平成30年度JAXA業務実績ヒアリング(第2回) 議事録

1.日時

令和元年7月5日(金曜日) 13時00分~18時00分

2.場所

中央合同庁舎4号館12階1214特別会議室

3.議題

  1. 宇宙航空研究開発機構の平成30年度における業務実績評価の進め方について
  2. 宇宙航空研究開発機構からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

【文部科学省JAXA部会】
委員  古城 佳子
委員  髙橋 德行
臨時委員 赤松 幸生
臨時委員 中村 昭子

【内閣府JAXA分科会】
分科会長代理 田辺 国昭

【総務省JAXA部会】
部会長  梅比良 正弘
専門委員 入澤 雄太
専門委員 生越 由美
専門委員 小塚 荘一郎
専門委員 末松 憲治
専門委員 藤本 正代

【経済産業省JAXA部会】
部会長  後藤 高志
臨時委員 多屋 淑子

文部科学省

【文部科学省】
宇宙開発利用課課長  藤吉 尚之
宇宙開発利用課企画官 原田 大地
宇宙開発利用課専門職 渡邉 真人

【その他省庁】
内閣府宇宙開発推進戦略事務局参事官補佐 立松 慎也
総務省国際戦略局宇宙通信政策課課長   村上 聡
総務省国際戦略局宇宙通信政策課課長補佐 山﨑 浩史
経済産業省製造産業局宇宙産業室長 浅井 洋介

【説明者】
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
副理事長 山本 静夫
理事  布野 泰弘
理事  今井 良一
理事  若田 光一
理事  國中 均
理事  佐野 久
理事  中村 雅人
理事  鈴木 和弘
理事補佐 舘 和夫
理事補佐 中川 敬三

5.議事録

【渡邉専門職】  それでは、定刻となりましたので、第2回平成30年度JAXA業務実績ヒアリングを開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本年は、JAXAを共管する4府省(内閣府、総務省、文科省、経産省)の合同でのヒアリングを開催させていただいております。一昨日7月3日と本日7月5日に同じ内容のヒアリングを実施しておりまして、委員の皆様には御都合のいい方に出席していただくということとしております。本日がその2日目の日程ということになります。
 本日の進行は、文科省宇宙開発利用課の渡邉が務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 まず初めに、事務局を代表いたしまして、文科省宇宙開発利用課長の藤吉より御挨拶申し上げます。

【藤吉宇宙開発利用課長】  こんにちは。文部科学省の藤吉でございます。本日はお忙しい中、皆様方におかれましては、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 今日は、昨年度から始まっておりますJAXAの第4期の中長期目標期間の初年度の評価を頂くことになります。先ほどありましたように、今回業務改革の一環として4府省合同でのヒアリングとさせていただきまして、例年と違って勝手が違うかもしれませんが、どうぞよろしくお願いいたします。皆様方の多様な意見を基に評価をまとめていきたいと思っておりますので、本日は長丁場になりますが、忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【渡邉専門職】  それでは初めに、資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第をご覧ください。配布資料と書いておりますところの資料1、それから、資料2、資料4-1、4-2については紙でお配りしています。資料3については、こちらの青のプラスチックのバインダーでお配りしています。参考資料1から参考資料4-3については、こちらの緑又は青の紙の冊子でお配りしております。そのほか、机上資料としまして、机上資料1から3については紙で御用意させていただいております。
 資料については以上です。資料の不足などがある場合は、事務局までお申し付けください。
 それでは、議事に入らせていただきます。議題1、宇宙航空研究開発機構の平成30年度における業務実績評価の進め方について、説明をいたします。
 本日の具体的な評価のプロセスについて、青のバインダーの冊子がJAXAの昨年度平成30年度の業務についての自己評価書になります。本日はこれに基づいてJAXAから御説明をしていただきます。委員の先生方には、JAXAの説明を聞いていただいた上で、机上配布資料2の記入シートに御意見を記入していただくということになります。
 続いて、評価の項目について、資料2をご覧ください。こちらが昨年度平成30年度から開始した第4期中長期計画目標の各事項ということになります。この事項に沿って各評定を付すということになっております。資料2の右側をご覧いただくと、府省ごとに担当する項目が決まっております。
 続いて、本日のアジェンダです。このカラーの4色で色分けをしているアジェンダをご覧ください。こちらが本日の進行表ということになります。先ほどご覧いただいた資料2の項目とは順番が前後しておりますが、本日は最初に4府省共通の項目を実施しまして、続いて3府省、そして、2省、最後は文科省のみの項目ということになります。そのため、経産省、内閣府、総務省の委員におかれましては、各担当の項目が終わったところで御退席をいただくということになります。
 本日ヒアリングが終わりましたら、ヒアリング中に記入をし切れなかった御意見も含めまして、先ほどの机上配布資料2の御意見記入シートに記入をいただいた上で各府省の事務局に御提出をいただくということになります。机上配布資料1をご覧ください。府省ごとに締め切りは異なりますが、こちらに提出期限を書かせていただいております。
 なお、御意見記入シートにつきましては、本日紙でお配りしておりますが、提出いただく際は、別途、事務局の方からお送りしております電子ファイルの方に記入をいただいて、メールなどで御提出いただくということでも構いません。
 また、本日のヒアリングを終えまして、評価を行う上で更に必要な御質問や追加で必要な資料がございましたら、こちらも机上配布資料1に記載しております締め切りまでに各事務局まで御連絡をお願いいたします。
 続いて、御意見記入シートの書き方についてです。こちら、評価項目の事項ごとに並べておりますが、基本的には本日説明いただきますJAXAの自己評価の評定、具体的にはSABCDということで付けておりますが、この評定が適当でないとお考えの際には、どういう評定にすべきかというものと併せて理由とともに記載いただくようにお願いいたします。なお、評価内容についてSABCDの評定については変えなくてもよいという場合でも、コメントなどがございましたら、御記入をいただければと思います。特に御意見がないという事項については、空欄のままにしておいていただいて構いません。
 最後に、本日のヒアリングの後も含めました評価の全体の流れについて御説明をいたします。ポンチ絵になっております資料1の3ページ目をご覧ください。表になっておりまして、本日が一番右側のJAXAからのヒアリングに当たります。ヒアリングを受けて、各委員から意見を御提出いただきます。その後、御提出いただいた御意見を事務局内で集約し、次回は個別に各府省で開催されます分科会・部会において提示を行いまして、分科会・部会の御意見として取りまとめます。次に、一部の省庁、具体的には文科省、総務省では審議会を開催いたしまして、審議会としての御意見を決定します。
 委員の先生方に関連する部分はここまでとなりまして、その後、4府省で協議をして、最終的には4府省の主務大臣としての統一した1つの評価を作成するということになります。
 評価の進め方については以上となります。御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、ヒアリングの方に入らせていただきます。進行は、先ほどの4色のアジェンダ資料にあるとおりです。JAXAから説明いただく資料がこの青のバインダーの資料となります。併せて、御意見を記入いただく机上配布資料2の御意見記入シート、この3つをお手元に用意していただいてお聞きいただければと思います。
 それでは、個別の評価項目に入る前に、最初に評価全体の総括についてJAXAから御説明を頂きます。それでは、説明をお願いいたします。

【JAXA(中村)】  JAXAで評価を担当しております、理事の中村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。説明は座ってさせていただきたいと思います。
 本日はお時間を頂きましてありがとうございます。これからJAXAの昨年度の業務の実績を御報告申し上げたいと思います。今回御報告を申し上げたものをもって評価をしていただきまして、先生方が評価していただいたコメントを踏まえて、また来年以降の事業に役立てていきたいと考えてございますので、コメント等よろしくお願いいたします。それをもって励みにしてまた仕事をしたいと考えてございます。
 評価でございますが、最初に今、事務局の方でお配りいただいたグリーンのファイルの5というプルが付いてあるところをめくっていただければと思います。そうしますと、中長期目標が出てまいります。これは各府省大臣が定めた目標でございまして、JAXAはこれに基づいて事業を行うということになっております。
 1ページ開いていただきますと、目次がございます。この中で、中長期目標の中のローマ数字3 .3から、何をプロジェクトとして実施するのかということが書かれております。この基本目標においては、評価をすべき項目も書かれておりますが、この評価すべき項目がローマ数字3 .3.1、衛星測位から個別のプロジェクトがずっと書かれておりまして、これについて事業をやれと言われており、さらにこの項目について評価せよということになってございます。
 したがいまして、これから御説明いたしますが、JAXAとしましては、この中長期目標に沿った形で何をやったかということを整理いたしまして御説明をさせていただくものでございます。さらに、評価をするに当たっては自分たちで自己評価をお示しするということになっておりますので、自己評価をした評定もお示しさせていただきたいと思います。
 青い方のファイルに戻っていただければと思います。この青いファイルに私どもの今年の実績について書かせていただきました。最初を開いていただきますと、目次というページが出てまいります。この目次にありますように、ローマ数字3 の下に、3、宇宙政策の目標達成に向けた宇宙プロジェクトの実施というところから個別のプロジェクトが書かれておりまして、その次に、4ということで宇宙政策の目標達成に向けた分野横断的な研究開発等の取組が書かれてございます。さらに、航空科学技術、宇宙航空政策の目標達成を支えるための取組、情報収集衛星に係る政府からの受託、さらに一般的な業務の運営に関する事項が幾つか並んでおります。業務運営の改善・効率化、財務内容の改善に関する事項、その他業務運営に関する重要事項となっています。これは先ほどお示しいたしました中長期目標と同じ目次になってございます。
 更に1ページお開きいただきたいと思います。資料では下のところに1というふうに目次で書いてございます。ここに全体像を概括的に書かせていただきました。「国民の皆様へ」というタイトルで書いてございますが、最近の新しい状況を踏まえて事業を進めてきたということを書かせていただいております。ここについては、私どもの中長期目標はプロジェクトごとになっていますが、政府に決めていただいております政策目標が大くくりで4つになっております。1つが安全保障の確立及び安全・安心な社会の実現、2つ目が(2)にあります宇宙利用拡大と産業振興、3番目が下の方の(3)にありますように、世界最高水準の成果創出と国際的プレゼンスの維持・向上、4番目が航空産業の振興・国際競争力の強化という項目でございます。ここの章におきましては、個々のプロジェクトを通じて、この目標にどんなふうにして貢献できたのかというような整理で書かせていただいてございます。個別の項目につきましては、後ほど御説明差し上げたいと思いますので、ここでは端折らせていただきたいと思います。ただ、どんなものが内容として出てくるかということに関しましては、3ページ、4ページの表に出てくるものがこの中に書かれているというふうに御理解いただければと思います。例えば2018年4月からの事業を評価していただくわけですが、特筆すべきものとして、5月の段階で、宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)と呼んでいる、宇宙産業の事業の新たな創出を支援するためのプロジェクトを始めましたということや、同じ月に民間事業者にISS(国際宇宙ステーション)の日本の実験棟「きぼう」の一部民間への事業の開放を行いましたということを書かせていただいております。以下、それぞれの月にこんなことをやりましたということで、重立ったトピックについては、ここに書かれているものを挙げてございます。
 その次の5ページをお開きいただきたいと思います。このような事業を1年間してまいったわけでございます。先ほど御紹介ありましたように、JAXAは第4期の中長期目標を昨年大臣から頂きまして、その1年目になります。したがいまして、今年度はその1年目の評価ということになってございます。今回新たに4月から山川理事長をいただきまして、その山川理事長による理事長評価も行いましてこの報告書を取りまとめましたということが書かれてございます。
 どのように評定を付けたかということは、6ページに書かれてございます。これは総務大臣の決定にあります指針がありまして、その指針と同じ基準を使って評価をさせていただきました。表にありますように、Bが、着実に業務運営がなされている、あるいは所期の目標を達成しているという内容でございまして、このBが通常のものというふうに理解をしてございます。C、Dになりますと、それに対して、一層の工夫、改善が期待される、あるいは特段の工夫、改善が求められる、あるいは業務の廃止を含めた抜本的な改善が求められるということで、CあるいはDという評定となると、目標が達成できなかったというようなものと理解しております。
 それから、Bの上はAとSでございます。Aにつきましては、所期の目標を上回る成果が得られた、あるいは顕著な成果が出たというようなことに対してAを付けており、さらにAを超えて特に顕著な成果が出た、あるいは所期の目標を量的・質的に上回る顕著な成果が得られたというような場合にSを付けさせていただいてございます。後ほど事業の内容とその評価を御説明するときには、この基準に基づいてSやA、Bなどを付けたというような御説明をさせていただきたいと思います。
 具体的な総括を次の7ページに書かせていただきました。先ほど御説明いたしました評価すべき項目ごとに分けてございまして、それぞれの項目ごとに、例えば衛星測位については、今回ですとBというふうに自己評価を付けました。以下、それぞれの項目ごとに私どもが自己評価を付けたSやA、Bなどを書かせていただいてございます。
 それ以外に、昨年度までと違いまして事業のまとまりごとの評価もしてくださいというふうに言われてございます。具体的には、ローマ数字3 .3ですとローマ数字3 .3.1からローマ数字3 .3.11までありますが、この個別のプロジェクトを全部まとめて、事業のまとまりとしてはローマ数字3 .3、宇宙政策の目標達成に向けた宇宙プロジェクトの実施ということでございますので、3.1から3.11全体を取りまとめた形で評価をしたものが、少しグレーになっているローマ数字3 .3という1行になります。同じように、4.1、4.2という項目が1つの事業のまとまりになってございますので、それ全体としてローマ数字3 .4、宇宙政策の目標達成に向けた分野横断的な研究開発等の取組全般として見たときにどうかというようなことで評価を付けさせていただきました。同じように、ローマ数字3 .5、ローマ数字3 .6、ローマ数字3 .7という項目が事業のまとまりとして評価を付けさせていただいたものでございます。この評価につきましては、個別のプロジェクトの評価をするだけではなくて、まとまりの評価をしたという意味で、昨年までと比べて評価の項目が1つ増えているという内容になってございます。
 それから、その次のページから、どんなふうに資料をまとめたかということを書かせていただきました。最初に、中長期計画に何が書いてあるのかということで、計画を転載いたしました。その上で、各大臣から、この項目についてはどんな評価軸、視点で、指標で評価をすべきかというように指示を頂いていますので、それを転記いたしました。併せて、その次には、参考指標がありますので、それを書かせていただきましたし、特記事項も書かせていただいております。
 その次のページには、私どもの事業は、その年その年の単発というよりは長期間のプロジェクトが多いものですから、全体の中でいつ頃から始まっていつ頃終わりそうなものになるかについて線表を描かせていただいて、その中で今年はどの位置付けにあるのかを書いてございます。その上で、中長期計画の項目番号ごとに、私ども自己評価として評定をどう付けたかと、その根拠は何かというふうに書かせていただきました。さらにその後で、図、写真など資料を使って、その補足資料を載せておりますので、評定の根拠の説明とともに、その後ろのページにあります補足のグラフや写真を見ていただくと分かりやすいだろうというふうな項目になっております。
 それから、その次に、財務・人員に関する情報を載せてございます。ここで1点誤植がございましたので、資料の訂正について御案内させていただきたいと思います。本日事務局からお配りしていただいた資料の後ろの方に資料4-1という形でこのような資料が配られております。誠に恥ずかしい話なのですが、資料は経常利益を記載しなさいと書いてあるにもかかわらず、今ここの資料には経常利益ではなくて経常収益の数字を載せております。その隣の欄の経常利益の方を載せなければいけなかったのですが、載せる欄を間違えてしまい申し訳ありません。数字の訂正をお願いできればと思います。
 それから、また青い方に戻っていただきまして、今の財務関係のデータの下に、昨年度の業務実績評価の際に各委員から御指摘された点が幾つもありました。この御指摘頂いたものについてどのように私どもが取り組んできたのかということについてもページを割いて載せてございますので、そちらも御参考にしていただければと思います。
 最後に、12ページでございます。私どもの政策そのものがどういう位置付けになっているのかを図表にしたものでございます。ローマ数字3 .3に個別のプロジェクトがございます。これを実施しており、また、このプロジェクトを実現するために、下にありますローマ数字3 .4のような分野横断的な研究開発に取り組んでございます。さらに、左側にありますように、これらの活動を支えるための取組とし、国際協力や理解増進等がございます。こういうものを通じまして、政策目標である安全保障の確保、安全・安心な社会の実現、宇宙利用拡大・産業振興、宇宙科学・探査分野での国際的プレゼンスに貢献をしているというものが全体像でございます。一番下のところのローマ数字4 、ローマ数字5 、ローマ数字6 にありますように、これを支えるために組織として着実な事務運営をしているというような内容になってございます。これから御説明するのは、このような体系の下のものでございます。
 それでは、概要の説明をここで終わらせていただきまして、個別のプロジェクトの説明に移らせていただければと思います。
 以上です。

【渡邉専門職】  ありがとうございました。それでは、個別の評価項目に入っていきます。最初に、ローマ数字3 .3.9、国際宇宙ステーションについて、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(若田)】  こんにちは。JAXAの理事、有人宇宙技術、国際宇宙探査、宇宙探査イノベーションハブを担当しております若田でございます。ローマ数字3 .3.9の国際宇宙ステーションについてまず説明をさせていただきます。説明は座らせていただきます。
 お手元の資料のローマ数字3 .3.9、ページ数がA-114ページ、115ページを中心に説明をさせていただきたいと思います。国際宇宙ステーションに関しましては、JAXA理事長評価、自己評価としましてAとさせていただいております。その評定理由、根拠について、国、そして、宇宙機関による活動領域開拓の舞台が現時点で月へとシフトしていっているところですが、地球低軌道に関しましては、国による開拓のフェーズから利用・商業活動拡大のフェーズへと今、移行中でございます。この変革の中で、ISSに係る取組を通しまして、これから述べさせていただきますような成果が得られたと評価しております。
 まずその1つ目ですが、地球低軌道利用の拡大と事業化に向けた取組でございます。昨年度新たに、超小型衛星の放出事業を行う日本の企業2社を選定しまして、半年強ぐらいの期間で既に10機を超える超小型衛星の放出の受注を獲得しています。さらに、「きぼう」の船外ポート利用事業を行う日本の企業を選定いたしまして事業が開始されており、「きぼう」利用初の民間商業活動が開始され、歴史的な一歩が踏み出されたという状況です。それから、「きぼう」利用のプロセス改善、仕組み作り、及び、民間事業者のニーズに柔軟に対応するということで、民間の自己資金による活動を大幅に増加しております。前年度比50%増です。さらに、ロボットアームを使った、「きぼう」における初の衛星技術の実証、加えて、宇宙科学分野、教育、宇宙食と、研究開発にとらわれない多様な利用を、ISSパートナーの中で最も効率よく創出していると考えております。
 その具体例でございますが、(1)としまして、「きぼう」利用事業初の民間自己資金による商業活動としての自立化、及び、民間等の自己資金による利用の大幅増加が挙げられます。1ポツ目ですが、既に229機の小型衛星の放出を行っており、利用ニーズが多い超小型の放出事業を、Space BD様、三井物産様という2社に開放しています。それから、事業開始から半年強で既に10機の契約を受注しておりまして、これはやはり民間企業ならではのフットワークの軽さやネットワークで商業利用の拡大が展開・進展していると考えております。それから、JAXAが単純に事業を民間企業に引き渡すというものではなくて、プロセスを標準化した上で、経験豊富なJAXAの職員が技術指導を行って、ノウハウ等を企業の方へ移転しているという状況です。
 その次のポツですが、年度当初予定はしておりませんでした船外ポート利用につきましても、その事業についても、昨年度の中でSpace BD株式会社様に開放しているという状況です。
 それから、有償利用による取組ですが、これはISSパートナーの中で最も先行していると言えます。契約の件数は前年比50%の増加で、民間資金等による利用は着実に増加しているという状況です。
 (2)の方に参りまして、軌道上のプラットフォームである「きぼう」ならではの多様な利用をISSパートナーの中で最も効率よく創出しているという成果でございます。1つ目はJAXAが開発中の技術試験衛星ETS-9の衛星バス技術の技術要素である高排熱技術を「きぼう」のロボットアームを使った実験環境で先行実証し、開発のリスク低減に貢献しているという状況です。それから、2つ目が、「きぼう」の船外にあります全天X線監視装置MAXIが、年間最多5個のブラックホールを発見しており、例えば『Nature』では3件など、評価の高い科学誌への論文掲載にMAXIの観測結果が貢献しているという状況です。
 それから、4つ目のポツですが、宇宙イノベーションパートナーシップ事業共創(J-SPARC)の地球低軌道の部分との連携で、「きぼう」の知見や、有人宇宙技術を活用して地上社会にも貢献する成果を早期に創出しております。具体的には、宇宙飛行士の訓練技術を活用した教育事業や、宇宙と防災分野の食に関する事業のコンセプト共創などがあります。
 それから、ISSパートナーの中で最も効率よく利用を創出したと申しておりますが、A-120ページのグラフをご覧いただきますと、ISS各国の宇宙機関がサイエンス、技術のどういう分野で利用を進めているかというパイチャートが上の方にございます。そして、左下のオレンジの折れ線グラフが利用効率を示しております。この利用効率というものは、宇宙ステーションで使っている電力や、実験などをするクルータイムをリソースと呼び、利用テーマの総数をそのリソースで割ったときの数値になります。これは左下のグラフをご覧いただいてお分かりのように、JAXAがやはり世界各国に抜きん出ているという状況でございます。
 ページめくっていただきまして、115ページでございます。2ポツとして、ISS計画を通じた国際的プレゼンスの維持・向上に向けた取組における成果でございます。これは昨年11月にミッションが成功しておりますが、HTVの搭載小型回収カプセルの成功によって、有人宇宙機へつながる再突入技術、及び、自立的なサンプル回収能力を新たに獲得しました。これは地上でも注目されているライフサイエンス分野や、ロボット・AI技術分野においても日米の協力関係を強化しているということもございます。
 それから、SDGsアクションプラン2019の具体的な取組として位置付けられております超小型衛星の放出におきましては、アジア・アフリカ諸国等の超小型衛星の放出を成功させまして、SDGsへの具体的な貢献成果を創出するということで、国際的なプレゼンスを大きく向上させております。これらのISS計画における国際約束に基づく基幹的な役割を果たしていることを通じまして、次世代の国際宇宙探査計画、具体的には月近傍拠点Gateway計画ですが、そちらの立ち上げにアジア唯一のパートナーとして参加するということを可能にしたということも大きな成果と考えております。
 以下、具体的な成果の内容ですが、(1)としまして、有人宇宙機へつながる技術(再突入技術)の獲得とHTV7号機などによるISSの安定運用への貢献ということです。HTV7号機の小型回収カプセルで、米国の有人宇宙機と同等の、世界最高性能の超軽量の熱防護技術や、有人宇宙機に要求されるような再突入時の加速度要求を満たす日本初めての揚力誘導制御回収技術を獲得しております。これらの獲得は有人宇宙機の開発実現に向けて大きな技術的な進展と考えております。加えて、このミッションでは、高品質のたんぱく質の結晶のサンプルなどを日本の近海で回収することで、利用の拡大につながる自立的な回収手段も獲得しております。
 さらに、HTV7号機のミッションを成功させて、ISS輸送船として唯一の100%の成功を日本の宇宙機が維持しているという状況です。
 (2)の方に参りまして、ISSに係る日米の政府間協力の枠組みOP3による日米協力関係強化への貢献という成果でございます。1ポツが、実験環境が異なる日米の小動物(マウス)ミッションでのサンプル交換による利用成果として、軌道上では宇宙飛行士が長期に宇宙に滞在することによって脳内圧の上昇による視力の低下のような現象が起きておりますが、長期宇宙滞在における眼球組織障害の軽減に対する人工重力負荷の有効性の解明という論文が日米共同で発表されております。このOP3の具体的な成果を示して、日米の協力関係強化にも貢献しております。
 それから、2ポツ目ですが、「きぼう」の船内でドローンミッションを通じまして、地上でも重要性が増しているロボット・AI技術の向上や、教育・人材育成も含めた日米協力関係の深化等の枠組みも作っております。
 (3)と致しまして、「きぼう」を生かしましたSDGsへの貢献ということです。SDGsアクションプラン2019におきまして、創薬研究への貢献や、地上の医学・医療技術への応用、それから、国連宇宙部や大学と連携した超小型衛星の放出といったものが具体的な取組として位置付けられております。
 超小型衛星放出に関しましては、宇宙にアクセスがしにくい、宇宙利用経験の少ない途上国に対して技術指導などを行ってフォローアップをしております。国連との共同でのKiboCUBEの第1回選定により、ケニアが選定されており、選定から約1年半でその国初めての衛星を放出しております。国内の大学と協力体制を最大限に生かしまして、ブータン、フィリピン、マレーシア、コスタリカといった国々の衛星放出を実現しているという状況でございます。なお、ブータンとコスタリカについては、同国初の衛星となっております。
 国際宇宙ステーションに関する説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  それでは、ただいまの説明に対して御質問等ございましたら、挙手をお願いいたします。
 それでは、お願いいたします。

【梅比良部会長】  説明どうもありがとうございました。小型衛星の放出事業を民間の方に開放してどんどんアクセラレートしていこうということは非常に結構な取組だと思うのですが、具体的にどういうふうな部分を民間事業にお願いしているのか、もう少し説明いただければと思います。

【JAXA(若田)】  当然、小型衛星を放出するためには、宇宙ステーションでロボットアームを動かす等の運用といったものは、選定した会社の方からJAXAが委託を受けまして実際の運用を行いますが、そういった事業者の皆様が実際に顧客を獲得していただいて、衛星事業自体を行うということを民間にやっていただいているという状況でございます。

【梅比良部会長】  ということは、おそらく実際に利用される方がいて、商社といったら言い方が悪いのかもしれませんが、顧客を開拓して、幾ら幾らで業務を請け負って、それを今度逆にまたJAXAの方に委託するような、こういう仕組みですか。

【JAXA(若田)】  はい。例えば利用料金のようなものは事業者が実際に設定していただいて、それで顧客を獲得していただいています。しかし、実際に宇宙ステーションを運用するために我々も実費が必要でございますので、例えば小型衛星を打ち上げるときのコストや、つくばにある管制室の運用の実費等については、事業者からJAXAが受託したものとして受け入れるという形になっております。

【梅比良部会長】  価格設定がなかなか難しくなろうかと思いますが、仕組みは分かりました。どうもありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかに御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に参らせていただきます。続いてローマ数字3 .3.10、国際有人宇宙探査について、御説明をお願いいたします。

【JAXA(若田)】  引き続きまして、説明させていただきます。お手元のローマ数字3 .3.10の資料のA-135ページに絵が出ておりますが、ご覧いただけますでしょうか。まずJAXAが検討を進めてきております、我が国独自の国際宇宙探査シナリオ全体を説明させていただいた上で、取組について報告させていただきたいと思います。
 このページをご覧いただきますと、一番下の方にて、現在、国際宇宙ステーション、地球低軌道の活用が進んでおりますが、地球低軌道の運用・利用の方は民営化を推進するという方向になってきております。そして、真ん中の黄色い部分が月面の部分でございます。宇宙基本計画にも示されております、これが深宇宙の補給技術、有人滞在技術、重力天体離着陸技術、重力天体の探査技術の4つの重要な技術について、そのうちのまず深宇宙補給技術及び有人滞在技術をもって主体的に月面及び月周回の拠点Gatewayに我々が参加していくための技術検討を進めております。
 そして、残りの重力天体離着陸技術、及び、重力天体の探査技術という重要な2つの技術を持続的に発展させるということで、まず2021年には、SLIMという小型月着陸実証機から始まり、その約2年後には、今度は月の極域探査といった形で持続的に確実に重要な技術を発展させていき、日本として月をしっかりやっていくというシナリオの下で技術開発・検討を進めています。そして、その先には、「はやぶさ」、「はやぶさ2」等を含めて我が国が獲得した技術を生かして、今度は火星の衛星からのサンプルリターンであるMMXを通して人類の活動領域の拡大に我が国が貢献していくといった全体のシナリオを描いております。
 2ページ戻っていただいて、A-133ページをご覧いただけますでしょうか。こういったシナリオの中で取り組んできております国際有人宇宙探査について説明をさせていただきます。自己評価はAを提案させていただいております。その理由・根拠でございますが、我が国の独自の宇宙探査に関するロードマップの実現に向けまして、米国が主導しております月近傍拠点、Gatewayへの参画、及び、月表面の探査活動に向けて国際調整を進めており、これまで米ロのみが果たしてきた中核的役割を担う立場となる顕著な成果を得ております。
 具体的な成果について説明をさせていただきます。1つ目が、国際宇宙探査プログラムの参画に向けた計画の推進でございます。これはGatewayの分担におきまして、有人拠点の構築における米ロに比肩する立ち位置を獲得しているという成果がございます。
 1ポツ目、Gatewayの参画については、先ほど申し上げた、宇宙基本計画で示された重要技術の中に含まれております環境制御・生命維持システム、及び、HTV-Xの能力を活用した補給の役割といったもので効率的かつ効果的な方策を分担案に取り込みまして、ISSの多数間調整委員会などにおいて、参加各国機関の合意を獲得しております。その次のポツですが、この合意におきましては、環境制御・生命維持システムの分担を我が国が分担案として獲得しております。これらは従来、米国とロシアのみが担ってきた有人宇宙活動拠点の構築に不可欠な基礎・基盤となるインフラシステムでございますので、このシステムを担当することは、ISSに計画における実験施設の提供から極めて大きなステップアップと考えております。
 それから、昨年の11月には、ペンス副大統領と安倍首相の会談において、Gatewayなどに関する協力の具体的な検討が含まれまして、安全保障、探査、産業の各面で宇宙協力の強化が確認されており、政策的な意義も付加されていると考えております。
 (2)と致しまして、国際協力ミッションの実現に向けた活動をリードするということです。JAXAは世界の16機関が参加しております国際宇宙探査協働グループ(ISECG)において、これまで各国が個別の計画に基づいて進めてきた探査活動を統合して、月面の探査ミッションを、要素実証にとどまらない持続可能な計画として発展させるということを、ISECGの議長機関としてJAXAが提案して合意を取りまとめております。
 加えて、JAXAが獲得を目指している重力天体の表面探査技術の実証や、月極域の水探査の実現に向け、インド宇宙機関との共同検討をJAXAが主導しまして、共同ミッションの要求審査を取りまとめております。この協力関係は、双方の強みを生かした取組であり、宇宙におけるインドと日本の2国間の協力強化の観点でも外交的に意義があると考えております。
 (3)探査に関わる国内政策の議論をリードしているということです。月・火星探査のプログラム化の提案を行い、そのプログラム化に関する政策委員会の議論をリードしまして、取りまとめ文書に反映させ、工程表の改訂を実現しております。
 加えて、成果の2つ目ですが、有人宇宙探査における優位技術・波及技術の実証ということです。(1)に書かせていただいていることは、世界初のクリーンエネルギーによる月面越夜技術の開発というところでございます。これは超高エネルギー密度のリチウムイオン電池、及び高性能のヒートスイッチです。ヒートスイッチというものは、熱伝導を高くしたり低くしたりすることによって、電力確保が厳しい月面などで少ない電力で熱設計ができるような技術になります。そのヒートスイッチ等の地上の実験・試験を完了しておりまして、世界で初めてとなる月極域の永久影の中での探査や、長期間ごく低温となる月面での越夜をクリーンエネルギーで可能とする道筋を付けております。海外は原子力熱源等を使用しているケースが多くなっております。(2)としまして、世界最高水準のランデブーセンサーによる相対航法技術の自立性を確保しております。海外の競合品に比べて20%ぐらいの測距誤差のレーザー光を使いまして、3次元のランデブーセンサーの地上試験を完了し、機微な技術でございますが、ランデブーセンサーの国産化とランデブー宇宙機の軌道制御、その性能向上に貢献しております。
 さらに、成果の3つ目として、オールジャパンでの国際宇宙探査への推進体制を構築しております。宇宙理工学委員会を通じてサイエンスコミュニティと協力しまして、探査における科学の在り方について検討するタスクフォースを組織し、報告書を作成するなど、学術界の国際宇宙探査への参画を促して連携を強化してきております。具体的な例ですが、月極域探査や月の離着陸実証、その着陸技術、また、新型の宇宙ステーションの補給機、HTV-Xの設計等に関し、宇宙科学・探査におけるSLIMのミッションに先行して行われる技術開発を効率的に活用するために、連携を行って取り組んでおります。具体的には、月面のピンポイント着陸技術や、月周回に行くための遷移軌道技術などでございます。
 また、3ポツ目ですが、1~2か月ごとに1回ぐらいの頻度で産学官・一般を対象としたワークショップを開催し、幅広いステークホルダーの理解増進に寄与しております。参加された方からは、民間事業者の参画による宇宙探査の推進への期待の声も多く頂いており、非宇宙企業の参画も含めたオールジャパンでの推進体制の構築を図っております。将来的な有人表面探査技術の確立に向けては、宇宙開発を通じた技術力の向上とともに、自動車技術への応用を目指しているトヨタ自動車様と連携協力協定を締結し、同社の参画により、鍵となる有人与圧ローバの概念検討を開始しました。建設や食品、広告・インターネット、金融、教育など非宇宙業界の企業による宇宙探査への新規参入の機運が高まっているということが成果として挙げられます。
 国際有人宇宙探査の説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  それでは、ただいまの説明について、質問等ございましたらお願いいたします。
 髙橋先生、お願いします。

【髙橋委員】  説明ありがとうございました。Gateway分担において日本が環境制御・生命維持システム分担を獲得するということで、大変すばらしいと思います。具体的に生命維持システムの日本のどのような技術が評価されて、このような分担になったのか、その辺をもう少し詳しく教えていただけませんでしょうか。

【JAXA(若田)】  A-136ページにJAXAの取組としまして、環境制御・生命維持系の具体的な品目をここに書かせていただいております。この中で、我々はやはり「きぼう」を通じて獲得してきた有人宇宙技術の開発とその信頼性がまず大きく評価されていると思っております。そのため、「きぼう」の中では、二酸化炭素を除去するなどといった装置は、現実には米ロに頼って運用しておりますが、やはり日本の技術に対する信頼性があり、日本がこういった新たな分野を開発していくということに対しての期待、信頼があるのではないかと思っています。
 ですから、工程表にもある4つの技術は、日本が既に優位性がある技術と、今後の波及効果を含めて我が国が技術レベルを高めていかなければいけない技術という2つの視点があると思っております。その観点ではこの環境制御・生命維持系というものは後者の方であり、今後我々が有人宇宙活動を月面であろうと、月周回であろうと、火星であろうと、例えば有人与圧ローバでトヨタと共同研究しているようなものがもし実現すれば、そういったところでも必要になってきますので、我が国が率先して取り組んでいかなければいけないチャレンジングな技術課題として取り組もうというふうに思っております。

【髙橋委員】  そうであれば、いわば「きぼう」の実績とこれからの技術開発の可能性といったものを期待されて、この生命維持システムについて評価されて分担が決まったという理解でよろしいですか。

【JAXA(若田)】  はい。と同時に、月の周回拠点Gatewayに関しては、既に我々が実績を持っている熱制御システムのポンプや、今年もHTVで打ち上げますバッテリーのような技術については日本がお家芸のところがございまして、その部分に関しては、日本に担当してほしいと直接要請されるような強みの技術もございますので、そういった技術レベルが高いものも一緒に提供し、貢献する形で対応したいと思っています。

【髙橋委員】  そのような要素技術もあるということですか。

【JAXA(若田)】  そうです。

【髙橋委員】  ありがとうございました。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  私は民間の委員なものですから、最後のオールジャパンでの体制作りというところに興味を持ちました。様々なワークショップを行われており、トヨタさんのような一流企業がそこに参画してくるということが1つの動きとしてあることは我々もすごく有意義なことだと思います。例えば国が担う部分と民間が担う部分をどのぐらいの比率で考えて、どのぐらいの時期にそういうものを達成するということを何か考えておられるのであれば、そこをお伺いしたいと思います。

【JAXA(若田)】  国と民間の分担に関する期限や割合といった具体的な数値はございませんが、当然それを拡大していきたいということが我々の期待でございます。その中でまず国際宇宙探査の前に民間がより主導的な役割を果たしていかなければいけないと我々が考えています領域が、地球低軌道の利用でございます。国際宇宙ステーションについては、日米含む世界15か国が参画しておりますが、先ほど説明させていただきましたように、民間への事業移管といった形でより民間が主体的にその活動を支えるような形、ある意味では、アンカーテナンシーのような形で民間のものを国が活用するような動向が、将来的には望ましいのではないかと思います。そのため、地球低軌道の利用に関してどれだけ民間が主体的な役割を果たしていけるようになるかということが、月面であっても、月周回であっても、火星であっても、国際宇宙探査の民間利用の試金石になると思っていますので、まずは地球低軌道の利用拡大が重要ではないかと思っています。ただ、その中では、民間の方が入っていただけるように、我々は宇宙探査イノベーションハブにおいて、宇宙のための技術だけではなく、地上にも役に立つようなデュアルユースという形で、非宇宙の企業さんがJAXAと一緒に連携して共同研究をして、アウトカムとして宇宙にも、地上にも適用される活動を続けていくことで、より多くの民間企業の方が参加してくださるのではないかと思っております。

【赤松臨時委員】  なるほど。私も低軌道に関しては民間の参画が、目前にというか、もう既に始まっていると思っているのですが、やはり有人宇宙探査という領域は、まだ大分先の方だと考えてよろしいということですかね。

【JAXA(若田)】  民間の果たす役割に関して、やはり地球低軌道とセットで考えていかなければいけないというところがあると思います。また、我々が意識していることとして、民間の参画を促すためには、1発、月に行って帰ってくるだけでは、それは事業としてやはり成り立ちませんので、事業性や持続的な発展が必要であり、将来を見通せるような計画になっていく必要があるのではないかと思います。
 そうしますと、単に月に行くというだけではなく、今度は月のその場資源利用(ISRU)や推薬プラント等、事業となり得るようなものを長期的に展開していけるような国際宇宙探査シナリオを作っていくことが必要だと考えておりますので、先ほど申しましたISECGの議長国としても、世界各国でそういった持続性のある探査を進めていきましょうというシナリオを構築することによって、それがひいてはやはり民間企業の更なる参画を促すことになるのではないかと思っています。

【赤松臨時委員】  分かりました。ありがとうございます。

【JAXA(五味)】  別な観点で補足をさせていただきます。国際宇宙探査を担当してございます理事補佐の五味でございます。
 民間さんの参入につきましては、世界的な動きでもございますので、大いに歓迎をしておるところでございます。私どもも支援をする枠組みを作っていきたいと思っております。どういうところから参入していただくのがいいかというところを試行錯誤しておりまして、有人探査の前の無人探査の段階で、なおかつ小規模なプロジェクトなどであると、多くの企業さんが参入を希望していただけるのではないかということで、月面上の小規模プロジェクトなどが1つの候補になるのではないかと考えてございます。

【赤松臨時委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかに御質問等ございますでしょうか。
 お願いします。

【小塚専門委員】  小塚です。少し関連するのですが、民間企業が協力してきたときに、共同の開発によって例えば得られた新規の技術、あるいは製品等について、逆に民間企業の本来の業態の中で利用したいということも出てくるのではないかと思います。とりわけ、書いておられるものを見てまいりますと、例えば電源技術やセンサのLIDARなどは例えば自動車技術などに応用が十分可能なものだと思いますが、その辺りの取り決めといいますか、考え方というものはどのように整理しておられますでしょうか。

【JAXA(若田)】  例えば先ほども申し上げました宇宙探査イノベーションハブでの共同研究、そういったもので企業さんとデュアルユースで地上と宇宙、成果を目指して研究開発をしているようなもの、そこから得られる知財、知見は基本的には共同研究をしてくださっている企業の方へお渡しするような形でやっております。
 それ以外に、今トヨタさんと共同研究を始めております部分や、民間との協働でのミッションは今後出てくると思います。ですから、ケース・バイ・ケースであるということは間違いないと思いますが、やはり重要なことは日本の強みとなる技術が世界品質として世界から認められるということだと思いますので、そういった点に留意しながら、知財の分担のようなものはきちんと考えていきたいと思っております。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に参らせていただきます。ローマ数字3 .6.1、国際協力・海外展開の推進及び調査分析についてJAXAから御説明をお願いいたします。

【JAXA(中村)】  プルの6.1と書いてあるところになります。開いていただきますと、最初に中長期計画が書いてあり、この国際協力・海外展開の推進及び調査分析のところについては、トップマネジメント層間での関心を共有して、互恵的な関係で研究開発を推進するようにすること、また、それによって、事業の効率的かつ効果的な実施に貢献するのだということが書かれてございます。さらに、外交当局や、国連、関係機関との緊密な連携を図る。これによって政策的な意義を高めるということが書かれてございます。「また」というところ以降は、海外宇宙利用機関との連携を強化して、宇宙利用の更なる促進と社会基盤としての定着を図るということが書かれております。特にということで、アジア地域における枠組みであるAPRSAFの活用が書かれてございます。
 加えて、調査分析という記載が右側にありますが、戦略的・効果的なミッションの立案、成果の最大化、我が国の政策の企画立案に資するために、動向調査、その分析機能を強化すると、こういうことが今求められているところでございます。さらに、最後のパラグラフにありますように、調査分析機能を強化するために、人材ネットワークの拡大を図るということが書かれてございまして、昨年度これに対してどのような実績があったかということをこれから御説明させていただきたいと思います。
 D-5ページに自己評価を書かせていただいておりまして、Aとしております。国際協力を推進していくための環境整備が図られたということが大きな1年であったと思います。具体的には、JAXAは第4期の中長期目標が始まる年に当たりまして、新しい理事長、新しい理事の体制になりました。この新しい体制をいかに世界の中で定着していくかということが最初の大きな目的になったわけですが、そのために数多くの経営レベルでの意見交換の場を持つということに注力しまして、全体的には58回ほどの会合が設定できたわけでございます。
 数字というよりは例で申し上げますと、理事長が着任したのが4月1日でございました。たまたまNASAのブライデンスタイン長官が新たに、米国の下院議員からNASAの長官になられたのが4月23日でございまして、着任されるという情報が入ったときに、理事長に素早く米国へ向かっていただきまして、ブライデンスタイン長官にとって初めての海外の長官と話をする機会となったということでございました。NASAの事務局からは、まだ事務的な説明も何もしないうちに会われることも困るが、こういうところは言っておいてくれと頼まれて説明をするというような状況で、総理と大統領のご様子と似たような感じでございました。たまたま今の例は米国でございますが、もともと理事長は科学の分野で宇宙をやってこられたこともあり、DLRであれ、CNESであれ、多くの長官と様々な場で会うとともに話をするという機会を数多く持つことができました。そのようなところを通じまして、経営レベルでの意思疎通ということは非常に密にできたのではないかと思ってございます。
 更にもう一つ、この項の中で大事だと思っておりますことは、(2)にありますように、政府が様々なチャネルを通じて協力関係を結んでいく中で、そこに働き掛けることによって、政府全体でも高いレベルで宇宙が話題になるように、我々JAXAが支援をしていくというようなことがございます。中身をいろいろ進めておる中での成果として出てきたものが、例えばD-6ページにもございますように、米国との間でいえば、7月に開催された宇宙に関する第5回包括的日米対話で話題にすることができたということや、あるいは11月には今度はペンス副大統領が総理と会われたときの話の中で取り上げられるところまで準備ができたということが挙げられます。さらに、日印の関係のことも書かせていただいてございます。多くの方がいらっしゃったときに、できるだけハイレベルで宇宙を取り上げていただけるようにするということも重要なことだと考えてございます。
 さらに、(3)にありますのが、国連との協力ということでございます。これにつきましては、D-7ページにございますが、国連の中に宇宙部がございまして、この宇宙部と連携を密にしてございます。宇宙部が国連の事業として「KiboCUBE」というタイトルのプログラムを始めていただけました。実際には、先ほど若田理事からお話がありましたように有人の宇宙ステーションのグループが実作業はしておりますが、国連との協働のプログラムの運用というところで、昨年度は第1回の公募で受かりましたケニアの衛星を打ち出すことができたということです。これについては、その次のポツにありますように、同じ国連の中のUNISEFという機関が、このプログラムに関して、UNISEFの新たな取組に非常に合致しているという評価をして、UNISEFがこのプログラムに対して資金を出すというような評価も受けているところでございます。
 それから、D-5ページに戻りまして、(4)に書いてありますのは、様々な海外での災害のときにリモートセンシングの衛星が役立ったわけですが、そのリモートセンシングの衛星を役立てるために、国際部にて、JICAや、現地の国の政府との橋渡しをしたというような内容でございます。データを提供し、D-7ページにありますように、ラオスの事例、タイの事例、あるいはミャンマーの事例等、様々なときに連携をする橋渡しができました。このような活動が認められて、JICAの中でも衛星のデータ利用が非常に有効だと理解され、JICA自身が宇宙のメンバーの中に入ってくるというような結果が得られたと理解をしてございます。
 それから、APRSAFにつきましては、アジアの中で日本のプレゼンスを上げるという意味でございますが、政府の宇宙政策担当者によるセッションを新たに昨年設けまして、これからもこれを継続することで新たなつながりを強化していこうというふうに考えてございます。
 また、調査分析の観点では、JAXA全体の経営や事業方針に役立つようなテーマを取り上げようという取組をしまして、(1)にありますように、昨年度につきましては、低軌道の商業化シナリオ検討をいたしました。この結果につきましては、今年の事業の中に考え方を盛り込んでいくというように活用することができたということで、調査分析を経営につなげていくというようなプロセスの最初の活動の展開ができたと考えてございます。これから同じような手法を取っていき、PDCAを回すことによって、JAXAの中の意思決定における調査分析の位置付けを確たるものにしていきたいと思っております。
 さらに、(2)にありますように、この調査分析に当たっては様々な有識者とのネットワークをつなげていくことが大事であると考えており、人工知能の分野や政治システムの分野などのような様々な方とのつながりを結ぶことができたと考えてございます。このような活動をした結果として、BではなくてAと評価をしたものでございます。
 御説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  ただいまの説明について御質問等ございましたら、お願いいたします。
 後藤委員、お願いします。

【後藤委員】  今の御説明を伺っていて、最後に、BではなくてAというふうにおっしゃっておりましたが、大変赫々たる成果につながる活動をされていると思いました。であれば、Sにとなるためにはこれにどういうものが加わればSになるのでしょうか。私自身は、今伺っていても大変立派な活動だと思っているのですが、BではなくてAというご発言は、逆に言うと少し意外だったものですので。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。私どもはやはり今年については確かに多くの活動をしましたが、JAXAの名前を売っていくというところが中心で、滑り出しとしては良かったのだろうと思います。しかし、政府全体に対してもっと大きなインパクトを与えるような成果が説明できるようになったときにはSを堂々と出していきたいと思っておりまして、今年はAにさせていただきました。

【後藤委員】  政府全体に対するインパクトとは具体的にはどういうものでしょうか。

【JAXA(中村)】  例えば今であれば、大きな話題としては、宇宙の安全保障ということが日米間で話題になっており、あるいはGatewayという新たなプログラムが出ようとしています。ここに対してうまく国際関係の働き掛けに支援できるようになったらという段階や、あるいはより大きなものとしては、今、デブリに関してどのような国際関係の中で整理していくのかということが大きな話題となっておりまして、ここを勉強し、日本の考え方を外務省を通して外へ出しているわけですが、ここの働きがうまくいって、大きなムーブメントに日本やJAXAがうまく役割を果たせるようになったときには、もう少し自信を持って、大きな仕事をしましたというふうに言えるのではないかと思っています。是非ともそうなりたいと思っています。

【後藤委員】  我々としてもそういう安全保障やデブリの分野の活動を今まで以上にしっかり注視していくということなのですな。

【JAXA(中村)】  はい。是非ともそうしていただければと思います。

【後藤委員】  どうもありがとうございました。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 古城先生、お願いします。

【古城委員】  調査分析の箇所になりますが、昨年度に比べると随分発展された、あるいは、随分充実しているように思います。昨年度、人数が非常に少ない中でこういうことができるのでしょうかという点が少し話題になったと記憶しておりますが、人数は昨年度と同じ人数で対応されているのでしょうか。

【JAXA(中村)】  JAXAの職員という意味では基本的には同じ人数でございます。しかし、先ほど申し上げたように多くの知見を増やさなければいけないということで、外部の方とのネットワークを広げるという作業はさせていただきました。おかげで、様々な話を聞き得るようになったということはあります。
 それからもう一つ、個々の調査をするときに、コメントを付けてください、自分の見方をきちんと書いてくださいというように職員にお願いをしました。同じようなニュースであっても、これが背景としてはどうであったのかという点や、あるいは背景だけではなく、次にどういう展開を想定して自分が見ているのかというようなことをコメントとして付けた形でレポート配信をするようにしています。それほど充実した分析とまではまだ言えないとは思いますが、そのような作業を繰り返すことで能力を高めるような工夫は昨年から始めております。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 中村先生、お願いします。

【中村臨時委員】  5番目にJICAとの連携の推進ということが記載されております。これは何かイベントがあって、そのときにピンポイント的にALOSのデータを提供したというふうにも読めますが、今後の見通しのようなものをお聞かせいただければ。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。まだ今年のことなので書いてございませんが、JICAの副理事長が先日JAXAの山本副理事長のところへいらっしゃいまして、JICAとしても宇宙について積極的に取り組んでみたいというようにおっしゃっていただきました。具体的には、JICAにおいて新たな研究者を受け入れるときのテーマとして宇宙というものを中心に受け入れるというようなプログラムを組んでみることを検討していることや、あるいは、リモセンの項目で説明しますが、森林の伐採状況をリモートセンシングで見ることや、水の流れから伝染病の拡散の予測について行ったというWHOとの協力など、そのように様々な分野で宇宙が科学技術の力を使って貢献に使えそうな領域が出てきたということを通じて、JICAとしてもそのようなプログラムで次に何か日本が協力できるものがないか、それぞれJICAの職員に探すように指示をしてみたいなどというような話をしていただいています。今年2019年度になりますが、私どもとしてもJICAとの協力は積極的に進めていきたいと思っておりまして、こういうことがうまくいけば、来年度以降御紹介できるのではないかと思います。

【中村臨時委員】  ありがとうございます。楽しみにしています。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  国際協力の中で、特に首脳レベルで宇宙の協力ということが位置付けられるということは非常に重要なことだと思っています。また、宇宙関係の取組というものは国際間の協調という上でも非常に重要だと思っています。数年前になりますが、地球観測の計画が変わったときに、米国NASA等との協調で課題が生じたということがたしかあったと記憶しており、この辺はこれから改善され、こういった枠組みの中で重視されていくと理解してよろしいのでしょうか。

【JAXA(中村)】  今おっしゃられた事例が具体的にどの懸案だったのかがピンとこなかったので正確なお答えになるか分かりませんが、現在、衛星等のプログラムの多くは、国際協力の下でやられることが多くなっております。特に気象や、雨の動き、水量、温度などについて、あるいは最近であればCO2も該当しますが、国際協調でやることが多くなっております。国際協調は、うまくいっているときはいいのですが、開発がうまくいかなかったときや、スケジュールが遅れたというときには全体的に迷惑を掛けるということになります。そういうときには、お互い開発機関同士で話をして調整をしながらプログラムをうまく進めるようにしておりますし、このプログラムのデータそのものがいかに社会に展開されるかということは、宇宙の実施機関だけでは実現できないので、それを首脳レベルに上げることや、ほかの関係省庁を巻き込むことなど、そのようなところにお互い働き掛けることをしています。それによって、リモートセンシングが宇宙あるいは科学技術だけではなくて、あるときは気象であったり、あるいは環境のような分野であったりと、そういうところに広がっていくと思いますので、そのためにも力としては首脳というレベルは非常に大事なきっかけになりますから、国際協調でもって働き掛けていくというようなやり方はこれからも続けていくことになると思っています。

【赤松臨時委員】  私が申し上げたのは、環境系の観測衛星のプログラムの位置づけが少し低下したことによってNASAとの協調関係に少し課題が生じたことがあったということです。やはり国際協調で進めているプログラムというものは国家間の約束ということもございますので、その点は考慮しながら衛星計画に反映していくということも留意していただきたいと思っております。

【JAXA(中村)】  はい。コメントありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは続いて、ローマ数字3 .6.2、国民の理解増進と次世代を担う人材育成への貢献について、JAXAから御説明をお願いいたします。

【JAXA(中村)】  6.2のプルを開けていただきますと、まず中長期計画が出てまいります。項目が2つありまして、国民的な理解の増進という項目では、国民と社会への説明責任を果たす。一層の理解増進を図る。このために、即時性・透明性・双方向性の確保を意識しつつ、高度情報化社会に適した多様な情報発信を行うというふうになってございます。それからもう一つが、次世代を担う人材育成への貢献ということで、青少年の人材育成に幅広く貢献するため、成果や知見を広く教育の素材として活用し、学校教育の支援、学習機会の提供を行う。これが書かれておることでございます。
 これに対しまして、D-18ページになりますが、昨年度様々な活動をさせていただきました。自己評価はSを付けてございます。評定のところの一番最初のところに書いてありますことは、一言で言うと広報関係のことで、一般の民間の方々と共に同じ土俵にのっかって比べてみました、ということです。その結果として非常にいい数字が出ていますということをまず一番最初に書かせていただいておりますが、具体的な中身は1ポツ以降に書かせていただいております。
 昨年度につきましては、最初のポツにありますように、各プロジェクトが頑張っておりますので、様々に広報する機会を頂けました。しかし、各プロジェクトが頑張るだけではなく、それをいかに広報効果につなげたのかという点がその次でございます。ミッションの準備段階から報道・メディアとコンタクトを取り、加えて、ライブ中継をすることや、Webサイト、SNSといったような新たな媒体を使うということをしており、また、展示館の運営や外部団体との連携にも積極的に取り組んだということで、JAXA全体としての広報効果を上げることができたと考えてございます。
 活動事例が幾つかございます。「はやぶさ2」については、年間を通じて毎月2回の記者説明会をしました。さらに、「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに接近したわけですが、その可視化のシステムをマスコミと共同開発することによって、マスコミの方で企画番組を作るという機運を盛り上げることもでき、また、情報を提供したおかげで、報道機関自身が、我々のものではなくて報道機関の特設サイトや応援メッセージサイトを作っていただくことにつながったと思ってございます。
 それから、2つ目のポツにありますのは、海外での広報にも力を入れてみました。「はやぶさ2」は世界的にも関心が高かったということもありまして、ドイツのブレーメンの庁舎で展示を行う機会を得ました。また、IACという大きな会合がありますが、そこではドイツ、フランスと一緒になって共同記者会見をするということで、海外にも発信ができたと思っております。BepiColomboという衛星につきましては、クールーという海外の射場からの打上げでしたので、その機会を捉えて、初の海外からの打上げ中継をYouTubeで実施するということもいたしました。
 それから、展示館については、例年同様力を入れたということでございます。
 結果として、主な成果に書いてございますが、メディアの露出という意味では、全国の企業等4,000社がサーベイの中に入っている調査の中で、2月、3月は連続1位、6月と11月は2位、9月は3位というように非常に高いランキングを取れました。次のページのD-21ページにそのデータがございます。テレビの視聴率などについてその価値がどれぐらいかということを調査するJCCという民間会社がございます。同社が各企業と同じ土俵で調査をして比べているわけですが、2月でいえば、1位がJAXAで、2位が東武鉄道、3位がJR東日本などのような数字として出していただけていまして、全国の報道価値の換算でも随分大きな額を評価として頂いたということでございます。それから、その次のポツにありますように、今度はテレビではなくて、新聞報道の換算でございますが、これもエレクトロニック・ライブラリーという会社がまとめてございます。ここでもやはり昨年以上の金額相当であったというような結果を示していただいております。
 それから、SNS等による双方向のコミュニケーションということでございます。2018年度末のツイッターのフォロワー数が32万、YouTubeの登録者数が13万というように書かせていただいております。この数字がどのような数字かということですが、ツイッターのフォロワー数でいえば、類似の研究機関である理研が2万6,000ぐらいだと聞いていますので、それよりも多い数字となっておりますし、ほかの似たような法人よりは多くなっているというような数字です。ただし、NASAが88万ということですので、NASAにはかなわないかという感じはあります。それから、YouTubeのチャンネルの登録者数についても、JAXAは13万と書いてございます。ちょうど2018年の春に10万人程度を超えましたので、この1年間では3万5,000人ほど登録者が増えたということだろうと思っています。先ほど比較しましたような類似の機関でいえば、割合多いのはNIMSの約9万という数字があり、そちらよりは多く、先ほどの理研さんには申し訳ないのですが、同法人の9,000人よりはずっと多いという状態です。ただし、NASAはこちらの方も362万と桁違いに多く、やはり英語のコンテンツが常に出せているところで、見る人が海外だということも考えると、なかなかここまで行くのは大変だというふうに思ってはいます。ただ、JAXAとしてはそれなりの実績を昨年以上上げたのではないかと思っております。
 展示館の運営につきましては、来場者数が全体で62万人で昨年度より増え、筑波スペースドームでは過去最高の35万人という結果でございました。これらにつきましては、D-26ページに参考の資料がございますが、トリップアドバイザーという旅行サイトがありまして、そこが評判がいいところについては表彰をしておりますが、私どものこの2つの事業所が昨年と同様、今年もエクセレンスということで賞を頂くことができてございます。
 それから、その次のページ、D-19ページ、次世代を担う人材育成への貢献というところでございます。2020年度から新学習指導要領において小学校でプログラミング教育が必修化されると聞いてございます。これを捉えまして、JAXAの「はやぶさ2」ミッションや、人工衛星の運用、地球観測衛星の画像解析をモチーフとしたプログラミング教材の開発に取り組みました。昨年度は、デモ版を用いた体験教室を開催し、初版を作成しました。この初版を用いて、公立小学校での試験事業や、自治体の教育委員会と共催して教員の研修を展開するというような形で事業を進めたところでございます。
 このようにトピックとして挙げられるものが数多くあるということで、Sを自己評価したところでございます。
 説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  ただいまの説明に対して御質問等ございますでしょうか。

【梅比良部会長】  1点だけ確認させてください。

【渡邉専門職】  梅比良委員、お願いします。

【梅比良部会長】  説明どうもありがとうございました。JAXA自体は今、国民的にはすごく認知されていて、更にプッシュされているという感じで非常に結構なことだと思います。広告費換算のところでJCC調べという話があるのですが、これはメディアに露出しているものを全部合わせたときがこんなものだというふうに言われているのですか。それとも、例えばテレビ広告換算だったらこのぐらいと言われているのか、その辺がよく分からなかったので教えてください。

【JAXA(中村)】  JCCの調査ですので詳しいところまでは分かりませんが、テレビの露出のところだけと聞いています。

【梅比良部会長】  なるほど。テレビで例えば広告を打ったらという?

【JAXA(中村)】  はい。テレビで広告を打ったというよりは、広告を打ったとするとこれぐらい費用が掛かるよねということを数字としまして、実際に我々のものがどれだけ取り上げられていて、それを自分のお金でやろうと思ったら幾らぐらい掛かるよねというようなものだと聞いています。

【梅比良部会長】  分かりました。それだと非常によく分かります。どうもありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 それでは、最初に多屋委員、続いて生越委員の順番でお願いいたします。

【多屋臨時委員】  JAXAの認知度というものが本当にすばらしく高くなって、昔に比べてすごいと思う今日この頃なのですが、その中で次世代を担う人材育成への貢献ということも始めていらっしゃいます。今現在、S評価というふうなことでなされていますが、S評価としての課題として、例えば人材育成の貢献の結果、どういうふうにそれを評価していくかなどに関してのお考えなどはいかがでしょうか。

【JAXA(鈴木)】  人材育成を担当しています鈴木でございます。よろしくお願いします。
 これまで人材育成、青少年教育を、JAXA統合以来15年間やってまいりました。その間は、学校教育の支援として、学校との連携を何件ぐらいやっていくかということや、学校の先生に研修をして、科学教育のベースとして宇宙を素材として課題解決のためにどのぐらいの先生に研修を受けていただくかということ、あるいは地域の皆さんにコズミックカレッジなどをやってどれぐらいの方に参加いただいたかということなどで物量で広げていったのですが、やはり反省したところは、おっしゃられるとおり、どういうふうにつながるかということです。今回、学習指導要領のようなところにがっぷり四つに組もうとしており、例えばプログラミング教育であれば、科学、宇宙にやはり子供たちが関心を持って、なぜこういうことが起きるのかということの問題意識を持ってもらえる課題を設定し、自ら考えるような人になるということが重要であるという分析をしまして、成果として学習指導要領に沿って宇宙を使った教育もできるというところを1つの成果として考え、今取り組んでいるところでございます。ということで、物量よりも質的に、あるいは心に刺さるといいますか、本質に行くようなというような成果を狙っているところでございます。

【多屋臨時委員】  ありがとうございます。指導要領に入れられたということはすばらしい成果だなと思っておりまして……。

【JAXA(鈴木)】  宇宙そのものが入ったということではないのですが、そこに使えるよと言うことです。

【多屋臨時委員】  もちろんそうです。そこの中に宇宙教育というものが教育の中に浸透していくというふうなことですばらしい成果だなというふうに思っているところです。

【JAXA(鈴木)】  ありがとうございます。頑張っていきたいと思います。

【渡邉専門職】  続いて、生越委員、そして、その次に髙橋委員の順番でお願いいたします。

【生越専門委員】  今回評価がSということで、JAXAさんは普段から非常にハイレベルのメディア露出をされているので、私はSという評価もあるかというふうには思うのですが、今御説明のあったように、ツイッターでいうとNASAが88万人、YouTubeだと362万人ということで、世界の方がJAXAを非常に知ることが増えたということであれば、そういう評価はとても正しいのだと思います。
 しかし、「はやぶさ2」のニュースがあって、そのときに10万人に増えて、今回13万人ということは、差額が3万人ということですよね。今年度のメディアの露出によってそこまで増えたのかというと、「下町ロケット」などいろいろ番組の御協力は分かるのですが、国民の1人として、実感が少し薄いという感じがいたします。先ほどのJCCの調査についても、鉄道系や、すかいらーくなどはおそらく食べ放題か何かを無償で提供していて換算されているのかと想像しており、そのため、そういう意味で非常に強みのある組織が、換算率が高いからすごいということはダイレクトには言えないのではないかと思います。例えば気象庁などの機関を換算したらもっと高くなるかもしれず、誰と比べるかの問題はあるような気がいたしております。
 昔、国民認知度というパーセントが出ていたと思うのですが、やはり継続した指標が出されるともっと証明がしやすいというふうに感じました。
 以上です。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。先ほどYouTubeのところは、2018年の春が10万人で、その後3万5,000人増えたということで、35%増ですから、先ほどの基準でいう20%を超えているので、それなりに増えたのではないかと思っています。確かにベースが高いと褒められて、それは非常にありがたいことですが、それを維持するとともに、更に少しでも発展させていけた、という点と、その上で、特にエポックのようなものがあったということで、Sというふうに評価をさせていただいたところでございます。
 それから、認知度については、D-18ページのマル4にあるとおり、継続的には一応調査をしております。今年もまた「支持する」というご回答を9割の方から頂いてございます。しかし、昨年の評価のときに御説明申し上げましたように、名前を知っているというだけではなく、これをいかに我々の活動の支持につなげていくかということが昨年頂いたサジェスチョンだったと理解しており、それはそのとおりだと思っております。支持をどういうふうに可視化していくのかという辺りはまだ答えが見つかっておりませんので、その辺も含めながら、これから自分たちの活動の評価につなげていきたいと思っております。ありがとうございます。

【渡邉専門職】  続いて、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】  説明ありがとうございました。1つ参考で教えてほしいのですが、国民の理解増進というものは、いわば広報活動にあたるのだと思うのですね。そして、次世代を担う人材育成というものはまさに人材育成で、もともと次元の違うことがここで総合評価になってしまうのですが、広報としての評価、それから、人材育成としての評価をそれぞれSABで分けたとしたらどのようになるのか教えていただけますか。

【JAXA(中村)】  国民的な理解の増進のところについては、数量的なものが出てきておりますので、説明はしやすく、Sというふうに付けやすいと思っております。それから、次世代の方については、ここでは次世代というものは青少年のことを言っておりますので、こちらはコズミックカレッジなど着実なことはやっておりますが、そこからどの程度伸びたのかという意味だけの評価でいえば、Sほど伸びたとは評価をしていないという状況にあります。

【髙橋委員】  そうであれば、あえて分けると、広報がSで、人材育成がAで、総合的にSにしたという、そういった理解でよろしいですか。

【JAXA(中村)】  はい。

【髙橋委員】  ありがとうございました。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に参ります。ローマ数字3 .4.1、民間事業者との協業等の宇宙利用拡大及び産業振興に資する取組について、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(中村)】  ローマ数字3 .4.1を開いていただきますと、中長期計画が書かれております。最近の宇宙に関する民間の動きが激しくなっておりますが、そこに対してJAXAとしていかに貢献をしていけるのかということが、一言で言うと求められておるものと理解をしております。
 これに関しましての実績はB-7に書いてございまして、自己評価としてはSというふうにさせていただいてございます。最初のところにございますように、政府自身が宇宙産業ビジョンあるいは宇宙ベンチャー育成のために新たな支援パッケージを定めまして、この分野について活性化していこうというふうに政策を立ててございます。JAXAとしてはそれに昨年度大きく貢献をできたのではないかという趣旨でございます。
 具体的には、最初のところに書いてありますのが、宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)について、政府が新パッケージを定めた3月に対して仕込んでおったものを表に出した時期が5月でございました。5月以降様々なプログラムを行い、その結果として当初想定したものよりも大きな広がりが持てたということで、ここは特筆すべきものと考えてございます。
 具体的な内容につきまして、1ポツからまずJ-SPARCの説明を始めたいと思います。B-9、10の方は、スクリーンの方に投影してございますので、私の説明はB-7、8の文章の方を中心に御説明しますが、そちらの方もご覧いただければと思います。
 5月に開始をしましたが、まず企業から「こんなことをやりたいのだけども」というJAXAへの問い合わせがありまして、これが昨年1年間で150社ほどありました。これら全てについて、JAXAとしてプロデューサーが中心となって対話を行いまして、協働で活動を実施しましょうというものを生み出すことができ、それが予定よりもずっと多く、19件まで広げることができました。この19件という数字も、内容としては思った以上に広がりがあるものでした。1つが、(1)にありますように、新規にロケット事業をやろうとしているベンチャー5社に対して協力をするということで、予め想定をしていたような内容のものでございます。
 (2)番につきましては、企業にそこまでやろうという意欲があって、それは我々としても是非とも一緒にやりたいというようなものが、ここで挙げております軌道上サービスと書いておるものです。軌道上で飛んでいる衛星に燃料を追加することによって寿命を延ばしたいということや、あるいはデブリになったものを落としたいと、このようなプログラムに自らが取り組みたいということで、最先端のことを民間企業がやりたいと言ってきて、我々はそれに協力をして、その分野を進めることができたというものです。
 (3)は、ISSの開放が進んでいるわけですが、それに関連してこのようなことをすぐ事業化したいという要望があり、先ほど御紹介が若田理事の方からありましたものだけではなく、ここにありますような、教育の方法を地上の教材に使ってみたいというSpece BDとZ会さんとの集まりや、遠隔ロボットについて一緒にやっていこうというGITAIさんの話など、様々なものがあります。
 更に広がりがあったと思っている事例は、(4) Spece Food Xというプロジェクトでございます。これは宇宙食について、今はまだ市場がないのですが、このマーケット自身を作ろうではないかというものです。マーケットを作るに当たっては、1社でやろうということではなくて、非常に多くの会社が一緒になってやろうというように考えてくれているというところが非常に新しい内容であろうかと思っています。例えばユーグレナのような藻を使って食品を作ろうというところや、日清、ハウスといった食料そのものの技術を持っている人たちもそうですし、それだけではなくて、例えば南極等極地において閉鎖空間で食事を提供していた経験があるが、それを技術として宇宙空間にも使えるのではないか、というように様々な企業約30社が1つのコングロマリットを組んで頑張ろうよというふうになって、そのような大きなプロジェクトと組めたということは、想像以上に広がりがあったのではないかと思っています。
 それから、(5)番も似たような例で、ANAさんが中心になっていますが、アバター技術というものになります。これはまだ事業として存在しているわけではないのですが、それに関連する会社がみんな集まって、自分たちの仲間が集まったところから、実際に事業化をしてみようではないか、仮にまずは宇宙というものを想定してみんなで集まって、その技術が地上に使えないか実証してみようという取組になっています。ここのグループの中では、例えばNTTさんとKDDIさんとソフトバンクさんという大きなキャリア3社が仲良く並んで一緒にやるという珍しいプロジェクトになっており、様々な方が参加しているプロジェクトになっています。
 それから、最後の(6)番ですが、我々、プロジェクトを作るということを一生懸命やっておるのですが、ここはそうではなく、最近は企業の中でも、新たな企業を興す拠点となるようなところを提供すること自身がこういうプロジェクトを興すことに大事なのではないかといって取り組む会社が出てきています。宇宙に関しても、JAXAさんがやるのであれば、日本橋にあるオフィスを貸しますよ、一緒にやりましょうよと言っていただき、そこを借りて、常にオープンさせることで、宇宙ベンチャーをやりたい人たちや宇宙関係者がいつも集まるフォーラムのような場所になっているというような場所を作るようなところにも広がることができました。このプロジェクト自身は、始めてみて、多くの関心を寄せられるとともに、大きく広がっておりまして、それも質的にも量的にも広がったという意味で、トピックに値するのではないかと思っています。
 それ以降、B-8ページでは、ベンチャーというもので、JAXAの中でも、様々に技術を持っている方が起業化をしようという意欲があります。そういうものに対して、新たにJAXA発ベンチャーを2件追加しました。
 それから、3ポツにあるのは、地方自治体の動きです。地方自治体においても、宇宙を使って地域振興につなげたいというところは結構出てきております。茨城の例を書いておりますが、茨城県、だけではなくてつくば市も力を入れています。資料の方には出てまいりますが、最近だと、岐阜であったり、福井であったり、九州の方であったり、様々なところが宇宙を使っていこうということになっており、自治体自身が力を入れ、そこの中小企業が力を入れようとしていて、それをJAXAが支援できているということも大きなうねりにつながっているのではないかと思います。
 それから、4ポツのリスクマネーについては、昨年度のときには、JAXAはDBJさんと協定を結んで後押しをするための支援をしましたということを御報告しましたが、昨年度は更にそれにINCJさんとの連携も締結することができまして、1つ支援先を増やすことができています。
 それから、5ポツにありますように、政府、経産省等のプロジェクトを支援するということもでき、それから、6ポツにありますように、オープンラボという制度で作った、我々の成果自身の社会実装というような例も出てきております。ここに書いておりますのは、ソニック社というところが、空港の周りに発生する、上の方から下の方へ風が吹き付けて飛行機の着陸を困難にするようなダウンバーストという風について、空港の中でダウンバーストが発生しているかどうかというものを飛行機のパイロットに直接伝えるようなシステムを開発しました。それが実際に大分や鳥取、庄内空港など、さらに今年の話でいえば、それがフィリピンなどにも広がりが出てきておりまして、実装化につながる道筋として技術が出てきたということも大きな成果ではないかと思っています。
 さらに7ポツにありますのは、いろいろな企業が衛星をロケットに積んで打ち上げて、宇宙で技術の実証をしたいという要望があるのですが、一般的な窓口として新事業促進部が窓口を開いたということで、ここを通じて、今度何か実証の機会があれば載せてほしいという依頼を事業のように進められるようになったということもございます。
 このように、これまでの取組に対して確実に進めていますし、個々、一歩一歩進めておりますが、さらに今年度は大きなエポックがありましたので、Sというふうに評価させていただきました。
 説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  ただいまの説明について御質問等ございますでしょうか。
 それでは、藤本委員、お願いいたします。

【藤本専門委員】  先日見学もさせていただいて、職員の方々の説明を聞いていますと、組織内で民間企業と協業していくことの価値が非常によく共有されていると感じました。そういったものはJAXA様自体の積極的な活動が結び付いているのかと思いますので、もしよろしければ、その辺のJAXA様の活動についてもう少し詳しくご説明いただけますか。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。JAXA自身は、まさに起業化し、宇宙産業が発展していくことを支援しろと言われていますので、そのために、職員自身みんながその気持ちになるということがやはり総合力を発揮するところになっていると思います。先日御見学いただいたときにも、基礎的な研究をやっているグループも含めて、いかにそれが企業の役に立つことにつながることを想定して研究しているかという点や、あるいは実際に共同研究をしていることも御説明させていただきましたが、そのような個々のプロジェクトについても、職員の意識改革がやはりつながっているのだろうとは思っています。ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかに。
 それでは、梅比良委員、お願いします。

【梅比良部会長】  私は評価委員を随分長くやらせていただいて、前々理事長、前理事長と今の現理事長という格好で見させていただいていますが、おそらくJAXAが一番大きく変わった部分がここではないかと思っています。非常に立派な活動がようやく実を結び始めているということを非常にうれしく思います。
 コメントというわけではないのですが、要するに、やはりJAXAは国の機関で、いわゆる税金を投入して活動されているわけですね。最終的にこういうふうに民間の方に流れていってビジネスにするときは、今度はJAXAがなかなか見えにくくなってくる傾向にあるのではないかと思います。これはほかの総務省法人との関係でいうと、NICTさんも随分いい活動をされているのですが、やはりNICTがやっていることが国民になかなか見えにくいという部分があって、是非その辺をうまくやってほしいとしか言いようがないのですが、考えてほしいなと思います。
 さらに、やはりこういうふうにやってビジネスにしたときに、では、JAXAのおかげでどれだけそういったマーケットや付加価値が増えたのかという点について、何かうまく評価するような仕組みもそろそろ考えながらやっていただけると、JAXAの活動がアピールできるかと思います。こういうことが得意な方経済界の中におそらくたくさんおられるかと思いますので、そういう視点も少し取り入れて、自分たちの活動を評価するというようなことを是非やっていただければなと思います。
 以上です。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。いつも非常に悩んでいるところでございまして、企業との間では、秘密保持契約の中で外には出してくれるなと言われているプロジェクトも幾つもあります。さらには、航空部門のように、自分たちの研究は基礎的なレベルのものがあって、それがその後実業に結び付いたとしても、実業との間で深さや大きさなどがあるとなかなか自分たちの成果だと直接言えるのかどうかというところもありまして、悩ましいところは常に我々も感じているところでございます。ただ、自分たち自身、国立研究機関として何をやっているかという説明責任もありますので、そこは少し考えてまいりたいと思います。

【梅比良部会長】  是非しっかり、少し大げさに、強めに言うぐらいでちょうどいいのではないかと思います。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  それでは、後藤委員、続いて、小塚委員、生越委員の順番でお願いいたします。

【後藤委員】  民間事業者との協業という取組は大変結構なことだと思うのですが、要するに、JAXAが持っている様々な知的財産権や、今までやってきた投資をどういう形で回収するのか、という点が気になります。基本的にJAXAは税金で運営されているわけですが、今後はこういう民間との協業の中で、それなりの利益回収をする必要が僕はあるのではないかと思います。例えばIT業界でいえば、プラットフォーマーのようなああいう人たちが、本当に少ない投資でかなりの利益を得る、言い方は悪いが、上前をはねるような傾向もなきにしもあらずなので、これからJAXAの活動の中でやはりそういったものに対しての備えをしっかりやっておく必要があるのではないかと思います。民間に対する支援というものはそれは非常に結構なのですが、支援というものが余りにも前面に出過ぎてしまうと、やはり投資に対する、あるいは知財に対する価値そのものをもっとJAXA自身が認識して、それをしっかりと回収して、そういう中で、健全な民間の支援につなげていく、あるいは健全な民間業者を育成していくと、こういうマインドというものは必要ではないかと思っています。

【JAXA(中村)】  ありがとうございます。確かにJAXAの研究は多様な側面がありますので、その中、それぞれにふさわしい取組み方を考えていきたいと思っております。知財を我々登録し、その知財について使っていただくことによって利益をJAXAが直接頂くというものも1つの方法だと思いますし、これからそれが望まれていることは中長期目標にも書かれているところでございます。
 もう一つの典型的な例が、共同で研究をするというものだろうと思っています。JAXAは税金で研究をさせていただいておりますが、本来は国が全部やらなければいけないところであっても、民間に一部出してもらうことによって共同でやることで大きな研究ができるというものがございますので、こういうものについては共同の知財という形で、あるいはそれぞれの持ち分を作ることで、お互いに相談をしながら、我々も稼ぐところは稼ぎ、あるいはそもそもお金を頂いて研究をするときにその分の投資を頂いているというような理解も成り立つかと思います。
 それと最後は、本当に基礎的なところについてはやはり税金でしっかりとやって、その成果については、基本的なものとして国民に全てお返しするということもあろうかと思います。研究の内容に応じて考えながら知財戦略を立てて、議論をしていきたいと思っております。ありがとうございます。

【後藤委員】  ビジネス感覚もやはりしっかり持つ必要があるだろうと思います。

【渡邉専門職】  では、続いて、小塚委員からお願いいたします。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。この項目の達成された成果は非常に立派だと思いますが、それを余り言っても仕方がありませんので、質問を1つさせていただきたいです。B-14で、昨年度我々委員から出た意見に対する対応をお書きいただいています。そのうちの上から2番目のところで、支援後の動向把握を行う必要があるという意見があり、それに対して、裾野拡大に波及があったかについて把握したと改善内容のところで書いておられますが、具体的にどのようなことをなさったのでしょうか。今、梅比良先生や後藤委員からもお話があったところとも関連すると思いますので、もし何か御説明いただけることがあればお願いいたします。

【JAXA(中村)】  個別の技術についてフォローをしているところでございます。先ほどSOLWINの例を申し上げましたが、実際に空港で使われました。またJICAが出てきて申し訳ないのですが、今、例えば海外の空港で「もどうもやりたいというプログラムが出てきたので、それであれば、JICAが引き受けてそれを導入しようということになったというように、個々のプロジェクトについて、実際その後どんなふうに使われたのかということはフォローするようにしてございます。今述べたものはSOLWINの例でしたが、それ以外にも幾つかの例があります。
 今日J-SPARCで御説明しましたのは、主に向こうのニーズがあって、こんなことやりたいということで、それに対して協働しているものについては、本当にそれが最後まで使われるのですかと、やるだけやって、JAXAの名前だけ借りて、最後まで商品や製品、実装するというところまで行かないものが出てくると、これは我々の支援の無駄になりかねないので、やるときには最後までやるということは約束の中に一文書いてくださいねということで書いて、その後きちんとフォローするというようなこともしております。
 あるいは、後で御説明させていただく項目の方の話になりますが、探査ハブというプログラムでは、むしろ我々がやりたいものについて、民間でやりたい人は、一緒にやる人はいますかというふうに、ニーズがこちらにあるものを、向こうで、一緒にやりたいという人が現れて一緒にやっております。彼らはそれをすぐ商品にしたいと言ってやって来るわけですが、そこでやってきたものが実際に商品になったのかどうかという点はフォローしています。例えばシンポジウムでも紹介させていただきましたが、我々としては宇宙に持っていく小型のレーダーセンサーが欲しいと言う一方で、船のレーダをやっている人たちが、小型船舶はくるくる回るレーダがあるが、それを宇宙のようなにSARの板盤の可動部のないレーダにするといいですよねということで一緒に協働活動して、結果として、それが船舶用の小型レーダとしてきちんと商品ラインナップに並んでいるというところをフォローするなど、そのような個別のものについてはフォローアップしています。我々がやった成果がどうなっているかということの証明になりますので、これはこれからもやはり続けていかなければいけないことだろうと思っています。

【渡邉専門職】  それでは、生越委員、お願いします。

【生越専門委員】  先ほど若田理事がA-120でJAXAの研究分野を教えていただいたときに、ほかのNASAさんなどと比べて、JAXAがバイオロジー、バイオテクノロジーの割合が非常に高いのですね。バイオテクノロジーは、私も研究しているのですが、非常にビジネス化するまでに時間が掛かる分野です。今回いろいろ御紹介いただいたものは、食の分野などは割とビジネス化しやすいと思うのですが、一方、おそらくまだ出てきていない研究テーマが内在しているのではないかと思っています。
 そのときに、今回、政策投資銀行などとつなぐという仕組みが出来たことは本当にすばらしいことだと思いますが、特にバイオは10年以上時間が掛かり、ここをどうつなぐかが日本のポイントで非常に足りないところでもあるので、更に充実していただければということが1点申し上げたいところです。
 加えて、ビジネスとして知財をどうするかということを考えると、バイオの場合は、M&Aでベンチャーが買われるケースが多いです。だから、最後までやれと言っても買われてしまったというケースも当然ありますので、そこをどう判断するかだと思います。
 B-12のところで、知財について、不実施補償の不適用と書いてあるのですが、それはそれで日本のルールの中ではいいのですが、米国の企業と共同研究する場合に、米国法が適用されると、それぞれライセンスを出せることになるので、そうした場合はこういう話ではなくなります。そういった意味で、JAXAさんは非常にグローバルなライセンス契約を考えなければいけないので、是非頑張ってくださいということが申し上げたいところです。

【JAXA(中村)】  ライフサイエンスの分野については、いわゆる創薬といっても、先ほど若田理事から御説明申し上げました事例は、ISSという場の提供がビジネスそのものだったのですが、そうではなく、薬品を作るなどそういう事例が我々の中で出てくるのかということかと思います。宇宙の分野というよりは、どちらかというとライフサイエンス系の研究所がやっていらっしゃるのかもしれませんが、JAXAとしてはまだ今のところ直接共同研究は余りないかと思っています。
 それから、知財についてはおっしゃるとおりで、グローバルに我々展開しておりますので、どういうふうにやるのかという点は注意しなければいけないところだと思っております。これからも注意しながらやっていきたいと思います。

【渡邉専門職】  ほかございませんでしょうか。
 それでは、髙橋委員、赤松委員の順番でお願いいたします。

【髙橋委員】  御説明ありがとうございました。この分野は本当に大変精力的に力を入れて、第3期に比べても非常に努力されているということで高い評価をしたいのですが、一方で、この添付資料にもある独立行政法人の評価で、産業振興の場合、世界初の成果の実用化や、あるいは事業化に向けた大幅な進展がある場合がS評価に該当するという記述があるのですね。それに照らし合わせた場合に、世界初の研究成果の実用化や事業化に向けた大幅な進展に値するというエビデンスといいますか、補足説明があればお願いしたいです。

【JAXA(中村)】  世界初の技術というものは、たくさん実績として実施しています。ただし、ここの分野には書いていません。例えば後から輸送系で御紹介いたしますが、今回のイプシロンの技術の中で新たにたくさんの小型衛星を、軌道に入れることができました。これは固体ロケットなのですが、小さな液体系の推進系を付けることによって複数の軌道に入れるという実績ができました。これがイプシロンのこれからの将来の売り物になっていくでしょうという事例です。あるいは先ほどの若田理事のところでいえば、空力誘導のことで、宇宙から地上へ回収できるような技術が出てきて、これも米国などはやっていますが、精度よく領海の中に落とすことができました。これも昨年の非常にすばらしい成果だと私は思っています。こういうものが新たな技術として生まれて、それが実現できたという意味での産業振興という観点はあるかもしれません。
 ただ、ここの欄での産業振興は、先ほど申し上げた私どもの、中長期目標の中では、今先生がおっしゃったところよりは、いわゆる宇宙産業がいかに伸びていくのか、そこに対して我々はどんな貢献ができたのかということを中心に目標が与えられていますので、この項ではそういうところを書いており、我々が生み出した技術そのものが産業として、あるいはナンバーワンの技術が社会でうまく使われたかどうかということはここでは挙げてないという形になっています。是非ともこの欄につきましては、民間の今の宇宙産業が盛り上がっているこの社会においてJAXAがどれだけ貢献をしたのか、その貢献が十分であったのかどうかという視点で御評価いただければありがたいなと思っております。

【髙橋委員】  やはり、民間事業者との協業の取組を開始した、というフェーズに読み取れるわけですね。もう一歩進んで、それが実用化あるいは事業化される道筋が見えるぐらいにまでなってくると高い評価になると思うのですが、取組を始めましたという段階や、共創を開始したという段階という、いわゆる入り口のところであるような記述になっているので少し気になったのですが、いかがですか。

【JAXA(中村)】  おっしゃるとおりで、まだ1年目の評価で、プロジェクトが始まったばかりでした。成果として挙げたのは19の成果で、その内容、量がどれだけ多いかという説明までを差し上げました。では、例えばSpace Food Xが商品として何を作り上げて、それが幾ら売れたのかというところまではまだできていません。そういうものが出たら、本当に数字として幾らということはできると思いますので、そこは先ほどお話がありましたように、我々の支援が本当の実態としての数字としてどういうふうになったのかはこれからフォローしてお示しをしていかなければいけないと思います。ただ、支援したこと自身が今できる精一杯ですので、それをどう評価していただけるかということを、私ども自身としては中長期目標の中に照らした段階ではSと呼べるところまで来たとは思ってはおりますが、御評価いただければと思います。

【JAXA(佐野)】  今の回答に付け足しの補足説明させてください。JAXA理事の佐野でございます。自己紹介は後ほど差し上げますが、中村理事の回答に加えまして、B-2ページをお開けいただいて、この右上の方に簡単な漫画が描いてございます。JAXAには多くのプロジェクトがございますが、これを縦糸のようなものだとお考えいただきますと、この私たちの活動であるローマ数字3 .4.1と4.2は、土台あるいは横糸という言い方もでき、それぞれの大きなプロジェクトに対して、そのプロジェクトを支える形での貢献になっております。私の後ほどの説明のところでも同じようなプロジェクトの名前が出てまいりますが、そのような活動だというふうにお考えいただけるとありがたいです。
 以上、補足でした。

【渡邉専門職】  それでは、赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  このJ-SPARCの取組は大変すばらしい結果を生んでいると思います。今までこういう取組をしてまいりましたがなかなか結果が出ていないという中で、今回このJ-SPARCが成功している理由について何かありましたらコメントを頂きたいなと思います。

【JAXA(中村)】  1つは、先ほど出ましたJAXA自身の職員の意識改革ということがありますが、それを支えるような業務改革そのものが背景にあると思っています。例えばずっと後の業務改革のところに出てきますが、JAXAの中では、職員に対して、本来の業務以外の業務を自分の業務として取り組んでもいいですよ、それが2割ですよ、3割ですよというように設定することを認めています。研究開発部門はたしか3割というふうに設定しているのですが、本来業務の100%を70にして、残り30は自分がやりたいことに取り組むことができるということです。その場合には、その30の中でほかの業務に参加をしてもいいし、企業との協働に参加をしてもいいし、全く今やっている仕事とは別の仕事に参画をしてもいいし、と、自らがやりたいことに取り組むというような職員に対するマネジメントをしています。そういうマネジメントがあるからこそ、このJ-SPARCのグループは、マネジャーが様々つなぐものの、実際の研究共同については、現場にいる研究者に来てもらって、一緒になってやるわけです。そのときにそれぞれの部門から人が来てくれなければできないわけです。彼ら自身も本業があって非常に忙しいわけですから、上司がうんと言ってくれなければできないわけで、そのようなJAXA自身の全体のマネジメントがそういうことの要因になっているのではないかと私は思っています。

【赤松臨時委員】  プロデューサーという存在がこの仕組みの中にあると思いますが、その点の効果はいかがですか。

【JAXA(中村)】  プロデューサー自身は、これを担当している部の職員ですので、その職員がそれ専門としてやっているという意味では、足掛けではなく本務としてやっていますということなのですが、ただし、彼ら自身がどういう能力を向上させるかによって企業と一緒にやっていけるかということがありますので、プロデューサー自身が能力を高めるような自己研鑽はしているということがあります。

【赤松臨時委員】  加えて、資金提供によって支援するということはないのですか。

【JAXA(中村)】  先ほど申し上げましたように、共同で研究をしているときに、JAXAの資金を持ち出して一緒に共同で研究をしているという場面はあります。それから、様々な民間の支援策がありますが、JAXA全体の支援策の中には、ベンチャー含む民間企業から調達をすることで民間企業の活力を育てていくというやり方も一部しています。しかし、それは飽くまでサービスを調達するという契約行為の中での話ですので、お金を渡しているというようなものとは少し違うのではないかと思っています。

【赤松臨時委員】  ありがとうございました。

【渡邉専門職】  それでは、次に参らせていただきます。
 続いて、ローマ数字3 .4.2、新たな価値を実現する宇宙産業基盤・科学技術基盤の維持・強化について、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(佐野)】  冒頭に自己紹介をさせてください。JAXA理事、佐野でございます。昨年から民間から参りまして、JAXAに入りました。航空部門長を務めてまいりまして、この4月からは、宇宙の研究開発部門長を兼務してございます。そういう意味では、文科省の先生方とはもう昨年お会いしておりますが、多くの宇宙の評価委員の先生方とお会いするのは今日が初めてでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、説明は座ってさせていただきます。
 それでは早速、B-27ページの1枚紙で成果を御説明させていただこうと思います。新たな価値を実現する宇宙産業基盤・科学技術基盤の維持・強化、スペース・デブリ対策、宇宙太陽光発電を含む、についてです。
 自己評価はSとしてございます。評定理由と根拠でございますが、我が国の宇宙活動の自立的・持続的発展と関連産業の国際競争力強化に貢献するため、我々2本柱で取り組んできておりまして、1つ目が(1)宇宙開発における新たな価値を創出する先導的な研究開発を進め、以下の1、2、3に示す特に顕著な成果を上げました。これらの成果創出に当たっては、(2)、2つ目の柱でございます、宇宙産業及びプロジェクトを支える科学技術基盤の強化に取り組んだ成果を活用し、特に1の分野ではプロジェクトを支えることで、2の分野では宇宙産業界と対話を進めることで、我が国全体としての成果の最大化に貢献をしました。
 先ほど髙橋委員の御質問のときに申し上げましたが、この後、私の説明の中でも、H3ロケットや「はやぶさ2」のサンプルリターンカプセルなどが出てきます。これはJAXAではプロジェクトとして活動しているもので、先ほど申した縦糸としてお考えいただけると、私たちは横糸としてそれを支えている、と言えます。それから、もう一つ今日は気を付けて説明しようと思っていますことは、我々が築いた技術は、そのプロジェクトだけではなく、ほかにも使えますという形で御説明を差し上げようと思っております。
 早速、1ポツですが、安全保障の確保及び安全・安心な社会の実現に貢献する研究開発についてです。1つ目のポツ、世界トップレベルまで忠実度を高めた回転機械内部流体シミュレーション技術を構築し、我が国の安全保障の確保に欠かすことができない宇宙輸送分野において、基幹ロケット(H3ロケット)開発の核心であるエンジン性能を確保するオープンインペラ形状を導き、開発コストの低減・開発期間の短縮に貢献しました。
 2つ目のポツですが、日本最先端の揚力誘導技術、日本独自の保冷技術、世界最高性能の計測技術を開発し、先ほどのサンプルリターンカプセルでございます。ペイロードを安全・確実に帰還させる小型回収カプセルのキー技術として、海外に頼ってきた実験サンプル回収を我が国独自の手段で実現し、自在性確保の観点でISS「きぼう」の価値を高めるミッションの成功に貢献をしました。
 3つ目のポツですが、これらの技術は、その汎用性の高さから、安全保障関連のみならず、回転機械機器の開発、例えば次世代ロケットの開発や、大気圏内で高精度な誘導則が要求されるミッションへの適用ができ、我が国の航空宇宙産業界の競争力を強化させ、宇宙利用拡大と産業振興への貢献も期待できます。また、JAXAの技術力が外部から評価された実例として、防衛装備庁の大型の外部資金である安全保障技術研究推進制度にて、スクラムジェット技術の極超音速飛行への応用などの研究を含む4件の研究が採択されております。
 2ポツ、宇宙利用拡大と産業振興に貢献する研究開発についてです。1つ目のポツですが、革新的衛星技術実証1号機にて、従来単独での実証機会が少なかった、要素技術を含む13テーマの軌道上実証を約2年という短期間かつ低コストで実現し、産業界の要望に応え、宇宙実証範囲を広げ、宇宙産業の競争力強化と裾野の拡大に貢献しました。また、衛星開発機会を提供し、JAXAはスタートアップ企業に的確な技術支援を行うという、新たな仕組みでの開発・打ち上げを成功させ、新規宇宙産業参入を狙う事業者の衛星開発・運用能力を格段に向上させました。
 上記の成果を踏まえ、スペース・デブリ除去ミッションを対象に、新規事業分野を開拓し、事業者が独自の事業を進めるための競争力を獲得することに向け、大規模な技術実証ミッション実施にやる気のある事業者の自立を強力に後押しをするサービス調達制度を具体化しました。
 3つ目のポツですが、これらの制度に基づく成果とJAXAの一歩先を行く研究開発成果により、宇宙産業界で事業化意欲を持つ企業が自己投資を行いJAXAと共同研究を行うという意識改革が進み、高速電波通信、光通信及びスペース・デブリ除去の研究において既に4社と共同研究が開始されています。これらの試みにより、宇宙利用拡大と産業振興を支えるための技術基盤を強化する環境が整備されるとともに、今後の安全保障の確保への貢献が期待できます。
 次に、3ポツです。宇宙科学・探査分野における世界最高水準の成果創出及び国際的プレゼンスの維持・向上に貢献する研究開発についてです。1つ目のポツですが、重量データ評価・誤差要因解析・航法誘導制御系の設計改良に加え、目標点の形状・高さを詳細に取り込んだ自動運用シーケンスを開発し、ミッション途中で小惑星表面のでこぼこが激しいことが判明しました「はやぶさ2」の世界に類のない高精度な小惑星ピンポイントタッチダウンの成功に貢献をしました。
 2つ目のポツ、オープンイノベーションの取組として、多くの非宇宙分野の企業(9割)の参加を得ながら、交付金・JST支援資金を上回る事業者の自己投資を引き出すなど、宇宙分野の研究システムの改革を定着させました。共同研究の成果として、宇宙探査と地上事業の双方に有用な世界最高水準の先端技術を実現しています。
 3つ目のポツですが、「はやぶさ2」の技術成果は、ランデブー技術として世界最高レベルであり、将来の宇宙探査のみならず、軌道上サービスやスペース・デブリ除去などのランデブー技術にも応用でき、ランデブー技術を競争力の源泉とする事業で我が国の確固たる競争力を確保でき、安全保障の確保や宇宙利用拡大と産業振興への貢献も期待できます。また、オープンイノベーションの取組は、複数の企業の事業化につながっており、宇宙利用拡大と産業振興に対しても貢献する成果であると言えます。
 なお、年度計画で設定した業務は、計画どおり実施いたしました。
 以上で御報告を終わらせていただきます。

【渡邉専門職】  それでは、質問等ございますでしょうか。
 末松委員、お願いいたします。

【末松専門委員】  最初の題目のところに、科学技術基盤の維持・強化の後に、括弧でスペース・デブリ対策、宇宙太陽光発電を含むと書いてあります。スペース・デブリ対策についてはお話があったのですが、宇宙太陽光について説明がないようなので、どんな状態になっているのでしょうか。加えて、もともとの年度計画を見ると、太陽光発電に係るエネルギー送受電技術及びLNG推進技術というところも書いてございますので、含めて御説明いただけますでしょうか。

【JAXA(佐野)】  お答えいたします。今日ここに特別に書いていない理由として、ここに書いてあるものは、主にSに関わる点を特出しで書かせていただきました。太陽光発電のテーマとしては予定どおりに推進してございます。年度計画で設定した業務は計画どおり実施したと1行で書いてございますが、まさにそのとおり、計画どおりには進んでございますので、御心配はなさらないでください。

【末松専門委員】  分かりました。もしも何か追加であれば教えていただければと思います。

【JAXA(佐野)】  もちろん大きな成果が出れば、このような形で特出しでまた御説明できる機会は来るかと思います。

【JAXA(中村)】  それでは、現状どこまでやったのか、年度に従ってやったものはどこまでかというものは、別途資料として示したいと思います。

【末松専門委員】  どうぞよろしくお願いします。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 それでは、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】  御説明ありがとうございました。私も長くJAXAの評価に関わらせていただき、何度かJAXAを訪問させていただいて、JAXAの有する横断的な要素技術が極めて高い、技術力が高いという点は承知しているつもりです。ですので、できるだけこういう場では、国際水準とのポジションが分かるような説明の仕方を紹介していただけると、委員の方にもそのすごさがより分かるのではないかと思いますので、もし可能であれば、後ほどでもいいですので、それぞれの項目の国際水準におけるポジションを是非示していただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。

【JAXA(佐野)】  承知しました。受け取らせていただきます。

【渡邉専門職】  ほかございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に参らせていただきます。続いて、ローマ数字3 .3.8、宇宙科学・探査について、JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(國中)】  宇宙科学研究所所長をしております國中と申します。宇宙科学・探査の部分につきまして、御説明を申し上げたいと思います。項数はローマ数字3 .3.8、宇宙科学及び探査です。
 18年度自己評価はSを申請申し上げたいと思っております。それで、これからの説明につきましては、皆様はA-91ページ目からご覧いただければと思います。
 まず本年度18年度実施しましたことは、「はやぶさ2」探査機の運用でございます。このプロジェクトにつきましては、2014年に探査機を打ち上げまして、3年半掛けて18年度6月に小惑星リュウグウへのランデブーに成功いたしました。9月から10月期にかけましては、JAXAが作りましたミネルバ2という2機のローバ及びドイツ、フランスが共同で開発しましたMASCOTランダを小惑星表面に着陸させることに成功いたしまして、この3機のロボットが小惑星表面の詳細なデータを送ってきております。
 A-91ページ目の真ん中に示すものは、ミネルバロボットが小惑星表面でジャンプしながら活動しながら撮った、躍動感のある写真を掲載させていただいております。
 それから、2月になりまして、表面への着陸、タッチダウンオペレーションに成功いたしました。右側の写真は、タッチダウンに成功して、すぐさま離陸をして上昇中にカメラで撮った写真でございまして、「はやぶさ2」の影が小惑星の表面に写り込んだ写真を掲載させていただいております。
 このように、折しも米国NASAも同様の小惑星探査、サンプルリターンミッションを今、同時並行で行っておりまして、競争関係の中、「はやぶさ2」が米国のOSIRIS-RExに先んじて着陸に成功しましたということを御案内させていただきたいと思います。
 また、このような臨場感のあるオペレーションにつきましては、JAXAがWebを使いましたライブ中継を実施いたしました。そのときの模様をこのページの下側に掲載させていただいております。また、メディア、各新聞・テレビ局もこのオペレーションには大変関心を寄せておりまして、多くの取材があり、たくさんの放送がなされました。宇宙開発の意義価値への理解増進につながったと考えております。
 また、次のページに移っていただきまして、この「はやぶさ2」の探査の科学的成果が続々と創出されております。『Science』誌に3編の論文が掲載されました。92ページ目の右側の写真は、搭載されております観測装置による分析結果の論文の1ページを示しております。また、プロジェクトのミッションマネージャの吉川准教授が、『Nature』誌が選ぶ今年の10人に選ばれております。その写真が92ページ目の下側に示されております。また、イオンエンジンの開発努力における功績が、東レ科学技術賞により評価されております。このように第三者から高い評価が得られておるということを御報告させていただきたいと思います。
 A-93ページで、まず冒頭は、「あらせ」という磁気圏観測衛星の成果、それから、下半分は、GEOTAILという古い衛星が出しました科学データも論文に掲載されております。それから、94ページ目につきまして、金星探査機「あかつき」の成果も論文発表させていただいております。このように、従来よりも増して、査読付き論文を、前年度比1.3倍の多くの成果を発表することができております。
 95ページ目につきまして、宇宙科学研究所の活動については、宇宙政策委員会宇宙産業・科学技術基盤部会宇宙科学・探査小委員会等から御指導いただいておるものですが、この委員会の中でもディベートにおきましてJAXAより宇宙活動のプログラム化とフロントローディングという御提案をさせていただきまして、具体的な予算化までこぎつけさせていただいております。この説明をしたページが95ページ目になってございます。中段右側の図で、フロントローディングという施策について簡単に御説明させていただきたいと思います。従前はボトムアッププロセスで、基礎研究から始めて、そこから宇宙につながる技術を抽出してミッション探求フェーズ、ミッション定義段階、概念設計、計画決定、そして、プロジェクト化して、ここから衛星開発に着手するわけですが、基礎研究からプロジェクト化に向けての活動根拠が十分にないため、従前は一番下の黒い矢印で示すような基盤費でもって細く長くこの矢印を進んでおったのですが、その結果として、技術の洗練度がなかなか高くならず、コストオーバーランや納期の遅延を起こしておりました。そこをフロントローディングという、前広に費用を積極的に投下することによって技術の洗練度を上げて、プロジェクト化した以降ミスのないような技術開発ができるような御指導を頂いたものと考えております。
 そして、この年度につきましては、ヨーロッパ宇宙機関と共同でBepiColombo探査機の打上げを行いました。そして、水星に向けて「みお」という衛星の打上げを行っております。95ページ目の下の写真は、アリアン5のロケットの写真を掲載させていただいております。国際共同ミッションに大きく貢献できたと考えております。
 96ページ目ですが、MMX、火星衛星探査計画という計画を抱えておりまして、ここにフランス国立宇宙研究センター及びドイツ航空宇宙センターが開発します小型のローバを搭載する国際共同計画を進めており、その調印式の写真をこのページの冒頭に示させていただいております。また、MMXプログラムを進めるにおきましては、火星から物質を地球に持って帰ってくるわけですが、安全性に関するレビューをする必要がございます。2番目の丸を付けたセンテンスになりますが、ここの4行目のところから読ませていただきますと、火星衛星で取得するサンプルの微生物汚染確率の評価を行いまして、その結果、COSPARの許容値よりも小さいということを示すことができ、MMXプログラムを加速的に進めることができるようになりました。ミスプリントがありまして、「COSPARの許容値(10-6)」という記載がありますが、これは10-6になります。したがいまして、100万分の1ほどしか微生物が入っていないということが示されましたということがここに記載されてございます。
 また、米国とも共同研究を進めておりまして、彗星サンプルリターン(CAESAR)の共同研究を行っておりました。彗星サンプルリターンに必要なカプセルを日本から提供する旨で共同研究を行っておりましたが、これは先週金曜日にこのNew Frontiers Programの選定が実施され、大変残念なことに、このCAESARミッションは米国のNASAからは選定に漏れました。このCAESARの代わりに選ばれましたミッションは、ドラゴンフライという土星のタイタンという衛星にドローンを飛ばして探査するという計画でございまして、実はこちらにも宇宙研からセンサを提供するというコラボレーションを既に進めております。このように多角的かつ戦略的に世界対話をしておりますという1つの事例であると思いますので、その旨御報告させていただきたいと思います。
 また、人材育成につきましても、18年度はテニュアトラック型特任助教制度を新たに開始いたしました。それにより2名の若手研究員を確保いたしました。
 また、今後の宇宙科学・探査分野を支えるための研究者人材育成・採用・活用に関する方針・計画を戦略的・計画的に議論する場として、「宇宙研人材委員会」を新たに発足させまして、計画的な人材育成を図る予定でおります。また、宇宙研で受け入れた学生を「はやぶさ2」の運用・管制業務に参加させるなど、宇宙プログラムを学生に経験させる機会を新たに設けております。
 また、年度内で計画いたしました業務は、計画どおり実施いたしました。
 説明は以上となります。

【渡邉専門職】  それでは、御質問等ございますでしょうか。
 末松委員、お願いいたします。

【末松専門委員】  すばらしい成果が出てきていて、S評価であると非常に分かる感じではあります。最後のところで、宇宙研で受け入れた学生を「はやぶさ2」の運用・管制業務に参加させることは非常にいい取組かとは思うのですが、これは、業務に参加させるときに、例えば労務費というわけではないものの、何らかのファンドなのか、それとも、支払いをしているのでしょうが、これは業務をやっているというふうになってしまうと支払いをするなど、何かそういう金銭的な支援をしていらっしゃるのかどうかということはいかがでしょうか。

【JAXA(國中)】  リサーチアシスタント制度(RA)という、大学院の学生に供与するファンド、費用枠がありますが、そちらを使いまして、時間給でいうとアルバイト程度のものになりますが、費用の拠出は行っております。

【末松専門委員】  なるほど。こういうところに、かなり積極的に参加させて、例えば従来のRAよりお金をサポートしてあげるというようなプログラムがあると、学生が残りやすくなるかと少し思って言ってみました。ありがとうございます。

【JAXA(國中)】  今のところは、宇宙研にポジションのある学生にしかこの応用はできないのですが、この制度を更に拡大させて、近隣の学生にも適用できるような制度設計を現在行っておるところです。

【末松専門委員】  研究に残りそうな学生さんがいたら、是非こういうものを使って、そのまま上がっていっていただけるというような形のシステムに作っていただきたいというふうに思っております。

【JAXA(國中)】  引き続き努力させていただきたいと思います。どうもアドバイスありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかございますでしょうか。
 中村委員、お願いします。

【中村臨時委員】  成果の方はすばらしいことで、大変おめでとうございます。最後の人材育成のところでお伺いしたいのですが、宇宙研人材委員会をどのような規模でどのような広がりで設けられているのかということを教えていただきたいです。宇宙研の中だけなのか、近隣の大学など全国的な広がりを持った委員会を組織されているのかという点です。

【JAXA(國中)】  この中の考え方としては、宇宙科学研究所ないしJAXAの制度と致しまして、プロジェクト研究員や招聘研究員、海外から研究者を呼び込むITYF(トップヤングフェローシップ)制度等、様々な制度が今のところ混在しており、どの制度がどういう人のために設けられているのかということが少し曖昧になってきております。また、大学院学生についても、連携大学院や、東大の学際、総研大など、様々なルートで学生がやっていており、そういった制度がかなり混在しております。これを整理整頓いたしまして、体系的かつ有機的に学生がどのようなポジションを使いながら宇宙開発あるいは宇宙科学の領域に根付くことができるのかということを全体的に俯瞰するようなことができるようなことを議論するための委員会として作りました。したがいまして、この委員会のスコープとしましてはJAXAの中の人材の取り扱いについてということになります。JAXA内向きを見た委員会になります。

【中村臨時委員】  今、JAXAとおっしゃったのですが、宇宙研と書かれています。JAXAの中の……。

【JAXA(國中)】  まずは宇宙研内でこのやり方を検討いたしまして、ゆくゆくはJAXA全体にこの制度を発展させていきたいと考えております。

【中村臨時委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 それでは、多屋委員、お願いします。

【多屋臨時委員】  人材育成のところで、2名を採用し、と書いてありますが、どのぐらいの応募があって、その中の2名を採用なさったのでしょうか。教えてください。

【JAXA(國中)】  今数字は覚えておりませんが、内規と致しまして、3名以上の募集があることということが1つ内規になっておりましたので、少なくとも3名は超えていたというふうに認識しております。詳細な数字は、追って調べて御報告させていただきたいと思います。
 また、この制度は、年間数名程度確保いたしまして、5年まで採用すると。そして、2年経過した後に、本人の求めに応じて審査を行いまして、パーマネント型の助教授に昇進させるかどうかを決めるという仕組みになってございます。

【多屋臨時委員】  ありがとうございます。重要な制度だと思いますので、ますます強化させてください。お願いします。

【JAXA(國中)】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかよろしいでしょうか。
 はい、お願いします。

【梅比良部会長】  A-98のところに博士課程の方も修士課程の方も、宇宙分野ということで、公共機関で7名と書いてあって、JAXAとNASAで5名、ほかにはどういうような機関があるのか、もし差し支えなければ教えていただければと思います。

【JAXA(國中)】  科学技術振興機構や……、あとは何でしょうね。後ほど調べて御報告させていただきます。

【梅比良部会長】  それで結構です。どうもありがとうございます。
 なかなか宇宙の分野で社会に出てやはり活躍できるようなところがそんなにたくさんあるわけではないので、どういうところがあったのかということを知りたかった旨です。もし分かればお願いします。

【JAXA(國中)】  はい。

【渡邉専門職】  ほかはございますでしょうか。
 赤松委員。

【赤松臨時委員】  宇宙探査なのであまり考えられることはないことかもしれないですが、例えば評価に際して、やはり研究の成果が世界的にどうだったかということや、論文として採用されたのが何件だったかということが指標になるのかと思うのですが、やはり公的な取組ですので、それ以外に国民に対して、例えばどういう効果やどういう利益を創出できたのかという観点で、何かお考えになられているところはございますか。

【JAXA(國中)】  まずは積極的なアウトリーチを掛けまして、メディアを使う、それから、JAXA及び宇宙研のWeb配信などを使いまして、宇宙科学・探査の意義価値の理解の増進を進めるというところがまずは目標かと思っております。その先には、若いお子様などが、それから、学生がこういった領域に興味を持って、宇宙だけには限りませんが、科学技術の領域に進んで、その後、産業界に貢献してもらうというパスを想定しておるものです。

【赤松臨時委員】  なるほど。私も今、明確な考えというか答えがあるわけではないのですが、やはりこういった活動が社会に対して何をフィードバックできるのかということは不断に考える必要があると考えておりますので、是非御検討をよろしくお願いしたいと思います。

【JAXA(國中)】  はい。どうもありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかよろしいでしょうか。
 それでは、休憩に入りたいと思います。少し時間が押しておりまして、申し訳ありませんが、今、私の右手にある時計で35分となっておりまして、次、5分後、40分から開始をさせていただきたいと思います。次、40分からということでよろしくお願いいたします。

( 休憩 )

【渡邉専門職】  それでは、ヒアリングを再開いたします。
 続いて、アジェンダのローマ数字3 .3.4、宇宙輸送システムについて御説明をお願いいたします。

【JAXA(布野)】  JAXAで宇宙輸送系を担当しております布野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 調書のA-50ページをお開きください。宇宙輸送システムでございます。18年度の実績につきましては、イプシロンロケット4号機におきまして、複数衛星同時打上げを世界トップレベルの打上げ環境にて成功し、多数機の相乗りミッションへの適用性を実証するとともに、政府の安全保障衛星を含むHⅡ-A/Bロケットの確実な打上げ成功によりまして、世界水準の成功率並びに世界トップレベルの打上げオンタイム率を維持する等、継続的な改良、継続の取組によって、研究成果の最大化に向け、顕著な成果を上げるとともに、2020年度初号機打上げに向けまして、H3ロケットの開発を着実に実施するなど、年度計画で設定した業務を計画どおり実施したということで、自己評価をAとさせていただいております。
 具体的な内容につきまして、まずイプシロンロケット4号機では、複数衛星搭載構造、キューブサット放出機構等を開発いたしまして、イプシロンロケットとしては初めて複数7機の衛星を太陽同期軌道へ同時に打上げることに成功いたしました。イプシロンロケットはこれまで3機打ち上げて、音響、振動、衝撃の世界トップレベルの環境条件、トップレベルの環境条件並びに小型推進系による高精度軌道投入技術を実証してきたところでございますが、4号機ではこれらの成果を最大限に活用し、固体ロケットにおいても多数機の相乗りミッションへの精度よい対応を実証しました。これによって、太陽同期軌道における今後需要が見込まれます小型衛星等への打上げ市場へのイプシロンロケットの国際競争力を強化し、市場参入の新たな手段を確立したという評価をしてございます。併せまして、4号機に載りました衛星搭載ユーザーの各位からは、環境条件等に関し、これまで経験したことのある海外ロケットと比べて、最もよい打上げ環境であったという高い評価をいただいております。
 さらに4号機の打上げに際しましては、確実な打上げの実施のために新たな取組を2点実施してございます。1つは、飛行安全に関する改善でございます。イプシロンロケット4号機は、国際宇宙ステーションと軌道が接近しており、従来から実施しております物体間の相対距離による飛行安全では、打上げ期間を確保することが困難でありました。今回4号機では、衝突確率に基づく確率COLAという新たな評価手法を開発いたしまして適用することにより、打上げ期間が限られている中での打上げに貢献してございます。また、7機の衛星を打ち上げるに際しまして、小型衛星キューブサットはJAXAの地上局のないところでの分離を予定されており、イプシロン4号機は、分離後デブリ発生防止のために軌道変更、廃棄処理をするために軌道周回後の分離確認が難しい状況でございましたが、別途簡易なホーンアンテナを開発いたしまして、カナダで簡易的に確認するということで、簡易的な軌道確認の手段も技術実証したという点が挙げられます。
 4号機からはHⅡ-A/Bロケットと同様に、将来の打上げサービスを目指し、JAXAのインテグレータ方式から製造プライム方式に変更いたしまして、射場作業におけるJAXA人員の削減、それから一貫した品質向上につなげております。また、4号機からは、昨年11月15日に全面施行となりました活動法下での打上げを実施してございます。
 51ページに、継続的な打上げに関して御説明を申し上げております。種子島でH3ロケットの開発が打上げと並行して実施されてございますが、開発試験を縫いながら確実な打上げを実施いたしまして、世界水準の打上げ成功率及び世界を凌駕するオンタイム打上げ率を維持してございます。これら継続的な取組が評価されており、世界有数の衛星オペレーターであるインマルサットから、来年の商業衛星の打上げを既に受注しているところでございますが、昨年度はH3ロケットの打上げも受注につながったというところで、成果が上がったというふうに評価してございます。
 今、申し上げたのを図で補足いたします。A-52ページに、7機を打ち上げた衛星の構造を示してございます。それから、53ページに、7機の衛星分離のシーケンスが書いてございまして、衛星を分離した後、ロケットの姿勢を変更し、逆噴射して軌道を下げるということで、確実な分離を7回繰り返すことによって、決められた軌道に衛星を分離してございます。
 54ページにイプシロンのこれまでの成果がございますが、これまで1号機から3号機でコンパクトな打上げ、トップレベルの環境、それから高い精度に加えまして、今回複数衛星同時打上げを実施したところでございまして、55ページ、56ページにその成果の概要として、トップレベルの環境状況、それから非常に高い軌道投入精度等のデータを記載してございます。
 57ページに、飛行安全の取組ということで、左側が従来やっております距離評価方式ということで、これは確実に安全が確保されるわけですが、非常に安全側過ぎるため、打上げ機会の確保等が困難になる場合があるということで、今回確率評価方式によって、限られた予備期間の中での打上げにつながったというところでございます。
 それから、58ページに簡易なテレメータ局ということで、右に大型のパラボラアンテナの対比で書いてございますが、このような簡易な受信局を持ち込みまして、分離確認を実施したところでございます。
 それから、最後になりますが、A-60ページに、ベンチマークといたしまして、打上げの成功率、それからオンタイム打上げのデータを記述してございます。
 御説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  ただいまの説明に対して御質問等ございますでしょうか。
 それでは、冒頭梅比良委員、続いて後藤委員の順番で、済みませんがよろしくお願いします。

【梅比良部会長】  A-54ページ、世界トップレベルの衛星搭載環境という言葉が入っております。音響、振動、衝撃が少ないということは非常によく分かるのですが、これによってどういう効果が出てくるのか、少々御説明いただけますでしょうか。

【JAXA(布野)】  衛星側で環境試験をやるときに厳しくないということで、設計等で自由度が生まれ、厳しい試験をしなくても済むというところでメリットがあるというふうに理解してございます。

【梅比良部会長】  それは最終的には、例えば衛星の低コスト化につながることや、あるいは信頼性を上げることにつながるなど、そういうことでしょうか。

【JAXA(布野)】  そういうことにつながっていく要素だというふうに理解しております。

【梅比良部会長】  そういうことにつながるといことですね。分かりました。どうもありがとうございます。

【後藤委員】  自己評価がAということですが、Sになるためにはどういうことをこれからやる必要があるのですか。

【JAXA(布野)】  イプシロンでは、衛星の機能的には、いわゆる世界の競合ロケットと伍していける機能を実証できたということや、世界トップレベルの環境レベルということでAにしているのですが、やはりSを頂くためには、国際競争力を持たせたロケットとして仕上げていく必要があると考えます。そもそも、政策的にもこの後の段階になるシナジー開発というところでそういうことに取り組むということになっています。そのため、その点を考えると、まだSを頂くには少々早いという自己評価をしてございます。

【後藤委員】  具体的には受注件数を増やすなどそういうことですか。

【JAXA(布野)】  はい。そういう国際競争力を付けていくということがイプシロンの課題だというふうに認識してございます。

【後藤委員】  ありがとうございました。要望になりますが、これからの説明も、いわゆる具体的な内容なので、ランクアップするためには何が必要なのかという点も説明していただけると、僕はありがたいです。つまり、例えば衛星測位で言えばBだが、Aになるためには何が必要なのかというような説明を、できればいただきたいと思います。

【JAXA(中村)】  分かりました。これから説明する者にそういうふうに伝えながら、説明させます。

【後藤委員】  強く言わなくていいですが。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。それでは、入澤委員、お願いします。

【入澤専門委員】  入澤と申します。A-59ページのイプシロンロケット4号機の機体精度に係るところについて、3号機まではいろいろなメーカーさんにお願いしていて、4号機から一括してやったということなのですが、これによってJAXAの人員は削減したとは思うものの、結果的に作業を全部外注1社にしたように見えるのですが、この結果、3号機までと4号機でコスト、費用については削減できたのですか。

【JAXA(布野)】  実質JAXAがやっているものをプライムに任せるということで、その分、いわゆるダブルGCIPがかかるということで、若干打上げコストは上がっています。

【入澤専門委員】  上がるのですね。

【JAXA(布野)】  はい。それはHⅡ-A/Bでも同じことがあったのですが、民にできることは民に移すという中で、今は、一時的に上がっているものを、今後プライムでまとめていただき、効率化を図っていくという中でコスト削減を図っていくことや、JAXAの要員が減るなど、そういう諸々のメリットがある中で、最終的には打上げサービス化に向けての第一歩ということで、4号機に関しては若干コスト的には上がったというところでございます。ただし、プライムが一貫して品質保証することや、水平展開を一元的にやるなどそういうメリットもあり、一概にコストが1機だけ上がったからといって望ましくないという評価はしてございません。将来的に向けての一歩を切ったというところが4号機の評価でございます。

【入澤専門委員】  そうすると、5号機以降も基本的にはこのIA社がやらないと意味がないということですよね。

【JAXA(布野)】  はい、そうです。

【入澤専門委員】  10号機でも15号機でも、1つの会社がずっと契約してやっていくということに。

【JAXA(布野)】  先ほども申し上げましたが、政策的には、もともとイプシロンは1段のSRBというブースターがHⅡ-A/Bと共通化しているということで、今後はH3に替わることもあり、今後、政策的にはHⅡ-A/BがフェーズアウトするまでにH3シナジー効果で切れ目ない開発をするという意味で、令和5年くらいには民間にフェーズアウトするものになります。そのため、そこまでは今の体制ですが、その先は国際競争力を持たせたシナジーのイプシロンということで、今、検討をしているところでございます。

【入澤専門委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほか、よろしいでしょうか。それでは、梅比良委員、続いて藤本委員。

【梅比良部会長】  先ほどのお話に少し関わるのですが、例えば、衛星搭載環境がすごくよくなることによって、イプシロンロケットの国際競争力が上がるというような話にはなるのでしょうか。

【JAXA(布野)】  先ほども申しましたが、衛星側にとっては、やはり乗り心地がよかったということがあり、それはまさしく生の声として伺っておりまして、仮に厳しい環境ですと物が壊れるなどという中、定量的に幾ら安くなるなど、そういうところには及んでおりませんが、やはり乗り心地がいいロケットは、ユーザーから見ては評価していただいているポイントだとは思います。それで一概に幾らいうところまではまだいっておりませんが、1つの売りにはなるかとは思っています。

【梅比良部会長】  分かりました。今後に期待しております。

【JAXA(布野)】  はい。

【渡邉専門職】  それでは、どうぞ。

【藤本専門委員】  梅比良部会長の御質問と重なるのですが、今、評価指標を見ていて、例えば複数衛星同時打上げの成果を、どの評価指標で評価をするのかといったときに、国際競争力強化に貢献したというような形だけなのでしょうか。何かほかにもいろいろありそうな感じもするのですが。

【JAXA(布野)】  まず、ロケットは評価指標がなかなか難しいものがございます。例えば、オンタイムで打ったということや、成功率がどうかというところがございますが、イプシロンを4基まで打ってきて全て成功しているという点や、オンタイムで打っているところなども評価しており、また、例えば56ページを見ていただくと、左の下が軌道投入精度のスペックと実際のところになりますが、ある幅の中で、まずイプシロンは競合ロケットに比べても非常に高い精度の中で実態としても、赤で書いてあるとおり、非常にいい精度に入ったという点など、そういう実績をもって評価しているというところでございます。

【渡邉専門職】  では、赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  今の質問と重なりますが、本当にここで市場参入の新たな手段というふうにおっしゃっているのであれば、コスト面やマーケットが要求する価格感などの観点での比較が必要だと思います。国際的な市場では、小型のロケットも増えており、エレクトロンなど既に実際に打上げを開始しているロケットもありますので、そういうものと何かきちんと比較をされているのであれば、その辺の情報をお教えいただければと思っています。

【JAXA(布野)】  現状、ざっくり言うと、38億円ぐらいの機体です。次に目指しているところが30億円以下ということで、そういうところのレベルにいけば、国際競争にも対抗できるという分析をしており、そこを目指して次のフェーズに向けての検討をしていくということでございます。

【赤松臨時委員】  そうであれば、先ほど述べたエレクトロンでは10億円を下回るというような価格感でやっているものと、どのように本当に市場競争力を持ってやっていくのかということが、もう少し数量的な指標で比較をしていく必要があるのではないかと思います。

【JAXA(布野)】  おっしゃるとおりですが、評価指針は、必ずしもコストだけではないと思っておりまして、打上げ環境やサービスなど、そういう諸々の物の中での評価とでございます。そういう多面でのベンチマークをしつつ、次のものにつなげていきたいと考えてございます。

【赤松臨時委員】  そうですね、しかし、今回価格の話は資料上出ていないので、少なくともそこは評価の中に入れていただく必要があるのではないかと思います。

【JAXA(布野)】  前提になりますが、イプシロンはもともと2段階で進めるということで、こういう機能やコンパクトな物を目指すということと、国際競争力を求めていますが、開発の進め方として、第1段階をここまで、次が国際競争力と、そういう途中段階にあるというところは御理解をいただきたいと思います。

【赤松臨時委員】  分かりました。課題として認識いただければと思います。

【JAXA(布野)】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  よろしいでしょうか。
 それでは、次にまいります。次は4つの事項、衛星関係についてまとめて説明をいただきます。ローマ数字3 .3.1「衛星測位」、ローマ数字3 .3.2「衛星リモートセンシング」、ローマ数字3 .3.3「衛星通信」、ローマ数字3 .3.11「人工衛星等の開発・運用を支える基盤技術」について説明をお願いいたします。

【JAXA(舘)】  それでは、第一宇宙技術部門の舘から説明いたします。
 今回4つございまして、最初の3つが衛星関係の項目でございまして、最後はその衛星を支えるための追跡管制及び環境試験技術に関する説明でございます。
 それでは、お手元の資料のページ、A-5でございます。まずローマ数字3 .3.1の衛星測位の方から御説明したいと思います。
 衛星測位の方の自己評価はBといたしました。その背景については以降、御説明申し上げます。
 最初に、A-7ページを御覧いただければと思います。A-7ページの特記事項が書いてございますが、この中の6項目めでございます。ここは昨年の11月1日に内閣府より実用準天頂衛星システムのサービスがサービスインしたということで、こちらは「みちびき」の1号機から4号機が運用に供しまして、サービスインが始まったということでございます。そういう背景のもとに、私どもが昨年行ったことでございますが、「みちびき」の2、4号機に対しては技術監理業務として、いわゆる中のチェックをやるという業務を受けまして、また、私どもは一昨年から、将来の衛星ということで、5号機、7号機を対象とした高精度測位技術の研究開発というものも受託をしておりました。その受託の成果が出たということで、今度はその5、7号機に搭載いたします高精度測位システム開発を受託したという成果でございます。それについて、続いて詳しく御説明したいと思います。
 A-8ページでございます。こちらの方は最初に3項目挙げております。最初の高精度軌道時刻推定技術に関する研究開発ということでございますが、いわゆるGPSやほかの衛星を含む複数の衛星を踏まえた精密軌道・クロック推定システム(MADOCA)は数センチの精度を出すというシステムでございます。今までは研究開発用に使っていたのですが、やはり設備では様々なトラブルが発生するということで、異常データの棄却機能など、それを安定するための仕組みを構築いたしまして、データの配信を安定させるというところがございます。これはインターネットを通じても入手することができます。また、それだけではなくて、国土地理院さんの方では、このシステムを電子基準点のリアルタイム解析システム(REGARD)というものに導入していただき、万が一電子基準点が被災した場合でも使えるような仕組みを作っていただきました。一方、気象庁の方では、高層の気象観測データ統合処理システムにこのMADOCAを入れることで、時間的な間隔について、従来ですと1時間かかったところ、10分ごとに推定できるというような仕組みを構築していただきました。これが1番目でございます。
 2番目は、高精度測位システムの開発でございますが、こちらの方は先ほど申しましたように、内閣府さんの方から、将来の準天頂衛星ということで受託をいただきまして、その委託内容というものが丸1~丸3とございます。後ほど御説明したいと思います。その成果が出たということで、実際に5、7号機に搭載する高精度測位システムの開発業務を昨年度末に受託をいたしました。
 3番目でございますが、こういう測位利用について、ビジネスの推進ということで、MADOCAにつきましてはグローバル測位サービス株式会社(GPAS)を通じてこの機能を拡大していこうという状況でございまして、一昨年に契約を結びまして、今、展開を進めているところでございます。
 詳しくはA-9ページから詳細を説明していきますが、まず気象庁のやっている高層気象観測データ統合処理システムについて、こちらは気象庁さんで解析したデータでございますが、一番左側のところが、いわゆるGPS等のデータを用いて高層の水蒸気を観測し、分析するというものでございます。その結果と気象レーダ、アメダスの3時間の降水量を比較しますと、非常によく似ているというところでございます。これが気象予報等に使われている状況でございます。従来はこれが1時間置きだったものが、この我々のMADOCAを入れることによって10分置きに向上させることができたというところが特徴でございます。
 2番目の右側のところでございますが、これは研究開発した内容で、3点ございます。こちらはいわゆる精度をよくしようという努力でございまして、1番目が軌道の測距精度を上げるために衛星間でそれの軌道精度を測定するという試みでございます。2番目が、衛星と地上間でそれぞれ電波を受信することによって、時刻の精度を上げるというものです。途中に電離層などございますが、それをキャンセルすることによって時刻の精度を上げるものになります。3番目が、高精度な原子時計に対して時刻の予測精度を上げるという技術でございます。これらについては所定の性能を出したということでございます。
 以上をもちましてBとした評価の趣旨でございますが、我々、Aとするためには、やはり測位の利用ビジネスを展開しなければいけないと考えております。それが実現できるならばA、若しくはSということを想定したいと思っておりまして、現段階ではややそこに対しては物足りないということで、現在Bという評価をいたしました。
 続きまして、説明を衛星リモートセンシングの方に移させていただきます。ページでいいますと、A-12ページでございます。
 こちらの方はSという評価をいたしました。その背景でございますが、まずA-16ページに、JAXAが今持っている衛星について書いてございます。小さな衛星、あるいは米国で運用している衛星も含めますと、現在のところ8つの衛星が運用しております。次のページに、現在開発中の衛星が3つございまして、さらに研究している衛星が1つございます。このような状況で、現在運用しております。
 その中でも特に成果の上がったところにつきましては、A-18ページから細かく御説明をしたいと思います。まず、防災分野でございます。防災分野につきましては、これまでの経験を踏まえて、この衛星データを使うということがかなり定着したと思っております。そのポイントといたしましては、まず地方の整備局や地方自治体にまで、できれば災害現場での衛星利用を定着させるという課題がございまして、これについて一歩前進したと思っています。この背景には、国が定めた防災基本計画に対して国土交通省さんが防災業務計画において、実際に運用に使うというレベルにまで、この人工衛星を使うということを記載されまして、地方整備局による災害現場の衛星利用が定常化したところがございます。それだけではなくて、各地方自治体でもこういうマニュアルを作るという動きが出てきたところです。マニュアルを使ってデータ利用をした例としては、2ポツ目の徳島県の例でございます。昨年のちょうど今頃、西日本の大豪雨がございましたが、この際に、あらかじめ台風の予測ができており、徳島県あたりを通るのではないかということで、我々は依頼を受けて、そこを撮動いたしました。その結果、その後で解析してみると、道路が閉鎖されたというような箇所が分かり、すぐに対応に行ったという例がございました。
 (2)でございます。これは災害直後だけではなく、二次災害を防ぐという意味でも衛星の利用をされたという点ですが、これは北海道の胆振東部地震において湛水するというところがございまして、それを把握するということで、この利用が進みました。
 一方、災害発生前の恒常的な観測ということでは火山でございますが、日本には活火山が111ございまして、この火山に対して噴火予知連の方でこれらのデータを使って報告や公表がされております。その中でも山体の変化というものを捉えて、噴火の警戒レベルの判定基準に使うということが現在、進められており、現在、43ある火山のうち6つの火山で、その判定基準にもALOS-2のデータが使われるようになりました。国外についても、衛星のこういう防災利用という意味では、ハワイのキラウエア火山や、あるいはインドネシアの島で火山が崩壊した、または津波が起こったというようなことにも、この衛星データが活用されておりまして、これは後ほど御説明したいと思います。
 続きまして、次のページでございます。ALOS-2の合成開口レーダによる高精度・広範囲かつ低コストのインフラモニター技術でございます。こちらにつきましては、十数枚の衛星データを使うことによって、例えば河川の堤防や港湾、あるいは空港といったところのわずかな変位を調べることができます。それによって、劣化が起きていればそれを実際に補修するというようなことに活用できないかということで、この研究を進めてまいりました。国交省さんのSIPのファンドを使いまして、事業者さんと協力しながら開発を進めてきて、国土交通省さんの新技術情報システムに登録する申請を昨年度行って、実は本日、登録が了承されたという知らせがありました。ということで、これを受けまして、我々としては代理店を通じて広く社会に普及させていきたいと思っております。
 また、3番目ですが、気候変動対策の衛星利用の拡大について、我々は複数の衛星を使ったGSMaPで世界の雨の状況を見るものでございますが、気象庁さんが行います世界気象機関(WMO)のナウキャスト地区特別気象センターという機関がございまして、そちらに掲載されるようになりました。これはアジア地区が使っているのですが、このアジア地区で我々のGSMaPが気象予報にも使われるようになったということで、これも一歩前進したというふうに考えております。
 続きまして、温室効果ガス観測につきましては、5月のIPCCの京都の会議におきまして、新しいIPCCのガイドラインができました。2006年度版の古いガイドラインでは、衛星センサはあまり使えないというような表現だったのですが、新しいガイドラインにはまさに衛星が使えるということを全面に出していただいて、GOSATの名前も出ております。背景としては、2009年に衛星が打ち上がり、その間10年間観測した結果を見ると、衛星からも十分にCO2を測定できるということで、これが例えば、発展途上国のような観測手段がないところでも、この衛星を使うことによって補えるということですから、非常に効果があるということが、進歩が出た1つの理由だと思います。
 その他、政府の宇宙政策に関しては、例えば、経産省さんが進めていますオープン&フリーのデータプラットフォーム「Tellus」に私どものデータを供給することや、あるいは、これまでのALOS-2の成果を踏まえまして、ALOS-3、ALOS-4の開発を進めていると同時に、その次も考えるということでシンポジウム等を開いております。
 続いて20ページですが、簡単に御説明いたしますと、ここに先ほど申しました防災基本計画から防災業務計画、そして地域の防災という形をここに記述してございます。
 21ページでございますが、これも先ほど申しました徳島県の例でございまして、衛星で観測したものを直ちに判別しまして、実際に現場に行ってこんな状況だったという情報を捉えて、その上で例えば、交通をとめるというような手段がとられたということでございます。
 22ページは、北海道胆振東部地震における河道閉塞の状況を観測した例でございます。
 23ページですが、インドネシアのクラカタウ火山の噴火によって地形が変化したということで、こちらの方は世界のメディアが報道した例でございます。
 24ページは、SARのデータによるインフラモニターの例でございます。これは数ミリ程度の精度で測定できるということで、例えば、25ページでございますが、従来のやり方である、いわゆる水準測量や航空レーザーの測量と比較して、衛星SARの解析は、今ある種簡易にできるものになります。我々はツールを開発いたしましたので、そのツールを使うことによって誰でもできるような方向に持っていっております。そうすることによってコスト的には、これはJAXAの試算なのではっきりとは言えませんが、3分の1程度でできるだろうと思っております。ただ、欠点もございます。実際の標高データについては、実標高ではなく差分しか分かりませんので、そこはこの手法の限界だと思います。
 続きまして、26ページが、先ほど申しました全球の降水マップでございます。現在4,600名ぐらいの登録がございまして、そのうち8割近くがアジアの機関でございます。
 27ページが、先ほど言いました温室効果ガスの排出量の観測手段でございますが、IPCCのガイドラインを変えていただくように、様々な取組をJAXAはしてまいりました。宇宙機関との協定を結んで、タッグを組んでこういうことに取り組もうということで主導的にやった成果でございます。
 28ページは、その内容の変更でございます。
 29ページ、30ページにつきましては、それぞれの情報のデータの提供量や論文数の推移でございます。
 衛星リモートセンシング開発については以上でございます。
 続きまして、衛星通信にまいりたいと思います。ページはA-38ページでございます。衛星通信につきましては、Bという評価をいたしました。
 その内容でございますが、A-41ページを御覧いただきたいと思います。現在、JAXAで持っている衛星は3つでございます。超高速インターネット衛星(WINDS)ですが、残念ながらこちらの方は突然通信がダウンするという事象が発生した結果、2月27日に停波の処置をいたしました。光データ中継衛星につきましては、今現在開発中でございます。技術試験衛星9号機につきましても、開発中という状況でございます。
 詳しい内容について、A-42ページですが、こちらの方は先ほど申しましたように、まず超高速インターネット(WINDS)につきましては、2月9日に通信の突然のダウンが発生し、原因究明を試みました。おそらく電源の異常だろうというふうに思っていますが、結果的には分からず、残念ながらそのことで停波処理をいたしました。寿命は5年でしたが結果として打上げ後11年間運用することができ、特に世界最高速の伝送速度等も出すこともできたことや、東日本大震災では被災地と対策本部を結ぶために、この通信回線を使われたということ、安否確認のために現地の被災者がこれを使ったということで、岩手県の方からは感謝状を頂いているという状況でございました。
 続きまして、光データ中継衛星については、将来的な高伝送速度と、かつ小型・軽量化、さらには抗たん性ということを狙って、今開発を進めているものでございます。
 技術試験衛星9号機ですが、これは将来の商業通信衛星の市場を狙った上で、現在、世界的にもこの方向に向っておりますオール電化衛星を目指すものです。従来の化学推進系ではなく電気推進を使うことによって、推進系燃料の分の重量を大幅に減らすことができるというメリットがございます。この開発を進めているところでございます。
 先ほどの評価をBとした点でございますが、現在、まだ開発中ということと、停波したということを鑑みましてBといたしました。
 続きまして、最後になりますが、少し話題を変えまして、A-143ページでございます。ローマ数字3 .3.11でございます。こちらの方は追跡管制関係と環境試験技術でございます。評価としましては、Aといたしました。
 内容について御説明したいと思いますが、A-146ページでございます。当然私どもの追跡管制や環境試験設備というものは定常的に運用しておりますが、その中でもこういう研究開発も進めるということで、今日その成果について御報告をしたいと思っております。幾つかやっている中で、こういう成果が出ております。
 A-147ページにその成果を紹介するということでございますが、まず追跡管制の方では、精密な軌道決定の迅速化を達成しました。環境試験の方では、宇宙用で使われていたものを民生に転用する一方、地上の設備で使っていたものを、今度宇宙用に転用するという取組をしてございます。さらには環境試験設備の外部利用を拡大しており、この4つの項目が、今回顕著な成果が出たというふうに判断しております。それぞれ図を使って説明したいと思います。
 148ページでございます。こちらにつきまして、従来国土地理院さんから、地震が起きたときにすぐ現場の鑑賞解析をしたいという要望があったのですが、これはやはり時間がかかり、半日ぐらい要しておりました。理由としては、海外から軌道のデータをもらうという点で時間がかかっていたのですが、我々としては、これを早くしたいということで、先ほどの私どもの開発したMADOCAを使うことによって迅速にするということを取り組んだ結果、1時間でできるようになり、これによって、地震が起きたときに場所の特定と被害状況を迅速に把握することができるようになったというところが、まず1点ございます。
 続いて、環境試験でございますが、こちらの方は宇宙用の無振動防振技術というものがございます。これはなぜかというと、温室効果ガス観測技術衛星3号機(仮称)の開発をしている段階において、大きなアンテナを回す機構と、光学センサで敏感さ故に擾乱を嫌う機器があり、この2つ同機体に載せるということになった際、擾乱を発生する方を防振させないと影響が生じてしまうということになりました。その防振装置を開発したわけですが、その防振装置は地上でも使えるのではないかということで、多摩川精機さんと共同研究という形でJSTのファンドをとりまして、現在研究を進めております。例えば救急車の搬送等に使うことや、文化財の輸送に使う等、こういう形で転用できるのではないかということで取り組んでいるところでございます。
 続いて、A-150ページですが、今度は逆に地上での設備で使っておりましたセンサを小型化したものがございます。この小型化した磁力計を、今度は宇宙用に使うということで、JAXAが計画しております火星探査機のMMXについて、従来であれば磁力計の搭載を諦めなければいけなかったところ、非常に小型化したということで、搭載することができるようになりました。ということで、地上で設備に使っていたものを、宇宙へ転用するという事例でございます。その際には、より過酷な環境でも使えるようなことも踏まえて改良を加えたということがございます。
 151ページでございます。こちらの方は設備の利用でございます。設備の利用につきましては、我々としては、空き時間についてほかの事業者さんにも使ってもらう、あるいは、そういう設備を利用したい方に使ってもらうということで以前より考えていたのですが、昨年度から、加速器と振動試験装置の一部については、これを事業者さんにも運用を任せ、使いたい人を募集するというやり方をとってみました。こういうことを執行することによって、空いている時間を使っていただく一方で、維持費は負担いただくということで、私どもがその費用を負担しなくてよくなり、1,000万円の経費削減ができました。また、利用者数はこの施策で非常に増え、我々としては、設備の経費が浮いたという面と、こういう設備を使ってもらうということもできたという面の二重の効果があったと考えております。その関係で、最後にグラフに書いてありますが、昨年14件に対して43件の利用案件が出たというところでございます。
 このような形で、我々の設備を使ってもらうことも進めております。こういう形で進展したことでAと評価しておりますが、Sにするには、例えば、先ほどの防振装置についてもまだ研究段階であり、やはり実際に使って社会に普及したとなればSに持っていきたいと思い、現状では一歩足りないかということでAにしました。
 説明が長くなりましたが、以上でございます。

【渡邉専門職】  それでは、今の4つの項目について、順番に伺っていきたいと思います。最初に、ローマ数字3 .3.1、衛星測位に関して御質問等ございますでしょうか。お願いします。

【小塚専門委員】  まず、測位のところということなので、少々細かいのですが、年度計画をA-11ページに書いていただいています。それの2番目の項目で、スプーフィングや妨害に対する抗たん性強化などについて取り組んでいくということを書いておられますが、対応しておられる実績の方には特に書かれておりません。頑健性というところは出てくるのですが、具体的にどんな取組をなさったのでしょうか。

【JAXA(舘)】  まだ現在研究中でございまして、具体的な成果が出るようなところではないので、ここでは書いてございませんでした。

【小塚専門委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほかに。お願いします。

【梅比良部会長】  次世代の「みちびき」の研究開発が一応きちんと進んでいるということで、非常にグッドニュースを聞かせていただいたというふうに思っているのですが、高精度測距について、これは、どのくらいさらによくしようというプロジェクトになっているのか、もし差し支えなければ教えていただきたいです。

【JAXA(舘)】  現在、測距については、世の中がどんどん進んできてしまっており、それを併せて高精度化に我々も取り組んでいきたいと思っています。

【梅比良部会長】  ここに目標値なども何も書いてないので、どの辺を目指してやっておられるのかということが少々知りたかっただけです。

【JAXA(舘)】  実は数値はあるのですが、ここでまとめて申し上げていいかどうかを悩んでいます。受託しているものなので、そこを踏まえて……。

【梅比良部会長】  ああ、そうですか。まだこれはオープンにできないという数字だったら、それはそれで。

【JAXA(舘)】  ええ、そこはこちらで持ち帰らせていただいて、出せるかどうか相談したいと思います。

【梅比良部会長】  分かりました。ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 それでは、次の項目、ローマ数字3 .3.2、衛星リモートセンシングについて御質問ございますでしょうか。髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】  御説明ありがとうございました。この衛星リモートセンシングの項目は、第3期においても大変高い評価をされています。僕自身も高く評価してまいりました。なぜ高く評価したかというと、例えば具体例になりますが、ALOS-2であれば、分解能が大幅に向上し、連続観測時間も大幅に長くなって、その結果、災害状況が鮮明に把握できるようになったということです。いわば非常に顕著な研究成果があり、その結果として、様々なところで実用化、定着化がされたと思うのですね。そのような観点でいくと、2018年度は、いわゆる研究成果として、特に顕著なものは何だったのか、その点をお伺いしたいと思います。

【JAXA(舘)】  ALOS-2でいいますと、まずこのインフラモニターのところは、これまでもずっとやってきたのですが、やはり今回、ツール回りができたという点です。かつ次の実際の試験といいますか、実用の一歩手前の受託もできたということで、このあたりがインフラモニターしては、ALOS-2において一番進んだところだと思っています。

【髙橋委員】  これもいわば緒についたといいますか、これからという段階ですよね。少し気になることは、全体的に定着化が進んだということになっているものですから、定着化も大事ですが、やはり研究開発法人なので、研究開発の面での成果、特に顕著な研究成果が第3期と比べると、2018年度の成果は少し弱いという印象があります。
 もっと大胆に申し上げると、2018年度はいわば第3期の研究成果のレガシーを使って、その恩恵が2018年度にあると思うのですね。新しい研究開発の成果を出せるように第4期は取り組んでいただきたい、というコメントをさせていただきます。

【JAXA(舘)】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほか、ございますでしょうか。古城委員。

【古城委員】  このリモートセンシングの技術が国内だけではなくて国外の災害の点でも非常に利用されて、国際協力にも貢献しているというところが強調されているのですが、これは災害が起こったときにJAXAから提供したというふうになっているのか、もともとそういう提供するというような協定があるのか、どういう具合に提供というものが行われるのかということを教えていただけますか。

【JAXA(舘)】  今、世界的な2つの枠組みがございまして、1つは国際災害チャータです。こちらは宇宙機関が集まっており、災害が起きたときに観測してくださいという要望があった場合に宇宙機関が観測するという枠組みがございます。一方、JAXAが主導している部分があるセンチネルアジアという枠組みがございまして、アジア地域を対象にしていますが、こちらには防災機関も入っており、そこで要望があった場合に観測するということになっています。あと国内的には、内閣府防災さんから要望があり、それを観測するということです。これについては国土地理院さんからの要望もあったことも、また、センチネルアジアからの要望があって観測した例が、先ほどのインドネシアの例でございます。

【古城委員】  済みません、重ねて。そうしますと、以前からこういうことは行われていたということですか。

【JAXA(舘)】  はい。こういう形で国際的にデータを提供し合うということは行われておりまして、例えば、東日本大震災のときも、今度は逆に我々がデータをもらうというということで、かなりのデータを我々が頂いたという例がございます。

【渡邉専門職】  ほか、ございますでしょうか。赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  地盤変動の技術を、これから代理店を活用して広く普及展開をするということなのですが、同じような商売をやっている民間として若干気になるところがございまして、どのような枠組みでこれから進めていこうと考えられているのかを、少し教えていただければと思います。

【JAXA(舘)】  まだどういう公募をするのかも決めておりませんので、どういうふうに説明していいのか悩ましいところですが、できるだけ広く公募した上で、このツールを世の中に使ってもらうようにしたいと思っております。しかし、まだそこは案がないので、申し訳ございませんが、今日は控えさせていただきたいと思います。

【赤松臨時委員】  先ほどJAXAも少し稼がなければいけないというコメントもございましたが、必ずしも商業的に何かやることを考えられているというわけでもないということですか。

【JAXA(舘)】  そういうことを考えているわけではなくて、どちらかというとツールというものは維持していかなければならず、維持するお金までずっとJAXAが担保し続けるかといったら、これはまた大変な話になりますので、その分ぐらいは何とかライセンスフィー等で賄えないか、というような考えです。

【赤松臨時委員】  どちらかというと、やはり普及の方を念頭に置きながら進めていきたいというふうにお考えなのですね。

【JAXA(舘)】  我々としては、やはりこういうデータを使っていただくことによって、世の中の役に立つのではないかと思っています。

【赤松臨時委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  よろしいでしょうか。
 それでは、続いてローマ数字3 .3.3、衛星通信について御質問ございますでしょうか。末松委員。

【末松専門委員】  衛星通信について、WINDSが止まってしまったという残念なお話がありましたが、まだ2つ残っているので、是非うまくやっていただきたいと思います。
 光データ中継衛星を見るとミッション系について、いわゆるデータの光通信部分ですが、こちらはNICTさんではなくてJAXAさんの方で担当されていらっしゃいますよね。実は以前質問させていただいたのですが、ETS-9の場合、いわゆるHTS、ハイスループット・サテライト用の通信ミッションはNICTさんが研究開発されるので、JAXAとしてはそれに合うようにバス系を整備しますというような御回答を頂いています。WINDSなどの記載ぶりを見ると、これは光通信ミッションをもともとJAXAさんでやっていたのではないかというような気もしており、例えば光通信系はJAXAさんで、電波通信系はNICTさんがやることになったなど、今後も含めてそういうようなすみ分けがされたということなのでしょうか。

【JAXA(舘)】  その点は誤解があるといけないのですが、例えばETS-9に搭載いたします光通信の実験はNICTさんがやりますので、必ずしも光はJAXAで電波はNICTというすみ分けはございません。

【末松専門委員】  ではたまたまETS-9の場合はミッション系をNICTがやるということでしょうか。

【JAXA(舘)】  ミッションについては、総務省さんと文科省さん、あるいはNICTさんとJAXAで共同し、どういう分担でしようかといったところで決まったものですから、その時点のプロジェクトごとに状況は変わるかと思います。

【末松専門委員】  予算の出どころが違うからという、お話になるのかという気もおそらくしますが。

【JAXA(舘)】  基本的に我々としては、文科省、JAXAはバスの更新をして、将来的な次世代の通信支援をしようという考えです。一方で、総務省さんの方は、通信機器の担当をするという形で分担をしたということになっています。

【末松専門委員】  せっかく衛星としては一体としておそらくJAXAさんの方で仕上げられるのだと思うので、そういう経緯はあるかもしれませんが、将来的にまたやっていかれることになるのかもしれないので、目を離さずにしっかりとやっていただければというふうに思いました。

【JAXA(舘)】  研究自身は我々も通信もやっております。現時点で、次はどうなるかとは言えませんが、この9号機についてはこうなったと御理解いただければと思います。

【末松専門委員】  はい。しっかりとJAXA内に技術を持っていっていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

【渡邉専門職】  ほかはよろしいでしょうか。

【梅比良部会長】  おそらく技術試験衛星9号機絡みでいうと、バスはJAXAさんがやられていて、今回の一番の大きな目玉は電化バスだと思うのですが、余りその話についてはほとんど書かれていません。世界水準に比して、どのくらいを目指していて、いつ追い抜くのか、キャッチアップするのか、あるいはコスト面だったらこのくらいのところまでいくというところをやはり示していただかないと、どこを目指してどういうふうにやられようとされているのかが、いまいちこの資料だけからは分かりません。その辺は来年でも結構かと思いますので、今後御配慮いただければと思います。

【JAXA(舘)】  分かりました。今まさに開発途中でございますので、その能力、世界トップの出力を出すことを目指して、今開発を進めているところでございます。

【梅比良部会長】  はい。是非よろしくお願いします。

【渡邉専門職】  よろしいでしょうか。
 それでは、最後の項目、ローマ数字3 .3.11、人工衛星等の開発・運用を支える基盤技術について御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。お願いします。

【小塚専門委員】  余り御質問してもどうかと思ったのですが、どなたもいらっしゃらないので。設備の利用の関係で、先ほどの御説明では、事業者に利用権を与えて、それで維持負担もさせるということですが、この設備は、当然JAXAも使い続けるわけです。JAXAがどういう場合に使うのか、緊急に使う必要があったらどうするなど、そのあたりのアレンジはどのようになっていますでしょうか。

【JAXA(舘)】  この2つにつきましては、基本的に比較的JAXAの方ではあいている設備ですので、まずこちらで試験をして、きちんとユーザーが使えるかどうかということを考えた上で、それをほかの設備にも展開しようと実は思っております。その際に、JAXAにどれだけの優先権を与えて、そして競合したときはどうするかというルールを今考えておりまして、それを明らかにした段階で、次のステップにいきたいと思っています。

【小塚専門委員】  現在検討中ということですね。

【JAXA(舘)】  はい。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  よろしいでしょうか。
 それでは、以上をもちまして、4府省の共通の評価項目は終了となります。こちらで経済産業省の委員、後藤委員、多屋委員については御退室をいただくということになります。準備が整いましたら、御退室をお願いいたします。本日は、長時間どうもありがとうございました。
 それでは、ヒアリングを再開いたします。続いてはローマ数字3 .3.5「宇宙状況把握」、ローマ数字3 .3.6「海洋状況把握・早期警戒機能」とローマ数字3 .3.7「宇宙システム全体の機能保証」、ローマ数字3 .7「情報収集衛星に係る政府からの受託」についてまとめて説明いただきます。
JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(舘)】  それでは、引き続きまして私の方から、まずローマ数字3 .3.5の宇宙状況把握、A-65ページを御説明したいと思います。評価はBといたしました。
 内容でございますが、A-68ページでございます。ここは宇宙状況把握のための望遠鏡とレーダの設備を今現在更新しておりまして、これが1項目目でございます。2項目目は、今現在有しておりますレーダと、あるいは光学の望遠鏡を用い、スペース・デブリの観測と同時に、衛星に対する衝突を防止するための回避制御を行っております。
 具体的な内容は69ページでございますが、1ページ目が先ほど申しましたような、現在衛星セット、システム、性能向上のための設計をしているところでございます。
 2項目目が、政府機関と一体となってシステムの構築のための人事交流や、政府へのシステムを、技術支援を行っています。これは防衛省さんとでございます。
 2点目でございますが、こちらにつきましては、上齋原のレーダや美星の望遠鏡等を使いまして、それらのデータと同時に米国の方の連合宇宙運用センターから頂きますデータをもとに、それぞれの衛星に当たる設計解析をやっております。2018年の実績でございますが、こちらの方はスクリーニング解析が1万4,523回で、接近警報が163回、衝突の回避の判断会議を12回開催いたしまして、実際に回避をしたのが6回でございます。「だいち」2号、「しずく」、その他についてこの回数を実施いたしました。
 4番目について、これは少々前の話になるかもしれませんが、昨年度の末から4月上旬にかけて、中国の「天宮」が落ちてくるということがございまして、これに対しての再突入の解析等を行い、内閣府に報告するというようなことをしてまいりました。
この項目につきましては、1つはシステムを作っているということと、その他はいわゆる通常の運用をしているというところですので、AではなくBという評価にいたしました。
 続きまして、A-72ページでございます。海洋状況把握と早期警戒機能でございます。こちらの方はAという評価をいたしました。
A-74ページでございますが、やはり今回、一番の政府の決定としましては、海洋基本計画の中に、新しく衛星による項目が幾つか出ており、JAXAの衛星を使うということが明記されているところが昨年度大きく変わった点だろうと思っております。
 75ページにて、こちらの中でどういうことをやったのかということを簡単に書いてございますが、国の安全保障機能でありますMDAに貢献したということで、先ほど来のALOS-2のデータだけではなく、例えばGSMaPの先ほど説明しました降水量や海面温度というような地球環境に関するデータを使って、このMDAの能力向上に貢献したということで、昨年の7月16日に海上保安庁長官賞を頂きました。
 海上保安庁は、今現在、海洋情報の一元化という仕組みを作っておりまして、この中の通称「海しる」と言われるシステムに私どもはデータを提供しているということでございます。
 3番目でございますが、防衛装備庁から受託している2波長の赤外センサの開発を進めております。これは先進光学衛星ALOS-3に搭載されるものでございますが、これの一部を昨年度末に納入いたしまして、今年度初めにセンサ全体を納入したということで、着実に開発を進めてまいりました。
 A-76ページはその表彰状の写真でございます。
 以上でございます。

【JAXA(山本)】  それでは、続きましてローマ数字3 .3.7、ページで言いますとA-79ページをお開きください。
 表題では全体を表すことが難しいところがあるので、中長期計画のボックスをまず御覧ください。左側のボックスの下から3行目ぐらいです。宇宙システム全体の機能保証について、内閣府や防衛省を初めとする機関と連携をいたしまして、政府の機能保証強化策の検討、あるいは宇宙システム全体の脆弱性の評価、さらには机上演習といった政府の取組に対して、JAXAは支援すべしというところがこの業務の中身になっております。
 具体的には、次のA-80ページをお開きください。最初の行に書いておりますとおり、年度計画で設定した業務については計画どおり実施したと我々は見て、Bといたしました。
 中身につきまして補足しますと、このページの1ポツと2ポツ目になります。防衛省・防衛装備庁との連携を着実に強化していったということが1点目です。
 それから2点目は、国の文書にJAXAの役割が、より高い位置付けで記述されたということです。もう少し具体的に言うと、2018年において、JAXAとしては初めてでございますが、シュリーバー演習と呼ばれる国際的な多国籍の机上演習に参加しました。これは、米軍を中心といたしまして、連合国が8か国参加し、将来、10年ぐらい先の宇宙空間において何が起こるかといったことを想定したシミュレーションの演習であります。当然ながら舞台が宇宙でございますので、宇宙の実施機関でありますJAXAが日本のセキュリティの政府機関とともにこの演習に参加し、国に対して技術的な支援をしたということです。
直接的ではございませんが、政府の文書、特に1行目に書いてある「防衛計画の大綱」、あるいは「中期防の整備計画」の中に、JAXAという具体的な名称も記載されて、記述が入っております。これはやはりJAXAに対する役割、あるいは貢献がさらに高く求められているということで、今後その責任を果たすべく取り組んでいきたいと考えております。
 以上でございますが、参考のところにもう少し書かれております、本来、この機能保証というものは、先ほどの測位のところにありましたが、ジャミングやなりすましといったような攻撃に対してどう対応していくかという項目でもございますが、まだ政府機関の正式の標準等々決まっておりませんので、JAXAとしては自主的に行ったというところで、両方にダブって書くのを避けるために、後段のところで触れておりますが、こういう活動も行ったところです。
 私からは以上です。

【JAXA(今井)】  では、引き続きまして、ローマ数字3 .3.7、情報収集衛星に係る政府からの受託について御説明をいたします。JAXAで第二部門、情報収集関係を取りまとめております今井でございます。
 ページはE-1ページでございます。こちらを御覧ください。まずここには特記事項として、政府における本情報収集衛星に関する計画及び政府において重視される項目というものが簡単に記載されております。この中からJAXAは、政府から期待される内容について受託を受け、JAXA事業として進めています。その関係から、このタイトルが情報収集衛星に係る政府からの受託という形になったと考えます。
 その評価指標でございますが、これもここに書かれていますように、政府受託に対して必要な体制を確立し、着実に事業を進めるということでございます。
 2018年度なのですが、E-2ページを御覧ください。これは情報収集衛星に係る計画全体のスケジュールが記載されております。この中から我々が受託しているものをJAXA事業として進めているわけでございますが、特に2018年度重要であった項目として、こちら中央にあります光学6号機は我々が開発し、2017年度の末に打ち上げられた後、軌道上での点検、検証を行って、政府による運用に確実に引き渡すという作業を2018年度に行いました。また、レーダ6号機につきましては、2018年度に開発を計画どおり完了し、打ち上げ、同様に政府による実運用に供するということを受託として行いました。
 本件に関する2018年度の自己評価についてはAといたしました。その理由ですが、政府からの委託を受け、情報収集衛星に係る事業を必要な体制としてJAXA内での人材の確保、連携体制の確保、それからJAXAのプロジェクトマネジメントプロセスとして確立された審査、あるいはそのプロセス等を適用し、かつ経営レベルでの進捗確認等を行うことで、計画どおりこれを進めました。また、宇宙基本計画に定められた光学6号機、レーダ6号機、先端技術衛星の研究開発等におきましては、ここで政府より我々が受託する際に求められる水準というものがございます。この水準を達成し、なおかつその水準を上回る成果を上げることができたということで、今回A評価というふうな自己評価といたしました。説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  それでは、ただいまの項目について順番に伺っていきます。
 まずローマ数字3 .3.5、宇宙状況把握について御質問等ございますでしょうか。中村委員。

【中村臨時委員】  A-70ページについて、予算と決算額の差がすごく大きいように感じるのですが、これは何か特別な理由があるのでしょうか。

【JAXA(舘)】  この宇宙状況把握のところについては、設備の関係で、翌年度の繰り越し等が発生した関係でこの数字がずれております。予算額に対して決算額が出ています。

【中村臨時委員】  特に特段気にすることはないと思ってよろしいですか。

【JAXA(舘)】  特段問題というものではございません。

【中村臨時委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほか、ございますでしょうか。
 それでは、続いてローマ数字3 .3.6、海洋状況把握・早期警戒機能等についてございますでしょうか。藤本委員。

【藤本専門委員】  成果として、海洋の安全保障の方に掲載されたことが御説明にあったのですが、これまでご説明されたことがあって成果に結び付いて、それがここでのA評価という形になったという理解をすればよいのですね。

【JAXA(舘)】  はい。

【藤本専門委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほか、ございますでしょうか。
 それでは、続いてローマ数字3 .3.7、宇宙システム全体の機能保証について、ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続いてローマ数字3 .7、情報収集衛星に係る政府からの受託について、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 以上をもちまして、3府省共通の評価項目も終了となります。こちらで内閣府の田辺委員には御退席をいただきます。長時間の御対応、どうもありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、ヒアリングを再開いたします。ローマ数字3 .6.3「プロジェクトマネジメント及び安全・信頼性」、ローマ数字3 .6.4「情報システムの活用と情報セキュリティの確保」、ローマ数字3 .6.5「施設及び設備に関する事項」、この3つまとめてJAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(中川)】  理事補佐の中川と申します。プロジェクトマネジメントと安全・信頼性について御説明します。資料はD-37ページをお願いいたします。
 自己評価としてはAとしております。評定理由について御説明します。「ひとみ」の事故が3年前に起こりましたが、それを契機に、2017年度6月に策定したプロジェクト業務改革の方針に基づいて、プロジェクトチーム、それから独立評価組織及び経営層が一体となってプロジェクトマネジメント及び安全・信頼性の改善活動、リスク低減活動を継続的に取り組んだ結果、その成果が結実して、2018年度計画した多数のプロジェクト活動が全て成功しました。2018年度は例年になく多くの打上げ、運用を行いましたので、それらの全ての結果が成功ということで、顕著な成果が創出されたというふうに評価してAとしています。
 Sになっていない理由ということを説明するようにという指示がありましたので、それについては、その前の年には小型ロケットの事故がありまして、必ずしも成果が出ておらず、その前の年は「ひとみ」の事故ということで、連続して成果が出ていないということになります。初めて年度の全ての成果が出たということでAと評価しています。これが何年か連続してこういう状態が続けば、Sというふうに自己評価したいというふうに考えています。
 具体的な例として、下に内容を挙げてございます。まず、プロジェクト業務改革の浸透の徹底として、開発と運用の基本の再設定と強化ということで、まずは信頼性の確保の最優先、運用に必要な全ての事項を事前準備、検証したもので運用を行うとした開発と運用の基本を全社的に再設定しました。また、その結果を組織的に確認する仕組みを強化して、結果を確認してございます。例として、「はやぶさ2」の例を挙げてございますが、「はやぶさ2」の運用は非常に順調にいっておりまして、その背景では、事前に地上システム、それから手順などについて訓練を十分に実施しています。特に「はやぶさ」の初号機の経験者に加えて有人システムの運用等の経験者らから地上システム、手順のレビューを受けて、得られた助言に基づいて緊急時のバックアップ手順の充実や、50回に及ぶ要員の訓練、リハーサルをしておりまして、そういった結果が現在に至る確実な運用を実行しているということでございます。
 それから、2つ目の例としましては、独立評価のプロジェクト活動へのフィードバックということを挙げております。JAXAの経営層は、プロジェクトの進捗について、プロジェクトからの報告だけではなくて、技術・マネジメントと安全・信頼性の両面からの独立評価の結果をもとに、フェーズ移行の判断をしてございます。こういった独立評価の結果が経営判断に取り込まれているということが、今回特筆すべきと考えております。独立評価組織は、ここにも書いてございますように、経営審査、それから技術的な審査と数多くの審査会に参加して、プロジェクトに対するチェック・アンド・バランスとして、客観的・厳格な評価を行って勧告を行い、その勧告のフィードバックを確認することでプロジェクト活動を改善しています。
 この例として、HTVの搭載の小型回収カプセルの例を挙げてございます。独立評価の助言によって、実際の観測センサ、航法センサの実データをもとにソフトウェアの長時間シミュレーションをするということの追加検証を提案して、それが実行されました。そういうことで、ソフトウェアの確実性が高まり、試験成果を無事に地球に持ち帰るというミッションを成功させることができました。
 それから、3つ目の例としましては、安全信頼性の分野によるものですが、2018年度11月に宇宙活動法が施行されました。それに先立って、内閣府が制定するマニュアル、ガイドライン案に対して、今までのJAXAの打上げや衛星開発、運用の経験を踏まえた提案を行って、内容の充実に貢献いたしました。
 例としましては、イプシロン4号機の例をここに挙げてございます。第一に、ロケットそのものの打上げ許可の審査を行う内閣府の審査員に対して、JAXAが従来から実施してきた安全対策の妥当性を理解いただけるよう、JAXAが有する技術的な知見や他国の事例等を交えて、繰り返し丁寧な調整をした結果、打上げに遅延なく許可を受けることができました。もう一つは、イプシロン4号機に搭載されたベンチャーのミッションでございますが、人工的に流れ星を作るという、世界的に例のないミッションに対して、スペース・デブリに係る国際的なガイドライン等の観点から見ると、意図的な物質の宇宙での放出ということは否定的に捉えられています。そういう環境下においても、安全要求をJAXAから提案して、適合する設計が実現し、打ち上げられる、そういったことを成果に挙げてございます。
 そのほか、年度計画で設定いたしました業務は、計画どおり全て実施いたしました。以上です。

【JAXA(鈴木)】  続きまして、情報と施設については鈴木の方から御説明いたします。情報はローマ数字3 .6.4をおめくりください。ページとしてはD-52でございます。
 この情報システムの活用とセキュリティの確保という項目は、柱が3つありまして、1つはJAXAの全社に共通的な情報システムによって業務を改善しましょうということです。それから2つ目は、スパコンを使って研究開発能力を高めましょうということです。3つ目が、情報セキュリティを確固たるものにしましょう、これが目的でございます。
 評価の指標は、いずれも取組がどういうふうに進捗したかということなのですが、D-53ページにありますように、重大なセキュリティインシデントについては、事業を危うくするようなことはございませんでしたということです。それで自己評価がD-54ページにありますが、今回は業務の改善や研究開発能力をITを使って着実に前進させているとともに、セキュリティについても、前中期もかなりよかったのですが、それを踏まえてより高いレベルに進んでいるのでAとさせていただいております。
 具体的な取組を3つに分けて書いておりますが、まず全社の共通の情報システムについては、3つの成果が特徴的です。1つ目は、無線LAN環境を事業所でセキュアなものを作りまして、それでモバイルPCでいつでも会議に参加できたり、データを取り出したり、電子決済をするという、そういうモバイル環境を作りました。ペーパーレスも非常に進みました。今、これにさらに加えて、Bring Your Own Deviceというシステムにて、自分のスマートフォンなどでメール処理や決済ができるような環境も徐々に進めていて、かなりセキュアで自由度の高い執務環境が作られています。
 2つ目はそれに加えて、クラウド上で統合ビジネスアプリを使うということです。これはマイクロソフトのOffice365になります。これによって文書の共有化や、文書作成作業の共同化など、それからどこでも会議に参加できるようになり、これは職員間でベストプラクティスをみずからのホームページでアップしていって、こういうことだったら我々も使えるねということで、非常に業務の引き継ぎがやりやすくなったことや、それから、事業所間でもテレビ会議があいてなくても会議にぱっと入れる、それから、様々な調査を社内でもしなければいけないので、それも一発でデータを集められるなど、非常に効率的な仕事の進め方ができるようになりましたということで、このクラウドベースでセキュアにやっている法人は、国立研究開発法人でもまだ先端的だと思っており、理研さん等からも問い合わせが来ているような状況です。
 3つ目は、社内のネットワークも改善している、ということです。これは些細な話なのですが、今、専用回線でやっており、そうすると情報量がどんどん増えていくといっぱいいっぱいになってしまっております。情報の仕分けをしてベストエフォート型の商用回線も使うと、コストを大きくかけないで回線も使えるという工夫もしております。
 それから、スパコンについては1の(2)に書いてありますが、これもジョブ充足率が97%と非常に高い稼働率を誇っており、これは航空の流体シミュレーションだけではなく、今は衛星の標準データの処理においても、昨年度は300万データを全て標準処理したということで、新しい分野に展開しております。これは5年の運用期間が経過していますので、更新を考えておりますが、今ネックになっている点は、少々使用のハードルが高いので、他の機関との連携がしにくいということで、これをデータセンター型にすることで、このスパコンを使って、外の研究機関も研究ができるような研究連携に使えるようにしようとしております。
 最後につきましては、D-55ページにセキュリティについて書いてあります。この項目は前中期でもAをとろうと頑張ってみたのですが、やはりなかなか厳しかったです。専門機関からも、JAXAは未知のウイルス検体を発見して専門機関に周辺展開する数も多く、それにもかかわらずセキュリティが守られていますねということを言われています。さらに昨年度は、専門性のあるCSIRTというスキルチームにどんどんまた磨きをかけており、あるいは、情報の責任者の研修意識も高めており、仕組みとしても、セキュリティセンサーやログの分析システムを入れるなど、来たものの入り口での検知についてもレベルを非常に高くして、2017年レベルでも半分にしております。
 最大の課題でこれからやらなければいけないと思うことは、先ほどのロバスト性のところにありました、宇宙機器関連のサイバーセキュリティの抜本的強化についてです。現在は、制御系のシステム防御の動向などの基準も取り入れながら、どういうふうにやっていくかということを考えており、原子力をやっていた者を経験者サイドで採用するなど、こういったところの強化をしているところです。そういうことでAとさせていただきます。
 次が、引き続き施設になっています。ローマ数字3 .6.5、ページとしてはD-63です。これも計画は4本柱になっておりまして、この中長期計画に書いてありますように、この事業の共通的な施設・設備の老朽化更新をきちんとしているかどうかということ、自然災害のリスク縮減にどう取り組んでいるかということ、省エネもきちんと考えていますかということ、4番目は、きちんと技術力を高めてサービス向上をしましょうという点でございます。
 評価指標も、取組状況について、D-64にありますように、重大事故の有無、それから顕在化するリスクを事前につぶしたかということがございまして、重大事故はもちろんございませんでした。それから、顕在化リスクについては、ページではD-68ページにありますように、内之浦に耐震性に問題のある建屋が6棟あったということで、これを解体したことと、昨今問題になっておりますが、エレベーターに不適格なものがあったため、これを2台恒久対策したということで、こういうことをつぶしていましたということです。
 それから、D-64ページは、延べ床面積当たりのエネルギー効率も99.3%ということが記載ありますが、これは省エネ法ですと、5年で平均1%が目標でございます。この99.3%という数値は、まだ昨年度分は公表されていませんので、一昨年度分の実績になります。しかし、これは5年で1%以上削減目標で、5年ですと98.5%なので、この数字自体よりも5年平均では達成できているという状況でございます。
 自己評価はD-65ページにあります。この評価項目でお伝えしたいことがございまして、JAXAは事業の特徴から、種子島という離島で打上げを確実に行うという、非常にクリティカルな仕事をさせていただいております。その打上げをするための基盤となる発電機や送電設備などや浄水場の確保はみずから持っているのですが、それらが事業の成否を決するという状況にございます。お金の面でいうと、経営としては事業には投資していくのですが、設備更新についてはどうしても優先順位が下がってしまうということが当然あるので、経営としてどうやって事業の基盤となるこういったものを確保しながら事業をどんどんやっていくかということが課題です。昨年度やったことは、JAXAの使命として、こういったインフラの維持は経営課題で最優先だということを捉えまして、限られた財源の中で優先順位をつけて、総合的な更新計画を作り、どこから押さえて、どうやってお金をとっていこうかということを考えたということでございます。
 特記事項として、(1)にありますように、まず最重要インフラの高圧ケーブルについて、老朽化で切れてしまうこともありますが、これも含めた老朽化の整備計画を作っています。また、打上げの成否に係るような種子島と内之浦については、指揮はこういうふうにとっていこうということの行動計画を策定しています。今のこの状況でJAXAは打上げ電力の基盤の保全の見通しがついておりますので、打上げをこの問題は考えることなく確実にできるというようなことが対応できております。ということが、まず評価ができている点だと私たちは思っております。
 それから2つ目に、PPP/PFIというふうに書いておりますが、省エネやコスト削減の努力もしてまいりました。ESCO事業について、エネルギー回収費用を光熱水料の削減分で補うという取組ですが、これを採用しました。これもすればいいということではありますが、なかなかJAXAのような事業で、ビジネス側がそれをやってくれるようなところがあり、調べた結果、つくばの空調用の中央熱源施設にこれを適用すれば、年間3,600万円の光熱費を削減できますということがわかりました。これを使えば、10年の計画にはなりますが、初期投資なくこれを運用していけるということと、加えて、毎年1,000トン以上CO2も削減できるということで、CO2の排出量割合からするとこれも1.3%ぐらいになりますので、先ほどの平均1%削減もこれだけで可能になるというようなことがあります。さらに、エレベーターの共同保守の調達などもやっております。
 より大事なことは3、4ですが、こういった保守・保全をきちんとやっていくことや、効率化をやっていくだけではなく、例えば、ここの4の(1)にありますように、理化学研究所と一緒になって、標高データから危険斜面を自動抽出するということもやっております。これは何かといいますと、今、西日本の方で、鹿児島等も大雨が降って斜面がどんどん崩壊していって大事故につながるということがあり、打上げの射場もそういう環境にあるわけですが、これを予め分かるようにしておくというような研究を進めています。あるいは、つくばも東日本大震災の被害に遭いましたが、建築研究所と一緒になって、測位データを用いて、この震度だとどのくらい危ないかということが分かるようにするという研究もしておりまして、これが分かればJAXA自身もメリットもありますし、それから、社会にもこれをアウトカムができていくのではないかということまで考えておりますということで、Aとさせていただいております。
 ただ、そういうことができると、まさにSになるのですが、なかなかそういう状況にはまだ至っていないということです。御説明は以上です。

【渡邉専門職】  それでは、順番に伺ってまいります。まず初めにローマ数字3 .6.3、プロジェクトマネジメント及び安全・信頼性について、御質問ございますでしょうか。お願いします。

【小塚専門委員】  たびたび失礼します。プロジェクトマネジメントについて、過去の事故もあって様々に御対応いただいて、立派なことだと思います。それの関係で、契約書によるリスク分担も見直されたというふうに伺っていて、資料にも書いておられます。D-39のところで、企業との間の役割や責任分担の明確化ということを書いておられますが、これに対する相手方企業のフィードバックをとっておられますでしょうか。つまり、分担を明確化して、企業側にリスクを全部移転してしまうと仮定しますと、極端なことを言えば、それはJAXAとしてはリスクがなくなって非常にハッピーではありますが、それは相手方の企業から見てもフェアなものになっているのでしょうかという質問です。何かフィードバックはとっておられますでしょうか。

【JAXA(中川)】  フィードバックといいますか、我々が最初にRFPを出してメーカーを決める作業をしますが、その前に、そのシステムのフィージビリティスタディのようなことを複数の可能性のあるメーカーとします。その際に、技術的な成立性だけではなくて、実際に契約上の形についても議論をしています。先ほど言われたように、全てを何でもかんでもメーカーに任せて、向こうに責任を負わせるということは我々では考えていなくて、企業がそのまま請け負えないようなリスクの高い部分については、JAXAが別途研究開発をして、その部分はそのシステムメーカーに支給するということで、リスクが負える部分について企業に任せる、という形をとっております。それでどうして請負という言葉が出てくるのかというと、我々が開発する部分と、企業が請け負うという境界の部分が、請負をするという形で相手に課すことで非常に明確になってきます。それは企業側が明確にしないと契約を受けられない状態になりますので、そういうプロセスによって両方が合意できる境界をきちんと定めるということが本来の目的であり、責任を相手に全ておっかぶせることが目的ではございません。そういう境界について、今までのように全てが研究開発としてやっていると、ものすごく不明確なままずるずる進んで、その境目で不具合が起こることや、見落としがあるなど、大きな弊害になっていましたので、そういうことを改めようとして、そういう境界を明確にするために、請負化するということを我々、提唱して実行しているところです。

【小塚専門委員】  分かりました。であれば、一番の変更点、改善点は、請負という概念を導入して、一定のところでリスク、責任の分界点を明確にしたと、こういうことですね。

【JAXA(中川)】  そういうことです。それで企業側も受け入れる条件をきちんと提示しているということをお互いに合意した上で、メーカー選定に入っているということです。

【小塚専門委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、続いてローマ数字3 .6.4、情報システムの活用と情報セキュリティの確保について御質問ございますでしょうか。藤本委員。

【藤本専門委員】  情報セキュリティの確保については、書いておられることを見ると、非常にしっかりやっておられるというふうに感じているのですが、1点だけお聞きしたく。非常に他機関との協業というのか、協力して研究をすること、それから調達をすることが、増えてきているという気がしまおり、そうしますと、そういったところの情報セキュリティ確保というものもしっかり見ていかなければいけないと思うのですが、その辺はどのようなお取組をされているのか、お聞かせいただけますか。

【JAXA(鈴木)】  おっしゃるとおりだと思います。まず、サプライヤーのリスクについては、契約上、JAXAのルールをきちんと守ってくださいねということや、あるいはもっと体制をきちんと確認しますよというところはやっているのですが、パートナーとして多様な機関とやっていくためには、それぞれのセキュリティを守っていただくということを基本としてやっていくという上で、これからますます様々なパターンが、あるいは国などが出てくると思いますので、その辺は関係する諸法律、あるいはそれ以上のものを守るように考えていきたいとやっております。

【藤本専門委員】  ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほか、よろしいでしょうか。
 それでは、ローマ数字3 .6.5、施設及び設備に関する事項について、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 では、次にまいります。続いては、4つの項目をまとめて説明していただきます。まず、ローマ数字4 、業務運営の改善・効率化に関する事項に係る措置、ローマ数字5 、財務内容の改善に関する事項に係る措置、ローマ数字6 .2、人事に関する事項、ローマ数字6 .1、内部統制について説明をお願いいたします。

【JAXA(鈴木)】  人事のところまでは、また引き続き鈴木が御説明申し上げます。よろしくお願いします。
 では、まず業務運営の改善・効率化につきまして、F-1ページにありますように、実質これも4本柱です。1つは、提案能力を向上できるような機能を整備しなさいということ、2つ目は、合理化関係ですが、経費を効率化しなさいということ、調達を合理化しなさいということ、最後は、人件費を適正化しなさいという、非常に厳しいものです。
 指標は、対応状況になりますが、F-2ページにありますように、一般管理費、それからその他の事業費について、それぞれ削減目標の数値がありまして、7年間で一般管理については21%以上削減しなさいとなっています。これについては、18年度で1.5%削減できております。それから、その他の事業については、7年で7%以上ということで、1%平均だと思いますが、1.1%削減できております。しかし、こちらについては、特記事項にありますように、評価委員の皆様からも、この削減の取組は継続していったらゼロ円になるのか、もう少し考えた方がいいのではないかということを御指摘いただいておりまして、我々も非常に悩んでおります。
 ということで、F-3ページに自己評価をしております。これは端的に柱書きで書いてありますように、提案体制は、国も大きく様々な政策が変化していまして、この国のリーダーシップに合わせて、JAXAも機動的に体制を変えておりますということが1つ目になります。それから、調達も合理化するだけではなくて、産業に競争力がつくようないろいろな工夫をしております。ただし、その経費の削減は非常に厳しいですということで、Bという評価をしております。
 まず組織体制をどうしているかというと、(1)にありますように、まず4月に、事業促進部が、産業界と一緒になってミッションを創出するという機能を付加しました。5月に早速J-SPARCという、最初の方のお話で出てきました精度をスタートしております。それから、7月には内外の様々な宇宙探査の動きに対応して、JAXAとしても、JAXAの司令塔機能を持つようにということで、国際宇宙探査センターを作って先行的な準備を始めて、提案ができるようにしております。それから、先ほど中村理事の方から説明させていただきましたが、体制的にも、職員の業務時間のエフォート率を100%と見たら、その20%ほどを、今の仕事ではなくて、より創造的な、横断的な、あるいは外部と連携してチャレンジングな業務に当てていいよということをいっております。これによって、個人が高付加価値のある、あるいは産業連携、アウトカムができるような全社的な取組、社風、あるいはマネジメントができ始めているということです。
 特にこれで成果が出ている点は、研究開発部門でもインセンティブが非常に働いていまして、科研費の獲得額になってしまいますが、従来の3倍になっています。外のお金をとってきて、新しい創造的な仕事をしようという動きがあります。
 それから、(2)の効率的な経費の話になりますが、ここが非常に厳しい状況です。第3期まで15年間やってきていますが、既に一般管理費40%削減を行っております。昨年度も1.5%追加削減するために、非常に爪の垢をともすような努力をしていまして、何をやっているかと申しますと、例えば、執務室をフリーアドレス化して備品を共通化しますということや、いろんな電子化によってコピー用紙の数や、印刷費を減らしましたなんていうことで、毎年これを3%やっていくことは非常に厳しいと思います。はっきりと申し上げまして、一般管理が手薄になると研究者に負担をかけるというようなことになり、あるいは本当に研究開発事業にしわ寄せが来るのではないかということも危惧されます。
 そのため、私たちJAXAは、今中長期計画から先ほどの特記事項での御示唆を頂いていることもありまして、削減目標以外に新しい業務運営の改善や効率化がないかということを考えています。1つ考えていることは、組織の中には内部管理業務というものはどこにでもあり、研究者の中にもありますし、事務員の中にもあります。各所に織り込まれているそういう業務を標準化、集約化、合理化して、それによって削減されるリソースをより高い仕事に移したら、効率化や改善につながるのではないだろうか、それは対象業務や効果測定について可能なのではないだろうかということを考え始めていまして、こういうことがもしできれば、今中長期期間中には、こういうことでああ、よくやったということで、経費は余り削減できていないものの、評価が高くなるというような状況になればいいと思っております。
 今の話は一般管理費になりますが、事業費も同じように一生懸命削減を努力しておりまして、ここでは大きな設備を一緒にしたりということや、運用を一緒にしたりということで徐々にやっており、先ほど施設のところでお話ししたように、ESCO事業で民間の活力を使うということもその一例だと思って、努力しております。
 それから、調達の合理化については、F-5ページに表があるのですが、上には調達全体について触れていまして、件数、金額ともに17年度に比べて18年度は、随意契約は減っており、逆に競争性のある契約は増えております。ですので、非常に競争性が高くなっているということですが、しかし、ページの下の表にありますように、一者応札については、件数は減っているもののやはり金額は増えてしまっていることが残念です。これは残念なのですが、中長期計画の年度当初ということになりますと、通常一者しかできないところがあり、そこの入札については、契約金額も大きいというようなことがあり、そういうことになってしまっています。事業所の保全計画や、試験設備の保全などがそういうことになります。
 人件費の適正化、F-4ページについて、国に準拠してやっておりますが、ここも課題がございます。人件費は適正なのですが、人員規模として適正ではないということがありまして、これは後で人事のところで御説明を申し上げます。
 次がローマ数字5 の財務内容の改善の御説明になります。財務内容は、基本的には財務的にきちんやっていますかということと、それから、収入を増加させる努力をしていますかということがポイントでございまして、G-2からG-6までは全部計画を転記しているものでございます。指標としては、きちんと開示していますかということがありますが、今、ちょうど6月末に決算を終えまして、主務大臣に提出しております。この提出する前には監事、それから会計監査人の監査を受けて、無限定で適正であるということを意見もらっていますので、8月頃主務大臣に承認いただければ公表ということになります。
 ポイントは、G-8ページ目にありますように、例えば、当期総利益が193億円計上されておりますが、(2)にありますように、これは会計基準に基づいた結果発生する収益化と費用化の期間のずれですので、今年度において費用が発生して相殺されてしまい、何かに使える利益というものではございません。
 加えて、資金期末残高として545億円発生していますが、これも何か使い残したということではなく、未払金がこれだけあるので、支払いにどんどん回っていきますよということです。その他、いろいろな譲与財産の処分や短期借入金等々はございません。
 それから、自己収入については、今期は先ほど研開部門で競争的資金、科研費が増えたと申しました。競争的資金全体では25億円で、昨年度比1億円増なのですが、自己収入全体は、一昨年39億円だったことに対し今年は33.4億円なので、これは減っているように見えます。実はその前の年度は、「ひとみ」の事故での和解金や、それから消費税の還付があったので増えているように見えていますが、実際はほぼ同規模でございます。それでなかなか努力しても自己収入が拡大していかないのですが、努力の道筋としては、例えば、クラウドファンディングなどをさせていただいておりまして、今期は450万円をワイヤレス伝送技術で頂き、加えて、どこの機関でもやっていることかもしれませんが、外部資金獲得のための組織的な努力もしております。それによって、この項目はBとさせていただいております。
 それから、人事に関するローマ数字6 .2の事項でございます。ページとしてはH-4ページからです。これも計画は人事マネジメントをしっかりやりなさいということと、労働環境を常に改善していきなさいということでございます。
 評価指標も改善しているかどうかという点ですが、数値目標は、この文章の中で時々出てきますのでそこで補足します。自己評価としてはBでございます。人事は非常に課題があるというふうに考えておりまして、その課題に対して計画的に取り組んでおります。
 最大かつ喫緊の課題が(1)になりますが、深刻な人的リソースへの対応と、そういう状況でありながら、国が求める高いレベルの集団にシフトしていかなければいけないというその準備です。それに併せて(2)の課題も大きい実施事項になりますが、やはり民間企業さん、産業界さんと一緒になって働いていく、あるいは、相互交流をして、宇宙航空産業を促進していくということも人事的にやらなければいけないということです。それから、3つ目が、基盤となる働く人のワークライフの変革というポイントが、やらなければならない課題と思っています。
 それぞれ少し補足いたしますと、(1)のところは、リソース不足、かつ高度専門集団へシフトするためにどうするかということで、まず昨年度は中長期計画の初年度でしたので、新理事長のもとで人材育成実施方針というものを制定しました。これは併せて社外にもホームページで公表しています。JAXAはこういう人材を求めています、あるいはこういうふうになろうとしていますということを示すためのものです。今回の方針は、専門性を高めることはもちろんのこと、特に提案能力の高い人材になろうということを掲げています。併せてマネジャーの育成や、ベテラン層の職員の能力開発、一人一人のキャリアについても、アクションプランを作って実施計画を定めてやっております。
 最大の問題は、そのプロジェクトの実行に対して、人員規模が大幅に減ってきているということであり、JAXA統合のとき以来、234名、12.8%減っています。今、まさに新しい宇宙基本計画に対応してJAXAはこういうことをやっていかなければいけないということで、人員がどのくらい必要ですかと社内に問い合わせをしているところですが、各部門からの要求は、言い値にはなるものの、やはりこの削減分と同じぐらいの人材がいないと、今の仕事ができないというような状況です。実際このぐらい減ってしまうとやはり相当厳しいと言わざるを得ません。これは任期の定めのない職員の話です。
 この人手不足にどのように対応しているかといいますと、企業さんから出向してきていただき、あるいは最大5年や3年程度で臨時的に雇用して来ていただいているのですが、今の労働市場はそのような不安定な条件ではなかなかいい人材に来ていただけない状況であり、あるいは最大5年で移っていくということでは、技術継承や人材育成という面でもやはりよろしくないということで、この人的バランスを何とかしなければいけないという課題があります。国の予算制度上、人件費増というものは難しいということは重々承知しておりますが、どうにかしていかなければいけないと強く感じています。
 今努力していることは、事業を受託することが国や民間企業さんからありますので、その受託数をある程度見込んだ上で、プロパーの社員を雇っていこうではないかということも考えております。しかし、当然受注にも波があるので、リスクは非常にあるということで、引き続きこれは最大の課題ということで対応していかなければいけないです。こういうことが対応できると、BがAになるかもしれません。
 併せて内部管理の再構築と先ほど申しました。合理化は当然やっておりまして、その合理化を踏まえて高付加価値業務に移っていくということをやっております。
 (2)では、民間企業との人事交流について触れておりますが、ここも本当は積極的に推進し、特にベンチャーさんや新しい分野で宇宙航空に参入する方のところでJAXAがお手伝いするということが大事なのですが、今はクロスアポイントメントをJAXA自身がやって民間さんに出ている職員が3人、それから、民間さんに出向等で出ている職員が3人で計6人でございます。外部に出て行っている職員は、3のところにありますように計47名でありますので、やはり府省さんに行く数の方が圧倒的に多く、この辺の改革もしなければいけないということです。
 それから、ワークライフにつきましては、女性活躍を非常に推進しており、保育園を調布で去年開設しまして、これは事業所と一体になっています。地域の方にも保育できるような環境を作っておりまして、補助も内閣府から頂いております。充足率100%です。あとは女性採用比率や、それから女性管理職比率も非常に高まっておりますので、働きやすい職場になっていると思います。残業も平成27年度比で20%ほどになり、人手不足といいながらも残業も減らすような合理化を進めています。
 人事のところまで以上です。

【JAXA(中村)】  続きましてローマ数字6 .1、内部統制について御説明申し上げます。資料はH-1というところでございます。
 中長期計画におきましては、理事長のリーダーシップの下で関係法令等を遵守しつつ、合理的かつ効率的に業務を行うために、PDCAサイクルを効果的に循環させて、内部統制を行ってくださいというものです。具体的には、内部統制の基本要素が適正に実施されているか、不断の点検を行ってくださいというふうに書かれております。特に研究不正対策についてしっかりとしてほしいというようなことが挙げられてございます。
 その内容でございますが、開いていただきましてH-2のページでございます。内部統制の点検、それから必要に応じた見直しの状況ということでございますが、指針に基づきまして、状況の調査を年2回行っており、理事会報告をしているという形で確認をしているところでございます。
 それから、研究不正対策の状況ということでございますが、ガイドラインに従いまして必要な取組を行っているということでございます。昨年度の特記するべきこととしましては、研究費の不正対策ということで、伝票の決裁時にチェックリストを活用しました不正防止というものを導入いたしております。加えて、研修資料を作成するということや、内部監査においては伝票の発出者以外の人がきちんと研修をしているかという、研修の在り方について主に確認をしたという状況がございます。
 それから、研究不正の方でございますが、研究者に対してのe-Learningでの研修の受講を義務付けており、外部の専門家を招いての研修を実施しているというようなことをしてございました。
 最後にその他でございます。昨年度、機構の元役員が収賄罪により起訴されたということがございました。これを受けまして、機構の元役員による収賄事案に関する調査検証チームというものを設置し、本事案に関連して、機構の業務の問題点があるのかどうかということの調査を実施いたしました。この調査検証を実施いたしまして、その過程で業務の実施に際し、役職員が規程類に照らしてこれに反する不公正な職務執行を行った事実は認められませんでした。一方で、業務運営上の課題や改善事項が把握されましたので、この問題点の所在を指摘した上で、今後の業務改善について提言を行ったところでございます。具体的には、1例として宇宙飛行士の方に講演をしていただくときのお願い、割り振りをどういうふうにするのかというときに、その手続に恣意性が入る余地があったのではないかという指摘がありまして、皆さんで共同して発議をし、みんなで審査をするというような内容の手順に変えたというようなことや、それから、打上げの施設の見学において誰を受け入れるのかというところについても、手続をみんなで確認をし合うような手続にするといった、そういうような業務の内容の変更をしております。このような形で、業務の改革を進めるというような形での内部統制をしてございます。説明は以上でございます。

【渡邉専門職】  それでは、ただいまの項目について、順番に聞いてまいります。最初、4番、業務運営の改善・効率化に関する事項に係る措置について、御質問等ございますでしょうか。赤松委員。

【赤松臨時委員】  様々に効率化を進められて、ペーパーレス等を進められているという記載がありますが、例えば、RPAやCRM等を導入して、抜本的に効率化しましょうというような検討はされているのでしょうか。

【JAXA(鈴木)】  はい、やっておりまして、基本的にRPは今、財務や人事などで入れ始めております。ロボットもこういうふうに、ロボット人事部のようなものを作って、そういうところが担っていくということがやれたらいいと考えております。そこをどう集約するかという点で、1つの手段としてロボット、あるいはシェアドサービスなども考えております。

【赤松臨時委員】  その辺は結構効果が上がっているのですか。

【JAXA(鈴木)】  まだ緒についた……。

【赤松臨時委員】  これからということですか。

【JAXA(鈴木)】  はい。ですから、まだ10本の指に入るようなロボットしかできていない状況です。

【赤松臨時委員】  恐らくそのような自動化等がこれから進んでいくと、もう少し他のところにリソースを振り分けられるようになると思うので、是非積極的に進めていただければと思います。

【JAXA(鈴木)】  ありがとうございます。計画的にやっていきたいと思います。

【渡邉専門職】  ほかにございますでしょうか。
 それでは、次の項目にまいります。ローマ数字5 、財務内容の改善に関する事項に係る措置について御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次、ローマ数字6 .2、人事に関する事項について御質問ございますでしょうか。どうぞ。

【梅比良部会長】  受託費を原資に含めた採用で人員拡大をやってみましょうということですが、パーマネントでこれを雇用しようという試みをされるということですか。

【JAXA(鈴木)】  はい。既にここに書いていますように、31名程度採用をしております。受託案件が、年間これぐらいずっとあるだろうという想定をして、ない場合は営業努力をするという方針です。国の技術の中核として働く以上は、そうやってみんなに期待されるようになっていくべきだという考えです。

【梅比良部会長】  それをやることによって、ある程度何とか減らさなくても済むぐらいにはできそうと、そこまではいかないですか。

【JAXA(鈴木)】  今、本当に足りないところをどう埋めるかも、検討しております。

【梅比良部会長】  受託業務が増えるということは、仕事が増えるので、当然それで人を雇うということは、人件費に充てるということは構わないわけなのですね。

【JAXA(鈴木)】  そうです。ただ、受託が終わったらその人件費は……。

【梅比良部会長】  ええ、なくなってしまうので、次の分がないと困ったことになるので、どういうふうにされているのかと思いました。一応パーマネントで、有期ではなくて、あるいはプロジェクトが続いている時間だけということではなく、定常的に活躍していただこうかというお考えでよろしいでしょうか。

【JAXA(鈴木)】  はい、議論として、このぐらいの規模であればできるだろうと。

【梅比良部会長】  分かりました。どうもありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほか、よろしいでしょうか。赤松委員。

【赤松臨時委員】  総人数と年齢構成が気になります。どこの企業でも課題であり、社会的にも年齢構成が課題となっていると思いますが、JAXAの中で年齢構成に関する課題というものはどのように認識されていますでしょうか。

【JAXA(鈴木)】  やはり40代後半の年齢が増えていて、さらに、運用部隊や試験技術を持っている人などは、若い人が入ってこないので高齢化しているというような問題がございます。そのため、年齢構成は、やはり世の中と同じような、シニア層にどう活躍していただいて、もっと最近的な話題は、IT等が進むと若い人がより活躍できる環境になりますよね。ですから、そこも含めた本当に大きな課題があると認識しております。

【赤松臨時委員】  そうですね。我が社にもあてはまりますが、単純に人を入れればよいという話だけではなくて、どうやって年齢構成の落ち込んでいる層を埋めていくかということが、JAXAにとっても喫緊の課題になってくるのではないかと思いますので、年齢構成ということも少し考慮の中に入れていただいた方がいいのではないかと思います。

【JAXA(鈴木)】  はい、分かりました。

【赤松臨時委員】  よろしくお願いします。

【渡邉専門職】  ほかによろしいでしょうか。
 では、次の項目、ローマ数字6 .1、内部統制について、御質問ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、以上をもちまして、総務省と文科省共通の評価項目は終了となります。こちらで総務省の委員の方々には御退室をいただくことになります。準備が整い次第、御退室をお願いいたします。本日は、長時間の御対応どうもありがとうございました。
 それでは、最後の項目にまいります。ローマ数字3 .5「航空科学技術」について、JAXAから御説明をお願いいたします。

【JAXA(佐野)】  長時間にわたりありがとうございます。最後、ラストバッターでございます。航空科学技術部門の部門長の佐野の方から御報告させていただきます。
 お手元に資料の4-2という紙があるかと思いますが、先日、調布の方にお越しいただいたときに、委員のお一人の方から、この後私が御説明するFQUROHプロジェクトという機体の低騒音化のプロジェクトについて、期間がどのような形かという御質問があったものですから、それに対して最初にお答えをしようかと思います。
 実はこの紙には3つの柱が書いてございますので、それも申し上げておきます。我々航空部門は3つの柱で進めております。社会からの要請に応える研究開発、それから、次世代を切り開く先進技術の研究開発、3つ目の柱が航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発というものでございます。我々、今回の成果はここのところの御報告で、後ほどFQUROHプロジェクトというものが出てまいります。機体の低騒音化に関する成果が出ているところが今回、航空の一丁目一番地にしております。このプロジェクトがちょうと2018年で終わっておりますので、それを最初に御回答させていただきます。その上で、また本文の方に戻らせていただきます。
 本文のC-5ページの1枚紙で御説明させていただきたいと思います。我々、航空部門は自己評価をSとしてございます。その評定理由と根拠でございますが、年度目標に掲げる社会からの要請に応える研究開発について、次世代を切り開く先進技術の研究開発及び航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発を行い、全ての業務において目標を達成しました。その上で、空港周辺騒音低減に資する世界トップの技術獲得がなされ、航空機運航の安全性向上に関する成果の社会実装がより一層進むなど、目標以上の成果が得られたことから、特に顕著な成果を創出したと評価しています。その具体的な内容は以下のとおりということで、御説明させていただきます。
 1ポツ、社会からの要請に応える研究開発についてです。1つ目のポツですが、JAXAが設計した低騒音デバイスによる航空機の主脚/フラップの騒音低減量の飛行実証データを詳細に評価した結果、欧米における機体騒音低減の実証結果を大きく上回り、過去20年間停滞してきた空港進入時の航空機騒音を大幅に下げられる画期的な成果であることを確認しました。この機体騒音低減技術を旅客機に適用すると、空港進入時の騒音暴露面積をおよそ半分にすることが期待できます。騒音暴露面積というものは、騒音にさらされる面積という意味でございます。この成果は数値解析、風洞試験、飛行試験それぞれにおけるJAXAの優位技術を活用した設計・実証・検証・反映という包括的なサイクルで構成される実用性の高い世界トップの低騒音化設計技術により得られたものであり、現在、本活動で培われた音源探査技術を国内空港と連携して、空港周辺騒音対策へ応用するなど、民間企業への技術移転を含めた成果展開が進められつつあります。
 この成果の様子を、1枚のグラフで御説明させていただきます。こちらに示すこのグラフがそれを示してございまして、横軸に年代、縦軸に騒音レベルをとっております。下にいくほど静かですというグラフです。先ほど申し上げましたように、このようにグラフがサチュレーションしているという様子がお分かりいただけると思います。この20年間停滞しておるところを、今回の我々のFQUROHの技術で下にシフトさせるという、そういう効果を持ってございます。
 それでまた本文の方に戻らせていただきます。そういう意味でこのテーマ、アウトカムが出ているという具体例でございました。
 2つ目のポツですが、巡航条件を外れた飛行状態で発生し、安全な運航を阻害する原因となり得る主翼振動現象(バフェット現象)について、微少空力デバイス(Vortex Generator)、VGによるバフェット現象抑制メカニズムを数値解析技術や感圧塗料などを用いた先進的な計測技術といったJAXAの強みを生かして解明し、この現象理解に基づいて効果的にバフェット現象を抑制できる設計技術を開発しました。これは三菱重工との共同研究で、MRJの、今スペースジェットというものが正式な名称になりましたが、このVG搭載設計にこの技術が活用され、その開発に貢献しました。これもアウトカムでございます。
 3つ目のポツですが、離着陸のより一層の安全性向上を目的として、国内大規模空港で実運用中。成田空港や羽田空港にある、JAXAと気象庁で共同開発した空港改善情報を提供するシステムに対して、大幅な低コスト化に加えて、離着陸への影響が大きい上下風情報の世界初の提供機能を付加した空港低層風情報提供システム(SOLWIN)を開発しました。これはソニック社と共同でございます。先ほど来、中村理事も言及されておられましたが、こちらがSOLWINというデバイスでございます。そして、エアラインと空港の協力を得て運用評価試験を実施し、より安定した着陸が可能になったなどの高い評価を得て、鳥取空港、庄内空港がSOLWINの継続運用を検討しています。鳥取空港につきましては、正式に採用していただきまして、今週の火曜日にプレスリリースをしたところでございます。加えて、パートナー企業のソニック社の企業提案が国際協力機構(JICA)に採択され、海外展開(フィリピン・マニラ空港)も予定されております。
 4つ目のポツ、災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)において開発した、専用端末を要さずブラウザで情報を共有できるD-NET WEBは技術移転して製品化され、防災機関に納入され、実利用に供されています。また、災害時の航空機運航の課題である有人機と無人機の安全かつ効率的な連携を実現する機能を開発し、愛媛県の協力を得た原子力防災訓練での運用評価において有効性が確認された。この運用評価により、愛媛県及び内閣府と、原子力災害時等におけるD-NET活用の協定が締結されました。
 最後のポツですが、ジェットエンジンの国際共同開発において、国内メーカーが設計担当として参入した実績のない高温高圧要素に関して、参入を視野に入れてJAXAの研究戦略と国内ジェットエンジンメーカーの事業戦略を共有し、低NOx燃焼器及び高温高効率タービン技術実証をJAXAとメーカーの共同研究開発プロジェクトとして進めることで合意しました。このテーマは、今ちょうど締結したばかりで、アウトカムはまだですので、今後に御期待いただきたいテーマの1つでございます。
 2ポツ、次世代を切り開く先進技術の研究開発についてです。世界に誇る国内の電動要素技術などを航空機技術と糾合するオープンイノベーションの手法により、抜本的なCO2排出削減が可能な電動航空機の実現と新規産業の創出を目的として、JAXAが中核となり航空機電動化コンソーシアム(ECLAIR)を立ち上げました。JAXAは、航空以外の分野を含む産学官の連携をリードし、今後の技術開発の重点化領域とロードマップを示す「将来ビジョン」を策定しました。将来ビジョンは主要メディア等を通じて広く共有され、参画機関の新規開拓促進にも貢献をしています。これは初めの一歩を踏み出したというアクティビティでございますので、また今後の成果に期待していただきたいと思います。
 3ポツ、航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発についてです。戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)で取り組まれた自動車エンジン用燃焼解析ソフトHINOCAにおいて、JAXAはこれまでに開発してきた数値解析プログラムをベースとして、コアとなるプラットフォーム部分の開発を担当し、SIPでの高い評価を得ました。自動車業界よりJAXAの数値解析技術の研究開発能力が高く評価され、同業界からの要請を受け、SIP終了後も同業界が実施する標準解析ツール化に向けた開発に受託研究として協力することとしています。こちらは航空宇宙産業ではない自動車産業からJAXAの技術が認められているというアウトカムの例でございます。
 以上で御報告を終わらせていただきます。

【渡邉専門職】  時間を過ぎてしまいまして恐縮ですが、ただいまの説明について御質問ございますでしょうか。古城委員。

【古城委員】  幾つかの空港でこの技術が採用されるということを、今おっしゃられたのですが、今後発展していく可能性というものは拡大していくのか、あるいは、それはどの程度あるのでしょうか。

【JAXA(佐野)】  かなりあると思っています。今回、まずシステムとしては羽田や成田が採用しているシステムよりはずっとお安いということ、加えて、地方空港ということと、やはり日本は気象が厳しゅうございますから、鳥取空港の場合でいいますと、冬になると特に直で季節風が入ってまいりますので、そのような空港でこのよさが認められますと、気象の厳しい地方空港での御採用につながるのではないかというふうに考えております。

【古城委員】  これはJAXAの収益になるのですか。そういう技術なのでしょうか。

【JAXA(佐野)】  では、西澤の方から。

【JAXA(西澤)】  ただいまの鳥取と庄内空港については、JAXAも一緒になって運用してきたものを鳥取空港さんに引き続き使っていただくということになっていますが、ここに書いてありますようにソニック社という会社が実際に製品として売れるようになっていますので、今後、このソニック社から御購入いただいた空港については、幾分かJAXAに入ってくるというふうになっております。

【古城委員】  分かりました。

【渡邉専門職】  ほか。赤松委員、お願いします。

【赤松臨時委員】  このアウトカムをどういうふうに表現するかというところが、1つ課題かと思っています。実は私、航空研(現JAXA調布宇宙センター)に見学に行かせていただき、非常によく説明いただいているので、この中身について、そのすごさやその効果が分かるのですが、このペーパーだけを見ると、おそらくなかなかそこまでは理解できないだろうと感じます。この評価全体に言えることかもしれませんが、我々自身が十分理解できているのかという懸念があります。そのときにアウトカムを非常に明確に分かりやすく伝えていくということがやはり大変重要かというふうに思いました。例えば今回、風情報提供システムを空港に展開されるということが経済価値としてどの程度あるのか、ということや、社会的なベネフィットとしてこういうものを生むということを、少し定量性も含めて示していくということによって、アウトカムのすばらしさを示すことができるかと思います。また、例えば、この騒音低減の技術に関しては、本当に先端的なものであることをどうやってアピールするのかということが非常に重要なのではないかと思います。これは示し方の問題だと思います。私はS評価ということに全く異論はないのですが、おそらくこの業務実績評価書を見ただけでは、なかなかその評価に値することが理解できないのではないか、ということを、今日お話を伺っていて、航空研さんを見学したときのことを思いながら、少し考えましたので、是非伝え方のところをもう少し工夫いただけたらと思います。

【JAXA(佐野)】  コメントを受けとめさせていただいて、今後ますますどういうふうにお伝えすればいいか、少々検討させてください。そういう意味では、現場に来て見ていただくのが、我々にとって本当に一番うれしい。

【赤松臨時委員】  そうですよね、時間がやはり必要ですよね。

【JAXA(佐野)】  紙よりも圧倒的に情報量が伝わりますので。しかし、そういうわけにもいかないものですから。

【赤松臨時委員】  そうですよね。報告は15分ですよね。私が航空研を見学させていただいた時間は多分3時間ぐらいだったと思いますが、そこにはやはり圧倒的な差があるということを改めて認識させていただきました。ですから、我々もできるだけ視察させていただくことが大事だなと改めて思いました。

【JAXA(佐野)】  どうもアドバイスありがとうございます。

【赤松臨時委員】  はい、ありがとうございます。

【渡邉専門職】  ほか、よろしいでしょうか。
 それでは、以上で、本日のヒアリングは全て終了となります。最後に、事務局から事務的な連絡をさせていただきます。
 冒頭に御説明を差し上げましたとおり、本日のヒアリングを踏まえまして、御意見記入シートに記入をいただいて、御提出をお願いいたします。御意見記入シートの電子ファイルについては、メールでお送りしているものを御利用ください。シートの提出につきましては、文部科学省については7月19日金曜日の17時を締め切りとさせていただいております。
 なお、評価を行う上でさらに必要な御質問や追加の資料の御依頼がございましたら、電子メール等にて、これも文科省については7月12日までに御連絡をお願いいたします。
 また、参考資料を挟んでおります緑のファイルについては、次回以降も使用いたしますので、お持ち帰りにならないようにお願いいたします。一方、この青のファイル、JAXAの自己評価につきましては、御意見記入シートを記載いただく際の参照資料としてお持ち帰りいただいても構いませんし、別途お送りしています電子ファイルの方を御利用いただいても構いません。もしこれ自体の郵送を希望される場合は、事務局までお申し付けください。
 次回の文部科学省のJAXA部会は、8月1日の13時から、文部科学省本省の18階第2会議室にて開催をいたします。
 以上で、第2回平成30年度JAXA業務実績ヒアリングを閉会いたします。本日は、長時間の御対応、どうもありがとうございました。

―― 了 ――


お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課