017年から、一つのトランジスタをつくるというところからシフトレジした。そして、4ビットの計算機。そして、昨年度は、物理的構造もつくるということで、MEMSのRFスイッチも同時に制作することができたということで、一つの半導体上で、アナログ、デジタルの双方のほうで回路をつくり上げることができると。しかも少量で、多品種ができるということで、コスト的にも、1ロット数百万円ぐらいということで、民生用の大きなロットで大量のお金がかかるものに比べると、宇宙に関して自在性が確保できる。そういう状況になったということで、これ自体、まだ搭載が決まっているわけではありませんけども、こういうことができるということが、JAXAが出したことによって、宇宙ロット向けのものもできておりますし、民生用にもこういったものが使われるような動きができているというふうに聞いております。
 続きまして50ページになります。
 人工衛星の長寿命化を支える基盤技術ということで、バッテリーとリアクションホイールとで使われる軸受に関して、長年の基盤的な研究の成果を出しております。
 一つ、バッテリーに関しましては、寿命予測が難しいということがありましたが、右の図で、グラフがたくさん出ておりますけれども、劣化に伴ってバッテリーの中の各要素の温度の変化の幅が広いということが劣化にすごく効いているということが分かりまして、公差を5%から3%まで削減することができて、このことによって、バッテリー容量、マージンを少なくすることができる、20%下げることができたということと、さらに、こういう物理現象の物性の変化を見ることで、長寿命試験を短くすることもできました。
 また、軸受に関しましては、丸い軸受のものを四角にすることで、接触面積を減らして負荷を減らすということで、2009年から12年間打ち上げた物に関して、一つも不具合を出していないという精度が出ているということで、今回ここで認めさせていただきました。
 最後は、三つ目ですけれども、新たな価値創造ということで、スタライゼーションということで、通信衛星に関しては、右上にありますように、ユーザー要求に十分に対応するフレキシビリティというのが要求されていまして、そのためには従来のアナログを使う過程から、観測をデジタルに変えていく。こういったことは、皆知っていたわけですけども、これを実際に実行するためには、高速に処理を行う、高速化デジタル処理技術、そういうための部品が必要になってきます。そういった部品が、なかなか入手困難であるところを、我々のほうでは、民生用部品のFPGAに対してラジエーション・ハードゥンド・バイ・デザインというデザインで耐放射線性を持たせるという技術を適用することで、民生品の最高レベルのFPGAでも、宇宙に打ち上げることができるということを証明いたしました。
 これには、従来の放射線を一遍に当てるというのではなくて、レーザーの一つ一つ、放射線に対する耐性を確認していき、それに対応した耐放射線設計の解析、回路を設計することで、現在最高レベルのFPGAでも宇宙に打ち上げるということを実証することで、ETS-9のいわゆる計画変更のところにちょうどマッチして、これのデジタル化というところに貢献しております。
 最後になります。B-52ページ、探査ハブです。
 これについては、従来のとおり、JAXAから投入する資金を超えて、民間事業者からの資金を得て数々の成果を出しております。
 民間事業化では、重機のアタッチメントの着脱であったりとか、はやぶさ2で使った除電システムを高真空のところであったりとか。あるいは、逆にはやぶさ2のほうにマリンレーダを活用するなどの成果が出ております。
 はい、私からの御説明、以上になります。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、ただいまの説明について、御質問等ございましたらよろしくお願いいたします。
 平野委員、お願いいたします。

【平野委員】 再び平野です。よろしくお願いいたします。
 張替さんの部隊というのは、今のお話伺っていると、ソフトウエア開発あり、ものづくりあり、それから、材料のバッテリーがありというようなことで、非常に広範な技術領域をカバーして、各プロジェクトを視野に入れているものと理解をいたしましたけど、それに関して二つ質問があるのですが、一つは、こうしたテーマ設定というのは、プロジェクトサイドのほうからの要請があって、そういう中からテーマを決めてって、それで、実際にこういう開発活動を行っていく。テーマ設定の進め方、考え方みたいなものについて少し御説明いただきたいというのが1点。
 もう一つは、今回の成果が多く出ていることはよく理解できたのですけども、非常に高い評価になった、もう1回、理由の確認ですが、こういった多くの分野で、並列的にそれぞれがアウトカムやあるいは期待できるアウトカムが見えてきたと。こういうことを全部、言ってみれば、合成してS評価になっている、こういう理解でいいのですか。それとも、何か突出したアチーブメントがあるのでしょうか。そこをちょっと確認させてください。

【JAXA(張替理事)】 はい。まず、最初の御質問にお答えしたいと思います。
 これは単元の名前から御説明できると思います。新たな価値を実現する産業基盤、それから、科学技術基盤の維持・強化等ということでして、JAXAで行うプロジェクトを基盤技術で支えるということで、広い研究領域を擁しているということでございます。一方、プロジェクトからの要請だけで研究開発をしていきますと、現在の最新の技術情報に沿った研究テーマの開発といったことができないということがあります。
 そこで、我々のほうは、まず、第一に注意するのは、社会の変化を鋭く見つめること。そして、宇宙産業の中で、今どういった技術が要望をされようとしているかといったことを、ユーザーからきっちりと聞いてくるということで、研究テーマの設定をしております。
 その一つの例が先ほど申しました、デジタライゼーションになりますけれども、ETS-9のプロジェクトが計画変更されたのは、先ほど評価のとこにございましたけれども、昨年度です。そこの研究が始めましたのは、そのプロジェクトが立ち上がってすぐという、約3年半ぐらい前になるのですけれども、そのときに、将来、このようなデジタルの動きが強くなるであろうということで、メーカーと一緒に、分担範囲を決めて、研究開発部門として、デジタルゼーションについて研究テーマを設定して、今年度成果として出させていただいているという形になることで、先読みをした研究テーマ設定というのは、非常に重要になってくるというふうに考えております。
 今回S評価ということにつきましては、我々技術開発というのは、毎年たゆみなく、新しい技術の開発の成果が出るようにということを心がけております。かつ、今年度についても、必ずそれが社会実装されたもの、あるいは社会実装の見込みがあるものということの観点で選んでいるということでして、それぞれが一つの高い成果であるということで、Sというふうにさせていただいています。
 ただ、こういった成果というのは、たゆみなく出していくということが重要ですので、昨年度とは全然技術報告の内容は違っていまして、来年度もまた違う分野で新しい成果を出し続けるということが、我々の使命だというふうに考えております。
 以上になります。

【平野委員】 ありがとうございます。三つ目の追加の質問ですが、大体幾つぐらいのテーマを含んでいるということなのでしょうか。今回御報告いただいているというのは一部であり、毎年、何らかのプロジェクトが成果を出していて、連続してS評価を出している、こういう理解でよろしいですか。

【JAXA(張替理事)】 はい。御理解のとおりです。大体3から5年ぐらいで、一つの成果、社会実装のところまで出すようにという形で、研究のマネジメントをしておりますので、そこから考えていただければ全体の数が分かるかなというふうに思います。
 以上になります。

【平野委員】 社会実装を行うということは、JAXAの中でのプロジェクトの支援ということを超えて、広く外に市場があるということをおっしゃっているのだと思うのですが、ということは、先ほど一部そういうことで言及ありましたけども、事業化を進めていく、知財化を進めていくということなので、かなり民間的な活動をされている部隊のように思うのですが、市場を見ながらテーマを決めるということを含めて。こういう認識、また、このミッションとしては、そういうふうにお考えだという、こういう理解でよろしいですか。

【JAXA(張替理事)】 はい。一部民間とは違うところもあります。我が国の宇宙活動を支えるという、経済安全保障、あるいは安全保障自体、活動も重要視しておりますので、必ずしも、民間的な活動一辺倒というわけではございません。
 先ほど申しました、そういう長寿命化のような検討は、我が国の経済安全保障を支える上で非常に重要な技術で、これは長期間やっていることでで、そういったものも走らせつつ、しかし、テーマの選定に当たっては、宇宙、あるいはその社会の変化することを見つめるということを念頭に置いております。

【平野委員】 ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、続きまして、篠永委員、お願いいたします。

【篠永委員】 はい、ありがとうございます。私からはまず、Sの根拠ということで質問したかったのですけども、先ほどの絶え間なく新しい成果を非常に多く出しているということで理解しました。
 それから、次は、テーマの選定についての質問、3項目ぐらいあるのですけども、まず、宇宙部品の少量多品種生産というのは、逆に過去20年ぐらい前だったと思いますけれども、衛星搭載部品の標準化というものが議論されていたと思うのですけども、それと、逆行すると言いますか、非常に衛星に特化した少量の部品をつくると、その辺の考え方というのも今言われていました、安全保障、要するに、日本だけの高機能なものをつくろうと、そういったところも関係しているのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 御質問ありがとうございます。従来の部品の標準化という考え方があることはあるのですけれども、これほど、部品だけでなく、システムアプリケーションの全ての変化が激しい中で、一つの部品を標準化して、それをずっと持ち続けているということが、我が国の宇宙活動を支える上では、それだけでは済まない状況になっていまして、クイックに、そのアプリケーションに合った部品を開発するということも非常に必要になってきます。その中で、ミニマルファブというのは、非常に大きなパワーを持つというふうに考えて、我々としては、3年、4年ぐらい前になりますけれども、ただ、少しずつ研究開発を進めていったという、そういうフォーカスの当て方になります。

【篠永委員】 分かりました。そうしますと、今回のETSのフルデジタル化に伴う民生品の耐放射線特性についての評価、これも同じような考え方かと思うのですけども、具体的にはどういった放射線に対する耐性を持たせる対策を取られているのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 これは回路の特性によって3種類ぐらいの耐放射線性回路設計技術を使っております。耐放射線性回路設計技術というのは、それ自体はあることはあるということですけども、どの回路、どの部分が弱いかということと、それに適当な耐放射線回路技術をその部分に適用するという、そこのマッチングを取らせるというところに我々のオリジナリティー、あるいは部品を使う、民生部品を使う上での技術がございます。

【篠永委員】 分かりました。この分野も海外でも同じような考え方で、民生部品の耐放射線の評価をしていると思いますけども、そう言いますと、今の考え方からいくと、ノウハウの蓄積といいますか、JAXAはJAXAとして、この回路にはこういう方式でやれば、寿命まで十分もつと、そういった考え方で開発されているということと理解しました。

【JAXA(張替理事)】 はい、おっしゃるとおりです。その中で我々はこのFPGAをつくっているメーカーとのやり取りもしているのですけども、「こんなことやっているの、あなた方だけですねという、この部品で」というふうなこと言われましたので世界のトップを走っていること、これは間違いないと思っています。

【篠永委員】 分かりました。あと最後の質問ですけども、バッテリーの高寿命化のところですけども、例えば静止衛星ですね。静止衛星ですと、商用の場合は、設計寿命が超えても、動けばバックアップ衛星として15年とか16、17年とか、実際に使っているわけですけども、そういった場合にも、この12年のバッテリーというのは、やはりその程度まで伸びる可能性があるということで考えてよろしいのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 物性からきちんと把握していますので、そういった高寿命というのは保証ができると思います。得られる見込みのアウトカムにも、衛星の2次利用ということで、静止軌道の場合は2次利用というのは十分考えられますので、そういったところにも展開できるというふうに考えております。

【篠永委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、知野委員、お願いいたします。

【知野委員】 はい、ありがとうございます。後ろのほうを見ますと、334人で、ここのメンバーになっていると。これ全員、研究者、技術者ということですか。

【JAXA(張替理事)】 そうですね。1番は事業推進部系の事業をマネジメントする者もおりますけど、約300名近くは、研究者、技術者というふうになります。

【知野委員】 はい、分かりました。それで、毎年ずっとSをつけられていますけども、成果が上がっているということなら、普通Aのはずですけども、毎年AではなくSでつけられる理由というのはどういうところにあるのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 毎年違う技術分野で、しかも、それぞれが社会に実装されている、あるいは図れる可能性があるというところまで、技術を高めているということで、Sというふうにさせていただいております。前年度と比べてということではございません。

【知野委員】 新しいものが、毎年出ているという、そういうことですか。

【JAXA(張替理事)】 そういうことですね、はい。おっしゃるとおりです。

【知野委員】 そうですか。分かりました。今年、いろいろありますけども、特に一番Sにふさわしいものは何だというふうに評価されているのでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 やはり宇宙輸送の低コスト化ですね。これは、民間事業の打ち上げの方々がやはり地上局を自ら設置すると非常にコストがかかります。この自律飛行安全というものがなければ、今年度打ち上げというのも、もしかすると難しいかもしれないというふうに考えられるぐらいの成果であったというふうに考えております。

【知野委員】 はい、分かりました。それで、この中でスタートアップ企業のロケットへの搭載が、安全に関しては、自律飛行安全ソフトウエアを開発、衛星の分離機構についても、スタートアップ企業のロケットとありますけれども、これはどちらも同じ会社ということですか。

【JAXA(張替理事)】 同じ会社でございます。

【知野委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。ほかにはいらっしゃらないようですね。次に進めたいと思います。
 では続きまして、ローマ数字3.4.1について、またJAXAより御説明をよろしくお願いいたします。

【JAXA(石井理事)】 J-SPARCなどの民間事業者との協業を進めております、新事業促進部と申します。理事の石井のほうから説明をさせていただきます。
 B-15ページを御覧ください。
 自己評価としましては、Aとさせていただいております。コロナ禍でビジネス関係も難しいところございましたけれども、幾つか顕著な成果が出てございますので、御紹介をさせていただきたいと思います。
 まず、B-18ページを御覧いただきまして、まずは全体を俯瞰させていただきたいと思います。
 この絵は縦軸が企業価値、横軸が成長段階ということで、おおよそ時間軸を見ていただければいいかなと思いますけれども。企業がスタートアップするというところから、さらに成長していくところに向けて、様々な施策が必要になります。これは、JAXAだけではなく、もちろん、経産省さん、内閣府さんの様々な施策が打たれているところ、そういったところとも協力させていただきながら、全体として、日本全体のこの宇宙の産業が盛り上がっていくように活動をしているというものでございます。この中に黄色い星を打っておりますところにつきまして、これから御説明をさせていただきたいと思います。
 B-19ページになりますが、これは現状をちょっと御説明した感じになっておりまして、一番上を御覧いただきますと、2020年度は、事業化等を目指した27の取組について、14名のプロデューサー、これが新事業促進部メンバーですけれども、社内の共創メンバー230人以上、これ、企業さんと共創活動するに当たりましては、有人宇宙部門であるとか、輸送部門であるとか、中堅のメンバーであるとか、それぞれの専門を持っている皆さんに参画をしていただく部分が必須です。こういうところを、参加してくれるメンバーがたくさん増えてきているという状況を御紹介しているところです。
それで、次のB-20ページでございます。
 これに、今年度の活動、J-SPARCの活動のアウトプットとアウトカムを紹介しております。アウトカムの一番のものは、JAXA技術が初めて、民間宇宙ベンチャー衛星のキー技術として採用され、それが打ち上げられ、運用が開始したというものです。具体的には、右にございます、SynspectiveさんがJAXAの小型レーダー技術、それから太陽電池のコンパクト化の技術、こういったところを使って打ち上げまでいって運用が開始されたというものです。
 それ以外にも、実証段階で早くも売上げの計上や事業化に向け大きく進展したものがございます。一つ、これは、真ん中の赤点線になりますけれども、BOSAI SPACE FOOD、ワンテーブルのものにつきましては、左側に書いてありますように、22都道府県自治体に導入が決定し、昨年度は九州豪雨ですとか、福島沖地震に実際に活用をいただいております。
 真ん中の宇宙アバターにつきましては、ANAホールディングスさんと世界初の宇宙アバターの実証を行っていまして、これを使って地方の展示館との遠隔見学という実証も進めてきてまいりました。
 さらに、パスキュールさんとも、KIBO宇宙放送局というものをして、昨年8月に、JAXA、外からの遠隔操作による双方向ライブの配信というのを初めて行っております。これは有人部門でも、事務員のほうからも、エンタメ系技術について民間企業と組んで、こういう新しい活動が実際に事業として成立するかというところ、これの技術的なところは有人部門に参画していただいて進めているというところで、企業との共創の活動につきましては、新事業促進部のほうでプロデュースをさせていただいております。この事業、昨年の大みそかから新年にかけての「宇宙から初日の出」という企画をさせていただきまして、YouTubeの動画では、555万以上の視聴をいただいたということでございます。
 ここでは、その下にアウトカムにもございますが、TwitterJapan社が、これに参加していただいておりまして、1,250万ツイート以上あり、これは1,000万以上というところで、クライテリアをもっていたのですけれども、上限100万円の寄附ということをお約束いただいておりまして、実際にこれが実現したというものでございます。
 さらに、右側のほうに参りまして、次世代教育ということで、宇宙飛行士の訓練法を教育教材に使用したSpaceBDが、実際に4校に導入が決定ということで、実証フェーズからさらに、市場等のとこに近づいていくということを御覧いただければと思います。
 さらに左下、新しいものも立ち上げております。ヘルスケア分野の初のプラットフォームということで、THINK SPACE LIFEというものを立ち上げて、約65社の参加を得て活動を開始したところでございます。既に活動が進みまして、宇宙ステーションきぼうでの生活用品への採用というものも幾つかされたものでございます。
 アウトカムのところ、さらに御紹介しますと、先ほど申し上げました、ANAさんとの宇宙アバター、これにつきましても、官民共創の活動がハーバード・ビジネス・スクールの教材になったというところもございます。
 ということが、J-SPARC、今年度の主な活動成果でございまして、次のページに参りまして、B-21ですが、JAXA発ベンチャーにつきまして、平野先生のほうから御指摘といいますか、御質問いただきました。このBの21の一番上に書いてありますが、JAXAベンチャー支援制度は、機構の知的財産等を利用し、職員が出資し設立する会社に機構が支援を行うことで社会課題の解決または産業の活性化等に寄与する事業の創出を促進することを目的としております。既に、過去7社ありまして、2020年度もう1社立ち上がりまして、合計8社となっております。その進捗については、JAXAの中での委員会で、その進捗を確認しておりまして、ほとんどのものが順調な進捗であり、特に赤字で書いてありますDATAFLUCTと天地人につきましては、アウトプットのところに書いてありますとおり、大きな成果といいますか、進捗を得たというところになってございます。
 次のページは、B-22ページでございますが、人材の育成ということで、ここは計画どおりに進めているというふうにお読み取りいただければと思いますが、一つ、左下に書いてあります、クロスアポイントによりまして、インターステラへの人材の交流ということを実現しております。
 さらにB-23ページに参りまして、J-SPARCの活動のところの評価を、今年度ちょっと新しく分析をしたページでございまして、一番上のところの枠のポツに書いてございますが、事業共同実証活動における民間自己投資総額が4.85億円のところ、これに対するJAXAの投入金額は0.28億円となりまして、大きなレバレッジ効果を生んだ活動になっているということが分かりました。
 それから、最後、B-24ページを御覧ください。
 これはまだアウトカムまではいっていませんが、今年度から出資機能を法律改正でJAXAが得ました。これを実現するための制度整備を2020年度、JAXA内に関係部署のメンバーを糾合しまして、検討チームを設けまして、昨年度内に必要な制度設計を終了、規程整備を終了しております。
 ということを御紹介いたしまして、私からの説明は以上でございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して質問等ございましたらお願いいたします。
 それでは、知野委員、お願いします。

【知野委員】 ありがとうございます。この民間支援ということで、いろいろやっておいでになりますけども、出資機能ができたりとか、あるいはいろいろ協力するということで、非常に外から見ていると、利益相反を生んだりとか、倫理問題はどうなっているというような、そういう懸念もありますけども、その辺で何か組織内で対策や対応を、どのようにしていこうとお考えでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 御質問ありがとうございます。まさに、組織のなかということもありまして、社内でも、リスクの分析の中で、社内的なリスク、大きなリスクの一つに、利益相反を生じる可能性というところが、社内で分析といいますか、識別をされております。これは全社的にモニターをする活動を行っておりまして、具体的にはそのリスク対策として、職員への教育、これは利益相反案制度というのがございますけれども、制度あるだけでは実効いたしませんので、職員への教育活動というものを行って徹底していくということを掲げてやっているところでございます。

【知野委員】 何か今までと違う工夫とかはあるのでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 まずこれからというところではございますが、今年度のところについて。

【知野委員】 これから作られていくということですね。

【JAXA(石井理事)】 社内で教育を行うというのは、利益相反についての教育というのは新しいものでございます。倫理規程の教育とか、そういったものは、あとは、セキュリティーの教育とか、安全の教育、こういったものは既に行っていたのですけれども、利益相反については、新しく教育をするということで、教材の作成からJAXAの中で検討を着手しております。

【知野委員】 分かりました。ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、平野委員、お願いいたします。

【平野委員】 一つ、二つ伺わせていただきたいのですけども。一つは、どのページですかね。JAXA職員の人たちのアイデアを事業化したということで、10ぐらいの事例が並んでいたかと思いますが、これは、基本JAXAの技術者の方々に、こういう仕組みがあるということを提供し、彼らの包括によって事業化が行われている。その分は審査して一定の基準を超えれば、JAXAとして支援をするという、こういう取組だという理解でよろしいですか。

【JAXA(石井理事)】 御理解のとおりです、はい。

【平野委員】 それで、ということは、JAXAの職員の人たちというのは、それぞれの業務があるのですけれども、特に技術者に関しては、こういう形での事業化とか起業ということを、組織全体として促進するという、そういう意味においては、副業も含めて取り組むことを、むしろ、エンカレッジしているという、こういう理解でよろしいでしょうか。これ、一つ目です。
 二つ目の後ろのほうで、ベンチャーを立ち上げているリスクマネーを提供するということなので、これまでは、リスクマネーの提供まで行わなかったけども、これからは出資もするし、これはファンドという形でやろうということはある程度リターンを取っていきたいということのように見える。この場合、多分、技術的には良いものがあっても、本当にビジネス化していくというふうになると、契約条件というのはむしろ、ビジネスサイドのほうのアドバイス力であったり、指導力だったりするわけですけども、そういうところの担保、人材も含めてどういうふうに考えていかれるつもりかということと、この今回のファンドの規模、金額的にはどれぐらいのことを考えていらっしゃるのか、この辺について教えてください。

【JAXA(石井理事)】 はい、御質問ありがとうございます。一つ目のJAXAベンチャー、Bの21ページだと思いますが、はい。まず、御理解のとおりの制度でございますということと、それからJAXAは兼業を奨励しているかということにつきましては、もちろん、本業を優先といいますか、本業がしっかりと進められる、プロジェクトや研究開発で成果を出す、これは大前提でございますけれども、職員がさらに兼業を希望するという場合につきましては、もちろん健康面等も確認した上で許可するということになりますが、制度自体、何と言うのでしょうか、審査みたいなものが過去あったのですが、それをやめて、届出制に変えております。それに変えたということからしても、職員の自己的な行動を奨励しているというふうに御理解いただければと思います。
 二つ目の出資につきましては、ビジネスサイドの知識、評価、これは重要だというところ、全くそのとおりでございまして、こういうところにつきましては、金融機関ですとか、それから投資会社の知見をいただこうというふうには考えております。そういう観点で協力して、ファンドを持って、それから、JAXA発ベンチャーのほうでもなんですが、我々委員会をもって、この会社に対しての評価とかアドバイスを行っておりますけれども、そこには、インキュベーターという知見を十分お持ちな方に参加していただくという形で、知見は補ってもらっているというやり方を取っております。
 それで、金額につきましては、これはもう法律で、研究開発法人の出資制度につきましては、自己収入を充てることができるということになっておりまして、運営費交付金は充てることはできません。したがいまして、自己収入の範囲ということになりますが、自己収入の使う範囲といいますか、結構使う予定のお金がございますので、明確に申し上げるのは難しいですけれども、年間であっても、1億円に満たないのではないかというふうに予想しているところでございます。

【平野委員】 分かりました。兼業をこういう形で促進されるというのは、ある意味、健全ですけど、一方、JAXAの知財が流出その他ということもあるかとは思います。非常に寛容な取組かなというふうに思いますけども、この辺の権利関係等も含めて、それからリスクマネーについては、ベンチャーキャピタルから行きますけども、よい技術、よいポテンシャルを持っているのであれば、外部資金を積極的に導入していくという考え方、このほうがガバナンスも利くと思いますので、そちらを進めていかれるのがよろしいかなというふうに思います。

【JAXA(石井理事)】 はい、アドバイスありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、ローマ数字3.6.1につきまして、JAXAより5分程度で御説明お願いいたします。

【JAXA(石井理事)】 ローマ数字3.6.1でございますので、D-13ページをお開きください。調査国際部担当しております、石井のほうから御説明させていただきます。
 自己評価はAとさせていただいております。評定の理由でございますが、この一番上に書いてございますけれども、2020年度はコロナの状況もございまして、海外との往来ができないという状況でした。その中でも、JAXA事業における成果創出に対して、国際的な調整業務を行いました。
 もう一つは、このコロナ禍におきましても、外交当局、国連、関係機関との緊密な連携を行いまして、JAXA活動の政策的な意義を高めることで、我が国の外交にも貢献する成果が出たと考えております。
 さらに、調査分析におきましても、一つ大きな成果を出せたと思いますので、御紹介いたします。
 D-15ページ、補足説明資料を御覧ください。
 これはJAXA事業への貢献ということで、まず、左側にありますのが、アルテミス計画に対する政府レベルの枠組み構築の国際的な調整支援でございます。有人部門、それから国際探査センターのほうでは、この内容を進めるための技術的な検討でありますとか、従来の協力関係を生かした交流というところから支援をしたというところでございますが、我々としては、これを国際的な調整の支援、特にアルテミス計画につきましては、文科省さんとNASA長官による、月探査機協力に対する文科大臣とNASAの共同宣言、さらには日米両政府における民生用月周回有人拠点のための協力に関する日本国政府とNASAとの間の了解覚書、この二つの大きなものを締結するという時期にございまして、コロナ禍ではございましたが、一時帰国させていたワシントン駐在員事務所のメンバーをアメリカに再度派遣しまして、この活動に向けて、米国の国内での調整状況の情報収集等を行い、政府に適宜適切に情報提供することで、この計画、署名の締結に貢献をさせていただきました。
 もう一つ右側に、JAXAプロジェクトの支援ということで二つ書いてございます。一つは、H-2Bロケット9号機打ち上げ時のグアム局の運用ということで、輸送部門のほうでH-2A打ち上げで、クリスマス局にリモートでやったというのがありましたが、H-ⅡBの場合はグアム局に人を派遣するということが必須でございました。ここにおきまして、グアム州政府が、立入りを制限していたところ、日本政府からの働きかけ、それからNASAからグアム州政府への働きかけを行っていただくべく、我々のほうから調整をいたしまして、これを実行できるように支援しました。さらに、はやぶさ2のカプセル回収の豪州へのメンバーの派遣につきましても、豪州政府との調整を支援させていただいております。
 次に、D-16ページに参りまして、外交への貢献ということで、一つは左側に得られたアウトプットと書いてございますが、多国間協働枠組みということで、アジア・パシフィック・リージョン・スペース・エージェンシー・フォーラム、APRSAFで、宇宙法制イニシアチブというのを立ち上げました。こちらは9か国で、他国の国内宇宙法制の整備状況というものを調査検討するという報告書でございまして、これをアジア各国と協力してまとめまして、最終的には9か国政府のペーパーとして、国連宇宙平和利用委員会法律小委員会、青木先生が議長ですが、こちらのほうに提出ということをさせていただきましたが、アジアでのこういった活動は初めてというふうに評価をいただいております。
 右側に書いておりますが、2国間協力としては、オーストラリア政府との協力の強化、機関間の覚書、さらには、それを首脳会談で取り上げていただくというふうに、政府レベルでの評価をいただくというふうに活動をつなげてまいりました。
 最後にD-17ページになりますが、調査ということで、大きなものとしましては、右側の宇宙システム開発のデジタル化ということで、これは内閣府さんのほうでも調査検討を始められているところでございますが、先んじまして、JAXAのほうで、検討を進めて報告をさせていただいているところで貢献をさせていただきました。
 以上でございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、ただいまの質問に対して、質問等ございますでしょうか。
 髙橋委員、お願いいたします。

【髙橋委員】 御説明ありがとうございました。D-17ページですけれども、まさに、シンクタンク機能ということで、ますますこの分野が重要になってくると思いますが、例えばアメリカですとか、欧州がどのようなシンクタンク機能を持っているかというような、いわゆるベンチマーキング等はされたことがあるのでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 ベンチマーキングといいますか。はい、調査をしたことがございます。アメリカでは、エアロスペースコーポレーションというところが長年、そういった機能を持っていますし、民間の調査会社なんかも沢山使われているようです。さらに、ジョージワシントン大学の宇宙政策研究所というところもございます。ヨーロッパに行きますと、ヨーロッパ宇宙政策研究所SPというのがございます。これは10年ぐらい前から、ヨーロッパにつくられたものですが、いずれも、宇宙機関と独立しているというところに、私は特徴があるというふうに見ております。我々、この調査をやっておりますのは、一つのインプットと思っております。民間企業、さらには安全保障、そういったところを、より広く、国として調査をいただくということは、必ず必要なのではないかなというふうに思っているところでございます。
 以上です。

【髙橋委員】 ありがとうございました。やはり、他の海外のシンクタンク機能と比較して、このJAXAのこの調査分析機能分野をこれからどう発展したり、あるいは強化していくかということを常に考えていただいて、日本の場合は、あまり、民間でやっているような、そういうところはあまり私も存じ上げないものですから、恐らくJAXAが一番この分野では大きな貢献していると思いますので、ぜひこの分野をどう成長発展させていくかということを、ぜひまたJAXA内で議論していただければと思います。ありがとうございました。

【JAXA(石井理事)】 一つちょっと補足情報でございますが、今年度5月からだったと思いますが、三菱電機を中心に、民間事業者複数社が協力して、略称がアスペックという名前ですけれども、衛星技術の調査検討やシンクタンク機能の組織を立ち上げられました。これは我々も協力協定を結びまして、JAXAからも、検討に参画したり、知見を提供するという関係を構築するということを既に始めさせていただいております。

【髙橋委員】 はい、ありがとうございました。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。
 では、続きまして、ローマ数字3.6.2について、JAXAより説明をお願いいたします。

【矢入委員】 すいません、矢入です。質問の仕方が分からなかったので、今質問してよろしいでしょうか。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 はい、お願いいたします。

【矢入委員】 すいません。遅れて参加させていただきました、矢入と申します。

【JAXA(石井理事)】 よろしくお願いします。

【矢入委員】 B-17のところで質問させていただきます。このデジタルトランスフォーメーションの話が割と中段の青地のところに出てきていて、それで非常にこの書き方が抽象的で、逆にその中身が見えなくて、どういうことを目指されているのかというのをもうちょっと踏み込んで教えていただくことは可能でしょうか。よろしくお願いいたします。この資料の雰囲気からいたしますと、割と科学系とか建築系とかの大きな企業様で、割と比較的デジタル化が進んでなかったような企業様が、株主様とかにアピールするときに書かれているレベルとあまり変わらなくて、JAXAさんが目指されるレベルというのは多分全然そことは桁違いのはずなのですが、それが見えてなくてちょっと残念な資料になっているのではないかと思って御質問させていただきました。どうかよろしくお願いいたします。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございます。ここは、書き始めるとちょっとページがすごく多くなるということ。それから逆に、この中身は、研究開発部門という、張替理事が先ほど御紹介しましたけど、研究開発を広範に行っている部署を中心に検討をしたものでございます。
 これは、調査としては、欧米のかなり進んでいるDXの情報というのを収集したりとか、国内でもかなり進んでいる自動車業界の情報とか、そういったところを集めた上で、これを宇宙業界の、我々製造はしておらず、JAXAは研究開発とプロジェクトマネジメントという形になりまして、実際にプロジェクトで物をつくるとなると企業さんになるわけですが、我々として研究開発からプロジェクト取組に当たっての製造のところまで踏み込んだ、デジタル化というのをしないと効果がないということで、これは民間企業さんとも一緒にこれやらなきゃいけないのですけれども、研究開発から最終的なプロジェクトに行くまで一貫したデジタル化、これが重要であるということで、そういうコンセプトをかなり検討して方向性を示したというようなものでございます。
 ですので、これから実際に、ではどこの、例えば設計のツールとか、評価のツールをどうやってデジタル化を深めていくかというのは、まさに担当企業を入れて進めていかねばならないと、これからのことの方向性までの調査をしたという話でございます。

【矢入委員】 ありがとうございます。今のお話聞いてちょっと安心いたしましたのは、JAXA様自体の研究開発業務での、目指されるデジタルトランスフォーメーションというのは、ある程度かなり達成されていて、これからここでおやりになりたいことというのは、日本の宇宙産業全体のデジタルトランスフォーメーションの目指すべき姿を目指されているということなのかなと。

【JAXA(石井理事) おっしゃるとおりです。

【矢入委員】 その辺、何かこの資料だと誤解が生じるおそれがあるのではないかと思いますので、何か文言のほんのちょっとした修正の検討をなさるとよろしいのではないかと思いました。ありがとうございました。

【JAXA(石井理事)】 すいません。限られた紙面の中で少し誤解が生じるような表現になったのかなというふうに思います。検討させていただきます。

【矢入委員】 JAXA様の取組は、ほぼかなりハイレベルになっていらっしゃるというニュアンスが出るように書かれたほうがよろしいかと思います。ありがとうございます。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。御質問がおありの御委員の方々は、JAXAの御説明中でも構いませんので、「手を挙げる」のボタンを押してください。お願いいたします。
 それでは、続きまして、ローマ数字3.6.2につきまして、JAXAより説明をお願いいたします。

【JAXA(石井理事)】 続きまして、広報部も担当しております石井のほうから御説明いたします。
 D-25ページ御覧ください。
 広報、それから宇宙教育というところになります。自己評価としましては、Aとさせていただきました。昨年度は、長年の活動が花開いたようなアウトプットといいますか、成果が出たというところで、Sとの評価いただきましたけれども、2020年度はコロナウイルスの状況になりまして、広報活動、それから宇宙教育、状況が一変したということになりまして、昨年からの連続性というところは、もうほぼ難しい評価になって、ここからさらに積み上げていかなきゃいけないかなという状況ではございますが、その中でも顕著な成果を出すことができましたので、御紹介したいと思います。
 D-26ページはその活動実績と結果でございますので、適宜御参照くださいということで、D-28ページにお移りください。
 まず、広報活動は、もうリモートということで、完全に移行いたしました。記者会見、記者説明会、個別取材ともに、完全リモートで実施すると、こういうことができるようになったのは、JAXA内でのセキュリティー情報基盤がしっかりしていたということだとは思います。それは、また別のところで御紹介いたしますけれども、そういったものを使って、継続的な活動をさせていただきました。
 20年度は、こうのとり9号機打ち上げ、はやぶさ2カプセル回収、野口宇宙飛行士の搭乗するドラゴン宇宙船打ち上げ、こういった大きなところがございまして、事前の勉強会、記者説明会、それから個別の取材ともに、基本的にリモートでやらせていただいております。
 はやぶさ2は、特に、日本からの取材陣がオーストラリアに入ることができないという状況になりまして、最小限の広報部要員をJAXAから派遣しまして、報道メディアに対してできる限りのリアルタイムの情報提供を実施させていただきました。
 次のページに参りまして、新たな発想・技術を取り入れた活動ということで、まず、JAXAシンポジウム、これは年に1回、会場にお集まりいただいて実施してきたのですけれども、今年度完全バーチャル、完全リモートで開催させていただきました。今回、おおすみ打ち上げ50周年記念の事業ということで、いろいろなコンテンツもそろえました。双方向のリアルタイムコミュニケーションの企画でありますとか、サイドイベントなど、様々行いまして、視聴者からも高い評価、95%をマーク。さらに、海外含め、従来参加困難だった遠隔地からの多くの視聴がありまして、10日間で前年度の10倍の視聴回数をいただきました。新規層の開拓もできました。この中で、下に書いてあります筑波宇宙センターバーチャルツアーでありますとか、公開ウェブサイトリニューアル、SNS発信とかも御紹介させていただいております。
 次のD-30ページに参りまして、WEB、SNSを駆使した外部連携ということで、JAXAシンポジウムの中で、バンダイナムコさんと連携しまして、はやぶさ2のカプセル帰還を盛り上げるため、はやぶさ2からのメッセージというゲームを企画しました。ここは、ゲームをクリアした女性が7割弱出ているということで、従来から宇宙開発に興味関心の薄い若い女性層への訴求に一定効果あったのではないかと考えております。
 さらに、その下に、丸3理解増進に係る効果測定の試行、これは毎年国民の理解増進、これは、どうJAXAとしては捉えるのかという、難しい命題をいただいておりまして、昨年度取り組んだものとしまして、まずは試行的ではございますけれども、広報コンテンツを見て、その後見た方の心情がどう変わるのかというところを分析するという活動に着手をしております。まだ、結論づけるようなアウトカム、アウトプットは出ておりませんけれども、こういったものを継続していきたいと考えている次第でございます。
 次のD-31ページ、最後のページでございます。
 宇宙教育につきましてもリモートでの活動になりました。
 教員研修というのも、完全にオンラインということで整理をいたしました。ただ、(2)に書いてありますけれども、オンライン型になりますと、これはプログラムの工夫によりまして、対面と遜色のないものができるというところまで手法を確立しまして、これによりまして、今度は参加の方のことを考えますと、今まで参加できなかった遠隔の方も参加できるということで、結果的には、大幅に受講者数が増え、効果が高まったというふうに評価をしております。
 それから、右上ですけれども、民間事業者との協力ということも進めておりまして、株式会社ノジマが「こうのとり」を題材としたプログラミング教材を、CSR活動として行うということに協力をさせていただきまして、潜在ニーズにさらに届くようなものができたのではないかと思っております。
 右下「宇宙のとびら」とそれから「宇宙のがっこう」という書籍の発行を行っておりますが、様々工夫しておりますけれども、今回は「かいけつゾロリ」という子供に人気のキャラクターと連動するという企画をいたしまして、一定の反応があったというふうに評価をしております。
 説明は以上でございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。ただいまの説明に対して。知野委員、お願いいたします。

【知野委員 ありがとうございます。今御説明のとおり、非常に早くリモートでの記者会見とか説明会に切り替えられて、迅速な対応をされたと思っています。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございます。

【知野委員】 こちらこそありがとうございます。やはりそちら様の持っていらっしゃるコンテンツというか、やっていらっしゃる事業というのは、やはり、現場での規模感とか、あるいは現場の技術者の方や研究者の方のお話を聞くということで、やっぱり私たちのような素人にも、非常に何が大事かとか、そういうことが伝わってくるのですけども、今後リモートばかりになってしまうと、その重要なものを失ってしまうということもあるので、判断というのが難しいと思うのですが、リモートとそれ以外に切り替えていく判断は一体どこでどのような形で行っていらっしゃるのでしょうか。その基準など、今後の見通しをお願いします。

【JAXA(石井理事)】 御質問ありがとうございます。難しいお話ですけれども、コロナの対策本部会議というのを理事長トップに開催しております。これは本当に緊急事態宣言下では、毎週開催しておりまして、今は不定期で、講習会もある程度はしておりますけれども、その中に、広報活動でも、ここは対策をしっかり打って、広報活動でも重要なものであるものについては、リモートでなく対応するというのは幾つかやらせていただいております。
 やはり重要なものというのは、具体的にはH3の初号機打ち上げに向けたところ、特に今年度でございますけれども、それから打ち上げが近づいている衛星についての取材、こういったところ、これはやはり重要事項というふうに我々考えまして、対策を十分打ってという条件を付しながら、対応するというふうにしております。

【知野委員】 分かりました。リモートだから、生で見えなかったものを見せていただいたりということもあるのですけども、やっぱり見えるものの力というのもある、見えて体験できるということの力もあると思いますので、よろしく御検討ください。お願いします。ありがとうございました。

【JAXA(石井理事)】 承知いたしました。アドバイスありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。
 本来ならば、ここで休憩を少し取りたいなと思うところですが、丁寧な御説明及び活発な御質問をいただいておりまして、少々時間が押してしまっております。できれば、この後の項目でも、適切で意義あるヒアリングを続けていきたいと思いますところ、大変恐縮ですが、休憩時間を省かせていただいてもよろしいでしょうか。
 進行が悪く、申し訳ございません。御協力をいただきありがとうございます。
 それでは、続けさせてください。はい。では続きまして、ローマ数字3.3.3、ローマ数字3.3.2、ローマ数字3.3.4につきまして、JAXAより御説明をよろしくお願いします。

【JAXA(寺田理事)】 それでは、ローマ数字3.3.3、宇宙状況把握につきまして説明をいたします。
 ページはA-29ページからとなりますけれども、宇宙状況把握では、宇宙状況把握の活動及び高性能の新たなシステムの整備、これは、地上の宇宙状況把握システムの整備ということで、これらを継続するとともに、新たに宇宙状況把握衛星に係る事業に着手するなど、顕著な成果の創出があったと評価して、自己評価をAといたしました。
 初めに、宇宙状況把握衛星に係る事業の着手ですが、A-31ページに示していますとおり、宇宙状況把握衛星に係る政府要求の実現と着実な実施に向けまして、JAXAの提案が認められまして、防衛省から、宇宙状況把握システム調査研究、概念設計、それから宇宙状況把握衛星姿勢制御用のソフトウエア、それからさらに宇宙状況把握衛星用試験評価用装置、こういったものを合計32.5億円の受託をすることができました。これによって、防衛省が進めるSSA体制の確立と能力向上へ貢献できるというふうに思っております。
 それから、宇宙状況把握活動に関連して、スペースデブリの観測技術及び接近、衝突回避技術の向上を目指した研究開発も行っておりまして、それについて研究開発の成果を上げました。
 一つ目は次のページですが、JAXAが開発いたしましたデブリ接近回避計画作成ツール、RABBIT、これを開発しまして、国内外の衛星運用機関に無償で公開しました。RABBITは、視覚的にデブリとの衝突を避ける最適解、いつ、どちらの方向に、どれだけの軌道を変えるかということを見つけることが可能となるツールでありまして、これまでスペースデブリと衝突を回避するために、衛星の軌道を変える制御論の最適解を見つけるまでには、何度も複雑な計算を繰り返さなければならない。軌道解析の専門家の力が必要であったというところでございますが、このツールRABBITを導入すれば、軌道解析専門家が不在のベンチャー企業や大学でも、接近回避計画作成と判断ができることになります。
 それから、次のページで、AI手法を用いた軌道予測の研究成果です。スペースデブリの衝突予測精度を上げるには、軌道予測に上げるためにAI手法を応用したということでございます。軌道予測の不確定さを生み出す主な理由は、大気密度であるということに着目いたしまして、米国SpaceTrackがウェブで公開しております軌道の履歴、あるいはその宇宙環境情報、それから従来の大気密度モデルの結果を機械学習しているということで行いまして、それを動的モード分解などの手法を用いまして、大気密度モデルを、その日その時間にどのように補正すればよいかという補正方法を確立いたしまして、実際のJAXAの衛星「GCOM-W」の軌道を用いて、精度検証を行いました。
 過去145本の「GCOM-W」の軌道域を用いた評価では、大気密度の補正量が正しく予測できた場合には、5日後の軌道の誤差を、2,000メートルから1,000メートルというふうに半減するという結果が得られています。その誤差を小さくすることができますれば、これまでその軌道誤差が大きくて、危険と判断していた接近を、誤差が小さくなることで、衝突する確率が下がり、より正確にリスク評価できる。
 それで、毎年度、デブリ接近解析に基づく接近警報の回数、それから実際に行った回避制御の回数というものを、毎年度報告しておりますけれども、2020年は、JAXA判断基準で、危険と見なされる接近は、年間138回。実際の回避制御の回数は4回ということでした。先ほどの研究成果を適用いたしますと、5日後の軌道誤差を半減でき、本当に危険な接近である4回まで、マニューバーの回数を減らすことができるということになります。回数を減らすことができれば、衛星運用現場や、あるいはその予報値作成の負荷軽減、さらには、本当にその必要な軌道制御だけしか実施しなくてよいということで、衛星の寿命の延長も期待できるというものであります。
 それから次のページ、A-34ページ目は、天文写真からスペースデブリを自動検出するツールについてです。1枚の天文写真からスペースデブリを検出するツールというものを開発いたしました。これは星図とのマッチングと公開されているスペースデブリカタログのマッチング、さらにはノイズ除去などの近年の画像処理技術を導入いたしまして、JAXAのスペースデブリ観測専用望遠鏡でデブリと識別された物体を100%識別することに成功したということであります。これによりまして、市販の望遠鏡でも、撮像写真からスペースデブリを検出できるようになるというものであります。
 それから、最後に、A-36ページで、宇宙状況把握システム、これは地上SSAシステムの整備状況を説明いたしますと、岡山県鏡野町にあるレーダー施設、それから、岡山県の井原市にあります光学望遠鏡と、それからつくばに設置される解析システム。これらは計画どおり開発するということで、今年度開発を目指してしております。
 以上、宇宙状況把握では、地上の宇宙状況把握システムの整備、それから、その他年度計画で設定した業務は計画どおり実施した上で、新たに、宇宙状況把握衛星に係る事業への着手、さらにスペースデブリの観測技術や接近衝突回避技術の研究開発などで、顕著な成果があったということで、Aといたしました。
続いて、ローマ数字3.3.2に行きまして、海洋状況把握・早期警戒機能等についてです。
 この資料での説明をいたしますと、A-16ページになりますが、我が国の周辺海域を取り巻く情勢が一層厳しさを増しまして、海洋権益が深刻な脅威、リスクにさらされている状況がある中、我が国の安全保障機関における衛星観測データの利活用がさらに進展して、MDAの能力向上を図られたことで、我が国の安全保障の確保に貢献し、顕著な成果の創出があったと評価いたしまして、自己評価をAといたしました。
 具体的には、1ポツ、国の安全保障機関のMDA能力向上への貢献ということで、ALOS-2のSARの観測データ、それからAISで取得した船舶情報、地球環境観測衛星データ等、海外の衛星データや海洋モデルのデータを複合的に利用したデータの恒常的な提供及び利用技術支援を行ったということで、国の安全保障機関における海洋状況把握への衛星情報の利活用の定着ということで貢献したところです。
 昨年度は、特に、モーリシャス沿岸で発生しました「わかしお号」の座礁事故ですね。この流出事故につきまして、ALOS-2、SARによる観測を速やかに継続的に行いまして、国際緊急援助隊専門家チームに対しまして、観測画像の提供を日々タイムリーに行いました。さらに、油流出回収に関する助言も行いまして、その結果、油の防除計画の策定等に活用されて、特にその初期の現地流出、油の流出範囲をモーリシャス島の沿岸のみに限られるということを特定することができまして、緊急援助隊参加機関、あるいは、モーリシャス政府等の現地対策本部、国内の関係機関での情報把握に貢献することができたというものです。
 また、ALOS-2のみならず、欧州のレーダー衛星や光学衛星データも国際災害チャータでも提供されまして、国際災害チャータに提供されたデータは、日本から遠方かつコロナ禍で、船舶等の派遣が困難な状況に対しまして、衛星観測地点の効果を発揮できたというものです。
 こういった結果から、その衛星情報、特にレーダーでの観測情報は、油流出についても非常に有用だということで評価をいただきまして、油検出に影響を及ぼすレーダーの観測、角度、あるいは風、海上の風速の条件など、油が海面にあるかないかについて、海面によるレーダー反射を定量的に比較評価いたしまして、油の検出に好適な観測条件を明らかにしまして、それで今後の油流出事故の際に迅速かつ正確に油の流出範囲を把握できるように、海上油の観測に関するガイドラインというものを作成いたしました。
 それから、2ポツ目になりますけれども、海洋基本計画に基づきまして、海上保安庁が運用いたします「海しる」ですね。これに対しまして、GCOM-Cや、衛星全球降水マップ等に対応できるように改修いたしまして、引き続き、地球観測衛星データの提供及び技術支援を実施したということで、GSMaPデータは地上レーダー観測範囲がいかなる海洋の降雨情報にも適用できるということで、「海しる」利用者の航行安全等にも寄与できるというふうに期待しております。
 それから、3ポツ目は防衛装備庁から受託した2波長の赤外センサーですね。これはALOS-3に搭載されるものでございますが、ALOS-3の打ち上げ準備を含めまして、年度計画で設定した業務は計画通り実施した。ということで、以上MDAの能力向上が図られたこと。それから、我が国の安全保障の確保に貢献し、顕著な成果の創出があったことを評価いたしまして、自己評価をAとしております。

【JAXA(石井理事)】 続きまして、ローマ数字3.3.4、宇宙システム全体の機能保障強化、担当しております石井のほうから御説明いたします。
 ページはA-41ページをお開きください。
 自己評価はBでございます。評定理由の一番上のところにございますが、内閣府や防衛省をはじめとする政府の安全保障機関、関係機関と連携し、年度計画に設定した業務を計画どおり実施したということでございます。
 もう少し具体的なところを簡単に御説明しますと、1、保証強化への取組としましては、まず、内閣府さん主催の宇宙システム機能保証強化机上演習、これは関係府省さん、たくさんの方が参加されたものですけれども、ここに宇宙関係の技術の専門家として、JAXAからも参加をさせていただいております。
 それから、ミッションアシュアランス強化を視野に、防衛省、装備庁さんとの連携強化を進めているというところが、四つ書かれておりまして、最初の二つは、寺田理事のほうで先ほどお話があったところですので割愛をいたしまして、三つ目は防衛省とJAXAの間で、今まで防衛装備庁さんと人材交流しておりましたが、防衛省さん本省とJAXAの間での人事交流が新たに始まりました。それから、四つ目としましては、防衛装備庁とのJAXA連携講座というところに、講師を派遣いたしております。
 その下にあります、宇宙システムの脆弱性評価と結果を踏まえた必要な取組ということで、まず一つは、内閣府さんからのお求めがありまして、軌道上サービスに関する共通ルールの策定の検討ということにおいて、中核的に役割を担って検討させていただいております。詳細は、ローマ数字3.6.3に書かれております。
 さらに、宇宙機関連システムのセキュリティー対策を検証いたしまして、セキュリティー対策標準を制定いたしております。今後新たなプロジェクトでは、これを利用し、高いセキュリティーを維持していくということにしております。
 一番下に書いてありますとおり、この標準の制定で得られた知見は、経産省さんの産業サイバーセキュリティ研究会内の宇宙サブワーキンググループの活動にインプットし、協力支援をしております。
 以上です。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、御質問、髙橋委員、お願いいたします。

【髙橋委員】 説明ありがとうございました。
 宇宙状況把握についてですけれども、補足2、補足3、補足4のスペースデブリの成果ですが、非常に感心いたしました。補足4から順番で見ると、天文写真を活用してスペースデブリをできるだけ漏れなく検出し、補足3で、検出したスペースデブリをAI活用して、衝突リスクを絞り込み、補足2で、衝突回避の軌道変更を簡便かつ短時間で実施するという一連のプロセスが、システムとしてよくできているなと思いました。
 S評価でもいいような気もしますが、A評価にした理由があるのかどうかお聞きしたいと思います。お願いします。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございます。S評価をいただけるというのは、それは大変うれしゅうございます。
 そうですね。まだこれ、例えば、開発したRABBITについては、一般公開をしているところですけども、まだ、関係機関がダウンロードした数というのも、まだそんなに多くありませんで、まだ完全に世界標準になっているというようなことにはなっていないとか、多少その辺、何て言うんですかね。厳しめに自己評価いたしまして、Aにとどめさせていただきました。

【髙橋委員】 了解しました。やっぱり個別の一つ一つのテーマというよりも、スペースデブリの発見から、最後に軌道変更という一連のプロセス中のシステムとして、強調されたほうが、成果がより明確になるのではないかなということで申し上げましたけども、今後もさらに、進化発展させて、今度はSを取れるように頑張ってください。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございます。本当に、この軌道デブリをどうやって観測するかということに関しては、これまで、デブリを観測していわゆる衛星に衝突しないように運用するということが、一つの我々の責任だと思っているのですが、それをいかに効率よくやるかとか、そういった観点でも研究を進めてきておるということで、それの取っかかりとして、初年度にこういった成果ができたということについては、私自身も非常によいことだったというふうに思っております。御期待に沿うように、今後頑張っていきたいと思います。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、篠永委員、お願いいたします。

【篠永委員】 私もスペースデブリの観測体制に関しての質問ですけども、日本においては、JAXAさんの岡山での光学望遠鏡とあとレーダーの観測以外にも、やっているかと思うのですけども、その辺との連携というのはどうなっているのでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 連携とおっしゃるのは、地上システムと宇宙の衛星による連携ということでしょうか。

【篠永委員】 そうではなくて、JAXAさん以外でも、スペースデブリの観測を、場所はたしか関東だったと思いますけども、やっていると聞いていたのですけども。ほかの省だと思うのですけども、光学望遠鏡だったと思いますけども、そちらで観測されていると聞いていたので、または、今からされると聞いているのですけども、そちらの関係との連携、JAXAさんとの連携といいますか、そういったことは。

【JAXA(石井理事)】 はい。基本的にこの宇宙デブリの観測は、連携先としては、防衛省とやってございます。民間等でも、その活動としてやられていることは承知しているのですが、具体的に、そのデータのやり取りをしているとか、そういうことは、すいません。承知していません。

【篠永委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 平野委員、お願いいたします。

【平野委員】 シンプルな質問です。例のモーリシャス沖の石油流出の観測、これは精度を上げて貢献したという話に関連して、こういったことは、わが国だけでなく、海外にこの技術的みたいなのを提供していくとか、広く公開していくとか、そういう予定がおありなのですか。

【JAXA(寺田理事)】 公開という観点というのは、今回このモーリシャスのデータについては、その現地対策本部、モーリシャス政府の現地対策本部に提供いたしました。それから、こういった観測については、国際災害チャータという形で、世界的な枠組みで、データを相互利用するというような枠組みで、公開というより、提供が相互にされております。

【平野委員】 特に誰かが提供するということではないのですか。

【JAXA(寺田理事)】 そうですね。まず、このチャータに入っているというところ同士でのデータのやり取りになります。

【平野委員】 分かりました。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、次に移らせていただきます。続きまして、ローマ数字3.7について、JAXAより御説明お願いいたします。

【JAXA(寺田理事)】 それでは、続きまして、ローマ数字3.7ですね。
 E-4ページになります。情報収集衛星に係る政府からの受託ということで、評定理由ですけれども、政府からの受託465億円、2020年度の受託額におきまして、内閣衛星情報センターCSICEとの幹部レベル及び現場レベルの緊密な連携調整のもと、必要な人材、連携体制を確保して、情報収集衛星にかける事業を実施いたしました。
 光学7号機は初期運用機能確認を終えて、政府に引き渡し、目標を達成いたしました。同機の機能性能等により、情報量の増加、情報の質の向上、即時性の向上等が達成され、求められる水準を上回り、過去号機との比較においても、政府から高い評価を得ています。
 また、各号機に係る政府要求の反映や実現性の高い提案、将来研究の実施なども併せて、本受託事業全体において、政府の期待と信頼に応える技術集団として、政府が掲げる「確実な4機体制」及び「10機体制の確立」という成果目標の実現に大きく貢献しているということで、自己評価をAといたしました。
 まず一ポツ、光学7号機でございますが、姿勢駆動装置の搭載台数の増強による俊敏性の向上、データ中継機能の搭載によって情報の量の増加、情報の質の向上、即時性の向上等を達成いたしまして、我が国の外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等への危機管理に必要な情報の収集に著しく貢献しているとともに、今後も継続的に顕著な成果を創出していく強い期待が寄せられます。
 また、2ポツで、各号機に係る政府要求の反映や実現性の高い提案、将来研究の実施なども合わせて、政府が掲げる目標の実現のために技術的に貢献し、10機体制の確立に向けた活動を確実に進展させました。
 これらについては、下の囲みに書いてある、令和2年度行政事業レビューによりまして、政府の情報収集手段として着実に成果を上げている、情報収集衛星の4機体制、光学7号機はその一つになりますけれども、4機体制を確実なものとしており、計画的に情報収集衛星の開発等を推進し、政府の情報収集機能の強化として、着実に成果を上げていると、こういった評価をいただいております。
 それから、3ポツ目で、宇宙システムとしての機能保証に関しまして、能力強化に関する取組を推進いたしました。
 さらに、4ポツ目で、コロナ禍の下でも、当該業務を行う部分は、機密性の高い情報を扱わなければなりませんので、テレワークができずに、全てが出勤しての業務ということを実施しなくてはならないというところで、各種の感染防止策を早期から推進しまして、その徹底によって、重要事業を遅滞なく完遂し、政府の打ち上げ計画に影響を生じさせなかったという、そういったことより、自己評価をAとしております。
以上です。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、御質問等ございましたら、よろしくお願いします。
 平野先生、お願いいたします。

【平野委員】 一つ、質問です。微妙な領域と理解しておりますが、この項目についてA評価になるというベースをもう1回。Bではなく、着実な進捗以上の顕著な成果というのは、どこが決め手なのでしょうか。

【JAXA(寺田理事)】 そうですね。1ポツのこの光学7号機ですね。これが、搭載台数の増強によって、俊敏性の向上、データ中継機能によってという、ここでのスペック以上に、情報の量の増加、情報の質の向上、それから即時性の向上等を達成することができたというところが、計画以上というふうに我々評価しています。

【平野委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、以上をもちまして、3府省共通の評価項目は終了となります。内閣府の委員の皆様には、これで御退出いただくことが可能です。長時間、御対応いただきましてありがとうございました。
 それでは、続きまして、ローマ数字3.6.3、ローマ数字3.6.4及びローマ数字3.6.5につきまして、JAXAより御説明をお願いいたします。

【JAXA(泉理事補佐)】 それでは、ローマ数字3.6.3、プロジェクトマネジメント及び安全信頼性につきまして。安全信頼性を担当しております、泉理事補佐の方から説明させていただきます。
 今回の自己評価をAとさせていただいております。
 以下、その内容について報告させていただきます。D-75ページを御覧ください。
 評定理由・根拠のところでございますが、二つ目のパラグラフ、3行目赤字のところです。こちらで3ポイントを説明させていただきます。
 まず一つ目です。SE/PMプロフェッショナルの育成を目的とした若手中心の技術ワーキンググループ活動を実施いたしまして、人材育成のみならず、有用な文書作成など、SE/PM活動への成果を得たのが、一つございます。
 二つ目ですが、金属積層造形技術など、新しい技術の宇宙応用における品質・信頼性向上を実現したことでございます。
 三つ目ですが、安全信頼性の確保に関わる知見につきまして、外部機関との情報交換を推進し、リスク低減活動の共同実施による新規参入企業のミッション成果に貢献するというもので、顕著な成果を創出したと考えております。
 以下、この3件につきまして、補足資料のほうで説明させていただきます。
 D-77ページを御覧ください。
 まず、一つ目。SE/PMプロフェッショナルの育成でございます。得られたアウトプット、中段、青枠のところの丸2に記述しておりますSE/PM研修ですが、今年度フェーズアップを行ったプロジェクト、プリプロジェクトのチーム員、これの受講率、これは従来35%と大変低うございましたけれど、これを向上させまして、100%達成をすることができまして、プロジェクトの強化につなげたというものでございます。
 アウトカムでございますが、赤枠の中、二つ目の中ポツ、ワーキンググループ活動を通じまして、SE/PMガイドラインのサマリーとなります「リーンガイドライン」、それからMBSE入門書と、この本を作成することによりまして、JAXAのSE/PM活動に貢献したというものでございます。
 続きまして、D-80ページを御覧ください。
 S&MA手法の革新と新規技術への対応というとこでございますが、アウトプットでございますけれども、青枠の中、二つ目の赤ポツ。金属積層造形技術の宇宙分野への適用のためのガイドラインというものを制定いたしました。それを、ETS-9など、複数のプロジェクトやメーカーで活用を開始してございます。
 トポロジー最適化やラティス構造といったものの試作評価を行いまして、これもガイドラインの有用性を確認いたしました。併せて、ソーラーユーザーに対して掲示できる試作評価試験結果を得たことでございます。
 これに関するアウトカムでございますが、下のアウトカムの欄、最初のポツですけれども、トポロジー最適化につきましては、早稲田大学が「ねじゼロ衛星」としてプロジェクト化いたしまして、革新3号機に採択されてございます。
 それから、ラティス構造につきましては、その機械的特性評価アプローチが、金属積層造形の最大手であります、NTTXAM社がホームページに引用されまして、これが非宇宙分野で参照されているという状況に至っているということでございます。
 続きまして、D-83ページを御覧ください。
 安全・信頼性の確保に係る知見についての外部との情報交換推進ということでございますが、アウトプットでございますが、青枠の一つ目のポツ。ベンチャー企業の中で、安全・信頼性に係る取組や課題を共有する知見としまして、JAXAベンチャー座談会というものを開催してございます。さらに、ベンチャー企業を支援する仕組みといたしまして、「宇宙機開発経験者、S&MA人材」というものを立ち上げまして、その人材を登用し、試行運用してございます。
 得られたアウトカムでございますが、このベンチャー支援の仕組みをQPS社に適用いたしまして、信頼性向上に貢献してございます。QPS社の小型SAR衛星2号機イザナミというものがございますが、これも、前号機は画像がうまく撮れないというトラブルがございましたけれども、これを乗り越えまして、0.7メートルという大変高精細な分解能のSAR画像の取得に成功したというものでございます。QPS社からはJAXAに謝辞が述べられているという状況でございます。
 さらに、このミッション成功への貢献によりまして、JAXA安全・信頼性推進部が、門番から共創者へ転換したと報じられていまして、それを受けまして、複数の新規参入企業から新たな支援要請が届いているという状況でございます。
 以上、JAXAでやるべき業務をきちんと実施していることに加えまして、JAXA外に対しても貢献しているという点がポイントと考えております。
 説明は以上になります。

【JAXA(石井理事)】 続きまして、ローマ数字3.6.4、情報システムの活用と情報セキュリティーのところ。セキュリティ・情報化推進部を担当しております石井のほうから御説明いたします。
 ページはD-96を御覧ください。
 一番上の評定理由のところに書いてございますが、新型コロナ禍でのテレワークの急増の状況下でも、職員等が業務継続できる環境を、情報システムを活用して提供し、JAXAの各事業やプロジェクトの成果獲得に大きく貢献したと思っております。
 スーパーコンピューターについても、新型コロナ禍での移動制限等、数々の制約の中で計画どおり新システムへの換装を実施し、当初目標を上回る性能11倍を達成し、H3ロケットの設計妥当性確認など、いろいろなところに大きく貢献をしております。
 テレワーク急増等に伴いまして、セキュリティーリスクは増大しておりますけれども、セキュリティー対策の合理的な拡充によりまして、重大インシデントの発生はありませんでした。ということで、自己評価はAとさせていただいております。
 D-99ページを御覧ください。
 まず、補足の1としまして、全社共通利用の情報システムとしまして、職員が利用します3,200台の業務用端末をまず、換装をしておりまして、それも計画的に進めておりますけれども、アウトプットとしましては、まず、2019年度に入れました、Office365です。Teamsの利用、これが一気に拡大をしております。ここはやはり、コロナ禍になる前はあまり利用が広がらなかったのですが、利用者拡大のための資料とか手引きとか、いろいろな準備をしていたところ、これが活用されまして、一気にテレワークに突入してもスムーズに業務に移行できたというところでございます。
 右側丸2に電子申請も拡大して効率化を図ったということ、ペーパーレスも大きく進んだということ、左下丸3ですが、テレワークになりますと、接続で認証システムを入れませんとセキュリティー上の問題が起こります。この認証システムにつきましても、2012年度導入時に2,000人程度のアクセスに耐えられるように設計をしておりまして、これがこのコロナ禍で威力を発揮したという状況にございます。このテレワーク拡大に伴って、VPN接続のライセンス数も増やして対応しました。
 さらに、右下丸4電話も、やはりTeamsといいますか、端末での仕事もできますが、外部との連絡に、どうしても電話が必要だというところで、携帯電話を拡充しました。これは今まで使っていたPHSの使用終了というところのタイミングに合わせまして、全て安い携帯電話に切り替えるという方策を取りまして、台数が大幅に増えましたが、予算内で抑えるというところに着地させております。
 D-100ページに、スパコンのほうが出ております。一番上に書いてありますが、三つの目標を掲げて、スパコンの機能強化・換装というのに取り組みました。換装のタイミングが2020年度ということで、コロナ禍、大変な状況ではございましたが、事業者等も様々な工夫を重ねまして、感染拡大を防止した上で、スムーズに換装を完了することができました。
 真ん中に書いてある図は、横軸が計算機使用量、縦軸がこの平衡計算の量ということで、濃い緑のところが今までのところで、黄色いエリアが、このJSS3で広がった能力のところですが、その広がったところを利用する利用者が増えていると、想定どおりに利用者が広がっているというところを示しております。
 右側に書いてありますとおり、スパコンの安定運用というのは非常に重要でございますけれども、換装作業下におきましても、システム稼働率99.5%以上という非常に安定した稼働を実現いたしました。
 最後、D-101ページになります。これは全社的な情報セキュリティーの活動でございます。
 教育、それからシステムの整備、様々な取組におきまして、セキュアな状況を確保しているわけですけれども、特に、このテレワーク利用に対しての対応というものを加えまして、インシデントの防止に努めております。
 得られたアウトプットというところにありますが、JAXAは、組織平均の約5倍のサイバー攻撃通信がある中で、さらにこういう新たなやり方という状況においても、様々な工夫を行うことで、重大なインシデントが起こらないという状況を実現したというところでございます。
 他機関との連携、右側に紹介しております。政府第三者機関による監査におきましても、他法人に推奨されるようなグッドプラクティスが6件あるというふうに抽出いただきましたし、こういう新しい働き方におけるセキュリティー対策は、国研協情報セキュリティタスクフォースでも紹介をいたしまして、複数の国研から情報提供を求められているという状況にございます。
 説明、以上でございます。

【JAXA(大山理事)】 引き続きよろしければ、大山から施設設備に関する事項について御説明いたします。
 資料D-107ページからです。
 自己評価Aとしてございます。
 趣旨でございますが、単なる営繕組織から脱却をしまして、戦略型、提案型の組織となることを目指しておりまして、ハードだけではなくソフト面を含めまして、予防的な対応を取り、レジリエンスを強化するでありますとか、あるいは施設の戦略的一元的管理を目指して、プラットフォーム(統合管理システム)といったものを構築するということを目指したり、さらには、大学や民間研究所等と共同研究して、先進的な取組を進めると、その中でも様々な工夫見直しをするということでAとしております。
 幾つか例を御紹介させていただきたいと思います。
 まず、D-108ページでございます。
 自然災害へのレジリエンス強化ということで、予防的に防災・減災力を強化していくということで、リスクマップの作成などを行っております。ソフト面の対策強化ということで、保有する事業所のハザードを可視化いたしまして、個々に事業所内で発生した災害を載せたマップ、リスクマップをつくっているということで、こういったことをすることによりまして、何か災害が発生したときでも回復力が強化されると、レジリエンスが強化されるということでございます。
 続けて、D-110ページでございます。
 エネルギー効率の改善ということでございますが、ESCO事業、民間資金を活用した設備改善スキームでございます。ESCO事業の導入というのを進めておりまして、相模原地区におきまして、2020年度に業者と具体的な間取りに向けての中身を詰めたという結果によりまして、省エネ保障額が増加した。80%から87%に増加したり、あるいはエネルギー量のさらなる削減、5%削減といったことが実現できる見込みになっているということが見られております。
 続けて、D-112ページの例でございます。
 施設の戦略管理を実現するプラットフォームの再構築ということでございまして、具体的には、小規模事業所での受変電設備の遠隔監視実現に向けまして、異常時のメール通知サービスといったようなものを開始しております。
 より具体的には、次のD-113ページ、左側にございますが、2019年以前は、各事業所単位で不具合が発生しましたら、そこから複数の連絡だったものが、2020年度からは、上にございますように、この警報のメールを発信することによりまして、メールでワンアクションで対応するということになってございます。
 続けまして、D-114ページを御覧ください。
 こちらの例は、電力基盤インフラの再編・更新、施設の更新についてのページでございます。アセットマネジメント手法を用いまして、調布地区の特高受変電設備の計画最適化ということで、劣化診断、アセット評価などを行いまして、いわゆるTBMからCBMと、つまりは、タイム・ベース・マネジメントで、主に経年劣化のみで更新時期を判断していたものを、コンディション・ベースということで、施設の状態によって更新時期を判断することによりまして、コストダウンを図られて、例えば、更新費が約1億円削減できるというようなことがあったり、あるいはまた、電力会社とも粘り強く調整を行うことで、実施の計画においても、さらに、効率化、最適化が図られたり、工事中の安全性向上が図られたりといったようなことがございました。
 それから、続けての例として、D-116ページでございます。
 調査研究の例ということでございまして、右側にございますが、大型シート製シャッターの開発、民間企業との共同開発でございまして、これ種子島宇宙センターの大型の衛星系の建屋について、この開口スライド扉の運用性改善を目的としたシャッター開発ということでございまして、これも2021年実施予定であったところの、耐久性確認試験を前倒しして実施したということで、着実かつ前倒しの上で進めているという状況でございます。
 最後に、D-117ページを御覧ください。
 左側にございますように、ハード対策のみに頼らない自然災害対策ということでございまして、勝浦地区での土砂災害の危険度情報の配信ということで、こちら、神戸大学さんと共同研究をしてございまして、小型気象レーダー等でデータを取得しまして、これを使いまして、地形情報等から要注意箇所を特定するといったようなことをして、勝浦市役所にも継続配信するといったようなことをやっております。右側は、角田宇宙センターでの危険斜面の警戒監視、こちらも京大防災研との共同研究で、常時の監視拡大、情報発信などを行っているということで、企画立案から計画、そして、それをさらにやりながら見直しをかけながら、一層高度化して進めているという状況でございます。
 以上でございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、髙橋委員、お願いいたします。

【髙橋委員】 説明ありがとうございました。安全信頼性と情報セキュリティーの確保、それぞれ1件ずつ質問があります。
 まず、安全信頼性ですけども、D-83ページですが、安全信頼性に関わる技術やノウハウというのは、JAXAの大変大事な財産だと思うのですね。この大事な技術やノウハウがベンチャー企業を通じて、海外に流出するリスクがあると思うのです。そういったものに対して、どのような対策を取られているかというのが、安全信頼性に関わる質問です。
 もう1点、情報セキュリティーですけれども、2016年にJAXAが中国のハッカー集団からサイバー攻撃を受けたとのマスコミ報道が、今年の4月にありましたが、報道があっているのかどうかも含めて、可能な範囲で説明していただければと思います。
 以上2点です。

【JAXA(泉理事補佐)】 それでは、まず、最初、安全信頼性に関する御質問には、泉のほうから回答させていただきます。
 まず、今回研究しているようなノウハウ、ノウハウというか、ツールでしょうか。あくまで公開できるものに限ってという形でやらせていただいています。契約という形で、約束の形で、ベンチャーさんとはお付き合いせていただいておりまして、その制約の中で必要なものについては提供するというやり方をしてございまして、一定の配慮をしているというつもりでございます。
 以上です。

【髙橋委員】 ありがとうございました。安心いたしました。

【JAXA(石井理事)】 2点目の2016年のハッカー攻撃の4月の報道の件につきまして、御説明いたします。これは、JAXA全くインシデントといいますか、情報の漏えいはございませんでした。当時、攻撃があるというのを察知しまして、その情報を警視庁のほうに届出をいたしました。そのときに、警視庁さんのほうからデータの提示を求められまして、我々のほうがかなりの情報開示をして、こういう攻撃があったという形跡をお示しして、データとしてお渡ししてありました。それが、つい今年の初めになってから、中国の集団を逮捕できたと、これはJAXAさんからもらった情報をきっかけで大変ありがたかったみたいなお話が来て、そうですかと聞いていたのですが、報道、蓋を開けてみると、JAXAがあたかもハッカー攻撃されたというような報道のされ方をされてしまいまして、我々としては、非常に褒められるような話のはずなのに、心配されてしまったということで、残念なふうに思っておる次第でございます。
 以上です。

【髙橋委員】 ありがとうございました。報道の仕方の問題もあるということと、実際には被害も含めて、全く無傷でいたという、そういうことだと思います。ありがとうございました。

【JAXA(石井理事)】 ありがとうございました。

【事務局】 ありがとうございました。
 それでは、続きまして、ローマ数字4、ローマ数字5、ローマ数字6の1、ローマ数字6の2につきまして、JAXAより説明をお願いいたします。

【JAXA(石井理事)】 それでは、4の業務運営の改善・効率化に関する事項につきまして、経営推進部担当しております、石井のほうから説明いたします。大山理事が担当するところもございますが、まとめてご説明いたします。
 ページとしては、F-5ページを御覧ください。
 右肩にありますとおり、自己評価Bでございます。基本的に計画のとおり実施をしてまいりましたということになります。
 ただ、幾つか活動を御報告したいところがございますので、少し説明いたしますと、まず、このページの(2)の一般管理費削減のところでございます。何とか目標達成という状況になっております。様々な工夫しておりますが、ただし、第1期から第3期までに、一般管理費全体で約4割の経費削減断行した状況でございますので、こういった予算の計画的な削減というのは限界があるということを、昨年度、一昨年度からも継続してございますが、御報告させていただきます。
 その他の事業費の削減、様々取り組んでおります。ほかのところで既に御紹介しましたところですので、読み上げは割愛いたしますが、次のページのFの6に行っていただきまして、運営費交付金の効率的運用の取組としましては、コロナ感染下で、対策が必要なところを、海外出張等の資金の集約を行って対応をした。それから、予算要求上、一般管理費削減を継続しているという状況ですけれども、受託費のうちの一般管理費分を競争的資金の間接経費などを一部充当するという制度も検討し、今年度から着手ということにしております。
 (3)民間の活用の促進、これは有人とか国際探査のところで、新しいやり方を導入という説明がありましたが、これは調達部門で契約に関わる工夫が非常にありまして、調達部門の努力というところもここにあったということでございます。さらに、合理的、効果的な調達というところで、調達部門のほうで、選定方式、RFPのプロセスの改良でございますとか、調達に関する要員を確保するために、定型化した業務はアウトソースするというようなところにも着手したという状況でございます。
あと(4)人件費の適正化。これも、毎年御説明しておりますが、やはり人材、足りておりません。統合時に比して188名が少なくなっているという状況で、様々な形で人材の補足をしておりますが、基本的に人件費が適正でないというところがございます。そこで受託経費等、非経常収入を原資とした採用というものも着手しているということを、昨年度からも御説明しておりますけれども、これを継続しているということで、人件費の適正化については、急務ということで御報告させていただきます。
 以上でございます。

【JAXA(大山理事)】 では、続けまして、財務についての御説明でございます。
 G-14ページでございます。
 財務内容の改善に関する事項に係る措置というところでございますが、全体として、適切に決算が行われたということでございます。
 財務内容の改善についてでございますが、年度計画で設定した業務を実施した結果、収支計画で、当期総利益187億円、それから資金期末残高として1,024億円を計上してございますが、この当期総利益につきましては、期ずれによるものということで、いずれ相殺をされると。また、資金期末残高につきましても、未払金の支払い等、計画的な支払いに充てるものということでございます。また、利益剰余金494億円計上ということで、これも期ずれというものでございます。不要財産処分につきましては、松戸、鳩山の宿舎の土地建物につきまして、現物による国庫納付に向けまして、関東財務局と調整継続中ということでございます。
 次の自己収入増の促進についてですが、金額としては、自己収入34.1億円、受託収入217億円ということでございます。
 これら増加促進の主な取組といたしましては、例えば寄附金に関しまして、大口寄附獲得に向けて、高額寄附者向けのインセンティブ付与といった取組、制度の見直しですとか、あるいは外部資金獲得に向けまして、部門ごとに研究者の支援をして、競争的研究資金、受託収入等の外部資金獲得、積極的によりしっかり取れるようにという取組を行っていたりということ、また、その他保有する施設・設備の利用促進等といった取組を行ってございます。
 財務について以上でございます。
 続きまして、内部統制についてでございます。
 資料H-5ページでございます。
 財務もBでしたけれども、内部統制も自己評価Bとしてございます。内部統制につきましては、役職員へのコンプライアンスに関しまして、研修等を行うといったようなこと、それから内部統制の点検状況等につきましては、しかるべく体制を整えておりまして、理事長トップの体制でございますが、内部統制実施につきましても、実施状況を理事会議へ報告するほか、リスク縮減活動も実施してございまして、これもプロジェクト等の事業に関するものと、事業以外の一般業務におけるリスクということで、この二つに大きく分けて、識別をして対応してございまして、プロジェクト等につきましては、プロジェクトの段階ごとに経営審査を実施するなどを通じまして、リスクの縮減を図ってございます。また、事業以外の一般業務のリスクにつきましても、対応チームを設置して、重点的に管理すべきリスクを選定いたしまして、しかるべくモニタリングを行いまして、理事長への報告も行っているというところでございます。
 内部監査につきましても、適切に実施をしてございますほか、それから、3ポツ、Hの6ページになりますが、研究費不正、研究不正対策につきましても、実施基準ガイドラインにのっとりまして、体制を構築して、研修等必要な取組を行ってございます。
 最後、その他でございますが、機構の元役員の事案に関してですが、検討チームで検討を行って、これまでに、最終報告2020年10月に最終まとめを整理して公表してございます。この案件を受けまして、JAXAの役職員についても、これを特殊事案と整理せずに、自覚を持って行動すべきといった提言をいただいているというところでございます。
 以上、内部統制でございます。
 今度、人事についてでございます。
 御手元の資料485ページでございます。自己評価Aとしてございます。
 まず、H-11ページからでございますが、高い専門能力を有した優秀かつ多様な人材をしっかり確保していくということ。それから、そのためにも、人材交流を積極的に進めるということ。それから、ワークライフの変革促進、生産性向上ということで、働きやすい職場づくり、今年度2020年度に関しましては、特にコロナ禍の対応を迅速に行ったりといったようなことで、想定以上の対応をしたというふうに考えてございます。
 より具体的には、H-13ページを御覧ください。
 こちらの図の中で、まず、赤枠の中でございますが、宇宙・航空分野の人材のさらなる拡大、人材基盤の強化ということで、赤枠の中はこれまでも行ってきたことということでして、人材の流動性の交流、人材交流を促進して、働きやすい環境を整えて、必要な人材の確保拡大を図るということでございます。赤字で書いておりますところが、2020年度に拡充・拡張をしたというところでございまして、兼業数の増加、これは例えば兼業を届出で実施できるようにしたということで、非常に兼業数が増えたということ。それから、クロスアポイントメントの制度見直しと増加というところ、こちらの受入れの任期上限を、一部拡大をしたということで受入れが増えたといったようなことがございました。
 それ以外にも経験者採用につきましても、通年採用、ウェブ採用ということで、必要な人材を異業種からも流入して、促進しているという状況でございます。
 この赤枠の外側が、従来の活動をより向上させる、2020年度の新たな取組ということでございまし、ワークライフの変革促進、生産性向上に向けた取組ということでございまして、まずは、コロナへの対応ということで、非常に迅速に、テレワークをしっかり取り入れたということ、それからオンライン会議等、新しい働き方の導入をしたということでございます。出勤率が、いわゆる緊急事態下で大体2割、解除されたときでも大体平均5割の出勤率という状況で、ただその中でも、業務の質や効率を落とすことなくしっかりと仕事をしたということでございます。そして、こういった新しいやり方について、ワークライフバランスの観点で、さらに新しい働き方に向けて、実現に向けてさらなる取組の定着ということを図っているというところでございます。
 それから下のほうでございますが、柵の外側の赤ですが、外部からの脅威をさらに守って安心して働ける職場環境を維持するということでございまして、様々なコロナ禍を含めて、不安要因があったわけでございますが、ここは職場を守って安心して働ける職場環境を維持するということで、職員一人一人に寄り添って、精神的負担を軽減するというために、対話も約5,500回ほどと、コロナ禍においてもメンタル不調休業数は減っているということになってございます。
 次のH-14ページでございますが、目指すものとして、優秀、多様な人材の確保、基盤の確保ということでございますが、真ん中のところに具体的に赤字で、今御紹介しました点について、数字も置き換えさせていただいております。例えば兼業につきましては、2019年度113件から2020年度は279件という伸び、クロスアポイントメントの充実によりまして、新たに5名の外部の方の受入れといったようなこと。それから、メンタル不調による休業数につきましても、2019年度33件から、2020年度は26件に減少したというようなことで、コロナの影響を最小限にとどめてしっかり事業をやっていくということ。それによりまして、JAXA内はもちろんでございますが、宇宙・航空業界全体の基盤強化、就労拡大にも貢献していくということができたというふうに考えているところでございます。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 入澤先生、お願いします。

【入澤委員】 一般管理費の削減のところですけども、第1期から第3期まで、4割の経費節減を断行というところですけれども、具体的に、この4割経費削減した内容というのは、ほとんど人件費ということなんでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 いいえ。予算上は、人件費は一般管理費ではなかったと記憶しております。もう徐々に徐々に、様々な工夫を毎年3%続けるということを、何と言うのでしょうか。やらざるを得ない状況で、何とか対応してきたというのが実態でございます。

【入澤委員】 そうすると、人件費以外の経費を削減してきたけれども、ここに来ても、管理業務の遂行に著しい支障を来すぐらいのところまで絞り切っているというところが、ここのF5のところに書かれているところということでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 はい。さようでございます。人件費は人件費で増やしていただきたいのですけども、一般管理費も、定率削減というのを毎年3.3%ですかね。財務省さんの方針でそういう予算構成になっているというふうに伺っておりまして、それは努力目標として、我々としては取り組んでまいりましたけれども、ちょっと限界ですということを毎年お話しさせていただいております。

【入澤委員】 そもそもの業務改善とかも行っているのでしょうか。そもそもこの業務がそもそもそんなに必要ないのではないかとか、そういうところも含めて見直しというのは、されているんでしょうか。

【JAXA(石井理事)】 組織は、相当、現下に応じて、ダイナミックに変更してきております。特に民間事業者との協力というところですね。第4期に入って、一つ柱が立つぐらいの活動に変えるということで、新事業促進部というのは新しくつくって、強化してやってきていたりとか。そういう観点では、当然今までどおりでできないところは、今までどおりでは立ち行かないところは見直すというところもやってまいりましたし、そうであっても、定型的なものというのはどうしても残るというのが現状でございまして、それを今アウトソースすることで、何とか人手は確保しようというところを努力しているところでございます。

【入澤委員】 ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 それでは中村委員、お願いいたします。

【中村委員】 ありがとうございます。安心して働ける職場環境ということで、積極的にケアをして、メンタル不調の休業数が増えなかったというか、むしろ減っているというのが目覚ましいなと感じたのですけれども、もう少し詳しく教えていただけますか。どのように積極的にケアされたのでしょうか。

【JAXA(大山理事)】 御質問ありがとうございます。担当の人事部のほうから御説明させていただきます。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 では、人事部の岩本から御説明させていただきます。
 職員に対しては残業時間ですとか、いろいろと、オンラインで人とお話ができないとか、そういった状況で、今3人の保健師がおりまして、各事業所を担当しまして、それぞれちょっと具合が悪くなりそうなことを未然に予防するのも含めて、いろいろと声をかけて、面談してお話を聞いてという、そういう活動を地道に回数多くさせていただきました。

【中村委員】 これは今後も続けられるのですか。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 はい。今後も引き続き続けていく予定です。いろいろな方ありますので、メンタルもありますし、体調もありますし、全職員をできる限りフォローするというところで、地道に回数を重ねて、まめにケアをするという方針で考えております。

【中村委員】 非常に参考になりました。ありがとうございます。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 はい、どうもありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職】 知野委員、お願いいたします。

【知野委員】 ありがとうございます。兼業のことでお尋ねします。それまで113件だったものが279件と、かなり急増しています。届出のみでオーケーにされたということですけども、これかなりこう緩やかな印象を受けます。その後、活動内容とか、一体どういう仕事をしているのかとか、宇宙機構は国費も入っているし、安全保障にも関わるし、非常に特殊な組織でもあると思いますので、その辺の、リスク管理、内部統制をどのようにしているのかについてお話しください。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 では、引き続き、人事部岩本からお答えさせていただきます。
 兼業については、これまでの兼業制度というのは、JAXAの事業と似たような形、兼業することで、その結果がJAXAに戻ってくるというところで、内容を判断してこれまで進めていました。今回の兼業申請を変えることで、むしろ、JAXAの業務とは全く別なものでも構わないと。むしろ本人たちがいろんな刺激を受けたり、いろんな働き方をすることで、より多くのことを学んでほしいということをしています。そういう意味では、今回、宇宙関係の、例えば、自分の趣味を仕事にしているような、極端な話、方もいますし、宇宙の講演みたいな形で進めていらっしゃる方々もいます。
 できる限り、JAXAとしては、事前に、利益相反については、どういう業務をするかという時点で、確認をさせていただいていて、ちょっと利益相反的に難しいですとか、情報が出るものについては、事前に本人たちについて、きちんとそこを管理するように指導した上で、進めさせいただいているという、そういう状況です。

【知野委員】 届出制ではあるけども、一応、届出を受けて中身を確認されていると、そういうことでしょうか。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 はい。仕事の内容、それからあとは時間外兼業になりますので、例えば、そこで60時間とか70時間とか、本業に影響を与えるような長時間については、例えば減らしてくださいですとか、そういったことでいろいろとチェックというか、そういうことを条件に、報告であるのですが、兼業していただいています。

【知野委員】 分かりました。そうすると、届出をしたときに1回チェックするのみで、あとはどのようになるかというのはちょっと分からないということですね。例えば、届出とはまた違うかもしれないし、いろいろ問題あるかもしれないのですけども、その辺はもう1回登録してしまえば、フリーだということでしょうか。

【JAXA(人事部 岩本部長)】 利益相反については、年1回、きちんと報告を受けてチェックするようにしています。兼業の種類の申請だけは最初だけで、あとは毎年、利益相反のチェックをしているという状況です。

【知野委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 矢入委員、お願いいたします。

【矢入委員】 上智大学の矢入です。すいません。このような業務運営のものに関しては、結構何というのですかね。ほかのところのウルトラサクセスとかと、そういったような何かなかなか基準を設けるのが難しい。Sとか判定がつきにくいというのは、すごく理解しております。
 それで、今回AとBで線引きをされていると思うのですけど、このAと判断された理由、Bと判断された理由みたいなのを、明確にどのように決められたかという、その点をお聞きしてよろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。

【JAXA(大山理事)】 大山でございます。私の御説明したところについて申し上げますと、財務関係のところ、それから内部統制のところはBとしております。
 これは想定されたことを、しかるべく想定どおりにやったということで、Bというふうにしています。人事はAにしているのですけれども、こちらについて言いますと、想定以上に、成果を上げられたということで、Aとしています。と申しますのは、20年度については、コロナ対応というのが急にあったという中で、そこに迅速かつ適切に対応したと。先ほども御説明しました、メンタル不調の休業数がむしろ減ったということですとか、急速にテレワーク等も定着させて、かつ業務の質は落とさなかったということで、かつ、それを今度はいい意味で、新しい働き方、ワークライフバランスの観点で、テレワークといったことなども制度化したり、活用していくという意味で、当初想定していた計画以上の取組があったということで、これはBではなくAということにさせていただいております。

【矢入委員】 その点、すごくよく理解できるのですけど、例えばもうすごく意地悪な見方をすると、コロナ禍で割と御自宅で作業されたことによって、そういうメンタル不調が改善されたみたいな方という話というのも、世の中ではあるみたいでして、そういう意味では、その人数が劇的に減ったという何か証拠みたいなのをお示しになられてはいかがでしょうか。何か母集団から考えますと、これは誤差なのではとかと思われてしまう数字ではあると思いますので。例えば、前年度33人だった方と、今回26人に減らされた方というのは、かなり入れ替わっているとか、何かそういったエビデンスをお示しになったほうが、Aという証拠により非常に、何ですかね、納得がいくのではないかなと思ったのですが、その点いかがでしょうか。

【JAXA(大山理事)】 分かりました。今すぐ詳細なデータが手元にないものですから、ただ、御指摘の御趣旨は理解いたしましたので、資料を書く中で改善できればというふうに考えております。ありがとうございます。

【矢入委員】 はい、ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。
 それでは、以上をもちまして、総務省、文科省共通事項の共通の評価項目は終了となります。これで総務省の委員の皆様には御退出いただくことが可能です。本日は長時間の御対応ありがとうございました。
 それでは、最後の項目になります。ローマ数字3.5 航空科学技術につきまして、JAXAより御説明お願いいたします。
 すいません、少々お待ちください。すいません。平野委員、手を挙げられていらっしゃいます。何か追加でございましたか。

【平野委員】 内部統制、コンプライアンスに関する実態はどのようなことになっているのか。即ち懸念するような事項というのは、起きていない、ハラスメントとかいうことも含めて、健全な状態だという認識でよろしいでしょうか。

【JAXA(大山理事)】 御指摘ありがとうございます。内部統制についても、例えば一般業務に関しての、重点的に管理すべきリスク、例を挙げますと、例えば人材不足のリスクですとか、あるいはICTセキュリティーリスクですとかいったものが挙げられまして、そういったものについて、きちんとそれぞれの担当部署で確認をしたといったところでございます。重大な、非常に問題のあるようなというものはなかったということでございまして、こういったリスクを毎年役員の意見、それから職員の意見など、それぞれの担当部署の意見なども踏まえまして、設定した上で、しっかりフォローアップ、検証しているというところでございまして、特段の大きな問題はなかったということで、2020年度は挙がっているところでございます。

【平野委員】 分かりました。内部告発のルールとか、そういうのもされているという理解でよろしいですか。

【JAXA(大山理事)】 そうですね。特段の内部告発といったようなことはなかったと。ただ、いわゆるコンプライアンス窓口への相談ですとか、あるいはハラスメント窓口の相談と、一般的にそういったものはございますけれども、いわゆる内部告発的なものというのは、特段ございませんでした。

【平野委員】 はい、分かりました。

【JAXA(大山理事)】 ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。
 それでは、ローマ数字3.5につきまして、御説明、お願いいたします。

【JAXA(張替理事)】 それでは、航空科学技術について担当の張替のほうから御報告をさせていただきます。
 ページは、C-15ページになります。自己評価をSとさせていただいております。
 評定理由に書いてありますように、社会からの要請に応える研究開発、次世代を切り拓く先進技術の研究開発、そして、航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発に特筆すべき成果があったということでございます。詳細は補足を用いて御説明させていただきますが、この評定理由の根拠の書き方といたしまして、JAXA技術でもって、どのような課題を解決したかというアウトプットの観点を、黒い太文字のアンダーラインで、そして、赤い太文字のアンダーラインで現在得られている社会実装等のアウトカムを、そして、細い字の黒文字のアンダーラインの将来見込まれるアウトカムというふうに分類して書き分けてございます。
 それでは、詳細報告を、C-17ページから御説明していきたいと思います。まず、社会からの要請に応える研究開発として、航空エンジン燃焼器の環境性能要求に対する成果ということです。超低NOx燃焼器といったものを海外も含めて研究開発を行っているところで、それぞれ右の上にありますような目標を立て、JAXAはそれを超えるマイナス80%という目標を立てて、研究開発を行っております。
 本質的に、打ち手としては、燃焼器リーンバーン希薄予混合燃焼技術というのが打ち手になるんですけども、そこの3つの課題がリーンバーンにはございます。不安定燃焼、それから高出力時の高温発生によるNOxの増加。そして、空気量をリーンバーンとして増やすことによって冷却空気が減るという、この三つの課題に対して昨年度、右の青い部分に書いていますようなJAXA技術を使うことで成果を達成することができました。
 一つ目、リーンバーンを実現する、不安定燃焼を避けるということで、パイロットノズルというのを、真ん中の図の黄色い部分に、新しくつけました。三重のらせんの燃料噴射を行うことで、ここで消えることのないパイロット燃焼を起こして、その周りの青いところでメインの燃焼を起こすという手法を開発したものです。
 さらに、高出力時のNOxを下げるということで、これは海外にも例はないものですけれども、左側の図の上のほうに、副ノズル、第2のノズルをつけて、メインのノズルと副ノズルで、燃料量をうまく調節することで均一に燃焼させるというふうに成功しております。
 さらに、空気量の減少につきましては、内面をCMCパネルで覆うということで達成し、右下の図にありますように、NOxの低減に関して目標を達成するだけではなく、リーンバーンでは、しばしば問題なのですけども、未燃焼ガスCOについても、エクストラの目標も達成することができました。
 これについては、次々世代のエンジンの燃焼器ということで、まだ契約に至るようなアウトカムは出ていませんが、非常に高い技術の成果であるということで、あえて御報告をさせていただくことにしました。
 続きまして、2ページ目です。補足2になります。
 C-18ページです。社会の受容性がある低ブーム超音速機設計開発技術の開発ということで、従来からソニックブームを低減する超音速機の設計開発技術を開発しておったんですけれども、オントラック、その直下のブームを下げるということについては、今までやってきたんですけども、今回は、オフトラック、その両端、両側ですね。右の図でいきますと、オントラックは青い線、それで、オフトラックは緑のフタコブラクダのようなところが、実はかえって高くなるということが分かりまして、JAXAといたしまして、このブームカーペットと呼ばれます、赤い双曲線で囲まれた全体のブームを下げるという技術の開発に成功いたしました。
 その結果として、アウトプットの右下の図にありますように、フタコブラクダの図が4dBぐらい下がって平坦なものに変えることができるということと、さらにこの設計技術の特徴は、既存の航空機の形にレトロフィットでつくり込むことができるということで、得られたアウトカムといたしまして、海外主要航空機メーカーの超速機のコンセプト機に対して、この設計技術を適用することで、アウトカムの下の図にありますように、従来ですと、ブームカーペット、上半分、これが海外主要メーカーの超速機の形状で出てくるブームのコンター図になっていますけど、赤いところが加速域とそれからオフトラックの部分で出ているんですけども、我々の技術を適用することで、全て青いから緑に変わるということで全体としては、11dBの音を下げたということで、海外のメーカーから、JAXAの技術がすごいということで実証機設計及びプロジェクトを共同で実施するということに合意することまで、こぎ着けることができたという成果でございます。
 三つ目です。これはCの19ページになります。世界初の航空気象防御システムの開発ということで、航空機、厳しい気象環境下での運航安全が非常に重要になってくるんですけれども、ここで着目しておりますのが、雪氷と被雷に対する航空機の安全でございます。
 まず、雪氷につきましては、以下のほうで滑走路雪氷時の運行に関する安全基準というのが変わりまして、雪圧と雪の性質をきちんと測って、それで除雪のタイミングを得ると。その手段が現状ないということ。それから被雷に関しましては、航空機の複合材化ということで、修理に、従来よりも2倍以上工数がかかるという、そういう課題の下で、我々は新しい技術として、まず、雪氷に関しましては、滑走路に埋め込むレーザー式のセンサーを使って、雪圧数ミリメートル、それから、以下の基準で定められている雪の種類全てを分別することができるという技術を開発しました。
 我々の技術の特徴的な点が、青い箱の中の三つ目のグラフですけども、山が三つぐらい出ていますけれども、この雪圧に関する感度が実は返ってくる光の裾の部分にあるということで、それに対応してレーザーの太さを太くするといった工夫をしている点が、オリジナリティーが高いというところです。
 また、被雷に関しましては、航空機がそこにあるから誘雷が起きる、誘雷、雷が起きるということの理論に基づく予測で、80%以上の的中率ということを達成することができました。
 これにより、それぞれ得られたアウトカムとして、滑走路雪氷センサシステムにつきましては、民間企業2社での事業化に含めた共同研究が開始されておりまして、一番のボリュームゾーンである新千歳空港を擁する北海道エアポートの協議も終了していまして、実証をするという、このシステムを埋め込むということが決まっております。
 さらに、被雷に関しましても、気象のプロバイダー2社と契約を結び、JAL、ANAさんのほうに、既に実証データを提供し始めております。かつ、それに必要な機材等も売れているという状況でございます。
 次に、4番目、災害・危機管理対応統合運用システムD-NETの開発です。この技術的な内容については、既に数年来、御説明しておるところですので、昨年度どのような成果が得られたかということは、基本的には最終形態まで達したということです。
 得られたアウトカムとして、多数サーバーで情報共有をするセキュアなシステムの形の機能を付け加えて、D-NETシステムを3社に技術移転しました。さらに、そのシステムに対して、災害対応省庁全てが参画する災害対応システムへの採用が決定しております。
 このことによりまして、だいだい色の箱の右下の図にありましたように、従来、警察、消防、厚労省だけであったD-NETの運用が、防衛省、自衛隊、それから海上保安庁、そして災害対策本部等に採用が決定されるということで、我が国の災害対応をする全省庁に、D-NETシステムが標準として採用されるという結果が得られたということでございます。
 最後、Cの21ページ、5番目になります。
 航空機のライフサイクルにおける環境問題を解決する技術開発ということで、これは持続可能な航空機産業を支える基盤技術として、非常に地味ではあるのですけれども、まず、製造・運用時における接着面、あるいは塗装表面の下処理に、人体に有害な薬品を用いているという課題がございます。これは結構広い面積を取っておりまして、右の図にありますように、たくさんの部位でそうした処理が行われておりまして、例えばボーイング787では、テニスコート7面分の下処理が行われていて、こういった有害な薬品が使われていると。
 それから、複合材に関しましては、もちろん皆さん御承知のように、たくさん使われており、また、製造工程で切れ端等もいっぱい出ておって、現在のところ航空機用として4万トンぐらい使われているのですけども、それのリサイクルの指標が今までございませんでした。それについて、強度レベルがアルミ合金程度のリユース材をつくり上げる技術をつくることができたということでございます。
 アウトプットとして、どのような技術を使ったかということですけれども、下処理に関しては、イトロ処理という新たな処理方法を見いだしまして、それについて航空機に係る接着面の下処理、それから継ぎ手の部分の下処理について検討した結果、十分な接着特性を有することを確認し、かつ、これは火炎処理でございまして、有害な薬品を一切使わない、かつ、機械化もすることができるという特徴もございまして、非常に有望性が高いということが分かりました。
 それから、リサイクル複合材につきましては、この複合材の原料から、右の図の緑のラインで示しております、たくさんの工程を経て、プリプレグをつくって、最後、世界初のリサイクルされた複合材自体をつくりました。このたくさんの工程の中で、日本のメーカーの方々と協力をさせていただきまして、様々なメーカーと協力いたしまして、最終的に世界で初めて、不織布状体という形につくり上げ、372メガパスカルというアルミ合金と同等の強度を有するものができたということで、将来、この二つの技術で、環境問題を解決する基盤技術が、出来上がったというふうに考えております。
 私からの説明は以上になります。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございます。それでは、御質問等ありましたよろしくお願いします。平野委員、お願いします。

【平野委員】 テーマに関して二つありまして、最後のこのライフサイクルの問題、張替さん自身も、地味なテーマだけど、重要だというふうにおっしゃいましたけど。これ、航空産業界全体の大きな問題ですよ。これを、ある意味JAXAが引き受けてやるということですけれども、当然意義があることは承知をした上ですけども、より米国を中心とした航空業界として、今環境問題へのステップとして取り組むべきテーマではないのかなというふうにも思うのですけど、この辺どういうふうに整理されたり、あるいは何かこう連携されているのであれば、その辺の、もうちょっと全体像を教えていただければと思ったのが一つ。
 2番目は、ずっと続けておられているテーマなので、理解しているのですけど。例えば、この最初のNOxのリーンバーンの話とかで御承知のように、今物すごいノーカーボンの方向に世の中がシフトしていて、ジェット燃料からいかにほかの燃料に切り替えて、脱二酸化炭素を進めてくるかということが、ものすごく重大なテーマに、業界としてはなっているのですね。JAXAとしては、むしろこういうテーマに取り組んでいくというようなことというのは、どういうふうにお考えなのか。
 この2点について、教えてください。

【JAXA(張替理事)】 御質問ありがとうございます。まず、最初の点につきましてですが、もちろん複合材等、あるいはこういった製造で薬品使う等で、大きなマーケットを占めるのは、欧州、米国であることはおっしゃるとおりだと思います。一方、この技術の根元が全て国内企業にあるということで、こういった国内企業の持てる技術をきちんと航空機の下に届けて、航空機産業全体としてのリサイクルを達成するとともに、我が国の既存メーカーが航空機産業への参入の手助けをするということに対して、JAXA、非常に大きな意義があるというふうに考えております。
 続きまして、2番目の航空エンジンに関してでございます。
 先日も航空エンジンメーカーの経営者の方とお話をさせていただきました。もちろん、カーボンニュートラルに向けた大きなプロジェクトについて、JAXAもその一端、航空機のエンジンメーカーの方々と御一緒にさせていただくという話の流れの中で、もう一つ、その航空機メーカーのエンジンメーカーの方がおっしゃっていたのは、実はそういったカーボンニュートラルのところで活躍できる技術というのも、実際現在のところシビアな環境に向けて、技術開発しているものがベースになる可能性が非常に高いということで、現在の技術を高めたことで、カーボンニュートラルへの航空エンジンの動きはスムーズにできるというふうなことをおっしゃっておられました。
 私も同様のような考えを持っておりまして、JAXAとして、こういった研究開発、もちろんカーボンニュートラルに向けても、次に取り組んでまいりますけれども、必要な技術開発だというふうに考えております。
 以上です。

【平野委員】 ありがとうございます。分かりました。次のテーマの可能性としては、ある程度の蓋然性があるということ。

【JAXA(張替理事)】 はい。

【平野委員】 前者のほう、日本のメーカーに、こうしたことの技術が多くあるということは、この開発が進むことによって、日本の産業界にとってみると、非常に大きなビジネス機会をもたらす可能性があると、そういう意味だと理解してよろしいでしょうか。

【JAXA(張替理事)】 はい、おっしゃるとおりでございます。

【平野委員】 分かりました。ありがとうございます。

【事務局(宇宙開発利用課 横井専門職)】 ありがとうございました。ほかにはございませんかね。
 ありがとうございました。それでは、以上で、本日のヒアリングは全て終了させていただきます。
 最後に、事務局より事務連絡をさせていただきます。
 冒頭に御説明差し上げましたとおり、本日のヒアリングを踏まえて、御意見記入シートに御記入いただき、御提出をお願いいたします。御意見記入シートの電子ファイルにつきましては、メールでお送りしているものを御利用ください。
 御意見記入シートの御提出につきましては、7月14日火曜日の朝10時までにお願いいたします。昨年と比べて短い期間でシートに御記入をいただくことになり、大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
 なお、評価を行う上で必要な御質問や追加資料の御依頼については、これまた、期限が短くて恐縮なのですが、電子メール等にて、7月9日金曜日中に事務局まで御連絡ください。回答の作成に時間がかかる場合もございますので、お早めに御依頼いただければと思います。
 次回の文部科学省JAXA部会は、7月20日火曜日13時からオンラインで開催いたしますので、御出席のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、以上で第2回令和2年度JAXA業務実績ヒアリングを閉会いたします。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課