令和元年度JAXA業務実績ヒアリング(第2回) 議事録

1.日時

令和2年7月31日(金曜日) 13時00分~18時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. 宇宙航空研究開発機構の令和元年度における業務実績評価の進め方について
  2. 宇宙航空研究開発機構からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

【内閣府JAXA分科会】
分科会長 青木 節子
分科会長代理 田辺 国昭
臨時委員 遠藤 典子
臨時委員 大矢 和子
臨時委員 片岡 晴彦
臨時委員 白坂 成功(文部科学省JAXA部会と併任)
臨時委員 竝木 則行

【総務省JAXA部会】
部会長 梅比良 正弘
専門委員 小塚 荘一郎

文部科学省

【文部科学省JAXA部会】
部会長 髙橋 德行
部会長代理 古城 佳子
臨時委員 赤松 幸生
臨時委員 黒田 有彩
臨時委員 白坂 成功
臨時委員 中村 昭子(内閣府JAXA分科会と併任)
臨時委員 平野 正雄

【文部科学省】
文部科学省研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 渡邉 真人

【説明者】
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 布野 泰広
理事 寺田 弘慈
理事 佐々木 宏
理事 國中 均
理事 張替 正敏
理事 石井 康夫
理事 中村 雅人
総括チーフエンジニア 久保田 孝

5.議事録

【渡邉課長補佐】 定刻となりましたので、第2回令和元年度JAXA業務実績ヒアリングを開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
 本日は、JAXAを共管する4府省合同でのヒアリングで、第1回のヒアリングと内容としては、中身としては同じものです。委員の先生方には、どちらか片方に出席いただくということにしております。本日は、内閣府の委員と文科省の委員、さらに総務省の委員の先生にも一部出席をいただいております。本日の進行は、私、文科省の宇宙開発利用課の渡邉が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 昨年度は対面で開催させていただきましたが、本年は、コロナということもあり、リモートでの開催ということにさせていただいております。何かとご不便があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最初に資料の確認をしたいと思います。議事次第をご覧ください。配布資料としては、資料1から資料3の3点、さらに参考資料として資料1から資料4-7の11点、加えて机上配布資料を1から6までの7点の構成とさせていただいております。この他、資料の他に、色付きのアジェンダ、時間割を書いているものもお送りさせていただいております。本日のヒアリングについては、一部安全保障に係る事項がありますが、安全保障に係る事項については資料を公開できないということで、本日のヒアリングでは取り扱わずに、ヒアリング後にメールで資料をお送りさせていただきまして、メールにてご意見、ご質問をいただくということにさせていただきます。資料の不足などある方は事務局までお申し付けください。
 なお、本日はオンラインということで、ご発言されない時間については、マイクと映像についてはミュートにしていただきますように、よろしくお願いいたします。
 それでは議題1に入らせていただきます。資料の1番、宇宙航空研究開発機構の令和元年度における業務実績評価の進め方について、というポンチ絵をご覧ください。
 まず1ページ目について、既に皆さまご存じと思いますが、独立行政法人はその中に幾つか種類がございまして、平成27年の4月から、研究開発はその長期性や不確実性というような特性があることから、他の法人とは異なる取り扱いの必要性ということが認識をされ、研究開発法人というものが新たに位置付けられ、JAXAもその研究開発法人ということになっております。
 続いて2ページ目をご覧ください。改正された独立行政法人の通則法に基づき、総務省、文科省、経産省に国立研究開発法人審議会というのが設置されています。また、内閣府には内閣府設置法に基づきまして、宇宙政策委員会が設置されており、それぞれの審議会の下に各部会が設けられております。各府省の国立研究開発法人審議会においては、中長期目標と中長期計画を策定し、毎年の業務等について評価を行い、そして見直しを行うというようなPDCAのサイクルを回しております。今回、先生方に評価をいただくのは、年度評価ということになります。
 評価のスケジュールについてです。今年の評価については、コロナウイルスの影響を受け、スケジュールとしては例年より1カ月程度遅れて実施するということになっております。本日のヒアリングは、一番右に赤字で書いておりますヒアリングの部分になりまして、この後意見を提出いただき、次に各府省の部会、分科会としての意見を取りまとめ、そしてその上の審議会等で意見をまた取りまとめをし、最終的には各府省で評価を統一して、一つの評価書を作るということになります。最終的には、大臣の評価として評価を決定するという流れになっております。
 続いて4ページ目をご覧ください。評価の進め方については、昨年度と同様、4府省の国立研究開発法人審議会は、各委員からご意見をいただくということを主たる目的として開催をいたします。最終的にはS、A、B、C、Dの判断をしていただきますが、ここでS、A、B、C、Dを確定するというところまではいたしません。委員からいただいたご意見については、ご自身の専門分野の観点も踏まえつつ、原則JAXAの業務実績等報告書における自己評定、評価内容を変更する必要があるというような判断がある場合に、ご意見記入シートに記載いただくということになります。なお、評定や評価内容に特にご意見がない場合でも、必要に応じてご質問や来年度の業務実施に向けたコメント等を記載いただければと思います。
 JAXAからのヒアリングについては、JAXAから提出のあった自己評価書に基づき、本日実施いたします。ヒアリング後は各府省で締切りを設定させていただいておりますので、ご意見記入シートをその締切りまでに各府省の事務局までご提出をよろしくお願いいたします。
 先ほど申し上げましたとおり、一部機微な情報が含まれておりますので、そちらについてはメールベースでご意見を聴取させていただきます。ご提出いただいたご意見については、各事務局で集約し、各府省の部会で意見として取りまとめ、そしてその上の審議会の意見として、各府省の評価を決定するということになります。その後、事務局のほうにおいて、4府省で協議し、大臣の評価として統一した評価を決定するということになります。
 続いて6ページ目をご覧ください。昨年度からの主な変更点ですが、(2)として年度計画を変更しております。2点ありまして、1つ目は令和2年1月31日付で、令和元年度の運営費交付金の配分額の見直しに係る計画変更を行っております。もう1つは、令和2年度3月16日付で、令和元年度の補正予算の使途を特定するために変更を行っております。また、今回、(3)として、ヒアリングの方式については、オンラインで委員の出席を認めるという取決めにさせていただいております。
 本日のヒアリング後の各府省の部会、分科会、さらにその上の審議会の日程を記載させていただいております。資料1については以上です。
 続いて、本日のヒアリングの具体的な進め方について、昨日お送りさせていただきました色付きのアジェンダに沿って、資料3 JAXAの自己評価書に基づいてJAXAから説明をいただき、委員の先生方には机上配布資料2のご意見記入シートに記入していただくという流れになります。記入シートの記載に当たっては、JAXAの自己評価が適当でない、例えばAと書いてありますが、それをBにすべき、あるいは逆にSにすべき、というような場合にこの記入シートに理由と共にその旨を記載ください。また、評価が適当であり、かつ特に変えなくていいという場合においても、コメント等ございましたら記入いただければと思います。また、コメントも特に何もないという事項については、そのまま空欄にしておいていただければと思います。
 続いて評価項目について、資料2をご覧ください。こちらがJAXAの現在の第4期中長期目標に基づいた各項目になっており、項目ごとに担当する府省が決まっております。このS、A、B、C、Dの評定の考え方については、2ページ目と3ページ目に記載をしております。特に一番高い評価のS評定を付けるに当たっては、具体的にどのようなものを付ければいいかということがなかなか分かりにくいということもありますので、3ページ目に参考になるものを記載しております。総務省の評価に関する指針において、S評定の具体例が定められております。3ページ目の表にありますとおり、例えば宇宙科学探査分野における世界最高水準の成果の創出および国際的プレゼンスの維持向上等においては、具体例として世界で初めての成果や従来の概念を覆す成果等による当該分野でのブレークスルー、画期性をもたらすもの、世界最高水準の達成等々ということになっております。あるいは、宇宙利用拡大と産業振興、航空産業の振興、国際競争力強化については、当該分野での世界初の成果の実用化への道筋の明確化による事業化に向けた大幅な進展等、また、安全保障の確保、安全・安心な社会の実現については研究成果による新たな知見が国や公的機関の基準、方針や取組等に反映され、社会生活の向上に著しく貢献している等ということになっております。本日評価いただく際には、このような具体例も参考にしていただければと思います。
 また、本日のヒアリング後、机上配布資料1に府省ごとに締切りを記載しておりますので、そちらまでご提出をお願いいたします。また、本日のヒアリングを踏まえて、評価を行う上でさらに必要なご質問や追加で必要な資料等ございましたら、こちらも机上配布資料1にあるように府省ごとに締切りを設けさせていただいておりますので、事務局までご連絡をお願いいたします。ご提出いただいた意見については、事務局で集約し、今後行われる各府省の部会、分科会においてご提示をさせていただき、部会、分科会で意見として取りまとめをしていただくということになります。その後、各府省の審議会で審議をいただき、最終的には4府省、事務局で協議をいたしまして、一つの評価書を作るということになります。
 本日のヒアリングの流れについては以上です。ここまででご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それではヒアリングに入りたいと思います。お手元に色付きのアジェンダ表、それから資料3、JAXAの自己評価書、それから机上配布資料の2、ご意見記入シート、この3点セットをご用意ください。かなり長丁場となりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは議題の2、JAXAヒアリングに入ります。まず初めに、令和元年度における業務実績評価の自己評価結果の総括についてJAXAからよろしくお願いいたします。

【JAXA(中村)】 はい、ありがとうございます。JAXAの理事の中村でございます。昨年に引き続きまして、私のほうから総括をさせていただきたいと思います。
 プレゼンテーションにおきましては、回線の容量を減らすほうがいいということですので、ビデオはここで切らせていただきます。音声だけで説明いたします。
 資料でございますが、今お手元の資料を事務局のほうでご表示していただいておりますが、私のほうはページ数を申し上げますので、そのページ数で随時ご覧いただければと思います。
 委員の先生におかれましては、皆さまは昨年度も評価をいただいた先生方であると事務局からお伺いしております。JAXAの資料も昨年度と同じようなフォーマットになっておりますので、資料の全体については簡単にご説明させていただきたいと思います。
 まず資料の8ページをご覧いただきたいと思います。8ページに自己評価の結果が示されております。これからご説明いたしますのは、こちらの1行ごとに書いてある各項目についてご説明をさせていただくことになります。今お示ししておりますのは、自己評価結果でございまして、例えば2018年度については、昨年度自己評価としてお出ししたものがこの評定になっております。この中で、昨年先生方から評価をいただき、結果として主務大臣からいただいた評価では3カ所変わってございます。ローマ数字3.4.1が、Sで自己評価したものをAというように大臣から評価を受けてございます。また、ローマ数字3.6.2については、Sと自己評価したものをAというように大臣から評価をいただきました。さらに、ローマ数字3.6.4でございますが、Aと自己評価したものがBというように評価をいただいてございます。このような評価結果でございましたが、こちらに対しまして、今年度自己評価をしたものが右の欄になっております。それぞれの理由についてこれからご説明をするということでございます。
 資料の13ページをお開きいただきたいと思います。これら各項目がどのような関係になっているかということを改めてご説明をさせていただきたいと思います。中央にローマ数字3.3というのがありまして、それぞれのプロジェクトが書かれてございます。さらにそのプロジェクトの関係では、全体に関係するものとして輸送の分野、あるいは一番右側には追跡管制や環境試験等の基盤となるようなプロジェクトが書かれてございます。さらに下のところにローマ数字3.4とありますが、個々のプロジェクトではなく、それらを横断するものとして、民間企業との協業や産業振興、あるいは宇宙産業の基盤、科学技術基盤というようなことにどのように取り組んだのかということをご説明することになります。さらに左でございますが、このプロジェクトや横断的な研究開発の取組を支えるための取組としまして、国際協力、調査、あるいは理解増進・教育、プロジェクトマネジメント等があるという構図になっております。さらにこれら全体を支えるものとしまして、一番下にありますように、業務運営の改善効率化から人的資源等というものがあり、このような全体の構図でもって一番上に書いてあります、安全保障の確保、産業利用の拡大、あるいは科学分野での探査分野での国際的プレゼンスの向上という、国から与えられております3つの目標が達成できたかどうか、についてご説明させていただくという構図になっております。
 資料を少し戻っていただきまして9ページになります。このようなことをご説明するに当たって、それぞれの項目についてのフォーマットがどうなっているかということを書いてございます。最初に中長期目標、中長期計画が転載されてございます。こちらに加え、大臣からいただいた視点を記載してございます。また、スケジュールを書かせていただいております。次のページでは、このような背景情報の下で評定符号を付けた上で、評点をした理由を付しております。さらに、その次のページからは、適宜補足資料を付けたものになってございまして、主にこの補足資料でご説明させていただくことになります。
 さらに、その次の11ページにありますように、これに関連する予算額、あるいは関連するモニタリング指標をご説明し、12ページでは、先生方からいただいたコメントに対して、どのように改善をしてきたのか、あるいは自分たち自身が抽出した課題報告に対する対応を書かせていただいています。このようなフォーマットでそれぞれをご説明することになります。
 1ページ目に戻っていただきたいと思います。今年の評価でございますが、第4期の中長期目標期間の2年目を終えたところでございまして、2年目の評価ということになります。この2019年度でございますが、後でご説明いたしますように、多くの成果を上げることができたと考えてございます。さらに、ただ単に多くの成果といいましても、JAXAを巡る、あるいは宇宙を巡る外部環境というのは、非常に大きく変化した中でのこの達成であったと考えてございます。ここには書いてございませんが、世界では宇宙軍を設置するというような動きが非常に活発になっており、日本でも宇宙を新しい領域と捉えて、さまざまな活動が行われるようになってございます。このような安全保障分野において主に重要視されているということに対応していかなければなりませんでした。
さらに、宇宙利用の裾野分野でいえば、宇宙関連企業のみならず、例えばソニーやトヨタ、あるいはベンチャー、またあるいは自治体でいえば昨年度では宇宙港を民間が作るという活動が起こり、その活動をサポートしていた和歌山や、県民衛星を打ち上げるということで活動されている福井等、多くの企業・自治体が活発に活動をするような年でございました。このようなところにもJAXAとして対応してきたというところでございます。
 さらに米国が月や火星を目指す国際プロジェクトを提唱いたしました。安倍首相が、わが国はこれに参加をするということを意思表明されましたが、このようなものにも対応していた年でございます。
 加えて、航空の分野では、新型コロナ対策により需要の落ち込みがあり、国際的な競争環境は厳しいという状況でございます。
 このような状況におきまして、わが国の宇宙航空開発利用を技術で支える中核的実施機関として、基礎的な研究開発、プロジェクト、及びこれらを支える業務の全てにおいて、役職員一丸となって挑戦した年でございます。
 中長期目標では4つの項目を挙げておりますので、その4つの項目ごとに記載をしたものがそれ以降になっております。安全保障の確保及び安全安心な社会の実現という目標では、国の安全保障関係機関との連携について書いてございます。特にスペースデブリや人工衛星からの船舶の検出、あるいは情報収集衛星の着実な研究開発というようものが中心になり、また、輸送手段という観点からは、基幹ロケットの開発を世界最高レベルで進めた年でございました。さらに、安全・安心な社会の実現に向けて、という観点では、次の防災災害対策、インフラの維持・管理、地球温暖化のモデリング等、幅広い分野で有効性を示すことができたのではないかと考えてございます。
 続いて、宇宙利用拡大と産業振興という分野でも大きく拡大に貢献したと考えてございます。まず、超低高度衛星技術試験機「つばめ」SLATSでございますが、200kmから300kmの超低高度で観測が行えるということをお示しすることができました。宇宙とは100km以上の領域をいいますが、その中でもより遠くの軌道は今までよく使われていたものの、低い軌道についてはあまり使われていませんでした。この技術ではこの領域が使えることを実証したということです。この領域が使えるということは、小さな衛星で小さなレンズしか積んでいない場合でも、高解像度の画像を得ることができるというようなことを示すことができたわけで、非常に画期的な成果であったと思っております。また、合成開口レーダーでインフラの変位を観測するツールを開発することもできました。国際宇宙ステーションにおいては、プラットフォーム化の取組みが進み、民間会社がこちらのプラットフォームを活用して実験をするということもできました。あるいは、国連宇宙部と共にKiboCUBEのプロジェクトを通じて、国際的な活用をすることもできました。特に人工衛星をこれまで打ち上げたことがなかった国においては、非常に感謝をされたということもまた今年度もお示しできると思います。また、宇宙イノベーションパートナーシップは着実に進めてまいりました。
 さらに、宇宙科学・探査分野における世界最高水準の成果創出および国際的プレゼンスの維持・向上ということで、この分野についても大きな成果を上げたということを書かせていただいております。最初に挙げております成果が、小惑星探査機「はやぶさ2」の成果であり、幾つもの工学的な世界初の成果を達成することができました。さらに、米国の火星や月近傍の探査活動実現に向けての国際宇宙探査計画であるアルテミス計画に対して、JAXAとNASAの間で協力関係を結ぶことができ、その関係の中での活動が日本国政府、具体的には安倍首相による日本の本計画への参加の決定に資することができたというふうに考えております。加えて、2019年度は、「こうのとり」の8号機を打ち上げることで、ISSに貢献をすることもできました。また、宇宙探査イノベーションハブで、民間の方々との協業も随分進んだと考えており、このプログラムにつきましては、Fundingを出してくれたJSTから高い評価を得ることもできました。
 また、航空産業につきまして、一言で言えば国際優位性、及び国際基準策定に貢献ができた年と考えてございます。具体的な例として、多機関・多数機の飛行計画調整機能を追加したD-NETが複数の防災機関において実運用を開始されました。また、離着陸の間隔の短縮運用をできるシステムを導入し、国交省の航空局に採用されたということもございました。また、国際民間航空機関のICAOでは、空港の騒音に関する予測モデルや大気乱流に関する解析結果が高く評価されたということでございます。
 詳細はこれからご説明いたしますが、このような成果を得たということで、JAXAとしては着実に進めたと考えてございます一方、本日評価をしていただきますのはPDCAを回す一環でございます。今年もまたJAXA自身が励みになり、また新たな気付きをできるような評価をいただけるよう、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 はい、どうもありがとうございました。それではただ今総括ということで、これから個別の評価項目に入っていきます。ご質問がある先生方は、そちらのほうでよろしくお願いします。なお、時間の都合上、幾つかの項目をまとめて説明いただき、まとめてご質疑いただくということにしたいと思います。
 それでは最初に、ローマ数字3.3.1衛星測位、ローマ数字3.3.2衛星リモートセンシング、さらにローマ数字3.3.3衛星通信についてJAXAからご説明お願いいたします。

【JAXA(寺田)】 それでは、3の1から3の3まで、JAXA寺田が説明いたします。最初に3の1の衛星測位です。
 まず、衛星測位については、A-4ページで背景情報をご覧ください。スケジュールに関して、2017年2月に「みちびき」1号機が内閣府に移管し、2号機、3号機、4号機が2017年に4機体制で整備され、2018年11月から実用準天頂衛星システムのサービスが開始されており、これと並行して7機体制に向けて、高精度測位技術の研究開発が行われ、2019年度より高精度測位システムの開発が行われているということです。
 A-5ページにまいりまして、関係する政府機関と密接に連携しつつ、先進的な測位技術の研究開発や測位利用ビジネスの推進に取り組んだことで、年度計画で設定した業務を計画どおり実施したとして、B評価をしてございます。具体的には、高精度測位システムの開発という観点で、7機体制構築に向け2017年度から5~7号機の開発・整備に着手しており、JAXAは5~7号機の開発の一部、測位ミッションペイロードを含む高精度測位システムの開発を実施することとなっております。こちらの開発は、2019年3月から、内閣府から受託するというかたちで進めており、この開発においては、7機体制構築時にユーザーの測位精度を向上させるために、新たに衛星観測システム及び衛星地上観測システムの開発、地上検証システムによる測位の信号精度SIS-UREの大幅な向上に資するための技術実証を行うというものがあり、今年度は測位ミッションペイロードの衛星間測距、衛星地上間測距、高安定時刻生成及び地上系の基本設計を進めました。
 また、高精度軌道時刻推定技術に関する研究開発・利用推進という観点では、MADOCAの性能向上として、パラメーターチューニングにより準天頂衛星の軌道時刻推定精度の向上を継続し、精度劣化や計算機異常を監視して、計算機の系統を自動で選択するという機能を実装し、年間不稼働率1%未満を達成しています。また、東京大学、三菱電機との三者共同研究を開始して、衛星稼働率向上に資する研究に取り組んでおります。
 さらに、測位航法学会と連携し、今後JAXAが取り組むべき衛星測位全体の研究開発ロードマップ策定を目指した議論を開始してございます。
 加えて、その他の研究としては、PPP単独搬送波位相測位の弱点である収束時間が長いということに関して、性能向上を図る研究に着手しており、また、衛星に搭載する原子時計については、準天頂衛星にあるルビジウムの原子時計が現在搭載されているわけですが、この原子時計をしのぐ性能を持つ衛星搭載用周波数基準の国産化に向け、光コムを用いた周波数基準の研究に着手しております。
 さらに、測位利用ビジネスの推進という観点では、グローバル測位サービス株式会社に対し、リアルタイム軌道時刻暦の配信や技術開発に関する助言等の技術支援を行い、2020年の1月よりデータ配信サービスが開始されたということです。
 以上が衛星測位の説明でした。続いて、ローマ数字3.3.2 衛星リモートセンシングです。こちらもA-12ページより、全体をご説明いたしますと、2019年度は「いぶき」「しずく」搭載の二周波降雨降水レーダーGPM、加えてALOS-2、SPAISE、SPAISE2号、さらにALOS-2に搭載された小型の赤外カメラ、「しきさい」「つばめ」「いぶき2号」等々の衛星の運用、利用を通じ、このデータの活用についての事業及び開発の予定としてはEarthCARE、ALOS-3、ALOS-4、GOSAT-GWというものが行われております。
 関係府省等と連携を取りつつ、運用成果を踏まえたリモートセンシング衛星の社会実装化に取り組んだ結果、衛星データの利活用が安全保障分野を含めた幅広い分野に拡大、浸透、定着し、研究開発成果の最大化に向けて、特に顕著な成果の創出があったと評価してSとしております。
 具体的には、超低高度軌道利用の開拓・実証ということで、SLATSは2019年9月30日に軌道保持運用を成功裏に終了し、10月1日に運用を終了しました。イオンエンジンを用いて271.1kmから167.4kmの間、7段階の軌道高度で軌道保持技術を実装し、超低高度からの小型の望遠鏡による良好な画質の地表画像取得を成功しました。この成果は、超低高度軌道利用の多様な可能性が開かれるという結果を出し、これらの業績については日本機械学会の宇宙工学部門のスペースフロンティアを受賞しております。また、軌道高度については、ギネスの世界記録に認定されたということで、167.4kmといった記録でございます。
 A-17ページに超低高度技術試験機「つばめ」の概要を示してございます。このSLATSのミッションは、超低高度衛星技術の実証ということ、大気密度データの取得、原子状酸素データと材料劣化データの取得、小型高分解能光学センサーによる高分解能撮像ということを全て実証いたしました。加えて、SLATSは、300kmから180kmの高度での実証を目標としておりましたが、167kmという180kmよりもさらに低い軌道で実証できたということも評価してございます。さらに、A-18ページには、小型のカメラで捉えた絵がございます。181.1km高度での画像を載せてございますが、高度低下に伴う大気抵抗増やイオンエンジンによって画像が劣化するという事象は確認されておらず、超低高度においても良好な画質が取得できたという実績を得ています。
 A-14ページに戻り、気候変動対策等のための衛星利用の推進という観点で、気象情報提供分野におけるJAXAの開発技術の浸透、拡大がなされたということで、2019年度はひまわりの観測データから大気浮遊物質の光学特性を推定する新しいアルゴリズムをJAXAが開発し、黄砂解析予測図というものが提供されるようになりました。A-19ページにあるように、こちらは、気象情報提供分野におけるJAXAの開発技術の浸透、拡大という観点で、気象庁のホームページを掲載してございます。これまでは、ゴビ砂漠あるいは中国内の区域というものが含まれていなかったのですが、2020年1月からは気象衛星の「ひまわり」のデータを用い、この大陸の状態も分かるというようなもので黄砂情報を提供するということができるようになりました。
 A-14ページに戻り、パリ協定に基づく温室効果ガスの排出削減、SDGsに向けた国際取り組みへの貢献という観点で、IPCCにおいて人工衛星が温室効果ガスの排出量の検出手段の一つに認められたということがあり、2019年のCEOSの会合はJAXAが事務局として開催し、2019年12月のCOP25ではサイドイベントを実施するなどの国際的取組を継続的に行っております。「いぶき」につきましては、その開発と運用により、地球温暖化対策への貢献が評価されたということで、文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞してございます。また、SDGsの実現に向けては、SDG指標6.6.1でJAXAプロダクトに基づく全球マングローブ地図データがUNEPに採用されているところであります。
 A-15ページについて、GSMaPの普及・定着化ということで、2019年度は、WMOによる年次声明におけるオーストラリア干ばつの記載の中でGSMaPが活用されました。WMOが日本の衛星データプロダクトを活用して声明を示した事例はまれであるということで、気象学研究におけるJAXA衛星データの信頼性が、権威ある国連の気象機関から国際的に示されることになったということです。さらにGSMaPについては、次でございますが、2018年まではアジア太平洋地域、欧州、アフリカ地域を対象領域として、JAXAの世界の雨分布リアルタイムというものを行っていましたが、2019年はそれにGOESのデータを加え、南北アメリカ大陸や太平洋島嶼国も対象にし、リアルタイムのデータをWebで配信できるようにしております。また、このGSMaPの普及については、このような性能向上に加えて、実際にそのアクセス数、ページビュー数が約11万に増えてきており、また、昨年は非常に台風が多かったこともあり、日本でも10月は15万のページビューが増えてあります。A-23ページにGSMaPのユーザー登録数を示しておりますが、リアルタイムにしたということもあって、登録数は直線的に伸びている状況です。これらのGSMaPについては、この開発と社会での実利用推進に関わる取組が評価されまして、日本気象学会の岸保・立平賞を受賞してございます。
 また、SARによるインフラ点検の低コスト化に貢献するインフラ変位モニタリング技術の実用化推進ということでは、大規模なインフラの変動をmm単位で解析可能にするモニタリングツール(ANATIS)について、2019年度に国土交通省が公共工事等での新技術の利活用促進のために運用しているNETISに登録されました。この後、この技術を広く普及、展開するということを目指し、商業利用について公募をしたところ、民間事業者5社と利用許諾の契約を締結するということで、新たな衛星データ利用の市場を開いたということであります。これらの活動、取組について、インフラメンテナンス大賞における情報通信技術の優れた活用に関する総務大臣賞を取っております。
 さらに、防災・災害対策における衛星利用の浸透ということで、2019年は台風15号、19号、加えて千葉の豪雨ということで、大変災害が多い年でありました。このようなときに、特に2019年度は台風19号において従来にない対応ということで、発災前に国際災害チャータ、センチネルアジアの国際協力体制を発動して、発災当日から観測・データ収集によって一刻を争う災害対応のさらなる迅速化を実現してございます。
 加えて、政府の宇宙政策との協調・連携とユーザーによる衛星データの利用拡大ということで、Tellusで公開するデータの拡大、あるいは国立環境研究所のホームページを通じてJAXAのGOSAT-2のデータを公開するなど、衛星データの普及に向けた対応を取っております。
 以上がリモートセンシングです。続きましてローマ数字3.3.3衛星通信です。こちらA-37ページに全体スケジュールを示してございますが、現在運用している衛星はなく、光データ中継衛星と技術試験衛星9号機(ETS-9)の開発を行っています。A-38ページで、衛星通信については、国際競争力を持つ次世代の通信衛星バス技術及び光衛星間通信技術の実証に向けた通信衛星の開発に取り組んだということで、年度計画に設定した業務を計画どおり実施したとしてBということとなっています。
 光データ中継衛星については、2019年度は衛星システムについてプロトフライト試験を実施し、光ターミナルのプロトフライトモデルの製作・試験を実施し、また、地上システムについても現地据え付け後の総合試験を実施しています。また、ETS-9については、次世代静止通信衛星バスの実現を目指した開発を進めており、2019年度はサブシステム及びシステム詳細設計とエンジニアリングモデルの開発を行っております。なお、2019年度に民間事業者によるETS-9の有効活用方策に関する公募を行い、軌道上デブリ等の状況を把握する静止軌道光学モニターを搭載することとしました。
 以上3点、ローマ数字3.3.1からローマ数字3.3.3までの説明です。

【渡邉課長補佐】 はい、ありがとうございました。それでは、ただ今の説明に対してご質問等ございましたらお願いいたします。ご質問される際は、お名前をおっしゃっていただきましたら、こちらで指名させていただきますので、それでご質問いただくということでよろしくお願いいたします。それでは、ご質問等ございますでしょうか。小塚先生、よろしくお願いします。

【小塚専門委員】 小塚です。聞こえますでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、聞こえています。

【小塚専門委員】 ありがとうございました。そして、JAXAの皆さん、ご説明どうもありがとうございました。どの分野も着実に成果を上げておられて結構なことですが、リモートセンシングについてS評価ということで、特に優れた評価だと自己評価を出されましたので、少しお聞きいたします。
 いろいろご紹介いただきました中で、特にこの点がAではなくSだという評価になった決め手だというものがあればご指摘いただけないでしょうか。拝聴していまして、例えばつばめ(SLATS)は運用が今期に終了した衛星ですね。また、その次のグリーンハウスガスのところで、政府間パネルで衛星データが検証手段として認められたということは、昨年度の報告書に出ていたと思いますので、今年度はその箇所以降におっしゃった点が評価対象だということで、何となく印象としては、今まで着実に積み上げてきたものをさらに進めたと受け取れたのですが、「いや、そうではなくて今期の成果のここがS評価の根拠だ」というところをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

【JAXA(寺田)】 はい。最初に冒頭自己紹介を忘れましたが、私4月1日からJAXAの理事に勤務しております寺田でございます。よろしくお願いいたします。今、小塚先生からいただいた質問で、どこがSなのかという観点ですが、まず、つばめ(SLATS)に関しては、昨年度まさに成功裏にそのプロジェクトを終了したというところで、昨年度の評価として、これがまずSに当たるだろうと考えてございます。このプロジェクトは、JAXAの中で、いわゆるプロジェクトの終了審査も行っており、その審査の中、フルサクセス、エクストラサクセス等々事前に定めた評価基準に基づき、SLATSはエクストラサクセスを上げたという自己評価をしてございます。
 また、その他衛星の利用については、確かにこの事象が発生したのはその前の年ではあったのですが、今年度特に注目した点はその拡大、さらには、浸透、定着したという部分で自己評価をしてございます。例えば、インフラモニタについては、この仕組みが広く認められて、民間事業者5社と実際にその利用許諾が締結され、使われるような状態になったというようなこと等がございます。
 さらに、加えてハイライトしたい点は、そのような活動が認められて、幾つか表彰を受けているというところも特筆しておきたいと思います。以上です。

【小塚専門委員】 ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にご質問ございますでしょうか。竝木先生ですか。

【竝木臨時委員】 はい。よろしいですか。

【渡邉課長補佐】 はい。その後白坂先生お願いします。

【竝木臨時委員】 はい、ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。ローマ数字3.3.3のデータ通信のところで伺いたいです。光データ技術をこの先伸ばしていくために、地上局をどのようにして整備していくかという方針については何も触れられていないのですが、そちらについてはどのように考えておられるのでしょうか。特に、この後民間等が利用していくことを考えておられるのであれば、どのようにして他の衛星との整合性を取っていくかというようなことを進められるのか、教えてください。

【JAXA(寺田)】 はい。まずこの光データ中継衛星につきましては、地上局とのリンクは電波でございます。ただ、現在、宇宙空間で創出されるデータが非常に多くなっているので、ご指摘のとおり宇宙から地上にどのようにしてデータを運ぶかということが非常に課題になっております。例えばETS-9では地上と宇宙をつなぐ光通信の実験が行われるということで、光通信という技術を宇宙だけではなく地上からのリンクも踏まえた状況で、開発していくという方向で開発が進められております。

【渡邉課長補佐】 よろしいでしょうか。それでは白坂先生お願いします。

【白坂臨時委員】 はい、ありがとうございます。慶應大学の白坂です。はじめに、衛星測位については高度化というところで、測位の高度化の研究もきちんとスタートしており、衛星通信の分野でも、着実に今光通信の開発を進めていられるということで、計画どおり進められているかと思います。私もリモートセンシングの項目について聞きたいです。リモートセンシングも本当にさまざまなところで成果が着実に出ているなあと思っております。特にSLATSですね。この低高度が飛べるようになって、この領域が活用できるようになると、これまでとは少し異なるアプローチが取れるようになってくるので、成果として素晴らしいと思っています。しかし、今回運用が一応終了し、ミッションがエクストラサクセスで終わったというご説明があったのですが、それではこの技術を次どのように活かすのかという話が結局ないと、研究のための研究で終わってしまうという形になってしまうことを危惧しています。このSLATSで研究開発した成果というものを今後どのように扱っていくという話は何か考えられていますでしょうか。

【JAXA(寺田)】 はい。具体的に、このSLATSの後継のような形で、超低高度を使うミッションの候補は幾つか挙がってきております。今こちらに記載してある、ドップラーで風を観測するライダーミッションは非常に超低高度との相性が良いということで、そのような具体的なミッション候補は挙がってきており、その具体的な候補について、いわゆるプロジェクトへの移行を目指して今取り組んでおります。

【白坂臨時委員】 ありがとうございます。せっかく開発したといいますか、創出した素晴らしい成果ですので、ぜひ活用していただければと思います。以上です。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にご質問ございますでしょうか。

【梅比良部会長】 すみません。梅比良ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【梅比良部会長】 非常にたくさんの成果が上がって立派だと思います。さまざまな賞もたくさん取られているようで敬服いたします。その上で、先ほどのSLATSが今回のイチオシの成果でエクストラサクセスであるというお話があったのですが、どのような点がエクストラサクセスに該当したのかというところを教えていただけませんでしょうか。また、賞をもらっているようですので、その技術的な難しさについても簡単に教えていただければ幸いです。よろしくお願いします。

【JAXA(寺田)】 はい。どのような点でエクストラサクセスだったかということに関しては、SLATSはもともと高度180kmを目標にしていました。高度をどんどん下げていくと、やはり大気抵抗も大きくなり、イオンエンジンで噴射している状況の中で写真を撮るということを行うには、さまざまな課題が出てくるかなと思っていたのですが、そのような中180kmを超え、より低い高度で実証ができたという点です。何が難しかったかというと、まさにイオンエンジンを吹きながら画像を撮るということで、撮影のための衛星の姿勢制御と、一方で軌道保持という運用での両立した運用が非常に難しかったということです。
 さらに、180kmよりも低いというところで、特にその原子量酸素の状態等の良いデータが取れたと評価しております。

【梅比良部会長】 高度が下がれば下がるほど、さまざまな影響を受けるようになるので、制御が難しくなると思っておけばよろしいのでしょうか。

【JAXA(寺田)】 はい。そのとおりです。

【梅比良部会長】 分かりました。どうもありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 他、よろしいでしょうか。

【赤松臨時委員】 すみません。文科省委員の赤松です。よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【赤松臨時委員】 はい。リモートセンシングのところで、幾つかご意見出ておりますが、私もこのSとするところのポイントを少し検討すべきところがあるかなと考えています。特に、今回は社会実装が進んだというところを挙げられているのですが、昨年度の指摘の中で、産業振興では経済的KPIを意識して対応というご回答をいただいている一方、今回出していただいている情報の中に、あまりそのKPIが出てきてないように思われるのですが、そこに関してはいかがでしょうか。

【JAXA(寺田)】 はい。昨年度KPIということで、コストなどに換算ができないかというご指摘をいただいております。われわれも対応を考えてはいるのですが、対外対応や地球環境問題、あるいは国際貢献というようなもので、なかなかKPIという観点で評価できなかったというところが実情でございます。

【赤松臨時委員】 なるほど。その辺りの効果についても、社会便益をどのように見るかという考え方は多くあると思いますので、そのようなものを取り入れていただければと思います。
 加えて一つ、先ほど挙げられていた、例えばインフラのモニタリングは、JAXAさんとしては初めての取組かもしれませんが、民間企業では既に結構行われているいうことは、少しご理解いただいたほうがいいかと思います。以上でございます。

【渡邉課長補佐】 他ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次に、続いてまいりたいと思います。ローマ数字3.3.4、宇宙輸送システムについてJAXAからご説明をお願いいたします。

【JAXA(布野)】 はい。JAXA輸送系を担当しております理事の布野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。宇宙輸送システムの実績評価についてご説明申し上げます。
 A-47ページをお開きください。宇宙輸送システムについては、はじめにH3ロケットに関しては、各種開発試験並びに維持設計を着実に実施し、当初の予定どおりの打上げに向けて開発を進捗させております。また、イプシロンロケットに関しては、H3ロケットとのシナジー効果を発揮し、国際競争力を強化する総合システムのシステム定義審査を完了し、開発に着手いたしました。また、打上げに関しましては、基本計画工程表に計画された打上げを確実に実施し、世界トップ水準の成功率を維持しました。以上、年度計画に設定された業務を計画どおり実施したということで、自己評価としてはBとさせていただいております。
 具体的な実績、業務実績について、はじめにH3ロケットの主要な開発進捗としては、第1段メインエンジンであるLE-9エンジンの燃焼試験を、種子島宇宙センターにおけるHⅡ-A、Bの打上げ作業と両立させ、必要なデータを取得した後、認定試験を開始しております。また、タンクとエンジンを組み合わせたステージ燃焼試験に関して、エンジンの2基形態に続き、3基形態の試験を完了して、推進系の設計を確定しております。また、固体ロケットブースターや2段のLE-5Bエンジン等の認定試験を完了したことで、主要サブシステムの設計を確定し、試験機初号機の製造を進めており、当初の計画どおりの打上げに向けて開発を進捗させております。
 イプシロンロケットに関しては、2段階開発で進めておりますが、宇宙基本計画工程表に2段階目の開発として、H3ロケットとのシナジー効果を発揮し、国際競争力を強化するとともに、民間事業者主体の打上げサービス事業化を見据えた検討をすることとされております。2019年度の成果としては、ロケットシステム開発と打上げ輸送サービス事業を担う民間企業を選定して設計検討を進め、第1段階の成果を継承しつつ、新たにフェアリングのカプセル化による整備期間の短縮等のユーザーフレンドリー化を図るとともに、H3とのシナジー効果として固体ロケットブースター、アビオニクス等の部品、機械機器等の共通化を図ることにより、国際競争力を強化した総合システムのシステム定義審査を完了し、ロケット開発に移行してございます。開発移行に際して、このロケットの特徴であるシナジー、即応性、高性能、競争力、打上げサービス等を象徴するという意味で、ロケットの名称をイプシロンSロケットと名付けて開発に着手しているところでございます。A-48ページをご覧ください。シナジー効果の一例として、H3ロケットの固体ロケットブースターの地上燃焼試験において、イプシロンロケット第1段ロケットも兼ね、H3では使用しない可動ノズル機能を試験するということで、開発段階においてもシナジー効果を得るという成果が上がってございます。
 継続的に信頼性、運用向上等を図ってきておりますが、打上げに関しては、工程表で定められた打上げを確実に実施し、世界トップの水準の打上げ成功率を維持してございます。また、打上げ時に発生した設備等の不具合に関しては、是正措置の水平展開を図るとともに、設備の保全の抜本的な改善策に取り組んでいるところでございます。
 継続的に取り組んでいる運用性の改善の取組としては、2019年度においてロケットの打上げ時の投棄物の落下域を、これまでの打上げ実績データに基づき、誤差を見直すことによって、投棄位置を40%以上減らすということが実施可能になり、HⅡ-A41号機から適用したということで、打上げ時の協力者への影響の緩和に効果が上がっております。
 具体的な例を図で説明したいと思います。A-51ページにH3の開発に係る各種試験の進捗状況が書いてございます。A-52ページに、エンジンとタンクを組み合わせた厚肉ステージ燃焼試験のパートがございます。左にあります写真が、エンジン3基クラスターの形態で、わが国最初の燃焼試験をしたときの写真でございます。A-54ページにイプシロンロケットの段階的開発のチャートを示してございます。フェーズアウトを受け、段階的に開発をしており、第1段階では左下にございますようなコンパクトな打上げ運用、世界トップレベルの衛星環境等の成果が上がってございますが、それらの成果を引き継ぎ、シナジー開発として国際競争力の強化に取組始めたところでございまして、民間企業の選定、及び開発の着手をしているところでございます。A-55ページについて、シナジー開発として、青字で書いているところがH3ロケットとイプシロンロケットで技術、部品、機器を共用している点、赤字で囲っているところが設備を共用している点でございます。A-56ページに、国際競争力のベンチマークとして、環境条件の比較が書いてございますが、世界トップレベルの環境条件が達成されるという例でございます。A-57ページに、国際競争力の強化と関連して、フェアリング内に衛星のみを搭載するというカプセル化を図ることによって、整備期間を短縮し、運用性を向上させるという取組を行っております。A-58ページに、打上げ成功率とオンタイム率のベンチマークを示してございます。世界トップレベルの信頼性の高さを維持しているチャートでございます。A-59ページに、運用性改善の取組として、落下域投棄物の縮小の例を示してございます。これまでの範囲から約4割以上の削減につながったという例でございます。
 宇宙輸送システムの説明は以上でございます。

【渡邉課長補佐】 はい。それでは、ただ今の説明に対してご質問等ございますでしょうか。

【髙橋部会長】 よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【髙橋部会長】 髙橋ですが、ご説明ありがとうございました。2点お伺いしたいです。宇宙輸送システムの2018年度の自己評価はAでしたが、今回2019年度ではB評価にした理由は何であるかということ、及びH3ロケットの打上げ能力から見た場合、ゲートウェイ構想に使用可能な仕様になっているという理解でよろしいかという2点についてお願いします。

【JAXA(布野)】 はい。まず2019年度の評価としては、年度計画に示された内容を確実に実施したということでございますが、それ以上に超える成果としてなかったということでB評価とさせていただいております。
 また、2点目のゲートウェイの話に関しては、当初H3でミッション要求を定めた際にゲートウェイに関する要求がなかったということで、現状それに対応する仕様にはなってございませんが、現在社内的にもゲートウェイ構想を踏まえつつ、H3での高度化等を検討しているという状況でございます。

【髙橋部会長】 ということは、能力も含めて、H3はさらにパワーアップするようなことをこれからやっていくということでいいわけですね。

【JAXA(布野)】 運用性等もろもろで、できることを検討するという位置付けでございます。

【髙橋部会長】 はい、ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。青木先生お願いします。

【青木分科会長】 はい。ありがとうございます。H3ロケットのエンジンの実験がどこまで済んでいるかということについてご質問します。宇宙基本計画の工程表では、2019年度末までの達成状況というところで、第1段及び第2段エンジンの燃焼試験や要素試験等というものが、継続するとともに、と記載あるのですが、ある程度のところまでは終わったというように読めます。本日第1段エンジンのお話が中心でしたが、第2段エンジンについてはどのような状況になっているのか、ということについて教えていただけますでしょうか。以上です。

【渡邉課長補佐】 JAXAさんのほうから。

【JAXA(布野)】 A-47ページに、LE5B-3等の各種認定試験を終了ということで、2段エンジンに関しては2019年度中に認定試験が終了してございます。

【青木分科会長】 すみません。ありがとうございます。見落としておりました。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。

【赤松臨時委員】 文科省委員赤松です。よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【赤松臨時委員】 このイプシロンやH3に関して、国際的なコスト競争力について、昨年度いかがでしょうかというご質問を差し上げて、これから検討しますというご回答だったのですが、その進展状況はいかがでしょうか。

【JAXA(布野)】 はい。昨年もコスト等のKPIというご指摘をいただいており、コスト競争力という観点で検討しております。2019年度では、例えばイプシロンロケットに関しては、そもそもその国際競争力の強化ということでシナジー開発をするということで、競合ロケット、具体的に言うとインドのPSLVやヨーロッパのVega、あるいはベンチャーであるエレクトロン等の競合ロケットの動向を踏まえつつ、ベンチマークをしながら基本設計を進めているところであり、コストに関してもその動向を踏まえつつ検討してございます。ただし、コストに関しましては、競合ロケットに対する商業戦略とセットで設定されるということで、先ほどもご説明しましたように、打上げサービスを民間事業者の商業受注等の影響がないように、具体的な数値等については記載を控えさせていただいてはおりますものの、考慮に入れて今基本設計を進めているところでございます。H3に関しても、競合ロケットの動向等を踏まえ、競争力の観点でも評価しつつ検討を進めているところでございます。

【赤松臨時委員】 了解いたしました。検討はされているということで、それはいつ頃出てくることになっておりますでしょうか。

【JAXA(布野)】 基本的に、具体的な数字に関しては、公表は控えさせていただくということで、文科省さんの部会においても、公表はせず、必要に応じて非公式のセッションでご報告する等のことをやらせてきていただいているというところがこれまでの状況でございます。

【赤松臨時委員】 はい、分かりました。民間移管が済んだ段階で見えてくると考えてよろしいでしょうか。

【JAXA(布野)】 具体的にはそういうことになってくると思います。

【赤松臨時委員】 はい、分かりました。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは続きまして、ローマ数字3.3.8宇宙科学・探査についてJAXAからご説明をお願いいたします。

【JAXA(國中)】 はい。宇宙科学研究所所長をしております國中と申します。聞こえてますでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、聞こえております。

【JAXA(國中)】 はい。ページはA-84ページ目からになります。このページの右上を見ていただきますと、自己評価はSでご提案させていただきたいと思います。A-84、85、86は中長期計画を書いているところですので飛ばさせていただきます。これからご説明する内容を文字で書き出しました箇所がA-88、89ページ目になっておりますので、A-90ページから、図面を使って同一の内容をご説明させていただきたいと思います。
 A-90ページ目に移っていただき、このページは「はやぶさ2」の探査状況をお示しするものです。2019年4月に衝突装置を用いて、小惑星リュウグウへの人工クレーターの生成に成功し、及び7月には人工クレーター近傍に2回目のタッチダウンを成功させ、地下物質のサンプルを採取したと考えております。具体的な説明になりますが、このページの中央部分にある小さな黒っぽい写真は、衝突装置を分離したときにカメラで撮った状況でございまして、このSCI taken by ONCと書いたものがその写真になります。40分後にこの衝突装置が自動で作動し、高速で弾丸を発射して、小惑星の表面に当たった瞬間の写真がその右側にありますImpact ejectaと書いたものになります。衝突の瞬間にたくさんの砂煙が上がっている様子を捉えております。この砂煙が収まった後、衝突の1カ月後に、このクレーターの近傍に舞い戻りまして撮った写真がその下の写真であり、直径13mの半円形のクレーターを確認することができました。さらに、別の赤外カメラでこの領域を観測したものが、その左側にありますオレンジ色の写真になっておりまして、中央部分の赤の円が先ほどのクレーターの位置になります。見ていただきますと、その周辺が黒ずんでいることがお分かりになろうかと思いますが、こちらがクレーターの内部から吹き飛びました物質が堆積しているであろう領域と考えております。そこで、この堆積した物質が存在する、黄色の小さな円で示した場所に2回目の着陸を実施したというわけでございます。
 本文に戻っていただきまして、工学的には2018年度の2つの成果を合わせて、合計7つの世界初を達成いたしました。具体的な内容はその下に1番から7番で書き下しておりますが、3番が人工クレーターの生成、4番が高精度着陸、6番が地下物質の採取ということをうたわせていただいております。
 A-91ページについて、外部表彰の一部をこのページにお示しさせていただいております。外部からも高い評価をいただいているものと考えております。
 科学的な成果の内容につきましてはA-92ページ目になります。こちらでは2つの論文をお示しさせていただきたいと思います。まず上段に書きましたものは、「小型衝突装置と分離カメラによる小惑星リュウグウにおける宇宙衝突実験のその場観測」というタイトルの論文で、Science誌に掲載されております。この成果は米国CNNやニューヨークタイムズなどでも紹介され、世界に広くアピールできたものと考えています。2つ目の論文はその下、後半に書いてあるものですが、「始原的小惑星リュウグウの熱撮像によって明らかにされた超多孔質な物質的特徴」という論文で、Natureに掲載されております。このように、「はやぶさ2」の観測結果が続々と科学成果を創出しているという一端をこのページでご紹介させていただきたいと思います。
 A-93ページ目になります。「はやぶさ2」以外の科学成果をここでは記載しております。火星の月であるフォボスに2024年打上げ予定のMMX火星衛星探査計画を現在進めております。火星の物理を考えると、火星表面にはたくさんの隕石が降った経緯がございまして、この隕石が衝突するたびに、上空にたくさんの表面物質が舞い上がった結果、その一部がフォボスに落ちているのではないかという仮説がございます。これを定量的に分析した結果、当初想定したよりもたくさんの火星表面の物質がフォボスに堆積しているということが見込まれました。その成果は論文として出版してございます。このことが意味することは、フォボスからのサンプルリターンは、火星の全時代、全領域の物質が含まれている可能性があるということを示しております。従って、フォボスの物質を分析することによって、火星の歴史を調べることができる可能性があるということを意味しております。ちょうど昨晩、米国NASAはPersevellanceという火星表面からのサンプルリターンミッションの打上げに成功いたしました。火星表面のサンプリングは、非常に局所的なサンプリングになることを意味しております。従って、米国NASAと協力することにより、Persevellanceの採取したサンプルと、フォボスのサンプルを比べることで、火星の歴史を網羅的かつ包括的に理解することを可能とするような国際協力が今後展開できるものと考えております。
 A-94ページは、ジオスペース探査衛星「あらせ」の成果であります。この衛星は2016年に打ち上げられた探査機です。その分析・計測結果に関し、右の上段にて2つのグラフをお示しさせていただきたいと思います。縦軸が量で、横軸が分子番号を示しているものです。そして、右側の図は宇宙嵐が起きているときのデータ、左側は宇宙嵐が静粛なときのデータを示しております。横軸で130番ぐらいの場所を見ていただきますと、右の図で青く示したピークが見て取れると思いますが、こちらは分子イオンを示しております。左の図における右の図のピークと同じ場所をご覧いただくと、宇宙嵐が起きていないときは、このピークが見受けられないという結果を得ております。この意味するところは、宇宙嵐によって電離圏の物質が舞い上がって宇宙に流出しているということを示しているものと考えております。これは地球大気の流出の現象を示しているものと考えられており、この成果は米国地球物理学会、ジオフィジカルリサーチレターの2019年度Editor’s Highlightsに選ばれております。また、A-95ページに移っていただきまして、CALETというカロリーメーター型宇宙電子線望遠鏡が2015年に打ち上げられ、ISSのバックログに取り付けられ、ISSの安定したインフラを使い、長期にわたって安定な計測が実施されました。その成果としてまとめられたものが、右側の図面になってございます。横軸が高エネルギー粒子のエネルギーを示しており、104、10TeVという高いエネルギー領域まで観測が実施されております。この図面にはカラフルな打点が示されておりますが、こちらは各国の宇宙機関が打ち上げた衛星の観測結果を示してございます。特にご注目いただきたいところが赤い打点でございまして、こちらがCALETの成果になります。各打点には水平、垂直方向にバーが記載されておりますが、こちらは誤差を示しております。赤いデータはひときわ小さなエラーバーになっていることが見て取れるかと思いますが、他の衛星データと比べまして、非常に高精度なデータを蓄積することができたということを示しております。この大きく波打つエネルギー分布を調べることにより、宇宙の構造や高エネルギー電子の発生源の性質を捉えることができるものと考えております。この成果は米国科学雑誌Physical Review Lettersのハイライト論文として認められてございます。
 このように、「はやぶさ2」に偏重することのみならず、広い領域で成果が出ているということを主張させていただきたいと思います。
 96ページ目について、国際的な関係として、米国NASAとはXRISMでの共同開発を行っており、また、MMX火星衛星探査計画にはCNES、DLRから提供されたロボットをフォボスに持って行くという協調関係ができているというようなことをこのページではご説明させていただいております。
 97ページ目になりますが、人材育成に関して、宇宙研人材育成委員会という組織体を設置して、若手を活用するメカニズムを新たに創出すべく、議論及びその施策を行っているところです。また、学生動員に関しては、これまでは「はやぶさ2」の運用現場に学生を動員するということを行っておりましたが、この取組をさらに一般化いたしまして、観測ロケットや大気球の運用の現場に学生を動員するという活動も行っております。また、2019年度はMMXのフロントローディングという費用をお認めいただきまして、MMXに関する技術開発の技術成熟度(TRL)を向上させるという活動を行っておりました。この取組が大変うまくいきまして、MMXプロジェクトをスムーズに立ち上げることに成功しております。
 98ページ目になりますが、科学領域のみならず、産業振興に関して、「はやぶさ2」に搭載されたイオンエンジンを工場で用いられる真空炉の中で用いて、絶縁物の帯電を除去する装置として販売が進んでおります。
 さらに、2019年度は駒場から相模原にキャンパス移転して30周年目、及び、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げてから50周年目の記念の年に当たりまして、このような機会を捉え、たくさんのイベントを行い、広い年齢層にアウトリーチをかけるという作業も、イベントを通じて実施してまいりました。説明は以上になります。

【渡邉課長補佐】 はい。それではただ今の説明に対して、ご質問等ございますでしょうか。中村先生、お願いいたします。

【中村臨時委員】 はい。文科省委員の中村です。ご説明ありがとうございました。「はやぶさ2」で素晴らしい成果をいろいろ上げておられるのですが、例えば7つの世界初を達成されたというようなことが、今後どのような広がりになっていくかについてご説明を少しお願いできたらと思います。

【JAXA(國中)】 はい。探査機の高精度な制御によって、このような成果が達成されたわけですが、今後MMXでもフォボスへの着陸を控えており、またDESTINY+という、ターゲットとする小惑星を高速で通過する際に、正確にターゲティングする必要である小惑星フライバイ計画も今進めておりまして、このような方面に技術が転用できるものと思っており、また「はやぶさ2」の運用経験を積んだ技術職員をこのような高度な次のミッションに仕向けていくということが期待されると考えております。

【中村臨時委員】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。

【赤松臨時委員】 文科省委員赤松ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【赤松臨時委員】 はい。それでは、こちらも昨年度の指摘になりますが、科学的成果の普及啓発以外も、わが国の社会、国民に対するアウトカム創出に関して、納税者の視点でKPIの検討をしていただくという話になっていたかと思いますが、その状況はいかがでしょうか。

【JAXA(國中)】 アウトカムの提示に当たっては、具体的な指標や資金計画を含み、中長期ロードマップの掲示の有無や方法について検討をしているところであり、宇宙基本計画工程表や独法評価基準などに基づいて評価をいただいております。

【赤松臨時委員】 今回お示しいただいた資料の中に、もちろん科学的成果に関して、多くの資料、指標を出していただいているのですが、その啓発以外のわが国の社会、国民に対するアウトカム創出に関する納税者視点のKPIをぜひご検討いただきたいと思います。いかがでしょうか。

【JAXA(國中)】 はい。ご指摘をいただきまして努力させていただきたいと存じます。

【赤松臨時委員】 科学的成果は素晴らしいと思いますが、ぜひ納税者に対してどういう説明ができるのかということを、不断に検討いただければと思います。

【JAXA(國中)】 はい、ありがとうございます。

【赤松臨時委員】 あともう一つ、本日触れられなかったのですが、ImPACTが終了したということは分かるものの、論文数が長期で見ると、少し横ばい、あるいは低下傾向にあるかなと思ったのですが、この辺りに関してはどのようにお考えになりますでしょうか。

【JAXA(國中)】 A-100ページ目に論文の推移を図2として示してございます。2018年度がひときわ高くなっておりますが、こちらはその前に事故で喪失したASTRO-Hの成果が集中的に取りまとめられたことを示しており、2018年は特異点にはなってございます。そちらを抜かしますと、ほぼ高止まりしているかなという分析をしているところです。

【赤松臨時委員】 なるほど。「はやぶさ2」があれだけの成果を出していることからすると、もう少し上がっていってもいいのかなと思ったりもするのですが、いかがでしょうか。

【JAXA(國中)】 2019年はまさに探査データを取るところに集中しておりまして、論文化するというところは本年度からと考えております。

【赤松臨時委員】 なるほど。それでは今年度に期待するということですね。あと、外部資金に関してはいかがでしょうか。

【JAXA(國中)】 外部資金は、先ほどの先生からのご指摘があるように、ImPACTが終了したということになります。A-99ページ目に外部資金状況のプロファイルがありますが、2018年にImPACTが終わったことによって、2019年度はバーが小さくなってございますが、この受託研究以外の青と緑や紫の部分だけを比較すると、2018年よりも2019年度は進捗をしておるという分析をしておるものです。

【赤松臨時委員】 こちらはいったん落ちたものの、今後また復活してくると考えておいてよろしいでしょうか。

【JAXA(國中)】 はい。今のところ、ムーンショット等々外部資金に積極的に打って出る活動をしておるところです。

【赤松臨時委員】 分かりました。またそちらのほうも推進をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。以上です。

【JAXA(國中)】 あと、論文につきましては、追加になりますが、本年度4月5月には、「あかつき」に関する論文がScience誌に採択される等、その他の衛星でも成果が出つつあるところです。

【赤松臨時委員】 分かりました。期待しております。ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは小塚先生お願いします。

【小塚専門委員】 はい。小塚です。國中所長、ありがとうございました。宇宙研人材委員会ということを触れられたので、少しご質問したいと思います。宇宙研人材委員会を立ち上げられて、立上げ自体は今年度ではないかもしれませんが、今まだ立ち上げ期だと思います。今後、この委員会を設けたことの成果あるいは効果を、どのような基準で測っていこうとお考えなのか、一言ご説明いただけますでしょうか。よろしくお願いします。

【JAXA(國中)】 はい。今、宇宙科学研究所では、2003年にJAXAに統合された以降、各研究本部が持っていた人材を登用するメカニズムが複数存在しておりまして、こちらがあまり整備されないかたちで使われております。それらの制度を統括、再組立てして、教授陣からの指導が効き、かつ若手が自由闊達に活動できるようなメカニズム、及びその活動成果を評価できるようなシステムをつくり上げていきたいと考えております。

【小塚専門委員】 はい、ありがとうございました。恐らく来年以降にこちらの成果を客観的にはどのように測るのかというような議論になるかもしれませんので、ご検討をよろしくお願いいたします。

【JAXA(國中)】 はい、ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 他はよろしいでしょうか。それでは続いてローマ数字3.3.9国際宇宙ステーションとローマ数字3.3.10国際有人宇宙探査についてJAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(佐々木)】 はい。国際宇宙ステーション、国際有人宇宙探査、及び宇宙探査イノベーションハブを担当しております佐々木と申します。よろしくお願いします。声は大丈夫でしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、聞こえております。

【JAXA(佐々木)】 はい。それではまず、国際宇宙ステーションについてご説明をします。ページがA-114ページになります。自己評価としてはSを付けさせていただいています。
 中長期計画においては、地球低軌道利用の拡大と事業化に向けた取組、また、ISS計画を通じた国際的プレゼンスの維持・向上に資する取組ということで識別をされておりますが、それらの取組に対する評価をさせていただきました。概要はA-117ページからA-119ページにございますが、そちらの概要をまとめたものがA-120ページになりますので、A-120ページでまずご説明をさせていただきます。A-120ページをお開きください。
 大きく3つポイントを挙げさせていただいております。1つ目が「きぼう」及び「こうのとり」の安定運用になりますが、2009年に「きぼう」が組み立てられてからちょうど10年の節目に昨年はなっております。その10年の設計寿命を超えて、なおかついまだに安定運用を実行し、さらには利用を確実に進めてきているということがポイントです。また、「こうのとり」においても、当初7号機までの計画としておりましたが、昨年度は追加の8号機を成功させたことで、国際宇宙ステーションとしては、現役の補給機で唯一100%の成功をしている大型の貨物輸送機であり、この成果によってISSの維持が進められているというところになります。このような状況の中で、当初ISSにおいては、一参加国という位置付けでしたが、今現在は主要な参加メンバーとして位置付けられており、下にありますように、宇宙飛行士の活躍も相まって、再開される米国の有人宇宙船、今デモミッションが飛行しているクルードラゴンになりますが、そちらの運用期の初号機に野口宇宙飛行士が米国人以外の宇宙飛行士として初のアサインをされております。こちらもこれまでの成果が評価されたものと考えています。また、先ほど中村理事からも報告がありましたが、昨年10月にアルテミス計画等への参画が政府決定され、そちらに向けても米国から最も信頼できるパートナーとして参加要請があったということについても、これらの成果に基づいたものと考えています。
 2点目は、中長期計画にもあるように、地球低軌道利用の拡大と事業化の取組になります。「きぼう」は、人工衛星とは異なり、年数回の補給による頻繁な軌道へのアクセス性、及び軌道上でのさまざまなサポート、自由度がありますので、宇宙での技術実証の場として位置付けられております。こちらの実証を事業化し、また民間利用の促進をしてまいりました。その取組の結果として、民間企業が事業として使える機会が格段に増えてきたということが一つあります。また、その一つの成果として、ソニー株式会社と協力した通信実験がありまして、その上で、この実験については宇宙開発利用大賞総理大臣賞も受賞しているという個別の成果も上がってきています。また、こちらの利用についても、効率良く進めなければいけないという観点で、下に書かれていますが、利用成果といった点では、規模が大きいため、米国のほうが数は多いものの、日本としては、テーマを絞り、タンパク質の結晶、マウスの飼育、あるいは材料の非接触の浮遊というような幾つか重要な実験のプラットフォーム化を進め、そちらが大きな成果を上げた結果として、要したリソースに対する実験の利用成果が最も大きいパートナーになったというようなことが上げられます。
 3点目がプレゼンス、人材育成の観点です。上にありますのは、「きぼう」を使って、特にアジア、アフリカ諸国に対する宇宙への活動の支援といった成果になります。超小型衛星放出においては、累計で19カ国27機を上げておりますが、こちらはISSの参加国の中で、最も多くのいわゆるアジア、アフリカ諸国の参画を導いているものであります。また、この結果として、昨年行われたアジア開発会議等においても、宇宙という領域が議論をされるようになっています。また、アジア、アフリカだけではなく、米国との協力も加速しまして、OP3と呼ばれる日米協力が2年前に結ばれていますが、先ほど述べたような重要な実験システムについては、米国のリソースを使いながら実験をする方向で開発をすることになりました。また、その一つとして、低重力ミッション、小動物飼育システムについては、文部科学大臣賞を受賞しているところになります。2つ目と3つ目の内容については、この後の補足で説明させていただきますが、先ほど述べましたように、A-121ページ目について、左上にあるような図のとおり、約5年前から有償利用案件を増やしてきており、昨年、一昨年から事業化案件も含めて大幅に増加をしてきています。この点は、一部を民間に開放し、加えて有償利用してきた成果と考えております。
 先ほど触れたように、A-122ページ目には1つの大きな成果として、JAXA、NICT、ソニーCSLによる長距離空間光通信軌道上実証を行いました。「きぼう」という場がトライ・アンド・エラーできる軌道上でのシステムであることから、より短期、低廉に実証ができるといったところで、有償利用制度を使った企業体からも高い評価を受けているところになります。また、われわれでは考えつかないような、さまざまな無人利用も、右にありますようなかたちで進んでいます。
 A-123ページ目はマウス実験のご紹介ですが、マウス実験についても、「きぼう」での優位なシステムになっており、今まで4回連続して生存したままの帰還をするということを唯一実現しています。この成果によって、人工重力を発生させること、あるいは月を想定した6分の1Gでの環境におけるさまざまな実験が可能になっているところになります。
 また、A-124ページ目の右側にありますが、先ほど出ましたように、実験の数を実際にかけているリソースに応じて分析をすると、JAXAが最も利用効率を高く実験を進めているということが読み取っていただけるかと思います。
 続いて、次の2つがプレゼンスの向上になります。初めに、アジア、アフリカの協力関係でありますが、先ほど述べましたように、19カ国27機の超小型衛星を「きぼう」から日本の協力で放出しております。昨年度は、スリランカ、ネパール、シンガポール、ルワンダ、エジプトと、超小型衛星を放出しています。また、そのうち、ネパール、スリランカにとっては初めての人工衛星であり、ネパールの教育科学技術大臣から謝辞が述べられております。また、グアテマラ衛星についても、3月にISSに輸送を兼ねて打ち上げられ、大統領から謝辞が述べられているというような成果が上がっていると考えております。
 さらに、A-126ページでありますが、さまざまな取組について、結果として昨年横浜で開かれたアフリカ開発会議においても、安倍首相の基調講演の中で、共同開発の人工衛星が紹介されており、また、成果文書にも宇宙という文言が取り込まれているところです。また、マレーシア、タイにおいても協力していろいろな実験を続けているところであります。
 加えて、3つ目の柱としての国際的プレゼンスの維持・向上に向けた取組ですが、日米協力の観点では、繰り返しになりますが、マウスのミッション、静電浮遊炉のミッション、及びロボットチャレンジというような取組について、米国のほうからリソースをかけて利用していくかたちとなり、JAXAのシステムが日本を越えて米国にも使われるというところまで成果を上げているということです。
 そして、最後になりますが、この成果を振り返ると、やはり将来の国際宇宙探査につながるような重要な立場、評価を世界的にも得ているところに至ったということ、また、繰り返しになりますが、従前の成果、及び昨年上げたさまざまな事業化、事業の成果、加えてプレゼンスの向上の3点で大きな飛躍のあった年と考えております。
 引き続き、国際宇宙探査のご説明をします。A-133ページになりますが、自己評価はAとさせていただいています。
 中長期計画上は、さまざまな観点でわが国の宇宙探査計画の提案、あるいは計画立案をする際、加えて、そちらに向けたプログラムの具体化を図って、波及効果が大きくかつ今後伸ばすべき技術を取り組んでいくというようなことが示されています。
 概要はA-136ページからA-137ページにありますが、補足でA-138ページ目からご説明をさせていただきます。ポイントは、参画に向けた計画の推進、及び、優位技術の実証の2点になります。参画に向けた計画の推進については、A--138ページ、A-139ページに書かせていただいていますが、一つのポイントとして、国内的な政策の議論をリードしたという観点になります。NASAあるいは各国とさまざまな調整を踏まえ、協力関係を構築してきました。2019年9月には、JAXA理事長とNASA長官によって、火星探査を見据えた月近傍及び月面における持続的な探査活動の実現に向けた共同声明の表明を実現しています。 この成果を踏まえ、また、10月には政策レベルでの議論が進んだ結果、10月の宇宙開発戦略本部において、米国提案による国際宇宙探査への参画方針が決定をされたというところで、我々の取組が評価された結果と考えています。この内容については、宇宙基本計画の工程表の改訂で追記されております。
 これに合わせて、さらに幅広い国際的な取組では、A-139ページにありますように、国際宇宙探査協働グループISECGという、主要国を含めた22カ国の加盟国が参加する活動の中で、その議長機関を一昨年5月からJAXAが担っております。その中で、ゲートウェイのみならず、月あるいは火星の探査に関するシナリオと技術検討をJAXAが主導して行っております。昨年10月にはシンポジウムを開かせていただきました。この中で、さまざまな国際的な要請、変化も影響されるということで、この夏に向けて国際的な月面探査計画書を作成し、参加国が協力して作り上げたというところになります。今後、こちらについては、各国それぞれのステークホルダーにおいて働き掛けを行うというものになります。
 A-140ページについて、国際的なミッションの一つとしてインドとの協力で月極域探査を推進しています。このプロジェクトについては、一昨年からImplementation Arrangementという協定を結び、プログラムの具体化を図ってまいりました。その中身について政策レベルで昨年度取り上げていただき、さらに具体化を進めております。その結果として、宇宙基本計画工程表の改訂において、月極域表面移動探査機の開発の着手といったところまで結び付けております。
 また、併せて優位技術の実証という観点では、中長期計画にありますような4つの技術として、それぞれ必要な技術について研究開発を行っています。幾つか例を挙げさせていただきますが、重力天体表面探査技術、こちら月面等での探査する技術です。その中でも幾つか重要な課題があり、一つはバッテリーで、厳しい環境の中での非常に効率的なバッテリーの開発をし、現在従来の40%を超えるエネルギー密度を入れたバッテリーの試験を完了しています。さらに、その他にも表面の移動におけるローバーの実現性についても確認を進めています。加えて、その他ドッキングや宇宙滞在等を行っていますが、A-143ページにあるように、重力天体への離着陸技術に関しては、より効率的に行うための極低温の推進薬を維持するためのタンクに必要な断熱材の研究開発を行っております。海外の同等品より断熱性能を2倍にすることを実現し、この成果によって月面着陸機の液体水素エンジン等の改良のめどを得たということで、今後システムの検討に進んでいくことになります。
 以上により、国内の政策の議論をリードしたこと、及び世界的にも優位な技術の研究開発を行っているという観点でA評価をさせていただきました。ご説明は以上になります。

【渡邉課長補佐】 それでは、ただ今の説明に対してご質問等ございますでしょうか。髙橋委員お願いします。

【髙橋部会長】 はい。ご説明ありがとうございました。髙橋です。いつもこの国際宇宙ステーションの評価は議論になるところです。一つの視点として、JAXAの第4期の中長期目標というものから見たときにどうであるなのかということをコメントしたいのですが、この国際宇宙ステーションISSのJAXAの第4期中長期目標は、大きく4つあると思います。一つが有人宇宙技術の獲得、2つ目がイノベーションの創出と産業の振興、3つ目が科学的知見の創出、4つ目が国際的プレゼンスの向上ということで、この4つの観点から見たときにどうなのかということでお聞きしたいのですが、一番最初の有人宇宙技術の獲得ということについて、例えば米国、ロシアの現状の実力をSとしたときに、今の日本の実力を評価すると、S、A、Bでいくとどのあたりに当たるのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 ありがとうございます。個人的にはSと言いたいところですが、軌道上の実績が非常に重要になります。われわれとしては、地上ではかなり匹敵するレベルまできていると思いますが、まだ軌道上での実績がないという観点では、私としてはAというふうに思っています。

【髙橋部会長】 はい。私もそうでないかなと思います。一つ、客観的に今のポジションを見るということも大事なのかなと思います。加えてもう一つ質問です。利用統計情報を分析した利用総数と利用効率の分析結果がございますが、この分析結果、指標は、NASAも含めて、ISS参加国全てが共有して、評価項目とすることを承知しているのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 この利用総数については、NASAが取りまとめた数字になります。ですので、この数字自体は共有されているものです。利用効率という指標は、われわれが評価に使ったものですが、もともとのリソース、国際宇宙ステーションにおける分担の比率、こちらは日本が12.8%とよくいわれますが、その数字を掛けていますので、その数字自体も国際的には合意されているということで、エビデンスとしては共有されています。ただし、利用効率としてこのように数字を出している点は、われわれがそのデータから使ったということになります。

【髙橋部会長】 その点を実は少し心配しています。宇宙開発、特に有人宇宙探査は、米国とロシアが失敗と成功を繰り返しながら、年輪のように実績を積み重ねて築き上げたものだと思います。それを特定の期間を切り取ってその効率を評価するということはどうなのかなと。ISSを建設するためには、スペースシャトルとソユーズの運用があり、莫大な費用、さらに人的な犠牲も払ってきています。そのような歴史があってISSもできたと思うのですが、運営費用の分担というものを分母にして、利用効率ということを日本が自慢すると、NASAや他の国から見たときにどのように捉えられるのかということを懸念しているのですが、いかがですか。

【JAXA(佐々木)】 この国際宇宙ステーションの初期の段階の、要は最初の組み立て、開発の段階から整理すると、また少し違ったかたちになろうかと思います。この数字自体は、おっしゃられたように、実際に運用フェーズにおける、あるタイミングを切り取った評価になりますので、過去をさかのぼって評価してしまうと、なかなか相対的に評価が変わらないので、こういう評価をするタイミングでは、ある一定の期間を絞って評価をしないと、なかなかわれわれの努力が示せないかなと思って作っております。一定の期間の評価においても、国際的にも議論を進めて、全体として利用効率を上げるようなかたちに進めていきたいと思います。

【髙橋部会長】 ぜひ、アメリカやヨーロッパ、ロシアというような他の参加国に対して、誤解が生じないようなかたちで表現されたほうがいいと思います。例えば、むしろ設備の稼働率、あるいは設備の不具合件数等々というようなものも一つの物差しになると思います。非常にナイーブな評価の在り方になると思いますが、ぜひ少しご検討していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

【JAXA(佐々木)】 アドバイスありがとうございます。そのような視点でもぜひ評価したいと思います。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。

【大矢臨時委員】 大矢です。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【大矢臨時委員】 はい。ご説明ありがとうございました。国際宇宙ステーションのA-121ページの民間による技術実証と事業の拡大について、利用件数がこの2018年と2019年で飛躍的に伸びており、事業拡大をかなり目標にされていたと思うのですが、この伸びていった原因というのは何でしょうか。

【JAXA(佐々木)】 はい。こちらはやはりこれまでの蓄積の部分が大きいと思いますが、有償利用等に着手したのが約5年前だと申し上げましたが、実は2009年から活動自体は開始をして増やしてきました。その中で、やはり最初はなかなか理解が得られない部分もありましたので、「きぼう」の利用のしやすさや有償利用の制度を分かりやすく工夫することによって伸びてきたのだろうと思います。加えて、もう一つは、事業化として民間の事業者を活用して、より広い方に関心を持って参加してもらうという工夫も大きく伸びた要因かと思います。

【大矢臨時委員】 テーマ設定と、事業者の方の理解を深めるための何かプレゼンテーション力が上がってきたみたいなことでよろしいでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 そうですね、はい。

【大矢臨時委員】 ありがとうございます。

【梅比良部会長】 すいません。梅比良ですがよろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【梅比良部会長】 同じところになりますが、この事業化案件と有償利用案件というものの明確な違いは何でしょうか。民間がやっているものが事業化案件と考えればよろしいのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 概ねご理解のとおりですが、例えば事業化案件として、左下にありますように、超小型衛星放出サービスの事業を2社に選定しています。その2社が事業化として多くの超小型衛星ユーザーを獲得して、件数としてはその数字を述べていますので、事業化案件というかたちでさせていただいています。

【梅比良部会長】 この事業をやられている方が、例えば超小型衛星の放出のビジネスを受注することで利益を上げてやっておられるというような格好になっているということなのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 はい、おっしゃるとおりです。

【梅比良部会長】 そういうことなのですね。分かりました。加えて、もし分かればの話で恐縮ですが、この有償利用案件はやはりまだ実費ベースになっているのでしょうか。あるいは、いわゆるビジネスの規模として、この程度のビジネス規模があるというようなものになっていると思えばよろしいのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 まずJAXA側は、基本的には実費及び技術支援等の技術費等を請求させていただいています。一方で、民間さんでは、そちらに当然利益等を乗せられていると思いますが、その値については、我々では分からないです。

【梅比良部会長】 分かりました。どうもありがとうございます。

【古城部会長代理】 すみません。文科省委員の古城ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【古城部会長代理】 はい。「きぼう」の一つの指標として国際貢献、プレゼンスの拡大という観点があると思います。A-125ページの超小型衛星の放出で、SDGsに関連しては、ここにある途上国の小型衛星を打ち上げているということですが、この打ち上げられた衛星は、それぞれの国のSDGs目標の達成に貢献するようなかたちの衛星であるという位置付けで理解してよろしいのでしょうか。以上です。

【JAXA(佐々木)】 はい。われわれとしては、そのつもりで取り組んでおりますが、全て確認をしたわけではないので、こちらは確認させていただければと思います。

【古城部会長代理】 はい、分かりました。よろしくお願いします。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。

【遠藤臨時委員】 すいません、遠藤ですが。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【遠藤臨時委員】 遅参して申し訳ございません。宇宙輸送システムのところはもう過ぎてしまいましたでしょうか。今の発言は許される内容でございますでしょうか。

【渡邉課長補佐】 JAXAのほうは対応可能でしょうか。それでは、可能であれば、また別途ご質問ということで、メールなどでいただいたものについてご回答するようにしたいと思います。

【遠藤臨時委員】 分かりました。では後ほどよろしくお願いいたします。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。他にございますでしょうか。

【赤松臨時委員】 文科省委員赤松です。よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【赤松臨時委員】 このゲートウェイ構想も含めた国際宇宙探査シナリオについては非常に分かりやすくまとまっていて良いと思うのですが、まだ今の段階では構想であり、これから具体的な目標を設定し、実施計画を策定していくということになってくると思います。そのような中で、例えば先ほどから話によく出している、納税者へのアウトカムを含むKPI設定等というところについては、ある程度考えられていらっしゃるのでしょうか。加えて、このゲートウェイは、ISSがある中で、非常に巨額の資金を要すると思うのですが、その辺りの見通しはある程度お持ちなのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 ご指摘はA-145ページを見られておっしゃっていただいていると思いますが。

【赤松臨時委員】 特に全体的なという感じですので。

【JAXA(佐々木)】 われわれも膨大な予算ということは考えてございませんが、基本として、我々が目標とするシナリオにおいて、必要なものをしっかりと取り組んでいき、最終的な本格的な利用については民間が行うものであるという考え方を取っております。そちらに向けた必要な技術開発、及び基盤的なシステムの構築といったところを目標にして行っています。その中では、やはり限られたリソースの中で日本として優位な部分を選択して行っていこうという観点で進めており、ご指摘のように、必要な予算と効果というものを念頭に置きつつ、シナリオを検討させていただいています。その中では、やはりこのシナリオを提示しながら、国民の方々、あるいは政策当局に対してご説明をして、理解を得られたものが進められるという理解でおります。

【赤松臨時委員】 そうですね。民間の参画がうまくいけばいいと思うのですが、もしそれが商売ベースに乗らないと、なかなか思ったとおりの資金が入ってこないということもあるかと思いますので、ぜひその辺りは、計画策定とモニタリングをしながら進めていただければと考えております。

【JAXA(佐々木)】 はい。承知しました。

【赤松臨時委員】 加えてもう一つ、こちらのISSもそうですが、それぞれのプロジェクトに関して、毎年何らかの目標が設定されていて、その目標をどの程度実践できたのかというモニタリングの仕方はされているのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 はい。JAXAとしては年度計画を検討しており、その計画で毎年JAXAの中では評価をしております。

【赤松臨時委員】 なるほど。そうであれば、その中である程度インジケーターを設定されていて、それがきちんと達成されたかどうかということは確認されていると考えてよろしいのでしょうか。

【JAXA(佐々木)】 はい。JAXAとしては、そちらについてはしっかりと取り組むということで進めております。

【赤松臨時委員】 分かりました。

【JAXA(佐々木)】 国際宇宙探査につきましては、まだそのような具体的な計画が立っていないという中なので、なかなか個別の活動の年度計画として、探査機をどこまでしっかりと取り組む等というような記載はなかなか難しい状況であり、そちらは全体として毎年中長期計画から議論しなければならないということだと思います。

【赤松臨時委員】 なるほど。ISSについては、例えば今年の目標はこれであり、その計画をどの程度達成したかというような記述があまり多くなかったと思っているところもありますので、ぜひそのような措置がありましたら、計画との対比というかたちで示していただけるとありがたいなと思います。

【JAXA(佐々木)】 はい。そうですね。さまざまな活動の中で、なかなか具体的な定量は難しいところがありますが、A-129ページ等にあるように、ある程度大きな枠は説明をしていきたいと考えております。

【赤松臨時委員】 分かりました。ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。

【竝木臨時委員】 はい。内閣府委員の竝木ですがよろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【竝木臨時委員】 はい。同じく国際宇宙探査についてお聞きしたいです。A-141ページからA-143ページにて、有人宇宙探査における優位技術の実証ということで、丸1から丸4が挙げてあるのですが、これは有人の探査技術として評価するべきなのでしょうか。丸3は分かるのですが、丸1、丸2、丸4はむしろ国際宇宙探査のほうの枠組みで評価されるべきではないかと思います。

【JAXA(佐々木)】 この有人宇宙探査と書いているものは、もともと中長期計画で2年前に設定されたときに国際有人宇宙探査という識別になっていますので、その際の識別が残っているとご理解ください。実態として、現在宇宙基本計画が直されており、この有人という文言は取れています。我々の中長期計画も恐らくそちらに従うことになり、有人が取れると思いますので、こちらについては別に有人に限ったものではないという理解です。また、もともと現行の中長期計画におきましても、有人探査において重要な技術は、無人探査と連携で取り組むとさせていただいていますので、その点でも有人に限ったものではないと整理しております。

【竝木臨時委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。


【渡邉課長補佐】 それではよろしいでしょうか。それではここで休憩を15分ほど取りたいと思います。今15時6分ですので、切りのいいところでということで、15時20分からの再開とさせていただきます。

<休憩>

【渡邉課長補佐】 すみません。遠藤先生、今いらっしゃいますでしょうか。

【遠藤臨時委員】 はい、います。

【渡邉課長補佐】 先ほど、輸送のご質問をいただきましたが、今JAXAの輸送担当の理事の方に戻ってきていただきました。

【遠藤臨時委員】 申し訳ありません。お手数をお掛けします。大変恐縮でございます。特に評価に異論があるわけでは全くないのですが、その先の中長期の進捗状況が書かれてあるものですから、少し伺いたかった点が、既存の輸送システムに加えて、例えば文部科学省のほうでも議論されていたと思うのですが、例えばLNGの推進やエアブリージング推進技術等の将来の革新的な輸送システム技術については、何か具体的に盛り込んでいる目標や体制等というものは既にあると考えてよろしいのでしょうか。

【JAXA(布野)】 私が担当しておりますのは基幹ロケットのところですが、JAXA内に研究開発部門という、先生がおっしゃいましたLNGやエアブリージング、再使用ロケット等の将来につながるような技術に関して研究をしているところがございまして、その説明は別のセクションで、ローマ数字3.4.2の新たな価値を実現する産業基盤という別のセクションで、張替理事から説明があると思います。

【遠藤臨時委員】 そうですか。かしこまりました。特に改めて記載がなかったので、そちらのほうにあるということですね。

【JAXA(布野)】はい。ございますので、そちらのセクションでご質問いただければと思います。

【遠藤臨時委員】 はい、かしこまりました。ご丁寧にありがとうございます。

【JAXA(布野)】 よろしいでしょうか。

【遠藤臨時委員】 はい、かしこまりました。

【JAXA(布野)】 失礼します。

【渡邉課長補佐】 布野理事、どうもありがとうございました。
 それではヒアリングを再開いたします。続いてローマ数字3.3.11 人工衛星等の開発・運用を支える基盤技術について、JAXAからのご説明をお願いいたします。

【JAXA(張替)】 はい。JAXA理事の張替でございます。研究開発部門、航空技術部門、そして環境試験技術ユニットを所掌しております。初めにローマ数字3.3.11 人工衛星等の開発・運用を支える基盤技術、ページにしてA-150ページからご説明申し上げます。2019年度の自己評価をSとしております。この評価はこの中長期計画において大きい2つの進展があったということから付けております。
 1つ目、(1)追跡運用技術等に関するところでございますが、こちらでは追跡管制をやっており、真ん中の3行目にもありますように、ネットワーク機能におけるサービスの高性能化及び高付加価値化により、宇宙探査等の将来ミッションを実現可能とするシステムの研究開発を行う、というところで一つ大きな技術的な進展がございました。また、(2)環境試験技術について、こちらはつくばの環境試験設備によって環境試験を行っておりますが、従来から大きな課題でございました老朽化対策、及び、JAXA人員が減っていく中で、確実・効率的な環境試験設備の維持・運用を行うとともに、設備の利用拡大を他産業にも広げていくことに関し、抜本的な解決策を実装したということで、自己評価Sにさせていただいております。それでは補足資料を使いまして詳細をご説明いたします。
 A-156ページをご覧ください。こちらでは追跡運用技術で、DTNの研究開発をご説明しております。DTNと申します技術は、ディレイ・ディスラプション・トレラント・ネットワークの略で、宇宙探査等の長距離通信で課題となる通信の遅延時間及び通信切断を克服できる宇宙空間でのインターネットワーキング技術でございまして、NASA等も含めて将来の国際、月の探査プログラムの適用を目指しており、あるいは地球近傍での大気減衰においても強い通信、また非宇宙分野においても災害時のICTへのネットワークへの応用が検討されるなど、期待されているものです。この技術に関し、大きく2つの成果がございました。このDTNの国際標準化への貢献というところでございます。こちらでは、宇宙データ諮問委員会CCSDSの作業グループの副議長にJAXAはなっており、その中でのDTNのグループにおいて、日本の人材が正副議長に選出されまして、この枠組みの中で国際標準化活動を非常に積極的に行っているということです。その標準化活動の中で、相互に運用できるような実現可能性の検証、規格への適合性を検証するプロトタイプ製作を行っており、技術実証を昨年度実施しました。その成果が次のページのA-157ページに書いてございます。こちらの技術実証は、実際の宇宙のインターネット通信にあるような、およそ500msecの通信の遅延や通常よりも100万倍劣悪な15%のパケットロスというようなものを想定した輻輳環境での通信を再現する、左下にあるようなプロトタイプの実験システムを作りました。こちらに我々の提案するDTNの標準規格と、インターネットプロトコルであるTCP/IPと、両方を通して、この装置で20MBのデータ通信を行う実験をやってみたということです。その結果が、その下の右のほうに書いてありますように、横軸が分単位になっておりますが、TCP/IP通信では約60分間、1時間以上かかるところ、我々のDTN通信では、横軸が秒単位になっておりますが、数十秒間でデータ通信を完了するということで、通信レートが200倍保てるということとなり、この技術が将来の宇宙探査等で非常に有効な技術であるということが国際標準の場で明らかになったということです。こちらは、民間企業さんも非常に興味を抱いておられまして、今後2021年度までに民間企業、地上でもこのような技術が使えるような実証実験をしようとしております。
 2つ目は環境試験技術でございまして、A-158ページにございます。設備運営効率化ということで、PPP的手法による民間事業者主体の新しい事業形態での設備の運用を2020年度より開始できるよう実装したということです。PPPと申しますものは、パブリック・プライベート・パートナーシップということで、内容としては、つくばにございます18の設備、10建屋のエリアにある大きな試験設備全てを、建屋と試験設備を合わせてアセットとして民間事業者へ運営権を設定するものです。そちら事業スキームは右下の図にあるようになっておりまして、JAXAは事業契約を民間事業者と結び、運営権を移管するとともに、性能要求を出します。民間事業者では、試験設備の管理、性能要求に基づいて行う保全修理、及び試験設備の運転を行うということです。この特徴的な事業のスキームは、利用拡大業務を民間事業者がやってよいということで、民間事業者が積極的な営業活動をすることによって、外部ユーザーを獲得して設備利用料を得ており、民間事業者のメリットになるだけでなく、その収益の一部はJAXAにも入れていただくということをしております。この取組がうまくいった背景には、A-159ページにありますように、4つの工夫がございました。事業成功のための環境づくりということで、ニーズ調査を綿密に行い、業界展示会等を行って潜在需要を確認したということ、あるいは2年間をかけて事業の予備検証を行い、先んじて一部設備をPPP的な手法で民間に委託し、利活用事業を行ったこと等です。その結果、従来JAXAだけでは青色の20件程度の外部供与であったものに対し、民間の積極的な営業によって、そのオレンジの部分が増えているということです。この取組により、もちろん収益が民間にも入り、利用拡大の一部の収益はJAXAにも還元され、従来できなかったような中規模の修理などの資金源として使えるというように、官民相互のメリットになっているということです。国立研究開発法人でこのように試験設備に対し大規模にPPP的手法を入れたのは初めての事例でございまして、そのためにJAXA内でも非常に大きな規制緩和を行いました。その結果、この成果が成し遂げられたということでございます。これら2つの成果をもってS評価としております。ご説明は以上になります。

【渡邉課長補佐】 ありがとうございました。ご質問等ございますでしょうか。

【梅比良部会長】 すみません。梅比良ですがよろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【梅比良部会長】 最初のDTN通信の話について、私は通信が專門なので、専門用語になってしまい恐縮ですが、こちらは恐らく、遅延があったときにどうするかという話自体は、随分前から検討はされていて、特に衛星通信の場合にその課題を解決するために、例えばウインドウサイズを広げるというようなことがやられ、この標準になったということで、標準の規格を作られたということは非常に評価されるべきだとは思うものの、技術的な新しさがどこにあるのかがよく分かりませんでした。何かこの技術について特別なことをやられているということがあるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 はい。先生がおっしゃるとおり、DTNはもうISOの規格でも決まっておりますので、技術的には既に知られているものになりますが、宇宙データにおける標準規格とするためのプラットフォームを作って、実際にエビデンスをその委員会の中で出したということで、正副議長としての役割を一生懸命果たしたという点でございます。

【梅比良部会長】 はい、分かりました。どうもありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは青木先生お願いします。

【青木分科会長】 はい、ありがとうございます。素晴らしい成果が上がったことだと思います。Sを付けていらっしゃいますのでお伺いしたいのですが、A-156ページのところです。技術の国際標準規格への提案・反映を行った、また国際標準策定活動の推進を主導した、とあるのですが、この標準規格というものは国際標準規格ということで、認められてISOの分科会での規格にもなったということなのでしょうか。また、標準になるとどういうことになるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 はい。ISOのほうは、もう既に決まっておりまして、その規格を実際にどのようにインプリメンテーションしようかということについて、宇宙データの諮問委員会の中で標準を作ったということです。この標準策定によって何が起こるかというについては、例えばゲートウェイや月面の探査等においては、米国もやはりこのようなDTNという技術に興味を持っておりますので、JAXAが提案しているもので一緒に作りませんかというようなことが持ちかけられるというようなことが波及効果として得られます。

【青木分科会長】 分かりました。そうであれば、今後の深宇宙探査などにとって、標準となる有望な技術ということでよろしいでしょうか。

【JAXA(張替)】 はい。

【青木分科会長】 分かりました。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次に行きたいと思います。続いてローマ数字3.4.2 新たな価値を実現する宇宙産業基盤・科学技術基盤の維持・強化について、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(張替)】 はい。引き続き張替のほうからご説明をさせていただきます。ページ数はB-25ページになります。こちらも自己評価をSとさせていただいております。この項目では、将来を見通せる基盤技術の強化に大きな成果が4つ、特筆すべきものとして上がったということでS評価にさせていただいております。
 一つは(1)宇宙開発における新たな価値を先導する研究の丸1安全保障の確保および安全・安心な社会の実現というところで、スペースデブリ対策の事業化を目指す民間事業者との連携を行って、大型デブリの除去に向けた一歩を踏み出したということ、丸2宇宙利用の拡大のところで、宇宙産業だけでなく、地上でも産業規模が大きい低コストかつ大容量な光デジタル通信技術の分野で大きな進展があったということ、丸3宇宙科学・探査分野における最高水準の成果創出および国際プレゼンスの向上ということで、探査イノベーションハブで行っているオープンイノベーションの場を活用し、異分野を含めた最先端技術について広く取り組んで大きな成果が出たということ、最後の4つ目が(2)宇宙産業およびプロジェクトを支える科学技術基盤の強化で、特に基幹的部品や新規要素技術の軌道上実証について、革新的衛星技術実証1号機を昨年の1月に打ち上げましたが、その1年間の運用の結果、いいアウトカムが出たということ、その4点によってSとさせていただいています。それでは一つずつご説明を申し上げます。
 まずデブリに関してはB-31ページにございます。世界初の低コストな大型デブリ除去サービスの技術実証ということで、民間事業者が自らの事業戦略に基づいて主体的に宇宙機開発、技術実証を行うためのJAXAによる総合的マネジメント及び技術支援の取組を、パートナーシップ型の契約として実現させたということが大きな成果であると考えています。このパートナーシップ型の契約と申しますのは、右上の図にあるようなフェーズ1の実証をするわけですが、点線で書いてありますように、民間事業者の自立、国際競争力の確保を促すということで、JAXAは衛星そのものではなく、サービスと研究開発成果を調達するという形とし、マイルストーンペイメント方式で支払うことで、資金力の弱いベンチャーでも参加できるようにした上、さらに民間事業者も資金を出し合ってこの実証を行うということで、株式会社アストロスケールさんと官民パートナーシップの契約を結び、その効果によってJAXAがこの事業に費やすお金よりも大きな資金をアストロスケールさんにも出していただいており、このフェーズ1の実証を行うということの枠組みができてスタートしたということです。
 加えて、技術的にも、カーボンナノチューブを使ったデザーの軌道降下の力も従来に対して40倍性能が上がったということで、J-SPARCの枠組みを利用してALEさんに実証で使っていただけるというような成果も出ております。
 2番目が通信の話でございまして、B-33ページにありますように、世界初の低軌道MIMO通信技術の実証実験であります。MIMOはご存じのように、空間多重伝送によって通信の容量を飛躍的に増すという技術で、アンテナ数に応じて通信容量を増加させることができます。その必要な技術と申しますのが下の図にありますように、1つは幾何学的に電波、情報を分けますので、重要になってくる、JAXAの衛星通信路モデル化技術、さらに衛星側に3つのアンテナを切り替えて下に送り、その衛星情報を基に複数のアンテナを切り替える、JAXAとNTTさんの共同研究の特許になっている技術、最後に、地上局側に必要な、携帯電話で既に技術をお持ちのNTTさんの復調技術、というこれら3点を組み合わせて実験を行うということで、既に地上での技術実証まで終了し、世界初の低軌道MIMO通信技術の実証として、2年後に打ち上げる革新3号機の実証テーマに選択されており、製造を開始しているところです。実証実験と書いておりますので、まだ衛星に上がってないのではないかということを第1回の報告のときでは言われたのですが、こちらについて、NTTの独自の実験として、アップリンク側でIoT実験もNTTさんは実施されることになっており、このことはわが国最大の通信プロバイダーであるNTTさんが宇宙に再参入されていることの一つのきっかけになっており、かつ、この7月1日にはNTTさんの武蔵野通研でも宇宙環境エネルギー研究所といったものも立ち上げられるということになっており、とう実証実験はわが国の通信に新たにエコシステムを作るという観点で、非常に大きな価値を持っているということで成果として挙げさせていただきました。
 さらに、3番目になりますが、探査イノベーションハブでやっている民間と宇宙探査の分野でDual Utilizationという新しいコンセプトを掲げ協業を行っているものです。こちらについては、昨年で最後になりますが、4年目以降、民間の事業者の自己投資額のほうが、JAXAが投資するよりも大きなお金を出してくださっているというような状況となっており、非常にうまく歯車が回りだしています。昨年度が最終ということで、JSTさんの評価を受け、S評価という最高評価をいただいております。その理由については、5年間の成果の例として、異分野連携、人材糾合ということで、154機関が共同研究に参加し、さらにその9割が非宇宙分野であること、また、95の共同研究テーマが走っている中、地上で製品化に進んだものが14%、宇宙展開に向けたものが22%、宇宙実証済みのものが14%ということで、非常に進展をしているということで評価いただいたと思います。
 次のページに、宇宙展開がもう既に済んでいる事例として、SONYさんがやったSOLISSという世界初のインターネット光宇宙通信をご紹介します。こちらはISSのところでもご紹介がありました。さらにもう一つご紹介しておきたい事例は、可動部のない小型で軽量なFlash LIDARといわれるもので、浜松ホトニクスのセンサーとISASが作った読み出し回路と、研究開発部門が持っている光学画像処理技術を使ったものであり、月探査での自動ランデブードッキングのセンサーとしての候補になっているだけでなく、地上では自動運転の中核技術として活用が見込められているものも開発ができております。
 最後に、革新的実証機1号による、宇宙での実証の成果ということです。1から5番まで挙げておりますが、個別成果の照会は割愛いたします。アウトカムについて、どのようなものが出たかということだけ述べさせていただきます。革新的FPGAについては、NECさんのほうで事業を立ち上げて動かされているということです。軽量太陽電池パドルについては、既に深宇宙探査機DESTINY+に採用がされており、製造が始まっています。世界最高速のX帯の高速通信機器については、民間のスタートアップ企業に技術移転されて活用されようとしています。超小型・省電力GNSSは既に41台の販売が行われています。さらに、深層学習を応用した地球センサースタートラッカについては、株式会社天の技というベンチャーが設立されております。このように、打上げ後1年ではありますが、アウトカムがもう既に出始めているという状況です。
 参考資料というところで、B-51ページを見てください。JAXAの技術を使って民間からより多くのお金をいただき、JAXAの予算を呼び水に民間の力を活用するということで、技術として特許が非常に多いということ、外部資金を非常に大きく獲得していること、イノベーションハブにおいて共同研究相手先の自己投資も大きなお金になっているということで、このように民間の力を活用していくというところでも大きな成果が出ているということでS評価をしております。以上でございます。

【渡邉課長補佐】 先ほど遠藤委員から輸送の技術についてご質問をいただいていましたので、恐らくB-42、43ページ辺りかと思うのですが、こちらについても簡単にご説明をいただければと思います。

【JAXA(張替)】 こちらは着実にやっていますということで、B-42ページはLNG推進系です。こちらについては、既にエンジンシステムとして、再生冷却型のLNGエンジンの世界最高の比推力が出るところまで2019年度に確認が終わっております。また、B-43ページは再使用のロケットということで、エンジンの燃焼試験まで終わっており、今年度飛行試験をする予定になっております。以上です。

【渡邉課長補佐】 ありがとうございました。ただ今の説明についてご質問ございますでしょうか。

【遠藤臨時委員】 遠藤です。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【遠藤臨時委員】 すみません。今ご説明いただきましてありがとうございます。しっかりと具体的にプロジェクトを進めていただいているということで、大変安堵した次第でございます。もう一点追加で伺いたいのはレーザーの件です。

【JAXA(張替)】 はい、MIMOですね、B-33ページでございます。

【遠藤臨時委員】 こちらは安全保障上も極めて重要な基礎技術だと思っておりますので、このようなかたちでプロジェクトが推進していること、またNTTとの連携が進んでいるということも非常に素晴らしい成果だと思っております。レーザーに関しては国立天文台も非常に高い技術を持っていらっしゃると伺っているのですが、こちらは何らかの連携というのはあるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 国立天文台さんとはやってはいないですが、特にNTTさんは、宇宙太陽光発電という形でレーザー等を使って電力を送るということで、宇宙を使って社会課題を解決するということで先ほど私が申し上げました宇宙エネルギー環境研究所というところを立ち上げられましたので、我々との共同研究がこのような形で実を結んでそのような研究所を立ち上げられたと思っております。

【遠藤臨時委員】 かしこまりました。全体としてS評価は妥当だと思いますので、その点質問と意見を申し上げさせていただきました。ありがとうございます。

【JAXA(張替)】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。白坂先生ですか。平野先生。

【平野臨時委員】 平野です。

【渡邉課長補佐】 すいません。先に平野先生、次に白坂先生お願いします。

【平野臨時委員】 文科省委員の平野です。民間企業とのパートナリングが進んで、いろいろと成果が出ているということは素晴らしいと思いますが、このような民間企業のパートナーの選定について、国費も投入して幾つも進められている中において、どのようなプロセス、またどのような基準でパートナーを民間企業の中から選んで進めているのかについてコメントいただけますか。

【JAXA(張替)】 はい。一つの基本として、まず相手方に事業化の意欲があるということ、また、相手方も基本的にお金を負担するということが共同研究の大きな指標になっております。例えば、NTTさんの場合は、JAXAとNTTでMIMOの部分をやり、さらにアップリンク側のIoTの部分はNTTさんがやるということで、我々より大きなお金を出していただいており、さらに自分たちでビジネス展開も考えているということで、そのように事業化にやる気のある事業者を選ぶよう、まずその2つの点に注目しております。加えて、知財に関しては、国費が入っておりますので、私どもも他の企業に移転することができ、また、NTTさんも他の企業に移転することができるという相補的なかたちにするようにしております。

【平野臨時委員】 企業側のほうのやる気、コミットメントという要素と、一方実際に取り組まれるテーマの有用性あるいは事業性、商業的可能性、そのような事業化サイドのほうの評価、判定というのはされていないですか。

【JAXA(張替)】 それももちろんしております。IoTの部分でやっておりますし、例えば最初に申し上げましたアストロスケールさんとの部分では、相手方の事業性についての評価もRFP、公募の中で判定するという基準として入っておりました。

【平野臨時委員】 最後ですが、そのような取組の中で今実際にこのパートナー候補というのは相当数増えてきていて、そのような中からかなり厳選されているという状況なのか、どの程度の活性度なのかを教えていただけますか。

【JAXA(張替)】 そうですね。まずデブリに関しては、2社がフェーズ1では応募をしてくださいました。一方、フェーズ2も含めると、もっと入りたいという企業さんもいらっしゃる状況で、説明会に来ていただいたのはメーカーだけでも10社ぐらいございましたので、こちらについてはどんどん増えていっていると考えていいと思っております。

【平野臨時委員】 この辺、ぜひ透明性高く進めていただければと思います。

【JAXA(張替)】 はい。

【渡邉課長補佐】 では白坂先生お願いします。

【白坂臨時委員】 ご説明ありがとうございます。慶應大学の白坂です。ベンチャー含む民間との連携の進み方がすごくドラスティックで、素晴らしい成果が出ていると感じております。1点目のアストロスケールの件についてお聞きしたいのですが、この研究レベルに近いところ、サービス、研究成果を調達するというアプローチを取れたということは、画期的だと個人的には思っています。もちろん大型の難しいものをJAXAが独自に研究開発することはもちろんあるのですが、一方でこのように民間でできそうなところで、さらに自分たちでその先をやろうと手を挙げてくる企業に対して、このような契約体系が取れたということが、過去にないことで、すごいと思いました。一つ教えていただきたいことは、サービス調達はすごく分かりやすいのですが、研究開発成果の調達というものがどのようなものを指しているのか、具体的に何を調達していることに当たるのかについて教えていただきたいです。

【JAXA(張替)】 はい。具体的に、最終的に納入いただくものは、B-31ページにありますように、大型のデブリの周りを回転し、そのデブリの写真を撮ってくる、まさにそのデータを我々がサービスとして納入していただくというものでございます。しかし、それでは、最後にお金を払うということになりますので、マイルストーン方式で途中途中お金を支払うときに、どのようにお金の対価として成果を払っていただくかということを非常に工夫しまして、その時点までに実施した宇宙機の設計や設計基準等含めた成果報告書を明確に規定し、3つ程度のフェーズに分け、それぞれのフェーズごとにこの成果報告書を出してください、そして最後にデータを出してください、というような分け方をして、ベンチャーさんも入ってこられるように工夫しました。

【白坂臨時委員】 なるほど。最後のデータの納入だけであれば、サービス調達に近くなると思うのですが、その途中段階のマイルストーン的なところの成果も出していただくということで、サービスと研究開発成果を調達という書き方をしている、というイメージでしょうか。

【JAXA(張替)】 そうです。

【白坂臨時委員】 その研究開発成果があるから特許についても、両方が保有するというかたちになっているという意味でしょうか。

【JAXA(張替)】 はい、おっしゃるとおりです。

【白坂臨時委員】 なるほど。こういう方式が広がっていくと、アプローチがかなり変わると思っており、素晴らしくいい取組だと思いました。ありがとうございます。

【JAXA(張替)】 はい、ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 それでは片岡委員お願いします。

【片岡臨時委員】 内閣府の片岡です。評価については特に関係ないと思うのですが、参考情報でロケットの1段の再使用化というものが研究開発であり、そちらについてCNES等との協力も進めるということなのですが、既にスペースXがかなり1段目の再使用化についてかなり実績を上げている状況の中、スペースXの再使用化可能なロケットと何か抜き出て違うところというのがあるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 はい、そちらはよくされる質問でございます。確かにまだ我々は再使用ロケットについて過去に一つもやったことがないことをやることになるので、この点が抜き出ていますということを、確信を持って言えるものはないというところが真実でございます。しかし、我々としては、2つ程は自分たちの努力でやろうとしているものがございます。その1つは、気象情報を活用した誘導制御といったものでございます。気象情報を綿密に活用することで、誘導制御を確実にピンポイントで行わせて着陸してこようというところを、我々は独自の技術だとして頑張ってやっております。もう1つは、数値計算を大量に使うことによって、試験の回数、試作の回数を減らそうということをやっております。最初から数値計算を可能な限り回して、スロッシングの対応等を全部想定してやっている、というこの2点で、こちらがスペースXに勝っているかどうかは分からないですが、我々の特徴としてやっておるところでございます。

【片岡臨時委員】 ありがとうございます。特徴を捉えた研究開発ですね。こちらはやる必要があると思っていますが、規模的に小さなロケットでも可能なかたちにはなるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 はい。こちらのエンジンは使い道がさまざまございまして、月着陸機等々にも使えるのではないかということで、国際宇宙探査センターにも見てもらっています。

【片岡臨時委員】 そうですか。分かりました。米国のスペースXに勝るところの特徴的な研究をぜひ進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【JAXA(張替)】 はい、ありがとうございます。

【梅比良部会長】 すいません。梅比良ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【梅比良部会長】 まず全体の話として、JAXAだけがやるのではなく、民間企業さんとさまざま組んで、民間の力を使ってこのように進めているということは、今までにない感じで、非常によろしいかと思いました。一方で、失礼な言い方であれば少し恐縮ですが、例えば先ほどNTTと組んでやっている衛星のMIMOの話がありました。こちらは私がNTTにいたときに始めていた話なので、少し知っており恐縮ですが、技術的なコントリビューションはNTTの部分のほうがかなり大きいような気がしています。項目ごとに、JAXAの貢献の部分と、民間の企業さんの貢献の部分の大きさが、かなり違うのではないかと思いました。そのため、このような評価のときには、トータルとしては確かに素晴らしい話になると思うのですが、もう少しJAXAがこのくらいのコントリビューションであるというところを項目ごとに明確にしていただければと思います。ありがとうございます。

【JAXA(張替)】 はい。先生ご存じのように、MIMOという技術は携帯電話等で既にNTTさんが非常に高い技術力をお持ちですので、地上局はほとんどNTTさんのほうに力を頼っています。しかし、衛星の搭載機器に関しては、JAXAにも一日の長がございますので、どのような技術があるかはB-33ページに書いてございますが、このような部分はNTTさんに高い評価をしていただいているところでございます。

【梅比良部会長】 はい。おそらく、他のところについてもかなり濃淡があると思いましたので、ぜひその点をもう少しはっきりと書いていただければと思います。よろしくお願いします。

【渡邉課長補佐】 はい。他にございますでしょうか。

【赤松臨時委員】 文科省委員赤松です。よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい。

【赤松臨時委員】 今のご意見にも関係しますが、非常にたくさんの成果を出されているということは素晴らしいことだと思います。ただ、評価する側からすると、これらの成果のうちのどれが、S評価に該当する非常に重要な成果か、これらの取組全部が該当するということなのか、あるいは、今ご意見にあったように、この部分はある程度民間側がやっているもので、この部分がJAXAとして非常に大きく評価されているという濃淡があるとすれば、もう少しその辺りの整理をした上で提示いただけると、評価する側がそれを正しく評価できるようになるかと思いますが、その辺りはいかがでしょうか。

【JAXA(張替)】 赤松先生のおっしゃるとおりではあるのですが、共同でやるときには、もちろんきちんとインターフェース条件を決めてはいるものの、お互いの技術を突き合わせることによって1つのシステムができているのであって、あなたは3で私が7だから私が7分取りますというわけではありません。そのような意味で、技術のインテグレーション融合といったものについて、そのように分割して評価しましょうというあり方は少しなじまないのではないかと私は考えております。

【赤松臨時委員】 なるほど。そちらは貢献の度合いという部分を見られていると思いますが、例えば今挙げられているものの中で、この点が本当にS評価として重要なポイントであるというものと、こちらはそうでもないというというように、もし濃淡があるのだとすれば、その点はもう少し整理するということは可能なのでしょうか。それとも、こちらに書いてあるもの全部がやはり必要だということになるのでしょうか。

【JAXA(張替)】 私が申し上げた4つがSの中の一番大きなものでございます。

【赤松臨時委員】 なるほど。その辺りの整理をしていただけると、評価する側がもう少し見やすいかなと思いましたので、できましたらそのようにお願いできればと思います。

【渡邉課長補佐】 はい。他にございますでしょうか。よろしければ次に行きたいと思います。それでは続きましてローマ数字3.4.1 民間事業者との協業等の宇宙利用拡大および産業振興に資する取り組みについてJAXAからご説明をお願いします。

【JAXA(石井)】 はい。聞こえておりますでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、聞こえております。

【JAXA(石井)】 4月から理事を拝命いたしましたJAXAの石井と申します。よろしくお願いいたします。私のほうは、経営推進部、調査国際部、広報部、新事業促進部、それからセキュリティ情報化推進部、宇宙教育センター、この辺りを所掌しております。本日何項目かご説明をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 まずローマ数字3.4.1 民間事業者との協業等の宇宙利用拡大および産業振興に資する取り組みということで、ページはB-2から始まります。説明としましては、B-4をお開きください。2019年度の自己評価をAとさせていただいております。
 このAの幾つかの成果がございますが、大きくは2つあったと考えております。まず、J-SPARCという民間との協業の取組を2018年度からスタートいたしました。その取組について、まずは2018年度は始めたということで昨年度評価をいただいたわけですが、その活動がさらに進展していく、また、新しいものが始まるということが大事であるということをアドバイスいただきましたので、それを受け、そのようなところに注力いたしましたところ、ステップの進んだものが複数件出てきたというところをご説明できると思います。また、B-4の上から2パラグラフ目、HⅡ-Aロケットの相乗り事業という取組がございますが、こちらのノウハウをまとめ、民間への事業移管が実現したということも大きな成果だと思っております。この2点を中心に、他のところもご説明いたします。
 資料としては、まずB-6ページをお開きください。B-6ページは、少しおさらい的な感じでございますが、全体的に宇宙産業の振興というところで、どのような取組が行われているかということを絵にしたものでございます。内閣府さんの方で宇宙産業ビジョン2030を作成され、2030年には宇宙の市場を倍増させようということで、さまざまな施策が打たれております。経産省さんにおいても、さまざまなことを施策として展開されております。JAXAとしては、JAXAによるベンチャー向けの技術支援というところで、書かれてありますような施策にさまざまなかたちで貢献をし、全体的に宇宙産業が伸びていくところを後押しするよう、頑張っておるところでございます。
 B-7ページをご覧ください。J-SPARCにて始めた活動について、新しいステップに進んでいるものが生まれたところをご紹介いたします。株式会社ワンテーブルとの宇宙食と備蓄食の類似性に着目した新たな食ビジネスの共創ということを始めておりましたが、2019年には、製造拠点が造られ、夏からは、商品の製造、試験販売に進むということができております。今年度も新しい商品をさらに追加で販売開始すると聞いており、新しい事業として既にスタートしたというフェーズに進みました。もう1つは、グリー株式会社とJAXA月科学データを活用した宇宙VR教育企画事業の共創という取組で、こちらについてもパッケージ化した「ありえなLAB」というものを商品として市場に投入するというところまで進むことができました。
 また、もう1つステップが進んだものとしましては、宇宙食料マーケット創出のSpace Food Xでございます。参加のメンバーも増えてまいりまして、一般社団法人にするということで準備を進め、今年度の当初に、一般法人化を行うことができたという状況に進んでおります。
 B-8ページにまいりまして、もう1つ新しいステップに進んだものとして、株式会社ALEさんとのデブリの除去の技術です。この技術自体は、先ほど説明があった研究開発部門での成果を活用しておりますが、この技術を活用して、ALEさんと共に事業として進めていくということを検討してまいりましたところ、経産省さんのSERVIS事業に採択され、来年度に打ち上げるということで、共創のステップを進めることができております。
 続いて、このような活動の場として、X-NIHONBASHIという形で、宇宙ビジネス拠点として日本橋のほうに場を設けておりました。こちらの取組により、三井不動産さんの日本橋再生計画次期構想の中で、新たに取り組む分野として宇宙が掲げられたということで、また新しい活動が生まれてきたということをご紹介いたします。
 B-9ページは、J-SPARCのその他の活動としてご紹介するものと、加えて新しいものとして始まった取組として、QPS研究所との共創、バスキュール、スカパーJSATさんと宇宙メディア事業ということで、既に機材がHTBで運ばれ、2020年度8月に放送が開始するというところまできております。
 B-10ページは、HⅡ-Aロケットの相乗り事業の民間移管でございます。こちらの事業については、今までで合計32機の小型衛星の放出ということをやっており、多くの大学や企業で活用をいただいたというものになりますが、このようなわれわれの経験やノウハウをまとめ、民間に移管できるという状況にまでたどり着き、実際に公募をいたしましたところ、Space BD社が選ばれ、基本協定を締結しております。
 B-11ページは、JAXA発ベンチャーについてでございます。こちらについては、昨年度は、新しいベンチャーが2件スタートいたしました。また、トピックスとして、2社が計画どおり黒字化に進んだこと、また、DATAFLUCTにつきましては、資金の調達もできたということでご報告をいたします。
 本項目の説明としては以上でございます。

【渡邉課長補佐】 はい。それではただ今の説明についてご質問ございますでしょうか。髙橋先生お願いします。

【髙橋部会長】 はい、髙橋です。説明ありがとうございました。質問というよりも、エールになります。先ほど説明のありましたHⅡ-Aロケットの相乗り事業の民間移管について、私は大変高く評価しております。Space BD社、こちらは宇宙商社といわれているように商社機能もある会社だと思います。宇宙関連事業を創出して成功させていくには、商社機能が非常に重要だと私は思います。単なる橋渡しやコンサルタントではなくて、当事者として一緒に汗を流して責任を負う人の存在が成功の鍵ではないか、と思っています。そのような意味では、今回のSpace BD社という宇宙商社との取組は、今後の民間事業を主体とした宇宙関連事業の創出に向けての一つの雛形になるのではないか、という期待をしておりますので、これからも進めていただきたいと思います。以上です。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 はい。他にございますでしょうか。

【梅比良部会長】 梅比良ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【梅比良部会長】 すみません。先ほど質問させていただいたA-121ページのこのグラフとここでの話の関係というのは、どのように考えればよろしいでしょうか。ISSのほうは、事業化案件と有償利用と書いてあり、こちらでは民間移管と書いてあるので。こちらの方はおそらく事業化案件の話だろうと思っておりますが。

【JAXA(石井)】 いえ。少し誤解が生じているかと思います。A-12にあるのは、ISSでの超小型衛星の放出事業として選ばれた事業者がSpace BDと三井物産株式会社でございます。先ほど私のほうでご紹介しましたものは、HⅡ-Aロケットの相乗りの衛星の募集事業でございます。

【梅比良部会長】 ISSの超小型放出に加えて先ほど言われたHⅡ-Aのロケット相乗り事業の話があるというお話ですね。

【JAXA(石井)】 はい。特にHⅡ-Aのほうは、キューブサットももちろんありますが、50kg級の本格的な小型衛星も搭載することもございますし、ロケット打上げの安全審査のようなものも、宇宙商社としてのサービスの中に入ってございます。

【梅比良部会長】 分かりました。どうもありがとうございます。ここからは少しお願いなのですが、こういうビジネスにするということで、民間企業さんが入ってきて、宇宙の活動やビジネスが大きくなっていくと思うのですが、では、どの程度の経済規模になったのかということを、なかなか知ることが難しいかもしれませんが、モニターしていただけると、評価においても、JAXAの活動がこのような宇宙の経済活動の中で、どのように花開いているか、ということがモニターできるかと思いますので、できる範囲で結構でございますので、調べてみていただけるとありがたいと思います。

【JAXA(石井)】 はい。もちろんそのような情報も集めてまいりたいと思います。最初にB-6ページでお示ししましたとおり、目標としては2030年に市場規模倍増を目指しております。倍増達成に向けてわれわれがどのように貢献したかというところが一番の重要なポイントと思っておりますので、そのような観点で取り組んでまいりたいと思います。

【梅比良部会長】 はい。よろしくお願いいたします。

【渡邉課長補佐】 それでは平野委員、続いて小塚委員お願いいたします。

【平野臨時委員】 はい、平野です。このように、民間との協力が増えてくることは、先ほど申し上げましたように、大変素晴らしいと思います。その際に、JAXAがこのような技術的な支援をすると同時に、例えば出資をする等の仕組みや枠組みというのはあるのかというご質問です。このような企業が成功した暁には、上場やM&Aと資料には書かれておりますが、その成功の果実を共有し、我々も資金化していくというような意味で、出資機能、投資機能みたいなものが、政府のリスクマネーとは別にJAXAの中にあるのかということと、それに関連して、こちらは質問というよりもお願いになりますが、NTTや三井物産等の大企業はもちろんですが、多くのスタートアップの企業の方々を支援し、そのような企業に技術的な支援と、資金的な支援ができていくというようなインキュベーション的な、あるいはプラットフォーム的な役割をJAXAの今後1つ大きな柱にしていったらいいのではないか、と思いました。以上、質問とコメントです。

【JAXA(石井)】 はい、ありがとうございます。先般、科学技術イノベーション活性化法の改正が行われ、まさに今先生のご指摘のありましたJAXAに対する出資機能の付与というのが法律で決まっており、来年4月から施行ということになっております。この出資機能の付与については、われわれとしても文科省さんと共に、ぜひともJAXAに付けていただくように働き掛けをさせていただいてまいりました。ということで、いよいよわれわれとしてもそのような新しいツールを持つことができるという段階でございます。この機能を使って、この活動を活発にしていくことは、宇宙基本計画にも今回の改訂で少し書かれております。従って、中長期目標・中長期計画のほうにもそのような業務の記載を反映する予定でございます。コメントいただきましたベンチャーに対する資金的な貢献という観点では、他のベンチャーキャピタルと一緒になって出資を行うという機能が、付与される出資機能の中の1つにございますので、ぜひともその取組にもチャレンジしていきたいと考えております。以上です。

【平野臨時委員】 はい。よろしくお願いします。ぜひ、透明性を確保されたうえで、しっかりと事業を評価されて、機動的に出資もされていかれるようによろしくお願いします。

【JAXA(石井)】 はい、ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは小塚先生お願いします。

【小塚専門委員】 はい、小塚です。石井理事、ご説明ありがとうございました。先ほど来少し話題になっている相乗り事業の民間移管につきまして、B-10ページでご説明いただいたと思いますが、細かい説明がB-17ページにあるように拝見しました。評価の参考になると思うのでお聞きするのですが、このB-17ページの下のほうで、もともとJAXA内で5~6名の体制でやっておられたものを、2名で完遂できるというめどを立てて、民間移管へ進んだ、と記載しておられますが、この5~6名というのは何をされるチームで、何を変えたことによってこのリソース節減になったのかということと、また、民間移管したということは、その2名の分が民間移管されたということなのか、あるいは、その5~6名から2名に減った部分が民間移管であり、JAXAの方が2名でサポート的に業務をしておられるのか、その辺りを教えていただけますでしょうか。

【JAXA(石井)】 はい。まず、ロケットの相乗りのJAXAの業務としてはさまざまございますが、一番負担が大きいところは、安全審査の対応というところで、先ほども少し触れましたが、HⅡ-Aロケットに搭載するに当たり、メインの衛星を壊したり邪魔したり、ましてやロケットに迷惑を掛けるようなこと、あるいは、射場での人員に対する被害というようなことが起こらないように、安全審査を行っております。このような業務が従来からかなり負担だったところ、経験を積み重ね、資料をまとめる、あるいはやり方を工夫する、というようなことで業務をパッケージ化して外注できる形にまで持ち込みました。その成果により、JAXA内の人員がぐっと減ることになり、この2名分がやっていた業務を、そのまま民間事業者に移管することができたという内容でございます。

【小塚専門委員】 はい、ありがとうございました。そのようなプロセスが、おそらく今後他の事例でも応用可能なのではないかと思いましたので質問させていただきました。ありがとうございました。

【JAXA(石井)】 全くそのとおりだと思います。ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 はい。他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次に行きたいと思います。続きましてローマ数字3.6.1、国際協力・海外展開の推進および調査分析についてJAXAからご説明お願いします。

【JAXA(石井)】 引き続きまして石井のほうからご説明させていただきます。ページはD-2からスタートいたしますが、説明としてはD-3からさせていただきたいと思います。今回、国際協力・海外展開の推進、調査分析は、評価をAとさせていただきました。顕著な成果として、日米月探査協力の立上げについて、国際協力の観点でさまざまな支援、情報収集、展開等々を行い、その成果が出たと考えております。続いて、2つ目の大きな成果がAPRSAF-26ということで、昨年度は名古屋で開催となりましたが、具体的な成果を後ほどご紹介したいと思います。3つ目が次のページになりまして、調査分析の分野でも顕著な成果が出たと考えており、重点的に課題テーマを設定して調査を行い、その成果を政府関係にも展開したというものでございます。
 資料の具体的なところのご説明は、D-5ページをご覧ください。国際協力の下に月探査計画に参画することが決定したということで、2019年10月に宇宙開発戦略本部で決定をいただきました。決定に至るまで、調査国際部としては、ワシントン駐在員事務所を拠点に米国政府関係者とのパイプを使ってさまざまな情報を収集し、日本側に展開する、あるいは、逆に日本側の状況をまとめてNASA側へインプットし、米国側からの働き掛けや動きをしていただくというような結び付きを行ってまいりました。
 具体的には、日米首脳会談が昨年5月に行われました。また、7月の政府間宇宙対話、さらには9月にNASAのブライデンスタイン長官の来日というところを実現しております。NASAとの間では、もちろん定期的、さらにはトップレベルでの情報交換を常に継続していますところ、このような機会も使いまして、NASA長官の講演会や記者会見などを開催し、さまざまなイベントを打つことで、機運の醸成ということも行ってまいりました。NASA長官来日のとき、さらにはAPRSAF、IACというようなところで国際探査をテーマにしたイベントを打ってまいりました。このような取組が環境の醸成に貢献し、活動の中身については先ほど前半のほうでご説明がありました宇宙探査センターのほうで検討いただいておりましたが、そこからこのような政府の決定に結び付けるというところまで協力して進められたのではないかと考えております。
 D-6ページをご覧ください。APRSAF-26でございます。こちらは名古屋で開催いたしまして、469名という多数の方のご参加を得ております。初の試みとして宇宙関係のスタートアップや投資家プレーヤーを中心とした宇宙産業フォーラムというイベントも開催をしております。さらに、名古屋ビジョンについて、各宇宙機関長、宇宙分野のリーダーによるラウンドテーブル等の議論を行い、4つの目標を掲げたものになっております。詳細はD-3ページに書いてございますが、APRSAF-26で具体化した施策として、1つはSAFE Evolutionというものでございます。こちらはSAFEということで、JAXAは今までバイに各国と気候変動に関わる衛星データの交換ということを行っておりましたが、この交換の取組を多国間の枠組みにするとともに、地球観測分野では重要なプレーヤーであるインド宇宙機関ISROの参加を得て、マルチの枠組みをつくるということをスタートさせることができました。
 加えて、D-6ページに、2つ目の施策として、長期宇宙人材育成という観点で、JJ-NeSTという施策を、JICAさんと一緒に立ち上げることに成功いたしました。今後5年間で計20名を受け入れる予定でございまして、第1号がフィリピンから東大へということで予定されております。コロナの影響で実現が少し遅れ気味ではございますが、本格的にスタートをしたということをご報告いたします。
 さらに、3つ目の施策としては、宇宙法制のイニシアチブです。アジア・太平洋諸国の宇宙法制に関する興味を持つ方々に、われわれのグッドプラクティスや世界の状況等を共有することで、問題意識の向上、さらにはコミュニティーの形成というところに取り組み始めました。このような活動を継続することで、この地域の中でのプレゼンスの発揮、また同じような価値観を持つ国々を増やすことができるのではないかと考えております。
 D-7ページ、調査分析のところでございますが、1つは海外の最新動向をタイムリーに情報提供するという点について、調査分析情報ポータルを維持・強化しており、利用が右肩上がりになっている、ということをご報告いたします。もう1つは、重要なテーマを設定するということで、経営視点での調査分析を行うということを開始しております。2019年度はアジア・太平洋地域における環境変化を踏まえたJAXAとしての宇宙協力シナリオの作成ということをテーマとし、調査分析をいたしました。詳細は割愛いたしますが、その要点については、宇宙基本計画改訂の議論において、関係省庁やJICAさんとの対話の際に活用しており、一定の評価をいただいておるところでございます。
 本件につきましては、私からの報告は以上でございます。

【渡邉課長補佐】 はい。ただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。

【古城部会長代理】 古城ですが、よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【古城部会長代理】 はい。どうもご説明ありがとうございました。調査分析のところで少しお尋ねいたします。この点、非常に活発にやられていて、すごく成果が上がっているように見えます。昨年度、非常に人員が少ない中で、このような調査分析をどのように行っていくのか、ということをお尋ねしたと思いますが、人員は増やさずに、外部のネットワークを活用してこのような調査分析能力を高めたと、ということになるのでしょうか。以上です。

【JAXA(石井)】 はい。大変良い質問をいただいたと思います。昨年のそのような議論・課題も踏まえ、今回からのこの重要なテーマ設定とその検討については、キーになるメンバーは調査国際部ということで人員を増やしてはいないものの、全社的にこのようなことについて検討するので、興味のある方、積極的な参画をしていただける方を募集するというようなかたちで、社内横断的に検討チームを形成し、かつコンサルタント会社ももちろん使って取り組むということを新たに開始しました。その結果として、やはりその活動に参画したメンバーの調査能力が上がっているということも実感しておりますので、全体としても調査分析能力向上につながっております。

【古城部会長代理】 どうもありがとうございました。非常に工夫されていると思います。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは竝木委員お願いします。

【竝木臨時委員】 はい、ありがとうございます。長期人材育成プログラムについて伺いたいです。D-10ページのところに書いてありますが、率直に伺って、この枠組みは普通に東大に留学するということとは、どのような点で違うのですか。

【JAXA(石井)】 はい。すみません、JICAさんと共にプログラムとして立ち上げるということで、留学といえば留学ではなりますが、このような分野で長期的に働くという展望等を描いていただいて応募すると理解をしております。

【竝木臨時委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 はい。平野委員は手を挙げておられますが、ご質問ございますでしょうか。ございませんでしょうか。他にありますでしょうか。それでは次に行きたいと思います。ローマ数字3.6.2、国民の理解増進と次世代を担う人材育成の貢献についてJAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(石井)】 はい。引き続きまして石井からご説明いたします。D-17ページからスタートいたします。評価としてはSとさせていただいております。昨年度いただきました助言、指摘を踏まえ、真摯に活動した結果、おかげさまでいい成果が出たと思っておりますので、ご紹介させていただきたいと思います。
 D-21ページをご覧ください。われわれとしては、昨年度の評価の場でも、さまざまな定量的な評価をするのはすごくよいが、やはり質のところを考えなければならないのではない、あるいは、新たなターゲットとして迫らなければならない人たちがいるのではないか、関心、興味の薄い方々の理解をやはり増進しなければならないのではないか、というようなところを気付きとして得まして、その点を軸に広報活動を大幅に改善いたしました。
 まず、報道メディアに対しての質の向上ということで、皆さんに対して分かりやすく正確に伝えるため、記者説明会の定期的な開催や、新たにメディア向け勉強会を開始いたしました。D-26ページにはその様子などもご紹介しており、またD-21ページにもその様子を下に書いてございますが、このような取組をまず始めました。
 さらに、D-22ページにありますように、10年先を見据えて20代30代の男女を新たなターゲットに設定をしております。10年先のステークホルダーとして重要な割に、この20代、30代の男女があまりJAXAに興味が高くないというところに気付き、この層にアプローチするということにいたしました。内容的には公開WebサイトやYouTube JAXA Channelページ等の改善、また、機関誌「JAXA’s」については、皆様にはPDFの形で配布させて頂いておりますが、小冊子のかたちからタブロイド判の新聞のようなかたちで、非常にスタイリッシュな形式とし、若い方が持ち歩いたりする時に格好いいと思えるようなもの、あるいは写真等そのままページを切り取って貼っておけるようなもの、というようなイメージで改善を行っております。また、さまざまな分野の方の対談等、内容的にも工夫して、新規の開拓等を行っております。また、JAXAシンポジウムのテーマの先鋭化も行い、ライブ中継の再生回数が前年比2倍となっています。
 D-23ページにまいりまして、やはり興味関心の薄い方々に訴求するためには、さまざまな異分野、異業種との連携も必要ではないかということで、読み上げは割愛いたしますが、さまざまな方々とのコラボレーションに積極的に取り組んでまいりました。その他の取組としても、広報活動の測定手法の一つとして、新聞テレビ等の元科学担当記者や教育関係の方からのインタビューもしております。こちらはD-43、D-44ページを参照いただければと思います。
 このような質の向上をした結果だと思っておりますが、全ての活動についての量における評価として、例えばJAXAの認知度調査は過去最高であり、またD-41、D-42ページに掲載しております通り、全国主要4,000社を対象としたテレビ放送に関わる広告費換算調査で見ますと、首都圏では1位、全国では2位ということで、非常に高い評価をいただきました。こちらの換算については、実際にテレビ放送の時間や新聞の掲載件数をカウントしますと、2018年度よりは減っております。ロケットの打上げのイベントも、2019年度は1回だけですが、2018年度は3回ほどございました。そのような状況の違いもありながら、このように一昨年度を上回る成果が出たというところは、やはりメディアの皆さんの理解が高まって、例えば新聞であれば1面等の、非常に広告価値の高いところに取り上げていただけたということが、この広告費換算等で成果として表れたのではないかと考えています。
 D-24ページにまいりまして、次世代を担う人材育成の貢献ということで、こちらも若者層、さらには子育て世代の主婦層をターゲットにして、Webサイトのリニューアル、SNSとの効果的な連携を行ってまいりました。こちらでは、宇宙教育のイベントに参加する皆さんのアンケートを分析すると、子どもが自ら参加したいという声も当然ございますが、親御さんが子どもを参加させたい(以下音声不通)という風に思ったというところが、かなりの割合ありますのでそこに我々としては更にアプローチする必要があるという気づきを得てこのような工夫をしました。アクセス数が2倍以上に増加したという結果を得ております。更に臨時休校の・・・

【渡邉課長補佐】 すいません。JAXAの音声がオフになっているようです。

【JAXA(石井)】 状況がコロナの影響で生じましたが、「宇宙de春休み、いっしょにチャレンジ」というサイトをすぐに開催し、好評を得てございます。また、宇宙教育地域フォーラムin桑名の開催状況を示しておりますが、このような地域との連携活動についても、継続的に続けてございます。
 本件につきましては、以上でございます。

【渡邉課長補佐】 はい。ただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。髙橋先生お願いします。

【髙橋部会長】 はい、髙橋です。ご説明ありがとうございました。2018年度に比べると、質的にも量的にも大幅に活動量が増えたということで素晴らしいと思います。ただ一方で、国民の理解増進はどういうことなのかということを整理する必要があるのではないかと思います。JAXAの中期目標では、国民の理解増進とは、ということについて、宇宙航空事業の意義や成果、価値、重要性について、出資者、つまり納税者である国民に説明して理解を得ること、というように定義されているわけです。簡単に言うと、出資した価値があるかどうかということを国民に判断してもらい、承認を得るということではないかと思います。そのように考えると、活動量の評価というよりも、どの程度理解が深まったかという観点での評価が大事であり、関心を集めることや認知度を高めるということだけではなく、納税者がどこまでJAXAの成果についての価値や重要性について理解を深めたかということが、評価の一つの指標になると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

【JAXA(石井)】 はい、ありがとうございます。まずD-42ページに、参考の4という項目をお示ししておりますが、一つのツールとして、われわれとしては、国民の意識調査は継続的にさせていただいており、分野ごとに分けて、役立ち等というような理解がどの程度あるかという調査は継続的にやっております。しかしながら、髙橋先生のご指摘の本質的なところに応えるのには、この調査が十分とはわれわれも思っておりませんので、こちらは一つのツールでございますので、継続計測をしてはまいりますが、納税者に対する満足度というものをどのように捉えるかという点については、引き続き検討してまいりたいと思っております。

【髙橋部会長】 はい。ありがとうございました。ぜひ活動量の評価にプラス受け手側の評価軸というものを考えていただいて、今後とも取り組んでいただきたいと思います。ありがとうございました。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 はい。他にございますでしょうか。

【赤松臨時委員】 文科省委員赤松です。よろしいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はい、お願いします。

【赤松臨時委員】 今の髙橋委員からのほうからのご意見に少し重なるところもありますが、私としてもこの活動量は一つの重要な指標だと思いますし、そちらはそちらでモニターするべきだと思うものの、今ご意見があったように、やはりその中身がどうであるのか、どのように理解されているかという部分にもう少しフォーカスしていく必要があるのではないかと思っています。今見せていただいているこのページであれば、例えば94%と88%がどれくらい有意な違いがあるか分からないですが、もしかしたらこの辺りに何かそのような要素が隠れているかもしれないと見て、ではどのようにすればその部分をもう少し理解してもらえるようになるのか、その理解が人材育成や産業活性化にどのようにつながっていくのかということを深堀りしていくことも大事なのではないかと思います。
 昨年度の指摘に対して、このようなことを加えていただいたことは、大変ご尽力いただいていると思いますが、もう少し掘り込んでいく必要があるのではないかということをコメントさせていただきたいと思います。以上でございます。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。われわれもこれで満足というところではなく、継続して課題に取り組んでまいりたいと思っております。

【赤松臨時委員】 はい。いろいろ申し上げて申し訳ないですが、ぜひ続けていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【JAXA(石井)】 はい、頑張ります。

【渡邉課長補佐】 他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それではここで再度休憩を15分ほど取りたいと思います。現在、かなり遅れていますが、16時42分ですので、16時57分からの再開としたいと思います。よろしくお願いします。

<休憩>

【渡邉課長補佐】 それではヒアリングを再開いたします。ローマ数字3.3.5 宇宙状況把握、ローマ数字3.3.6 海洋状況把握・早期警戒機能等、ローマ数字3.3.7 宇宙システム全体の機能保証について、JAXAからの説明をお願いいたします。

【JAXA(寺田)】 それではローマ数字3.3.5 宇宙状況把握について、寺田のほうから説明いたします。A-66ページ、宇宙状況把握の業務は現有の設備によって、スペース・デブリの観測、解析、衝突回避制御を行うところ、加えて新しいSSAシステムを整備するということを行っております。
 A-67ページですが、上齋原レーダーと美星光学望遠鏡により、スペース・デブリの観測及びJAXA運用衛星に対するデブリ接近解析を行ったということで、A-68ページにこの設備について例がございます。現システムは岡山県美星町の美星スペースガードセンター、岡山県鏡野町の上齋原スペースガードセンターの2つの設備を用いまして、JAXA運用機のスペース・デブリの観測を行い、JAXA運用機の解析を行っています。
 2019年度は、この情報と、宇宙状況監視了解覚書に基づく連合宇宙運用センターからのデブリ接近スクリーニング結果通知を踏まえ、衝突リスクがある衛星プロジェクトの接近警報、さらにその中から衝突の可能性が高い衛星について判断を行い、2019年度は結果的に3回のデブリ衝突回避制御を行いました。結果的に、2019年度においては運用中の衛星とデブリの衝突による事故というものがありませんでした。
 さらに、新SSAシステムについては、2023年度の実運用開始を目指し、今システムの整備を行っておりまして、2019年度はシステムの維持設計を実施し、製作を継続したということで、これも計画どおり実施したというところです。新しいシステムでございますが、A-68ページにありますように、美星のスペースガードセンター、望遠鏡については、1m望遠鏡の更新、また、上齋原スペースガードセンターについては、新規のレーダー設備を整備するということで、この新しい設備が完成しますと、高度650kmで10cm級の立体把握ができるという設置区域を整備しておるということでございます。
 続いて、ローマ数字3.3.6の海洋状況把握・早期警戒機能等について、本日冒頭事務局の方から明示いただきましたように、安全保障に関連するということで、本日見ていただくのは公開資料についてでございます。非公開の資料については、事務局より別途メール送付させていただき、質疑応答もメールでさせていただくということですのでよろしくお願いいたします。公開資料の説明ですが、A-75ページに行っていただき、わが国の周辺海域に取り巻く情勢が厳しさを増している中、国が安全保障機関における衛星観測データの見立てがさらに進展し、MDAの能力向上が図られたということで、わが国の安全保障の確保に貢献するということができ、研究開発成果の創出になったということで、鋭意強化をしてございます。
 MDAの能力向上への貢献ということで、JAXAが運用しているALOS-2の観測データ、また船舶自動識別装置(AIS)で取得した船舶情報、地球環境観測衛星データ等、海外の衛星データや海洋モデルのデータを複合的に運用したデータの恒常的な提供、さらには利用技術への支援ということを行い、国の安全保障機関における海洋状況把握への衛星情報に至っての定着などの行動に貢献してきました。さらに、GCOM-Cの観測データも提供したことによって高精細で高分解能のデータの提供を開始しております。
 また、政府における海洋情報の効果的な集約、共有、提供への貢献ということで、「海しる」についてはまだ提供はできておりませんが、その提供される時期の調整を行っております。GCOM-Cによるデータを提供しようとしているわけですが、これができますと、GCOM-Cにより観測される沿岸域の海水温データ、あるいは漁業者の要望が高いクロロフィル濃度のデータを提供することができるということで、強化に必要な貢献ということで、その準備を進めております。
 さらに、防衛装備庁から受託している衛星搭載型の2波長赤外センサーの開発につきましては計画どおり行いまして、事業系含め全て完了し、納品しているところございます。
 続いてローマ数字3.3.7について石井のほうから。

【JAXA(石井)】 ローマ数字3.3.7を石井のほうからご説明いたします。A-78ページから始まる宇宙システム全体の機能保証について、まさに宇宙システム全体ということで、内容的にはわが国の全体の検討の中で、われわれがその機能保証のためにやるべきところを行っていくという内容になっており、経営推進部のほうでJAXA全体を取りまとめる形で政府支援をさせていただいておりますので、私のほうからご説明いたします。
 A-79ページをご覧ください。評価としてはBになります。今年度の進捗状況をご説明いたしますが、まず宇宙システム全体の機能保証に資する防衛省、防衛装備庁等関連府庁と連携の強化とになります。政府で、ケーススタディをミッションアシュアランスについて行ったイベントがあり、そのイベントに衛星プロジェクトのメンバーとともに参加をし、支援をいたしました。
 また、ミッションアシュアランス強化を視野に入れた防衛省、防衛装備庁さまとの活動として以下を行っております。
 1つ目は、プロジェクトとして2波長赤外線センサの実証研究を行っており、こちらはALOS-3に搭載するものです。また、宇宙状況監視SSAについて、別途整備状況の説明がありましたが、こちらを確実に遂行しているということ、さらに、防衛大綱・中期防にて導入が明示されたSSA衛星については、防衛装備庁さんから公募が出ましたので、この公募にわれわれ応募をし、落札させていただきまして、宇宙設置型光学望遠鏡衛星への適用する技術に関する調査検討として、昨年度成果報告を行っております。3つ目は、従前から進めております人材交流を着実に行っているというところをご紹介しております。
 A-80ページにまいりまして、JAXAの保有するシステムの脆弱性評価、宇宙機関連システムの対策強化ということでも取組は進み、1つ目として宇宙システムのセキュリティ管理表示もセキュリティ対策標準の作成を実施いたしました。
 また、種子島宇宙センターのインフラの脆弱性評価も実施しました。こちらでは、外部のセキュリティの専門家に見ていただきまして、高い水準であるという評価を頂いております。この評価を頂いた専門家はまさにこの制御系セキュリティ専門家になりますが、このような方や海外宇宙機関とのチャンネルを作り、標準の作成や人材育成の進め方など長期的な対策も進めているところでございます。
 次のA-81ページをご覧いただきますと、防衛省とJAXAとの協力・連携状況のご紹介でございます。昨年度のものが新しいものとして青字で示しております。こちらを読み取りいただければと思います。
 以上でございます。

【渡邉課長補佐】 ただ今の説明に対して、ご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 ないようですので、続いて次に行きます。
 ローマ数字3.7 情報収集衛星について、JAXAからご説明をお願いいたします。

【JAXA(寺田)】 情報収集衛星に係る政府からの受託ということで、寺田のほうから説明をさせていただきます。
 こちらも限定的な説明になることをご了解ください。ちなみにこの資料については、CSICE殿に事前に確認いただき、資料内容が事実であるということは確認いただいております。この前提でご説明をさせていただきます。
 E-3ページになります。政府からの受託を受け、必要な人材・連携体制を確保して情報収集衛星に係る事業を実施し、宇宙基本計画工程表どおりに光学7号機を打ち上げるとともに、各衛星システムの開発実施、解像度を含む情報の質等の向上の施策の提案・採用および将来衛星システムに向けた新しい研究・構想提案等を着実に実行いたしました。
 この業務におきまして、政府から求められる水準を上回る成果を上げて、技術集団として大きく貢献したと評価し、Sの評価を付けてございます。
 この受託事業は、CSICE殿との幹部レベルおよび現場レベルの緊密な連携・調整の下に実施しておりまして、開発・運用における政府目標への貢献、最先端の商業衛星を凌駕する水準で継続的に良好な成果を出せるように着実に実施しております。
 以下、S評価という理由について述べさせていただきます。5つございます。
 まず、1つ目、宇宙基本計画工程表どおり打ち上げた光学7号機で政府要求を上回る性能を達成したということでありまして、こちら少し口頭で補足させていただきますと、解像度を含む情報の質等を最先端の商業衛星を凌駕する水準まで向上および姿勢駆動装置の搭載台数の増強によって、俊敏性の向上を実現してございます。
 2番目は、技術集団として、政府の将来衛星構想の段階的実現および新たなセンサーの導入ということで、関心対象の動態的な監視のための時間軸多様化衛星について、経費削減を考慮した開発を開始しました。また、新たなセンサーの導入に向け、波長の異なるセンサーの研究を継続してございます。
 3つ目の理由ですが、政府の定常運用を支援することにより、総合的な付加価値を付与したということで、地上システムにデータ中継機能を搭載して、質、量、即時性に関して格段に能力が向上した情報収集衛星等を最大限に活用するという状況にございます。情報収集衛星の4機体制をこれによって確実なものとしてございます。
 4番目は、わが国全体の宇宙開発・利用発展に資する情報収集衛星技術の利用促進制度の新たな運用の開始ということで、わが国の衛星技術基盤の強化を図るために、先端技術である情報収集衛星技術の利用を促進する制度の新たな運用を開始しました。
 5つ目は、宇宙システム全体の機能保証強化と新しい安全保障分野への貢献ということで、情報収集システムの安全保障分野における活用を一層強化するため、機能保証を総合的かつ継続的に保持・強化するための方策の調査検討を行い、特に重要な先端技術の研究・開発を開始してございます。
 以上、ご説明となります。

【渡邉課長補佐】 それではただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは以上をもって3府省の共通の項目、調査項目はこちらで終了となります。こちらで内閣府の委員の方々にはご退室をいただくということになります。長時間ご対応どうもありがとうございました。
 それではヒアリングを続けたいと思います。
 次、ローマ数字3.6.3 プロジェクトマネジメントおよび安全信頼性、ローマ数字3.6.4 情報システムの活用と情報セキュリティの確保、ローマ数字3.6.5 施設および設備に関する事項について、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(久保田)】 はい。JAXAの久保田と申します。ローマ数字3.6.3について報告いたします。
 私この4月より統括チーフエンジニアとして、システムエンジニアリングおよびプロジェクトマネジメントを担当している者でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料ですが、ページがD-51からになります。プロジェクトマネジメント安全・信頼性に関して、JAXAではプロジェクト活動の安全、確実な遂行を推進しておりますが、2019年度に顕著な成果を上げたと認識しておりますので、自己評価をAとさせていただいております。
 次のページに行きまして、D-52ページになります。2019年度の主な実績と評定理由を挙げております。項目としては4つ挙げておりますが、大きな成果としては、3つの項目となります。
 1番目がプロジェクト上流段階におけるSE・PM能力の向上として、さまざまな教訓というものをプロジェクトになる前の段階、こちらを上流段階と呼んでおりますが、その段階で取り込んで活動に反映している点です。また、若手プロフェッショナルの早期育成という活動を行ってまいりました。後ほど詳細を話します。
 2つ目が安全信頼性の確保として、安全・信頼性に関する技術標準を整備、制定した点が成果でございます。
 3番目が外部機関への支援・貢献としまして、JAXAが宇宙系システム開発等で蓄積してきた知見等を紹介、共有したということも成果として挙げさせていただいております。
 では具体的に紹介したいと思います。ページがD-53になります。プロジェクトの経験事例の伝承ということで、今まで埋もれていた経験について、インタビュー等を通して教訓にまとめてきました。こちらは研修という形で、プロジェクトになる前の段階から伝達・伝承を行うということを積極的に行ってまいりました。その結果、月極域探査ミッションについては、検討が加速することができ、プリプロジェクト化を早期実現することとなり、効果が出ているところでございます。
 D-54ページ目に移りますが、若手、30代のエンジニアを中心に、将来のミッションを推進するプロジェクトマネジャーを育成するということで、こちらはJAXAとしては初めての試みで、2019年度に行いました。実務に基づく体験型の演習を行い、人材育成に積極的に取り組んでいる状況でございます。
 D-55ページ目に移り、2つ目の大きな成果ですが、宇宙空間の安定的利用に資する技術標準類の新規制定を行いました。こちらでは3つ紹介いたしますが、右側に軌道上サービスミッションに係る安全基準ということで、デブリ除去等で人工衛星が他の物体に接近する際のデブリ発生を防ぐための安全基準を検討・分析し、この結果を国際的な規制等に関する取組に導きまして、欧米のESA・NASAにも提案した結果、合意を得て、世界に先駆けて公開できたものでございます。この基準については、商業デブリ除去実証ミッション等にも適応できるようになっております。2つ目が、サイバーセキュリティ対策への対応ということで、宇宙システムの打上げや運用に関する標準を制定した次第でございます。3つ目が、確実に運用するための準備として、その標準化を行い、以上新しく制定を行ったことが大きな成果となっております。
 D-56ページ目に移りますが、このような信頼性、標準化をどんどん進めてまいりまして、棒グラフの2016年真ん中辺りにありますように、業務改革を開始し、不具合の件数を目安として半減化することを狙っており、2017、2018、2019とおおよそ目安である半減に至っているという次第でございます。
 D-57ページ目について、3つ目の成果として紹介したいものですが、外部機関への支援、貢献ということで、3つ挙げております。JAXAが培ってきたプロジェクトマネジメント、及び品質・信頼性に関して、そのやり方、進め方については、福島第一原子力発電所の廃炉事業へ紹介をした結果、この事業をJAXAの例を参考に進めるということをいただいております。
 2つ目が、宇宙機のロバスト性設計ということで、ロケット等の構造のロバスト性の設計手法をいくつか作ってきておりますが、京都大学と共同で建築耐震設計のロバスト設計にも応用するということで、木造建築耐震設計にもうまく解を得るということができ、品質工学会等で発表して評価を頂いているところでございます。
 3つ目が日本自動車工業会の要請を受け、HTV-Xの安全評価に用いた手法を自動車の安全に関するところで使うようなことで、成果を上げているということです。
 以上、ローマ数字3.6.3については報告とさせていただきます。

【渡邉課長補佐】 続いて、ローマ数字3.6.4についてJAXAからお願いします。

【JAXA(石井)】 ローマ数字3.6.4、石井のほうからご説明いたします。D-73ページから説明をいたします。自己評価はAとさせていただいております。情報システムの活用については、コスト削減を図りつつ、環境の向上、緊急開発基盤の強化を着実に進めておりますけが、情報セキュリティについても、高い水準の維持のみならず、高いレベルでの移行を進めて顕著な成果が出ているということで、説明をさせていただきたいと思います。
 D-75ページをご覧ください。こちらでは全社で共通的に利用する情報システムでの活動の幾つかの成果をご紹介しております。左側上になりますが、ネットワークについて、皆さん既にご存じかと思いますが、SINETを使った仮想大学LANを導入し、JAXAのさまざまな拠点とのつなぎ込みに工夫を行いまして、JAXAが全体取りまとめのシステムを考案し、入札を行った結果、回線費用としては約67%を削減しつつ、帯域としては最大約100倍を確保できるという状況に至っています。左下にありますように、公用電話については、機構内外で使っていたPHS電話の社外での使用ができない状況が今年度から始まるという状況があり、こちらのPHSについて、社内外での通話の実態・需要調査を行い、調査結果をもとに必要な携帯電話を必要となる分一括で調達するということを行って、全体の費用を66%減するというめどが出ております。右上になりますが、Microsoft Teamsというコラボレーションツールの利用者が急激に増えております。この背景には、もちろんコロナの状況ということもございますが、利用者増に向けて、社内でのキャンペーンを行っており、この活動については機構外からも講演の依頼を受けるということで、一定程度評価を頂いたと考えております。右下になりますが、コロナの状況を受けて、テレワークが拡大したという状況がございます。こちらの状況に対しては、デジタル化をすることで、仕事の合理化を図り、やり方を変えるということを従前から取り組んでおりましたが、このような取組をすすめていたことが、今般の状況であっても、政府要請の出勤率削減というような目標達成に貢献できた一因であると考えております。出社職員数については、後ほど人事関係のところでご説明があるかと思います。
 D-76ページにまいりまして、研究開発を支えるスパコンについてでございます。継続的にこのスパコンを使って、可視化の解析技術がかなり進んでございます。そのスパコンも、世代交代のタイミングになりまして、今回の更新の方針については、随意契約ではなく、競争的な入札が行われるような工夫を行い、性能は約13倍で費用は10%削減できるというめどを得ております。スパコン関係の運用の技術として、国際競技会にNICTさんと共同で参加し、受賞を頂きました。また、可視化技術については、多数の招待講演も入っております。
 D-77ページにまいります、セキュリティの確保です。JAXAはサイバー攻撃の標的になっております。右下に攻撃通信の状況を書いてございますが、一般の約7倍の攻撃を受けております。この状況の中で、我々はセキュリティンシデントを起こさないように、システムの整備から人材の教育、運用というようなところにしっかりと注力をしてまいりました。また、セキュリティ意識の醸成ということで、階層別の教育の新設や事情に合わせたオリジナル教材を作成しこのような研修の受講率100%を実現しております。自己点検も含め、JAXA内にあります情報システム洗い出し、情報システムの見える化と脆弱性の評価をするということを継続的に行っております。
 これらの活動後の結果として、重大インシデントがゼロであるという状況を継続、実現しております。
 説明は以上でございます。

【渡邉課長補佐】 続いてローマ数字3.6.5をお願いします。

【JAXA(中村)】 続きまして、中村から、ローマ数字3.6.5 施設および設備に関する事項について説明させていただきます。
 自己評価はAとしてございます。最初にD-91ページをお開きいただきたいと思います。JAXAは全国に設備を展開してございます。これらの施設をしっかりと整備をするということで、専門性を生かした技術提案を行いつつ、随時実施しているところでございます。
 そのようには言うものの、重要設備の老朽化は否めませんので、昨年に老朽化対策を経営課題として位置付けてしっかり取り組むことにしたところでございます。この対策を実施するためには、第一に施設のマネジメントに注力をすることが必要でございます。特に企画・立案がしっかりできると、後は実証するだけということで、企画・立案で性能の8割ぐらいは決まるという状況でございますので、JAXAの内部においても、しっかりとした計画が立てられたかどうかというのも、評価において非常に重要な項目であると理解してございます。
 次のD-92ページをお開け願いたいと思います。このような施設部の業務については、年度計画に書いてありますように、既に作られた計画の改訂及び確実な実施という取組が最初の項目にございます。また、その次に各事業部門がそれぞれ事業をしてございますが、それら事業に対して専門的な知識で技術提案を行うということが一つの業務になってございます。さらに、調査・研究をすることによって、次の活動に生かしていくという取組をしております。このような内容について取組を行っており、その結果として、D-84ページありますように、成果をしっかり上げたと考えてございまして、自己評価をAにしたものです。
 具体的な内容について、以下ご説明を申し上げたいと思います。
 D-85ページでございます。昨年は筑波のESCO事業について計画を立てたというお話をさせていただきましたが、昨年度実際に工事をいたしました。その結果として、2020年3月時点でございますが、電力使用量が前年比で約3割減になったというところまで実績が出ておりますので、今後その実績を継続して享受できるのではないかと思ってございます。さらに、昨年度は相模原のキャンパスにおいてESCO事業計画を取りまとめることができましたので、この計画を今年度と来年度、実施をするということになろうかと考えてございます。
 続いて、D-86ページでございます。施設の更新整備ということで、昨年度もご説明申し上げましたところではございますが、種子島はそれほど大きな電力ネットワークがあるわけではないため、ロケット射場があるJAXAでは、自ら発電所を建設し、運営している状況でございます。その設備が老朽化をしてきているという大きな問題であり、運用性の向上・信頼性向上、経済性、環境性に関する計画を立て、この計画に従い工事を開始したところでございます。具体的なエリアとしては、実際に古くなった設備を単純に取り替えるというようなものではなく、蓄電池という形で最新の設備を入れることにより、低負荷の運転の解消を図るというような能力を向上できる改修計画を取りまとめ、改修を始めているところでございます。また、D-87ページにありますように、現在、調布の特別高圧受変電所についても、更新をすべしということで、計画を取りまとめたところでございます。この計画に基づき、調査事業が始まっており、実際の試験に影響を与えないように考慮されつつ、順次更新をしていく計画にしてございます。さらに、資料には入っておりませんが、種子島のロケット組立て棟について、改修を現在宇宙輸送事業部門が実施してございました。この建屋については、施設部のほうの専門性を生かした提案を行い、通常であれば随分時間がかかる改修になるところ、一年ほど短縮できるような計画を調整することができました。この提案については、宇宙輸送事業部門から高く評価を受けたところでございます。
 また、D-88ページ以降は、施設部が行っている調査・研究でございます。施設部自身がさまざまな調査・研究をすることによって、能力を高めているわけですが、その調査・研究を外部の方と実施をし、実際に外部の方に利用していただくということもしています。
 D-88ページの下部にあります取組は、衛星データの測位によって被災建物の損傷状況を評価しようという応答計測システムの精度向上の取組でございます。建築研究所と研究しているものであり、実際に建築研究所にはその研究のためのアンテナを置いていただきました。また、同じような設備を大阪府の庁舎においても置かせていただいており、共同で研究を実施することができている状況でございます。
 さらに、土砂の災害危険度情報の配信という観点では、勝浦に、また、危険斜面の警戒感知システムの整備という観点では、角田に設備を設置しており、その状況についてはD-89ページのほうに書かせていただいております。勝浦については、JAXA施設だけではなく、周辺の地域にも情報提供している況でございます。さらに、設備を安く導入するという意味では、共同調達も開始をしており、自治体等と協力をしてございます。
 最後にD-90ページをご紹介させていただきたいと思います。施設にはさまざまなものがございますが、これらの施設に関して、情報の集約・一元化を行い、リアルタイムの情報を共有し、さらには、維持・運用を連携させようということで、施設情報管理システムの整備というものに着手をしたところでございます。
 ご説明以上です。

【渡邉課長補佐】 ただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 白坂先生と小塚委員と黒田委員の順番でお願いいたします。

【白坂臨時委員】 まず白坂から。ご説明ありがとうございます。私のほうは、プロジェクトマネジメントおよび安全・信頼性のことについて少しご質問したいところです。これまでよりもこの教育の体系がますます出来上がってきているということを、説明を受けて大いに感じておりました。その中で、SE・PMプロフェッショナル育成という取組について、D-54ページに若手エンジニア20名を選定し、1年間の試行活動を開始したというようなご説明がありますが、この取組はあくまで試行段階であって、今カリキュラムのような教育課程を作ろうとしている段階であるという理解をすればいいのかということが質問の1点目です。また、その20名という職員はどのように選ばれたのかということ、及び、今後課程を作った暁には、その課程を幅広く展開していくことをどの程度のスピード感でやろうとしているのかということについて、もし計画があれば教えていただきたいです。
 以上3点お願いいたします。

【JAXA(久保田)】 久保田から回答いたします。この取組は将来のプロマネ等を育成するため、やはり若い世代から人材育成をしていきたいということで、昨年度初めて行ったものです。この育成をどのように実施していったらいいのかということを、JAXAチーフエンジニア室で考え、最初の試行として昨年度始めたという意味において、試行と書かせていただいています。具体的には、実践から体験して学ぶことがやはり重要だと思っておりますので、実際のプロジェクトを例にして、ミッション作りからシステム検討までを一連で学ぶという取組を約半年かけて行いました。試行した結果、いろいろなところで効果が出てきましたので、今年度第2回を実施しております。書面では継続して行いたいということと、試行策としてやってきたところをしっかりとした教育システム、人材育成システムに仕上げるということも行っていきたいと考えております。20名については、公募というよりも、そのようなことに関心のある職員をその各部署から推薦していただき、20名を選ばせていただきました。今年度も20名程度で密な議論をしたいということもありますので、この人数で今進めている状況です。
 将来このような職員をJAXA内でますます育成したいということもあり、また、大学等を含めて、将来的には幅広く実施していきたいということもありますが、数年を経てしっかりとこのような人材育成システムをつくりたいと考えている次第でございます。

【白坂臨時委員】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは次、小塚先生お願いします。

【小塚専門委員】 小塚です。私もプロジェクトマネジメントの関連について質問を続けて恐縮です。ご説明いただかなかった部分についてむしろ気になっているのですが、契約の形態を請負契約に変えるということで、今回の資料では、経験事例の伝承の中で、請負契約化に向けた企業とのコミュニケーションの取り方といった形で出てきておりますが、請負契約化は既に実施されたとたしか昨年伺ったと思います。こちらを受けて、その効果がどうであったのか、つまり契約を変えたことによって、リスク管理が向上し、例えば不具合等が事前につぶせるようになった、あるいは、そのような効果があったかどうかなどの検証はなされているのでしょうか。よろしくお願いいたします。

【JAXA(久保田)】 久保田から回答します。ご質問ありがとうございます。
 D-53ページになりますが、請負化ということで、研究開発における新しい領域に関しては、企業とJAXAが一緒になって研究開発しつつ、そのフィージビリティが出たところで請負化をするということで、既に進めているところです。その際、新しいことをするには、やはり難しい面もありますので、その辺りの情報共有とコミュニケーションをどのようにJAXA-企業間で取っていけばよいかということを、この経験事例として抽出しております。そのような意味では、しっかりとコミュニケーションできたものに関しては請負化が着実に進んでいるということで、その検証は今後数年で進めていきたいと思います。企業も請け負うということで、成果物はしっかりしたものができている現状でございますが、その前の段階の研究開発部分においても、企業とのコミュニケーションをどのように取っていけばいいかということを、今レッスンズラーンドでまとめているという状況でございます。

【小塚専門委員】 分かりました。資料に書いていただいたのはそのような内容であり、その請負契約化に移行したことの検証は、今後数年かけてなされるという理解ですね。ありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 それでは黒田委員お願いします。

【黒田臨時委員】 皆さまお疲れさまでございます。どこでご質問というか、お願いすればいいか分からなかったのでこのタイミングでさせていただくのですが、JAXAのデジタルアーカイブスのことについてです。自分が今、宇宙のことをより知ってほしいと思い、動画等を作成している際に、JAXAやプロジェクト等をご紹介したいとなった時、JAXAのさまざまな映像や画像等を使わせていただきたいのですが、正直使いづらいというか、いくつも申請をしなくてはならず、申請に手間がかかることはいいのですが、申請の方法が企画書等を出してください、企画書の中でどのようにその映像、画像を使いたいかがわかる資料を作成してください、というようなやりとりノラリーがものすごく続いている状況です。そのやりとりにJAXAの方の時間なり人件費なりがかけられているということがすごくもったいないような気がしてしまっており、NASAは著作権を開放しているので、そのようにJAXAもできないのかということがお願いです。

【JAXA(石井)】 広報部の担当をしております石井のほうからお答えさせていただきます。
 実際アーカイブのインターフェース、マンマシンインターフェースというか、ユーザーインターフェースというか、そのインターフェースが使いづらいという点は、我々も認識しており、課題と思っております。実は私自身も使ってみて、正直なところ少し分かりにくいなと思うところもありました。今考えております対応策は、ネット上である程度快適なユーザーインターフェースで手続きが済むということを目指して、お話にあったように、JAXAの人間が入って、やりとりをするということがないようにしたいと思っております。そのためには、システム改修が必要であり、まだ改修までは手が出ていない状況ですが、できるだけ早く対応をしたいと思います。

【黒田臨時委員】 具体的に計画の中に入っているのですね。

【JAXA(石井)】 JAXAの中で議論しています。昨年度からもその点は認識して議論しているところですので、いつとは申し上げられない点は申し訳ないのですが、できるだけ早く対応をしたいと考えております。

【黒田臨時委員】 ありがとうございます。

【JAXA(石井)】 著作権については、開放は少し難しいかとは思うものの、JAXAの商標等を入れていただき、目的に合わせて使っていただけるということで、大きな問題はないのではないかとは思っております。

【黒田臨時委員】 分かりました。期待しております。ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 それでは赤松委員お願いします。

【赤松臨時委員】 よろしくお願いいたします。情報セキュリティのところでお聞きしたいです。重大インシデントはなかったというお話ですが、重大なもの至る前の中規模、小規模なインシデントの状況はどのようになっておりますでしょうか。

【JAXA(石井)】 JAXA石井でございます。重大なインシデントになる前段階で収まったというものは、幾つかございます。その件は情報セキュリティ委員会でしっかりと吸い上げ、水平展開及び応急対策を実施するということでフォローしております。そのような説明でよろしいでしょうか。

【赤松臨時委員】 重大インシデントが起こる前のところでやはり止めないといけないので、その中規模、低規模のものが増えているのか増えていないのかというところも実を言うと重要ではないかと思いましたので、今回はそのような情報がなかったものですから、提示いただいたらよいと思います。

【JAXA(石井)】 そうですね、お出しできるのではないかと思います。検討をさせていただきますが、減ってきているという感覚はあります。

【赤松臨時委員】 減ってきているということですね。

【JAXA(石井)】 そのような教育をしている状況かと思いますが、しかしながら、攻撃についても、メールについても、さまざまなパターンが新しく出てまいっておりますので、あまり油断せず、継続的にやる課題だと思っております。

【赤松臨時委員】 そうですね。その点もよくモニターしながら、より強固なセキュリティにしていただければと思います。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。

【赤松臨時委員】 加えてもう1つ、施設について少しお伺いします。さまざまな施設設備を維持・管理をしていく中で、さまざまなインシデントが起こると思いますが、そのようなインシデントが起こった際、BCPのようなものは検討されているかどうかについてお教えいただきたいです。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。個々の施設が急に故障して、そのたびにどのようにして、事業を進めるかということだと思いますが、それぞれのプロジェクトと相談をしながら、BCPをそれぞれプロジェクトで定めていますので、その中で対応をしていくことになろうかと思います。
 施設については、例えば最近では、今年度多くの雨が降って、道の周りの土砂が崩れ、その近くに重要なケーブルが通っていた、というようなときに、どのようにしてその事態に緊急に対応するかということで、この例の場合はやはり緊急で対応しなければいけないという状況になるかと思いますが、対応についてはやはりケース・バイ・ケースで考えなければならないだろうと思っています。

【赤松臨時委員】 なるほど。BCPはある程度動けるように作っておいて、その状態になったときへの訓練という形を含めて、活用しているということですね。災害多発の時代になっているということも踏まえて、ぜひ体制強化をご検討いただいたほうが良いかと思います。

【JAXA(石井)】 はい。コメントどうもありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 ほかよろしいでしょうか。
 それでは、次に行きたいと思います。

【梅比良部会長】 梅比良でございますが、1点だけいいでしょうか。

【渡邉課長補佐】 はいどうぞ。

【梅比良部会長】 先ほどのSE・PMのプロフェッショナルの育成という話で、このようなことを意識して育成を行うことは非常にいいのですが、一方でPMにならないような方に対して行ってもらってもしようがないような部分もあるかと少し思いました。こちらの育成については、人事計画やキャリアプランのような観点をどのように運営されているのでしょうか。

【JAXA(久保田)】 育成については、今までの経験と本人の希望、部署の推薦という形で、今20名の職員を対象としておりますが、この方たちが将来つく部署やミッションを通じてうまく育てつつ、やはりいろいろな経験をしながら将来のミッションを背負っていただくような育成を行うということをこの育成プログラムでは進めているところでございます。

【梅比良部会長】 では、この中から何人かがPM等になられ、運用するということですね。

【JAXA(久保田)】 はい。非常に熱心に参加して、自分の意見を言うような人たちが集まっているメンバーですので、ぜひPMになるような人たちが出てくると思います。

【梅比良部会長】 加えて、OJTのようなシステムはないのですか。日本中でよく先輩から教わりながらやりなさいというようなやり方もあるのではないかと思っているのですが。

【JAXA(久保田)】 背中を見つつ、さまざまに学ぶということもあるとは思いますが、今はなかなかそのような時代でもなくなりつつあるので、もう少しシステマティックに進めるというアプローチも併用していきたいと思っています。

【梅比良部会長】 はい分かりました。どうもありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 ほかよろしいでしょうか。
 それでは次にまいりたいと思います。
 続いて、ローマ数字4.業務運営の改善・効率化に関する事項に係る措置、ローマ数字5.財務内容の改善に関する事項に係る措置、ローマ数字6.2 人事に関する事項及びローマ数字6.1 内部統制についてJAXAよりご説明をお願いいたします。

【JAXA(石井)】 JAXA石井のほうからご説明いたします。業務運営の改善・効率化に関する事項で、評価Bとさせていただいております。F-2ページから説明をさせていただきます。
 評定としては、年度計画で設定した業務を計画どおり進めたということを少し具体的にご紹介したいと思います。
 また、人件費の適正化という説明がでてまいりますが、JAXAの役割が昨今増えていく中で、十分な人員確保が難しくなっている状況を昨年度もご報告いたしました。その辺りもご報告したいと思います。まず(1)社会を科学・技術で先導し新たな価値の創造に向けた組織体制の整備ということで、一つ目が宇宙輸送システムと衛星システムを第一宇宙技術部門という形で1つにまとめての対応としておりましたが、H3の開発も佳境を迎える中で、輸送系のプロジェクトをしっかり対応するという意味で、それぞれ専任の部門長を設置し、開発体制を強化いたしました。2つ目が準天頂衛星システムについての受託を頂きまして、この事業につきましても業務を統括する責任者として衛星測位技術統括という役を配置いたしました。
 また、知財関係についても、宇宙関係での取組が遅れていることが政府のレベルでも話題になっていたところ、2019年10月に知的財産課をJAXAの中に新設し、JAXAの知財活動に関わる経営方針となる知的財産ポリシーを作りました。これのポリシーについて、外部への発信としては今年度の5月にプレスへの説明の場を持たせていただいております。
 また、(2)効率的かつ合理的な業務運営の推進ということで、一般管理費については、2017年度比で2.3%の削減まで行っております。しかしながら、既に第1期から第3期までに約4割の経費削減が断行されており、なかなかぎりぎりの目標という状況であるというところはご理解頂ければと思います。
 2つ目でございますが、技術系、事務系問わず全職員が内部の管理業務に関する仕事がありますので、このような業務の標準化・集約化・合理化に取り組む中で、ビジネスサポートセンターという部署を作り、総務系業務を集約するという形での仕事の集中合理化を進めました。既に一部のユーザーにサービス提供開始しており、今後この対象を拡大していくという計画でございます。
 その他事業費の削減の取組としては、追跡管制棟の集約化、計算機器の統合、及び、先ほど施設関係でも触れさせていただきましたが、ESCO事業にも取り組んでいます。
 F-3ページにまいりまして、合理的な調達および国際競争力強化につながる効果的な調達でございますが、2019年度調達合理化計画を策定し、公平性や透明性を確保して、調達を実施しております。国際競争力につながるという意味では、研究開発部門が主体となった商業デブリ除去実証プロジェクトについて、民間事業者との契約が成立したわけですが、このプロジェクトの調達に関わる部分について、多くの工夫の結果、このような新しい取組が可能となったという状況にございます。
 さらに、PPP的手法を用いて、環境試験設備の運営を民間事業者と行うということについても、新しい取組になりますが、この取組に係る契約についても、調達部門の協力の下、実現したということをご報告させていただきたいと思います。
 4番目、人件費の適正化でございます。最初に申し上げましたとおり、機構の人員規模は3機関統合時から比べて約200人減っており、人材不足の状況でございます。JAXAの役割が逆に新しいところを期待されて拡大している中で、この期待に応えていくためには、人員を適正な規模にしていく必要があるということで、2019年度には受託費の非経常収入を原資に経験者採用増に着手をしました。この辺りの人員計画については、人事部のところの報告で触れていただくことになります。
 私のほうからは以上です。

【JAXA(中村)】 続きまして、ローマ数字5.財務内容の改善に関する事項に関する措置について、ご説明をしたいと思います。自己評価はBとさせていただいております。G-8ページを開いていただければと思います。
 財務内容の改善というところで幾つか年度計画に挙げられておりますが、財務諸表をしっかり取りまとめたということも含め、確実に実施したということになってございます。昨年度の特徴的なものについては、重要な財産の譲渡ということで、小型実証衛星のSDS-4というものについて、公募を行い、民間事業者へ譲渡いたしました。
 また、自己収入の増加の促進をしようという点について、運営費交付金や補助金、受託収入を含まず、競争的資金を含めたいわゆる狭い意味での自己収入は33億になっておりまして、凡そここ3年間は同じようなところで推移をしております。一方、受託収入として、外部から受託をし、事業を行っているところでございます。この中で情報収集衛星を除いたとしても、251億円ということで、受託収入のほうは着実に伸びているという状況でございます。寄付金については、金融機関等と協力をしまして、増やすための工夫を幾つか施しております。さらに、外部資金、特に競争的資金につきましては、グッドプラクティスの共有をするということ等で増やすような努力をしているところでございまして、先ほどご紹介したような、外部の共用稼働の件数の増加や「きぼう」の利用促進も自己収入の増加に寄与しているところでございます。加えて、受託収入については、準天頂衛星の関連により、大きな効果を及ぼしてございます。
 財務内容については以上でございます。
 続いて、ローマ数字6.1 内部統制についてご説明をしたいと思います。H-2ページを開いていただければと思います。自己評価としてはBとさせていただいております。初期の目的を達成したということでございます。着実に研修を行うということをしておりますが、昨年度の特徴的なところとしては、最近のJAXAの事業活動は外部連携が多くなってきたということで、こちらに伴い、利益相反マネジメントを強化しようということで、新たに規定の改善をしました。その改善の1つとして、自己申告書を役職員全員に対して求めるという対応をし、その申告書を1件1件見た上で、何かあれば職員と対話をするということで、利益相反マネジメントを強化する取組を開始してございます。
 加えて、内部統制実施については、昨年どおり実施をしてございます。リスク縮減活動において特徴的なものとしては、プロジェクトについては先ほどCE室のほうからもご紹介あったように、毎年同じようにやってきてございますが、事業以外の一般業務におけるリスクについても総合リスク対応中も設置するということで、着実に同じように進めております。昨年度においては、11の重点管理リスクの選定をして、対応したという状況でございます。
 内部監査についても着実に実施をしてございます。
 最後に研究費の不正及び研究不正対策について、ガイドラインに則って実施しているという意味では一昨年度までと同じになりますが、昨年度中には注意すべき事例が幾つか見られましたので、それら事例を取りまとめ、改めて皆さんに周知を行っています。具体的には、外国人研究員の指導監督やギフトオーサーシップについて注意をしなければいけないということで実施をしてございます。内部統制については以上でございます。
 最後に、ローマ数字6.2 人事に関する事項についてご説明をしたいと思います。
 ページ数はH-11ページを開けていただければと思います。評価はAとさせていただきました。この項目については、2019年度において、人材流動化の促進、人的リソース不足への対応、多様な働き方の促進、働き方改革への対応等々の社会的な要請がありましたが、それら要請に対応し、さまざまな制度を新たに導入することができました。この制度導入をもって顕著な成果を上げたところでございます。
 (1)は多様な人材の確保及び人的リソース不足への対応に関連した施策を幾つか挙げております。そのうち、人材の流動性を高めるという観点から、これまでは、終身雇用前提として、自己都合退職時には退職金を減額するという制度になっておりましたが、この制度を撤廃しました。また、人的リソース不足を補うために、受託費の非経常収入を原資として、一般職のプロパー職員の採用増に着手しました。こちらは昨年度の評価において、先生方からもご提案いただいたものでございます。この一般職のプロパー職員の増ですが、募集ということになりますので、このために採用時期の通年化、加えて、優秀な方を全国からあるいは世界から集めたいということで、Zoom面接の導入等をしました。一昨年度は初めて適用して、経験者採用1名でしたが、昨年度は年度を通じて22人増の36人の採用を実現することができました。
 さらに、厚生労働省モデルを取り入れた兼業の見直しということで、職員が多様な経験機会を得ることを目的としてございます。具体的には業務時間外での兼業について、これまでの許可制から届出制に変えたところでございます。
 加えて、ベンチャー支援制度の充実や、先ほども少し紹介させていただきましたが、総務系業務を集約して実施するセンター(JBSC)を作り、そのような業務を集約化することによって効率化を図りました。実際にユーザーのアンケートを取ってみると、公費の削減や質の向上という点で、多くの方がJBSCの働きに期待をしているという状況でございました。この評価を受け、昨年10月からは定常運用に移行いたしました。さらに適用する範囲も拡大をするということで、今年度もさらに拡大に向けて努力をしていくつもりでございます。
 さらに、研究究開発部門や航空技術部門を中心に、自主的な研究時間として、エフォートの2割を確保するという制度を3月に実行しているという状況でございます。
 また、(2)は新たな制度というわけではございませんが、これまでも進めていたクロスアポイントや出向という制度を着実に実行し、数を増やしてきていることのご紹介でございます。
 (3)はワークライフ変革の促進ということで、JAXAが運営している幼稚園2つは着実に運営をしてございます。また、これまでは女性活躍推進に基づく優良企業認定のえるぼしの最上級認定を受けていたところ、この認定に加えて子育てサポート企業として次世代育成支援対策促進法に基づく厚生労働大臣の認定である、くるみん認定を昨年度は受けました。さらに、昨年度に労働基準法が改正されまして、5日連休取得が義務化されましたが、労使に相談をし、WLB休暇という制度をJAXAは創設をしました。その結果、事業主の行動計画目標を超える休暇取得の達成ができております。加えて、国のテレワーク・デイズ2019を契機として、テレワークを進めようということで活動を行ってまいりました、講師を招いての介護セミナー等も実施をしてきています。テレワークを推進してきたわけですが、新型コロナの流行が始まった2020年の2月25日においては、テレワークの推奨ということがいわれるようになりました。昨年度のテレワークの申請者は88名から126名で1.5倍増というところではありましたけれども、実際今回のコロナでテレワークを積極的に進めようということで進めた結果、制度も幾つか変更し、結果として3月現在でテレワークの登録者数は1,800名増え、対象職員の約8割になる1,886名となっております。加えて、フレックスタイム適用者も多く増えております。
 なお書きのところにありますように、政府の緊急事態宣言と全国拡大直後の4月17日時点では、常勤職員全体の出勤率を20%以下に低下できて業務を進めているという状態になっておりました。
 ご説明以上でございます。

【渡邉課長補佐】 ただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。
 赤松先生お願いします。

【赤松臨時委員】 少しご質問させていただきます。
 予算の関係について、競争資金や受託資金、運営交付金等のバランスの情報が出てきますが、実際に今JAXA全体としては、資金的に足りているのでしょうか、足りていないのでしょうか。

【JAXA(中村)】 ありがとうございます。足りているか足りていないかという点は判断が難しいと思います。国は必要な予算を渡していると判断されていると聞いておりますが、JAXAとしてはもう少しあればもっと研究できる、あるいは人件費がもう少しあれば、もっとプロジェクトを充実していけるという思いはあります。しかしながら、我々が今できることとしては、自己収入をいかに増加させるかということで、少しでも自ら稼いだもので研究開発等に使えるようにしていきたいと考えている状況です。

【赤松臨時委員】 そうですね、運営交付金が増えればいいのですが、なかなか今の政府の財政状況だと少し厳しい部分もあると思います。特に、この受託が結構伸びてきているということが一つの明るい方向だと思っていますので、この受託案件を確保しながら、少し資金的な余裕を生んでいくということが考えられたらいいと思いました。

【JAXA(中村)】 ありがとうございます。

【赤松臨時委員】 加えてもう一つ、去年の評価の中で、もう少し戦略的に活動・運営を考えていくというご意見があったかと思いますが、特に一般管理費のほうではなく、研究開発費のほうについて、そのような戦略性を持った、例えば資金の配分や活動内容の検討等を考えられていますでしょうか。

【JAXA(中村)】 基本的には運営費交付金を予算として国にお願いをするときに、あるいは補助金等をお願いするときに、そのような点を考えて要求をしています。国からもその点を念頭に金額を決めていただいていると理解しております。その上で、JAXAの中では経営推進部を中心に、理事長の意向の下、プロジェクトに配算するということを決めておりまして、経営全体で取り組むというところでございます。

【赤松臨時委員】 そのような意味では、研究開発のめりはりを今後付けていかざるを得ない時代になってくるかと思います。適切に戦略を持ってやることによって成果を最大化していくということも検討しなければならないのではないかと思っていますので、その観点での計画検討とご提示をいただけるとありがたいなと思っております。

【JAXA(石井)】 すみません、経営推進部担当の石井のほうからも一言触れます。予算と運営費交付金をどううまく戦略的に使っていくかという点は大きな課題でございますが、それだけにとどまらず、JAXAの中ではリスクが生じた場合に対する資金の準備等工夫は行っているところでございます。評価の中にその工夫をどのように表現したらいいかという点は、今年度については既に評価書を出させていただいておりますので、来年度以降考えさせていただきたいと思います。

【赤松臨時委員】 そうですね、ありがとうございます。最後に1点、非常にシンプルな質問ですが、今年の各研究項目の予算と決算のずれが大きいようですが、これの理由は何でしょうか。

【JAXA(石井)】 代表して私石井のほうから申し上げます。大きな理由は補助金、補正予算が年度の後半に付いて、それらの予算についてその繰り越しが生じたところが一番大きな理由になってございます。現額の予算が使い切れないという要素は非常に少なくて、補正で付いた予算がある意味計画通り、次年度に使うことで目標が達成されるということで、繰り越しを行っておりますので、その要素が大きいものでございます。

【赤松臨時委員】 なるほど。去年はその点が大きかったということですね。

【JAXA(石井)】 はい。

【赤松臨時委員】 分かりました。ありがとうございました。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 ほかよろしいでしょうか。

【小塚専門委員】 昨年10月に知的財産課を新規でつくったということで、今までなかったのかというのに大変驚いたのですが、これまでどのように対応していたのか教えていただければというのが1点です。
 また、2点目として、おそらくJAXAの運営について、人件費の枠が課せられている点は非常に大変ご苦労されていることは非常によく分かります。例えば、非経常収入で、何人かプロパーを採用というお話だったですが、このような非経常収入について、繰り越しするというシステムはないのでしょうか。よろしくお願いします。

【JAXA(石井)】 すみません。最初の知的財産課ができる前にどうであったかという点をお答えいたします。自己収入についてどの程度繰り越しが継続可能かという点は少し私は分からないので、分かる方がいたら補足をお願いしたいと思います。

【JAXA(中村)】 補足は私のほうからご説明いたします。

【JAXA(石井)】 ありがとうございます。知的財産課のできる前の状態について、新事業促進部に、もちろん知財の管理等の仕事自体はございました。ただ、やはりJAXAとしてその知財の考え方をしっかりと持ち、職員に対して教育していく、また、新しいプロジェクトを立ち上げるときには、そのポリシーに照らしてこの知財戦略はどのようにやっていくかというのを一緒に考えるというような取組は定義できておりませんでした。これらの取組を改めて定義して強化したというのが実態でございます。

【小塚専門委員】 分かりました。どうもありがとうございます。多分、今後に出されるかと思うので、このような部署があることは大変有意義だと思います。

【JAXA(中村)】 後半のほうのご質問でございます。自己収入、あるいは運営費交付金についても同様ですが、これらを翌年度に繰り越すことはできるのかという問いについては、JAXAのみならず、独立行政法人、国立研究開発法人の運営そのものの基本的な考え方の中で多くが定められており、JAXAだけで自由にできるというものはほとんどない状態でございます。原則的には、単年度で必要なものは予算を付けるということが国の基本的な会計法の方針ですので、その点は大きくは曲げられない状況です。しかしながら、独立行政法人として、幾つかの点では自由度があります。プロジェクト等は数年かかるような長いプロジェクトが多いため、そのような事業については、複数年度で使っていいという制度はございます。ただ、先ほども出てきました人件費のようなものについては単年度と定められておりますので、基本的には単年度で実施をして、余ったものについては返すということになります。なお、こちらについても特例があり、経営努力があるものについては、半分までは国が認めれば繰り越せるという制度もあります。そのような国で認められている制度に入るものについては、積極的に活用していきたいと考えてございます。
 どの程度使えるかというのを含めて、JAXAとしても勉強しながら進めているところでございます。
 以上です。

【小塚専門委員】 どうもありがとうございます。国で実施するものは基本的に単年度の決算なので、仕様がない部分もあるとは思いますが、非経常収入で何十人も雇用をして、もし受託がなくなったとき、それではその人たちの人件費はどのようにして捻出するか、ということが一番頭の痛いところではないかと思います。
 また、制度も、少しでも、フレキシブルに運用できるように様々働き掛けていただければと思います。どうもありがとうございました。

【渡邉課長補佐】 それではもし追加でご質問ありましたら、メール等でお願いできればと思います。
 それでは以上をもって総務省と文科省共通の評価項目は終了となります。
 こちらで総務省の梅比良委員と小塚委員にはご退出いただくということになります。大変長時間のご対応どうもありがとうございました。また進行の不手際で終わる時間が当初より遅くなりまして大変申し訳ありませんでした。引き続き評価の部会等あると思いますが、ご協力よろしくお願いいたします。
 加えて、文科省の委員の方は大変遅くなってしまって申し訳ありません。残りあと一つ項目がありますが、可能でしたら最後までお付き合いいただけますとありがたいです。
 それでは最後の項目として、ローマ数字3.3.5 航空科学技術についてJAXAからご説明をお願いいたします。

【JAXA(張替)】 JAXAの張替が航空技術部門を担当していますので、ご報告差し上げます。ページ数はC-1ページになります。評価をSとしております。Sの大きな理由として、4つの顕著な成果が2019年度に得られたということです。
 その1つがC-1ページの中長期計画に書かれております、社会からの要請に答える研究開発について、航空機事故の防止や気象影響の低減というような技術を使い、国土交通省からの要請を受けて、羽田空港の容量拡大に貢献したこと、また、災害対応航空技術を使い、警察庁の要請による警戒警備対応にD-NETと呼ばれるプラットフォームを拡張したこと、さらに、次世代を切り開く先進技術の研究開発について、国際共同開発になるであろう静粛超音速機に関し、国内の民間事業者が参入を図れるようJAXAが持っている優位技術を使って、国際標準策定に貢献したこと、最後に、基盤技術の研究開発について、オープンイノベーションを推進する仕組み等も活用し、非航空分野の民間事業者の力を引き出す研究成果を得た結果、非航空分野の民間事業者が航空分野に参画していただけることになったこと、これら4つを主に顕著な成果として、自己評価Sとしております。
 それでは補足資料を使いまして、ご説明をいたします。まずC-5ページをご覧ください。既に皆さまご存じだと思いますが、D-NETは、2015年から消防庁が実運用をしている災害時のヘリコプターの運行管理システムでございます。このシステム自体は、既に技術移転が行われており、消防庁は独自に運用しておられます。アウトカムとしては、昨年度の台風19号の災害救援で使われ、消防庁より人命の救助および被害の軽減に多大なる貢献をしたということで、感謝状を頂きました。プラットフォームの優秀性、価値が継続的に認められているということがご理解いただけるのではないかと思います。
そして2019……。

【渡邉課長補佐】 JAXAの音声が途切れているようですが。JAXAのほう聞こえますでしょうか。

【JAXA(張替)】 私の声どの辺りで途切れましたでしょうか。

【渡邉課長補佐】 10秒ぐらい前で切れました。

【JAXA(張替)】 そうですか。失礼しました。それでは、定常的な価値を得られているということで、2019年度は、警備・警戒の支援強化というところで大きな進展がございました。こちらについて、どのような行動をしたかということを、簡単に飛行計画調整機能・航空機監視機能と書いてございます。評価結果として、従来に比べて56%短縮できたこととさらっと書いてございますが、こちらは他機関の利用が広がったというだけではなく、災害時と警備・警戒とでは運用管理側の目的が全く違っております。警備・警戒においては基本的には不審な航空機が入ってこないかどうかということをチェックすることが重要となってきます。計画、調整機能は、事前に登録された航空機というのがこのD-NET上にあるか、また、航空機監視機能は、登録されていない航空機が入ったときに、一目で分かるという機能ということです。この2つの機能によって、災害だけでなく、警備・警戒といった分野でも使えるということです。最初G20大阪サミットで消防庁の要請を受けて使用したときに消防庁から感謝状をいただいておりますが、警察庁から非常に使えるということで、即位礼の行事の警備・警戒への技術協力もさせていただいた結果、D-NETがこのような警備・警戒でのいわゆるデジタルプラットフォームとしても使えるということで、警察庁からは2021年に予算要求して導入するというお言葉を頂いています。
 続いて、2番目になりますが、C-6ページにつきまして、国土交通省より羽田空港の容量を拡大させたいということです。空港容量を制限している要因はご承知のように航空機の維持制度と後方乱気流になります。従来の離着陸間隔の場合、約2.5分空けなければいけないところ、国際基準の中でRECATというものがあり、この感覚を20%短縮する規格ができております。このRECATを航空局は導入を検討していたのですが、羽田空港は、海上の空港であるために、後方乱気流が本当にこの2分で減衰するかといった観点で、安定性に対して確証が持てないということでした。その意見を受け、我々のほうで、そのエビデンスを作るということとなり、世界で初めて海上での後方乱気流の減衰特性の解明を行いました。この実証については、羽田空港で1年と1カ月間、1万3,000機の航空機の後方乱気流を観測して、そのデータベースに基づいてモデル化を行ったものです。JAXAモデルと書いてある部分を見ていただくと分かりますように、生成からの経過時間について、やはり海上のほうが、後方乱気流が減衰するのに長く時間がかかるということが分かります。
 このモデルを使って航空機のダイナミックスで安全か安全でないかを検証したものが右下の図であり、正規化してあります。1以下が安全ということになりますが、欧米で得られたデータのほうが多い陸上に比べると、やはり海上のほうは安全率が若干落ちるということで、国土交通省様の懸念は当然ではあるものの、しかしながら、数値の上では1以下であるということをエビデンスとして出したということで、RECATの導入に踏み切りました。アウトカムについて、2020年3月からこのRECATを導入しておりますが、これは世界で初めてです。オリンピックに向けてということで導入をしたということです。
 続きまして、3番目です。静粛超音速機の国際騒音基準の策定への貢献ということです。巡航中と離着陸の騒音が超音速機の実用化を阻害しておりますが、それぞれの騒音のモデル化といったことについてJAXAが実験と解析を行いました。このモデルを使って、空港騒音の予測では、今までは音速機の騒音の伝播モデルしかなかったところ、超音速機のエンジンの騒音の伝播モデルを選定し、ICAOに提案した結果、JAXA案が採用されております陸上で衝撃波が起きたときの問題になるソニックブームについても、大気乱流の影響を考慮したモデルを作り、ICAOに提供した結果、妥当性が確認されるところまでいきました。その結果として、期待されるアウトカムでとしては、米国では既に超音速旅客機の開発が始まっています。その中でFAAは、陸上のソニックブームについては少し諦めているようですが、まずは離着陸ができるようにということで、空港騒音の基準を2020年の4月に公表いたしました。この基準がJAXA提案のICAOのモデルに基づいて作られているということで、国際的にJAXAの騒音予測の技術レベルの高さが証明できたということでございます。
 続いて、最後4番目になります。オープンイノベーションによって、世界最軽量・最速・低価格の複合材、自動修理ロボットを開発したというものです。複合材の修理について、複合材を使っている航空機はますます増えているところですが、修理の整備士について、要求された技量に対し認知が足りていません。そこで、自動修理のロボットを開発しようということで、自動車の生産設備、機械加工をやっている新明工業というメーカーの機械加工の技術と、我々の熱解析、さらに共同データの試験データを組み合わせることによって、新しい切削方法を開発することができました。欧州では、削るときに温度を冷やすための水をかけるウォータージェットを使っておりますが、その場合素材が水分を吸ってしまってよくないので、われわれが開発したものはこれを水なしでおこなうドライ切削という方法になります。競合機のフランスのものに比べると重量、加工時間及び価格全てについて優位性を持っているということで、JAXAの技術と自動車の生産設備の会社の技術を合わせることによって、このようなものができました。メーカーでは、2021年の市場投入にめどが立ったということで、既に大手の航空メーカーから情報提供を受けているようです。新たにそのような自動車のメーカーが航空産業に参入することを実現できたということで、これら4つの顕著な成果でもって、Sという評価にしております。
 ご説明は以上になります。

【渡邉課長補佐】 ただ今の説明についてご質問等ございますでしょうか。
 赤松先生お願いします。赤松先生聞こえますでしょうか。

【赤松臨時委員】 この資料のまとめ方について、おそらく昨年ご指摘差し上げたことに対して、対応いただいていると思いますが、課題があってアウトプットがあって、アウトカムがあるというこのまとめ方は非常に分かりやすくていいと思います。ぜひこのような形式でほかの項目も整理をいただけると評価するほうが分かりやすいと思います。
 ただ1点だけ、今年の目標値がどのような形になっていて、その目標値に対してこうだったというところのご提示がまだ少し足りていない部分もあると思いますので、ぜひその辺りも次回加えていただけるとありがたいなと思います。
 以上です。

【JAXA(張替)】 ありがとうございました。年度計画について、後半部に書いてございますが、来年度はもう少し工夫したいと思います。

【赤松臨時委員】 ありがとうございます。

【渡邉課長補佐】 ほかはよろしいでしょうか。
 それでは以上で本日のヒアリングは全て終了となりました。最後に簡単に事務連絡をさせていただきます。
 冒頭にもご説明しましたが、本日ヒアリングを踏まえ、ご意見記入シートにご記入いただき、8月11日火曜日の10時までにご提出をお願いいたします。
 また、評価を行う上で追加のご質問や追加の資料などのご依頼がございましたら、こちら締切は8月5日とさせていただいていますので、それまでに事務局にご連絡をお願いいたします。
 また、次回の文部科学省のJAXA部会は、8月21日金曜日の13時からオンラインで開催をいたしますので、ご出席よろしくお願いいたします。
 平野委員と白坂委員はご欠席とお伺いしております。
 また、そのJAXA部会のオンライン開催についてオンライン開催が可能となるように、運営規則を改訂するということで、担当の谷口から書面審議のご連絡をさせていただいております。まだご返信いただいていないという委員の方々は、お手数ですがもしご意見ないという場合についてもその旨メールでご返信をお願いいたします。
 以上で本日のJAXAヒアリングを閉会いたします。事務局の不手際でかなり遅くなっていまして申し訳ございませんでした。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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